説明

燃料タンク支持構造及び浮体構造物

【課題】防熱対策を施しやすく、タンク収容部に多段部を有する場合であっても、タンクの熱変形に対応することができる、燃料タンク支持構造及び浮体構造物を提供する。
【解決手段】浮体構造物1の推進又は付属装置の駆動に使用される燃料を収容する燃料タンク2を、浮体構造物1に形成された収容部3に搭載するための燃料タンク支持構造であって、収容部3の底面部に形成された階段状の多段部31と、多段部31に配置された複数の支持ブロック4と、燃料タンク2に形成され多段部31に沿った形状のタンク底面部21と、を備え、燃料タンク2は、収容する燃料の容量によって熱変形を生じ、燃料タンク2に燃料を満載したときにタンク底面部21を支持する支持ブロック4の個数が、燃料タンク2が空のときにタンク底面部21を支持する支持ブロック4の個数よりも多くなるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料タンク支持構造及び浮体構造物に関し、特に、多段部を有する収容部内において熱収縮や熱膨張する燃料タンクを支持するための燃料タンク支持構造及び浮体構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンテナ船やバルクキャリア等の貨物船では、主機等の燃料を収容する燃料タンクとして、二重底や二重側壁の一部を利用することが一般的であった。しかし、二重底や二重側壁は、船体の外殻を構成していることから、座礁等によって船体が損傷した場合に、燃料が海中に流出し、海洋汚染を引き起こしてしまう可能性がある。そこで、船体の外殻から離隔した箇所に燃料タンクを配置することが提案されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【0003】
特許文献1に記載された燃料タンクは、船側外板から離隔したタンク側壁及び船底外板から離隔したタンク底壁を有しており、図5〜図7には、コンテナ船の底部や船体中心部のガーダー下に配置した場合、バルクキャリアの底部やトップサイドタンク内に配置した場合、タンカーの船体上甲板下に配置した場合が図示されている。また、特許文献2に記載された燃料タンクは、複数の貨物格納用ホールドを区画する複数の隔壁の内部に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭60−80987号公報
【特許文献2】特開2002−316688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1や特許文献2に記載された燃料タンクのように、船体の外殻以外の部分(貨物収容部の底面部上、ガーダー下、トップサイドタンク内、貨物格納用ホールド区画隔壁内)を燃料タンクとして使用する場合には、燃料がLNG(液化天然ガス)やLPG(液化石油ガス)等の低温液体燃料の場合、燃料タンクの外周に防熱対策を施す必要があり、船体の改造や防熱材の設置等が困難であるという問題があった。特に、液体燃料がLNGのように極低温(例えば、−163℃)の場合には、燃料タンクが熱収縮し、燃料の残量が減るにしたがって熱膨張することとなるため、この熱変形(熱収縮及び熱膨張)に耐える構造に改造することは困難であった。
【0006】
さらに、コンテナ船のように貨物収容部に階段状や雛壇状の多段部を有する場合であって、燃料がLNGやLPG等の低温液体燃料の場合には、燃料タンクの熱変形を考慮した構造にしなければ、熱変形を吸収できなかったり、応力集中を生じたりしてしまい、燃料タンクが損傷してしまう可能性があった。
【0007】
本発明は、上述した問題点に鑑み創案されたものであり、防熱対策を施しやすく、タンク収容部に多段部を有する場合であっても、タンクの熱変形に対応することができる、燃料タンク支持構造及び浮体構造物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、浮体構造物の推進又は付属装置の駆動に使用される燃料を収容する燃料タンクを、前記浮体構造物に形成された収容部に搭載するための燃料タンク支持構造において、前記収容部の底面部に形成された階段状の多段部と、該多段部に配置された複数の支持ブロックと、前記燃料タンクに形成され前記多段部に沿った形状のタンク底面部と、を備え、前記燃料タンクは、収容する前記燃料の容量によって熱変形を生じ、前記燃料タンクに前記燃料を満載したときに前記タンク底面部を支持する前記支持ブロックの個数が、前記燃料タンクが空のときに前記タンク底面部を支持する前記支持ブロックの個数よりも多くなるように構成されている、ことを特徴とする燃料タンク支持構造が提供される。
