説明

燃料噴射ポンプ

【課題】低質油の固化に起因するアーマチャの固着を防止することができる燃料噴射ポンプを提供する。
【解決手段】電磁スピル弁20を備える燃料噴射ポンプ1であって、電磁スピル弁20は、スピル弁体24と、スピル弁体24が摺動可能に挿入される電磁弁本体21と、スピル弁体24の一端部に設けられ、磁性体からなるアーマチャ247と、電磁弁本体21の一側に配置され、アーマチャ247を引き付ける磁力が発生することによりスピル弁体24を摺動させるソレノイド23と、ソレノイド23と電磁弁本体21との間に設けられるスペーサ22と、スペーサ22に形成され、アーマチャ247が収納されるアーマチャ室221と、アーマチャ室221に洗浄油を送る洗浄油入口配管27Aが取り付けられる洗浄油入口222と、アーマチャ室221を洗浄した後の洗浄油を排出する洗浄油出口配管27Bが取り付けられる洗浄油出口223と、を備えるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁スピル弁を備える燃料噴射ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、プランジャで燃料を圧送するジャーク式燃料噴射ポンプ(以下単に「燃料噴射ポンプ」という。)においては、燃料の噴射量や噴射時期等が電磁スピル弁によって制御されるものが公知となっている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような電磁スピル弁は、スピル弁体と、スピル弁体が摺動可能に挿入される電磁弁本体と、スピル弁体の一端部に設けられ、磁性体からなるアーマチャと、電磁弁本体の一側に配置され、アーマチャを引き付ける磁力が発生してスピル弁を摺動させるソレノイドと、ソレノイドと電磁弁本体との間に設けられるスペーサと、スペーサに形成され、アーマチャを収納するアーマチャ室と、を備える。スピル弁体は、スピル弁ばねによってソレノイドとは反対側に付勢される。
【0004】
そして、電磁スピル弁においては、ソレノイドに磁力が発生して、アーマチャがソレノイドに引き付けられると、スピル弁体がスピル弁ばねの付勢力に抗してソレノイド側に摺動する。これにより、電磁スピル弁が閉弁して、燃料の噴射が開始される。一方、ソレノイドに磁力が発生しなくなって、アーマチャがソレノイドに引き付けられなくなると、スピル弁体がスピル弁ばねの付勢力によってソレノイドとは反対側に摺動する。これにより、電磁スピル弁が開弁して、燃料の噴射が終了する。
【0005】
ここで、燃料の噴射が終了しても、アーマチャ室等の電磁スピル弁内部には、燃料が残存することになる。例えば、船舶に搭載されるディーゼルエンジンでは、A重油等に比べて粘度の高いC重油等の低質油が燃料として一般的に使用されるが、この場合、粘度の高い低質油がアーマチャ室内に残存することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−163902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の燃料噴射ポンプは、アーマチャ室内を洗浄する構造となっていない。このため、燃料として低質油を使用した場合、エンジン停止後、残存する低質油の温度が下がると、アーマチャ室内に残っている低質油が固化し、アーマチャが固着する、という問題点があった。アーマチャが固着すると、スピル弁体が摺動しにくくなって、エンジン再始動時にスムーズにエンジンスタートすることができない。また、アーマチャ室内に残存する低質油の堆積を抑制するために、電磁スピル弁のメンテナンスインターバルや交換インターバルを短く設定すると、メンテナンスコストが嵩むことになる。
【0008】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、低質油の固化に起因するアーマチャの固着を防止することができる燃料噴射ポンプを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の解決しようとする課題は以上のとおりであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0010】
すなわち、請求項1においては、電磁スピル弁を備える燃料噴射ポンプであって、前記電磁スピル弁は、スピル弁体と、該スピル弁体が摺動可能に挿入される電磁弁本体と、前記スピル弁体の一端部に設けられ、磁性体からなるアーマチャと、前記電磁弁本体の一側に配置され、前記アーマチャを引き付ける磁力が発生して前記スピル弁体を摺動させるソレノイドと、該ソレノイドと前記電磁弁本体との間に設けられるスペーサと、該スペーサに形成され、前記アーマチャを収納するアーマチャ室と、前記アーマチャ室に洗浄油を送る洗浄油入口配管が取り付けられる洗浄油入口と、前記アーマチャ室を洗浄した後の洗浄油を排出する洗浄油出口配管が取り付けられる洗浄油出口と、を備えるものである。
【0011】
請求項2においては、前記洗浄油入口及び洗浄油出口は、いずれも前記スペーサに形成されるものである。
【0012】
請求項3においては、前記洗浄油入口及び洗浄油出口は、いずれも前記電磁弁本体に形成されるものである。
【0013】
請求項4においては、プランジャと、該プランジャが摺動可能に設けられるプランジャバレルと、該プランジャバレルが挿入されるポンプ本体と、電磁スピル弁と、を備える燃料噴射ポンプであって、前記電磁スピル弁は、スピル弁体と、該スピル弁体が摺動可能に挿入される電磁弁本体と、前記スピル弁体の一端部に設けられ、磁性体からなるアーマチャと、前記電磁弁本体の一側に配置され、前記アーマチャを引き付ける磁力が発生して前記スピル弁体を摺動させるソレノイドと、該ソレノイドと前記電磁弁本体との間に設けられるスペーサと、該スペーサに形成され、前記アーマチャを収納するアーマチャ室と、前記アーマチャ室に洗浄油を送る洗浄油入口配管が取り付けられる洗浄油入口と、を備え、前記ポンプ本体は、燃料ギャラリと、該燃料ギャラリからの燃料を排出する燃料出口配管が取り付けられる燃料出口と、を備え、該燃料出口は、前記アーマチャ室を洗浄した後の洗浄油出口を兼ねるものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0015】
