説明

燃料油の改良

【課題】優れた低温特性を有する燃料油組成物の提供。
【解決手段】燃料油組成物は燃料油ブレンド、少なくとも一種のエチレン-ビニルエステルポリマー及び少なくとも一種のポリアルキルメタクリレートポリマーを含む。その燃料油ブレンドが中間留出燃料油と水素化処理植物油、動物油又は魚油とを含み、燃料油ブレンド中の水素化処理植物油の量が中間留出物単独のC15 -C20 n-アルカン分布に対し少なくとも3質量%のC15 -C20 n-アルカン分布の増加を有するブレンドを得るのに充分である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は改良された低温特性を有する燃料油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
石油源に由来する燃料油は低温で、燃料油にその流動する能力を失わせるゲル構造を形成するような方法でワックスの大きい、板状の結晶又は球粒として沈澱する傾向があるn-アルカンを含む。燃料が依然として流動する最低温度は、流動点として知られている。
燃料の温度が低下し、流動点に近づくにつれて、困難が燃料をライン及びポンプにより輸送する際に生じる。更に、形成するワックス結晶は燃料ライン、スクリーン及びフィルターを流動点の上の温度で詰まらせる傾向がある。これらの問題が当業界で良く認識されており、種々の添加剤が提案されており、これらの多くが燃料油の流動点を低下するために、商用されている。同様に、その他の添加剤が提案されており、形成するワックス結晶のサイズを減少し、かつその形状を変えるために商用されている。一層小さいサイズの結晶が望ましい。何とならば、それらがフィルターを詰まらせそうにないからである。ディーゼル燃料からのワックス(これは主としてアルカンワックスである)は板状体として結晶化する。或る種の添加剤がこれを抑制し、ワックスに針状の習性をとらせて、得られる針状体が板状体よりも、おそらくフィルターを通過し、又はフィルター上に結晶の多孔性層を形成する。その他の添加剤がまたワックス結晶を燃料中に懸濁して保持し、沈降を減少し、こうしてまた閉塞の防止を助けるという効果を有し得る。これらの型の添加剤が低温流動性添加剤と普通称される。
【0003】
近年、燃料油の源として石油材料の代替物の使用の増加が見られていた。バイオ-ディーゼル(これらは普通植物油の如き天然油のメチルエステルである)が、多くの市販のディーゼル燃料中のブレンド成分として今使用されている。しかしながら、バイオ-ディーゼルは天然材料から製造されるので、それらは本来それらの正確な組成並びにそれらの物理的性質及び化学的性質に関して変動し得る。天然油を使用して燃料としての使用のためにメチルエステルを製造することの別法として、油を水素化処理してパラフィン混合物を得、これらの製品を燃料として、又は通常のディーゼル燃料と合わされるブレンド成分として使用することが当業界で知られている。水素化処理の製品はn-アルカンであり、このようなものとして、石油由来ディーゼル燃料中に通常見られるn-アルカンと実質的に区別できない。水素化処理植物油(HVO)は組成及び性質の点で一層一様である傾向があり、メチルエステルバイオ-ディーゼルよりも少ない不純物を有する。水素化処理の方法はまた得られる製品についての一層大きい制御を可能にする。こうして、HVOを石油由来ディーゼル燃料のブレンド成分として使用することができることが望ましい。
【0004】
しかしながら、HVOは良く特定され、かつ狭いn-アルカン分布を有する傾向がある。石油由来ディーゼル燃料へのこのようなブレンド成分の添加はディーゼル-HVO燃料ブレンドの全n-アルカン分布中に“スパイク”を生じる。この“スパイク”は低温性能に最も重要である領域中のn-アルカン分布を変化する。多くの場合、そうでなければ通常の低温流動性添加剤で容易に処理し得る石油ディーゼルはかなりの量のHVOの添加により実質的に処理できなくされるであろう。これは特に低温性能が重要である領域における使用のための、ディーゼル燃料のためのブレンド成分としてのHVOの使用に実用的な制限を課する。
