説明

燃料電池の稼動方法

【課題】輸送手段の駆動力のためのエネルギ源としてこの輸送手段に搭載された燃料電池の稼働率の向上を図る。
【解決手段】輸送手段11の駆動力のためのエネルギ源として輸送手段11に搭載された燃料電池12を稼動するに際して、燃料電池12が輸送手段11の駆動源13にエネルギを供給しないときに、燃料電池12を稼動させて、燃料電池12により生成された電力と排熱とを輸送手段11の駆動源以外の用途に使用する。輸送手段11が自動車であり、この自動車11が走行していないときに、都市ガスなどの燃料を改質精製して水素に変換したうえで車載タンク14に貯蔵するとともに、燃料の改質精製の際に発生した排熱を自動車11の駆動源以外の用途に使用することが好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は燃料電池の稼動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池として、乗用車などの自動車に搭載したものが知られている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2004−161057号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、車載用の燃料電池は、もっぱら自動車の走行駆動力のためのエネルギ源として利用されるのみであり、自動車を使用していないときには稼動しておらず、その稼働率は高いとはいえない。
【0004】
その一方で、家庭用の電気や、家庭における給湯および冷暖房は、それぞれ専用の供給系統や運転系統によって供給や運転が行われている。このため、イニシャルコスト、ランニングコストとも高いものであり、また、それぞれの系統を構成する機器の設置スペースも必要となる。したがって、効率が悪く、省エネルギ性も高いとはいえない。
【0005】
そこで本発明は、輸送手段の駆動力のためのエネルギ源としてこの輸送手段に搭載された燃料電池の稼働率の向上を図るようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するため本発明は、輸送手段の駆動力のためのエネルギ源として前記輸送手段に搭載された燃料電池を稼動するに際して、前記燃料電池が前記輸送手段の駆動源にエネルギを供給しないときに、前記燃料電池を稼動させて、この燃料電池により生成された電力と排熱とを前記輸送手段の駆動源以外の用途に使用するものである。
【0007】
本発明によれば、上記において、輸送手段が自動車であり、この自動車が走行していないときに、都市ガスなどの燃料を改質精製して水素に変換したうえで車載タンクに貯蔵するとともに、前記燃料の改質精製の際に発生した排熱を前記自動車の駆動源以外の用途に使用することが好適である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、燃料電池を自動車などの輸送手段に搭載したまま、この輸送手段が走行しないときなどの、燃料電池が輸送手段の駆動源にエネルギを供給しないときに、燃料電池を稼動させて、この燃料電池により生成された電力と排熱とを、輸送手段の駆動源以外の用途、すなわち家庭における給電・給湯・暖房などの他の用途に使用するため、車載の燃料電池などの、輸送手段に搭載した燃料電池の稼働率を向上させることができる。しかも、自動車などの輸送手段に搭載した燃料電池を用いるため、家庭などにおいて別途燃料電池を設置する必要がなく、このため、コストの低減、設置スペースの縮小、排熱の有効利用を図ることができ、高効率であり、省エネルギを実現することができる。
【0009】
本発明によれば、輸送手段としての自動車が走行していないときに、都市ガスなどの燃料を改質精製して水素に変換したうえで車載タンクに貯蔵するとともに、その燃料の改質精製の際に発生した排熱を家庭などにおける給湯や暖房に利用することができるため、水素供給スタンドまで自動車を走行させたうえで燃料の補給を行う必要がなく、しかも、そのときの排熱を有効利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1において、11は乗用の自動車であり、燃料電池12と、この燃料電池12にて発生した電力により駆動される走行用モータ13と、燃料電池12の燃料となる水素を貯蔵する水素タンク14とを搭載している。燃料電池12は、水素タンク14からの水素と、大気中の酸素とを用いて、電力を発生させる。水素と酸素との反応によって生成した水は、水蒸気あるいは水の形で、排出口15から車外へ排出される。水素タンク14へは、水素供給スタンド16などにおいて水素の供給が行われる。
【0011】
21は、家庭に設けられた燃料改質精製装置で、たとえばガス管路22から供給される都市ガスを水素ガスに変換して自動車11の水素タンク14に供給可能である。燃料改質精製装置21はガス管路22から供給される都市ガスを水素ガスに変換する際に発熱するが、23は、燃料改質精製装置21からの排熱回収ラインである。24は自動車11からの排熱回収ラインで、自動車11が走行していないときに排出口15に接続可能である。これら排熱回収ライン23、24は排熱回収装置25に導かれている。排熱回収装置25では、回収した排熱を利用して温水を生成可能である。生成された温水は貯湯槽26に貯湯され、家庭内への給湯や暖房に供される。
【0012】
28は、家庭に設置された分電盤で、商用電力ライン29に接続されているとともに、家庭内配線に接続されている。30は発電電力供給ラインで、一端が分電盤28に接続されるとともに、他端を自動車11の燃料電池12の出力端子に接続可能である。
