説明

燃料電池システム、燃料電池システムの制御方法、および、燃料電池スタックの劣化判定方法

【課題】 燃料電池スタックの劣化を簡易に判定することができる燃料電池システム、燃料電池システムの制御方法、および、燃料電池スタックの劣化判定方法を提供する。
【解決手段】 燃料電池システムは、燃料ガスと酸化剤ガスとで発電を行なう燃料電池セルの複数個が直列接続された燃料電池スタックにおいて発電性能因子に基づいて区分けされた第1の燃料電池セル群および第2の燃料電池セル群の発電出力を検出する検出部と、該検出部により検出された前記第1の燃料電池セル群と前記第2の燃料電池セル群との間の発電出力の乖離率に基づいて、前記燃料電池セルの運転条件を変更する運転条件変更部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システム、燃料電池システムの制御方法、および、燃料電池スタックの劣化判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、一般的には水素および酸素を燃料として電気エネルギを得る装置である。この燃料電池は、環境面において優れており、また高いエネルギ効率を実現できることから、今後のエネルギ供給システムとして広く開発が進められてきている。
【0003】
燃料電池は、発電を継続にするにつれて劣化することがある。燃料電池の劣化は外見では判定しにくいため、燃料電池の出力から劣化を判定できることが好ましい。例えば、特許文献1は、スタックごとの電圧および/または電流を検出して比較することによって、該スタックを構成するセルの破損を検出するセル破損検出装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭62−271357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術では、スタックのグループ分け基準が規定されておらず、異常セルが散在しているとスタックの劣化を検出することが困難である。また、スタックに異常セルが含まれていても、正常と判断される場合がある。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、燃料電池スタックの劣化を簡易に判定することができる燃料電池システム、燃料電池システムの制御方法、および、燃料電池スタックの劣化判定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る燃料電池システムは、燃料ガスと酸化剤ガスとで発電を行なう燃料電池セルの複数個が直列接続された燃料電池スタックにおいて、発電性能因子に基づいて区分けされた第1の燃料電池セル群および第2の燃料電池セル群の発電出力を検出する検出部と、該検出部により検出された前記第1の燃料電池セル群と前記第2の燃料電池セル群との間の発電出力の乖離率に基づいて、前記燃料電池セルの運転条件を変更する運転条件変更部と、を備えることを特徴とするものである。本発明に係る燃料電池システムにおいては、燃料電池スタックの劣化を簡易に判定することができる。また、燃料電池スタックの劣化に応じた適切な運転条件を設定することができる。
【0008】
前記運転条件変更部は、前記乖離率が所定値以上になった場合に、前記燃料電池セルの運転条件を変更してもよい。前記所定値は、前記燃料電池スタックの発電出力が高いほど大きくてもよい。前記発電性能因子として前記燃料電池セルの温度を用い、比較的低温の前記燃料電池セル群を前記第1の燃料電池セル群とし、該第1の燃料電池セル群と比較して高温の前記燃料電池セル群を前記第2の燃料電池セル群としてもよい。
【0009】
前記発電性能因子として各前記燃料電池セルに供給される酸化剤ガス流量を用い、酸化剤ガス流量が比較的少ない前記燃料電池セル群を前記第1の燃料電池セル群とし、該第1の燃料電池セル群と比較して酸化剤ガス流量が多い前記燃料電池セル群を前記第2の燃料電池セル群としてもよい。前記発電出力は、発電電力、発電電流および発電電圧の少なくともいずれか1つであってもよい。
【0010】
