説明

燃料噴射弁

【課題】燃料噴射弁の噴霧特性に於ける噴霧の指向性と微粒化の両立図るようにした燃料噴射弁を提供する。
【解決手段】この発明による燃料噴射弁は、噴孔プレートの下流側端面に、複数の噴孔に夫々対応して配置された複数の凹部を備え、噴孔出口の少なくとも一部分は、凹部の底面に開口し、噴孔出口の他の部分は、噴孔プレートの下流側端面に開口し、若しくは前記凹部の内面に接しており、噴孔により形成される燃料の流路は、噴孔プレートの上流側端面から凹部の底面に至るまでの間に、噴孔の径方向の最小断面を断面とする円柱部分を備え、前記噴孔の直径をD1、前記凹部の直径、若しくは前記仮想円の周方向に於ける前記凹部の径をD2としたとき、
1.1<(D2/D1)<3.0
の関係を有するように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、主に内燃機関の燃料供給系に使用される電磁式などの燃料噴射弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車などの排出ガス規制が強化される中、内燃機関の燃焼効率の向上が求められている。一般に、燃料噴射弁から噴射される燃料の粒径(噴霧粒径)と噴射された燃料の液膜の角度(噴霧角)は、図1に示されるようにトレードオフの関係になっており、噴霧粒径を小さくするためには噴霧角を大きくしなければならない。燃料噴射式の内燃機関に於いては、燃料噴射弁は吸気バルブに向けて燃料を噴射し、吸気バルブに付着することで気化した燃料を燃焼室へ供給している。しかし、燃料の噴射の際に噴霧の中心軸に対して外側の噴霧の一部は吸気ポート内壁に付着するため、吸気ポート内壁を伝い液膜となって遅れて燃焼室へ流入する燃料があり、燃焼効率の向上の妨げとなっている。
【0003】
燃料の粒径を小さくするために噴霧角を大きくしすぎてしまうと、吸気ポート内壁への噴霧の付着量が増え、吸気ポート内壁を伝い液膜となって遅れて燃焼室へ流入する燃料が増えるため燃焼効率が低下する。そのため燃焼効率を高めるためには、噴霧の指向性と微粒化の両立が必要となる。噴霧の指向性と微粒化の両立については、これまで既に各種の検討がなされている。
【0004】
例えば、特許文献1に示された従来の燃料噴射弁は、噴孔プレートに弁体先端部と平行となるよう下流側へ突出する凸部を設け、この凸部の径方向外側に配置した噴孔入口の中心と弁体先端部の弁座軸方向の高さで表わされる噴孔直上高さと、噴孔径と、の関係を所定の関係とすることで、噴霧の指向性と微粒化を両立させるようにしている。又、特許文献2に示された従来の燃料噴射弁は、各噴孔の出口側に凹部を設け、燃料と空気の混合を進めることで燃料の微粒化を促進するようにしている。
【0005】
更に、特許文献3に示された従来の流体噴射ノズルは、噴孔プレートに設けた噴孔を、弁座のシート面の延長と噴孔プレートが交差してできる仮想円の内側に配置し、噴孔径と弁体先端部と噴孔プレートまでの垂直距離が特定の関係となるようにして微粒化を促進するようにしている。又、特許文献4に示された従来の流体噴射ノズルは、噴孔を、噴孔軸線を中心に流体出口側に向けて拡大させ、十分に噴孔内で広げられた液膜を得るようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−138914号公報
【特許文献2】特許第3759918号公報
【特許文献3】特許第3183156号公報
【特許文献4】特開2001−317431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に示された従来の燃料噴射弁の場合、弁体の開弁時に於いて、弁体先端部と弁座シート面との間の隙間を通って噴孔に流入した燃料が、弁座軸の径方向内側の噴孔内壁に押付けられて噴孔の曲率に沿った流れに変換されるが、燃料が三日月状の薄い液膜となって噴孔から噴射されるためには、噴孔の長さを最適化する必要がある。例えば、噴孔の長さが長すぎると、燃料は噴孔内を一周してしまい筋状噴霧となり、噴孔の長さが短すぎると、燃料の流れを噴孔の曲率に沿った流れへ変換することが不十分となり、やはり筋状噴霧となる。
【0008】
噴孔プレートに形成された複数の噴孔から噴射される燃料の噴霧が、1つ以上の集合噴
霧を形成する燃料噴射弁では、噴孔の入口の中心と噴孔の出口の中心を通る直線と弁座軸とのなす角(噴孔角)は、個々の噴孔で異なる。そのため、特許文献1に示された従来の装置では、個々の噴孔で噴孔の長さが異なるため、一方の噴孔の長さが最適となるようにプレート板厚を設定すると、他の噴孔に於いては、最適な噴孔の長さとなっておらず、前述の筋状噴霧となり微粒化が促進しないという課題がある。
【0009】
