説明

燃料供給装置用三方弁

【課題】高燃温時にリターン燃料がフィードラインに漏出することを防止する。
【解決手段】本発明は、燃料供給装置100のリターンライン2を流れる燃料を、燃温の高低に応じて燃料供給装置100のフィードライン1に供給する燃料供給装置用三方弁60であって、リターンライン2を流れる燃料が通るメイン通路61と、メイン通路61及びフィードライン1を連通するバイパス通路62と、バイパス通路62の開口端62aから突設されたリップ部68と、燃温の高低に応じて上面に凸又は下面に凸に変形し、燃温が高温のときにはリップ部68に当接して開口端62aを閉塞し、燃料がバイパス通路62に漏出することを防止するバイメタル63と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は燃料供給装置用三方弁に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等のエンジンとして古くからディーゼルエンジンが利用されている。ディーゼルエンジンは、軽油を燃料として使用する。軽油は、冷却されるとその成分中のワックスが分離・凝結して析出する特性を有する。そのため、寒冷地等の低温環境下で不適当な軽油を使用すると、ワックスが析出する。このようなワックスが多量に析出すると、フィードラインに配設された燃料フィルタのエレメントが目詰まりを起こす。その結果、燃料が流れなくなり、エンジンが停止に至る場合がある。
【0003】
したがって、低温環境下でも燃料の流動性を確保する必要がある。そのため、燃料温度(以下「燃温」という)が低いとき(低燃温時)には、燃料ポンプからリターンラインを通って燃料タンクへ返送されるリターン燃料の一部を、燃料フィルタを介してフィードラインに戻す。リターン燃料は、燃料ポンプで加圧され高温となっている。したがって、リターン燃料を燃料フィルタを通して、燃料フィルタ内を通過する燃料タンクからの燃料(フィードライン中の燃料)と混合させることで、燃温を上昇させることができる。これにより、ワックスの析出を防止できる。
【0004】
一方、高燃温時にリターン燃料をフィードラインに供給すると、フィードライン中の燃温が上昇する。そうすると、レール圧を上げることができなくなり、出力が低下する。したがって、高燃温時には、リターン燃料をフィードラインに供給せずに、燃料タンクに返送することが望ましい。
【0005】
そこで、燃温に応じてフィードラインにリターン燃料を供給するか否かを切り替えるためのバイメタル式の三方弁が公知である(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開昭60−142048号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら従来の三方弁は、高燃温時にリターン燃料がフィードラインに漏出することがあった。
【0007】
本発明は、このような従来の問題点に着目してなされたものであり、高燃温時にリターン燃料がフィードラインに漏出することを防止する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、燃料供給装置のリターンラインを流れる燃料を、燃温の高低に応じて燃料供給装置のフィードラインに供給する燃料供給装置用三方弁であって、前記リターンラインを流れる燃料が通るメイン通路と、前記メイン通路及び前記フィードラインを連通するバイパス通路と、前記バイパス通路の開口端から突設されたリップ部と、燃温の高低に応じて上面に凸又は下面に凸に変形し、燃温が高温のときには前記リップ部に当接して前記開口端を閉塞し、燃料がバイパス通路に漏出することを防止するバイメタルと、を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、バイメタルにシール機能を持たせることで、燃圧に影響されずに燃料をシールすることができ、高燃温時にリターン燃料がフィードラインに漏出することを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0011】
(第1実施形態)
図1は本発明による燃料供給装置100の概略図である。燃料供給装置100は、燃料タンク10と、燃料フィルタ20と、インジェクションポンプ30と、コモンレール40と、インジェクタ50とから構成される。
【0012】