以下に注目されるように、水素化処理に適した油は植物油以外の源から得られてもよい。動物源及び魚源からの油及び脂肪がまた好適である。“HVO”という用語は便宜のためにこの明細書中に使用され、あらゆる好適な源から得られた水素化油を含み、こうして植物源のみから得られたこれらの油に限定されると読まれるべきではない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明はポリマーの低温流動性添加剤の特定の組み合わせが石油由来ディーゼル燃料とHVO のブレンドの低温特性を改良するのに有効であるという発見に基づく。
第一の局面によれば、本発明は燃料油ブレンド、少なくとも一種のエチレン-ビニルエステルポリマー及び少なくとも一種のポリアルキルメタクリレートポリマーを含む燃料油組成物を提供し、前記燃料油ブレンドは中間留出燃料油及び水素化処理植物油、動物油又は魚油を含み、かつ燃料油ブレンド中の水素化処理植物油、動物油又は魚油の量は中間留出物単独のC15 -C20 n-アルカン分布に対し少なくとも3質量%のC15 -C20 n-アルカン分布の増加を有するブレンドを得るのに充分である。
【0006】
第二の局面によれば、本発明は中間留出燃料油と水素化処理植物油、動物油又は魚油とのブレンドの低温特性の改良方法を提供し、前記ブレンド中の水素化処理植物油、動物油又は魚油の量は中間留出物単独のC15 -C20 n-アルカン分布に対し少なくとも3質量%のC15 -C20 n-アルカン分布の増加を有するブレンドを得るのに充分であり、前記方法は前記ブレンドに少なくとも一種のエチレン-ビニルエステルポリマー及び少なくとも一種のポリアルキルメタクリレートポリマーを添加することを含む。
【0007】
第三の局面によれば、本発明は中間留出燃料油と水素化処理植物油、動物油又は魚油とのブレンドの低温特性を改良するための少なくとも一種のエチレン-ビニルエステルポリマー及び少なくとも一種のポリアルキルメタクリレートポリマーの使用を提供し、前記ブレンド中の水素化処理植物油、動物油又は魚油の量は中間留出物単独のC15 -C20 n-アルカン分布に対し少なくとも3質量%のC15 -C20 n-アルカン分布の増加を有するブレンドを得るのに充分である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
第二及び第三の局面に関して、中間留出燃料油と水素化処理植物油、動物油又は魚油とのブレンドの低温特性の改良はCFPP測定により測定されることが好ましい。
本発明の全ての局面において、少なくとも一種のエチレン-ビニルエステルポリマー及び少なくとも一種のポリアルキルメタクリレートポリマーは燃料油ブレンドに別々に添加されてもよく、又は添加剤組成物として一緒にブレンドに添加されてもよい。また、ポリマーの両方を中間留出燃料油に添加し、次いでこの混合物を水素化処理植物油、動物油もしくは魚油に添加し、又はポリマーの両方を水素化処理植物油、動物油もしくは魚油に添加し、次いでこの混合物を中間留出燃料油に添加することが本発明の範囲内である。最後に、ポリマーの一種が燃料ブレンド成分の一種に添加されてもよく、またその他のポリマーがその他の燃料ブレンド成分に添加されてもよく、最終燃料油組成物はこうして得られた2種の混合物を合わせることの結果である。