請求項1においては、洗浄油入口配管からの洗浄油が、洗浄油入口からアーマチャ室内に送入され、アーマチャ室内が洗浄油で洗浄される。その後、アーマチャ室内を洗浄した後の洗浄油は、アーマチャ室内に残存していた低質油とともに、洗浄油出口から洗浄油出口配管に排出される。これにより、低質油の固化に起因するアーマチャの固着を防止することができる。
【0016】
請求項2においては、洗浄油入口及び洗浄油出口がアーマチャ室の近傍に形成されるため、洗浄油入口及び洗浄油出口の通路長さが短くなる。これにより、洗浄油入口を介して洗浄油をアーマチャ室に送るのに要する時間及び洗浄油出口を介して洗浄油をアーマチャ室から排出するのに要する時間、つまり、アーマチャ室の洗浄時間が短くなって、洗浄効率を向上することができる。
【0017】
請求項3においては、電磁弁本体の部材寸法が大きいことから、洗浄油入口及び洗浄油出口の大口径化を容易に図ることができる。そして、洗浄油入口及び洗浄油出口の大口径化により、洗浄油入口及び洗浄油出口内の単位時間当たりの洗浄油の流量が多くなる。これにより、洗浄油入口を介して洗浄油をアーマチャ室に送るのに要する時間及び洗浄油出口を介して洗浄油をアーマチャ室から排出するのに要する時間、つまり、アーマチャ室の洗浄時間が短くなって、洗浄効率を向上することができる。また、洗浄油入口と洗浄油入口配管との接触面積、及び洗浄油出口と洗浄油出口配管との接触面積が大きくなるため、洗浄油入口配管及び洗浄油出口配管の外乱に起因する、洗浄油入口及び洗浄油出口のフレッティングを防止することができる。
【0018】
請求項4においては、洗浄油入口配管からの洗浄油が、洗浄油入口からアーマチャ室内に送入され、アーマチャ室内が洗浄油で洗浄される。その後、アーマチャ室内を洗浄した後の洗浄油は、アーマチャ室内に残存していた低質油とともに、燃料出口から燃料出口配管に排出される。これにより、低質油の固化に起因するアーマチャの固着を防止することができる。また、ポンプ本体の燃料出口やこれに取り付けられる燃料出口配管を、洗浄油の出口やこれに取り付けられる配管として利用することにより、洗浄油専用の出口や配管を設ける必要がないため、コストを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第一実施形態に係る燃料噴射ポンプの断面図。
【図2】電磁スピル弁及び等圧弁部の断面図。
【図3】(a)電磁スピル弁が閉弁した場合における燃料の流れを示す燃料噴射ポンプの断面図。(b)電磁スピル弁が開弁した場合における燃料の流れを示す燃料噴射ポンプの断面図。
【図4】ソレノイドを取り外した状態の電磁スピル弁の斜視図。
【図5】電磁スピル弁の斜視図。
【図6】(a)電磁スピル弁の側面断面図。(b)(a)におけるA−A位置での断面図。
【図7】洗浄油の流れを示す電磁スピル弁の斜視一部断面図。
【図8】燃料噴射ポンプの洗浄システムの図。
【図9】燃料噴射ポンプの燃料及び洗浄油の流れを示す図。
【図10】本発明の第二実施形態に係る電磁スピル弁の斜視図。
【図11】(a)電磁スピル弁の側面図。(b)電磁スピル弁の側面断面図。(c)(b)におけるB−B位置での断面図。
【図12】電磁スピル弁の斜視一部断面図。
【図13】本発明の第三実施形態に係る燃料噴射ポンプの燃料及び洗浄油の流れを示す図。
【図14】排出される洗浄油の流れを示す燃料噴射ポンプの断面図。
【図15】排出される洗浄油の流れを示す電磁スピル弁の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態について図面に基づき説明する。
【0021】
先ず、本発明の第一実施形態に係る燃料噴射ポンプ1の全体構成について、図1及び図2により説明する。なお、図1の矢印Uで示す方向を「上方」、矢印Lで示す方向を「左方」として、以下に述べる各部材の位置や方向等を説明する。
【0022】
図1に示すように、燃料噴射ポンプ1は、ポンプ本体部10と、電磁スピル弁20と、等圧弁部30と、を備える。燃料噴射ポンプ1は、例えば、C重油等の低質油が燃料として使用されるディーゼルエンジン(例えば、船舶に搭載されるディーゼルエンジン)に用いられる。
【0023】
ポンプ本体部10には、ポンプ本体11が備えられる。ポンプ本体11には、バレル孔111及びタペット室112が上下方向に連続して延びるように形成される。タペット室112の下端部は、ポンプ本体11下面にて開口する。タペット室112には、その下端開口部からタペット12が上下方向に摺動自在に挿入される。
【0024】
また、バレル孔111の上端部は、ポンプ本体11上面にて開口する。バレル孔111には、その上端開口部からプランジャバレル13が挿入される。プランジャバレル13の下端部は、バレル孔111から下方のタペット室112内に突出する一方、プランジャバレル13の上端部は、バレル孔111から上方に突出する。プランジャバレル13の上端部には、フランジ部131が形成される。プランジャバレル13は、フランジ部131を介してポンプ本体11上面に図示しないボルトで固定される。また、バレル孔111の上下中途部には、その孔径が拡大された拡径部が形成される。この拡径部とプランジャバレル13の外周面とで、燃料ギャラリ14が形成される。
【0025】
さらに、ポンプ本体11には、燃料ギャラリ14と接続される燃料入口113及び燃料出口114が形成される。燃料入口113は、図示しないフィードポンプと接続される。燃料入口113からは、前記フィードポンプによって圧送された燃料が燃料ギャラリ14内に送入される。また、燃料出口114からは、燃料ギャラリ14から溢れ出た燃料が排出される。
【0026】
