説明

燃料タンク構造

【課題】燃料タンク内の燃料が少ない状態で偏在しても、燃料量を検出をより正確に行うことが可能な燃料タンク構造を得る。
【解決手段】燃料タンク14内には、底面14Bに沿って底面静電容量センサ部24が配置される。さらに、上下方向には、上下静電容量センサ部26が配置される。底面静電容量センサ部24及び上下静電容量センサ部26による燃料有無の検知結果に基づいて、燃料量を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料タンク構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の燃料タンクでは、収容された燃料が傾斜したときでも、燃料量を正確に検出することが望まれる。たとえば特許文献1には、タンク内に3個のレベルセンサーを設け、これらのレベルセンサーによって検出されたタンク内の液体のレベルに基づいて、タンク内の液体の量を測定する装置が記載されている。
【0003】
しかし、特許文献1の構造では、燃料タンク内の燃料が少ない状態で傾斜等により偏在し、燃料が一部のレベルセンサーに対し非接触になった場合には、正確な燃料量の検出が難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平1−138422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、燃料タンク内の燃料が少ない状態で偏在しても、燃料量の検出をより正確に行うことが可能な燃料タンク構造と、この燃料タンク構造を備えた燃料量検出装置を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明では、内部に燃料を収容可能な燃料タンクと、前記燃料タンクの底面に配置され底面での燃料の接触範囲に応じて底面対応信号を出力する底面センサと、前記燃料タンクの上下方向の燃料の液面高さに応じた上下対応信号を出力する上下センサと、を有する。
【0007】
この燃料タンク構造では、燃料タンク内の燃料が少ない状態で偏在しても、底面において燃料が底面センサに接触し、その接触範囲に応じて、底面センサが底面対応信号を出力する。また、上下センサが、燃料の接触範囲に応じて、上下対応信号を出力する。このように、上下センサだけでなく、底面センサによって、底面での燃料の接触範囲、すなわち燃料が存在している範囲が検知できる。このため、底面センサを有さない燃料タンク構造と比較して、燃料量をより正確に検出することができる。
【0008】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の発明において、前記底面センサが、前記燃料タンクの前記底面に沿って延在され燃料の前記接触範囲に応じた静電容量の変化に基づき前記底面対応信号を出力する底面静電容量センサである。
【0009】
底面センサとして、静電容量センサを用いることで、簡単な構造で複数箇所における燃料の有無を検知可能となる。
【0010】
請求項3に記載の発明では、請求項2に記載の発明において、前記底面静電容量センサが、前記燃料タンクを平面視したときの燃料タンク長手方向に沿って配置されている。
【0011】
燃料タンクの長手方向に沿って燃料が燃料タンク内を偏在すると、短手方向に沿って偏在した場合と比較して、燃料は上下センサに対し非接触になりやすい。したがって、底面静電容量センサを燃料タンクの長手方向に沿って配置することで、燃料が上下センサに対し非接触となった状態でも、底面において底面センサへの燃料の接触状態を維持しやすくなり、燃料量の正確な検出に寄与できる。
【0012】
請求項4に記載の発明では、請求項3に記載の発明において、前記上下センサが、前記底面静電容量センサの長手方向の両端部にそれぞれ配置されている。
【0013】
上下センサを、底面静電容量センサの長手方向の両端部に設置することで、燃料タンクの長手方向の両端部の近傍に、上下センサを(合計で少なくとも2つ)配置できる。
【0014】
請求項5に記載の発明では、請求項4に記載の発明において、前記上下センサが、上下方向に沿って延在され燃料の接触範囲に応じて静電容量の変化に基づき前記上下対応信号を出力する上下静電容量センサである。
【0015】
上下センサとして、静電容量センサを用いることで、簡単な構造で上下方向の液面高さを検知可能となる。
【0016】