前記運転条件変更部は、前記乖離率が所定値以上になった場合に、前記燃料電池セルの定格出力を低下させてもよい。前記燃料電池スタックから排出される燃料オフガスを燃焼させることによって前記燃料電池スタックを加熱する燃焼室を備え、前記運転条件変更部は、前記乖離率が所定値以上になった場合に、前記燃料電池セルへの燃料ガス供給量を増加させてもよい。
【0011】
改質水と原燃料とから水蒸気改質反応によって前記燃料ガスを生成する改質器を備え、前記燃料電池スタックは、前記改質器に沿って配置され、前記第1の燃料電池セル群は、前記改質器の改質水入口側に配置された燃料電池セル群であり、前記第2の燃料電池セル群は、前記第1の燃料電池セル群よりも、前記改質器の燃料ガス出口側に配置された燃料電池セル群であってもよい。
【0012】
前記第1の燃料電池セル群および前記第2の燃料電池セル群は、並行配置され、前記改質器は、前記第1の燃料電池セル群の積層方向に沿って延び、折り返して、前記第2の燃料電池のセル群の積層方向に沿って延びるように設けられていてもよい。
【0013】
本発明に係る他の燃料電池システムは、燃料ガスと酸化剤ガスとで発電を行なう燃料電池セルの複数個が直列接続された燃料電池スタックにおいて、発電性能因子に基づいて区分けされた第1の燃料電池セル群および第2の燃料電池セル群の発電出力を検出する検出部と、該検出部により検出された前記第1の燃料電池セル群と前記第2の燃料電池セル群との間の発電出力の乖離率に基づいて、前記燃料電池スタックの劣化判定を行う劣化判定部と、を備えていてもよい。本発明に係る他の燃料電池システムにおいては、燃料電池スタックの劣化を簡易に判定することができる。前記劣化判定部によって前記燃料電池スタックが劣化していると判定された場合に、ユーザに劣化に係る情報を報知する報知手段を備えていてもよい。
【0014】
本発明に係る燃料電池システムの制御方法は、燃料ガスと酸化剤ガスとで発電を行なう燃料電池セルの複数個が直列接続された燃料電池スタックにおいて発電性能因子に基づいて区分けされた第1の燃料電池セル群および第2の燃料電池セル群の発電出力を検出する検出ステップと、該検出ステップにより検出された前記第1の燃料電池セル群と前記第2の燃料電池セル群との間の発電出力の乖離率に基づいて、前記燃料電池セルの運転条件を変更する運転条件変更ステップと、を含むことを特徴とするものである。本発明に係る燃料電池システムの制御方法においては、燃料電池スタックの劣化を簡易に判定することができる。また、燃料電池スタックの劣化に応じた適切な運転条件を設定することができる。
【0015】
前記運転条件変更ステップにおいて、前記乖離率が所定値以上になった場合に、前記燃料電池セルの運転条件を変更してもよい。前記所定値は、前記燃料電池スタックの発電出力が高いほど大きくてもよい。前記発電性能因子として、前記燃料電池セルの温度を用い、比較的低温の前記燃料電池セル群を前記第1の燃料電池セル群とし、該第1の燃料電池セル群と比較して高温の前記燃料電池セル群を前記第2の燃料電池セル群としてもよい。
【0016】
前記発電性能因子として、各前記燃料電池セルに供給される酸化剤ガス流量を用い、酸化剤ガス流量が少ない前記燃料電池セル群を前記第1の燃料電池セル群とし、前記第1の燃料電池セル群と比較して酸化剤ガス流量が多い前記燃料電池セル群を前記第2の燃料電池セル群としてもよい。前記発電出力は、発電電力、発電電流および発電電圧の少なくともいずれか1つであってもよい。
【0017】
前記運転条件変更ステップにおいて、前記乖離率が所定値以上になった場合に、前記燃料電池セルの定格出力を低下させてもよい。前記燃料電池スタックから排出される燃料オフガスを燃焼させることによって前記燃料電池スタックを加熱する燃焼ステップを含み、前記運転条件変更ステップにおいて、前記乖離率が所定値以上になった場合に、前記燃料電池セルへの燃料ガス供給量を増加させてもよい。
【0018】