また、特許文献2に示された従来の燃料噴射弁の場合、弁座軸の径方向内側の噴孔の長さよりも径方向外側の噴孔の長さが短い構造となっており、特許文献3に示された従来の燃料噴射弁では、噴孔プレートに設けられた噴孔を仮想円の内側に配置する構造となっている。燃料噴霧の微粒化メカニズムを解明するために、まず噴孔から噴射された燃料を拡大撮影した結果、燃料の分裂過程は、燃料を拡散させようとする力が表面張力に打ち勝つことで、燃料が「液膜」から「液糸」、そして「液糸」から[液滴]へと分裂していることが判明しており、また一度「液滴」になると表面張力の影響が大きくなるため、それ以降は分裂しにくいことが判明している。従って、燃料を乱れの少ない薄い液膜として噴孔から噴射し、この液膜をさらに薄く広げてから分裂させた方がより微粒化することになり、逆に燃料流れに乱れが生じると、燃料液膜が薄く広がる前に、厚い液膜の状態で分裂するため、分裂後の液滴も大きくなることが判明している。
【0010】
前述の特許文献2に示された従来の燃料噴射弁では、弁座軸の径方向内側の噴孔長さよりも径方向外側の噴孔長さが短い噴孔としており、噴孔内を充満した燃料は、噴射する前に多くの空気と混合することで分裂し液滴となるが、噴孔内を充満した燃料を分裂させても液滴は大きく、微粒化しないという課題がある。
【0011】
また、特許文献2および特許文献3に示された従来の燃料噴射弁では、弁体開弁時に於いて弁体先端部と弁座シート面間の隙間を通って噴孔に流入する燃料流れと、噴孔間を通過して噴孔プレート中心で対向する流れによってUターンする流れとが噴孔直上で正面衝突するため、燃料流れに乱れが生じ、この乱れによって粒径が悪化する課題がある。
【0012】
特許文献4に示された従来の装置では、テーパ状の噴孔を形成するが、その形成のための加工状況の変化によって時に、噴孔入口面積がばらつきやすくなるため、流量特性(静的流量・動的流量)および噴霧特性(噴霧形状・噴霧粒径)がばらつきやすいという課題がある。また、その製造、および寸法管理上非常に煩雑な工程が必要となるため、燃料噴射弁の製造コスト増大を招くという課題がある。
【0013】
このような課題を解決する方法として、特許文献1に示された技術に特許文献2に示された技術を加えたアイデアが考えられる。これにより、弁体開弁時に於いて弁体先端部と弁座シート面間の隙間を通って噴孔に流入する燃料流れは、噴孔間を通過して噴孔プレート中心で対向する流れによってUターンし、凸部最外径部から凸部キャビティ形状に沿って放射されるUターン流れの下へ潜り込むことができ、Uターン流れと正面衝突することなく速い流速を維持したまま噴孔に流入し、弁座軸の径方向内側の噴孔内壁に押付けられながら噴射される。この時、押付けられた燃料は噴孔の曲率に沿った流れへ変換され、三日月状の液膜となって薄膜化する。
【0014】
前述の特許文献2では、燃料と空気との混合を進めるために噴孔に凹部を形成していたが、この従来の燃料噴射弁によれば、燃料が凹部に流入すると、噴孔径が拡大されるため
、液膜をさらに広げて薄膜化する効果が得られる。そのため、個々の噴孔で噴孔長さが異なっていても燃料が噴孔内を一周することなく噴射されるため、全ての噴孔で微粒化を促進することが可能である。しかし、この特許文献2に示された技術は、弁体先端部と平行に下流側へ突出する凸部を有する噴孔プレートに形成された噴孔に凹部を追加する構造であるため、以下の課題がある。
【0015】
即ち、
(1)凹部の直径について
噴孔の直径に対して凹部の直径が小さすぎると、凹部追加による噴孔径拡大の割合が小さくなり、燃料の薄膜化が不十分となり微粒化が促進せず、大きすぎると、噴孔と凹部の曲率差が大きくなるため、燃料は噴孔から凹部へ広がる前に噴孔から剥離してしまい、燃料の薄膜化が不十分となり微粒化が促進しないという課題がある。
【0016】
(2)凹部の深さについて
噴孔プレートの板厚に対して凹部の深さが浅すぎると、凹部での燃料の薄膜化が不十分なまま噴射されるため微粒化が促進せず、深すぎると噴孔の流路に於いて噴孔プレートの上流側端面から凹部までの間に最小断面となる円柱部分を確保できなくなり、最小断面部の噴孔形状が図5(D)のようにいびつな形状となるため、燃料流れに乱れが生じ、この乱れによって粒径が悪化する問題がある。また、凹部形状のばらつきにより流路面積がばらつくため、流量がばらつくという課題がある。
【0017】
(3)凹部が噴孔を跨ぐ割合について
凹部が噴孔を跨ぐ割合が小さすぎると噴孔から凹部への燃料の流入量が少なくなり、燃料の薄膜化が不十分となり微粒化が促進せず、大きすぎると、弁座軸に対して径方向内側の噴孔長さが短くなり、噴孔の曲率に沿った流れへの変換が不十分なまま噴射されるため、筋状噴霧となるだけでなく、噴霧の指向性も確保できなくなり、噴射された噴霧の角度が所望する角度よりも小さくなるという課題がある。
【0018】
この発明は、前述のような従来の燃料噴射弁の課題を解決するためになされたものであり、燃料噴射弁の噴霧特性に於ける噴霧の指向性と微粒化の両立、及び流量特性に於ける流量精度の向上を図るようにした燃料噴射弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