燃料供給装置100はフィードライン1及びリターンライン2の2本の燃料経路を備える。フィードライン1は、燃料タンク10の燃料をエンジンまで送るための燃料経路である。リターンライン2は、送った燃料のうち余分な燃料(以下「リターン燃料」という)を燃料タンク10に戻すための燃料経路である。リターンライン2には、戻り通路2a,2bが接続される。戻り通路2aは、インジェクションポンプ30の余剰燃料をリターンライン2に戻す。戻り通路2bは、インジェクタ50からリークするリーク燃料をリターンライン2に戻す。
【0013】
燃料供給装置100は、燃料タンク10中の燃料を燃料フィルタ20でろ過してインジェクションポンプ30へ送り、コモンレール40を介してインジェクタ50から燃焼室内に燃料を噴射する。燃料の噴射量及び噴射時間は、エンジンの運転状態に応じてコントローラ(図示せず)が制御する。
【0014】
燃料タンク10は、エンジンの燃焼室内に噴射する燃料を貯蔵する。燃料タンク10内には、ジェットポンプ11が配設される。ジェットポンプ11は、エンジンからのリターン燃料を作動液として利用し、燃料タンク10のサブタンク10bからメインタンク10aへ燃料を移送する。
【0015】
インジェクションポンプ30は、燃料タンク10内の燃料を、燃料フィルタ20を介して吸引し、吸引した燃料を高圧に圧縮してコモンレール40へ圧送する。インジェクションポンプ30は、吸引する燃料の量を調整する調量弁を備える。この調量弁はコントローラによって制御されて、コモンレール圧を調整する。
【0016】
コモンレール40は、インジェクションポンプ30から圧送された高圧燃料を蓄圧して、蓄圧した高圧燃料をインジェクタ50に供給する。コモンレール40から燃料タンク10へ燃料を戻すリターンライン2には、プレッシャリリーフバルブ41が設けられる。プレッシャリリーフバルブ41は、コモンレール圧が限界設定圧を超えた際に開弁して、コモンレール圧を限界設定圧以下に抑える。
【0017】
インジェクタ50は、エンジンの気筒毎に搭載され、コモンレール40に蓄圧された高圧燃料を各気筒内に噴射する。インジェクタ50は、インジェクタ50からリークするリーク燃料を燃料タンク10へ戻すため、戻り通路2bを介して、リターンライン2と接続される。
【0018】
燃料クーラ70は、リターン燃料を冷却する。燃料クーラ70は、燃料タンク10と接続するリターンライン2に配設される。
【0019】
燃料フィルタ20は、燃料中のゴミや水分、ワックス等を取り除く。特にディーゼルエンジンの燃料として使用される軽油は、冷却されるとワックスを析出する特性を持っている。そのため、寒冷地等の低温環境下で不適当な軽油を使用すると、燃料中にワックスが析出する。このようなワックスが多量に析出すると、燃料フィルタ20のエレメントが目詰まりを起こす。その結果、燃料が流れなくなり、エンジンが停止する場合がある。
【0020】
したがって、低温環境下でも燃料の流動性を確保する必要がある。そのため、低燃温時には、インジェクションポンプ30で加圧され高温となっているリターン燃料の一部を、燃料フィルタ20を通るバイパス通路62を介してフィードライン1に戻す。リターン燃料を燃料フィルタ20に通して燃料フィルタ20内を通過する燃料タンク10からの燃料(フィードライン1中の燃料)と混合させることで燃温を上昇させることができる。これにより、ワックスの析出を防止できる。
【0021】
一方、高燃温時に、リターン燃料の一部が燃料フィルタ20を通るバイパス通路62を介してフィードライン1に戻されると、フィードライン1中の燃温が上昇する。燃温が高いとコモンレール圧を上げることができなくなるため、出力が低下する。したがって、高燃温時には、リターン燃料をフィードライン1に戻さずに、燃料タンク10に返送することが望ましい。
【0022】
そこで、燃料供給装置100は、燃料フィルタ20の上部に位置して、燃温に応じてフィードライン1にリターン燃料を還流させるか否かを制御する三方弁60を備える。
【0023】
本発明はこの三方弁の改良に関するものである。そこで、本発明の理解を容易にするために、まず、従来の三方弁600の構成について説明する。
【0024】
図13及び図14は従来の三方弁600の構成を示す概略図である。図13は、低燃温時における三方弁600の様子を示した図である。図14は高燃温時における三方弁600の様子を示した図である。なお、図中の矢印はリターン燃料の流れを示す。
【0025】
