説明

燃料タンク

【課題】燃料タンクのロアシェル部にサブタンクを一体的に形成し、フューエルポンプユニットの取付け、取外しが容易で、燃料送出に優れた燃料タンクを提供するものである。
【解決手段】分割して別々に成形されたアッパーシェル部とロアシェル部が融合された熱可塑性合成樹脂製の燃料タンクにおいて、サブタンク30をロアシェル部20と一体的に形成し、サブタンク30内に燃料を送出するフューエルポンプユニット40を着脱自在に取付けた。フューエルポンプユニット40は、少なくともフューエルポンプ43と、ユニットケーシング47とを有する。ユニットケーシング47は、ユニットケーシング上部47aにフューエルポンプ43を収納し、ユニットケーシング下部47bはユニットケーシング上部よりも横方向に広げて空間を有するように形成し、ユニットケーシング下部を覆うようにフィルタ52を着脱可能に取付けた燃料タンクである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フューエルポンプユニットが着脱自在に取付けられた、熱可塑性合成樹脂製の自動車用燃料タンクに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用燃料タンクは、燃料タンク内の燃料をエンジンに送出するフューエルポンプを含むフューエルポンプユニットが取付けられている。
このような燃料タンクは、従来、金属製のものが用いられていたが、近年車両の軽量化や、錆が発生しないこと、所望の形状に成形しやすいことなどによって熱可塑性樹脂製のものが用いられるようになってきた。
【0003】
この熱可塑性樹脂製の燃料タンクは、従来は、中空形状を作りやすいため、ブロー成形で成形されることが多い。しかし、ブロー成形の場合には、一度に中空状に形成するため、内部にフューエルポンプ等の部品を取付けることや、フューエルポンプユニット等を取り付けるための取付リブや補強リブを形成することが困難であった。
そのため、図9に示すように、燃料タンクの外壁にフューエルポンプユニット140を固定し、燃料タンクの外から着脱可能としていた(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
従って、フューエルポンプユニットの組付けを容易にするため、サブタンク、フューエルポンプ143、フィルタ141、142等を一体としたモジュール化している。しかしながら、モジュール化すると、修理、点検する場合に必要な部品のみを取出すことが困難である。さらに、フューエルポンプユニット140は、燃料タンクの上部壁に取付けられるため、サブタンクを常に燃料タンク1の下部壁に押付ける機構等が必要になり、構造が複雑になり、コストの上昇している。
【0005】
そこで、近年、合成樹脂製燃料タンクを上下に分割して、アッパーシェル部とロアシェル部を、それぞれ別に射出成形等により成形して、ロアシェル部にフューエルポンプユニット等を取付け、その後、そのアッパーシェル部とロアシェル部の接合周縁部を相互に溶着して燃料タンクを形成する方法も行われている(例えば、特許文献2及び特許文献3参照。)。
【0006】
この場合には、フューエルポンプユニットを取り付けるには、ロアシェル部にサブタンクを形成し、そのサブタンク内にフューエルポンプユニットを取り付けるために必要な取付リブを形成し、その取付リブに係止する。この場合に燃料タンク中の異物を取除くために、フューエルポンプユニットの下部の燃料吸入口にフィルタが取付けられている。
【0007】
しかしながら、フューエルポンプユニットの修理、点検時に取外しが必ずしも容易でなく、また、燃料吸入口の面積は充分大きくなく、フィルタにより燃料の流通抵抗が大きくなり、効率的ではなかった。
【特許文献1】特開2005−256741号公報
【特許文献2】特開平11−198933号公報
【特許文献3】米国特許6948511号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明は、燃料タンクのロアシェル部にサブタンクを一体的に形成し、フューエルポンプユニットの取付け、取外しが容易で、燃料送出に優れた燃料タンクを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために請求項1の本発明は、射出成形により分割して別々に成形されたアッパーシェル部とロアシェル部の接合周縁部が融合して一体に構成された熱可塑性合成樹脂製の燃料タンクにおいて、
ロアシェル部内に、サブタンクをロアシェル部と一体的に形成し、サブタンク内に燃料を送出するフューエルポンプユニットを着脱自在に取付け、
フューエルポンプユニットは、少なくともフューエルポンプと、ユニットケーシングとを有し、ユニットケーシングは、ユニットケーシング上部にフューエルポンプを収納し、ユニットケーシング下部はユニットケーシング上部よりも横方向に広げて空間を有するように形成し、ユニットケーシング下部を覆うようにフィルタを着脱可能に取付けた燃料タンクである。