【0009】
また、本発明によれば、浮力により水上に支持される本体部と、該本体部の推進又は付属装置の駆動に使用される燃料を収容する燃料タンクと、前記本体部に形成され前記燃料タンクを収容する収容部と、を有する浮体構造物において、前記燃料タンクの支持構造は、前記収容部の底面部に形成された階段状の多段部と、該多段部に配置された複数の支持ブロックと、前記燃料タンクに形成され前記多段部に沿った形状のタンク底面部と、を備え、前記燃料タンクは、収容する前記燃料の容量によって熱変形を生じ、前記燃料タンクに前記燃料を満載したときに前記タンク底面部を支持する前記支持ブロックの個数が、前記燃料タンクが空のときに前記タンク底面部を支持する前記支持ブロックの個数よりも多くなるように構成されている、ことを特徴とする浮体構造物が提供される。
【0010】
上述した燃料タンク支持構造及び浮体構造物において、前記燃料は、例えば、低温液体燃料であり、前記燃料タンクは、例えば、前記燃料を収容したときに熱収縮する。
【0011】
また、前記多段部の下からn番目(nは前記多段部の段数以下の整数)の多段部に配置された支持ブロックは、前記燃料タンクに前記燃料を満載した状態及び前記燃料タンクが空の状態の両方の状態で前記タンク底面部を支持するように構成されていてもよい。
【0012】
また、前記n番目以下の多段部に配置された支持ブロックは、前記燃料タンクが空の状態で前記タンク底面部を支持し、前記n番目以上の多段部に配置された前記支持ブロックは、前記燃料タンクに前記燃料を満載した状態で前記タンク底面部を支持するように構成されていてもよい。
【0013】
また、前記n番目の多段部に配置された支持ブロックは最下段(n=1)の多段部に配置された支持ブロックであってもよい。
【0014】
また、前記燃料タンクは、外周が防熱材により被覆されていてもよい。
【発明の効果】
【0015】
上述した本発明に係る燃料タンク支持構造及び浮体構造物によれば、燃料タンクを船体から独立させて、タンク底面部を収容部に配置された支持ブロックにより支持させるようにしたことから、燃料タンクが熱変形(熱収縮又は熱膨張)し易い場合であっても防熱対策を容易に施すことができる。また、収容部が多段部を有し、燃料タンクが熱変形する場合であっても、燃料タンクに収容される燃料の容量によってタンク底面部を支持する支持ブロックの個数を変化させることによって、燃料タンクの熱変形に対応しつつ燃料タンクを支持することができる。
【0016】
特に、燃料がLNG(液化天然ガス)やLPG(液化石油ガス)等の低温液体燃料の場合に、燃料タンクに燃料を満載した状態、すなわち、燃料タンクが最も重く、かつ、最も熱収縮した状態のときに、多数の支持ブロックにより安定して支持することができ、燃料タンクの燃料が空の状態、すなわち、燃料タンクが最も軽く、かつ、最も熱膨張した状態のときに、必要最小限の支持ブロックにより支持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第一実施形態に係る燃料タンク支持構造を示す図であり、(a)は断面図、(b)は収容部の平面図、である。
【図2】図1に示した燃料タンク支持構造の作用を示す断面図であり、(a)は燃料満載時、(b)は燃料満載時の変形例、を示している。
【図3】図1に示した燃料タンク支持構造の部分拡大図であり、(a)は第二多段部、(b)は図3(a)の変形例、(c)は第一多段部、(d)は図3(c)の変形例、を示している。
【図4】本発明の第二実施形態に係る燃料タンク支持構造を示す断面図であり、(a)は燃料空載時、(b)は燃料満載時、を示している。