単独で使用される場合、エチレン-ビニルエステルポリマー又はポリアルキルメタクリレートポリマーは中間留出燃料油/HVOブレンドの低温特性を改良するのに有効ではないとわかったことが注目に値する。異なるエチレン-ビニルエステルポリマーの混合物が同様に有効ではなかった。許容し得る性能が添加剤の特定の組み合わせのみについて見られた。
本発明の種々の特徴(これらは全ての局面に適用し得る)が更に詳しく今記載される。
【0009】
燃料油ブレンド
燃料油ブレンドは中間留出燃料油と水素化処理植物油、動物油又は魚油とを含む。
中間留出燃料油は一般に110℃から500℃まで、例えば、150℃から400℃までの範囲内で沸騰する。本発明は広く沸騰する留出物、即ち、ASTM D-86 に従って測定して、50℃以上の90%-20%沸騰温度差を有するものを含む、全ての型の中間留出燃料油に適用し得る。中間留出燃料油は大気留出物もしくは真空留出物、分解ガス油、又は直留留出物と熱分解留出物及び/又は接触分解留出物のあらゆる比率のブレンドを含んでもよい。最も普通の石油留出燃料はケロセン、ジェット燃料、ディーゼル燃料、暖房油及び重油である。暖房油は直留大気留出物であってもよく、又は真空ガス油もしくは分解ガス油又はその両方をまた含んでもよい。中間留出燃料油は低硫黄含量燃料油であることが好ましい。典型的には、燃料油の硫黄含量は500ppm(質量基準で100万分の一)未満となる。燃料の硫黄含量が100ppm未満、例えば、50ppm未満であることが好ましい。更に低い硫黄含量、例えば、20ppm未満又は10ppm未満の硫黄含量を有する燃料油がまた好適である。EN 590又はASTM D 975 規格仕様を満足する中間留出ディーゼル燃料が好適である。
【0010】
水素化処理植物油、動物油又は魚油は脂肪酸、脂肪酸エステル(例えば、トリ-グリセリド油)及びこれらの混合物を含む天然原料から既知の様式で製造し得る。好適な植物をベースとする原料はナタネ油、ヒマワリ油、大豆油、大麻油、オリーブ油、パーム油、ヤシ油、アマニ油、カラシ油、落花生油、ヒマシ油等である。木材から得られる油、例えば、タル油が植物をベースとする油の範囲内に含まれる。動物をベースとする脂肪及び油として、牛脂及びラードが挙げられる。食品工業からの使用され、再生された脂肪及び油がまた好適である。
水素化処理植物油、動物油又は魚油は脂肪酸及び/又は脂肪酸エステルを水素化し、分解して主として12〜24個の炭素原子を有するn-パラフィンを製造することにより天然原料から得られてもよい。特許文献が本発明における使用に適した水素化処理植物油、動物油又は魚油を製造するための方法の幾つかの例を記載している。例えば、米国特許第4,992,605 号、同第5,705,722 号、FR 2 607 803、WO2004/022674 A1及びWO2007/068795 A1を参照のこと。
【0011】
燃料油ブレンドは過半比率の中間留出燃料油及び小比率のHVOを含むことが好ましい。本発明の全ての局面において、燃料油ブレンド中に含まれるHVOの量は中間留出物単独のC15 -C20 n-アルカン分布に対して少なくとも3質量%のC15 -C20 n-アルカン分布の増加(スパイク)を有する燃料油ブレンドを与えるのに充分である量である。3質量%の増加を得るのに必要とされるHVOの実際の量はHVOの異性化レベル及び中間留出燃料油のn-アルカン分布により変動する。
燃料油ブレンド中に含まれるHVOの量が中間留出物単独のC15 -C20 n-アルカン分布に対して少なくとも3.5 質量%、更に好ましくは少なくとも4質量%のC15 -C20 n-アルカン分布の増加(スパイク)を有する燃料油ブレンドを与えるのに充分である量であることが好ましい。
燃料油ブレンド中に含まれるHVOの量が中間留出物単独のC15 -C20 n-アルカン分布に対して25質量%より多いC15 -C20 n-アルカン分布の増加(スパイク)を有する燃料油ブレンドを与えるのに充分である量より大きくないことが好ましい。