【0010】
請求項1の本発明では、燃料タンクは、射出成形により分割して別々に成形された熱可塑性合成樹脂製のアッパーシェル部とロアシェル部の接合周縁部が融合して一体に構成されている。このため、アッパーシェル部とロアシェル部とを組み合わせて形成された燃料タンクは、寸法精度の高い精密な、かつ強度の高い製品を得ることができる。また、アッパーシェル部とロアシェル部の内部に部品取付部や、補強リブを形成することができ、内蔵部品等を取付けることも、燃料タンクの強度を向上させることも容易にできる。
【0011】
ロアシェル部内に、サブタンクをロアシェル部と一体的に形成したため、ロアシェル部を成形するときに同時にサブタンクを形成することができ、製造効率がよい。
サブタンク内に燃料を送出するフューエルポンプユニットを着脱自在に取付けているため、フューエルポンプユニットを修理、点検するときに容易に取り外しができる。また、燃料タンクを製造するときも、接合周縁部を融合する前に、ロアシェル部に取付けることにより、燃料タンク内に容易にフューエルポンプユニットを取り付けることができる。
【0012】
フューエルポンプユニットは、少なくともフューエルポンプと、ユニットケーシングとを有し、ユニットケーシングは、ユニットケーシング上部にフューエルポンプを収納しているため、フューエルポンプはユニットケーシング内に確実に保持され、走行時の振動にも確実に燃料タンク内に保持される。また、ユニットケーシングを取外すことにより、フューエルポンプを容易に取外すことができる。
【0013】
ユニットケーシング下部はユニットケーシング上部よりも横方向に広げて空間を有するように形成し、ユニットケーシング下部を覆うようにフィルタを着脱可能に取付けている。このため、フューエルポンプの燃料吸入口の先端をユニットケーシング下部に形成された空間に位置させて、フィルタが直接塞ぐことがない。また、フューエルポンプの燃料吸入口の先端にフィルタを取付ける場合よりも、フィルタの面積を大きくすることができ、燃料の吸入効率が良い。また、フィルタをユニットケーシング下部に取り付けるため、取付けと取外しが容易である。
【0014】
請求項2の本発明は、サブタンク内に取付リブを複数立設し、取付リブにユニットケーシング下部を係止した燃料タンクである。
【0015】
請求項2の本発明では、サブタンク内に取付リブを複数立設したため、取付リブをロアシェル部に成形するときに、サブタンクと同時に形成することができ、製造が容易である。取付リブにユニットケーシング下部を係止したため、サブタンク内に確実にフューエルポンプユニットを取付けることができ、車両の振動や、燃料タンクが温度変化により膨張、収縮しても確実にフューエルポンプユニットを保持することができる。
【0016】
請求項3の本発明は、サブタンク内の取付リブは、先端に係止鉤が形成され、ユニットケーシング下部の側面は、外面に係止突部が形成され、取付リブの係止鉤がユニットケーシングの係止突部の係止孔に挿入されて係止する燃料タンクである。
【0017】
請求項3の本発明では、サブタンク内の取付リブは、先端に係止鉤が形成され、ユニットケーシング下部の側面は、外面に係止突部が形成され、取付リブの係止鉤がユニットケーシングの係止突部の係止孔に挿入されて係止する。このため、フューエルポンプユニットを取付リブに取り付けるときは、取付リブの上方から下方にフューエルポンプユニットを押付けるのみで、取付リブの先端が撓み、係止鉤が係止突部の係止孔に係合して、確実にフューエルポンプユニットを保持することができる。
【0018】
請求項4の本発明は、サブタンク内の取付リブは、先端に係止溝が形成され、ユニットケーシング下部の側面は、外面に係止突部が形成され、取付リブの係止溝にユニットケーシングの係止突部の係止孔の外周部が挿入されて係止する燃料タンクである。
【0019】
請求項4の本発明では、サブタンク内の取付リブは、先端に係止溝が形成され、ユニットケーシング下部の側面は、外面に係止突部が形成され、取付リブの係止溝にユニットケーシングの係止突部の係止孔の外周部が挿入されて係止する。このため、フューエルポンプユニットを取付リブに取り付けるときは、取付リブの上方から下方にフューエルポンプユニットを押付けるのみで、取付リブの係止溝の内部に、係止突部の係止孔の外周部が嵌めこまれて、確実にフューエルポンプユニットを保持することができる。
【0020】
請求項5の本発明は、サブタンク内の複数の取付リブは、先端が相互に向合う方向にL字形に屈曲した係止角部が形成され、ユニットケーシング下部は、外面に係止突部が形成され、取付リブの係止角部にユニットケーシングの係止突部がスライド嵌合されて係止する燃料タンクである。
【0021】
