説明

燃料性状検出装置

【課題】汚染物質の影響により燃料性状の検出感度が変化することを防止することができる燃料性状検出装置を提供する。
【解決手段】第1発光手段101により燃料に光を照射し該光を受光手段102により受光して燃料性状を検出する燃料性状検出装置100において、第1発光手段101と燃料との間に設けられ第1発光手段101を燃料から保護すると共に光が透過可能な保護手段103と、保護手段103の燃料との接触面103aに設けられる第1光触媒膜107と、第1光触媒膜107を活性化する光を発する第2発光手段109とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料性状検出装置に関し、特に、光学系を用いた燃料性状検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車燃料の多様化に対応するために、例えば、ガソリンにエタノール等のアルコールを混合した燃料を使用するフレキシブルフューエル車(FFV:Flexible Fuel Vehicle)が開発されている。このFFVは、アルコールとガソリンを選択的に使用するものや、アルコールとガソリンを所定割合で混合して使用するもの等が知られており、アルコールを使用可能なアルコール対応エンジンを備えている。このような多様な燃料に対応するエンジンでは、例えば、アルコール濃度やベースガソリンの密度などの燃料性状に応じて燃料の発熱量や気化特性が異なることから、一種類の燃料にエンジン運転条件が適合しても、この条件に適合しないような燃料が給油された場合には、適切な運転ができなくなるおそれがある。このため、このようなエンジンでは、燃料の性状を検出する装置を備えるものがある。燃料の性状を検出する装置として、例えば、特許文献1には、透明な樹脂製のセンサケースで反射した発光素子の光を受光素子により受光し、この受光素子の受光量からセンサケース外方に存する液体の比重を計算することで、ディーゼル軽油が重質または軽質といった燃料性状を測定する光学式の燃料性状センサが開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開平5−26807号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1に記載された燃料性状センサでは、例えば、センサケースにおける液体との接触面に汚染物質が付着して光路中に汚染物質が介在すると、この汚染物質により発光素子の光が減衰し、受光素子の受光量にずれが生じてしまうことがあった。この結果、燃料性状の検出感度が変化し、燃料性状を正確に検出することができなくなり、よって、例えば、低温時始動性、運転性(ドライバビリティ)の悪化やエミッション性能の低下などを招き、燃料性状に応じた最適なエンジン制御ができなくなることがあった。
【0005】
そこで本発明は、汚染物質の影響により燃料性状の検出感度が変化することを防止することができる燃料性状検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明による燃料性状検出装置は、第1発光手段により燃料に光を照射し該光を受光手段により受光して燃料性状を検出する燃料性状検出装置において、前記第1発光手段と前記燃料との間に設けられ前記第1発光手段を前記燃料から保護すると共に前記光が透過可能な保護手段と、前記保護手段の前記燃料との接触面に設けられる第1光触媒膜と、前記第1光触媒膜を活性化する光を発する第2発光手段とを備えることを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る発明による燃料性状検出装置では、前記燃料に照射された光を前記受光手段に向けて反射する反射板と、前記反射板の前記燃料との接触面に設けられる第2光触媒膜とを備えることを特徴とする。
【0008】
請求項3に係る発明による燃料性状検出装置では、前記第2光触媒膜は、前記第2発光手段が発する光により活性化されることを特徴とする。
【0009】
請求項4に係る発明による燃料性状検出装置では、前記保護手段は、プリズムにより構成されることを特徴とする。
【0010】
請求項5に係る発明による燃料性状検出装置では、前記プリズムを通過した光の前記受光手段による受光位置に基づいて前記燃料の屈折率を算出して燃料密度を検出する第1判定手段を備えることを特徴とする。
【0011】
請求項6に係る発明による燃料性状検出装置では、前記燃料を通過した光の前記受光手段による受光量に基づいて前記燃料の透過率を算出して燃料濃度を検出する第2判定手段を備えることを特徴とする。
【0012】
請求項7に係る発明による燃料性状検出装置では、少なくともガソリンとアルコールとを含む混合燃料の燃料性状を検出する判定手段を備え、前記判定手段は、前記燃料性状として前記混合燃料中のガソリン密度とアルコール濃度とを検出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る燃料性状検出装置によれば、保護手段における燃料との接触面に設けられる第1光触媒膜と、第1光触媒膜を活性化する光を発する第2発光手段とを備えるので、汚染物質の影響により燃料性状の検出感度が変化することを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明に係る燃料性状検出装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
【実施例1】
【0015】
図1は、本発明の実施例1に係る燃料性状センサの概略断面図、図2は、本発明の実施例1に係る燃料性状センサが適用されたエンジンの模式的断面図、図3は、本発明の実施例1に係る燃料性状センサが検出する燃料の屈折率と密度との関係を示す線図、図4は、本発明の実施例1に係る燃料性状センサの光触媒膜を説明する模式図である。
【0016】
図2に示すように、実施例1に係る燃料性状検出装置としての燃料性状センサ100は、例えば、内燃機関に供給される燃料の性状を検出するものである。本実施例の燃料性状センサ100は、多様燃料車(FFV)に搭載されるアルコール対応エンジン1(以下、単に「エンジン1」という。)に適用した場合で説明する。以下、燃料性状センサ100は、燃料として、ガソリンだけでなく、このガソリンにエタノールを混合した燃料を使用可能とした多様燃料を使用可能な内燃機関としてのエンジン1に適用して説明するが、これに限らず、燃料を用いて駆動する種々の装置の燃料性状検出装置にも適用可能である。
