説明

燃料処理システム

【課題】選択酸化触媒を、構造的に常時適正温度に保つことができるため、安定した一酸化炭素除去特性を得る。
【解決手段】選択酸化器51に、蒸気セパレータ(気水分離器)52と選択酸化器入口冷却器(熱交換器)53を一体的に組み込む。選択酸化器51を構成する容器201内には、蒸気セパレータ52と選択酸化触媒202が環状の隔壁54を経て内外に接するように収納する。外周部分の選択酸化触媒202で発生する熱がそれに囲まれた中央部分の蒸気セパレータ52に伝達される。隔壁54は、熱伝達率を高めるために深いV字状のひだを連続させて体積当たりの表面面積を増大させる。選択酸化器入口冷却器53は、蒸気セパレータ52内に設けられ、この選択酸化器入口冷却器53を通る改質ガスから吸収される熱が蒸気セパレータ52に伝達される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一酸化炭素除去器により燃料中の一酸化炭素を除去し、一酸化炭素の量を低下させた燃料を燃料利用側に供給する燃料処理システムに関するものであり、特に、一酸化炭素除去器の一酸化炭素除去特性を安定させるための技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、燃料の有している化学エネルギーを電気に直接変換するシステムとして、燃料電池が知られている。この燃料電池は、燃料である水素と酸化剤である酸素とを電気化学的に反応させて、電気を直接取り出すものであり、高い効率で電気エネルギーを取り出すことができると同時に、静かで有害な排ガスを出さないという環境性に優れた特徴を有するシステムである。最近では、小型の燃料電池の開発が活発化し、家庭用燃料電池の普及も間近な状況となっている。
【0003】
また、燃料電池において使用するガスのうち、酸素については、空気中の酸素を供給することとしているが、純水素は高価でありかつ汎用性に欠けることから、通常は、都市ガス等の原燃料を燃料処理システムにて改質して燃料電池に供給している。固体高分子形燃料電池では、電池の運転温度が100℃以下と比較的低めであることから、電池に供給される改質ガス中の一酸化炭素濃度をある一定値以下まで下げる必要がある。通常、管理値として目安となるのは10ppm以下であり、これを越える場合は、電池の電圧特性に影響を与える可能性がある。
【0004】
一般に、供給ガス中の一酸化炭素を10ppm以下に下げる手段として、燃料処理システム中に選択酸化器が用いられる。この選択酸化器は、改質ガスに導入した空気中の酸素により、改質ガス中の一酸化炭素を二酸化炭素化することで一酸化炭素濃度を下げる手段であり、選択酸化触媒の温度を適正に保ちかつ改質ガス量に対し適切な空気を混合していくことで動作する。1つの選択酸化器では、常時安定して10ppm以下まで低下させることが難しいことから、シリーズに接続し、選択酸化器を2段式とする場合が多い。
【0005】
図8は、燃料電池発電システム用として従来使用されている典型的な燃料処理システムの構成を示すブロック図である。
【0006】
この図8に示す燃料処理システムにおいて、シリーズに接続された2段の選択酸化器1,2と、その前後中間に位置する、選択酸化器入口冷却器3、選択酸化器中間冷却器4、燃料電池入口冷却器5、という計3台の冷却器が、改質器やシフトコンバータ等からなる燃料改質系6および燃料電池本体7の間に設置されている。このうち、2段の選択酸化器1,2は、容器101中に一酸化炭素を除去する選択酸化触媒102を収納して構成されている。また、2段の選択酸化器1,2に酸化剤となる空気を供給するために、回転制御式のブロア8が設けられている。
【0007】
さらに、ブロア8から供給される空気流量を制御するために、各段の選択酸化器1,2に対して空気を供給する部分には、各選択酸化器1,2に供給される空気流量を計測する空気流量計9,10、および、空気ライン間のバイパスフローを防ぐための空気逆止弁11,12がそれぞれ設けられると共に、ブロア8から供給される空気流量を設定値に制御するための制御信号Scを出力する制御装置20が設けられている。この制御装置20は、燃料改質系6からの燃料流量信号Sfと、空気流量計9,10からの空気流量計測信号Sa1,Sa2に基づいて、空気流量計測信号Sa1,Sa2が適切な値となるようにブロア8を制御するための制御信号Scを出力する手段である。