請求項5の本発明では、サブタンク内の複数の取付リブは、先端が相互に向合う方向にL字形に屈曲した係止角部が形成され、ユニットケーシング下部は、外面に係止突部が形成され、取付リブの係止角部にユニットケーシングの係止突部がスライド嵌合されて係止する。このため、フューエルポンプユニットを取付リブに取り付けるときは、取付リブの横方向からフューエルポンプユニットをスライドさせて、取付リブの係止角部に係止突部を嵌合させて保持して、確実にフューエルポンプユニットを保持することができる。
【0022】
請求項6の本発明は、ユニットケーシング下部は、サブタンク内の底面の略全面を覆う広さに形成し、フィルタとロアシェル部の間に空間を設けた燃料タンクである。
【0023】
請求項6の本発明では、ユニットケーシング下部は、サブタンク内の底面の略全面を覆う広さに形成したため、フィルタの取付面積を大きくすることができ、燃料がフィルタを通過する抵抗を減少させ、効率よくフューエルポンプが燃料を送出することができる。
また、フィルタとロアシェル部の間に空間を設けたため、サブタンク内のフィルタの下に燃料がスムースに流入し、フィルタを経由して、燃料をフューエルポンプに容易に送ることができる。
【0024】
請求項7の本発明は、ユニットケーシング下部の内面に、下方に突出し、フィルタの変形を防止する複数のフィルタ保持リブを形成した燃料タンクである。
【0025】
請求項7の本発明では、ユニットケーシング下部の内面に、下方に突出し、フィルタの変形を防止する複数のフィルタ保持リブを形成したため、フューエルポンプが燃料を送出するときに、フィルタが変形やユニットケーシング下部の内面に接触することを防止でき、フィルタの変形、破れを防止し、燃料を効率的に送出することができる。
【0026】
請求項8の本発明は、フィルタは、周囲をフィルタケースで固定され、フィルタケースがユニットケーシング下部に取付けられている燃料タンクである。
【0027】
請求項8の本発明では、フィルタは、周囲をフィルタケースで固定され、フィルタケースがユニットケーシング下部に取付けられているため、フィルタをユニットケーシング下部に取付けと取外すことが容易である。
【0028】
請求項9の本発明は、フィルタの周囲は、フィルタケースに溶着又は接着されている燃料タンクである。
【0029】
請求項9の本発明では、フィルタの周囲は、フィルタケースに溶着又は接着されているため、フィルタをフィルタケースに取付けることが容易であり、フィルタを確実にフィルタケースに固着することができる。フィルタケースを交換することにより、容易にフィルタを交換できる。
【0030】
請求項10の本発明は、フィルタの周囲は、フィルタケース又はユニットケーシング下部に着脱自在に取付られている燃料タンクである。
【0031】
請求項10の本発明では、フィルタの周囲は、フィルタケース又はユニットケーシング下部に着脱自在に取付られているため、フィルタの交換が容易であり、フューエルポンプユニットの点検、修理が効率的にできる。
【0032】
請求項11の本発明は、フィルタは、不織布から形成されている燃料タンクである。
【0033】
請求項11の本発明では、フィルタは、不織布から形成されているため、耐燃料油性の繊維を使用することができ、効率よく燃料中のごみ等を除去することができ、フィルタケースと合成繊維について相溶性の材料を使用して、フィルタケースに溶着又は接着することもできる。
【0034】
請求項12の本発明は、ユニットケーシング上部にフューエルポンプの上部を覆うユニットカバーが着脱自在に係止されている燃料タンクである。
【0035】
請求項12の本発明では、ユニットケーシング上部にフューエルポンプの上部を覆うユニットカバーが着脱自在に係止されているため、ユニットケーシングの中のフューエルポンプを取外して修理、点検することが容易であるとともに、ユニットケーシング中にフューエルポンプを確実に保持することができる。また、ユニットカバーにフューエルポンプへの配線や、燃料送出用のチューブを取付けるポートを設けることができ、フューエルポンプユニットの取付及び取外しが容易である。
【0036】
請求項13の本発明は、アッパーシェル部とロアシェル部は、ポリオキシメチレン(POM)、高密度ポリエチレン(HDPE)、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)、ナイロン、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド(PPS)のうち少なくとも1種類の材料から形成された燃料タンクである。
【0037】
請求項13の本発明では、アッパーシェル部とロアシェル部は、ポリオキシメチレン(POM)、高密度ポリエチレン(HDPE)、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)、ナイロン、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド(PPS)のうち少なくとも1種類の材料から形成された。このため、強度の高い燃料タンクを製造できるとともに、燃料タンクに貯蔵された燃料の透過防止性に優れた、燃料の透過を防止できる燃料タンクを製造することができる。