【0012】
C15 -C20 n-アルカン分布中の“スパイク”の程度の測定は単に中間留出燃料油のn-アルカン分布の適当な部分をブレンドのそれから引くことである。燃料油のn-アルカン分布を測定するための技術が当業者に知られている。ガスクロマトグラフィーが好適な方法である。
典型的には、燃料油ブレンドが50質量%から95質量%まで、好ましくは65質量%から95質量%までの中間留出物及び5質量%から50質量%まで、好ましくは5質量%から35質量%までのHVO を含む。
【0013】
エチレン-ビニルエステルポリマー
実施態様において、エチレン-ビニルエステルポリマーがエチレンとビニルエステルのコポリマーを含み、そのコポリマーが5〜25モル%、好ましくは10〜20モル%のビニルエステル含量を有する。
エチレン-ビニルエステルポリマーがポリスチレン標準物質を基準としてGPCにより測定して2,000〜10,000、更に好ましくは3,000〜9,000、例えば、3,000〜7,000の数平均分子量(Mn)を有することが好ましい。
ビニルエステルが式 (I)に相当することが好ましい。
【0014】
【化1】

【0015】
式中、RはC1 -C30 アルキル基、好ましくはC1 -C16 アルキル基、更に好ましくはC1 -C12 アルキル基である。アルキル基は必要により1個以上のヒドロキシル基により置換されていてもよい。基Rは線状又は分岐であってもよい。Rが分岐である好ましい実施態様において、Rが7個から11個までの炭素原子、好ましくは8個、9個又は10個の炭素原子を有する分岐アルキル基又はネオアルキル基である。カルボニル基に対してアルファ位の分岐点を有する二級又は三級カルボン酸から誘導されたビニルエステルが好適である。
ビニルエステルが酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ヘキサン酸ビニル、ヘプタン酸ビニル、オクタン酸ビニル、ピバル酸ビニル、2-エチルヘキサン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、ネオデカン酸ビニル、ネオノナン酸ビニル及びウンデカン酸ビニルの群から選ばれることが好ましい。酢酸ビニルが最も好ましい。
【0016】
更なる実施態様において、エチレン-ビニルエステルポリマーがエチレン、酢酸ビニル及び式(I) に相当する更に別のビニルエステル(これは酢酸ビニルではない)のターポリマーを含む。このターポリマーがエチレン、酢酸ビニル並びに2-エチルヘキサン酸ビニル、ネオノナン酸ビニル、ネオデカン酸ビニル及びネオウンデカン酸ビニルの群から選ばれた分岐鎖エステルのターポリマーを含むことが好ましい。
エチレンは別にして、1〜15モル%、好ましくは2〜10モル%の酢酸ビニル、及び0.1〜25モル%、好ましくは5〜20モル%の式(I)に相当する更に別のビニルエステル(これは酢酸ビニルではない)、好ましくは分岐鎖エステル、更に好ましくは2-エチルヘキサン酸ビニル、ネオノナン酸ビニル、ネオデカン酸ビニル及びネオウンデカン酸ビニルの群から選ばれた分岐鎖エステルを含むターポリマーが好ましい。ポリマーの合計エステル含量が好ましくは5〜30モル%、更に好ましくは10〜20モル%、例えば、12モル%から18モル%であることが好ましい。
ターポリマーがポリスチレン標準物質を基準としてGPC により測定して2,500〜12,000、更に好ましくは3,000〜9,000、例えば、4,000〜7,000の数平均分子量(Mn)を有することが好ましい。
ポリマーはエチレン及びビニルエステルモノマーから当業界で知られている方法により製造されてもよい。
【0017】
ポリアルキルメタクリレートポリマー
ポリアルキルメタクリレートポリマーは式(II)に相当するモノマーから生成され、又は得られることが好ましい。