【0017】
このエンジン1は、乗用車、トラックなどの車両に搭載されるエンジンであり、シリンダボア2に往復運動可能に設けられるピストン3が2往復する間に、吸気行程、圧縮行程、膨張行程及び排気行程からなる一連の4行程を行う、いわゆる4サイクルエンジンである。
【0018】
エンジン1は、シリンダボア2を往復移動可能なピストン3と、空気と燃料との混合気が燃焼可能であると共にピストン3の移動方向の一方側に設けられる燃焼室4と、ピストン3の移動方向の他方側に設けられる複数のクランク室5を備える。ここで、ピストン3の移動方向は、円筒形状に形成されるシリンダとしてのシリンダボア2の軸線方向である。つまり、ピストン3を挟んでこのシリンダボア2の軸線方向の一方側に燃焼室4、他方側にクランク室5が設けられる。このエンジン1は、シリンダボア2、ピストン3、燃焼室4、クランク室5をそれぞれ複数備える。なお、以下の説明では、複数ある気筒のうちの1つについて説明する。また、シリンダボア2の軸線方向は、燃焼室4の軸線方向と一致する。
【0019】
さらに、エンジン1は、燃焼室4に連通する吸気ポート6及び排気ポート7と、吸気ポート6内に燃料を噴射することが可能なインジェクタ8と、燃焼室4内の混合気に着火する点火プラグ9と、ピストン3の往復運動に連動して回転可能なクランクシャフト10を備える。インジェクタ8、点火プラグ9は、制御手段としての電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit、以下単に「ECU」という)50に電気的に接続されている。さらに、エンジン1は、シリンダヘッド11、シリンダブロック12及びクランクケース13を備える。
【0020】
シリンダヘッド11は、シリンダブロック12上に締結され、クランクケース13は、シリンダブロック12の下部に締結される。シリンダブロック12は、内部に上述した円筒形状のシリンダボア2が形成される。このシリンダブロック12は、複数のシリンダボア2を形成するボア壁面2aと、複数のクランク室5を形成するクランク室壁面5aを有し、このボア壁面2aとクランク室壁面5aとは、ボア壁面2aの下端部、クランク室壁面5aの上端部において連続している。
【0021】
ピストン3は、このシリンダボア2に上下移動自在に嵌合する。クランク室5は、シリンダボア2に各々連通する。クランクケース13は、内部に潤滑油(オイル)を貯留する。クランクシャフト10は、複数のクランク室5を貫通して回転自在に支持される。上述のピストン3は、それぞれコネクティングロッド14を介してこのクランクシャフト10に連結される。また、クランクシャフト10は、その軸周りにカウンタウェイト15を有する。各ピストン3の往復運動は、コネクティングロッド14を介してクランクシャフト10に伝えられ、ここで回転運動に変換されて、エンジン1の出力として取り出される。
【0022】
燃焼室4は、ピストン3を挟んでクランク室5の反対側に設けられる。この燃焼室4は、複数のシリンダボア2に対応して複数形成され、シリンダヘッド11の下面としての筒内天井部11a、シリンダボア2のボア壁面2a及びピストン3の他方の端面である頂面3aにより画成される。
【0023】
この燃焼室4の上部、つまり、シリンダヘッド11の筒内天井部11aに上述した吸気ポート6及び排気ポート7が各々2つずつ形成される。この吸気ポート6及び排気ポート7の開口にはそれぞれ吸気弁16及び排気弁17が設けられる。この吸気弁16及び排気弁17は、吸気ポート6及び排気ポート7をそれぞれ開閉可能とし、吸気ポート6と燃焼室4、燃焼室4と排気ポート7とをそれぞれ連通することができる。吸気ポート6は、その吸気方向上流側に空気を導入する吸気通路(吸気管)18が接続され、排気ポート7は、燃焼室4から排気ガスを排出しその排気方向下流側に排気ガスを排出する排気通路(排気管)19が接続される。
【0024】
インジェクタ8は、上述したように吸気ポート6内に装着される。そして、各気筒に装着されるインジェクタ8は、デリバリパイプ8aに連結され、このデリバリパイプ8aは、燃料供給管8bを介して燃料タンクに連結される。各インジェクタ8は、燃料タンクから燃料供給管8b、デリバリパイプ8aを介して燃料が供給され、吸気ポート6内に燃料噴霧を噴射する。点火プラグ9は、燃焼室4の天井部分、すなわち、シリンダヘッド11の筒内天井部11aの吸気ポート6と排気ポート7の間に装着される。
【0025】
さらに、このエンジン1は、マイクロコンピュータを中心として構成されるECU50により運転状態に応じて各部の駆動が制御されている。ECU50には、エンジン1の各部を駆動する不図示の駆動回路及び各種センサが接続されており、ECU50は、これらの駆動回路、センサ等との間で信号の入出力を行なう。すなわち、ECU50は、種々のセンサが検出する吸入空気量、吸気温度、吸気圧、スロットル開度、アクセル開度、エンジン回転数、エンジン冷却水温などのエンジン運転状態に基づいて燃料噴射量(燃料噴射時間)、噴射時期、点火時期などを決定し、インジェクタ8及び点火プラグ9を駆動して燃料噴射及び点火を実行する。
【0026】
このエンジン1では、インジェクタ8から噴射される燃料と吸気通路18、吸気ポート6を介して吸入される空気とが混合して混合気を形成し、ピストン3がシリンダボア2内を下降することで、燃焼室4内にこの混合気が吸入される(吸気行程)。そして、このピストン3が吸気行程下死点を経てシリンダボア2内を上昇することで混合気が圧縮され(圧縮行程)、ピストン3が圧縮行程上死点付近に近づくと点火プラグ9により混合気に点火され、該混合気が燃焼し、その燃焼圧力によりピストン3を下降させる(膨張行程)。燃焼後の混合気は、ピストン3が膨張行程下死点を経て吸気行程上死点に向かって再び上昇することで排気ポート7、排気通路19を介して排気ガスとして放出される(排気行程)。このピストン3のシリンダボア2内での往復運動は、コネクティングロッド14を介してクランクシャフト10に伝えられ、ここで回転運動に変換され、出力として取り出されると共に、このピストン3は、カウンタウェイト15、クランクシャフト10が慣性力によりさらに回転することで、このクランクシャフト10の回転に伴ってシリンダボア2内を往復する。このクランクシャフト10が2回転することで、ピストン3はシリンダボア2を2往復し、この間に吸気行程、圧縮行程、膨張行程及び排気行程からなる一連の4行程を行い、燃焼室4内で1回の爆発が行われる。