【0038】
請求項14の本発明は、アッパーシェル部とロアシェル部は、内側樹脂層を高密度ポリエチレン(HDPE)の射出成形で形成し、内側樹脂層の外面を耐燃料透過性多層樹脂シートからなる外側シート層で形成し、耐燃料透過性多層樹脂シートの内側樹脂層と接する層は高密度ポリエチレン(HDPE)と相溶性のある材料で形成された燃料タンクである。
【0039】
請求項14の本発明では、アッパーシェル部とロアシェル部は、内側樹脂層を高密度ポリエチレン(HDPE)の射出成形で形成したため、燃料タンクの耐衝撃強度を大きくすることができるとともに、溶融樹脂の流動性が高く射出成形が容易である。
内側樹脂層の外面を耐燃料透過性多層樹脂シートからなる外側シート層で形成したため、アッパーシェル部とロアシェル部の内側樹脂層の外側は、耐燃料透過性多層樹脂シートで被覆されており、燃料タンクの内部に燃料を入れた場合には、燃料の透過を防止することができる。
【0040】
耐燃料透過性多層樹脂シートの内側樹脂層と接する層は高密度ポリエチレン(HDPE)と相溶性のある材料で形成されたため、内側樹脂層と外側シート層とが強固に融着されることができる。また、耐燃料透過性多層樹脂シートの外側の層を高密度ポリエチレン(HDPE)とすれば、燃料タンクの強度を増加させることができる。
【発明の効果】
【0041】
サブタンク内に燃料を送出するフューエルポンプユニットを着脱自在に取付けているため、フューエルポンプユニットを修理、点検するときに容易に取外しができる。
フューエルポンプユニットのユニットケーシングは、ユニットケーシング上部にフューエルポンプを収納しているため、フューエルポンプはユニットケーシング内に確実に保持され、走行時の振動にも確実に燃料タンク内に保持される。
ユニットケーシング下部はユニットケーシング上部よりも横方向に広げて空間を有するように形成し、ユニットケーシング下部を覆うようにフィルタを着脱可能に取付けたため、フィルタの面積を大きくすることができ、燃料の吸入効率が良い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
本発明の実施の形態を図1〜図8に基づき説明する。
図1は本発明のフューエルポンプユニット40が取付けられる燃料タンク1の断面図である。図2〜図5は、本発明の第1の実施の形態を示すもので、図2と図3は、フューエルポンプユニット40部分の断面図であり、図4は、フューエルポンプユニット40の組み立て分解図、図5は、フューエルポンプユニット40をロアシェル部20に取付ける分解図である。図6と図7は、それぞれ本発明の第2と第3の実施の形態のフューエルポンプユニット40をロアシェル部20に取付ける分解図である。図8は、本発明のフィルタ52をフィルタケース50に取付ける分解図である。
【0043】
まず、図1〜図5に基づき第1の実施の形態について説明する。
図1に示すように、燃料タンク1は、分割して成形されたアッパーシェル部10とロアシェル部20から構成される。アッパーシェル部10とロアシェル部20は、それぞれ、射出成形で形成される内側樹脂層15、25と、内側樹脂層15、25の成形後に、外側に接着又は溶着される耐燃料透過性多層樹脂シート3から構成される外側シート層16、26の2層から形成される。
燃料タンク1の分割はアッパーシェル部10とロアシェル部20の2個ばかりでなく3個以上に分割することも可能である。
【0044】
ロアシェル部20の内面は、サブタンク30が形成され、サブタンク30内にフューエルポンプユニット40が取付けられている。サブタンク30は、車両が傾いたり振動したりしたときに、燃料タンク1内の燃料をフューエルポンプユニット40が確実にエンジンに送り出すことができるように設けられている。フューエルポンプユニット40からパイプが延びて、ロアシェル部20のフューエルメインポート取付部23に接続している。フューエルメインポート取付部23にはエンジンに燃料を送る燃料パイプ(図示せず)が取付けられている。サブタンク30及びフューエルポンプユニット40の構造は、後述する。
【0045】
アッパーシェル部10には、燃料タンク1内の燃料蒸気の排出を防ぐキャニスタ17が一体的に形成されている。また、キャニスタ17の上部壁には、インレット取付部13とブリザーポート取付部14が形成されている。インレット取付部13は、燃料タンク1内に燃料を注入するインレットホース(図示せず)を取付けるものであり、ブリザーポート取付部14は、燃料給油時に燃料タンク1内のガスをタンク外に逃がすためブリサーホース(図示せず)を取付けるものである。