この発明による燃料噴射弁は、
弁座のシート面に対して当接若しくは離反する弁体を有し、制御装置からの動作信号を受けて前記弁体を動作させることで前記弁体が前記前座のシート面から離反したとき、燃料が、前記弁体と前記弁座のシート面との間を通過して後、前記弁座に固定された噴孔プレートに設けられた複数の噴孔から外部に噴射されるようにした燃料噴射弁であって、
前記弁座のシート面は、前記燃料の流通する上流側から下流側に向けて内径が縮小するように形成され、
前記噴孔プレートは、前記シート面に沿って前記シート面の下流側端縁から延長する仮想延長シート面と前記噴孔プレートの上流側端面とが交差して1つの仮想円を形成するように、前記弁体の先端部に対向して配置され、且つ前記弁体の先端部に対向する部位が、前記弁体の先端部の表面に対して所定の間隔を介して下流側へ突出する凸部を備え、
前記凸部は、前記仮想円の径方向内側に位置するように前記噴孔プレートに設けられ、
前記噴孔プレートに設けられた複数の噴孔は、前記噴孔プレートの前記上流側端面に於いて開口する噴孔入口から噴孔出口まで同一直径に形成され、
前記噴孔入口は、前記噴孔出口に対して前記弁座の径方向内側となるよう配置され、
前記噴孔プレートの前記上流側端面に開口する前記噴孔入口の中心は、前記弁座の最小内径である前記弁座の開口部の内壁より径方向内側で、かつ前記凸部の径方向外側に配置
され、
前記弁座の径方向内側に位置する前記噴孔の噴孔長さよりも前記弁座の径方向外側に位置する前記噴孔長さのほうが短くなるように、前記噴孔プレートの下流側端面に、前記複数の噴孔に夫々対応して配置された複数の凹部を備え、
前記噴孔出口の少なくとも一部分は、前記凹部の底面に開口し、
前記噴孔出口の他の部分は、前記噴孔プレートの前記下流側端面に開口し、若しくは前記凹部の内面に接しており、
前記噴孔により形成される前記燃料の流路は、前記噴孔プレートの前記上流側端面から前記凹部の底面に至るまでの間に、前記噴孔の径方向の最小断面を断面とする円柱部分を備え、
前記噴孔の直径をD1、前記凹部の直径、若しくは前記仮想円の周方向に於ける前記凹部の径をD2としたとき、
1.1<(D2/D1)<3.0
の関係を有する、
ことを特徴とするものである。
【0020】
又、この発明による燃料噴射弁は、
弁座のシート面に対して当接若しくは離反する弁体を有し、制御装置からの動作信号を受けて前記弁体を動作させることで前記弁体が前記前座のシート面から離反したとき、燃料が、前記弁体と前記弁座のシート面との間を通過して後、前記弁座に固定された噴孔プレートに設けられた複数の噴孔から外部に噴射されるようにした燃料噴射弁であって、
前記弁座のシート面は、前記燃料の流通する上流側から下流側に向けて内径が縮小するように形成され、
前記噴孔プレートは、前記シート面に沿って前記シート面の下流側端縁から延長する仮想延長シート面と前記噴孔プレートの上流側端面とが交差して1つの仮想円を形成するように、前記弁体の先端部に対向して配置され、且つ前記弁体の先端部に対向する部位が、前記弁体の先端部の表面に対して所定の間隔を介して下流側へ突出する凸部を備え、
前記凸部は、前記仮想円の径方向内側に位置するように前記噴孔プレートに設けられ、
前記噴孔プレートに設けられた複数の噴孔は、前記噴孔プレートの前記上流側端面に於いて開口する噴孔入口から噴孔出口まで同一直径に形成され、
前記噴孔入口は、前記噴孔出口に対して前記弁座の径方向内側となるよう配置され、
前記噴孔プレートの前記上流側端面に開口する前記噴孔入口の中心は、前記弁座の最小内径である前記弁座の開口部の内壁より径方向内側で、かつ前記凸部の径方向外側に配置され、
前記弁座の径方向内側に位置する前記噴孔の噴孔長さよりも前記弁座の径方向外側に位置する前記噴孔長さのほうが短くなるように、前記噴孔プレートの下流側端面に、前記複数の噴孔に夫々対応して配置された複数の凹部を備え、
前記噴孔出口の少なくとも一部分は、前記凹部の底面に開口し、
前記噴孔出口の他の部分は、前記噴孔プレートの前記下流側端面に開口し、若しくは前記凹部の内面に接しており、
前記噴孔により形成される前記燃料の流路は、前記噴孔プレートの前記上流側端面から前記凹部の底面に至るまでの間に、前記噴孔の径方向の最小断面を断面とする円柱部分を備え、
前記噴孔プレートの板厚をT1、前記凹部の深さをT2としたとき、
0.1<(T2/T1)<0.8
の関係を有する、
ことを特徴とするものである。
【0021】
更に、この発明による燃料噴射弁は、
弁座のシート面に対して当接若しくは離反する弁体を有し、制御装置からの動作信号を
受けて前記弁体を動作させることで前記弁体が前記前座のシート面から離反したとき、燃料が、前記弁体と前記弁座のシート面との間を通過して後、前記弁座に固定された噴孔プレートに設けられた複数の噴孔から外部に噴射されるようにした燃料噴射弁であって、