また、プランジャバレル13には、第一燃料供給路132及びプランジャ孔133が上下方向に連続して延びるように形成される。第一燃料供給路132の上端部は、プランジャバレル13の上面にて開口する。また、プランジャ孔133の下端部は、プランジャバレル13の下面にて開口する。プランジャ孔133には、その下端開口部からプランジャ15が上下方向に摺動自在に挿入される。プランジャ孔133の上端部には、その内周面とプランジャ15の上端面とで、加圧室135が形成される。
【0027】
また、プランジャ15の下端部は、プランジャ孔133から下方のタペット室112内に突出するとともに、下部ばね受け16を介してタペット12内の底部に固定される。また、バレル孔111から下方に突出するプランジャバレル13には、上部ばね受け17が外嵌される。上部ばね受け17と下部ばね受け16との上下間には、プランジャばね151が介装される。プランジャばね151によってタペット12が下方に付勢され、タペット12の下方に架設される図示しないカム軸上のカムにタペット12の下面が当接する。
【0028】
さらに、プランジャバレル13には、第一スピル油排出路134が燃料ギャラリ14側から上方向に延びるように形成される。第一スピル油排出路134の上端部は、プランジャバレル13の上面にて開口する一方、第一スピル油排出路134の下端部は、燃料ギャラリ14内にて開口する。
【0029】
また、電磁スピル弁20には、電磁弁本体21が備えられる。電磁弁本体21の右側面には、スペーサ22を介してソレノイド23が取り付けられる。電磁弁本体21は、プランジャバレル13のフランジ部131上面に図示しないボルトで固定される。電磁弁本体21には、吐出弁室211、等圧弁ばね室212及び第二燃料供給路213が、上下方向に連続して延びるように形成される。吐出弁室211の上端部は、電磁弁本体21の上面にて開口する。また、第二燃料供給路213の下端部は、電磁弁本体21の下面にて開口する。
【0030】
さらに、電磁弁本体21には、スピル弁孔214が第二燃料供給路213と交差して電磁弁本体21を左右方向に貫通するように形成される。スピル弁孔214には、スピル弁体24が左右方向に摺動自在に挿入される。
【0031】
図2に示すように、スピル弁孔214の右端部には、スピル弁ばね室214Aが形成される。スピル弁ばね室214Aの右端部は、電磁弁本体21の右側面にて開口する。また、スピル弁孔214の左側において、その左端部には、インサートピース室214B、インサートピース室214B右側には、連通室214Cが形成される。インサートピース室214Bの左端部は、電磁弁本体21の左側面にて開口する。また、連通室214Cは、スピル弁孔214の左右中途部が、左方に向かって段差状に拡径されて形成される。連通室214Cの段差部には、弁座214Dが形成される。なお、弁座214Dには、スピル弁体24に形成される後述するシール面241が着座する。
【0032】
さらに、電磁弁本体21には、第二スピル油排出路215が連通室214C側から下方向に延びるように形成される。第二スピル油排出路215の上端部は、連通室214C内にて開口する一方、第二スピル油排出路215の下端部は、電磁弁本体21の下面にて開口する。第二燃料供給路213と第二スピル油排出路215とは、スピル弁孔214を介して連通される。第二燃料供給路213及び第二スピル油排出路215は、それぞれプランジャバレル13の第一燃料供給路132及び第一スピル油排出路134と接続される(図1参照)。
【0033】
また、インサートピース室214Bには、その左端開口部から略円環状のインサートピース25が挿入されるとともに、これに続いてストッパ26が挿入される。ストッパ26によってインサートピース25がインサートピース室214B内に固定される。インサートピース25には、スピル弁体24が左右方向に摺動自在に挿入される。
【0034】
また、スピル弁体24には、中空部242がスピル弁体24の軸部を左右方向に貫通するように形成される。中空部242の左端部は、インサートピース25内にて開口する一方、中空部242の右端部は、スペーサ22に形成されたアーマチャ室221内にて開口する。また、スピル弁体24の軸方向中途部外周には、縮径部243が形成される。縮径部243は、スピル弁体24の軸方向中途部外周が段差状に縮径されて形成される。縮径部243の左右両側の段差部のうち左側の段差部には、弁座214Dに着座するシール面241が形成される。また、スピル弁体24の右端部には、アーマチャ247が設けられる。アーマチャ247は、その軸部を介して中空部242の右端開口部に固定されるとともに、アーマチャ室221に収納される。
【0035】
アーマチャ室221は、側面視略円形状に形成されるとともに、その左右両端部がそれぞれスペーサ22の左右両側面にて開口する。アーマチャ室221の右端開口部を通じて、アーマチャ247とソレノイド23とが対向する。また、アーマチャ室221の左端開口部には、突出孔281が形成されたスペーサ側ばね受け28が嵌設される。スペーサ側ばね受け28の突出孔281からは、スピル弁体24の突出部244が突出する。
【0036】
突出部244は、スピル弁体24の右端部が右方に向かって段差状に縮径されて形成される。突出部244の外周面と突出孔281の内周面との間には、アーマチャ室221とスピル弁ばね室214Aとを連通させる隙間が形成される。突出部244の段差部には、スピル弁体側ばね受け29が外嵌される。スピル弁体側ばね受け29とスペーサ側ばね受け28との左右間には、スピル弁ばね245が介装される。スピル弁ばね245によってスピル弁体24が左方(ソレノイド23とは反対側)に付勢される。
【0037】
また、等圧弁部30には、等圧弁ホルダ31が備えられる。等圧弁ホルダ31は、電磁弁本体21上面に図示しないボルトで固定される。等圧弁ホルダ31の下部には、吐出弁ばね室311が上下方向に延びるように形成される。吐出弁ばね室311の下端部は、等圧弁ホルダ31の下面にて開口する。吐出弁ばね室311は、電磁弁本体21の吐出弁室211と接続される。これら吐出弁室211及び吐出弁ばね室311には、吐出弁32が収納される。