なお、アッパーシェル部10の上面には、燃料移送用ホース等の各種のホースを保持するホースクランプ(図示せず)を設けてもよい。
【0046】
アッパーシェル部10とロアシェル部20の開口の全周には、図1に示すように、アッパーシェル部10の接合周縁部11とロアシェル部20の接合周縁部21が形成され、その接合周縁部11、21には、全周に亘りそれぞれ外面から外側に張り出したフランジ部12,22が形成されている。接合周縁部11、21とフランジ部12,22は、それぞれ相互に対向して溶着されている。
フランジ部12,22は、アッパーシェル部10とロアシェル部20の本体とは断面略L字形に形成される。
【0047】
アッパーシェル部10とロアシェル部20の内側樹脂層15、25の外面は、フランジ部12、22の先端まで全体が、耐燃料透過性多層樹脂シート3が一体的に溶着されて、上記の通り、外側シート層16、26を構成している。耐燃料透過性多層樹脂シート3の溶着は耐燃料透過性多層樹脂シート3の表面を加熱して行うことができる。このため、アッパーシェル部10とロアシェル部20の全体と、フランジ部12、22の先端まで燃料透過を防止することができる。
【0048】
耐燃料透過性多層樹脂シート3は、例えば、中央の層がエチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)又はナイロンで形成された燃料透過を防止するバリヤー層と、そのバリヤー層の上下に変性ポリエチレンから形成される接着層と、その接着層のそれぞれの外面にポリエチレン(PE)から形成される外層から構成される5層のシートである。
【0049】
変性ポリエチレンから形成される接着層は、バリヤー層と外層の両方に対して接着性を有している。このため、バリヤー層と外層を強固に接着することができる。
耐燃料透過性多層樹脂シート3の外側の層は、衝撃や磨耗に強いポリエチレン(PE)から形成されることができ、この場合は、燃料タンク1の強度を増加させ、バリヤー層を保護することができる。内側樹脂層15、25と接合する層は、内側樹脂層15、25がオレフィン系合成樹脂、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)で構成されている場合は、内側樹脂層15、25と溶着して、強固に接合されることができる。
【0050】
なお、アッパーシェル部10とロアシェル部20は、熱可塑性合成樹脂の1層のみで形成することもできる。熱可塑性合成樹脂は、ポリオキシメチレン(POM)、高密度ポリエチレン(HDPE)、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)、ナイロン、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド(PPS)のうち少なくとも1種類の材料から選ばれた合成樹脂を使用することができる。このため、強度の高い燃料タンクを製造できるとともに、燃料タンクに貯蔵された燃料の透過防止性に優れた燃料タンクを製造することができる。
【0051】
次に、図2と図3に基づき、第1の実施の形態について、サブタンク30とフューエルポンプユニット40の構造を中心に説明する。
サブタンク30は、ロアシェル部20を成形するときに、ロアシェル部20と一体的に形成される。サブタンク30の外周には、ロアシェル部20の内側樹脂層25から直接上方にサブタンク外周壁31が延設され、その一部は、燃料タンク1内の燃料がサブタンク30内に流入できるように開口している。その開口部分のサブタンク外周壁31の内側には、燃料の通路を形成するようにサブタンク通路壁35が形成されている。
【0052】
サブタンク30内には、フューエルポンプユニット40を取付けるフューエルポンプ取付リブ32が、内側樹脂層25から上方に延設されている。フューエルポンプ取付リブ32は、フューエルポンプユニット40を安定的に取り付けるために、少なくとも4本設けることが好ましい。フューエルポンプ取付リブ32の先端は、フューエルポンプユニット40を係止するために係止鉤36が形成されている。
【0053】
フューエルポンプユニット40は、ユニットカバー41、ユニットケーシング47、フューエルポンプ43とフィルタケース50から構成される。
ユニットカバー41は、ユニットケーシング上部47aに着脱自在に係合し、フューエルポンプ43から送出された燃料をエンジンへ移送するフューエルチューブを取付けるフューエルチューブ取付部42が形成されている。また、フューエルポンプ43を稼動させるための電気を供給するフューエルポンプソケット42aが形成されている。ユニットカバー41を取外すと、ユニットケーシング47の中のフューエルポンプ43を取外して容易に、修理、点検することができる。
【0054】