【0008】
図9は、制御装置20の構成を示すブロック図である。この図9に示すように、制御装置20は、燃料流量入力部21、関数演算部(燃料流量vs空気設定値)22、空気流量計測信号入力部23、偏差計算器24、PID制御器25、制御信号出力部26、等を備えている。
【0009】
以上のような図8の燃料処理システムの動作は次の通りである。改質器、シフトコンバータ等からなる燃料改質系6で発生した改質ガスは、選択酸化器入口冷却器3にて適正な温度に冷却された後、空気と混合されて1段目の選択酸化器1に流入し、ガス中の一酸化炭素が概ね除去される。改質ガスは次に、選択酸化器中間冷却器4により冷却され、再度微量の空気と混合されて2段目の選択酸化器2に流入し、ガス中の一酸化炭素が10ppm以下までほぼ完全に除去される。改質ガスはこの後、燃料電池入口冷却器5により冷却されて、燃料利用主体である燃料電池本体7に供給され、発電に寄与する。
【0010】
また、2段の選択酸化器1,2に対して供給される空気流量の制御は、制御装置20により回転制御式のブロア8の回転を制御することで行われる。すなわち、制御装置20は、燃料改質系6からの燃料流量信号Sfと、空気流量計9,10からの空気流量計測信号Sa1,Sa2に基づいて、ブロア8から各段の選択酸化器1,2に供給される空気流量の適切な値を設定し、設定した値に応じた制御信号Scを出力することにより、空気流量計測信号Sa1,Sa2が適切な値となるようにブロア8を制御する。
【0011】
この場合、制御装置20の各部の動作は次の通りである。すなわち、燃料流量入力部21により、燃料改質系6からの燃料流量信号Sfが入力されると共に、空気流量計測信号入力部23により空気流量計9,10からの空気流量計測信号Sa1,Sa2が入力される。関数演算部22により、入力された燃料流量に基づいて、燃料流量に対して供給する空気流量を設定する設定関数等を使用した関数演算が行われ、供給すべき空気流量の設定値が算出される。偏差計算器24により、関数演算部22で設定された空気流量の設定値に対する入力された空気流量の計測値の偏差が求められ、PID制御器25により、その偏差がゼロとなるようにブロア8に対する要求値が設定され、制御信号出力部26からその要求値を含む制御信号Scが出力される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2001−93550公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところで、前述した従来の燃料処理システムにおいて、整定状態での安定化は比較的容易であるものの、負荷変化時や起動直後等には選択酸化器の温度が適正範囲を逸脱する可能性がある。また、負荷上昇時等には、選択酸化器の選択酸化触媒温度が低下する傾向にあることから、選択酸化器から供給される改質ガス中の一酸化炭素濃度が管理値以上に上昇する可能性が高く、その対策として、選択酸化器を2段式にする等の複雑なシステム構成が必要であるため、システムの簡素化やコストダウンを目指して選択酸化器を1段式とすることは難しい。
【0014】
なお、このような燃料処理システムの問題点は、燃料電池発電システム用の燃料処理システムに限らず、選択酸化器等の一酸化炭素除去器を使用した各種の燃料処理システムに同様に存在している。
【0015】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、負荷変化時や起動直後等においても一酸化炭素除去器の安定した一酸化炭素除去特性が得られ、かつ、1段式の一酸化炭素除去器でも一酸化炭素を管理値以下まで十分に低下させることが可能な、高性能で簡素化やコストダウンに優れた燃料処理システムとその制御方法、制御プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、容器中に一酸化炭素を除去する触媒を収納してなる一酸化炭素除去器に対して、一酸化炭素を含む燃料を酸化剤と共に供給することにより、この燃料中の一酸化炭素を除去し、一酸化炭素の量を低下させた燃料を燃料利用側に供給する燃料処理システムにおいて、前記一酸化炭素除去器と一体的に気水分離器が設けられ、一酸化炭素除去器で発生する熱が気水分離器に伝達されるように構成されている。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明によればシステム内で合理的な熱伝達を行うことにより、選択酸化触媒を、構造的に常時適正温度に保つことができるため、安定した一酸化炭素除去特性を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明を燃料電池発電システム用として適用した参考例における燃料処理システムの構成を示すブロック図。