【図5】本発明の第一実施形態に係る浮体構造物(コンテナ船)を示す図であり、(a)は側面図、(b)は水平断面図、である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図1〜図5を用いて説明する。ここで、図1は、本発明の第一実施形態に係る燃料タンク支持構造を示す図であり、(a)は断面図、(b)は収容部の平面図、である。図2は、図1に示した燃料タンク支持構造の作用を示す断面図であり、(a)は燃料満載時、(b)は燃料満載時の変形例、を示している。図3は、図1に示した燃料タンク支持構造の部分拡大図であり、(a)は第二多段部、(b)は図3(a)の変形例、(c)は第一多段部、(d)は図3(c)の変形例、を示している。
【0019】
本発明の第一実施形態に係る燃料タンク支持構造は、図1〜図3に示したように、浮体構造物1の推進又は付属装置の駆動に使用される燃料Fを収容する燃料タンク2を、浮体構造物1に形成された収容部3に搭載するための燃料タンク支持構造であって、収容部3の底面部に形成された階段状の多段部31と、多段部31に配置された複数の支持ブロック4と、燃料タンク2に形成され多段部31に沿った形状のタンク底面部21と、を備え、燃料タンク2は、収容する燃料Fの容量によって熱変形を生じ、燃料タンク2に燃料Fを満載したときにタンク底面部21を支持する支持ブロック4の個数が、燃料タンク2が空のときにタンク底面部21を支持する支持ブロック4の個数よりも多くなるように構成されている。
【0020】
前記浮体構造物1は、図1(a)に示したように、浮力により水上に支持される本体部11と、本体部11に形成され燃料タンク2を収容する収容部3と、を有する。本体部11は、例えば、船体(船舶の外殻)である。また、収容部3は、船体を構成する本体部11と、本体部11に接続され収容部3の上部を気密に覆うタンクカバー12と、本体部11及びタンクカバー12に囲まれた空間を気密に封鎖する隔壁13と、により構成される。本体部11、タンクカバー12及び隔壁13とは、例えば、溶接等により気密に接続されており、燃料タンク2から燃料Fが漏洩した場合であっても、燃料Fが拡散しないように構成されている。なお、隔壁13の一部は、浮体構造物1の貨物収容部の壁面により構成するようにしてもよい。
【0021】
燃料タンク2の上部には、突起部22が形成されており、タンクカバー12の内面には凹部12aが形成されており、凹部12aに突起部22を挿入することにより、燃料タンク2の横揺れを低減したり、横転を防止したりするアンチローリングチョックが形成される。突起部22及び凹部12aは、図1(a)に示したように、例えば、船体中心部に配置されるが、左舷側及び右舷側にずれた位置に配置されていてもよいし、複数個所に配置されてもよい。なお、燃料タンク2は、自立角型タンカーのタンクと同様に、アンチフローティングチョックを有していてもよい。
【0022】
そして、収容部3の底面部は、階段状又は雛壇状に形成された多段部31を有し、図1(a)に示したように、多段部31は、例えば、下から順番に、第一多段部31a、第二多段部31b、第三多段部31cにより構成される。多段部31の段数は、三段に限定されるものではなく、n段(nは2以上の整数)により構成される。ここで、最下段(n=1)の底面部を第一多段部31aとし、収容部3は少なくとも一つの段差を有していることから、多段部31は少なくとも第一多段部31a及び第二多段部31bを有する。したがって、n段の多段部31において、nは2以上の整数に設定される。
【0023】
前記燃料タンク2は、例えば、石油、LPG(液化天然ガス)、LNG(液化石油ガス)等の液体燃料を収容するアルミ製のタンクである。燃料タンク2に収容された液体燃料は、浮体構造物1の推進や浮体構造物1の付属装置の駆動源となる主機(ディーゼルエンジン等)の燃料Fとして使用される。本実施形態では、燃料FとしてLNGを収容する場合を想定している。LNGは、気体の天然ガスを−163℃以下の温度に冷却して液体にしたものであり、低温に維持する必要がある。そこで、燃料タンク2は、外周が防熱材により被覆されている。防熱材を被覆した状態の燃料タンク2を図では太線で表示している。防熱材は、主として、パネル状の断熱材であり、燃料タンク2の外周面に多数の断熱材が貼付されている。防熱材は、LNGタンカーのLNGタンクと同様の施工方法により貼付される。なお、燃料タンク2から主機に燃料Fを供給する配管の図は省略してある。