改質水と原燃料とから水蒸気改質反応によって前記燃料ガスを生成する改質器を備え、前記燃料電池スタックは、前記改質器に沿って配置され、前記第1の燃料電池セル群は、前記改質器の改質水入口側に配置された燃料電池セル群であり、前記第2の燃料電池セル群は、前記第1の燃料電池セル群よりも、前記改質器の燃料ガス出口側に配置された燃料電池セル群であってもよい。
【0019】
前記第1の燃料電池セル群および前記第2の燃料電池セル群は、並行配置され、前記改質器は、前記第1の燃料電池セル群の積層方向に沿って延び、折り返して、前記第2の燃料電池のセル群の積層方向に沿って延びるように設けられていてもよい。
【0020】
本発明に係る他の燃料電池スタックの劣化判定方法は、燃料ガスと酸化剤ガスとで発電を行なう燃料電池セルの複数個が直列接続された燃料電池スタックにおいて発電性能因子に基づいて区分けされた第1の燃料電池セル群および第2の燃料電池セル群の発電出力を検出する検出ステップと、該検出ステップにより検出された前記第1の燃料電池セル群と前記第2の燃料電池セル群との間の発電出力の乖離率に基づいて、前記燃料電池スタックの劣化判定を行う劣化判定ステップと、を含むことを特徴とするものである。本発明に係る他の燃料電池スタックの劣化判定方法においては、燃料電池スタックの劣化を簡易に判定することができる。前記劣化判定ステップにおいて前記燃料電池スタックが劣化していると判定された場合に、ユーザに劣化に係る情報を報知する報知ステップ手段を含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、燃料電池スタックの劣化を簡易に判定することができる燃料電池システム、燃料電池システムの制御方法、および、燃料電池スタックの劣化判定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1の実施形態に係る燃料電池システムの全体構成を示すブロック図である。
【図2】燃料電池セルの断面を含む部分斜視図である。
【図3】燃料電池スタック装置が備える燃料電池スタックを説明するための斜視図である。
【図4】(a)は燃料電池スタック装置の全体構成を示す斜視図であり、4(b)は(a)で示す酸化剤ガス導入部材を抜粋して示す斜視図であり、(c)は改質器を説明するための部分斜視図である。
【図5】(a)は燃料電池スタック装置の全体構成を示す斜視図であり、(b)はA列の燃料電池スタックおよびB列の燃料電池スタックの配列を改質器側から見た図であり、(c)は各燃料電池スタックにおける温度を示す図である。
【図6】燃料電池スタックの温度と電解質の温度との関係を示す図である。
【図7】(a)は燃料電池スタックの発電電流と発電電圧および発電電力との関係を示す図であり、(b)は(a)の部分拡大図である。
【図8】(a)は初期の燃料電池スタックの発電電力の時間経過を示す図であり、(b)は劣化が進行した燃料電池スタックの発電電力の時間経過を示す図である。
【図9】燃料電池スタックの劣化を判定する場合に実行されるフローチャートの一例を示す図である。
【図10】(a)〜(c)は第1燃料電池セル群および第2燃料電池セル群の区分けの例を示す図である。
【図11】(a)は燃料電池スタックにおける温度と燃料ガス流量との関係の計算結果を示す図であり、(b)は第1燃料電池セル群および第2燃料電池セル群の区分けの例を示す図である。
【図12】(a)は燃料電池スタックにおいて定格発電および最小発電が行われている際の酸化剤ガス流量の計算結果を示す図であり、(b)および(c)は第1燃料電池セル群および第2燃料電池セル群の区分けの例を示す図である。
【図13】第2の実施形態に係る燃料電池システムの全体構成を示すブロック図である。
【図14】燃料電池スタックの劣化を判定する場合に実行されるフローチャートの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0024】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る燃料電池システム100の全体構成を示すブロック図である。図1に示すように、燃料電池システム100は、制御部10、原燃料供給部20、改質水供給部30、酸化剤ガス供給部40、改質器50、燃焼室60、燃料電池スタック装置70、および熱交換器90を備える。また、燃料電池システム100は、センサ部として、電圧センサ81および電流センサ82を備える。