【0038】
また、等圧弁ホルダ31の上部には、シール面312が形成される。シール面312は、下方に向かってテーパー状に縮径されて形成される。シール面312には、図示しない高圧管継手が取り付けられる。また、等圧弁ホルダ31の上下中途部には、吐出通路313が上下方向に延びるように形成される。吐出通路313を介して、吐出弁ばね室311と、シール面312に取り付けられた図示しない高圧管継手と、が連通される。
【0039】
吐出弁32は、吐出弁体321、吐出弁ばね322、及び吐出弁ばね受け323から構成される。吐出弁体321は、その下端面が吐出弁室211内の下面に着座するように、吐出弁ばね322によって下方へ付勢される。吐出弁ばね322の上端部は、吐出弁ばね受け323を介して吐出弁ばね室311内の上面に固定される。
【0040】
また、吐出弁体321の下部には、等圧弁室321Aが形成される。等圧弁室321Aの下端部は、吐出弁体321の下端面にて開口する。吐出弁体321が吐出弁室211内の下面に着座した状態で、等圧弁室321Aと等圧弁ばね室212とが接続される。これら等圧弁室321A及び等圧弁ばね室212には、等圧弁33が収納される。また、吐出弁体321の上部には、等圧弁通路331Bが上下方向に延びるように形成される。等圧弁通路331Bを介して、吐出弁ばね室311と等圧弁室321Aとが連通される。
【0041】
等圧弁33は、等圧弁体331、等圧弁ばね332、等圧弁下部ばね受け333、及び等圧弁上部ばね受け334から構成される。等圧弁体331は、等圧弁通路331Bの下端開口部に着座するように、等圧弁上部ばね受け334を介して等圧弁ばね332によって上方へ付勢される。等圧弁ばね332の下端部は、等圧弁下部ばね受け333を介して等圧弁ばね室212内の下面に固定される。
【0042】
次に、燃料噴射ポンプ1の各作動態様(燃料噴射ポンプ1が燃料を噴射する場合、及び燃料噴射ポンプ1が燃料の噴射を停止する場合)について、図3により説明する。なお、図3における黒塗り矢印は、燃料(低質油)の流れを示す。
【0043】
先ず、燃料噴射ポンプ1が燃料を噴射する場合は、図3(a)に示すように、図示しないフィードポンプからの燃料が、燃料入口113から燃料ギャラリ14に送られ、燃料ギャラリ14内の燃料が、電磁スピル弁20を介して加圧室135に送られる。なお、矢印で示していないが、燃料ギャラリ14内の燃料は、燃料ギャラリ14から第一スピル油排出路134、第二スピル油排出路215、縮径部243、第二燃料供給路213、第一燃料供給路132の順に流れて、加圧室135に送られる。そして、プランジャ15が図示しないカムの回転に従って上方向に摺動されて、加圧室135内の燃料が加圧されると、この燃料が加圧室135から第一燃料供給路132、第二燃料供給路213の順に流れて、等圧弁ばね室212に送られる。
【0044】
この際、電磁スピル弁20においては、図示しない制御装置からの信号に基づいてソレノイド23に磁力が発生すると、アーマチャ247がソレノイド23に引き付けられる。すると、アーマチャ247を介して、スピル弁体24がスピル弁ばね245の付勢力に抗して右方(ソレノイド23側の方向)に摺動される。そして、スピル弁体24のシール面241がスピル弁孔214の弁座214Dに着座し、電磁スピル弁20が閉弁する。これにより、第二燃料供給路213と第二スピル油排出路215との連通が遮断されるため、第二燃料供給路213内の燃料圧力が低下することなく維持される。そして、加圧室135、第一燃料供給路132、第二燃料供給路213、及び等圧弁ばね室212内が、燃料で満たされた状態となる。
【0045】
そして、吐出弁32においては、吐出弁体321を上方に付勢する力(等圧弁ばね室212内の燃料圧力)が、吐出弁体321を下方に付勢する力(吐出弁ばね322の付勢力)よりも大きくなると、吐出弁体321が上方に移動して吐出弁室211の下面から離間し、吐出弁32が開弁する。ここで、等圧弁33は、閉弁しているため、等圧弁ばね室212内の燃料は、等圧弁通路331Bを流れずに、吐出弁ばね室311、吐出通路313の順に流れて、図示しない高圧管継手から吐出される。
【0046】
こうして、図示しない高圧管継手から燃料が吐出されて、等圧弁ばね室212内の圧力が低下すると、吐出弁ばね322の付勢力によって吐出弁体321が下方に移動して吐出弁室211内の下面に着座し、吐出弁32が閉弁する。すると、等圧弁ばね室212内の燃料が吐出弁ばね室311に流れなくなって、図示しない高圧管継手から吐出されなくなる。
【0047】
ここで、吐出弁32からその吐出下流側にかけて残留する燃料圧力に脈動が発生した場合、この燃料圧力の脈動が吐出弁ばね室311及び等圧弁通路331B内の燃料を通じて等圧弁体331に作用する。そして、等圧弁体331に作用する燃料圧力が等圧弁ばね332の付勢力よりも大きくなると、等圧弁体331が下方に移動し、等圧弁33が開弁する。これにより、脈動により上昇した燃料圧力が、所定の値まで低下する。
【0048】
一方、燃料噴射ポンプ1が燃料の噴射を停止する場合は、図3(b)に示すように、電磁スピル弁20において、前記制御装置からの信号に基づいてソレノイド23に磁力が発生しなくなると、アーマチャ247がソレノイド23に引き付けられなくなる。すると、スピル弁ばね245の付勢力によってスピル弁体24がストッパ26に当接するまで左方(ソレノイド23とは反対側の方向)に摺動される。そして、スピル弁体24のシール面241がスピル弁孔214の弁座214Dから離間し、電磁スピル弁20が開弁する。これにより、第二燃料供給路213と第二スピル油排出路215とが、スピル弁孔214を介して連通されるため、第二燃料供給路213内の燃料圧力が低下する。そして、第二燃料供給路213内の燃料は、スピル弁孔214、第二スピル油排出路215、第一スピル油排出路134の順に流れて、燃料ギャラリ14に排出される。なお、スピル弁孔214内の燃料は、スピル弁孔214内周面とスピル弁体24外周面との隙間等から、アーマチャ室221内に漏れ出る。この漏れ出た燃料は、燃料噴射ポンプ1が燃料の噴射を停止しても、アーマチャ室221内に残存する。