三方弁600は、リターンライン2の燃料を通すメイン通路661と、フィードライン1に通じるバイパス通路662と、リターンライン2を流れる燃料をフィードライン1に還流させるか否かを切り替えるバイメタル663と、フィードライン1への燃料をシールするチェックバルブ665と、から構成される。
【0026】
メイン通路661のインレット661a及びアウトレット661bは、リターンライン2に接続される。
【0027】
バイパス通路662は、燃料フィルタ20内でフィードライン1に接続される。
【0028】
バイメタル663は、薄い円盤状の板体である。バイメタル663は、三方弁600内で固定されておらず、熱によって凹凸に形状が変化する。バイメタル663は、低燃温時には、その形状が図中上方に凸に変化する(図13参照)。一方、バイメタル663は、高燃温時には、その形状が図中下方に凸に変化する(図14参照)。このようにして、バイメタル663は、リターンライン2を流れる燃料をフィードライン1に供給するか否かを切り替える。
【0029】
チェックバルブ665は、メイン通路661からバイパス通路662へ燃料が漏出しないようにシールする。チェックバルブ665は、燃圧が所定の開弁圧を超えた際に開弁し、リターンライン2を流れる高温のリターン燃料をフィードライン1に還流させる。
【0030】
図13に示すように、バイメタル663は、低燃温時には、その形状が図中上方に凸に変形し、メイン通路661のインレット661aから流入するリターン燃料を、バイメタル663の外周の隙間からバイパス通路662側に導入する。チェックバルブ665は、燃圧が所定の開弁圧を超えると開弁する。すると、リターン燃料は、バイパス通路662を通ってフィードライン1を流れる燃料と合流する。
【0031】
一方、図14に示すように、バイメタル663は、高燃温時には、図中下方に凸に変形し、メイン通路661のインレット661aから流入するリターン燃料をメイン通路661のアウトレット661bに導入する。バイメタル663は三方弁600の内部で固定されていないため、三方弁600の内壁面600bとの間で積極的に燃料をシールする機能を有していない。そのため、高燃温時には、バイパス通路662側に漏出しようとする燃料をチェックバルブ665がシールする。
【0032】
チェックバルブ665は、高燃温時には、多量のリターン燃料が発生していても開弁せずにバイパス通路662へ燃料が漏出することを防止する必要がある。一方、低燃温時には、リターン燃料が少量の場合でも開弁してリターン燃料をバイパス通路662に導入する必要がある。
【0033】
このように、従来の三方弁600の構造では、燃料シールを行うチェックバルブ665に対して、低燃温時と高燃温時とで逆の性能(高燃温時はリターン燃料が多量(高燃圧)の場合でも閉弁、低燃温時はリターン燃料が少量(低燃圧)の場合でも開弁)が要求される。しかしながら、このような相反する互いの要求を完全に満足することはできないので、両者のバランスを加味して開弁圧を設定する必要があった。
【0034】
したがって、高燃温時においても、燃圧が所定の開弁圧を超えるとチェックバルブ665が開弁し、リターン燃料がバイパス通路662を通ってフィードライン1を流れる燃料と合流することがあった。高燃温時に、リターン燃料の一部が燃料フィルタ20を通ってフィードライン1に戻されると、フィードライン1中の燃温が上昇する。燃温が高いとレール圧を上げることができなくなるため、出力が低下するという問題が生じる。また、車両毎の仕様や設定(例えば、リターン燃料の絶対量やリターンライン2に存在する燃料クーラ70等の仕様)等によって開弁圧の設定値の変更が必要となる。そのため、その都度、確認試験等が必要となり問題があった。
【0035】
そこで、本発明では、バイメタルにシール機能を持たせることで、安定したシール圧の確保及び車両毎の仕様等によって影響を受けない三方弁を提供する。
【0036】
図2及び図3は本発明による三方弁60の構成を示す概略図である。図2は、低燃温時における三方弁60の様子を示した図である。図3は高燃温時における三方弁60の様子を示した図である。
【0037】
三方弁60は、従来の三方弁600と同様に、ハウジング60a内に、リターンライン2の燃料を通すメイン通路61と、フィードライン1に通じるバイパス通路62と、リターンライン2を流れる燃料をフィードライン1に還流させるか否かを切り替えるバイメタル63と、フィードライン1への燃料をシールするチェックバルブ65と、を備える。
