説明

燃料タンク用溶着部品

【課題】燃料タンク用溶着部品は、コネクタ10の傾斜によってもシール性の低下を簡単な構成で防止する。
【解決手段】燃料タンク用溶着部品40は、内部に燃料タンクFTを外部と接続する接続通路46aを有する接続部46と、該接続部46から径外方へ突出するカバー部44とを備えている。接続部46は、その外周部にコネクタ10(外部管体)に対して抜け止めするための係止部46bが環状に突設され、該係止部46bより先端側にシール部材17が弾接するシール面46cを備えている。シール面46cよりカバー部44側の接続部46には、曲げ可能な凹状の可撓部46dが全周にわたって形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料タンクのタンク壁に溶着され、燃料タンク内と外部とを接続する接続通路を有する燃料タンク用溶着部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の燃料タンク用溶着部品として特許文献1の技術が知られている。図8に示すように、燃料タンク用溶着部品140は、内部に燃料タンクFTを外部と接続する接続通路146aを有する接続部146と、該接続部146から径外方へ突出するカバー部144とを備え、該カバー部144で燃料タンクFTのタンク開口FTcを覆い、該カバー部144の外端の下面(溶着部144a)及びタンク開口FTcの周縁部とを熱溶着することにより、燃料タンクFTを外部通路に接続している。そして、接続部146には蛇腹管130が圧入されたコネクタ本体112が接続され、その間をシール部材117でシールすると共に固定部材120で燃料タンク用溶着部品140とコネクタ110を抜け止めしている。
しかし、一般にシール部材117は定寸圧縮されている為、図9のように蛇腹管130に力が加わり、コネクタ110が接続部146に対して傾くと、シール部材117が周方向で圧縮のされ方が異なることや接続部146が楕円変形して、シール部材117の圧縮率が変わってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−293324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記従来技術の問題を解決するものであり、コネクタ(外部管体)が傾斜しても、接続部とコネクタとの間に介在するシール部材で確実にシールする締結構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、燃料タンクのタンク開口の全周縁部に溶着される溶着部を有するカバー部と、該カバー部から突出した筒状の接続部と、を有する燃料タンク用溶着部品であって、上記接続部は、該接続部と締結する外部管体との間をシールするシール部材が弾接するシール面を有し、該シール面よりカバー部側の接続部に、曲げ可能な凹状の可撓部を全周にわたって形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
燃料タンク用溶着部品40は、内部に燃料タンクFTを外部と接続する接続通路46aを有する接続部46と、該接続部46から径外方へ突出するカバー部44とで構成され、接続部46の外周にはコネクタ10を抜け止めする係止部46bが形成されている。係止部46bより先端側にはシール部材17が弾接するシール面46cが形成され、該シール面46cよりカバー44側の接続部46には、凹状の可撓部46dが全周にわたり形成されている。この為、外力により接続部46に締結するコネクタ10が傾斜しても、接続部46も追従して傾斜し、シール部材17はコネクタ本体12の挿入孔16や接続部46のシール面46cに弾接した状態を維持でき、確実にシールすることができる。また、シール部材17の圧縮率がほぼ均等に維持され、均一シールとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の一実施例にかかる自動車の燃料タンクの上部に取り付けられた燃料タンク用溶着部品とコネクタ(外部管体)とが接続された状態を示す断面図である。
【図2】図1の2−2線に沿った断面図である。
【図3】各構成部品を分解した断面図である。
【図4】燃料タンク溶着部品を固定部材で固定する作業を説明する図である。
【図5】燃料タンクの上部に取り付けられた燃料タンク溶着部品を示す斜視図である。
【図6】図1のコネクタが傾斜した状態を説明する図である。
【図7】燃料タンク用溶着部品の別の態様の断面図である。
【図8】従来の燃料タンク用溶着部品とコネクタとが接続された状態を示す断面図である。