【0049】
次に、電磁スピル弁20の洗浄油入口222及び洗浄油出口223について、図4から図7により説明する。なお、図4の矢印Fで示す方向を「前方」として、以下に述べる各部材の位置や方向等を説明する。
【0050】
電磁スピル弁20において、側面視略四角形状の板状部材であるスペーサ22には、その板面に沿って洗浄油入口222及び洗浄油出口223が形成される。洗浄油入口222及び洗浄油出口223は、いずれも略円形断面の通路状に形成される。洗浄油入口222と洗浄油出口223とは、スピル弁孔214(図2参照)の軸心を基準に互いに略点対称となる。
【0051】
洗浄油入口222は、スペーサ22の前面からアーマチャ室221に向かって、前後方向に略水平に延びるように形成される。洗浄油入口222の前端部は、スペーサ22の前面にて開口するとともに、洗浄油入口222における前端部を除く他の部分よりも拡径されて形成される。洗浄油入口222の前端開口部には、入口側配管接続具27Aaを介して洗浄油入口配管27Aが取り付けられる(図8参照)。また、洗浄油入口222の後端部は、アーマチャ室221内にて開口する。洗浄油入口222の後端開口部は、アーマチャ室221内の上側に配置される。
【0052】
洗浄油出口223は、スペーサ22の後面からアーマチャ室221に向かって、前後方向に略水平に延びるように形成される。洗浄油出口223の後端部は、スペーサ22の後面にて開口するとともに、洗浄油出口223における後端部を除く他の部分よりも拡径されて形成される。洗浄油出口223の後端開口部には、出口側配管接続具27Baを介して洗浄油出口配管27Bが取り付けられる(図8参照)。また、洗浄油出口223の前端部は、アーマチャ室221内にて開口する。洗浄油出口223の前端開口部は、アーマチャ室221内の下側に配置される。
【0053】
次に、燃料噴射ポンプ1の洗浄システムについて、図8及び図9により説明する。なお、図8及び図9における白塗り矢印は、洗浄油(A重油)の流れを示し、図8及び図9における黒塗り矢印は、燃料(A重油又は低質油)の流れを示す。
【0054】
図8に示すように、燃料噴射ポンプ1の洗浄システムにおいて、ポンプ本体11の燃料入口113には、燃料入口配管113Aの下流側端部が接続される。燃料入口配管113Aの上流側端部は、三方弁である入口側切替弁2の出口と接続される。なお、入口側切替弁2は、ソレノイドを有する電磁弁によって構成され、このソレノイドは、前記制御装置と接続される。また、入口側切替弁2の二つの入口のうち一方の入口は、低質油入口配管3Aを介して低質油タンク3と連通される。低質油タンク3には、C重油等の低質油が貯溜される。また、入口側切替弁2の他方の入口は、A重油入口配管4Aを介してA重油タンク4と連通される。A重油タンク4には、A重油が貯溜される。
【0055】
つまり、入口側切替弁2によって、低質油入口配管3A内の低質油が燃料入口配管113Aに流れるか、又はA重油入口配管4A内のA重油が燃料入口配管113Aに流れるかが切り替えられる。なお、以下では、入口側切替弁2について、低質油入口配管3A内の低質油が燃料入口配管113Aに流れるように切り替えることを「低質油入口配管3A側に切り替える」といい、A重油入口配管4A内のA重油が燃料入口配管113Aに流れるように切り替えることを「A重油入口配管4A側に切り替える」という。
【0056】
また、ポンプ本体11の燃料出口114には、燃料出口配管114Aの上流側端部が接続される。燃料出口配管114Aの下流側端部は、三方弁である出口側切替弁5の入口と接続される。また、燃料出口配管114Aの途中には、燃料出口配管114A内の燃料(A重油又は低質油)の圧力を調整する調圧弁6(図9参照)が設けられる。なお、出口側切替弁5及び調圧弁6は、いずれもソレノイドを有する電磁弁によって構成され、これらのソレノイドは、いずれも前記制御装置と接続される。また、出口側切替弁5の二つの出口のうち一方の出口は、低質油出口配管3Bを介して低質油タンク3と連通される。また、出口側切替弁5の他方の出口は、A重油出口配管4Bを介してA重油タンク4と連通される。
【0057】
つまり、出口側切替弁5によって、燃料出口配管114A内の燃料(低質油)が低質油出口配管3Bに流れるか、又は燃料出口配管114A内の燃料(A重油)がA重油出口配管4Bに流れるかが切り替えられる。なお、以下では、出口側切替弁5について、燃料出口配管114A内の燃料(低質油)が低質油出口配管3Bに流れるように切り替えることを「低質油出口配管3B側に切り替える」といい、燃料出口配管114A内の燃料(A重油)がA重油出口配管4Bに流れるように切り替えることを「A重油出口配管4B側に切り替える」という。
【0058】
また、A重油タンク4の下流側におけるA重油入口配管4Aの途中からは、洗浄油入口配管27Aが分岐する。洗浄油入口配管27Aの下流側端部は、電磁スピル弁20の洗浄油入口222と接続される。また、洗浄油入口配管27Aの途中には、入口側開閉弁7が設けられる。なお、入口側開閉弁7は、ソレノイドを有する電磁弁によって構成され、このソレノイドは、前記制御装置と接続される。
【0059】
さらに、A重油タンク4の上流側におけるA重油出口配管4Bの途中からは、洗浄油出口配管27Bが分岐する。洗浄油出口配管27Bの上流側端部は、電磁スピル弁20の洗浄油出口223と接続される。また、洗浄油出口配管27Bの途中には、出口側開閉弁8が設けられる。なお、出口側開閉弁8は、ソレノイドを有する電磁弁によって構成され、このソレノイドは、前記制御装置と接続される。
【0060】