ユニットケーシング47は、ユニットケーシング上部47aとユニットケーシング下部47bから構成される。ユニットケーシング上部47aは、円筒状に形成され、内部にフューエルポンプ43が収納されている。このため、ユニットケーシング47中にフューエルポンプ43を確実に保持することができる。ユニットケーシング上部47aとユニットケーシング下部47bの境界には、フューエル吸入口45が形成されている。フューエル吸入口45には、フューエルポンプ43の先端が挿入され、フューエル吸入口45とフューエルポンプ43の先端との間にはシールリング45bが取付けられている。
フューエルポンプ43の先端には、燃料を排出するフューエル排出口44が形成され、フューエル排出口44は、フューエルチューブ取付部42と連結されている。
【0055】
ユニットケーシング下部47bは、ユニットケーシング上部47aよりも横方向に平板状に広げて空間を有するように形成されている。ユニットケーシング下部47bの下面には、フィルタ52が着脱可能に取付けられている。
フィルタ52は、図8に示すように、フィルタケース50に、周囲を固定されて、フィルタケース50がユニットケーシング下部47bに取付けられている。このため、フィルタ52をユニットケーシング下部47bに取付けることと取外すことが容易である。
【0056】
フィルタ52とロアシェル部20の内側樹脂層25の内面との間には、図3に示すように、空間が形成されている。このため、サブタンク30内に流入した燃料は、フィルタ52と内側樹脂層25との間に容易に流入する。そして、フューエルポンプ43が燃料を吸引すると、フィルタ52の全面から燃料が吸引されるため、フューエルポンプ43の燃料送出効率が高い。
【0057】
フィルタケース50にフィルタ52を取付けるには、フィルタケース50にフィルタ52の周囲を溶着又は接着する場合がある。この場合は、フィルタ52が、合成繊維製の不織布であれば容易であり、フィルタ52を確実にフィルタケース50に固着することができる。
【0058】
また、フィルタ52をフィルタケース50又はユニットケーシング下部47bに着脱自在に取付ることができる。この場合は、フィルタ52の周囲をフィルタケース50又はユニットケーシング下部47bにバンド等で締め付けることにより取り付けることができる。この場合は、フィルタ52の交換が容易であり、フューエルポンプユニット40の点検、修理が効率的にできる。
【0059】
なお、フィルタ52を不織布で形成することができる。この場合は、不織布として耐燃料油性の繊維を使用することができ、フィルタ52の寿命を長くすることができ、効率よく燃料中のごみ等を除去することができる。また、不織布をフィルタケース50と相溶性のある合成繊維で作成した場合には、フィルタケース50に直接、溶着又は接着することもできる。
【0060】
ユニットケーシング下部47bの内面には、下方に突出し、フィルタ52の変形を防止する複数のフィルタ保持リブ46が形成されている。このため、フューエルポンプ43が燃料を送出するときに、フィルタ52がユニットケーシング下部47bの内面方向に撓んで変形することや、ユニットケーシング下部47bの内面に接触することを防止できる。従って、フィルタ52の変形、破れを防止することができる。
【0061】
また、フィルタ52をフューエル吸入口45から離して、フィルタ52とフューエル吸入口45の間に空間を形成したため、フィルタ52がフューエル吸入口45直接塞ぐことがない。そのため、燃料の吸入効率が良い。また、フューエルポンプ43のフューエル吸入口45の先端にフィルタ52を取付ける場合よりも、フィルタ52の面積を大きくすることができ、フィルタ52の燃料透過抵抗を減らすことができ、燃料の吸入効率が良い。
【0062】
つぎに、図4に基づき、フューエルポンプユニット40の組立て方法について説明する。ユニットケーシング上部47aの内部にフューエルポンプ43を挿入し、ユニットカバー41をユニットケーシング上部47aに嵌め込む。ユニットカバー41の下部とユニットケーシング上部47aの上部に形成された鉤部が係合し、ユニットカバー41が着脱自在にユニットケーシング47に取付けられる。
【0063】
次にフィルタ52が取付けられたフィルタケース50をユニットケーシング下部47bに取付ける。フィルタケース50には、4辺のそれぞれにフィルタケース取付部51が立設され、フィルタケース取付部51には取付孔が形成されている。ユニットケーシング下部47bの4辺には、フィルタ係止爪49が突出して形成されている。
フィルタケース50をユニットケーシング下部47bにはめ込むと、フィルタケース取付部51の取付孔にフィルタ係止爪49が嵌合して、フィルタケース50が着脱自在に取付けられる。このとき、フューエルポンプ43の下端は、ユニットケーシング47のフューエル吸入口45に挿入されて、シール部材45bであるシーリリングによりシールされる。
【0064】