前記弁座のシート面は、前記燃料の流通する上流側から下流側に向けて内径が縮小するように形成され、
前記噴孔プレートは、前記シート面に沿って前記シート面の下流側端縁から延長する仮想延長シート面と前記噴孔プレートの上流側端面とが交差して1つの仮想円を形成するように、前記弁体の先端部に対向して配置され、且つ前記弁体の先端部に対向する部位が、前記弁体の先端部の表面に対して所定の間隔を介して下流側へ突出する凸部を備え、
前記凸部は、前記仮想円の径方向内側に位置するように前記噴孔プレートに設けられ、
前記噴孔プレートに設けられた複数の噴孔は、前記噴孔プレートの前記上流側端面に於いて開口する噴孔入口から噴孔出口まで同一直径に形成され、
前記噴孔入口は、前記噴孔出口に対して前記弁座の径方向内側となるよう配置され、
前記噴孔プレートの前記上流側端面に開口する前記噴孔入口の中心は、前記弁座の最小内径である前記弁座の開口部の内壁より径方向内側で、かつ前記凸部の径方向外側に配置され、
前記弁座の径方向内側に位置する前記噴孔の噴孔長さよりも前記弁座の径方向外側に位置する前記噴孔長さのほうが短くなるように、前記噴孔プレートの下流側端面に、前記複数の噴孔に夫々対応して配置された複数の凹部を備え、
前記凹部は、円形に形成され、
前記噴孔出口の少なくとも一部分は、前記凹部の底面に開口し、
前記噴孔出口の他の部分は、前記噴孔プレートの前記下流側端面に開口し、若しくは前記凹部の内面に接しており、
前記噴孔により形成される前記燃料の流路は、前記噴孔プレートの前記上流側端面から前記凹部の底面に至るまでの間に、前記噴孔の径方向の最小断面を断面とする円柱部分を備え、
前記噴孔プレートの前記下流側端面に於ける前記噴孔の長軸長さをL1、前記噴孔プレートの前記下流側端面に於ける前記凹部が前記噴孔を跨ぐ長さをL2としたとき、
0.3<(L2/L1)≦1.0
の関係を有する、
ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0022】
この発明による燃料噴射弁によれば、噴孔により形成される燃料の流路は、噴孔プレートの上流側端面から凹部の底面に至るまでの間に、噴孔の径方向の最小断面を断面とする円柱部分を備え、噴孔の直径をD1、凹部の直径、若しくは仮想円の周方向に於ける前記凹部の径をD2としたとき、
1.1<(D2/D1)<3.0
の関係を有するように構成されているので、燃料の微粒化が促進され、乱れが小さい燃料を速い流速を維持したまま噴孔へ流入させ、弁座の径方向内側の噴孔内壁に燃料を押付けつつ、全ての噴孔で効率良く微粒化した燃料を噴射することができるため、噴霧の指向性と微粒化の両立が可能である。
【0023】
又、この発明による燃料噴射弁によれば、噴孔により形成される燃料の流路は、噴孔プレートの上流側端面から凹部の底面に至るまでの間に、噴孔の径方向の最小断面を断面とする円柱部分を備え、前記噴孔プレートの板厚をT1、前記凹部の深さをT2としたとき、
0.1<(T2/T1)<0.8
の関係を有するように構成されているので、流量がバラつくことなく、乱れが小さい燃料を速い流速を維持したまま噴孔へ流入させ、弁座の径方向内側の噴孔内壁に燃料を押付け
つつ、全ての噴孔で効率良く微粒化した燃料を噴射することができるため、噴霧の指向性と微粒化の両立が可能である。
【0024】
更に、この発明による燃料噴射弁によれば、噴孔により形成される前記燃料の流路は、噴孔プレートの上流側端面から凹部の底面に至るまでの間に、噴孔の径方向の最小断面を断面とする円柱部分を備え、噴孔プレートの下流側端面に於ける噴孔の長軸長さをL1、噴孔プレートの下流側端面に於ける前記凹部が噴孔を跨ぐ長さをL2としたとき、
0.3<(L2/L1)≦1.0
の関係を有するように構成されているので、流量のバラつきがなく噴霧の指向性と微粒化の両立が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】燃料噴射弁からの燃料噴霧角と燃料の粒径の関係を示した説明図である。
【図2】この発明の実施の形態1による燃料噴射弁を示す断面図である。
【図3】この発明の実施の形態1による燃料噴射弁の先端部の詳細を示す説明図である。
【図4】この発明の実施の形態1による燃料噴射弁の噴孔部を示す説明図である。
【図5】燃料噴射弁の噴孔プレートおよび噴孔に対する凹部の各寸法の最適値を説明する説明図である。
【0026】
【図6】凹部と、噴孔の直径の比と、噴霧粒径との関係を示す説明図である。
【図7】凹部の深さと、噴孔プレートの板厚の比と、噴霧粒径との関係を示す説明図である。
【図8】凹部が噴孔を跨ぐ割合と、噴霧粒径との関係を示す説明図である。
【図9】燃料噴射弁の噴孔プレートの凹部の変形例を説明する説明図である。
【図10】この発明の実施の形態2による燃料噴射弁を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
実施の形態1.