【0018】
【化2】

【0019】
式中、R1はC4 -C16 アルキル基、好ましくはC8 -C16アルキル基、更に好ましくはC12 -C16 アルキル基である。夫々のR1基が同じである単一モノマー、又は所定の範囲内の異なるR1基を有するモノマーの混合物が好適である。使用されるモノマーが専ら又は主としてR1としてC14 アルキル基(テトラデシル)、又はC12 アルキル基(ドデシル)を有するものであるポリマーが好ましい。
好ましくは、少なくとも一種のポリアルキルメタクリレートポリマーがポリスチレン標準物質を基準としてGPC により測定して1,500から6,000まで、更に好ましくは2,000から4,000までの範囲の数平均分子量を有する。
ポリアルキルメタクリレートポリマーの製造方法は当業者に知られている。米国特許第4,694,054号に記載された遊離基重合が一つの好適な方法である。
【0020】
燃料油組成物中のエチレン-ビニルエステルポリマーとポリアルキルメタクリレートポリマーの合わせた合計量が燃料油ブレンドの質量を基準として、質量基準で100ppmから5,000ppmまでの範囲であることが好ましい。燃料油組成物中のエチレン-ビニルエステルポリマーとポリアルキルメタクリレートポリマーの合わせた合計量が燃料油ブレンドの質量を基準として、質量基準で200ppmから3,000ppmまで、例えば、質量基準で500ppmから2,500ppmまでの範囲であることが更に好ましい。
好ましくは、燃料油組成物中のエチレン-ビニルエステルポリマー対ポリアルキルメタクリレートポリマーの質量比が1:8から8:1まで、更に好ましくは1:5から5:1まで、例えば、1:2から2:1までの範囲である。
【0021】
補助添加剤
燃料油組成物は一種以上の補助添加剤を更に含んでもよい。これらの添加剤は燃料油組成物の低温特性を更に高め得る付加的な低温流動性添加剤であってもよく、又は/かつそれらが燃料油組成物に付加的な有利な性質を与えるのに使用される補助添加剤であってもよい。
好ましい付加的な低温流動性添加剤は油溶性水素化ブロックジエンポリマーである。このブロックジエンポリマーは線状ジエンの末端間重合により得られる、少なくとも一種の結晶性ブロック、及び少なくとも一種の非結晶性ブロックを含むことが好ましく、その非結晶性ブロックは線状ジエンの1,2-配置重合、分岐ジエンの重合、又はこのような重合の混合により得られる。
水素化の前のブロックコポリマーはブタジエンのみ、又はブタジエンと少なくとも一種の式 (III)のコモノマーから誘導された単位を含むことが好ましい。
【0022】
【化3】

【0023】
式中、R2はC1 -C8 アルキル基を表し、かつR3は水素又はR2を表す。式(III)のコモノマー中の炭素原子の合計数が5〜8個であることが好ましい。式(III)の好ましいコモノマーはイソプレンである。ブロックコポリマーが少なくとも10質量%のブタジエンから誘導された単位を含むことが好ましい。
一般に、一つ以上の結晶性ブロックが主としてブタジエンの1,4重合又は末端間重合から得られる単位の水素化生成物であり、一方、一つ以上の非結晶性ブロックがブタジエンの1,2重合又はアルキル置換ブタジエンの1,4重合から得られる単位の水素化生成物となる。
本発明の全ての局面の好ましい実施態様において、燃料油組成物は、少なくとも一種のエチレン-ビニルエステルポリマー及び少なくとも一種のポリメタクリレートポリマーに加えて、本明細書に記載された油溶性水素化ブロックジエンポリマーを含む。好ましくは、油溶性水素化ブロックジエンポリマーの量はエチレン-ビニルエステルポリマーとポリアルキルメタクリレートポリマーの合わせた合計量の1質量%から20質量%までの範囲、更に好ましくは1質量%から15質量%まで、例えば、5質量%〜15質量%の範囲である。