【0027】
ところで、本実施例のエンジン1のようにFFVに搭載されるエンジンでは、ガソリンにエタノール等のアルコールを混合した燃料が使用され、例えば、アルコールとガソリンとを選択的に使用したり、アルコールとガソリンとを所定割合で混合して使用したりする。そして、本実施例のエンジン1のように多様な燃料に対応するエンジンでは、例えば、アルコール濃度やベースガソリンの密度などの燃料性状に応じて燃料の発熱量や気化特性が異なることから、一種類の燃料にエンジン運転条件が適合しても、この条件に適合しないような燃料が給油された場合には、例えば、低温時始動性、運転性(ドライバビリティ)の悪化やエミッション性能の低下などを招くおそれがある。このため、このようなエンジン1において最適な運転をするためには、インジェクタ8から吸気ポート6に供給される燃料の性状を正確に検出し、検出した燃料性状に応じて運転を制御することが重要である。
【0028】
このため、本実施例のエンジン1は、燃料供給管8bに燃料性状センサ100を備えている。本実施例のように、燃料供給管8bに燃料性状センサ100を設ける場合、燃料供給管8bの適宜の箇所に燃料性状センサ100を設ければよいことから、燃料性状センサ100の設置スペースを容易に確保することができる。
【0029】
具体的には、燃料性状センサ100は、図1に示すように、第1発光手段としての発光素子101と、受光手段としての受光素子102と、保護手段としてのプリズム103と、反射板104と、第1判定手段としての第1判定部105を備える。
【0030】
発光素子101は、燃料に所定の波長(例えば、800から900nm程度)の光を照射するものであり、ここでは発光ダイオードを用いる。受光素子102は、発光素子101が発した光を受光するものである。受光素子102は、第1判定部105に電気的に接続されており、受光した光の信号を電気信号に変換し第1判定部105に送信する。受光素子102は、ここではPSD(Position Sensitive Detector;位置検出素子)を用いる。このPSDは、フォトダイオードの表面抵抗を利用しスポット光の位置を検出することができる。発光素子101及び受光素子102は、外部の電源から電力が供給される。
【0031】
プリズム103は、燃料供給管8bの側面が開口した取付部8cに嵌装される。このプリズム103は、透明ガラスあるいは透明樹脂により円柱状に形成され、一端面に燃料供給管8b内を通過する燃料と接触する接触面103aが形成される一方、他端面には、発光素子101、受光素子102が設置される設置面103bが形成される。そして、プリズム103の周面には、シール部材(Oリング)106が嵌装されており、プリズム103は、このシール部材106により取付部8cの内壁との隙間を封止されてこの取付部8cに設けられる。上述の発光素子101、受光素子102は、このプリズム103の設置面103bに燃料の供給方向に並んで設けられている。すなわち、プリズム103は、発光素子101、受光素子102と燃料供給管8b内を通過する燃料との間に設けられる。
【0032】
そして、プリズム103は、発光素子101が発した光が透過可能であると共に発光素子101、受光素子102と燃料供給管8b内を通過する燃料との接触を防止する。すなわち、このプリズム103は、発光素子101が発した光を導く導光体であると共に発光素子101、受光素子102を燃料から保護する本発明の保護手段でもある。
【0033】
反射板104は、金属等の反射膜により形成され、燃料供給管8bの内壁面において、上述のプリズム103の接触面103aと対向するように設けられており、この接触面103aと対向する接触面104aにおいて燃料供給管8b内を通過する燃料と接触している。
【0034】
そして、この反射板104は、発光素子101から燃料に照射された光を受光素子102に向けて反射する。すなわち、発光素子101から燃料に向けて照射された光は、光学面としての設置面103bを介してプリズム103内に入射された後、光学面としての接触面103aから燃料に出射される。そして、接触面103aから出射された光は、燃料中を通って反射板104により受光素子102に向けて反射され、接触面103aを介して再びプリズム103内に入射され、設置面103bから出射され受光素子102により受光される。
【0035】
このとき、プリズム103に入射する光、プリズム103から出射する光は、光学面としての接触面103aにて、プリズム103の屈折率N1及び燃料供給管8b内を通過する燃料の屈折率N2に応じて屈折する。ここで、プリズム103の屈折率N1は、固定された値であるのに対して、燃料供給管8b内を通過する燃料の屈折率N2は、燃料中のベースガソリンの密度(以下、単に「燃料密度」という)に応じて変化する。すなわち、燃料供給管8b内を通過する燃料の性状として燃料密度が変化すると、燃料の屈折率N2が変化し、この結果、受光素子102により受光される光の受光位置もこれに応じて変化する。さらに、図3に示すように、燃料密度と燃料の屈折率N2とは、相関関係にあり、屈折率N2が高い燃料ほど燃料密度が高くなる一方、屈折率N2が低い燃料ほど燃料密度も低くなる。したがって、受光素子102により受光される光の重心位置に応じてこの燃料の屈折率N2を算出すれば、燃料の性状としての燃料密度を検出することができる。
【0036】
第1判定部105は、上述のECU50に電気的に接続される電子制御回路として構成される。第1判定部105は、反射板104で反射し、燃料、プリズム103を通過した光の受光素子102による受光位置に基づいて燃料の屈折率N2を算出する。ここでは、第1判定部105は、受光素子102により受光した光の重心位置に基づいて、接触面103aにおける臨界角θを幾何学的に算出し、この臨界角θとプリズム103の屈折率N1に基づいて、[θ=Sin-1(N2/N1)]を用いて燃料の屈折率N2を算出する。そして、第1判定部105は、この燃料の屈折率N2に応じて、図3に示すような屈折率N2と燃料密度との関係を示すマップ(不図示の記憶部に記憶)に基づいて燃料の性状としての燃料密度を検出する。第1判定部105は、検出結果の出力信号をエンジン1のECU50に送信する。