【0013】
自動車11が家庭外を走行するときは、水素タンク14の水素が燃料電池12で消費されることにより燃料電池12で発電が行われ、生成された電力が走行用モータ13に供給される。このときは、自動車11に乗っている人は家庭におらず、燃料電池12で生成された電力は、家庭には使用せずに自動車11のために消費される。
【0014】
人が家庭に居るときは、自動車11には乗っておらず、自動車11は停止している。そこで、発電電力供給ライン30を燃料電池12に接続するとともに、排熱回収ライン24を排出口15に接続する。そして、ガス管路22からの都市ガスを燃料改質精製装置21に送って水素に変換し、できあがった水素はタンク14に貯蔵する。これにより、タンク14に燃料としての水素がチャージされ、次回の自動車の走行に備えられる。また、タンク14の水素を用いて燃料電池12を稼動させ、それにより生じた電力は、供給ライン30を介して分電盤28に送られ、系統連系が行われて家庭内での利用に供される。余剰の電力は、後述する太陽光発電分を含め、商用電力ライン29を介して売電される。
【0015】
燃料改質精製装置21を運転すると、熱が発生する。燃料電池12を稼動させることによって生じた水蒸気または水も、熱を保有する。これらの熱は、回収ライン23、24によって排熱回収装置25に導かれ、同装置25では、この熱を利用して温水が生成される。この温水は、貯湯槽26に送られ、家庭内への給湯や暖房に供される。
【0016】
このようにして、自動車11に搭載した燃料電池12を、家庭内での電力供給や給湯のために稼動させることができる。したがって、その稼働率を向上させることができる。また燃料改質精製装置21で水素が生成され、この水素が自動車11のタンク14にチャージされるため、水素ガススタンドへ行かなくても、家庭で水素を生成してタンク14に充填することができる。このため、コストの低減、設置スペースの縮小、排熱の有効利用を図ることができ、高効率であり、省エネルギを実現することが可能である。
【0017】
本発明は、上記のような自動車のみならず、航空機や船舶などの輸送手段にも適用することができる。燃料電池を動力エネルギ源とする航空機や船舶において、本発明にもとづき機内や船内のインフラを賄うことができる。
【0018】
図2は、図1に示したシステムの使用例を示す。31は家庭内ラインで、電気ライン30、32と、給湯ライン33と、空調ライン34とを有している。
【0019】
電気ライン30、32において、系統連系盤27には、家庭内配線36を接続して、自動車11の燃料電池で生成した電力を家庭内の用途に供することができる。電気ライン32は、雨水センサー付き太陽光発電装置37からの電力供給システム38を備えた構成とすることができる。
【0020】
給湯ライン33は、洗面所39、台所40、浴室41へ湯を供給可能である。貯湯槽26には補助熱源部42が併設されており、この補助熱源部42は、図示のように、浴室41における追焚の用途や、浴室乾燥・浴室暖房の用途に供することができる。給湯ライン33は、屋根散水部43を用いた屋根融雪の用途に供することもできる。夏期には、切換弁44により給水管45からの低温の水を屋根散水部43に送れば、屋根を冷却することができる。切換弁44の切換動作は、雨水センサー付き太陽光発電装置37の出力にしたがって合理的に行うことができる。
【0021】
空調ライン34は、電気ライン30、32からの電力によって駆動されるものである。46は室外機である。この空調ライン34は、室内機47に冷媒・熱媒を供給可能であるほかに、床冷暖房48や、ベッドパネル49や、ロードヒーター50などの用途に供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態の燃料電池の稼動方法を実施するためのシステムを示す図である。
【図2】図1のシステムの使用例を示す図である。
【符号の説明】
【0023】
11 自動車
12 燃料電池
13 モータ
14 水素タンク
21 燃料改質精製装置
22 ガス管路
23 排熱回収ライン
24 排熱回収ライン
25 排熱回収装置
26 貯湯槽
30 発電電力供給ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
輸送手段の駆動力のためのエネルギ源として前記輸送手段に搭載された燃料電池の稼動方法であって、前記燃料電池が前記輸送手段の駆動源にエネルギを供給しないときに、前記燃料電池を稼動させて、この燃料電池により生成された電力と排熱とを前記輸送手段の駆動源以外の用途に使用することを特徴とする燃料電池の稼動方法。
【請求項2】
輸送手段が自動車であり、この自動車が走行していないときに、都市ガスなどの燃料を改質精製して水素に変換したうえで車載タンクに貯蔵するとともに、前記燃料の改質精製の際に発生した排熱を前記自動車の駆動源以外の用途に使用することを特徴とする請求項1記載の燃料電池の稼動方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−76334(P2009−76334A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−244574(P2007−244574)
【出願日】平成19年9月21日(2007.9.21)
【出願人】(505408228)新和テック株式会社 (6)
【出願人】(000191397)新和産業株式会社 (56)
【Fターム(参考)】