【0025】
制御部10は、CPU(中央演算処理装置)、ROM(リードオンリメモリ)、RAM(ランダムアクセスメモリ)、インタフェース等から構成され、入出力ポート11、CPU12、記憶部13等を含む。入出力ポート11は、制御部10と各機器とのインタフェースである。記憶部13は、CPU12が実行するためのプログラムを記憶するROM、演算に用いる変数等を記憶するRAM等を含むメモリである。
【0026】
原燃料供給部20は、炭化水素等の原燃料を改質器50に供給するための燃料ポンプ等を含む。改質水供給部30は、改質器50における水蒸気改質反応に必要な改質水を貯蔵する改質水タンク31、改質水タンク31に貯蔵された改質水を改質器50に供給するための改質水ポンプ32等を含む。酸化剤ガス供給部40は、燃料電池スタック装置70のカソード71にエア等の酸化剤ガスを供給するためのエアポンプ等を含む。改質器50は、改質水を気化させるための気化部51、および、水蒸気改質反応によって燃料ガスを生成するための改質部52を含む。燃料電池スタック装置70は、カソード71とアノード72とによって電解質73が挟持された複数の燃料電池セルが積層された燃料電池スタックを備える。
【0027】
図2は、燃料電池スタック装置70の燃料電池スタックを構成する燃料電池セル74の断面を含む部分斜視図である。図2に示すように、燃料電池セル74は、平板柱状の全体形状を有する。ガス透過性を有する導電性支持体21の内部に、軸方向(長手方向)に沿って貫通する複数の燃料ガス通路22が形成されている。導電性支持体21の外周面における一方の平面上に、燃料極23、固体電解質24、および酸素極25がこの順に積層されている。酸素極25に対向する他方の平面上には、接合層26を介してインターコネクタ27が設けられ、その上に接触抵抗低減用のP型半導体層28が設けられている。燃料極23が図1のアノード72として機能し、酸素極25が図1のカソード71として機能し、固体電解質24が図1の電解質73として機能する。
【0028】
燃料ガス通路22に水素を含む燃料ガスが供給されることによって、燃料極23に水素が供給される。一方、燃料電池セル74の周囲に酸素を含む酸化剤ガスが供給されることによって、酸素極25に酸素が供給される。それにより、酸素極25及び燃料極23において下記の電極反応が生じることによって発電が行われる。発電反応は、例えば、600℃〜1000℃で行われる。
酸素極:1/2O+2e→O2−(固体電解質)
燃料極:O2−(固体電解質)+H→HO+2e
【0029】
酸素極25の材料は、耐酸化性を有し、気体の酸素が固体電解質24との界面に到達できるように多孔質である。固体電解質24は、酸素極25から燃料極23へ酸素イオンO2−を移動させる機能を有する。固体電解質24は、酸素イオン導電性酸化物によって構成される。また、固体電解質24は、燃料ガスと酸化剤ガスとを物理的に隔離するため、酸化/還元雰囲気中において安定でありかつ緻密質である。燃料極23は、還元雰囲気中で安定でありかつ水素との親和性を有する材料によって構成される。インターコネクタ27は、燃料電池セル74同士を電気的に直列に接続するために設けられており、燃料ガスと酸化剤ガスとを物理的に隔離するために緻密質である。
【0030】
例えば、酸素極25は、電子およびイオンの双方の導電性が高いランタンコバルタイト系のペロブスカイト型複合酸化物等から形成される。固体電解質24は、イオン導電性の高いYを含有するZrO(YSZ)等によって形成される。燃料極23は、電子導電性の高いNiとYを含有するZrO(YSZ)との混合物等によって形成される。インターコネクタ27は、電子導電性の高い、アルカリ土類酸化物を固溶したLaCrO等によって形成される。これらの材料は、熱膨張率が近いものが好適である。
【0031】