【0024】
前記支持ブロック4は、例えば、角型の木材により構成され、図1(b)に示したように、各多段部31に配置される。図では、各多段部31に支持ブロック4を二つずつ配置しているが、かかる個数に限定されるものではなく、各多段部31に少なくとも一つの支持ブロック4が配置されていればよい。
【0025】
図1(b)及び図3(a)に示したように、第二多段部31bに配置された支持ブロック4は、第二多段部31b上に形成された枠体部32bに押し込まれることにより嵌合され係止されている。枠体部32bは、支持ブロック4の外形と略等しい形状に形成された金属製の枠体であり、第二多段部31b上に溶接又はボルト等の固定具によって接続される。支持ブロック4には、従来の支持ブロックと同様のものを適宜使用することができ、例えば、ゴムや樹脂等の熱伝導率が低く弾性力を有する素材により構成されたものや、これらの素材を角材の表面に固定したものを使用してもよいし、固定金具により枠体部32bに固定するようにしてもよい。なお、第三多段部31cに配置された支持ブロック4も、第二多段部31bに配置された支持ブロック4と同様に枠体部32cにより固定されている。
【0026】
図3(b)に示したように、支持ブロック4は、燃料タンク2のタンク底面部21に形成された枠体部23bに係止させるようにしてもよい。枠体部23bは、支持ブロック4の外形と略等しい形状に形成された金属製の枠体であり、タンク底面部21に溶接又はボルト等の固定具によって接続される。支持ブロック4を多段部31側に固定するか、燃料タンク2側に固定するかは、燃料タンク2の容量、支持ブロック4の個数、施工のし易さ等を考慮して任意に選択することができる。
【0027】
図3(c)に示したように、第一多段部31aに配置された支持ブロック4は、第二多段部31bと同様に、枠体部32aに押し込まれることにより嵌合され係止される。また、枠体部32aと対峙する燃料タンク2のタンク底面部21には、支持ブロック4の左右方向のずれを抑制するガイド部材33が配置されている。ガイド部材33は、船体中心線Mを挟んで本体部11(船体)の長手方向に向かって延設された一対の平行な金属部品(例えば、アングル材及び補強部材)により構成されている。ガイド部材33の間には支持ブロック4が挿入され、支持ブロック4はガイド部材33に沿って本体部11(船体)の長手方向に摺動可能に構成されている。
【0028】
かかる構成により、燃料タンク2の左右方向のずれを抑制するとともに、燃料タンク2の熱変形(熱収縮又は熱膨張)に応じて燃料タンク2が、多段部31上で摺動できるように構成される。また、ガイド部材33は、燃料タンク2の前後方向のずれを抑制するとともに、燃料タンク2の熱変形(熱収縮又は熱膨張)に応じて燃料タンク2が、多段部31上で摺動できるように、燃料タンク2の不動点(図示せず)を挟んで本体部11(船体)の短手方向(幅方向)に向かって延設されていてもよい。なお、「不動点」とは、燃料タンク2に熱変形が生じた場合であっても位置が変動しない部分を意味する。
【0029】
図3(d)に示したように、第一多段部31aに配置された支持ブロック4は、燃料タンク2のタンク底面部21に形成された枠体部23aに係止させるようにしてもよい。このときガイド部材33は、第一多段部31a側に形成される。支持ブロック4を多段部31側に固定するか、燃料タンク2側に固定するかは、燃料タンク2の容量、支持ブロック4の個数、施工のし易さ等を考慮して任意に選択することができる。
【0030】
また、図示しないが、図3(c)に示した船体中心線M上に配置された支持ブロック4に加えて、その両側に第二多段部31bに配置された支持ブロック4と同様の支持構造を有する支持ブロック4を配置するようにしてもよい。このように、タンク底面部21を支持する支持ブロック4の個数を増やすことによって、燃料タンク2の支持を安定させることができる。