【0037】
なお、ここでは、第1判定部105は、臨界角θとプリズム103の屈折率N1に基づいて燃料の屈折率N2を算出するものとして説明したが、これに限らず、例えば、受光素子102による受光位置と屈折率N2との関係を示すマップを予め不図示の記憶部等に記憶させておき、このマップに基づいて屈折率N2を算出してもよいし、受光素子102による受光位置と燃料密度との関係を示すマップを予め不図示の記憶部等に記憶させておき、このマップに基づいて直接燃料密度を検出するようにしてもよい。
【0038】
そして、ECU50は、この第1判定部105が検出した燃料密度に基づいて燃料噴射量(燃料噴射時間)、噴射時期、点火時期などを決定し、インジェクタ8及び点火プラグ9を駆動して燃料噴射及び点火を実行する。これにより、低温時始動性、運転性(ドライバビリティ)の向上やエミッション性能の向上など燃料性状に応じた最適なエンジン制御が可能となる。例えば、始動時において燃料密度が高い場合にはガソリンが気化しにくくなる一方、燃料密度が低い場合にはガソリンが気化しやすくなる。このため、本実施例のECU50は、エンジン1の始動時において、第1判定部105が検出した燃料の密度が高い場合には燃料噴射量を相対的に多くし、燃料の密度が低い場合には燃料噴射量を相対的に少なくするようにインジェクタ8を制御する。これにより、燃料密度が低い場合に燃料噴射量が多すぎて燃費が悪化したり、未燃燃料が増加してエミッション性能が低下したりすることを防止することができ、また、燃料密度が高い場合に燃料噴射量が少なすぎて失火の原因になることを防止することができる。
【0039】
ところで、例えば、燃料に直接接しているプリズム103の接触面103aに燃料中の不純物質が付着し、発光素子101から受光素子102までの上記光路中に水垢、油垢状の汚染物質が介在すると、この汚染物質により発光素子101の光が減衰し、受光素子102での受光量や受光位置にずれが生じてしまうおそれがある。受光素子102での受光量や受光位置にずれが生じると、燃料性状の検出感度が変化し、燃料性状を正確に検出することができなくなり、この結果、上述のような低温時始動性や運転性(ドライバビリティ)の悪化やエミッション性能の低下などを招き、燃料性状に応じた最適なエンジン制御ができなくなるおそれがある。
【0040】
そこで、本実施例の燃料性状センサ100では、図1に示すように、プリズム103の接触面103aに第1光触媒膜としてのプリズム側光触媒膜107を設けることで、汚染物質の影響による燃料性状の検出感度変化の防止を図っている。さらに、本実施例の燃料性状センサ100では、反射板104の接触面104aに第2光触媒膜としての反射板側光触媒膜108が設けられる。
【0041】
プリズム側光触媒膜107は、プリズム103において燃料供給管8b内を通過する燃料と接触する面、すなわち、接触面103aの全面に成膜される。同様に、反射板側光触媒膜108は、反射板104において燃料供給管8b内を通過する燃料と接触する面、すなわち、接触面104aの全面に成膜される。
【0042】
プリズム側光触媒膜107及び反射板側光触媒膜108は、光を吸収することで触媒作用を示す物質、例えば、チタニア(酸化チタン;TiO2)、パラジウム(Pd)、プラチナ(Pt)、フロロシリコン系の光触媒膜を用いることができる。本実施例のプリズム側光触媒膜107及び反射板側光触媒膜108は、膜厚が数μm程度のチタニア薄膜を用いる。このチタニア薄膜により形成されるプリズム側光触媒膜107及び反射板側光触媒膜108は、無色透明であると共に所定波長(およそ380nm以下)の光成分に対して光触媒反応が誘起される。すなわち、図4の模式図に示すように、このチタニア薄膜に光(紫外線)が照射されると、その表面から電子が叩き出される。このとき電子が抜けた孔は、「+」に帯電した正孔(ホール)として形成される。この正孔は、強い酸化力を有し燃料中のOH-(水酸化物イオン)などから電子を奪う。ここで、電子を奪われたOH-は、非常に不安定な状態、すなわち、安定になろうとする作用が強い状態のOHラジカルになる。そして、OHラジカルは、強力な酸化力を有するため、このOHラジカル近傍の有機物(汚染物質)から電子を奪い、OHラジカル自身が安定な状態になろうとする。このようにして電子を奪われた有機物は、その結合を分断され最終的に分解される。
【0043】
そして、燃料性状センサ100は、このプリズム側光触媒膜107及び反射板側光触媒膜108を活性化させる第2発光手段としての光触媒活性化用光源109を備える。光触媒活性化用光源109は、プリズム103の設置面103bに設けられる。さらに具体的には、光触媒活性化用光源109は、設置面103b上の発光素子101と受光素子102との間に設けられる。この光触媒活性化用光源109は、プリズム側光触媒膜107及び反射板側光触媒膜108を活性化する光を発するものであり、ここでは、所定波長(およそ380から480nm程度)の近紫外線光を発する発光ダイオードを用いる。光触媒活性化用光源109は、外部の電源から電力が供給される。
【0044】
上記のように構成される燃料性状センサ100では、光触媒活性化用光源109は、常に光を照射している。そして、プリズム側光触媒膜107及び反射板側光触媒膜108は、この光触媒活性化用光源109から発せられる光により活性化され光触媒反応を起こす。すると、プリズム103の接触面103a及び反射板104の接触面104aに汚染物質が付着する前に分解され、接触面103a、接触面104aへの汚染物質の付着が未然に抑制される。また、仮にこの接触面103a、接触面104aに汚染物質が付着したとしてもこの汚染物質をふき取ることなく、最終的には光触媒反応により分解される。
【0045】