このような構成により、通常のエンジン運転中には、前記制御装置からの信号に基づいて、入口側切替弁2は、低質油入口配管3A側に切り替えられ、出口側切替弁5は、低質油出口配管3B側に切り替えられ、入口側開閉弁7及び出口側開閉弁8は、いずれも閉じられる。従って、低質油タンク3内の低質油が低質油入口配管3A、入口側切換弁2、燃料入口配管113Aの順に流れて、燃料入口113から燃料ギャラリ14(図1参照)に送られる。そして、燃料ギャラリ14から溢れ出た低質油が燃料出口114から燃料出口配管114Aに排出され、出口側切替弁5、低質油出口配管3Bの順に流れて、低質油タンク3に戻る。なお、入口側開閉弁7は、閉じられているため、洗浄油入口配管27A内のA重油は、入口側開閉弁7を通過して電磁スピル弁20側に流れない。また、出口側開閉弁8は、閉じられているため、洗浄油出口配管27B内のA重油は、出口側開閉弁8を通過してA重油出口配管4B側に流れない。
【0061】
そして、エンジン停止直前等には、前記制御装置からの信号に基づいて、入口側切替弁2は、A重油入口配管4A側に切り替えられ、出口側切替弁5は、A重油出口配管4B側に切り替えられ、入口側開閉弁7及び出口側開閉弁8は、いずれも開かれる。従って、A重油タンク4内のA重油がA重油入口配管4A、入口側切替弁2、燃料入口配管113Aの順に流れて、燃料入口113から燃料ギャラリ14(図1参照)に送られる。そして、燃料ギャラリ14から溢れ出たA重油が燃料出口114から燃料出口配管114Aに排出され、出口側切替弁5、A重油出口配管4Bの順に流れて、A重油タンク4に戻る。また、A重油入口配管4A内のA重油は、その途中で洗浄油入口配管27A側に分岐するとともに、洗浄油入口配管27Aを流れて、電磁スピル弁20に送られる。なお、入口側開閉弁7は、開かれているため、洗浄油入口配管27A内のA重油は、入口側開閉弁7を通過して電磁スピル弁20側に流れる。
【0062】
そして、図9に示すように、電磁スピル弁20では、洗浄油入口配管27AからのA重油が、洗浄油入口222からアーマチャ室221内に送入される。そして、洗浄油入口222から送入されたA重油によって、アーマチャ室221内が洗浄される。その後、アーマチャ室221内を洗浄した後のA重油は、アーマチャ室221内に残存していた低質油とともに、洗浄油出口223から洗浄油出口配管27Bに排出される。そして、図8に示すように、洗浄油出口配管27B内の低質油は、A重油出口配管4Bを流れて、A重油タンク4に戻る。なお、出口側開閉弁8は、開かれているため、洗浄油出口配管27B内のA重油は、出口側開閉弁8を通過してA重油出口配管4B側に流れる。
【0063】
以上のように、第一実施形態に係る燃料噴射ポンプ1において、電磁スピル弁20を備える燃料噴射ポンプ1であって、電磁スピル弁20は、スピル弁体24と、スピル弁体24が摺動可能に挿入される電磁弁本体21と、スピル弁体24の一端部に設けられ、磁性体からなるアーマチャ247と、電磁弁本体21の一側に配置され、アーマチャ247を引き付ける磁力が発生してスピル弁体24を摺動させるソレノイド23と、ソレノイド23と電磁弁本体21との間に設けられるスペーサ22と、スペーサ22に形成され、アーマチャ247を収納するアーマチャ室221と、アーマチャ室221に洗浄油を送る洗浄油入口配管27Aが取り付けられる洗浄油入口222と、アーマチャ室221を洗浄した後の洗浄油を排出する洗浄油出口配管27Bが取り付けられる洗浄油出口223と、を備えるものである。
【0064】
このような構成により、洗浄油入口配管27Aからの洗浄油が、洗浄油入口222からアーマチャ室221内に送入され、アーマチャ室221内が洗浄油で洗浄される。その後、アーマチャ室221内を洗浄した後の洗浄油は、アーマチャ室221内に残存していた低質油とともに、洗浄油出口223から洗浄油出口配管27Bに排出される。これにより、低質油の固化に起因するアーマチャ247の固着、つまり、低質油の固化に起因してアーマチャ247が固定して動かなくなることを防止することができる。したがって、アーマチャ247の固着を防止することができるため、エンジン再始動時にスムーズにエンジンスタートすることができる。また、アーマチャ室221内に残存する低質油の堆積を抑制することができるため、電磁スピル弁20のメンテナンスインターバルや交換インターバルを長く設定することができ、メンテナンスコストが嵩むこともない。
【0065】
そして、洗浄油入口222及び洗浄油出口223は、いずれもスペーサ22に形成されるものである。
【0066】
このような構成により、洗浄油入口222及び洗浄油出口223がアーマチャ室221の近傍に形成されるため、洗浄油入口222及び洗浄油出口223の通路長さが短くなる。これにより、洗浄油入口222を介して洗浄油をアーマチャ室221に送るのに要する時間及び洗浄油出口223を介して洗浄油をアーマチャ室221から排出するのに要する時間、つまり、アーマチャ室221の洗浄時間が短くなって、洗浄効率を向上することができる。
【0067】
なお、本実施形態は、洗浄油としてA重油を使用するものであるが、これに代えて軽油を使用することもできる。
【0068】
次に、本発明の第二実施形態に係る燃料噴射ポンプについて、図10から図12により説明する。なお、第一実施形態と同一符号の部材については、第一実施形態と同一構造であるため詳細な説明を省略する。また、図10における白塗り矢印は、洗浄油(A重油)の流れを示す。
【0069】
第二実施形態に係る燃料噴射ポンプは、第一実施形態に係るスペーサ22に形成された洗浄油入口222及び洗浄油出口223に代えて、電磁弁本体21に形成された洗浄油入口216及び洗浄油出口217を備える点で、第一実施形態に係る燃料噴射ポンプ1と相違する。洗浄油入口216及び洗浄油出口217は、いずれも略円形断面の通路状に形成される。洗浄油入口216と洗浄油出口217とは、スピル弁孔214の軸心を基準に互いに略点対称となる。
【0070】