図3は、燃料電池スタック装置70が備える燃料電池スタック75を説明するための斜視図である。燃料電池スタック75においては、複数の燃料電池セル74が互いに集電部材を介して積層されている。各燃料電池セル74は、燃料極23と酸素極25とが対向するように積層されている。なお、図3において、細線矢印は燃料ガスの流れを示し、太線矢印は酸化剤ガスの流れを示す。
【0032】
図4(a)は、燃料電池スタック装置70の全体構成を示す斜視図である。図4(b)は、(a)に示す燃料電池スタック装置70の酸化剤ガス導入部材76を抜粋して示す斜視図である。図4(a)に示すように、燃料電池スタック装置70においては、マニホールド77の上に、2組の燃料電池スタック75a,75b(燃料電池セル74)が、互いの積層方向が略並行になるように並列配置されている。燃料電池スタック75a,75bは、固体酸化物形の燃料電池セル74が複数枚積層された構造を有する。
【0033】
図4(a)のマニホールド77には、各燃料電池セル74の燃料ガス通路22に連通する孔が形成されている。それにより、マニホールド77を流動する燃料ガスが燃料ガス通路22に流入する。改質器50は、燃料電池スタック75a,75bのマニホールド77と反対側に配置されている。例えば、改質器50は、一方の燃料電池スタックの積層方向に延び、一端側で折り返し、他方の燃料電池スタックの積層方向に延びる構造を有する。本実施形態においては、改質器50における改質水入口側に燃料電池スタック75aが配置され、燃料ガス出口側に燃料電池スタック75bが配置されている。
【0034】
また、図4(b)に示すように、燃料電池スタック75aと燃料電池スタック75bとの間には、酸化剤ガス導入部材76が配置されている。酸化剤ガス導入部材76には、酸化剤ガスが流動するための空間が形成されている。酸化剤ガス導入部材76のマニホールド77側端部には、孔78が形成されている。それにより、各燃料電池セル74の外側を酸化剤ガスが流動する。燃料電池セル74の燃料ガス通路22を燃料ガスが流動しかつ燃料電池セル74の外側を酸化剤ガスが流動することによって、燃料電池セル74において発電が行われる。
【0035】
燃料電池セル74において発電に供された後の燃料ガス(燃料オフガス)と発電に供された後の酸化剤ガス(酸化剤オフガス)とは、各燃料電池セル74のマニホールド77と反対側の端部において合流する。燃料オフガスには未燃の水素等の可燃物が含まれていることから、燃料オフガスは、酸化剤オフガスに含まれる酸素を利用して燃焼する。本例においては、燃焼室60は、燃料電池セル74(燃料電池スタック75a,75b)の上端と改質器50との間において燃料オフガスが燃焼する空間のことをいう。
【0036】
改質器50の上流側が気化部51として機能し、改質器50の下流側が改質部52として機能する。図4(c)に示すように、改質器50に炭化水素等の原燃料および改質水が供給されると、気化部51においては、改質水が蒸発して水蒸気が発生し、発生した水蒸気と炭化水素等の原燃料とが混合される。改質部52においては、触媒を介して水蒸気と炭化水素等の原燃料とが水蒸気改質反応を起こして燃料ガスが生成される。
【0037】
続いて、図1を参照しつつ、燃料電池システム100の発電時の動作の概要を説明する。原燃料供給部20は、制御部10の指示に従って必要量の原燃料を改質器50に供給する。改質水ポンプ32は、制御部10の指示に従って必要量の改質水を改質器50に供給する。改質水は、燃焼室60における燃焼熱を利用して、気化部51において気化して水蒸気となる。改質部52においては、燃焼室60の燃焼熱を利用した水蒸気改質反応が生じる。それにより、改質部52において、水素を含む燃料ガスが生成される。改質部52において生成された燃料ガスは、アノード72に供給される。
【0038】
酸化剤ガス供給部40は、制御部10の指示に従って必要量の酸化剤ガスをカソード71に供給する。それにより、燃料電池スタック装置70において発電が行われる。カソード71から排出された酸化剤オフガスおよびアノード72から排出された燃料オフガスは、燃焼室60に流入する。燃焼室60においては、燃料オフガスが酸化剤オフガス中の酸素を利用して燃焼する。燃焼によって得られた熱は、改質器50および燃料電池スタック装置70(燃料電池スタック75a,75b)に与えられる。このように、燃料電池システム100においては、燃料オフガス中に含まれる水素、一酸化炭素等の可燃成分を燃焼室60において燃焼させることができる。熱交換器90は、燃焼室60から排出された排気ガスと熱交換器90内を流れる水道水との間で熱交換する。熱交換によって排気ガスから得られた凝縮水は、改質水タンク31に貯蔵される。