【0038】
さらに、本発明による三方弁60には、従来の三方弁600に対して、バイメタル63を固定する2本のOリング66,67と、バイメタル63との間でシール面を形成して燃料をシールする樹脂リップ部68,69と、が追加される。
【0039】
バイメタル63は、燃料が通過する連通孔63aを有する。連通孔63aは複数あってもよい。バイメタル63は、Oリング66,67によって円周部が両面から狭持され、三方弁60内に固定される。バイメタル63は、Oリング66,67によって狭持された円周部を支点として、燃温に応じて中央部の形状が凹凸に変形する。
【0040】
樹脂リップ部68,69は、アウトレット61a側のメイン通路61に接続する排出口61cと、バイパス通路62に接続する導入口62aとから突設される。樹脂リップ部68,69は、バイメタル63が凹凸変化する空間64において、バイメタル63を挟んでその両側に配置される。
【0041】
そのため、樹脂リップ部68,69にバイメタル63が押付けられる。つまり、樹脂リップ部68,69に作用するバイメタル63の弾性力を燃料シール圧として利用できる。これにより、樹脂リップ部68,69とバイメタル63とが当接してシール面68a,69aが形成され、安定したシール圧を確保することができる。また、バイメタル63は、弾性力によって樹脂リップ部68,69の劣化に追従できる。そのため、樹脂リップ部68,69が劣化しても安定したシール圧を確保することができる。
【0042】
図2に示すように、バイメタル63は、低燃温時には、その形状が図中上方に凸に変形し、樹脂リップ部69と当接する。そして、バイメタル63は、メイン通路61のインレット61aから流入するリターン燃料を、連通孔63aを通してバイパス通路62側に導入する。その際、チェックバルブ65は、燃圧が所定の開弁圧を超えると開弁する。すると、リターン燃料は、バイパス通路62を通ってフィードライン1を流れる燃料に合流する。
【0043】
一方、図3に示すように、バイメタル63は、高燃温時には、図中下方に凸に変形し、メイン通路61のインレット61aから流入するリターン燃料をメイン通路61のアウトレット61bに導入する。その際、バイメタル63は、樹脂リップ部68に当接し、バイパス通路62に漏出しようとする燃料をシールする。万一漏出しても、さらにチェックバルブ65が燃料をシールする。
【0044】
このように、バイメタル63は、低燃温時には、メイン通路61のインレット61aから流入するリターン燃料をバイパス通路62側に導入する。このとき、図13及び図14に示した従来の三方弁600では、リターン燃料はバイメタル663の外周と三方弁600の内壁面600bとの隙間を通って、燃料通路162側に流入していた。この隙間は小さく、低燃温時にはリターン燃料の圧力損失が大きかった。
【0045】
これに対して本実施形態による三方弁60では、バイメタル63に連通孔63aを設け、この連通孔63aを通してバイパス通路62側に導入する。そのため、連通孔63aの数や大きさを調整して連通孔63aの開口面積を大きくすることで圧力損失を小さくすることができる。
【0046】
また、従来の三方弁600は、高燃温時において、図14に示したようにチェックバルブ665で燃料をシールしていたが、本実施形態による三方弁60は、図3に示すようにバイメタル63が樹脂リップ部68の上面68aと当接して燃料をシールする。そのため、燃圧に影響されずに燃料をシールすることができる。したがって、高燃温時にリターン燃料がフィードライン1に還流することを防止することができる。
【0047】
図4は、リターン燃料の流量とフィードライン1への漏れ量との関係を、本発明による三方弁60と従来の三方弁600とで比較して示した図である。
【0048】
この図に示すように、従来の三方弁600は、リターン燃料の流量が多くなると、フィードライン1への漏れ量も多くなる。燃圧が所定の開弁圧を超えると燃料をシールしていたチェックバルブ665が開弁してしまうからである。
【0049】
これに対し、本発明による三方弁60は、リターン燃料の流量が多くなっても、フィードライン1にはほとんど燃料を漏らさない。本発明による三方弁60は、バイメタル63が、樹脂リップ部68に密着して燃料をシールする。そのため、チェックバルブでシールする従来の三方弁600と異なり、燃圧の影響を受けないからである。
【0050】