洗浄油入口216は、電磁弁本体21の前面から第二燃料供給路213に向かって前後方向に略水平に延び、第二燃料供給路213に到達する手前で電磁弁本体21の右側面に向かって左右方向に略直角に折れ曲がり、そのまま略水平に延びるように形成される。洗浄油入口216の前端部は、電磁弁本体21の前面にて開口するとともに、洗浄油入口216における前端部を除く他の部分よりも拡径されて形成される。なお、洗浄油入口216の前端開口部には、入口側配管接続具27Aaを介して洗浄油入口配管27Aが取り付けられる(図8参照)。また、洗浄油入口216の右端部は、電磁弁本体21の右側面にてアーマチャ室221内に開口する。洗浄油入口216の右端開口部は、アーマチャ室221内の上側に配置される。
【0071】
洗浄油出口217は、電磁弁本体21の後面から第二燃料供給路213に向かって前後方向に略水平に延び、第二燃料供給路213に到達する手前で電磁弁本体21の右側面に向かって左右方向に略直角に折れ曲がり、そのまま略水平に延びるように形成される。洗浄油出口217の後端部は、電磁弁本体21の後面にて開口するとともに、洗浄油出口217における後端部を除く他の部分よりも拡径されて形成される。なお、洗浄油出口217の後端開口部には、出口側配管接続具27Baを介して洗浄油出口配管27Bが取り付けられる(図8参照)。また、洗浄油出口217の右端部は、電磁弁本体21の右側面にてアーマチャ室221内に開口する。洗浄油出口217の右端開口部は、アーマチャ室221内の下側に配置される。
【0072】
このような構成により、洗浄油入口配管27AからのA重油が、洗浄油入口216からアーマチャ室221内に送入される。そして、洗浄油入口216から送入されたA重油によってアーマチャ室221内が洗浄される。その後、アーマチャ室221内を洗浄した後のA重油は、アーマチャ室221内に残存していた低質油とともに、洗浄油出口217から洗浄油出口配管27Bに排出される。
【0073】
以上のように、第二実施形態に係る燃料噴射ポンプにおいて、電磁スピル弁20を備える燃料噴射ポンプであって、電磁スピル弁20は、スピル弁体24と、スピル弁体24が摺動可能に挿入される電磁弁本体21と、スピル弁体24の一端部に設けられ、磁性体からなるアーマチャ247と、電磁弁本体21の一側に配置され、アーマチャ247を引き付ける磁力が発生してスピル弁体24を摺動させるソレノイド23と、ソレノイド23と電磁弁本体21との間に設けられるスペーサ22と、スペーサ22に形成され、アーマチャ247を収納するアーマチャ室221と、アーマチャ室221に洗浄油を送る洗浄油入口配管27Aが取り付けられる洗浄油入口216と、アーマチャ室221を洗浄した後の洗浄油を排出する洗浄油出口配管27Bが取り付けられる洗浄油出口217と、を備えるものである。
【0074】
このような構成により、洗浄油入口配管27Aからの洗浄油が、洗浄油入口216からアーマチャ室221内に送入され、アーマチャ室221内が洗浄油で洗浄される。その後、アーマチャ室221内を洗浄した後の洗浄油は、アーマチャ室221内に残存していた低質油とともに、洗浄油出口217から洗浄油出口配管27Bに排出される。これにより、低質油の固化に起因するアーマチャ247の固着、つまり、低質油の固化に起因してアーマチャ247が固定して動かなくなることを防止することができる。したがって、アーマチャ247の固着を防止することができるため、エンジン再始動時にスムーズにエンジンスタートすることができる。また、アーマチャ室221内に残存する低質油の堆積を抑制することができるため、電磁スピル弁20のメンテナンスインターバルや交換インターバルを長く設定することができ、メンテナンスコストが嵩むこともない。
【0075】
そして、洗浄油入口216及び洗浄油出口217は、いずれも電磁弁本体21に形成されるものである。
【0076】
このような構成により、電磁弁本体21の部材寸法が大きいことから、洗浄油入口216及び洗浄油出口217の大口径化を容易に図ることができる。そして、洗浄油入口216及び洗浄油出口217の大口径化により、洗浄油入口216及び洗浄油出口217内の単位時間当たりの洗浄油の流量が多くなる。これにより、洗浄油入口216を介して洗浄油をアーマチャ室221に送るのに要する時間及び洗浄油出口217を介して洗浄油をアーマチャ室221から排出するのに要する時間、つまり、アーマチャ室221の洗浄時間が短くなって、洗浄効率を向上することができる。また、洗浄油入口216と洗浄油入口配管27Aとの接触面積、及び洗浄油出口217と洗浄油出口配管27Bとの接触面積が大きくなるため、洗浄油入口配管27A及び洗浄油出口配管27Bの外乱に起因する、洗浄油入口216及び洗浄油出口217のフレッティングを防止することができる。
【0077】
次に、本発明の第三実施形態に係る燃料噴射ポンプ1Aについて、図13から図15により説明する。なお、第一実施形態と同一符号の部材については、第一実施形態と同一構造であるため詳細な説明を省略する。また、図13から図15における白塗り矢印は、洗浄油(A重油)の流れを示し、図13における黒塗り矢印は、燃料(A重油又は低質油)の流れを示す。
【0078】
図13に示すように、第三実施形態に係る燃料噴射ポンプ1Aは、ポンプ本体11の燃料出口114から洗浄油(A重油)を排出する点で、第一実施形態に係る燃料噴射ポンプ1と相違する。つまり、第三実施形態に係る燃料噴射ポンプ1Aは、洗浄油入口222及び洗浄油入口配管27Aを備える点で、第一実施形態に係る燃料噴射ポンプ1と共通し、洗浄油出口223及び洗浄油出口配管27Bを備えない点で、第一実施形態に係る燃料噴射ポンプ1と相違する。
【0079】
図14及び図15に示すように、第三実施形態に係る燃料噴射ポンプ1Aでは、アーマチャ室221内を洗浄した後のA重油は、アーマチャ室221内に残存していた低質油とともに、突出孔281、スピル弁ばね室214Aの順に流れ、スピル弁孔214内周面とスピル弁体24外周面との隙間を通じて、第二スピル油排出路215に排出される。この際、スピル弁孔214内周面とスピル弁体24外周面との隙間(スピル弁体24とスピル弁孔214との嵌合部)もA重油によって洗浄される。そして、第二スピル油排出路215内のA重油等が第一スピル油排出路134を流れて、燃料ギャラリ14に送られる。その後、燃料ギャラリ14から溢れ出たA重油が燃料出口114から燃料出口配管114Aに排出され、A重油タンク4に戻る。