【図2】図1に示す制御装置の構成を示すブロック図。
【図3】図2に示す制御装置の動作の概略を示すフローチャート。
【図4】図1に示す燃料処理システムにおいて、温度計を異なる部分に設けた一変形例を示すブロック図。
【図5】図1に示す燃料処理システムにおいて、温度計を異なる部分に設けた別の変形例を示すブロック図。
【図6】図1に示す燃料処理システムにおいて、温度計を異なる部分に設けた別の変形例を示すブロック図。
【図7】本発明を燃料電池発電システム用として適用した実施例1における燃料処理システムの選択酸化器部分の構成を示す模式的平面図と模式的縦断面図。
【図8】燃料電池発電システム用として従来使用されている典型的な燃料処理システムの構成を示すブロック図。
【図9】図8に示す制御装置の構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[参考例]
図1は、本発明を燃料電池発電システム用として適用した参考例における燃料処理システムの構成を示すブロック図である。すなわち、本発明は、この参考例における選択酸化器部分に適用することができる。
【0020】
この図1に示すように、参考例の燃料処理システムにおいては、1段の選択酸化器1と、その前後に位置する、選択酸化器入口冷却器3、燃料電池入口冷却器5、という計2台の冷却器のみが、改質器やシフトコンバータ等からなる燃料改質系6および燃料電池本体7の間に設置されている。すなわち、1段の選択酸化器(一酸化炭素除去器)1のみを使用した1段構成としているため、2段構成としていた図8の従来技術に比べて、2段目の選択酸化器2と1台の選択酸化器中間冷却器4が省略されていると共に、2段目の選択酸化器2の空気流量計10と空気逆止弁12が省略されている。そして、回転制御式のブロア8は、酸化剤となる空気を1段の選択酸化器1のみに供給するようになっている。
【0021】
また、ブロア8から供給される空気流量を制御するために、選択酸化器1に供給される空気流量を計測する空気流量計9に加えて、本発明に従い、選択酸化器1における容器101の出口部分には、選択酸化器1から供給される改質ガスの温度を計測する温度計30が設けられている。なお、選択酸化器を1段構成とした結果、空気ラインの分岐がなくなり、バイパスフローを防ぐ必要がなくなったことから、図8の従来技術に比べて、選択酸化器1の空気逆止弁11が省略されている。
【0022】
そして、ブロア8を制御するための制御信号Scを出力する制御装置としては、温度計30からの温度計測信号Stを利用する制御装置40が設けられている。この制御装置40は、本発明に従い、燃料改質系6からの燃料流量信号Sf、空気流量計9からの空気流量計測信号Sa、および温度計30からの温度計測信号Stに基づいて、空気流量計測信号Saおよび温度計測信号Stが適切な値となるようにブロア8を制御するための制御信号Scを出力するようになっている。
【0023】
図2は、制御装置40の構成を示すブロック図である。この図2に示すように、制御装置40はまず、図9に示した従来の制御装置20と同様に、燃料流量入力部21、関数演算部(燃料流量vs空気設定値)22、空気流量計測信号入力部23、偏差計算器24、PID制御器25、制御信号出力部26、等を備えている。この制御装置40は、これらの構成に加えて、温度計測信号入力部41、関数演算部(燃料流量vs温度設定値)42、偏差計算器43、PID制御器44、関数演算部(空気設定値vsブロア開度)45、加算器46,47、LEAD制御器48、等を備えている。
【0024】
なお、このような制御装置40は、具体的には、コンピュータのメインメモリとそれに記憶された燃料処理システム用またはブロア制御用として特化されたプログラム、そのプログラムによって制御されるCPUなどの演算処理部、必要なデータを記憶する補助記憶装置、等により実現される。ここで挙げたハードウェア資源は、コンピュータが一般的に備えている基本的な構成要素であるため、これ以上の説明は省略する。