請求項6に記載の発明では、請求項5に記載の発明において、前記上下静電容量センサが、前記底面静電容量センサと一体化されている。
【0017】
上下静電容量センサを底面静電容量センサと一体化することで、部品点数が少なくなる。また、上下静電容量センサを底面静電容量センサに対し位置決めする必要がなくなり、設置が容易になる。
【0018】
請求項7に記載の発明では、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の発明において、前記底面センサ及び前記上下センサの少なくとも一部が前記底面の周辺部分において燃料に接触可能に配置されている。
【0019】
燃料タンク内では、燃料タンクに対し燃料が相対的に傾斜して偏在すると、底面の中央部分よりも周辺部分により多く溜まる。したがって、底面センサ及び上下センサの少なくとも一部を底面の周辺部分において燃料に接触可能に配置することで、燃料をより確実に検知可能となる。特に、燃料傾斜時には、底面の角部に、より多くの燃料が溜まる可能性が高い。請求項8に記載のように、前記底面センサ及び前記上下センサの一部が前記底面の角部において燃料に接触可能に配置されていると、燃料をさらに確実に検知可能となる。
【0020】
請求項9に記載の発明では、請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の燃料タンク構造と、前記燃料タンク構造を構成する前記底面センサからの前記底面対応信号と、前記上下センサからの前記上下対応信号と、に基づいて前記燃料タンク内の燃料量を検出する燃料量検出手段と、を有する。
【0021】
この燃料量検出装置では、請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の燃料タンク構造を備えており、燃料量検出手段が、底面センサからの底面対応信号と、上下センサからの上下対応信号と、に基づいて燃料タンク内の燃料量を検出する。上下センサだけでなく、底面センサによって、底面での燃料の接触範囲が検知できるので、燃料量をより正確に検出することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明は上記構成としたので、燃料タンク内の燃料が少ない状態で偏在しても、燃料量の検出をより正確に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】(A)は本発明の第1実施形態の燃料タンク構造を燃料タンクの長手方向に沿った断面で示す断面図であり、(B)はこの燃料タンク構造に用いられる静電容量センサユニットを折り曲げ前の状態で示す平面図である。
【図2】本発明の第1実施形態の燃料タンク構造を燃料タンクの水平方向に沿った断面で示す断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態の燃料量検出装置を示すブロック図である。
【図4】本発明の第1実施形態の燃料タンク構造において燃料用を判定する制御を示すフローチャートである。
【図5】本発明の第1実施形態の燃料タンク構造において燃料用を判定する際に用いる燃料量判定用マップの例である。
【図6】本発明の第1実施形態の燃料タンク構造において燃料用を判定する際に用いる燃料量判定用マップの例である。
【図7】本発明の第1実施形態の燃料タンク構造において燃料用を判定する際に用いる燃料量判定用マップの例である。
【図8】本発明の第1実施形態の燃料タンク構造において燃料タンクの長手方向に沿った断面で示す燃料傾斜状態の断面図である。
【図9】本発明の第1実施形態の燃料タンク構造において燃料タンクの長手方向に沿った断面で示す燃料傾斜状態の断面図である。
【図10】本発明の第2実施形態の燃料タンク構造を燃料タンクの水平方向に沿った断面で示す断面図である。
【図11】本発明の第3実施形態の燃料タンク構造を燃料タンクの水平方向に沿った断面で示す断面図である。
【図12】本発明の第4実施形態の燃料タンク構造を燃料タンクの水平方向に沿った断面で示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1(A)及び図2には、本発明の第1実施形態の燃料タンク構造12が示されている。また、図1(B)には、燃料タンク構造12に用いられる静電容量センサユニット22が示されている。さらに、図3には、燃料タンク構造12を備えた燃料量検出装置40の一例がブロック図として示されている。図面において、車両前方を矢印FRで、車幅方向を矢印Wで、上方を矢印UPでそれぞれ示す。