【0080】
以上のように、第三実施形態に係る燃料噴射ポンプ1Aにおいて、プランジャ15と、プランジャ15が摺動可能に設けられるプランジャバレル13と、プランジャバレル13が挿入されるポンプ本体11と、電磁スピル弁20と、を備える燃料噴射ポンプ1Aであって、電磁スピル弁20は、スピル弁体24と、スピル弁体24が摺動可能に挿入される電磁弁本体21と、スピル弁体24の一端部に設けられ、磁性体からなるアーマチャ247と、電磁弁本体21の一側に配置され、アーマチャ247を引き付ける磁力が発生してスピル弁体24を摺動させるソレノイド23と、ソレノイド23と電磁弁本体21との間に設けられるスペーサ22と、スペーサ22に形成され、アーマチャ247を収納するアーマチャ室221と、アーマチャ室221に洗浄油を送る洗浄油入口配管27Aが取り付けられる洗浄油入口222と、を備え、ポンプ本体11は、燃料ギャラリ14と、燃料ギャラリ14からの燃料を排出する燃料出口配管114Aが取り付けられる燃料出口114と、を備え、燃料出口114は、アーマチャ室221を洗浄した後の洗浄油出口を兼ねるものである。
【0081】
このような構成により、洗浄油入口配管27Aからの洗浄油が、洗浄油入口222からアーマチャ室221内に送入され、アーマチャ室221内が洗浄油で洗浄される。その後、アーマチャ室221内を洗浄した後の洗浄油は、アーマチャ室221内に残存していた低質油とともに、燃料出口114から燃料出口配管114Aに排出される。これにより、低質油の固化に起因するアーマチャ247の固着、つまり、低質油の固化に起因してアーマチャ247が固定して動かなくなることを防止することができる。したがって、アーマチャ247の固着を防止することができるため、エンジン再始動時にスムーズにエンジンスタートすることができる。また、アーマチャ室221内に残存する低質油の堆積を抑制することができるため、電磁スピル弁20のメンテナンスインターバルや交換インターバルを長く設定することができ、メンテナンスコストが嵩むこともない。また、ポンプ本体11の燃料出口114やこれに取り付けられる燃料出口配管114Aを、洗浄油の出口やこれに取り付けられる配管として利用することにより、洗浄油専用の出口や配管を設ける必要がないため、コストを抑制することができる。
【符号の説明】
【0082】
1 燃料噴射ポンプ
1A 燃料噴射ポンプ
11 ポンプ本体
13 プランジャバレル
14 燃料ギャラリ
15 プランジャ
20 電磁スピル弁
21 電磁弁本体
22 スペーサ
23 ソレノイド
24 スピル弁体
27A 洗浄油入口配管
27B 洗浄油出口配管
114 燃料出口
114A 燃料出口配管
216 洗浄油入口
217 洗浄油出口
221 アーマチャ室
222 洗浄油入口
223 洗浄油出口
247 アーマチャ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁スピル弁を備える燃料噴射ポンプであって、
前記電磁スピル弁は、
スピル弁体と、
該スピル弁体が摺動可能に挿入される電磁弁本体と、
前記スピル弁体の一端部に設けられ、磁性体からなるアーマチャと、
前記電磁弁本体の一側に配置され、前記アーマチャを引き付ける磁力が発生して前記スピル弁体を摺動させるソレノイドと、
該ソレノイドと前記電磁弁本体との間に設けられるスペーサと、
該スペーサに形成され、前記アーマチャを収納するアーマチャ室と、
前記アーマチャ室に洗浄油を送る洗浄油入口配管が取り付けられる洗浄油入口と、
前記アーマチャ室を洗浄した後の洗浄油を排出する洗浄油出口配管が取り付けられる洗浄油出口と、を備えることを特徴とする燃料噴射ポンプ。
【請求項2】
前記洗浄油入口及び洗浄油出口は、いずれも前記スペーサに形成されることを特徴とする請求項1に記載の燃料噴射ポンプ。
【請求項3】
前記洗浄油入口及び洗浄油出口は、いずれも前記電磁弁本体に形成されることを特徴とする請求項1に記載の燃料噴射ポンプ。
【請求項4】
プランジャと、
該プランジャが摺動可能に設けられるプランジャバレルと、
該プランジャバレルが挿入されるポンプ本体と、
電磁スピル弁と、を備える燃料噴射ポンプであって、
前記電磁スピル弁は、
スピル弁体と、
該スピル弁体が摺動可能に挿入される電磁弁本体と、
前記スピル弁体の一端部に設けられ、磁性体からなるアーマチャと、
前記電磁弁本体の一側に配置され、前記アーマチャを引き付ける磁力が発生して前記スピル弁体を摺動させるソレノイドと、
該ソレノイドと前記電磁弁本体との間に設けられるスペーサと、
該スペーサに形成され、前記アーマチャを収納するアーマチャ室と、
前記アーマチャ室に洗浄油を送る洗浄油入口配管が取り付けられる洗浄油入口と、を備え、
前記ポンプ本体は、
燃料ギャラリと、
該燃料ギャラリからの燃料を排出する燃料出口配管が取り付けられる燃料出口と、を備え、
該燃料出口は、前記アーマチャ室を洗浄した後の洗浄油出口を兼ねることを特徴とする燃料噴射ポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−197698(P2012−197698A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−61271(P2011−61271)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【出願人】(503400008)ウッドワード,インコーポレーテッド (29)
【氏名又は名称原語表記】Woodward,Inc.
【住所又は居所原語表記】1000 E. Drake Road, P.O. Box 1519, Fort Collins, Colorado 80525, United States of America
【Fターム(参考)】