【0024】
その他の付加的な低温流動性添加剤として、コームポリマー、例えば、フマレート-酢酸ビニルコポリマー、炭化水素ポリマー、例えば、エチレンα-オレフィンコポリマー、及び同様のポリマーが挙げられる。このような種が当業界で知られている。また、ワックス沈降防止添加剤(WASA)(これは通常油溶性の極性窒素化合物である)のような当業界で知られている添加剤が好適である。また、縮合種、例えば、EP 0 857 776 B1 及びEP-A-1 767 610に記載されたようなアルキル-フェノールホルムアルデヒド縮合物、又はEP-A-1 482 024に記載されたようなヒドロキシ-ベンゾエートホルムアルデヒド縮合物が好適である。
燃料油組成物に付加的な有利な性質を与えるのに有益な型の補助添加剤が当業界で知られている。これらとして、潤滑添加剤、酸化防止剤、導電性改良添加剤、金属失活剤、解乳化剤等が挙げられる。使用される場合、これらの付加的な添加剤は通常の量で使用される。
以下、単なる例示により本発明を説明する。
【実施例】
【0025】
使用した添加剤成分を下記の表1に詳述する。
【表1】

【0026】
これらの添加剤成分を低硫黄含量ディーゼル燃料とHVO のブレンドに種々の量で添加した。量を燃料ブレンドの質量を基準として百万分の一(質量基準)(wppm)で表す。ディーゼル燃料へのHVOの添加の効果はディーゼル燃料単独と較べて燃料のC15-C20 n-アルカン分布を4%増大することであった。ディーゼル燃料に添加されたHVOの量はディーゼル燃料の質量を基準として、30質量%であった。
CFPP測定を行なった。CFPP(低温フィルタープラッギング点)は低下された温度でフィルター中を流れる燃料油サンプルの能力を評価するための標準工業試験である。“Jn. Of the Institute of Petroleum”, 52巻, 510号(1996), 173-285頁に詳しく記載された操作により行なわれる試験を、自動車ディーゼル中の中間留出物の低温流動性と相関関係があるように設計する。簡単に言えば、試験すべき油のサンプル(40 cm3)を約-34℃に維持される浴中で冷却して約1℃/分の線形冷却を得る。周期的に(曇り点の上から開始して各1℃毎において)、油を試験装置(これは下端が試験すべき油の表面の下に位置される倒立ロートに取り付けられているピペットである)を使用して規定時間期間に微細スクリーン中を流れるその能力について試験する。直径12mmにより形成される領域を有する350メッシュスクリーンをロートの口を横切って延ばす。ピペットの上端を陰圧とし、これにより、油を、スクリーンを通して20cm3の油を示すマークまで、ピペット内に引き上げることにより、周期的試験を開始する。成功裏の通過した後ごとに、油を直ぐにCFPP管に戻す。油が60秒以内にピペットを満たすのに失敗するまで、その試験を温度1℃毎の低下で繰り返し、その失敗が起きる温度をCFPP温度として報告する。ディーゼル燃料/HVOブレンドの基本CFPPは-19℃であった。結果を下記の表2に示す。
【0027】
【表2】

【0028】
本発明によらない例(例1〜7)はディーゼル燃料/HVOブレンドのCFPPに殆ど効果を有しなかった。比較により、本発明の実施例(例8〜11)は燃料ブレンドのCFPPを有意な程度まで低下することができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料油ブレンド、少なくとも一種のエチレン-ビニルエステルポリマー及び少なくとも一種のポリアルキルメタクリレートポリマーを含む燃料油組成物であって、前記燃料油ブレンドが中間留出燃料油と水素化処理植物油、動物油又は魚油とを含み、かつ燃料油ブレンド中の水素化処理植物油の量が中間留出物単独のC15 -C20 n-アルカン分布に対し少なくとも3質量%のC15 -C20 n-アルカン分布の増加を有するブレンドを得るのに充分であることを特徴とする燃料油組成物。