そして、組立てられたフューエルポンプユニット40は、ロアシェル部20に形成されたサブタンク30のフューエルポンプ取付リブ32に係止される。フューエルポンプ取付リブ32の先端には、係止鉤36が形成されている。
ユニットケーシング下部47bの側面の両外面には、図4に示すように、横方向に並んでユニット係止突部48がそれぞれ2箇所形成されている。ユニット係止突部48は、係止孔48aが形成されており、フューエルポンプ取付リブ32の先端の係止鉤36が挿入される。
【0065】
このため、フューエルポンプユニット40をフューエルポンプ取付リブ32の上方から下方に移動させ、ユニット係止突部48の係止孔48aにフューエルポンプ取付リブ32の先端の係止鉤36を挿入させることで、フューエルポンプ取付リブ32の先端が撓み、係止鉤36がユニット係止突部48に係合して、確実にフューエルポンプユニット40を係止することができる。
【0066】
次に、本発明の第2の実施の形態を図6に基づき説明する。
第2の実施の形態は、第1の実施の形態とは、フューエルポンプユニット40をサブタンク30に取付ける形状が異なり、他の部分は同様であるので、異なる部分を説明し、同様の部分の説明は省略する。
【0067】
サブタンク30の内面には、フューエルポンプ取付リブ32が形成されており、その先端にはU字形に凹んだ係止溝37が形成されている。
ユニットケーシング下部47bの側面の両外面には、横方向にユニット係止突部48がそれぞれ2箇所形成されている。ユニット係止突部48は、係止孔48aが形成されている点は同様である。
【0068】
このため、フューエルポンプユニット40をフューエルポンプ取付リブ32の上方から下方に移動させ、フューエルポンプ取付リブの係止溝37にユニットケーシング47のユニット係止突部48の係止孔48aの外側に形成された外周部48bが挿入されて係止する。このため、フューエルポンプユニット40をフューエルポンプ取付リブ32に取り付けるときは、フューエルポンプ取付リブ32の上方から下方にフューエルポンプユニット40を押付けるのみで、フューエルポンプ取付リブ32の係止溝37の内部に、ユニット係止突部48の外周部48bが嵌めこまれて、確実にフューエルポンプユニット40を保持することができる。
【0069】
次に、本発明の第3の実施の形態を図7に基づき説明する。
第3の実施の形態は、第1の実施の形態とは、フューエルポンプユニット40をサブタンク30に取付ける形状が異なり、他の部分は同様であるので、異なる部分を説明し、同様の部分の説明は省略する。
【0070】
サブタンク30の内面には、フューエルポンプ取付リブ32が形成されており、フューエルポンプ取付リブ32は、2個ずつ並行に4個並んで形成されている。フューエルポンプ取付リブ32の先端がL字形に互いに向き合うように屈曲した係止角部38が形成されている。ユニットケーシング下部47bは、外面にユニット係止突部48が形成され、フューエルポンプ取付リブ32の係止角部38に、ユニットケーシング47のユニット係止突部48がスライド嵌合されて係止する。このため、フューエルポンプユニット40をフューエルポンプ取付リブ32に取り付けるときは、フューエルポンプ取付リブ32の横方向からフューエルポンプユニット40をスライドさせるのみで、確実にフューエルポンプユニット40を保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の実施の態様を示すもので、燃料タンクの断面図である。
【図2】本発明の第1の実施の態様を示すもので、燃料タンクに一体的に形成されたサブタンク部分の断面図である。
【図3】本発明の第1の実施の態様を示すもので、フューエルポンプユニット部分の断面図である。
【図4】本発明の第1の実施の態様を示すもので、フューエルポンプユニットの組立て分解図である。
【図5】本発明の第1の実施の態様を示すもので、フューエルポンプユニットをサブタンク内に組付ける組付け分解図である。
【図6】本発明の第2の実施の態様を示すもので、フューエルポンプユニットをサブタンク内に組付ける組付け分解図である。
【図7】本発明の第3の実施の態様を示すもので、フューエルポンプユニットをサブタンク内に組付ける組付け分解図である。
【図8】本発明の実施の態様を示すもので、フィルタケースの組立て分解図である。
【図9】従来の燃料タンクに使用されるフューエルポンプユニットの一部分解側面図である。
【符号の説明】
【0072】
1 燃料タンク
10 アッパーシェル部
20 ロアシェル部
30 サブタンク
32 フューエルポンプ取付リブ
40 フューエルポンプユニット
41 ユニットカバー
43 フューエルポンプ
46 フィルタ保持リブ
47 ユニットケーシング
48 ユニット係止突部
50 フィルタケース
52 フィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成形により分割して別々に成形されたアッパーシェル部とロアシェル部の接合周縁部が融合して一体に構成された熱可塑性合成樹脂製の燃料タンクにおいて、