【0025】
以上のような参考例における燃料処理システムの動作は次の通りである。改質器、シフトコンバータ等からなる燃料改質系6で発生した改質ガスは、選択酸化器入口冷却器3にて適正な温度に冷却された後、空気と混合されて選択酸化器1に流入し、ガス中の一酸化炭素が10ppm以下までほぼ完全に除去される。改質ガスはこの後、燃料電池入口冷却器5により冷却されて、燃料利用主体である燃料電池本体7に供給され、発電に寄与する。
【0026】
また、選択酸化器1に対して供給される空気流量の制御は、制御装置40により回転制御式のブロア8の回転を制御することで行われる。すなわち、制御装置40は、燃料改質系6からの燃料流量信号Sf、空気流量計9からの空気流量計測信号Sa、および温度計30からの温度計測信号Stに基づいて、ブロア8から選択酸化器1に供給される空気流量の適切な値を設定し、設定した値に応じた制御信号Scを出力することにより、空気流量計測信号Saおよび温度計測信号Stが適切な値となるようにブロア8を制御する。
【0027】
図3は、制御装置40の動作の概略を示すフローチャートである。この図3に示すように、温度計測信号Stの値(温度計測値)が温度設定値と乖離していない場合、すなわち、予め設定された温度設定値に対する温度計測値の偏差が、予め設定された所定レベル以下である場合(S301のYES)には、燃料流量信号Sfに基づいて、空気流量の適切な値を設定し、空気流量計測信号Saの値(空気計測値)が空気設定値と一致するようにブロア8を制御する基本的なブロア制御のみが行われる(S302)。ここで、制御装置40が燃料改質系6から受け取る燃料流量信号Sfは、燃料流量の設定値あるいは実際の計測値である。
【0028】
すなわち、ある一定の負荷設定においては、燃料電池本体7で発生させる直流電流値に基づき、燃料改質系6から供給される燃料流量は一定の値に設定されて制御されるため、制御装置40は、燃料改質系6から、その燃料流量の設定値あるいは実際に供給される燃料流量の計測値を燃料流量信号Sfとして受け取り、この燃料流量信号Sfに基づいて、基本的なブロア制御を行う。
【0029】
このような基本的なブロア制御に係る制御装置40の各部の動作は、図9に示した制御装置20の各部の動作と同様である。関数演算部22により燃料流量に応じた空気流量設定値が算出され、PID制御器25により、空気流量計測信号Saの値(空気計測値)を空気設定値と一致させるための要求値がブロア8に対して設定され、制御信号出力部26からその要求値を含む制御信号Scが出力される。
【0030】
また、負荷変化時や起動直後等の、温度計測信号Stとして得られる温度計測値が温度設定値と乖離した場合、すなわち、予め設定された温度設定値に対する温度計測値の偏差が、予め設定された所定レベルを越えている場合(S301のNO)には、上記の基本的なブロア制御に加えて、温度制御用のブロア制御が行われる(S303)。この温度制御用のブロア制御は、温度計測信号Stに基づいて空気流量設定値を増減することにより、温度計測信号Stの値(温度計測値)が温度設定値と一致するようにブロア8を制御するものである。
【0031】
この場合、温度制御用のブロア制御に係る制御装置40の各部の動作は、次の通りである。すなわち、関数演算部42により燃料流量に応じた温度設定値が算出され、PID制御器44により、温度計測信号Stの値(温度計測値)を温度設定値と一致させるような空気設定値の増減を行い、その空気設定値を実現するための要求値がブロア8に対して設定され、制御信号出力部26からその要求値を含む制御信号Scが出力される。その結果、最終的には、温度計測値が適正値となるように制御される。
【0032】
なお、PID制御器44には上下限機能が付いており、温度計30(温度計測信号St)に基づく空気の増減はある一定幅内で行われる。また、負荷上昇時(S304のYES)には、LEAD制御器48により、ブロア開度を制御して、先行的な空気増量用のブロア制御を行う(S304のYES)。この場合、ブロア開度は、関数演算部45により空気設定値に応じて算出される。
【0033】