【0031】
次に、上述した本実施形態の作用について説明する。図1(a)に示したように、燃料タンク2に燃料が収容されていない状態、すなわち、燃料タンク2が空のときには、第一多段部31aに配置された支持ブロック4によって燃料タンク2が支持されている。そして、第二多段部31bに配置された支持ブロック4と燃料タンク2のタンク底面部21との間には、δ2の隙間が形成されており、第三多段部31cに配置された支持ブロック4と燃料タンク2のタンク底面部21との間には、δ3の隙間が形成されている。ここで、隙間δ2,δ3は、第一多段部31a及び第二多段部31bと対峙する燃料タンク2のタンク底面部21の間隔h2、第一多段部31a及び第三多段部31cと対峙する燃料タンク2のタンク底面部21の間隔h3及び熱膨張係数αを用いて、δ2=α×h2、δ3=α×h3と表示することができる。
【0032】
この隙間δ2,δ3は、図2(a)に示したように、燃料タンク2に燃料Fを満載したとき、すなわち、燃料タンク2が最も重く、かつ、最も熱収縮した状態のときには、消失し(δ2=δ3=0)、燃料タンク2は第二多段部31b及び第三多段部31cに配置された支持ブロック4により支持される。例えば、図1(a)において高さhを有する燃料タンク2は、図2(a)の燃料満載時には高さh′に収縮しており、この差分(h−h′)によって隙間δ2,δ3は消失する。
【0033】
本実施形態では、多段部31の下から1番目の多段部(第一多段部31a)に配置された支持ブロック4は、燃料タンク2に燃料Fを満載した状態及び燃料タンク2が空の状態の両方の状態でタンク底面部21を支持するように構成されていると言い換えることができる。また、本実施形態では、1番目以下の多段部(第一多段部31a)に配置された支持ブロック4は、燃料タンク2が空の状態でタンク底面部21を支持し、1番目以上の多段部(第一多段部31a〜第三多段部31c)に配置された支持ブロック4は、燃料タンク2に燃料Fを満載した状態でタンク底面部21を支持するように構成されていると言い換えることもできる。
【0034】
また、図2(b)に示したように、第二多段部31b及び第三多段部31cに配置された支持ブロック4により燃料タンク2を十分に支持できる場合には、燃料タンク2に燃料Fを満載したときに、第一多段部31aに配置された支持ブロック4と燃料タンク2のタンク底面部21との間に隙間Δhが形成されるように構成されていてもよい。かかる変形例では、燃料タンク2が空のときには第一多段部31aに配置された支持ブロック4で燃料タンク2を支持し、燃料タンク2が満載のときには第二多段部31b及び第三多段部31cに配置された支持ブロック4により燃料タンク2を支持している。かかる構成によれば、隙間δ2,δ3の精度及び燃料タンク2の製造公差や据付公差の制限を緩和することができ、燃料タンク2の製造工程や据付工程を簡素化することができる。
【0035】
次に、本発明の第二実施形態に係る燃料タンク支持構造について、図4を参照しつつ説明する。ここで、図4は、本発明の第二実施形態に係る燃料タンク支持構造を示す断面図であり、(a)は燃料空載時、(b)は燃料満載時、を示している。なお、上述した第一実施形態と同じ構成部品については、同じ符号を付して重複した説明を省略する。
【0036】
図4(a)及び(b)に示した第二実施形態に係る燃料タンク支持構造は、多段部31の下から2番目の多段部(第二多段部31b)に配置された支持ブロック4が、燃料タンク2に燃料Fを満載した状態及び燃料タンク2が空の状態の両方の状態でタンク底面部21を支持するように構成したものである。
【0037】
図4(a)に示したように、燃料タンク2に燃料が収容されていない状態、すなわち、燃料タンク2が空のときには、第一多段部31a及び第二多段部31bに配置された支持ブロック4によって燃料タンク2が支持されている。そして、第三多段部31cに配置された支持ブロック4と燃料タンク2のタンク底面部21との間には、δ3の隙間が形成されている。ここで、隙間δ3は、第二多段部31b及び第三多段部31cと対峙する燃料タンク2のタンク底面部21の間隔h3′と熱膨張係数αを用いて、δ3=α×h3′と表示することができる。