これに対し、発光素子101から発せられる燃料性状検出のための光は、上述したように800から900nm程度の波長の光であり、プリズム側光触媒膜107及び反射板側光触媒膜108を活性化する波長の光ではない。このため、発光素子101から発せられた光は、プリズム103の接触面103aを通過する際や反射板104の接触面104aで反射する際でも、プリズム側光触媒膜107、反射板側光触媒膜108に吸収されることなく透過、反射することから、燃料性状の検出に影響を及ぼすことはない。
【0046】
そして、接触面103a、接触面104aへの汚染物質が抑制されることから、発光素子101から受光素子102までの上記光路中に汚染物質が介在することが抑制され、受光素子102での受光量や受光位置にずれが生じることが防止される。これにより、燃料性状センサ100における燃料性状の検出感度が変化することが抑制されることから、燃料供給管8b内を通過する燃料の燃料性状を正確に検出することができる。この結果、燃料性状センサ100を備えるエンジン1は、上述のような低温時始動性や運転性(ドライバビリティ)の向上やエミッション性能の向上など燃料性状に応じた最適なエンジン制御を正確に実行することができる。
【0047】
以上で説明した本発明の実施例に係る燃料性状センサ100によれば、発光素子101により燃料に光を照射しこの光を受光素子102により受光して燃料性状を検出する燃料性状センサ100において、発光素子101と燃料との間に設けられ発光素子101を燃料から保護すると共に光が透過可能な保護手段としてのプリズム103と、プリズム103の燃料との接触面103aに設けられるプリズム側光触媒膜107と、プリズム側光触媒膜107を活性化する光を発する光触媒活性化用光源109とを備える。
【0048】
したがって、光が透過可能なプリズム103の接触面103aにプリズム側光触媒膜107を成膜し、このプリズム側光触媒膜107を活性化する光触媒活性化用光源109を設けたことから、プリズム103により発光素子101と燃料との接触を防止することができると共に光触媒活性化用光源109が発する光により接触面103aに設けられたプリズム側光触媒膜107が活性化され光触媒反応を起こすので、接触面103aへの汚染物質の付着を抑制することができ、これにより、汚染物質の影響により燃料性状の検出感度が変化することを防止することができる。
【0049】
さらに、以上で説明した本発明の実施例に係る燃料性状センサ100によれば、燃料に照射された光を受光素子102に向けて反射する反射板104と、反射板104の燃料との接触面104aに設けられる反射板側光触媒膜108とを備える。したがって、光を反射する反射板104の接触面104aに反射板側光触媒膜108を成膜し、この反射板側光触媒膜108が活性化され光触媒反応を起こすことで、接触面104aへの汚染物質の付着を抑制することができ、これにより、汚染物質の影響により燃料性状の検出感度が変化することをより確実に防止することができる。
【0050】
さらに、以上で説明した本発明の実施例に係る燃料性状センサ100によれば、反射板側光触媒膜108は、光触媒活性化用光源109が発する光により活性化される。したがって、反射板側光触媒膜108の活性化用の光源を新たに設けることなく、プリズム側光触媒膜107を活性化させる光源を兼用することができるので、燃料性状センサ100の構成をよりコンパクトにすることができる。
【0051】
さらに、以上で説明した本発明の実施例に係る燃料性状センサ100によれば、本発明の保護手段は、プリズム103により構成される。したがって、プリズム103により発光素子101を燃料から保護した上で、このプリズム103を燃料性状を検出するための光学系として用いることができるので、燃料性状センサ100の構成をよりコンパクトにすることができる。
【0052】
さらに、以上で説明した本発明の実施例に係る燃料性状センサ100によれば、プリズム103を通過した光の受光素子102による受光位置に基づいて燃料の屈折率を算出して燃料密度を検出する第1判定部105を備える。したがって、燃料密度と燃料の屈折率N2とは相関関係にあることから、受光素子102により受光される光の重心位置に応じてこの燃料の屈折率N2を算出し、燃料の性状としての燃料密度を検出することができる。そして、この燃料性状センサ100では、プリズム側光触媒膜107、反射板側光触媒膜108により汚染物質の影響を排除して燃料密度を検出することから、より正確な燃料密度を検出することができる。この結果、この正確な燃料密度に基づいてエンジン1をより最適に制御することができる。
【実施例2】
【0053】
図5は、本発明の実施例2に係る燃料性状センサの概略断面図、図6は、本発明の実施例2に係る燃料性状センサが検出する燃料の透過率について説明するための線図である。実施例2に係る燃料性状検出装置は、実施例1に係る燃料性状検出装置と略同様の構成であるが、燃料性状として燃料密度に代えて燃料濃度を検出する点で実施例1に係る燃料性状検出装置とは異なる。その他、上述した実施例と共通する構成、作用、効果については、重複した説明はできるだけ省略するとともに、同一の符号を付す。
【0054】
実施例2に係る転がり燃料性状検出装置としての燃料性状センサ200は、図5に示すように、実施例1のプリズム103(図1参照)と反射板104(図1参照)に代えて、保護手段としての透明部材203、204を備える。さらに、燃料性状センサ200は、実施例1の第1判定部105(図1参照)に代えて、第2判定手段としての第2判定部205を備える。
【0055】
具体的には、燃料性状センサ200は、図5に示すように、第1発光手段としての発光素子201と、受光手段としての受光素子202と、保護手段としての透明部材203、204と、第2判定手段としての第2判定部205を備える。
【0056】
発光素子201は、燃料に所定の波長(ここでは、1600から1700nm程度)の光を照射するものであり、ここでは発光ダイオードを用いる。受光素子202は、発光素子201が発した光を受光するものである。受光素子202は、第2判定部205に電気的に接続されており、受光した光の信号を電気信号に変換し第2判定部205に送信する。受光素子202は、ここでは受光量を検出するフォトダイオードを用いる。発光素子201及び受光素子202は、外部の電源から電力が供給される。
【0057】