【0025】
この燃料タンク構造12は、内部にFE(図8等参照)を収容可能な燃料タンク14を有している。燃料タンク14は、全体として略直方体の箱状に形成されている。本実施形態では特に、図2から分かるように、平面視にて、車幅方向(矢印W方向)が燃料タンク14の長手方向となるように、図示しない車体に搭載されている。ただし、燃料タンク14の配置方向は特に限定されない。
【0026】
燃料タンク14の上壁14Uの略中央には、挿入口16が形成されている。挿入口16からは、燃料タンク14内の燃料を図示しないエンジンに送出するための燃料ポンプユニット(図示省略)等の機器類を挿入することができる。挿入口16は、燃料タンク14の外側から蓋部材18で閉塞される。本実施形態では特に、挿入口16の外周面に雄ネジが形成されている。また、蓋部材18の内周面には雌ネジが形成されている。この雌ネジを雄ネジにねじ込むことで、蓋部材18を挿入口16の密閉状態で装着できる。
【0027】
挿入口16の周囲では、上壁14Uを下方に凹ませることにより、凹部20が形成されている。この凹部20を形成したことで、挿入口16に装着された蓋部材18は、上壁14Uから上方に突出しない、もしくは突出量が少なくなる構造とされている。相対的に、上壁14Uを、車体の図示しないフロアパネルに接近させ、燃料タンク14の容量を大きく確保することが可能な構造になっている。
【0028】
燃料タンク14内に配置される静電容量センサユニット22は、側方(本実施形態では車両前方側)から見て、扁平なU字状に形成されており、底面静電容量センサ部24と、その長手方向両端から略垂直に立ち上げられた2つの上下静電容量センサ部26とを有している。以下では、必要に応じて、2つの上下静電容量センサ部を26A、26Bとして区別する。
【0029】
静電容量センサユニット22は、樹脂フィルム等の折り曲げ可能な絶縁体によって、全体として長尺状に形成されたベース28を有している。ベース28の表面には複数の電極30がベース28の長手方向にそって一定間隔で配置されている。複数の電極30のうち、燃料と接している部分と接していない部分とでは、静電容量の値が異なる。この静電容量の値の違いを用いて、静電容量センサユニット22における燃料の接触範囲の広狭に応じた信号を出力できる。
【0030】
本実施形態では、図1(B)に示すように、静電容量センサユニット22として、底面静電容量センサ部24と2つの上下静電容量センサ部26A、26Bとを一体的な板状に形成している。そして、折り曲げ部34によって折り曲げることで、全体的に扁平な略U字状としている。
【0031】
静電容量センサユニット22の端部には、端子32が設けられている。端子32は、図示しない制御装置と電気的に接続されている。図3に示すように、底面静電容量センサ部24からの信号(底面対応信号)と、上下静電容量センサ部26A、26Bからの信号(上下対応信号)とが、図3に示すように、本発明に燃料量検出手段の一例である制御装置36に送られる。
【0032】
制御装置36は、後述するように、制御装置36によって検出された燃料量の情報を、たとえば車両のインストルメントパネルに設けられた表示装置38に対し出力することができる。なお、制御装置36は、燃料タンク14に備えられていてもよいが、車両(燃料タンク14以外の部位)に備えられていてもよい。
【0033】
図1(A)に示すように、底面静電容量センサ部24は、燃料タンク14の底面14Bに沿って配置されている。特に本実施形態では、図2から分かるように、燃料タンク14を平面視したときの長手方向に平行で、短手方向の略中央に位置するように、底面静電容量センサ部24が配置されている。
【0034】
底面静電容量センサ部24の長さは、燃料タンク14の長手方向の内寸よりもわずかに短い程度とされている。したがって、底面静電容量センサ部24の両端部が、燃料タンク14の長手方向の両端部14Pの近傍に位置している。そして、上下静電容量センサ部26A、26Bのそれぞれの下部も、燃料タンク14の長手方向の両端部14Pの近傍に位置している。この両端部14Pの近傍から、上下静電容量センサ部26A、26Bがそれぞれ略垂直に立ち上がった構造となっている。換言すれば、底面静電容量センサ部24及び上下静電容量センサ部26A、26Bが、燃料タンク14を平面視したときの周辺部分において、燃料の有無を検知可能に配置されている。