【0038】
この隙間δ3は、図4(b)に示したように、燃料タンク2に燃料Fを満載したとき、すなわち、燃料タンク2が最も重く、かつ、最も熱収縮した状態のときには、消失し(δ3=0)、燃料タンク2は第二多段部31b及び第三多段部31cに配置された支持ブロック4により支持される。このとき、第一多段部31aに配置された支持ブロック4と燃料タンク2のタンク底面部21との間にはδ1の隙間が形成される。ここで、隙間δ1は、第一多段部31a及び第二多段部31bと対峙する燃料タンク2のタンク底面部21の間隔h2と熱膨張係数αとを用いて、δ1=α×h2と表示することができる。
【0039】
例えば、図4(a)において高さhを有する燃料タンク2は、図4(b)の燃料満載時には高さh′に収縮しており、この差分(h−h′)によって、隙間δ3が消失し、隙間δ1が形成される。
【0040】
かかる第二実施形態では、2番目以下の多段部(第一多段部31a及び第二多段部31b)に配置された支持ブロック4は、燃料タンク2が空の状態でタンク底面部21を支持し、2番目以上の多段部(第二多段部31b及び第三多段部31c)に配置された支持ブロック4は、燃料タンク2に燃料Fを満載した状態でタンク底面部21を支持するように構成されていると言い換えることもできる。
【0041】
したがって、上述した第一実施形態及び第二実施形態に係る燃料タンク支持構造によれば、多段部31の下からn番目(nは多段部31の段数以下の整数)の多段部31に配置された支持ブロック4は、燃料タンク2に燃料Fを満載した状態及び燃料タンク2が空の状態の両方の状態でタンク底面部21を支持するように構成されている、と上位概念化することができる。また、n番目以下の多段部31に配置された支持ブロック4は、燃料タンク2が空の状態でタンク底面部21を支持し、n番目以上の多段部31に配置された支持ブロック4は、燃料タンク2に燃料Fを満載した状態でタンク底面部21を支持するように構成されている、と上位概念化することもできる。
【0042】
続いて、本発明の第一実施形態に係る浮体構造物1について、図5を参照しつつ説明する。ここで、図5は、本発明の第一実施形態に係る浮体構造物(コンテナ船)を示す図であり、(a)は側面図、(b)は水平断面図、である。なお、上述した燃料タンク支持構造と同じ構成部品については、同じ符号を付して重複した説明を省略する。
【0043】
本発明の第一実施形態に係る浮体構造物1は、浮力により水上に支持される本体部11と、本体部11の推進又は付属装置の駆動に使用される燃料を収容する燃料タンク2と、本体部11に形成され燃料タンク2を収容する収容部3と、を有し、燃料タンク2の支持構造は、収容部3の底面部に形成された階段状の多段部31と、多段部31に配置された複数の支持ブロック4と、燃料タンク2に形成され多段部31に沿った形状のタンク底面部21と、を備え、燃料タンク2は、収容する燃料の容量によって熱変形を生じ、燃料タンク2に燃料を満載したときにタンク底面部21を支持する支持ブロック4の個数が、燃料タンク2が空のときにタンク底面部21を支持する支持ブロック4の個数よりも多くなるように構成されている。すなわち、本実施形態に係る浮体構造物1は、燃料タンク2の支持構造として、上述した第一実施形態又は第二実施形態に係る燃料タンク支持構造が適用されている。
【0044】
図5に示した浮体構造物1はコンテナ船であるが、浮体構造物1はコンテナ船に限定されるものではなく、階段状又は雛壇状の多段部31を有するものであれば、バルクキャリア、タンカー、LNG洋上浮体設備(例えば、FPSO)等であってもよい。図5(a)において、本体部11(船体)に積載されたコンテナについては、図を省略してある。燃料タンク2は、例えば、図5(a)及び(b)において一点鎖線で示した部分の一箇所又は複数個所に配置される。なお、隔壁13の一部は、図示したように、浮体構造物1の貨物収容部14の壁面により構成するようにしてもよい。
【0045】