図2は、この発明の実施の形態1による燃料噴射弁を示す断面図である。図2に於いて、燃料噴射弁1は、ソレノイド装置2、磁気回路のヨーク部分であるハウジング3、磁気回路の固定鉄心部分であるコア4、コイル5、磁気回路の可動鉄心部分であるアマチュア6、弁装置7を備えている。弁装置7は、先端部にボール状の先端部13を有する筒状の弁体8と弁本体9と弁座10で構成されている。
【0028】
弁本体9は、コア4の端部外周面に圧入された後、コア4に溶接により固定されている。アマチュア6は、弁体8に圧入された後、弁対8に溶接により固定されている。弁座10の下流側には、噴孔プレート11が溶接部11aで溶接されて結合されている。弁座10は、その下流側に噴孔プレート11が結合された状態で、弁本体9に挿入された後、溶接部11bで溶接されて弁本体9に結合されている。噴孔プレート11には、後述するように、その板厚方向に貫通する複数の噴孔12が設けられている。
【0029】
エンジンの制御装置(図示せず)から燃料噴射弁1の駆動回路(図示せず)に動作信号が送られると、燃料噴射弁1のコイル5に電流が通電され、アマチュア6、コア4、ハウジング3、弁本体9で構成される磁気回路に磁束が発生し、アマチュア6はコア4側へ吸引され、アマチュア6と一体構造である弁体8が弁座10のシート面10aから離れて間隙が形成される。これにより、燃料は弁体8の先端部13に設けられた複数の溝13aから弁座10のシート部10aと弁体8との隙間を通って、後述する複数の噴孔12からエンジン吸気管に噴射される。
【0030】
次に、エンジンの制御装置より燃料噴射弁1の駆動回路に動作の停止信号が送られると、コイル5への電流の通電が停止し、前述の磁気回路中の磁束が減少して弁体8を閉弁方向に付勢している圧縮ばね14により弁体8と弁座10のシート面10aの間の隙間は閉じ状態となり、燃料噴射が終了する。弁体8は、アマチュア6のガイド部6aにより弁本体9の内周面で摺動し、開弁状態ではアマチュア6の上面6bがコア4の下面と当接する。
【0031】
図3は、この発明の実施の形態1による燃料噴射弁の先端部の詳細を示す説明図で、(a)は断面図、(b)はその矢印A方向から見た平面図、(c)はD部拡大図、(d)はB−B断面拡大図、(e)はC−C断面拡大図である。図3に於いて、弁座10は、下流側に向けて内径が縮小するように形成されており、その内周面がシート面10aとなる。弁座10のシート面10aの延長線と噴孔プレート11の上流側端面11cが交差して1つの仮想円11dを形成するように噴孔プレート11を配置している。
【0032】
噴孔プレート11の中央部には、弁座軸18に対してほぼ軸対称で、かつ断面が円弧状で弁体先端部13と平行に下流側へ突出する凸部11fが、前述の仮想円11dの径方向内側に設けられている。噴孔プレート11に設けられた複数の噴孔12は、噴孔入口12aから噴孔出口12bまで同一径で、噴孔入口12aが噴孔出口12bに対して弁座10の径方向内側となるよう形成されている。噴孔プレート11の上流側端面11cに於いて、複数の噴孔12の中心は弁座10の最小内径である弁座の開口部の内壁10cより径方向内側に配置され、かつ凸部11fの径方向外側に配置されている。
【0033】
この実施の形態1では、(c)のD部拡大図に良く示されているように、噴孔プレート11の上流側端面11cに於いて、複数の噴孔12の中心と弁体先端部13との間の弁座軸18方向の距離で表される噴孔直上高さHと、噴孔12の直径D1が、弁体開弁時に於いて、H≦1.5D1の関係にある。これにより、弁体閉弁時に於いて、噴孔プレート11の上流側端面11cから弁体先端部13への弁座軸18方向の距離で表されるキャビティ高さH2を小さくすることができ、それだけ、閉弁時に於いて弁体先端部13と弁座10と噴孔プレート11で囲まれる部分の容積(以下、デッドボリューム、と称する)17が低減されるので、高温負圧下に於けるデッドボリューム17内の燃料蒸発量も少なく、温度や雰囲気圧変化に伴う流量特性(静的流量・動的流量)の変化を抑制することができる。
【0034】
又、噴孔プレート11の上流側端面11cから弁体先端部13までの弁座軸18方向の距離で表されるキャビティ高さH2は、噴孔プレート11の中心から凸部11fの最外径部11gまではほぼ一定となっているのに対し、凸部11fの最外径部11gから弁座開口内壁10cまでは増加している。そのため、弁体開弁時に於いて、弁体先端部13と弁座シート面10aとの間の隙間10dを通って噴孔12に流入する燃料流16aは、複数の隣り合う噴孔12の間を通過して噴孔プレート11の中心に向かって流れ、その中心部に於いて衝突してUターンし、噴孔プレート11の凸部11fの最外径部から凸部のキャビティ形状に沿って放射されるUターン流れ16dの下へ潜り込むことができる。その結果、燃料流16aは、Uターン流れ16dと正面衝突することなく、速い流速を維持したまま複数の噴孔12に流入し、弁座10の径方向内側の噴孔内壁12cに押付けられながら噴孔12の外へ噴射し、燃料噴霧の指向性を確保することができる。
【0035】
又、噴孔プレート11の下流側端面11eには、夫々の噴孔12の一部分に重なる複数の凹部15が形成されている。その結果、弁座10の径方向内側の噴孔長さL3よりも、径方向外側の噴孔長さL4が短くなっている。
【0036】
図4は、この発明の実施の形態1による燃料噴射弁の噴孔部を示す説明図で、(a)は
断面図、(b)はE−E断面図、(c)はF−F断面図、(d)はこの発明の実施の形態1の変形例を示している。図4の(b)に示すように、凹部15の底面15aに於いて、噴孔12の一部は凹部15の底面15aに開口している。又、図4の(c)に示すように、噴孔プレート11の下流側端面11eに於いて、噴孔12の一部は噴孔プレート11の下流側端面11eに開口している。
【0037】
尚、図4の(d)に示すように、噴孔プレート11の下流側端面11eに於いて、噴孔12が凹部15と内接するようにしてもよい。
【0038】