以上のような参考例によれば、次のような効果が得られる。すなわち、選択酸化器の容器出口部分の温度を計測し、計測される温度計測値に基づいて選択酸化器に供給する酸化剤の流量を制御することにより、選択酸化器部分の温度を、適正な範囲内となるように制御できる。その結果、起動時や負荷変化時に選択酸化器の選択酸化触媒の温度が変化した場合でも、その温度変化にリアルタイムに対応して、酸化剤の流量の設定値を最適な値に変化させることで、選択酸化器部分の温度を常に適正な範囲内に維持することができるため、選択酸化器の安定した一酸化炭素除去特性が得られる。
【0034】
また、このように、選択酸化器の安定した一酸化炭素除去特性が得られることから、2段式の一酸化炭素除去器とする等の複雑なシステム構成を行うことなく、1段式(単体)の選択酸化器を使用した場合でも、一酸化炭素を管理値以下まで十分に低下させることができるため、システムの簡素化やコストダウンも可能になる。
【0035】
なお、参考例の制御装置40において、PID制御器25を停止させることで、選択酸化器1からの空気流量計測信号Saを使用せずに制御することも可能である。通常、ブロア回転数と空気流量の関係の再現性には限界があり、選択酸化器の空気流量を使用しない場合、一酸化炭素除去特性が不安定となる可能性が高い。しかし、参考例の制御装置40においては、選択酸化器部分の温度に基づく温度制御により、選択酸化器の空気流量を用いることなしに安定した一酸化炭素除去特性を得ることができる。
【0036】
[参考例の変形例]
なお、参考例の変形例として、図4〜図6に示すように、温度計を選択酸化器1の異なる部分に設けることも可能である。この変形例の選択酸化器部分にも、本発明を適用することが可能である。
【0037】
ここで、図4は、選択酸化器1の選択酸化触媒102中に温度計31を設けて、選択酸化触媒102中の温度を計測するように構成した変形例を示すブロック図であり、図5は、選択酸化器1における容器101の表面部分に温度計32を設けて、容器101の表面部分の温度を計測するように構成した変形例を示すブロック図である。これらの変形例においても、温度計31,32により計測される温度計測信号Stを温度計測値として使用することにより、参考例と同様の作用・効果を得ることができる。
【0038】
また、図6は、選択酸化器1における容器101の出口部分の温度計30に加えて、容器101の入口部分にも温度計33を設けて、容器101の出口部分と入口部分の両方の温度を計測するようにした変形例を示すブロック図である。この変形例においては、温度上昇値、すなわち、出口温度計測値(出口温度計測信号St1)と入口温度計測値(入口温度計測信号St2)の差を温度計測値として使用することにより、参考例と同様の作用・効果を得ることができる。
【実施例1】
【0039】
図7は、前記参考例に示す本発明を燃料電池発電システム用として適用した実施例1における燃料処理システムの選択酸化器部分の構成を示す図であり、(a)は模式的平面図、(b)は模式的縦断面図である。
【0040】
この図7に示すように、実施例1の燃料処理システムは、選択酸化器51に、蒸気セパレータ(気水分離器)52と選択酸化器入口冷却器(熱交換器)53を一体的に組み込んだものである。すなわち、選択酸化器51を構成する容器201内には、蒸気セパレータ52と選択酸化触媒202が環状の隔壁54を経て内外に接するように収納されており、外周部分の選択酸化触媒202で発生する熱がそれに囲まれた中央部分の蒸気セパレータ52に伝達されるように構成されている。
【0041】
ここで、隔壁54は、熱伝達率を高めるために深いV字状のひだを連続させて体積当たりの表面面積を増大させた断面形状とされている。また、選択酸化器入口冷却器53は、蒸気セパレータ52内に設けられており、この選択酸化器入口冷却器53を通る改質ガスから吸収される熱が蒸気セパレータ52に伝達されるように構成されている。なお、蒸気セパレータ52には、蒸気を供給するための蒸気供給ライン55が設けられている。
【0042】
以上のような実施例1における燃料処理システムの作用は次の通りである。すなわち、図示していない燃料改質系上流からの反応用空気の混合された改質ガスは、蒸気セパレータ52内に設けられた選択酸化器入口冷却器53を通過して蒸気セパレータ52温度付近まで降温した後、選択酸化触媒202に導かれ、一酸化炭素除去反応後、燃料電池入口冷却器へ送られる。隔壁54により、選択酸化触媒202と蒸気セパレータ52の間の熱伝達率は高められているため、選択酸化触媒202の酸化反応で発生する熱は効率よく蒸気セパレータ52に伝達される。
【0043】