【0035】
次に、本実施形態の燃料タンク構造12及び燃料量検出装置40の作用を説明する。
【0036】
図4には、本発明の燃料タンク構造12の燃料量を検出するための制御フローの一例が示されている。また、図5〜図7には、この制御フローにおいて燃料量の判定のために用いられる燃料量判定用マップ(マップA、マップB及びマップC)がそれぞれ示されている。この制御は、図3に示す制御装置36によって行われる。
【0037】
以下では、底面静電容量センサ部24によって検知された燃料の(接触範囲の)割合を検知状態S3、上下静電容量センサ部26A、26Bによって検知された燃料の(接触範囲の)割合をそれぞれ検知状態S1、検知状態S2とする。ここでいう「燃料の(接触範囲の)割合」とは、底面静電容量センサ部24及び上下静電容量センサ部26A、26Bのそれぞれにおいて、燃料が接触している(燃料を検知している)電極の割合を示す。したがって、たとえば、底面静電容量センサ部24において、電極30の全範囲で燃料が検知された場合(全浸漬)は、S3の数値は1であり、燃料が全く検知されていない場合は、S3の数値は0(ゼロ)となる。上下静電容量センサ部26A、26Bの検知状態S1、S2についても同様である。この燃料の接触範囲に応じた信号が、それぞれ、底面対応信号あるいは上下対応信号として、制御装置36に送られる。
【0038】
また、図4では、底面静電容量センサ部24を「底面センサ」と略記し、上下静電容量センサ部26A、26Bを「上下センサ」と略記している。なお、図5において、燃料タンク14は一例として、満タン時に60リットルの燃料を貯留するものとしている。
【0039】
この燃料タンク構造12における燃料量検出の制御フローでは、まず、ステップS102において、底面静電容量センサ部24における検知状態を読み込む。そして、ステップS104において、底面静電容量センサ部24が全浸漬か否かを判断する。
【0040】
ここで、全浸漬と判断された場合は、たとえば図8に示すように、上下静電容量センサ部26A、26Bの双方に燃料が接触している(ただし、液面FLは水平であってもよいし、図8に示すように傾斜していてもよい)と考えられる。そこで、ステップS106に移行し、上下静電容量センサ部26A、26Bでの検知状態をそれぞれ読み込む。そして、ステップS108において、マップAに基づき、燃料タンク14内の燃料量を判定する。
【0041】
マップAでは、横軸に一方の上下静電容量センサ部26Aの検知状態S1を、縦軸に他方の上下静電容量センサ部26Bでの検知状態S2をとっている(ただし、縦軸と横軸の関係は相対的であるため、S1とS2とが入れ代わっていてもよい)。
【0042】
このマップAにおいて、S1=S2の場合は、燃料FEの液面FLが底面14Bに対し平行であるとみなせるので、矢印F1で示すようにS1(又はS2)の値に基づき、燃料量を判定できる。
【0043】
また、S1≠S2の場合は、図8に示すように、燃料FEの液面FLが底面14Bに対し傾斜している。したがって、S1とS2の値に基づいて、マップAから燃料量を判定できる。図5のマップAでは例として、図8における右下がり、あるいは左下がりで10度傾斜した場合を挙げている。
【0044】
これに対し、ステップS104において、全浸漬でないと判断された場合には、図9に示すように、燃料タンク14内の燃料量が少ない状態で、燃料FEの液面FLが底面14Bに対し傾斜し、上下静電容量センサ部26A、26Bのいずれか一方に対しては、燃料が非接触になっていると考えられる。そこで、ステップS110では、まず、上下静電容量センサ部26A、26Bでの検知状態を読み込む。その後、ステップS112において、S1とS2のいずれが0(ゼロ)となっているか、を判定する。
【0045】
S2=0と判断された場合は、ステップS114において、マップBに基づき燃料タンク14内の燃料量を判定する。
【0046】
マップBでは、横軸に底面静電容量センサ部24での検知状態S3をとり、縦軸に、上下静電容量センサ部26Aでの検知状態S1をとっている。換言すれば、このようにS3とS1とを併用することで、マップBに基づき、燃料量の検出が可能となっている。たとえば、S1=1の場合は、上下静電容量センサ部26Aの全範囲において燃料が接触しているため、図6に矢印F3で示すように、S3の値に基づいて燃料量を判定できる。これに対し、S1とS3のいずれもが1でない場合でも、たとえば矢印F2で示すように、これらS1とS3の値に基づいて、燃料量を判定できる。