そして、上述した第一実施形態又は第二実施形態に係る燃料タンク支持構造を浮体構造物1に適用することによって、例えば、貨物収容部14の隅部の一画を利用して、燃料タンク2を収容することができる。勿論、貨物収容部14の中間部に燃料タンク2を収容するようにしてもよい。また、燃料タンク2を本体部11(船体)から独立させて、タンク底面部21を収容部3に配置された支持ブロック4により支持させるようにしたことから、燃料タンク2が熱変形(熱収縮又は熱膨張)する場合であっても燃料タンク2に防熱対策を容易に施すことができる。さらに、収容部3が多段部31を有し、燃料タンク2が熱変形する場合であっても、燃料タンク2に収容される燃料の容量によってタンク底面部21を支持する支持ブロック4の個数を変化させることによって、燃料タンク2の熱変形に対応しつつ燃料タンク2を安全に支持することができる。
【0046】
本発明は上述した実施形態に限定されず、機関室の両脇等の船体長手方向に延びた空間を燃料タンク2の収容部3として利用してもよい等、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0047】
1 浮体構造物
2 燃料タンク
3 収容部
4 支持ブロック
11 本体部
21 タンク底面部
31 多段部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浮体構造物の推進又は付属装置の駆動に使用される燃料を収容する燃料タンクを、前記浮体構造物に形成された収容部に搭載するための燃料タンク支持構造において、
前記収容部の底面部に形成された階段状の多段部と、該多段部に配置された複数の支持ブロックと、前記燃料タンクに形成され前記多段部に沿った形状のタンク底面部と、を備え、
前記燃料タンクは、収容する前記燃料の容量によって熱変形を生じ、前記燃料タンクに前記燃料を満載したときに前記タンク底面部を支持する前記支持ブロックの個数が、前記燃料タンクが空のときに前記タンク底面部を支持する前記支持ブロックの個数よりも多くなるように構成されている、ことを特徴とする燃料タンク支持構造。
【請求項2】
前記燃料は、低温液体燃料であり、前記燃料タンクは、前記燃料を収容したときに熱収縮する、ことを特徴とする請求項1に記載の燃料タンク支持構造。
【請求項3】
前記多段部の下からn番目(nは前記多段部の段数以下の整数)の多段部に配置された支持ブロックは、前記燃料タンクに前記燃料を満載した状態及び前記燃料タンクが空の状態の両方の状態で前記タンク底面部を支持するように構成されている、ことを特徴とする請求項2に記載の燃料タンク支持構造。
【請求項4】
前記n番目以下の多段部に配置された支持ブロックは、前記燃料タンクが空の状態で前記タンク底面部を支持し、前記n番目以上の多段部に配置された前記支持ブロックは、前記燃料タンクに前記燃料を満載した状態で前記タンク底面部を支持するように構成されている、ことを特徴とする請求項3に記載の燃料タンク支持構造。
【請求項5】
前記n番目の多段部に配置された支持ブロックは最下段(n=1)の多段部に配置された支持ブロックである、ことを特徴とする請求項4に記載の燃料タンク支持構造。
【請求項6】
前記燃料タンクは、外周が防熱材により被覆されている、ことを特徴とする請求項1に記載の燃料タンク支持構造。
【請求項7】
浮力により水上に支持される本体部と、該本体部の推進又は付属装置の駆動に使用される燃料を収容する燃料タンクと、前記本体部に形成され前記燃料タンクを収容する収容部と、を有する浮体構造物において、
前記燃料タンクの支持構造は、請求項1〜請求項6のいずれかに記載の燃料タンク支持構造である、ことを特徴とする浮体構造物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−47048(P2013−47048A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−185937(P2011−185937)
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【出願人】(502422351)株式会社アイ・エイチ・アイ マリンユナイテッド (159)
【Fターム(参考)】