また、蒸気セパレータ52は、二層流で通常圧力制御されていることから、温度はほぼ一定であるため、選択酸化触媒202の温度は、冷えすぎることなく、常に理想的な温度に保たれる。そのため、負荷変化時や、何らかの原因で選択酸化器空気の量が適正以上に導入された場合においても、構造的に適正温度が維持される。
【0044】
以上のような実施例1によれば、システム内で合理的な熱伝達を行うことにより、選択酸化触媒を、構造的に常時適正温度に保つことができるため、安定した一酸化炭素除去特性を得ることが可能となる。なお、実施例1の変形例として、選択酸化器から燃料利用側である燃料電池本体に改質ガスを供給する部分に使用される燃料電池入口冷却器を蒸気セパレータ内に設けることも可能である。この場合には、選択酸化触媒を通過した改質ガスを、蒸気セパレータ内に設けられた燃料電池入口冷却器を通過して蒸気セパレータ温度付近まで降温した後、燃料利用側である燃料電池本体に供給することができる。
【0045】
[他の実施例]
前記実施例1における蒸気セパレータ一体型の選択酸化器は、前記参考例またはその変形例のいずれかの燃料処理システムに適用することが可能であり、その場合には、実施例1と参考例の各効果を組合せた相乗的な効果が得られる。
【0046】
さらに、本発明は、燃料電池発電システム用の燃料処理システムとして好適であるが、これに限定されるものではなく、選択酸化器等の一酸化炭素除去器を使用して燃料を処理する各種の燃料処理システムに同様に適用可能であり、同様に優れた効果が得られるものである。
【符号の説明】
【0047】
1,2…選択酸化器
2…母線
3…選択酸化器入口冷却器
4…選択酸化器中間冷却器
5…燃料電池入口冷却器
6…燃料改質系
7…燃料電池本体
8…ブロア
9,10…空気流量計
11,12…空気逆止弁
20,40…制御装置
21…燃料流量入力部
22…関数演算部(空気流量vs空気設定値)
23…空気流量計測信号入力部
24,43…偏差計算器
25,44…PID制御器
26…制御信号出力部
30〜33…温度計
41…温度計測信号入力部
42…関数演算部(燃料流量vs温度設定値)
45…関数演算部(空気設定値vsブロア開度)
46,47…加算器
48…LEAD制御器
51…選択酸化器
52…蒸気セパレータ
53…選択酸化器入口冷却器
54…隔壁
55…蒸気供給ライン
101,201…容器
102,202…選択酸化触媒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器中に一酸化炭素を除去する触媒を収納してなる一酸化炭素除去器に対して、一酸化炭素を含む燃料を酸化剤と共に供給することにより、この燃料中の一酸化炭素を除去し、一酸化炭素の量を低下させた燃料を燃料利用側に供給する燃料処理システムにおいて、
前記一酸化炭素除去器と一体的に気水分離器が設けられ、一酸化炭素除去器で発生する熱が気水分離器に伝達されるように構成されている、
ことを特徴とする燃料処理システム。
【請求項2】
前記一酸化炭素除去器に供給する前記燃料を冷却するための熱交換器が、前記気水分離器と一体的に設けられ、この熱交換器内を通る燃料から吸収される熱が気水分離器に伝達されるように構成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の燃料処理システム。
【請求項3】
前記一酸化炭素除去器から前記燃料利用側に供給する前記燃料を冷却するための熱交換器が、前記気水分離器と一体的に設けられ、この熱交換器内を通る燃料から吸収される熱が前記気水分離器に伝達されるように構成されている、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の燃料処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−180128(P2010−180128A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−66226(P2010−66226)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【分割の表示】特願2004−301697(P2004−301697)の分割
【原出願日】平成16年10月15日(2004.10.15)
【出願人】(301060299)東芝燃料電池システム株式会社 (358)
【Fターム(参考)】