【0039】
電圧センサ81は、燃料電池スタック装置70の1枚以上の連続する燃料電池セル74の群(第1燃料電池セル群)および他の一枚以上の連続する燃料電池セル74の群(第2燃料電池セル群)の発電電圧を検出し、その検出結果を制御部10に与える。電流センサ82は、燃料電池スタック装置70の発電電流を検出し、その検出結果を制御部10に与える。
【0040】
制御部10は、各センサの検出結果に基づいて、燃料電池スタック装置70の劣化判定を行い、その判定結果に基づいて燃料電池スタック装置70の運転条件を変更する。したがって、制御部10が運転条件変更部として機能する。以下、燃料電池スタック装置70の劣化の判定について説明する。なお、燃料電池スタック装置70の劣化とは、例えば、燃料電池セル74を構成する部材が経年変化した場合等のことをいう。
【0041】
燃料電池スタック75の性能が良好であれば、燃料電池スタック75の温度、各燃料電池セル74における酸素分圧、各燃料電池セル74における水素分圧等の発電性能因子のばらつきが吸収され、所期の発電性能が実現される。しかしながら、燃料電池スタック75の劣化が進行するに従って、発電性能因子のばらつきが生じると所期の発電性能が得られなくなることがある。この現象を利用して、燃料電池スタック75の劣化を判定することができる。
【0042】
まず、発電性能因子の一例として温度に着目し、燃料電池スタック75の劣化について説明する。図5(a)は、燃料電池スタック装置70の全体構成を示す斜視図である。図5(b)は、A列の燃料電池スタック75a(第1燃料電池セル群)およびB列の燃料電池スタック75b(第2燃料電池セル群)の配列を改質器50側から見た図である。燃料電池スタック75aの改質水入口側端が負極として機能し、他端側において燃料電池スタック75aと燃料電池スタック75bとが接続され、燃料電池スタック75bの燃料ガス出口側端が正極として機能する。
【0043】
図5(c)は、燃料電池スタック75a,75bにおける温度を示す図である。なお、図5(c)の横軸は各燃料電池スタック75a,75bにおけるセル積層方向を示す。図5(c)においては、横軸左側が気化部51の改質水入口側を示し、横軸右側が改質水流動方向を示す。気化部51において改質水が気化することから、気化部51の温度は、改質部52の温度よりも低くなる。したがって、燃料電池スタック75aの温度は、燃料電池スタック75bの温度と比較して低くなる。
【0044】
一方、燃料電池スタックの発電性能に直結する電解質の導電率は、燃料電池スタックの温度と密接な関係を有する。図6は、燃料電池スタックの温度と電解質の温度との関係を示す図である。図6の実線は、通常の燃料電池スタックの温度と電解質の導電率との関係を示す図である。図6の実線に示すように、燃料電池スタックの温度が低下するにつれて、電解質の導電率が低下する。それにより、燃料電池スタックの発電性能が低下する。一方で、燃料電池スタックの温度が上昇するにつれて、電解質の導電率が上昇する。それにより、燃料電池スタックの発電性能が向上する。通常の燃料電池スタックにおいては、電解質の導電率が高く維持されるため、比較的低温においても定格発電電力を得ることができる。図6の例では、比較的低温の600℃において定格発電電力が得られている。
【0045】
しかしながら、燃料電池スタックの発電時間の経過とともに、電解質の反応サイトの変質、閉塞等に起因して、燃料電池スタックに劣化が生じることがある。この場合、例えば、図6の破線に示すように、定格発電電力が得られるための温度が上昇することになる。図6の破線の例では、700℃にならないと定格発電電力が得られていない。燃料電池スタックの劣化が進行すると、定格発電電力が得られる温度がさらに高くなる。