図5は、リターン燃料のフィードライン1への漏れ量とインジェクションポンプ30の入口の燃温との関係を、本発明による三方弁60と従来の三方弁600とで比較して示した図である。
【0051】
本発明による三方弁60は、従来の三方弁600に比べてフィードライン1へのリターン燃料の漏れ量を少なくできる(図4参照)。高温のリターン燃料の漏れ量を少なくすることで、図5に示すように、本発明による三方弁60は、従来の三方弁600に比べてインジェクションポンプ30の入口の燃温を下げることができる。
【0052】
図6は、インジェクションポンプ30の入口の燃温とコモンレール40の内圧との関係を、本発明による三方弁60と従来の三方弁600とで比較して示した図である。
【0053】
燃温が高くなると燃料中にベーパが発生する。ベーパがわずかでも含まれていると、高圧の燃料を噴射する場合には、インジェクタ50の噴射量は大きく変動する。そのため、噴射バラツキが生じ、安定した燃料噴射ができなくなる。そのため、燃温が高い場合には、コモンレール40の内圧を下げて燃温の上昇を抑える必要がある。
【0054】
本発明による三方弁60は、従来の三方弁600に比べてインジェクションポンプ30の入口の燃温を下げることができる(図5参照)。したがって、図6に示すように、本発明による三方弁60は、従来の三方弁600に比べてコモンレール40の内圧を上げることができる。
【0055】
図7は、コモンレール40内の圧力とエンジン出力との関係を、本発明による三方弁60と従来の三方弁600とで比較して示した図である。
【0056】
本発明による三方弁60は、従来の三方弁600に比べてコモンレール40の内圧を上げることができる(図6参照)。したがって、図7に示すように、本発明による三方弁60は、従来の三方弁600に比べてコモンレール40の内圧を上げることができ、エンジン出力を上げることができる。なお、コモンレール40の内圧は、インジェクションポンプ30に備えた調量弁によって調整する。
【0057】
以上説明した本実施形態によれば、バイメタル63をOリング66,67で狭持して固定し、バイメタル63が凹凸変化する空間内に樹脂リップ部68,69を設ける。バイメタル63は、低温で上に凸となって樹脂リップ69に当接し、燃料がリターンライン2へ流れることを防止する。また、バイメタル63は、高温で下に凸となって樹脂リップ部68に当接し、燃料がフィードライン1へ流れることを防止する。
【0058】
また、バイメタル63は、弾性力によって樹脂リップ部68,69の劣化に追従できる。このように、樹脂リップ部68,69に作用するバイメタル63の弾性力を燃料シール圧として利用することで、樹脂リップ部68,69が劣化してもバイメタル63が樹脂リップ68,69に密着するので燃料を漏らさない。
【0059】
また、従来の三方弁600はチェックバルブ665のみによって燃料をシールしていた。そのため、高燃温時に燃圧が所定の開弁圧を超えるとチェックバルブ665が開弁し、リターン燃料がフィードライン1に還流していた。
【0060】
これに対して本実施形態によれば、高燃温時には、バイメタル63が、樹脂リップ部68に密着して燃料をシールする。そのため、燃圧に影響されずに燃料をシールすることができる。したがって、高燃温時にリターン燃料がフィードライン1に漏出することを防止することができる。さらに、三方弁60は、燃圧に影響されない仕様なので、リターンライン2に存在する燃料クーラ70やジェットポンプ11等の仕様にも影響を与えることがない。
【0061】
また、低燃温時には、メイン通路61のインレット61aから流入するリターン燃料をバイパス通路62側に導入する。
【0062】
このとき、従来の三方弁600では、リターン燃料はバイメタル63の外周と三方弁600の内壁面600bとの隙間を通って、燃料通路162側に流入していた。この隙間は小さく、低燃温時にはリターン燃料の圧力損失が大きかった。これに対して本実施形態によれば、バイメタル63に連通孔63aを設け、この連通孔63aを通してバイパス通路62側に導入する。そのため、連通孔63aの数や大きさを調整して連通孔63aの開口面積を大きくすることで圧力損失を小さくすることができる。
【0063】
(第2実施形態)
次に、図8を参照して、本発明の第2実施形態による三方弁260について説明する。本発明の第2実施形態による三方弁260は、ベーパ通路261を設けた点で第1実施形態と相違する。以下、その相違点を中心に説明する。なお、以下に示す各実施形態では前述した第1実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号を用いて重複する説明を適宜省略する。