透明部材203は、燃料供給管8bの側面が開口した取付部8cに嵌装される。この透明部材203は、透明ガラスあるいは透明樹脂により円柱状に形成され、一端面に燃料供給管8b内を通過する燃料と接触する接触面203aが形成される一方、他端面には、発光素子201が設置される設置面203bが形成される。そして、透明部材203の周面は、シール部材106により封止されている。発光素子201は、この透明部材203の設置面203bに設けられている。すなわち、透明部材203は、発光素子201と燃料供給管8b内を通過する燃料との間に設けられる。透明部材203は、発光素子201が発した光が透過可能であると共に発光素子201と燃料供給管8b内を通過する燃料との接触を防止する。
【0058】
一方、透明部材204は、燃料供給管8bにおいて透明部材203が取り付けられる取付部8cに対向する側面が開口した取付部8cに嵌装される。そして、透明部材204は、透明部材203と同様に、一端面に燃料供給管8b内を通過する燃料と接触する接触面204aが形成される一方、他端面には、受光素子202が設置される設置面204bが形成される。そして、透明部材204の周面は、シール部材106により封止されている。受光素子202は、この透明部材204の設置面204bに設けられている。すなわち、透明部材204は、受光素子202と燃料供給管8b内を通過する燃料との間に設けられる。透明部材204は、発光素子201が発した光が透過可能であると共に受光素子202と燃料供給管8b内を通過する燃料との接触を防止する。また、透明部材204の接触面204aは、透明部材203の接触面203aと対向している。
【0059】
発光素子201から燃料に向けて照射された光は、設置面203bを介して透明部材203内に入射された後、接触面203aから燃料に出射される。そして、接触面203aから出射された光は、燃料中を通って接触面204aを介して透明部材204内に入射され、設置面204bを介して受光素子202により受光される。
【0060】
このとき、燃料供給管8b内を通過する燃料に入射した所定波長の光は、図6に示すように、燃料中のエタノールのOH基に吸収されこれを励起状態に遷移させる。つまり、発光素子201から照射された所定波長の光は、燃料を通り抜ける際に燃料濃度としての燃料中のエタノール濃度に応じたエネルギーに相当する光が吸光される。すなわち、燃料供給管8b内を通過する燃料の性状としてエタノール濃度が変化すると、燃料中のエタノールのOH基による吸光度、言い換えれば、光の透過率が変化し、この結果、受光素子102により受光される光の受光量もこれに応じて変化する。そして、燃料エタノール濃度と光の透過率(吸光度)とは相関関係にあり、透過率が高くなるほど吸光された光の量が少ないことから燃料エタノール濃度は低くなる一方、透過率が低くなるほど吸光された光の量が多いことから燃料エタノール濃度は高くなる。したがって、受光素子102により受光される光の受光量に応じてこの燃料の透過率を算出すれば、燃料の性状としての燃料エタノール濃度を検出することができる。
【0061】
なお、発光素子201は、燃料に照射する所定波長の光として、ここでは、波長が1600から1700nm程度の光を燃料に照射している。これは、図6に示すように、OH基に吸光され得る波長(1200から1800nm)の光を燃料に照射すると共に、燃料中に含有される水分の影響を最小限に抑えることができる範囲の波長の光を照射するためである。すなわち、発光素子201は、エタノールに対する光の透過率と水分に対する光の透過率とがほぼ等しくなる範囲の波長(1600から1700nm程度)の光を燃料に照射している。これにより、水分による光の吸光の影響を最小限に抑えることができるので、燃料性状センサ200による燃料性状の検出をより正確に行うことができる。
【0062】
第2判定部205は、上述のECU50に電気的に接続される電子制御回路として構成される。第2判定部205は、発光素子201から照射され、燃料を通過した光の受光素子202による受光量に基づいて燃料の透過率を算出する。そして、第2判定部205は、透過率に基づいて燃料エタノール濃度を検出する。第2判定部205は、受光量と透過率との関係を示すマップを予め不図示の記憶部等に記憶させておき、このマップに基づいて透過率を算出してもよいし、受光素子202による受光量と燃料エタノール濃度との関係を示すマップを予め不図示の記憶部等に記憶させておき、このマップに基づいて直接燃料エタノール濃度を検出するようにしてもよい。そして、第2判定部205は、検出結果の出力信号をエンジン1のECU50に送信する。
【0063】
そして、ECU50は、この第2判定部205が検出した燃料エタノール濃度に基づいて燃料噴射量(燃料噴射時間)、噴射時期、点火時期などを決定し、インジェクタ8及び点火プラグ9を駆動して燃料噴射及び点火を実行する。これにより、低温時始動性、運転性(ドライバビリティ)の向上やエミッション性能の向上など燃料性状に応じた最適なエンジン制御が可能となる。エタノールはガソリンに比べて気化潜熱が高く、低温時は蒸発しにくいために混合気の形成が不十分となり易い。このため、本実施例のECU50は、例えば、エンジン1の低温始動時において、第2判定部205が検出した燃料エタノール濃度が高い場合には燃料噴射量を相対的に多くしたり点火時期を遅角させたりする一方、燃料エタノール濃度が低い場合には燃料噴射量を相対的に少なくしたり点火時期の遅角をなくしたりするようにインジェクタ8や点火プラグ9を制御する。これにより、エンジン1は、低温始動時においても安定した運転を行うことができる。
【0064】
そして、本実施例の燃料性状センサ200では、図5に示すように、透明部材203の接触面203aに第1光触媒膜としての発光側光触媒膜207、透明部材204の接触面204aに第1光触媒膜としての受光側光触媒膜208を設けることで、汚染物質の影響による燃料性状の検出感度変化の防止を図っている。
【0065】
発光側光触媒膜207は、透明部材203において燃料供給管8b内を通過する燃料と接触する面、すなわち、接触面203aの全面に成膜される。同様に、受光側光触媒膜208は、透明部材204において燃料供給管8b内を通過する燃料と接触する面、すなわち、接触面204aの全面に成膜される。本実施例の発光側光触媒膜207及び受光側光触媒膜208は、実施例1のプリズム側光触媒膜107及び反射板側光触媒膜108と同様に、膜厚が数μm程度のチタニア薄膜を用いる。そして、この発光側光触媒膜207及び受光側光触媒膜208は、透明部材203の設置面203bに設けられる光触媒活性化用光源209が発する光により活性化される。