【0046】
図7(a)は、燃料電池スタック75a,75bの発電電流と発電電圧および発電電力との関係を示す図である。図7(b)は、図7(a)の部分拡大図である。図7(a)において、細実線は初期のA列スタック(燃料電池スタック75a)の関係を示し、太実線は初期のB列スタック(燃料電池スタック75b)の関係を示し、細破線は劣化が進行したA列スタック(燃料電池スタック75a)の関係を示し、太破線は劣化が進行したB列スタック(燃料電池スタック75b)の関係を示す。
【0047】
図7(a)に示すように、初期の燃料電池スタック75a,75bにおいては、燃料電池スタック75aと燃料電池スタック75bとの間で、同一の発電電流に対する発電電圧および発電電力にほとんど差が生じていない。しかしながら、劣化が進行するにつれて、燃料電池スタック75aと燃料電池スタック75bとの間で、同一の発電電流に対する発電電圧および発電電力の差が大きくなる。また、図7(b)に示すように、劣化が進行するにつれて、同一の発電電力を出力する際に発電電圧の差が大きくなっている。
【0048】
図8(a)は、初期の燃料電池スタック75a,75bの発電出力の時間経過を示す図である。図8(b)は、劣化が進行した燃料電池スタック75a,75bの発電出力の時間経過を示す図である。図8(a)および図8(b)においては、横軸は同一のスケールの時間を示している。また、図8(a)および図8(b)に示すように、初期においても劣化の進行後においても、燃料電池スタック75a,75bの合計の発電電力はほぼ一定に維持されている。
【0049】
図8(a)に示すように、初期の燃料電池スタック75a,75bにおいては、スタック間において発電電圧の差はほとんど生じていない。これに対して、図8(b)に示すように、劣化が進行した燃料電池スタック75a,75bにおいては、スタック間において発電電圧の差が大きくなっている。
【0050】
このように、燃料電池システムの運転において、温度の低い燃料電池セル群(第1燃料電池セル群)の発電電圧と、温度の高い燃料電池セル群(第2燃料電池セル群)の発電電圧とが乖離するようになる。この乖離率が所定の値よりも大きくなった場合に、発電電圧の低い燃料電池スタックが劣化していると判定することができる。なお、ここでいう乖離率(%)とは、{(第2燃料電池セル群の発電電圧)−(第1燃料電池セル群の発電電圧)}/(第2燃料電池セル群の発電電圧(または第1燃料電池セル群の発電電圧))×100(%)と定義することができる。
【0051】
また、発電電圧の他に、発電電流または発電電力の乖離率を用いることができる(以下、発電電圧、発電電流および発電電力を総称して発電出力と称する。)。例えば、同一の発電電流が維持されている場合に、第1燃料電池セル群の発電電力と第2燃料電池セル群の発電電力とが乖離するようになる。この乖離率が所定の値よりも大きくなった場合に、発電電力の低い燃料電池スタック(燃料電池セル群)が劣化していると判定することができる。なお、ここでいう乖離率(%)とは、{(第2燃料電池セル群の発電電力)−(第1燃料電池セル群の発電電力)}/(第2燃料電池セル群の発電電力(または第1燃料電池セル群の発電電力))×100(%)と定義することができる。
【0052】
また、同一の発電電圧が維持されている場合に、第1燃料電池セル群の発電電流と第2燃料電池セル群の発電電流とが乖離するようになる。この乖離率が所定の値よりも大きくなった場合に、発電電流の低い燃料電池スタック(燃料電池セル群)が劣化していると判定することができる。なお、ここでいう乖離率(%)とは、{(第2燃料電池セル群の発電電流)−(第1燃料電池セル群の発電電流)}/(第2燃料電池セル群の発電電流(または第1燃料電池セル群の発電電流))×100(%)と定義することができる。
【0053】
なお、劣化に伴って生じる上記の乖離率は、低負荷において小さくなりやすく、高負荷において大きくなりやすい。したがって、発電出力が大きい場合には、乖離率を用いて劣化を判断する場合のしきい値を大きくすることが好ましい。