【0047】
このように、本実施形態の燃料タンク構造12では、上下静電容量センサ部26A、26Bによる検知状態S1、S2に加えて、底面静電容量センサ部24による検知状態S3を用いており、燃料タンク14内の燃料FEが少ない状態で偏在しても、より正確な燃料量の判定(検出)が可能になっている。
【0048】
すなわち、底面静電容量センサ部24がない構成では、図9に実線で示す液面FLと、二点鎖線で示す液面FL’のいずれであっても、上下静電容量センサ部26Aでの検知状態S1は同じ値となるため、液面FLのときの燃料量と液面FL’のときの燃料量との区別が原理的に出来ない。これに対し、本実施形態では、底面静電容量センサ部24による検知状態S3を併用しているため、液面FLのときの燃料量と液面FL’のときの燃料量との区別が可能であり、正確な燃料用の検出ができる。
【0049】
なお、ステップS112において、S1=0と判断された場合は、ステップS116において、マップCに基づき、燃料タンク14内の燃料量を判定する。このマップCは、マップBにおいて、縦軸を上下静電容量センサ部26Bでの検知状態S2に置き換えている(燃料タンク14内で模式的に示した液面FLの傾斜方向もマップBとは反対になっている)が、本質的には、マップBと同様である。
【0050】
図10には、本発明の第2実施形態の燃料タンク構造52が水平方向の断面図にて示されている。なお、以下の各実施形態において、第1実施形態と同一の構成要素、部材等については同一符号を付して、詳細な説明を省略する。また、燃料量検出装置の構成も、第1実施形態と略同一であるので、説明を省略する。
【0051】
この燃料タンク構造52では、第1実施形態の底面静電容量センサ部24が、長手方向の中央で分割されている。そして、分割部分の隙間を通るように、底面静電容量センサ部54が燃料タンク14の底面14Bに沿って配置されている。底面静電容量センサ部54は、燃料タンク14を平面視したときの短手方向に沿って、且つ長手方向の中央に配置されている。
【0052】
底面静電容量センサ部54の両端のそれぞれからは、略垂直上方に立て上げられた上下静電容量センサ部56が設けられている。第1実施形態と同様に、底面静電容量センサ部24と、その両端部の2つの上下静電容量センサ部56とは一体成形されており、全体として扁平な略U字状の静電容量センサユニット22が構成されている。
【0053】
したがって、第2実施形態の燃料タンク構造52では、第1実施形態の燃料タンク構造12に加えて、実質的に、燃料タンク14の短手方向に沿った底面静電容量センサ部54が追加され、さらに、短手方向の両端部14Qの近傍から、上下静電容量センサ部56がそれぞれ略垂直に立ち上がった構造となっている。
【0054】
このため、第1実施形態の燃料タンク構造12と同様に、燃料タンク14内で燃料が長手方向に傾斜し偏在した場合に燃料量をより正確に判定できるが、加えて、燃料タンク14内で燃料が短手方向に傾斜し偏在した場合でも、燃料量をより正確に判定することが可能である。
【0055】
なお、第2実施形態において、長手方向の底面静電容量センサ部24は分割せず、且つ、短手方向の底面静電容量センサ部54を中央で分割し、この分割部分の隙間に、長手方向の底面静電容量センサ部24が通る構造としてもよい。
【0056】
図11には、本発明の第3実施形態の燃料タンク構造62が水平方向の断面図にて示されている。
【0057】
この燃料タンク構造62では、燃料タンク14を平面視したとき、長手方向の辺(長辺14N)のそれぞれに沿って2本の底面静電容量センサ部64が配置されている。さらに、短手方向の辺(短辺14M)のそれぞれに沿って、2本の底面静電容量センサ部68が配置されている。底面静電容量センサ部68のそれぞれの両端部には、略垂直上方に立て上げられた上下静電容量センサ部66が設けられている。合計で4つの上下静電容量センサ部66は、燃料タンク14を平面視したとこの角部14Cの近傍にそれぞれ1つずつ配置されていることになる。
【0058】
なお、これに対し、長手方向の底面静電容量センサ部64の両端部からは上下静電容量センサ部は設けられていない。
【0059】