【0064】
図8は、本発明の第2実施形態による三方弁260の構成を示す概略図である。
【0065】
三方弁260は、メイン通路61のインレット61aとアウトレット61bとを連通するベーパ通路261を有する。三方弁260は、メイン通路61のアウトレット61b側にバイメタル63の連通孔63aを有する。連通孔63aは、ベーパ通路261よりも下方に設けられる。
【0066】
図8に示すように、低燃温時には、バイメタル63が樹脂リップ部69に密着する。このとき、三方弁260のハウジング260aは円筒形であるため、インレット61aから流入したリターン燃料は、樹脂リップ部69のまわりを通ってアウトレット61b側に設けられた連通孔63aからバイパス通路62へ導入される。
【0067】
ここで、燃料中に発生したベーパが、フィードライン1を流れる燃料と合流すると、上述したようにインジェクタ50は安定した燃料噴射ができなくなる。そこで、本実施形態のように、ベーパ通路261を、バイメタル63の連通孔63aよりもインレット61a側に設け、さらに連通孔63aをベーパ通路261よりも下方に設けることで、リターン燃料中に発生したベーパを積極的に燃料タンク10に送ることができる。そのため、連通孔63aを通って、フィードライン1に供給される燃料にベーパが混入しにくくなる。その結果、燃料中に発生したベーパがインジェクタ50から燃料と共に噴射されることを防止できる。したがって、インジェクタ50は安定した燃料噴射を行うことができる。また、ベーパロックの発生を抑制できる。
【0068】
(第3実施形態)
次に、図9を参照して、本発明の第3実施形態による三方弁360について説明する。本発明の第3実施形態による三方弁360は、樹脂リップ部68,69にゴムシート361を取り付けた点で第1実施形態と相違する。以下、その相違点を中心に説明する。
【0069】
図9は、本発明の第3実施形態による三方弁360の構成を示す概略図である。
【0070】
三方弁360には、樹脂リップ部68,69とバイメタル63とで形成されるシール面68a,69aにゴムシート361が取り付けられる。
【0071】
本実施形態によれば、燃料シール面68a,69aにゴムシート361をシール材として取り付けることで、バイメタル63が密着したときに、より安定した燃料シール性が確保できる。
【0072】
(第4実施形態)
次に、図10を参照して、本発明の第4実施形態による三方弁460について説明する。本発明の第4実施形態による三方弁460は、バイメタル63の両面に樹脂リップ部68,69と当接するゴムシート461を取り付けた点で第1実施形態と相違する。以下、その相違点を中心に説明する。
【0073】
図10は、本発明の第4実施形態による三方弁460の構成を示す概略図である。
【0074】
三方弁460内のバイメタル63の両面には、樹脂リップ部68,69と当接するようにゴムシート461が取り付けられる。ゴムシート461は、薄い円盤状の板体である。
【0075】
このように、燃料シール面を樹脂リップ部68,69とゴムシート461とで形成することで、より安定した燃料シール性が確保できる。なお、ゴムシート461の形状は、樹脂リップ部68,69にあわせてリング状にしてもよい。
【0076】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。例えば、上記各実施形態では、バイメタル63を2本のOリング66,67で狭持して固定していたが、図11に示すように、内周に環状の切り欠き561aを設けた1つのゴムリング部材561で狭持して固定してもよい。
【0077】
また、上記各実施形態において、燃料通路としてバイメタル63に形成していた連通孔63aの代わりに、図12に示すように、ハウジング560aの一部に燃料通過用の連通路562を形成してもよい。連通路562は、バイメタル63によって区画されたインレット61a側のメイン通路61とバイパス通路62側の空間64とを連通する。
【0078】
また、バイメタル63とチェックバルブ65とで二重に燃料シールをしていたが、バイメタル63で安定した燃料シールが可能なので、チェックバルブ65を無くしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明による燃料供給装置100の概略図である。