【図9】図8のコネクタが傾斜した状態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以上説明した本発明の構成・作用を一層明らかにするために、以下本発明の好適な実施例について説明する。
【実施例1】
【0009】
図1は本発明の一実施例にかかる自動車の燃料タンクの上部に取り付けられた燃料タンク用溶着部品40と蛇腹管30が圧入されたコネクタ10(外部管体)とが接続された状態を示す断面図である。図2は図1の2−2線に沿った断面図、図3は各構成部品の分解した断面図である。また、図5は燃料タンクの上部に取り付けられた燃料タンク溶着部品を示す斜視図である。コネクタ10は、自動車の燃料供給管等に使用されるものである。
【0010】
(1)燃料タンク用溶着部品40の構成
図1において、燃料タンクFTは、その表面がポリエチレンを含む複合樹脂材料から形成されており、ブロー成形方法により形成されている。燃料タンク用溶着部品40は、燃料タンクFTのタンク開口FTcを塞ぐとともに、蛇腹管30が圧入されたコネクタ10に接続するための継手であり、外部への通気路やインレットパイプなどの燃料供給路として用いられる。
【0011】
図3は燃料タンク用溶着部品40を燃料タンクFTに溶着する前の状態を示す断面図である。図3において、燃料タンク用溶着部品40は、内部に燃料タンクFTを外部と接続する接続通路46aを有する接続部46と、該接続部46から径外方へ突出するカバー部44とを備えている。カバー部44の外端の下部は、燃料タンクFTのタンク開口FTcの全周縁部にシールした状態で溶着される溶着部44aとなっている。接続部46は、外周部にコネクタ10(外部管体)に対して抜け止めするための係止部46bが環状に突設されている。また、接続部46の係止部46bより先端の外周面は、後述するシール部材17が弾接するシール面46cになっており、シール面46cよりカバー部44側の接続部46には、曲げ可能な凹状の可撓部46dが全周にわたって形成されている(図5参照)。
【0012】
(2)コネクタ10
コネクタ10は、コネクタ本体12と、シール部材17と、スペーサ18と、固定部材20とを備えている。
【0013】
コネクタ本体12は、環状の筒体であり、その外周面にニップル14が形成されている。ニップル14の外周面には、蛇腹管30を抜止めするための係止突部14aが2列にわたって環状に突設され、さらに蛇腹管30の端部に係合する環状凹所14bが形成されている。
【0014】
また、コネクタ本体12には、燃料タンク用溶着部品40の接続部46へ挿入するための挿入孔16が形成されている。挿入孔16は、蛇腹管30に連通している。挿入孔16と接続部46のシール面46cとの間には、シール部材17,17及びスペーサ18,18が介挿されている。シール部材17,17は、Oリングから形成され、挿入孔16の内周面及びシール面46cに対してシールしている。スペーサ18,18は、シール部材17,17の側面に当たって該シール部材17,17のがたつきを防止している。また、コネクタ本体12の挿入孔16における図示右側の開口には、ストッパ12bが突設されている。このストッパ12bは、シール部材17の移動を規制するものである。コネクタ本体12には、周方向に沿って5カ所の係止用スリット12aが形成されている(図2参照)。
【0015】
また、コネクタ10の外周には、固定部材20が保持されている。図4は固定部材20で燃料タンク用溶着部品40を固定する作業を説明する説明図である。図2および図4に示すように、固定部材20は、コネクタ本体12の外周面に装着されるC字形状の抜止本体22と、抜止本体22の内周側から5カ所突設された係止爪24を備えている。各係止爪24は、各係止用スリット12aに挿入されるように形成されている。
【0016】
(3)蛇腹管30
図3において、蛇腹管30は、蛇腹部32と、蛇腹部32の端部に形成された接続直管34とを備え、これらを一体成形している。蛇腹部32は、山部32aと、谷部32bとを連続して形成され、軸方向に可撓性を有している。接続直管34は、蛇腹部32の山部32aとほぼ同じ外径で延設された直管に形成されている。この接続直管34の内径は、ニップルの外径とほぼ同じか、わずかに小さく形成されており、ニップル14に圧入されたときにシールされるように形成されている。蛇腹管30は、ゴムまたは樹脂材料を用いることができる。樹脂材料の場合には、例えば、ナイロン12(PA12)またはポリフェニレンサルファイド(PPS)を単層で用いて、あるいはPPSを内層に、PA12を外層にして用いて形成することができる。
【0017】
(4)燃料タンク用溶着部品40の溶着作業