このような構成とされた第3実施形態の燃料タンク構造62においても、第2実施形態の燃料タンク構造52と同様に、燃料タンク14内で燃料が長手方向及び短手方向のいずれに傾斜し偏在した場合でも、燃料用をより正確に判定することが可能である。
【0060】
特に、燃料タンク14に対する燃料の傾斜方向は、車両前後方向(前方又は後方)と、車幅方向(右方又は左方)の成分を合成した方向(斜め方向)であることが多い。そして、この場合、平面視したときの特定の角部14Cに、相対的に多くの燃料が溜まる。第3実施形態では、4つの上下静電容量センサ部66のいずれかが、燃料タンク14の角部14Cの近傍にそれぞれ1つずつ配置されている。このため、角部14Cのいずれかに多く溜まった燃料の高さを検知できる。すなわち、燃料タンク14内で燃料がいずれかの角部14Cに相対的に多く溜まる特性を利用して、燃料量をより正確に判定することが可能である。
【0061】
なお、図11では、燃料タンク14の短手方向に沿った底面静電容量センサ部68の両端部に上下静電容量センサ部66が設けられた構造としているが、長手方向に沿った底面静電容量センサ部64の両端部かに上下静電容量センサ部66C、66D、66E、66Fが設けられた構造でもよい。
【0062】
図12には、本発明の第4実施形態の燃料タンク構造72が水平方向の断面図にて示されている。
【0063】
第4実施形態では、燃料タンク14を平面視したときの、2本の対角線に沿って、底面静電容量センサ部74A、74Bが配置されている。一方の底面静電容量センサ部74Aは長手方向に連続しているが、他方の底面静電容量センサ部74Bは中央で分割されている。この分割部分の隙間に、底面静電容量センサ部74Aが通る構造とされている。
【0064】
それぞれの底面静電容量センサ部74A、74Bの両端部からは、略垂直上方に立て上げられた上下静電容量センサ部76が設けられている。すなわち、第4実施形態においても、合計で4つの上下静電容量センサ部76は、燃料タンク14を平面視したときの角部14Cの近傍にそれぞれ1つずつ配置されていることになる。
【0065】
したがって、第4実施形態の燃料タンク構造72においても、第3実施形態の燃料タンク構造62と同様に、燃料タンク14内で燃料が長手方向及び短手方向のいずれに傾斜し偏在した場合でも、燃料用をより正確に判定することが可能である。
【0066】
また、角部14Cのいずれかに多く溜まった燃料の高さを検知できるので、燃料量をより正確に判定することが可能である。
【0067】
なお、第3実施形態の燃料タンク構造62や、第4実施形態の燃料タンク構造72において、上下静電容量センサ部66、76は、燃料タンク14の底面に対し垂直に配置されている必要はない。すなわち、燃料は、角部14Cにおいて下部に溜まるため、少なくとも上下静電容量センサ部66、76の下部が角部14Cの近傍に位置している(換言すれば、上下静電容量センサ部66、76の上部が燃料タンク14の中央に位置するように、上下静電容量センサ部66、76が燃料タンク14の底面14Bに対し傾いている)構成でもよい。
【0068】
上記では、底面静電容量センサ部と上下静電容量センサ部とが一体化された構造のものを上げているが、各実施形態において、底面静電容量センサ部と上下静電容量センサ部とは別体とされていてもよい。ただし、底面静電容量センサ部と上下静電容量センサ部とを一体化すると、部品点数が少なくなる。また、底面静電容量センサ部を燃料タンク14の所定位置に配置すれば、上下静電容量センサ部も所定位置に配置できる。上下静電容量センサ部を燃料タンク14に対し位置決めする必要がなくなり、設置が容易になる。
【0069】
上記では、本発明の「底面センサ」及び「上下センサ」として、いずいれも燃料の有無(接触状態)による静電容量の違いを利用したセンサ(静電容量センサ)を用いた例を挙げたが、このように、燃料の有無を検知できれば、底面センサ及び上下センサは、静電容量センサに限定されない。たとえば、レーザ光や超音波等を用いて燃料有無あるいは液面高さを検知するセンサであってもよい。
【0070】
ただし、「底面センサ」については、燃料タンク14の底面14Bに沿った複数箇所において燃料が存在しているか否かを検知する必要があるため、静電容量センサを用いると、この燃料の検知が簡単かつ低コストな構造で実現できる。また、静電容量センサは、検出の精度や応答性も高いので、本発明の「底面センサ」として、好ましく適用できる。
【0071】