【0066】
上記のように構成される燃料性状センサ200では、光触媒活性化用光源209は、常に光を照射している。そして、発光側光触媒膜207及び受光側光触媒膜208は、この光触媒活性化用光源209から発せられる光により活性化され光触媒反応を起こす。すると、透明部材203の接触面203a及び透明部材204の接触面204aに汚染物質が付着する前に分解され、接触面203a、接触面204aへの汚染物質の付着が未然に抑制される。また、仮にこの接触面203a、接触面204aに汚染物質が付着したとしてもこの汚染物質をふき取ることなく、最終的には光触媒反応により分解される。
【0067】
これに対し、発光素子201から発せられる燃料性状検出のための光は、上述したように1600から1700nm程度の波長の光であり、発光側光触媒膜207及び受光側光触媒膜208を活性化する波長の光ではない。このため、発光素子201から発せられた光は、発光側光触媒膜207及び受光側光触媒膜208に吸収されることなく透過することから、燃料性状の検出に影響を及ぼすことはない。そして、接触面203a、接触面204aへの汚染物質が抑制されることから、発光素子201から受光素子202までの光路中に汚染物質が介在することが抑制され、受光素子202での受光量にずれが生じることが防止される。これにより、燃料性状センサ200における燃料性状の検出感度が変化することが抑制されることから、燃料供給管8b内を通過する燃料の燃料性状を正確に検出することができる。この結果、燃料性状センサ200を備えるエンジン1は、上述のような低温時始動性や運転性(ドライバビリティ)の向上やエミッション性能の向上など燃料性状に応じた最適なエンジン制御を正確に実行することができる。
【0068】
以上で説明した本発明の実施例に係る燃料性状センサ200によれば、発光素子201により燃料に光を照射しこの光を受光素子202により受光して燃料性状を検出する燃料性状センサ200において、発光素子201、受光素子202と燃料との間に設けられ、発光素子201、受光素子202を燃料から保護すると共に光が透過可能な透明部材203、透明部材204と、透明部材203、透明部材204の燃料との接触面203a、204aに設けられる発光側光触媒膜207、受光側光触媒膜208と、発光側光触媒膜207、受光側光触媒膜208を活性化する光を発する光触媒活性化用光源209とを備える。
【0069】
したがって、光が透過可能な透明部材203、204の接触面203a、204aに発光側光触媒膜207、受光側光触媒膜208を成膜し、この発光側光触媒膜207、受光側光触媒膜208を活性化する光触媒活性化用光源209を設けたことから、透明部材203、204により発光素子201、受光素子202と燃料との接触を防止することができると共に光触媒活性化用光源209が発する光により接触面203a、204aに設けられた発光側光触媒膜207、受光側光触媒膜208が活性化され光触媒反応を起こすので、接触面203a、204aへの汚染物質の付着を抑制することができ、これにより、汚染物質の影響により燃料性状の検出感度が変化することを防止することができる。
【0070】
さらに、以上で説明した本発明の実施例に係る燃料性状センサ200によれば、燃料を通過した光の受光素子202による受光量に基づいて燃料の透過率としての光の透過率を算出して燃料エタノール濃度を検出する第2判定部205を備える。したがって、燃料エタノール濃度と所定波長の光の透過率とは相関関係にあることから、受光素子202により受光される光の受光量に応じてこの燃料の光の透過率を算出し、燃料の性状としての燃料エタノール濃度を検出することができる。そして、この燃料性状センサ200では、発光側光触媒膜207、受光側光触媒膜208により汚染物質の影響を排除して燃料密度を検出することから、より正確な燃料エタノール濃度を検出することができる。この結果、この正確な燃料エタノール濃度に基づいてエンジン1をより最適に制御することができる。
【0071】
なお、上述した本発明の実施例に係る燃料性状検出装置は、上述した実施例に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変更が可能である。以上の説明では、本発明の燃料性状センサ100、200をポート噴射式の多気筒エンジンに適用して説明したが、この形式のエンジンに限らず、直列型またはV型エンジンに適用することもでき、また、燃焼室に直接燃料を供給可能な燃料供給手段を備える筒内噴射式エンジン等に適用しても同様の作用効果を奏することができる。
【0072】
また、以上の説明では、第1判定部105、第2判定部205は、上述のECU50に電気的に接続される電子制御回路として構成されるものとしたが、ECU50と一体に形成してもよく、この場合、ECU50が本発明の第1判定手段、第2判定手段に相当することとなる。
【0073】
さらに、本発明の燃料性状検出装置は、以上で説明した実施例1に係る燃料性状センサ100と実施例2に係る燃料性状センサ200とを組み合わせてユニット化してもよい。すなわち、燃料性状検出装置は、少なくともガソリンとアルコールとを含む混合燃料の燃料性状を検出する判定手段を備え、判定手段は、燃料性状として混合燃料中のガソリン密度とアルコール濃度とを検出するように構成してもよい。ここでは、燃料性状検出装置は、燃料性状として燃料密度を検出する第1判定手段として第1判定部105と、燃料濃度を検出する第2判定手段としての第2判定部205との両方を備えてもよいし、燃料性状として燃料密度と燃料濃度の両方を検出する判定手段を備えてもよい。
【0074】