次に燃料タンク用溶着部品40を燃料タンクFTのタンク上壁に溶着する作業について説明する。図3において、燃料タンク用溶着部品40の溶着部44aを熱板(図示省略)により溶融するとともに、燃料タンクFTのタンク開口FTcの周囲に沿って熱板(図示省略)により溶融して溶着面FTdとする。溶着面FTdに溶着部44aを溶着面FTdに押しつける。これにより、溶着部44aと溶着面FTdとが共にオレフィン系の樹脂材料で形成されているので、冷却固化すると両者が互いに溶着する。
【0018】
(5)コネクタ10の接続作業
コネクタ10に蛇腹管30を接続するには、コネクタ本体12のニップル14に蛇腹管30の接続直管34を圧入する。このとき、接続直管34は、弾性変形してニップル14の係止突部14aに沿った形状で抜止めされる。この場合において、接続直管34を予め熱変形温度以下に加熱しておくことで、圧入作業が容易になる。
【0019】
次に、コネクタ10を燃料タンク用溶着部品40に装着するには、挿入孔16内にシール部材17,17およびスペーサ18,18を装着し、その後、燃料タンク用溶着部品40の接続部46へコネクタ10を挿入する。このとき、係止部46bの一端がスペーサ18に当たって、その移動が規制される。続いて、固定部材20は、コネクタ本体12に外装するとともに、係止爪24を、係止用スリット12aを介して挿入する。このとき、接続部46の係止部46bの他端側に当たってコネクタ10を位置決めする。
【0020】
(3)燃料タンク用溶着部品40の作用・効果
上記のように燃料タンク用溶着部品40の接続部46の根元には、可撓部46dが形成されている。図6のように蛇腹管30に力が加わり、コネクタ10が傾斜した場合、接続部46の可撓部46dで屈曲して、接続部46はコネクタ10に追従して傾斜する。この為、シール部材17はコネクタ本体12の挿入孔16や接続部46のシール面46cに弾接した状態を維持でき、確実にシールすることができる。また、シール部材17の圧縮率がほぼ均等に維持され、均一シールとすることができる。
【0021】
なお、この発明は上記実施例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。図7に示すように、燃料タンク用溶着部品40Bは、カバー部44Bの外層を燃料タンクFTに溶着可能なマレイン酸変性ポリエチレン樹脂で形成し、接続部46Bとカバー部44Bの内層を耐燃料透過性に優れ且つ変性ポリエチレン樹脂に反応接着可能なポリアミドで形成されている。接続部46Bの外周部には、コネクタ10B(図示せず)が係止する係止部46Bbが形成され、該係止部46Bbよりカバー部44Bの間には曲げ可能な凹状の可撓部46Bdが全周に形成されている。この構成によっても、接続部46Bは追従して傾斜できる為、シール性を確保できる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明の燃料タンク用溶着部品は、例えば満タン規制バルブやロールオーバーバルブなどの燃料遮断弁、燃料タンクの燃料蒸気を循環させる循環ラインなどに適用できる。
【符号の説明】
【0023】
10…コネクタ(外部管体)
12…コネクタ本体
12a…係止用スリット
12b…ストッパ
14…ニップル
14a…係止突部
14b…環状凹所
16…パイプ挿入孔
17…シール部材
18…スペーサ
20…固定部材
22…抜止本体
24…係止爪
30…蛇腹管
32…蛇腹部
32a…山部
32b…谷部
34…接続直管
40…燃料タンク用溶着部品
44…カバー部
44a…溶着部
46…接続部
46a…接続通路
46b…係止部
46c…シール面
46d…可撓部
FT…燃料タンク
FTc…タンク開口
FTd…溶着面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンク(FT)のタンク開口(FTc)の全周縁部に溶着される溶着部(44a)を有するカバー部(44)と、該カバー部(44)から突出した筒状の接続部(46)と、を有する燃料タンク用溶着部品(40)であって、
上記接続部(46)は、該接続部(46)と締結する外部管体(10)との間をシールするシール部材(17)が弾接するシール面(46c)を有し、
該シール面(46c)よりカバー部(44)側の接続部(46)に、曲げ可能な凹状の可撓部(46d)を全周にわたって形成したこと特徴とする燃料タンク用溶着部品

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−228481(P2010−228481A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−75408(P2009−75408)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】