これに対し、「上下センサ」については、たとえば、FEの液面FLにフロートを浮遊させてその高さを検知するセンサ(フロート式レベルセンサ)を用いることも可能である。もちろん、上下センサとしても、静電容量センサを用いると、燃料の液面高さの検知が簡単かつ低コストな構造で実現できる。
【0072】
本発明の「上下センサ」としては、複数である必要はなく、1つでもよい。この場合、燃料タンク14の傾斜に対する方向依存性を少なくする(好ましくは方向依存性を無くす)観点からは、燃料タンク14を平面視したときの中央に設置することが好ましい。ただし、前述したように、燃料タンク14の中央には燃料ポンプ等の部材が配置されていることが多く、また、このような部材を避けた位置であっても、内寸の高さが低く、上下センサの設置が困難であることも多い。また、燃料タンク14内において燃料FEが傾斜したときには、平面視したときの周辺部分、特に角部14Cに溜まりやすいことを考慮すると、複数の上下センサを、その一部が周辺部分、さらには角部14Cに存在するように配置することが好ましい。
【符号の説明】
【0073】
12 燃料タンク構造
14 燃料タンク
14B 底面
14C 角部
14N 長辺(周辺部分)
14M 短辺(周辺部分)
22 静電容量センサユニット
24 底面静電容量センサ部(底面センサ)
26A、26B 上下静電容量センサ部(上下センサ)
28 ベース
30 電極
36 制御装置
40 燃料量検出装置
52 燃料タンク構造
54 底面静電容量センサ部(底面センサ)
56 上下静電容量センサ部(上下センサ)
62 燃料タンク構造
64 底面静電容量センサ部(底面センサ)
66 上下静電容量センサ部(上下センサ)
72 燃料タンク構造
74A、74B 底面静電容量センサ部(底面センサ)
76 上下静電容量センサ部(上下センサ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に燃料を収容可能な燃料タンクと、
前記燃料タンクの底面に配置され底面での燃料の接触範囲に応じて底面対応信号を出力する底面センサと、
前記燃料タンクの上下方向の燃料の液面高さに応じた上下対応信号を出力する上下センサと、
を有する燃料タンク構造。
【請求項2】
前記底面センサが、前記燃料タンクの前記底面に沿って延在され燃料の前記接触範囲に応じた静電容量の変化に基づき前記底面対応信号を出力する底面静電容量センサである請求項1に記載の燃料タンク構造。
【請求項3】
前記底面静電容量センサが、前記燃料タンクを平面視したときの燃料タンク長手方向に沿って配置されている請求項2に記載の燃料タンク構造。
【請求項4】
前記上下センサが、前記底面静電容量センサの長手方向の両端部にそれぞれ配置されている請求項3に記載の燃料タンク構造。
【請求項5】
前記上下センサが、上下方向に沿って延在され燃料の接触範囲に応じて静電容量の変化に基づき前記上下対応信号を出力する上下静電容量センサである請求項4に記載の燃料タンク構造。
【請求項6】
前記上下静電容量センサが、前記底面静電容量センサと一体化されている請求項5に記載の燃料タンク構造。
【請求項7】
前記底面センサ及び前記上下センサの少なくとも一部が前記底面の周辺部分において燃料に接触可能に配置されている請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の燃料タンク構造。
【請求項8】
前記底面センサ及び前記上下センサの一部が前記底面の角部において燃料に接触可能に配置されている請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の燃料タンク構造。
【請求項9】
請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の燃料タンク構造と、
前記燃料タンク構造を構成する前記底面センサからの前記底面対応信号と、前記上下センサからの前記上下対応信号と、に基づいて前記燃料タンク内の燃料量を検出する燃料量検出手段と、
を有する燃料量検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−245911(P2012−245911A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−120002(P2011−120002)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】