そして、この場合、燃料性状検出装置は、例えば、実施例2における保護部材としての透明部材を実施例1のプリズムにより兼用すると共に、本発明の第1発光手段は、燃料密度を検出するための光を発する密度検出用発光手段と、燃料濃度を検出するための光を発する濃度検出用発光手段とを有し、受光手段は、密度検出用発光手段が発した光を受光する密度検出用受光手段と、濃度検出用発光手段が発した光を受光する濃度検出用受光手段とを有する。そして、上述したように、プリズムの燃料との接触面に光触媒膜を設けると共にこれを活性化させる第2発光手段を設ける。ここでは、濃度検出用発光手段が発する光の波長(1600から1700nm程度)と、密度検出用発光手段が発する光の波長(例えば、800から900nm程度)とが異なり、さらに、第2発光手段が光触媒を活性化させるために発する光の波長(およそ380から480nm程度)も濃度検出用発光手段が発する光の波長、密度検出用発光手段が発する光の波長のいずれとも異なることから、互いの光の影響を受けることはない。これにより、燃料性状検出装置において、汚染物質の影響により燃料性状の検出感度が変化することを防止することができ、燃料性状として混合燃料中のガソリン密度とアルコール濃度とを正確に検出することができる。
【0075】
また、以上の説明では、第2光触媒膜としての反射板側光触媒膜108は、第1光触媒膜としてのプリズム側光触媒膜107を活性化させる光触媒活性化用光源109により活性化されるものとして説明したが、反射板側光触媒膜108を活性化させるための光源を光触媒活性化用光源109とは別個に設けてもよい。燃料性状検出装置は、燃料密度や燃料濃度以外の燃料性状を検出する装置として構成してもよい。
【0076】
また、以上の説明では、燃料性状センサ100、200は、燃料供給管8bに設けるものとして説明したが、例えば、デリバリパイプ8aに設けてもよい。燃料性状センサ100、200をインジェクタ8の直前のデリバリパイプ8aに設けた場合、例えば、エンジン1の始動時にデリバリパイプ8aの中に残留していた燃料の性状をも検出することができるので、エンジン1の運転状態をより最適に制御することができる。
【産業上の利用可能性】
【0077】
以上のように、本発明に係る燃料性状検出装置は、汚染物質の影響により燃料性状の検出感度が変化することを防止するものであり、内燃機関以外にも燃料を用いる種々の装置の燃料性状検出装置に適用して好適である。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の実施例1に係る燃料性状センサの概略断面図である。
【図2】本発明の実施例1に係る燃料性状センサが適用されたエンジンの模式的断面図である。
【図3】本発明の実施例1に係る燃料性状センサが検出する燃料の屈折率と密度との関係を示す線図である。
【図4】本発明の実施例1に係る燃料性状センサの光触媒膜を説明する模式図である。
【図5】本発明の実施例2に係る燃料性状センサの概略断面図である。
【図6】本発明の実施例2に係る燃料性状センサが検出する燃料の透過率について説明するための線図である。
【符号の説明】
【0079】
1 エンジン
8 インジェクタ
8a デリバリパイプ
8b 燃料供給管
9 点火プラグ
50 ECU
100、200 燃料性状センサ(燃料性状検出装置)
101、201 発光素子(第1発光手段)
102、202 受光素子(受光手段)
103 プリズム (保護手段)
103a、104a、203a、204a 接触面
103b、203b、204b 設置面
104 反射板
105 第1判定部(第1判定手段)
106 シール部材
107 プリズム側光触媒膜(第1光触媒膜)
108 反射板側光触媒膜(第2光触媒膜)
109、209 光触媒活性化用光源(第2発光手段)
203、204 透明部材(保護手段)
205 第2判定部(第2判定手段)
207 発光側光触媒膜(第1光触媒膜)
208 受光側光触媒膜(第1光触媒膜)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1発光手段により燃料に光を照射し該光を受光手段により受光して燃料性状を検出する燃料性状検出装置において、
前記第1発光手段と前記燃料との間に設けられ前記第1発光手段を前記燃料から保護すると共に前記光が透過可能な保護手段と、
前記保護手段の前記燃料との接触面に設けられる第1光触媒膜と、
前記第1光触媒膜を活性化する光を発する第2発光手段とを備えることを特徴とする、
燃料性状検出装置。
【請求項2】
前記燃料に照射された光を前記受光手段に向けて反射する反射板と、
前記反射板の前記燃料との接触面に設けられる第2光触媒膜とを備えることを特徴とする、
請求項1に記載の燃料性状検出装置。
【請求項3】
前記第2光触媒膜は、前記第2発光手段が発する光により活性化されることを特徴とする、
請求項1又は請求項2に記載の燃料性状検出装置。
【請求項4】
前記保護手段は、プリズムにより構成されることを特徴とする、
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の燃料性状検出装置。
【請求項5】
前記プリズムを通過した光の前記受光手段による受光位置に基づいて前記燃料の屈折率を算出して燃料密度を検出する第1判定手段を備えることを特徴とする、
請求項4に記載の燃料性状検出装置。
【請求項6】
前記燃料を通過した光の前記受光手段による受光量に基づいて前記燃料の透過率を算出して燃料濃度を検出する第2判定手段を備えることを特徴とする、
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の燃料性状検出装置。
【請求項7】
少なくともガソリンとアルコールとを含む混合燃料の燃料性状を検出する判定手段を備え、
前記判定手段は、前記燃料性状として前記混合燃料中のガソリン密度とアルコール濃度とを検出することを特徴とする、
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の燃料性状検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−157728(P2008−157728A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−346097(P2006−346097)
【出願日】平成18年12月22日(2006.12.22)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】