図3に於いて、噴孔12に流入した燃料流れ16aは、弁座10の径方向内側の噴孔内壁12cに押付けられて噴孔12の内壁の曲率に沿った燃料流れ16bに変換され、(d)に示すように噴孔12内で三日月状の液膜となって薄膜化する。そして、薄膜化した燃料が凹部15に流入すると、噴孔径が拡大されるため、(e)に示すように燃料流れは噴孔および凹部の曲率に沿った流れ16cとなり、液膜がさらに広げられて薄膜化し、噴孔12内を一周することなく噴射されるため、噴霧の微粒化の促進が可能となる。
【0039】
又、この実施の形態1では、複数の噴孔12の中心は、仮想円11dの径方向内側となるように配置されている。これにより、弁座軸18方向へ向う燃料流れが強化されるため、噴孔12に流入した燃料は、噴孔内壁12cにより強く押付けられるため、噴孔内での薄膜化が強化される。
【0040】
更に、噴孔12内の流路に於いて、噴孔プレート11の上流側端面11cから凹部15までの間に、最小断面となる円柱部分12dが確保されている。これにより、燃料の流量は、前記円柱部分12dの断面積によって決まるため、噴孔12と凹部15の位置ばらつきによる流量ばらつきを抑制することができる。
【0041】
次に、燃料の噴霧の指向性と微粒化を両立するための噴孔プレート11および噴孔12に対する凹部15の各寸法について説明する。図5は、燃料噴射弁の噴孔プレートおよび噴孔に対する凹部の各寸法の最適値を説明する説明図であり、(a)は噴孔プレートの要部の断面図、(b)は噴孔プレートの下流側端面に於ける噴孔及び凹部の平面図、(c)はG−G断面図である。
【0042】
図5に於いて、噴孔プレート11、噴孔12、及び凹部15の各寸法を以下のように定義する。
噴孔12の直径:D1
凹部15の直径:D2
噴孔プレート11の板厚:T1
凹部15の深さ:T2
噴孔プレート11の下流側端面に於ける噴孔12の長軸長さ:L1
噴孔プレート11の下流側端面に於ける凹部15が噴孔12を跨ぐ長さ(噴孔12の長軸上で、この軸直角で噴孔12と凹部15との交点を通る直線との交点から噴孔プレートの下流側端面に開口している噴孔端部までの距離):L2
【0043】
図6は、凹部と、噴孔の直径の比と、噴霧粒径との関係を示す説明図であり、縦軸は燃料の噴霧粒径、横軸は(D2/D1)を示す。図6に示す凹部15と噴孔12の直径の比(D2/D1)と噴霧粒径との関係は、本願の発明者が実験により求めたものである。
【0044】
図6から、
(D2/D1)≦1.1
となると、凹部15の追加による噴孔径拡大の割合が小さくなることで燃料の薄膜化が不
十分となり、
3.0≦(D2/D1)
となると、噴孔径と凹部15の曲率差が大きくなり、燃料は噴孔12から凹部15へ広がる前に噴孔12から剥離してしまうことで燃料の薄膜化が不十分となるため、
1.1<(D2/D1)<3.0
の範囲でのみ、微粒化が促進することが分かる。
【0045】
図7は、凹部の深さと、噴孔プレートの板厚の比と、噴霧粒径との関係を示す説明図であり、縦軸は噴霧粒径、横軸は凹部15の深さと噴孔プレート11の板厚の比(T2/T1)を示す。図7に示す凹部15の深さと噴孔プレート11の板厚の比(T2/T1)と噴霧粒径との関係は、本願の発明者が実験により求めたものである。
【0046】
図7から、
(T2/T1)≦0.1
となると、燃料は凹部内で薄膜化する前に噴射され、
0.8≦(T2/T1)
となると、噴孔12の流路に於いて、噴孔プレート11の上流側端面11cから凹部15までの間に最小断面となる円柱部分12dを確保することができなくなり、最小断面部の噴孔形状が図5の(c)のようにいびつな形状となるため、燃料流れに乱れが生じ、この乱れによって粒径が悪化する問題がある。また、凹部形状のばらつきにより最小流路面積がばらつくため、流量がばらつき、
0.1<(T2/T1)<0.8
の範囲でのみ、流量がばらつくことなく微粒化が促進することが分かる。
【0047】
図8は、凹部が噴孔を跨ぐ割合と、噴霧粒径との関係を示す説明図であり、縦軸は噴霧粒径、横軸は凹部15が噴孔12を跨ぐ割合(L2/L1)を示している。図8に示す凹部が噴孔を跨ぐ割合(L2/L1)と噴霧粒径との関係は、本願の発明者が実験により求めたものである。
【0048】
図8から、
(L2/L1)≦0.3
となると、噴孔12から凹部15への燃料の流入量が少なくなることで、燃料の薄膜化が不十分となり、
1.0<(L2/L1)
となると、燃料噴射弁軸心に対して径方向内側の噴孔長さが短くなり、噴孔に流入した燃料は噴孔の曲率に沿った流れへの変換が不十分なまま噴射されるため、筋状噴霧となり粒径が悪化する。また、噴霧の指向性を確保できなくなり、噴射された噴霧の角度が所望する角度よりも小さくなるため、
0.3<(L2/L1)≦1.0
の範囲でのみ、噴霧の指向性と微粒化の両立が可能ということが分かる。
【0049】
次に、凹部15の変形例について説明する。図9は、燃料噴射弁の噴孔プレートの凹部の変形例を説明する説明図で、(a)は凹部15の標準の変形例を示す断面図、(b)はそのH−H断面図である。図9の(a)、(b)に示す凹部15は、ほぼ円形に形成されている。図9の(c)は、凹部15の別の変形例を示し、図9の(a)のH−H断面図に相当する。図9の(d)は、凹部15の更に別の変形例を示し、図9の(a)のH−H断面図に相当する。
【0050】
図9の(c)に示す別の変形例では、凹部15は、噴孔12の長軸方向の凹部軸長さ15bよりも噴孔12の短軸方向の凹部軸長さ15cが長くなるように形成されている。図6の(d)に示す凹部15は、噴孔12の長軸方向の凹部軸長さ15bよりも噴孔12の短軸方向の凹部軸長さ15cが短くなるように形成されている。これらの何れの変形例の凹部15の形状に於いても、噴孔12に流入した燃料流れは、噴孔12および凹部15の曲率に沿った流れとなり、燃料の薄膜化が可能である。
【0051】
図9の(c)の場合は、前述の(D2/D1)≦1.1に於けるD2として、凹部15の長軸15c、即ち前述の仮想円11dの周方向の径である長軸15bを用いる。又、図9の(d)の場合は、前述の(D2/D1)≦1.1に於けるD2として、凹部15の短軸15c、即ち前述の仮想円11dの周方向の径である短軸15cを用いる。なお、凹部15は、この他にも色々な形状とすることができる。
【0052】
実施の形態2.