【図2】低燃温時における本発明の第1実施形態による三方弁の様子を示した図である。
【図3】高燃温時における本発明の第1実施形態による三方弁の様子を示した図である。
【図4】リターン燃料の流量とフィードラインへの漏れ量との関係を示した図である。
【図5】リターン燃料のフィードラインへの漏れ量とインジェクションポンプ入口の燃温との関係を示した図である。
【図6】インジェクションポンプ入口の燃温とコモンレール内の圧力との関係を示した図である。
【図7】コモンレール内の圧力とエンジン出力との関係を示した図である。
【図8】本発明の第2実施形態による三方弁の構成を示す概略図である。
【図9】本発明の第3実施形態による三方弁の構成を示す概略図である。
【図10】本発明の第4実施形態による三方弁の構成を示す概略図である。
【図11】バイメタルを狭持するゴム材の変形例を示す図である。
【図12】燃料通過用の連通路を三方弁本体に形成した図である。
【図13】低燃温時における従来の三方弁の様子を示した図である。
【図14】高燃温時における従来の三方弁の様子を示した図である。
【符号の説明】
【0080】
1 フィードライン
2 リターンライン
10 燃料タンク
60 三方弁
61 メイン通路
61a インレット
61b アウトレット
62 バイパス通路
62a 導入口(開口端)
63 バイメタル
63a 連通孔
66 Oリング(保持部材)
67 Oリング(保持部材)
100 燃料供給装置
261 ベーパ通路
361 ゴムシート(ゴムシール材)
461 ゴムシート(ゴムシール材)
561 ゴムリング部材(保持部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料供給装置のリターンラインを流れる燃料を、燃温の高低に応じて燃料供給装置のフィードラインに供給する燃料供給装置用三方弁であって、
前記リターンラインを流れる燃料が通るメイン通路と、
前記メイン通路及び前記フィードラインを連通するバイパス通路と、
前記バイパス通路の開口端から突設されたリップ部と、
燃温の高低に応じて上面に凸又は下面に凸に変形し、燃温が高温のときには前記リップ部に当接して前記開口端を閉塞し、燃料がバイパス通路に漏出することを防止するバイメタルと、
を有する燃料供給装置用三方弁。
【請求項2】
燃温が低温のときに前記バイメタルによって区画される前記メイン通路のインレット側の通路とアウトレット側の通路とを連通するベーパ通路を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の燃料供給装置用三方弁。
【請求項3】
前記バイメタルは、燃料を通過させる連通孔を有する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の燃料供給装置用三方弁。
【請求項4】
前記連通孔は、前記メイン通路のアウトレット側に設けられる
ことを特徴とする請求項3に記載の燃料供給装置用三方弁。
【請求項5】
前記バイメタルの円周部に設けられ、そのバイメタルを保持する保持部材を有する
ことを特徴とする請求項1から4までのいずれか1つに記載の燃料供給装置用三方弁。
【請求項6】
前記保持部材は、前記バイメタルを両面から狭持する一対のOリングである
ことを特徴とする請求項5に記載の燃料供給装置用三方弁。
【請求項7】
前記保持部材は、前記バイメタルを両面から狭持する切り欠きを有するゴムリング部材である
ことを特徴とする請求項5に記載の燃料供給装置用三方弁。
【請求項8】
前記バイメタルと前記バイパス通路の開口端との当接面にゴムシール材を有する
ことを特徴とする請求項1から7までのいずれか1つに記載の燃料供給装置用三方弁。

【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図2】
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【図3】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−38695(P2008−38695A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−212041(P2006−212041)
【出願日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】