上記ロアシェル部内に、サブタンクを上記ロアシェル部と一体的に形成し、
上記サブタンク内に燃料を送出するフューエルポンプユニットを着脱自在に取付け、
該フューエルポンプユニットは、少なくともフューエルポンプと、ユニットケーシングとを有し、該ユニットケーシングは、ユニットケーシング上部に上記フューエルポンプを収納し、ユニットケーシング下部はユニットケーシング上部よりも横方向に広げて空間を有するように形成し、上記ユニットケーシング下部を覆うようにフィルタを着脱可能に取付けたことを特徴とする燃料タンク。
【請求項2】
上記サブタンク内に取付リブを複数立設し、該取付リブに上記ユニットケーシング下部を係止した請求項1に記載の燃料タンク。
【請求項3】
上記サブタンク内の取付リブは、先端に係止鉤が形成され、上記ユニットケーシング下部の側面は、外面に係止突部が形成され、上記取付リブの係止鉤が上記ユニットケーシングの係止突部の係止孔に挿入されて係止する請求項1又は請求項2に記載の燃料タンク。
【請求項4】
上記サブタンク内の取付リブは、先端に係止溝が形成され、上記ユニットケーシング下部の側面は、外面に係止突部が形成され、上記取付リブの係止溝に上記ユニットケーシングの係止突部の係止孔の外周部が挿入されて係止する請求項1又は請求項2に記載の燃料タンク。
【請求項5】
上記サブタンク内の複数の取付リブは、先端が相互に向合う方向にL字形に屈曲した係止角部が形成され、上記ユニットケーシング下部は、外面に係止突部が形成され、上記取付リブの係止角部に上記ユニットケーシングの係止突部がスライド嵌合されて係止する請求項1又は請求項2に記載の燃料タンク。
【請求項6】
上記ユニットケーシング下部は、上記サブタンク内の底面の略全面を覆う広さに形成し、上記フィルタと上記ロアシェル部の間に空間を設けた請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の燃料タンク。
【請求項7】
上記ユニットケーシング下部の内面に、下方に突出し、上記フィルタの変形を防止する複数のフィルタ保持リブを形成した請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の燃料タンク。
【請求項8】
上記フィルタは、周囲をフィルタケースで固定され、該フィルタケースが上記ユニットケーシング下部に取付けられている請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の燃料タンク。
【請求項9】
上記フィルタの周囲は、上記フィルタケースに溶着又は接着されている請求項8に記載の燃料タンク。
【請求項10】
上記フィルタの周囲は、上記フィルタケース又はユニットケーシング下部に着脱自在に取付られている請求項8に記載の燃料タンク。
【請求項11】
上記フィルタは、不織布から形成されている請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載の燃料タンク。
【請求項12】
上記ユニットケーシング上部に上記フューエルポンプの上部を覆うユニットカバーが着脱自在に係止されている請求項1乃至請求項11のいずれか1項に記載の燃料タンク。
【請求項13】
上記アッパーシェル部とロアシェル部は、ポリオキシメチレン(POM)、高密度ポリエチレン(HDPE)、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)、ナイロン、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド(PPS)のうち少なくとも1種類の材料から形成された請求項1乃至請求項12のいずれか1項に記載の燃料タンク。
【請求項14】
上記アッパーシェル部とロアシェル部は、内側樹脂層を高密度ポリエチレン(HDPE)の射出成形で形成し、該内側樹脂層の外面を耐燃料透過性多層樹脂シートからなる外側シート層で形成し、上記耐燃料透過性多層樹脂シートの上記内側樹脂層と接する層は高密度ポリエチレン(HDPE)と相溶性のある材料で形成された請求項1乃至請求項12のいずれか1項に記載の燃料タンク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−174074(P2008−174074A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−8937(P2007−8937)
【出願日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【出願人】(502148037)株式会社エフティエス (34)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】