図10は、この発明の実施の形態2による燃料噴射弁を示す説明図であり、(a)は断面図、(b)はその矢印J方向から見た平面図、(c)はK−K断面拡大図、(d)はL−L断面拡大図である。実施の形態2では、図10に示すように、凹部15は凹部底面の直径D3よりも、噴孔プレート11の下流側端面11eに開口する凹部15の直径D2の方が大きくなるよう形成されている。その他の構成は、実施の形態1と同様である。
【0053】
図10に示す構成により、弁体8の開弁時に於いて、弁体先端部13と弁座シート面10a間との隙間10dを通って噴孔12から凹部15に流入した燃料流れ16aは、凹部内壁面に沿って十分に広がることができるため、噴孔プレート11の下流側端面11e側に向うにつれて噴孔12および凹部15の曲率に沿った流れ16cが強化され、液膜をより薄く広げて噴射することが可能である。
【0054】
なお、以上述べたこの発明の実施の形態1及び2に於いて、凹部15をプレスで形成することにより、低い製造コストで噴霧のばらつきを抑制することが可能である。
【符号の説明】
【0055】
1 燃料噴射弁 2 ソレノイド装置
3 ハウジング 4 コア
5 コイル 6 アマチュア
6a アマチュア摺動面 6b アマチュア上面
7 弁装置 8 弁体
9 弁本体 10 弁座
10a 弁座シート面 10b 弁座開口部
10c 弁座開口内壁 10d 隙間
11 噴孔プレート 11a 溶接部
11b 溶接部 11c 上流側端面
11d 仮想円 11e 下流側端面
11f 凸部 11g 凸部最外径部
12 噴孔 12a 噴孔入口
12b 噴孔出口 12c 噴孔内壁
12d 円柱部分 13 弁体先端部
13a 溝 13b 弁体摺動面
14 圧縮バネ 15 凹部
15a 凹部底面 15b 凹部の軸長さ
15c 凹部の軸長さ 16 燃料
16a 燃料流れ 16b 噴孔の曲率に沿った燃料流れ
16c 噴孔および凹部の曲率に沿った燃料流れ
16d Uターン流れ 17 デッドボリューム
18 弁座軸 T1 噴孔プレートの板厚
T2 凹部の深さ L1 噴孔の長軸長さ
L2 凹部が噴孔を跨ぐ長さ L3 噴孔長さ
L4 噴孔長さ d 噴孔の直径
D1 噴孔の直径 D2 凹部の直径
D3 凹部の直径 h 垂直距離
H 噴孔直上高さ H2 キャビティ高さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁座のシート面に対して当接若しくは離反する弁体を有し、制御装置からの動作信号を受けて前記弁体を動作させることで前記弁体が前記前座のシート面から離反したとき、燃料が、前記弁体と前記弁座のシート面との間を通過して後、前記弁座に固定された噴孔プレートに設けられた複数の噴孔から外部に噴射されるようにした燃料噴射弁であって、
前記弁座のシート面は、前記燃料の流通する上流側から下流側に向けて内径が縮小するように形成され、
前記噴孔プレートは、前記シート面に沿って前記シート面の下流側端縁から延長する仮想延長シート面と前記噴孔プレートの上流側端面とが交差して1つの仮想円を形成するように、前記弁体の先端部に対向して配置され、且つ前記弁体の先端部に対向する部位が、前記弁体の先端部の表面に対して所定の間隔を介して下流側へ突出する凸部を備え、
前記凸部は、前記仮想円の径方向内側に位置するように前記噴孔プレートに設けられ、
前記噴孔プレートに設けられた複数の噴孔は、前記噴孔プレートの前記上流側端面に於いて開口する噴孔入口から噴孔出口まで同一直径に形成され、
前記噴孔入口は、前記噴孔出口に対して前記弁座の径方向内側となるよう配置され、
前記噴孔プレートの前記上流側端面に開口する前記噴孔入口の中心は、前記弁座の最小内径である前記弁座の開口部の内壁より径方向内側で、かつ前記凸部の径方向外側に配置され、
前記弁座の径方向内側に位置する前記噴孔の噴孔長さよりも前記弁座の径方向外側に位置する前記噴孔長さのほうが短くなるように、前記噴孔プレートの下流側端面に、前記複数の噴孔に夫々対応して配置された複数の凹部を備え、
前記噴孔出口の少なくとも一部分は、前記凹部の底面に開口し、
前記噴孔出口の他の部分は、前記噴孔プレートの前記下流側端面に開口し、若しくは前記凹部の内面に接しており、
前記噴孔により形成される前記燃料の流路は、前記噴孔プレートの前記上流側端面から前記凹部の底面に至るまでの間に、前記噴孔の径方向の最小断面を断面とする円柱部分を備え、
前記噴孔の直径をD1、前記凹部の直径、若しくは前記仮想円の周方向に於ける前記凹部の径をD2としたとき、
1.1<(D2/D1)<3.0
の関係を有する、
ことを特徴とする燃料噴射弁。
【請求項2】
弁座のシート面に対して当接若しくは離反する弁体を有し、制御装置からの動作信号を受けて前記弁体を動作させることで前記弁体が前記前座のシート面から離反したとき、燃料が、前記弁体と前記弁座のシート面との間を通過して後、前記弁座に固定された噴孔プレートに設けられた複数の噴孔から外部に噴射されるようにした燃料噴射弁であって、