【請求項2】
ポリアルキルメタクリレートポリマーが式(II)
【化1】

(式中、R1はC4 -C16 アルキル基である)
に相当するモノマーから生成され、又は得られる、請求項1記載の燃料油組成物。
【請求項3】
R1がC8 -C16 アルキル基、更に好ましくはC12 -C16 アルキル基である、請求項2記載の燃料油組成物。
【請求項4】
R1がC14 アルキル基(テトラデシル)であり、又はR1 がC12 アルキル基(ドデシル)である、請求項2又は3記載の燃料油組成物。
【請求項5】
少なくとも一種のポリアルキルメタクリレートポリマーの数平均分子量がポリスチレン標準物質を基準としてGPC により測定して1,500 から6,000 までの範囲である、請求項1から4のいずれかに記載の燃料油組成物。
【請求項6】
少なくとも一種のエチレン-ビニルエステルポリマーがエチレンとビニルエステルのコポリマーを含み、前記コポリマーが5〜25モル%、好ましくは10〜20モル%のビニルエステル含量を有する、請求項1から5のいずれかに記載の燃料油組成物。
【請求項7】
少なくとも一種のエチレン-ビニルエステルポリマーが、エチレン、酢酸ビニル、並びに2-エチルヘキサン酸ビニル、ネオノナン酸ビニル、ネオデカン酸ビニル及びネオウンデカン酸ビニルの群から選ばれた分岐鎖エステルのターポリマーを含む、請求項1から5のいずれかに記載の燃料油組成物。
【請求項8】
燃料油組成物中のエチレン-ビニルエステルポリマー及びポリアルキルメタクリレートポリマーを合わせた合計量が燃料油ブレンドの質量を基準として、100ppm(質量基準)から5,000ppmまでの範囲である、請求項1から7のいずれかに記載の燃料油組成物。
【請求項9】
燃料油組成物中のエチレン-ビニルエステルポリマー対ポリアルキルメタクリレートポリマーの質量比が1:8 から8:1 までの範囲である、請求項1から8のいずれかに記載の燃料油組成物。
【請求項10】
燃料油組成物が一種以上の補助添加剤、好ましくは付加的な低温流動性添加剤を更に含む、請求項1から9のいずれかに記載の燃料油組成物。
【請求項11】
一種以上の補助添加剤が、油溶性の、水素化ブロックジエンポリマーを含む、請求項10記載の燃料油組成物。
【請求項12】
一種以上の補助添加剤が、潤滑添加剤、酸化防止剤、導電性改良添加剤、金属失活剤及び解乳化剤の群から選ばれた一種以上の添加剤を含む、請求項10記載の燃料油組成物。
【請求項13】
中間留出燃料油と水素化処理植物油、動物油又は魚油とのブレンドの低温特性の改良方法であって、前記ブレンド中の水素化処理植物油の量が中間留出物単独のC15 -C20 n-アルカン分布に対し少なくとも3質量%のC15 -C20 n-アルカン分布の増加を有するブレンドを得るのに充分であり、前記ブレンドに少なくとも一種のエチレン-ビニルエステルポリマー及び少なくとも一種のポリアルキルメタクリレートポリマーを添加することを特徴とする、前記改良方法。
【請求項14】
中間留出燃料油と水素化処理植物油、動物油又は魚油とのブレンドの低温特性を改良するための少なくとも一種のエチレン-ビニルエステルポリマー及び少なくとも一種のポリアルキルメタクリレートポリマーの使用であって、前記ブレンド中の水素化処理植物油の量が中間留出物単独のC15 -C20 n-アルカン分布に対し少なくとも3質量%のC15 -C20 n-アルカン分布の増加を有するブレンドを得るのに充分であることを特徴とする、前記使用。
【請求項15】
中間留出燃料油と水素化処理植物油、動物油又は魚油とのブレンドの低温特性の改良がCFPP測定により測定される、請求項13記載の方法又は請求項14記載の使用。