前記弁座のシート面は、前記燃料の流通する上流側から下流側に向けて内径が縮小するように形成され、
前記噴孔プレートは、前記シート面に沿って前記シート面の下流側端縁から延長する仮想延長シート面と前記噴孔プレートの上流側端面とが交差して1つの仮想円を形成するように、前記弁体の先端部に対向して配置され、且つ前記弁体の先端部に対向する部位が、前記弁体の先端部の表面に対して所定の間隔を介して下流側へ突出する凸部を備え、
前記凸部は、前記仮想円の径方向内側に位置するように前記噴孔プレートに設けられ、
前記噴孔プレートに設けられた複数の噴孔は、前記噴孔プレートの前記上流側端面に於いて開口する噴孔入口から噴孔出口まで同一直径に形成され、
前記噴孔入口は、前記噴孔出口に対して前記弁座の径方向内側となるよう配置され、
前記噴孔プレートの前記上流側端面に開口する前記噴孔入口の中心は、前記弁座の最小内径である前記弁座の開口部の内壁より径方向内側で、かつ前記凸部の径方向外側に配置
され、
前記弁座の径方向内側に位置する前記噴孔の噴孔長さよりも前記弁座の径方向外側に位置する前記噴孔長さのほうが短くなるように、前記噴孔プレートの下流側端面に、前記複数の噴孔に夫々対応して配置された複数の凹部を備え、
前記噴孔出口の少なくとも一部分は、前記凹部の底面に開口し、
前記噴孔出口の他の部分は、前記噴孔プレートの前記下流側端面に開口し、若しくは前記凹部の内面に接しており、
前記噴孔により形成される前記燃料の流路は、前記噴孔プレートの前記上流側端面から前記凹部の底面に至るまでの間に、前記噴孔の径方向の最小断面を断面とする円柱部分を備え、
前記噴孔プレートの板厚をT1、前記凹部の深さをT2としたとき、
0.1<(T2/T1)<0.8
の関係を有する、
ことを特徴とする燃料噴射弁。
【請求項3】
弁座のシート面に対して当接若しくは離反する弁体を有し、制御装置からの動作信号を受けて前記弁体を動作させることで前記弁体が前記前座のシート面から離反したとき、燃料が、前記弁体と前記弁座のシート面との間を通過して後、前記弁座に固定された噴孔プレートに設けられた複数の噴孔から外部に噴射されるようにした燃料噴射弁であって、
前記弁座のシート面は、前記燃料の流通する上流側から下流側に向けて内径が縮小するように形成され、
前記噴孔プレートは、前記シート面に沿って前記シート面の下流側端縁から延長する仮想延長シート面と前記噴孔プレートの上流側端面とが交差して1つの仮想円を形成するように、前記弁体の先端部に対向して配置され、且つ前記弁体の先端部に対向する部位が、前記弁体の先端部の表面に対して所定の間隔を介して下流側へ突出する凸部を備え、
前記凸部は、前記仮想円の径方向内側に位置するように前記噴孔プレートに設けられ、
前記噴孔プレートに設けられた複数の噴孔は、前記噴孔プレートの前記上流側端面に於いて開口する噴孔入口から噴孔出口まで同一直径に形成され、
前記噴孔入口は、前記噴孔出口に対して前記弁座の径方向内側となるよう配置され、
前記噴孔プレートの前記上流側端面に開口する前記噴孔入口の中心は、前記弁座の最小内径である前記弁座の開口部の内壁より径方向内側で、かつ前記凸部の径方向外側に配置され、
前記弁座の径方向内側に位置する前記噴孔の噴孔長さよりも前記弁座の径方向外側に位置する前記噴孔長さのほうが短くなるように、前記噴孔プレートの下流側端面に、前記複数の噴孔に夫々対応して配置された複数の凹部を備え、
前記凹部は、円形に形成され、
前記噴孔出口の少なくとも一部分は、前記凹部の底面に開口し、
前記噴孔出口の他の部分は、前記噴孔プレートの前記下流側端面に開口し、若しくは前記凹部の内面に接しており、
前記噴孔により形成される前記燃料の流路は、前記噴孔プレートの前記上流側端面から前記凹部の底面に至るまでの間に、前記噴孔の径方向の最小断面を断面とする円柱部分を備え、
前記噴孔プレートの前記下流側端面に於ける前記噴孔の長軸長さをL1、前記噴孔プレートの前記下流側端面に於ける前記凹部が前記噴孔を跨ぐ長さをL2としたとき、
0.3<(L2/L1)≦1.0
の関係を有する、
ことを特徴とする燃料噴射弁。
【請求項4】
前記凹部は、前記凹部の底面の直径よりも前記噴孔プレートの下流側端面に開口する凹部の直径の方が大きい、
ことを特徴とする請求項1乃至3のうちの何れか一項に記載の燃料噴射弁。
【請求項5】
前記凹部は、プレスにより前記噴孔プレートに形成される、
ことを特徴とする、請求項1乃至4のうちの何れか一項に記載の燃料噴射弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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