【0054】
図9は、燃料電池スタックの劣化を判定する場合に実行されるフローチャートの一例を示す図である。図9のフローチャートでは、発電電圧の乖離率に着目する。まず、CPU12は、電圧センサ81から、燃料電池スタック75aの発電電圧VAおよび燃料電池スタック75bの発電電圧VBを取得する(ステップS1)。
【0055】
次に、CPU12は、乖離率(%)=(VB−VA)/VB×100(%)がしきい値以上であるか否かを判定する(ステップS2)。ステップS2において「Yes」と判定された場合、CPU12は、燃料電池スタック装置70の運転条件を変更する(ステップS3)。その後、CPU12は、フローチャートの実行を終了する。また、ステップS2において「No」と判定された場合にも、CPU12は、フローチャートの実行を終了する。なお、図9のフローチャートにおいて、発電電圧の代わりに他の発電出力を用いてもよい。
【0056】
図9のフローチャートによれば、燃料電池スタック75の劣化に応じた適切な運転条件を設定することができる。例えば、ステップS3において、燃焼室60における燃焼量を増加させることによって、燃料電池スタック75aの温度を上昇させることができる。この場合、燃料電池スタック75aの発電電圧を上昇させることができる。なお、燃焼室60における燃焼量を増加させるためには、改質器50への原燃料供給量を増加させて原燃料の利用効率を低下させる等の制御があげられる。燃焼室60における可燃成分量が増加するからである。
【0057】
また、燃料電池スタック装置70の最大発電電力は、燃料電池スタック75の劣化に伴って低下することがある。そこで、燃料電池スタック装置70の定格出力を引き下げることによって、燃料電池スタック装置70に過度の負荷がかかることを回避することができる。
【0058】
なお、上記の例においては、燃料電池スタック75a全体の発電電圧と燃料電池スタック75b全体の発電電圧との差から乖離率を検出しているが、それに限られない。例えば、燃料電池スタック75aを構成する燃料電池セル一枚当たりの発電電圧と燃料電池スタック75bを構成する燃料電池セル一枚当たりの発電電圧との差から乖離率を検出してもよい。発電電流または発電電力の乖離率を検出する場合も、同様である。
【0059】
また、上記の例においては、燃料電池スタック75を比較的低温の燃料電池スタック75aと比較的高温の燃料電池スタック75bとに2分割しているが、それに限られない。比較的低温の1枚以上の燃料電池セル74の群を第1燃料電池セル群とし、比較的高温の1枚以上の燃料電池セル74の群を第2燃料電池セル群とし、第1燃料電池セル群と第2燃料電池セル群との間の発電出力差から乖離率を検出してもよい。
【0060】
ここで、図5(c)に示すように、燃料電池スタック75aの温度は、気化部51の改質水入口付近において最も低く、改質水の流動方向に進むにつれて徐々に高くなる。気化部51の改質水入口付近における改質水の気化量が最も多いからである。したがって、図10(a)に示すように、気化部51の改質水入口付近に位置する燃料電池セル74から構成される燃料電池セル群を比較的低温の第1燃料電池セル群とし、その他の領域に位置する燃料電池セル74から構成される燃料電池セル群を比較的高温の第2燃料電池セル群としてもよい。
【0061】
また、図10(b)に示すように、気化部51に位置する燃料電池セル74から構成される燃料電池セル群を比較的低温の第1燃料電池セル群とし、改質部52のいずれかの領域に位置する燃料電池セル74から構成される燃料電池セル群を比較的高温の第2燃料電池セル群としてもよい。また、図10(c)に示すように、気化部51の全ての領域に位置する燃料電池セル74から構成される燃料電池セル群を比較的低温の第1燃料電池セル群とし、改質部52の全ての領域に位置する燃料電池セル74から構成される燃料電池セル群を比較的高温の第2燃料電池セル群としてもよい。
【0062】
また、発電電圧を検出する対象の第1燃料電池セル群および第2燃料電池セル群を定義するに際して、各燃料電池セル74の水素分圧を考慮してもよい。具体的には、比較的低温の第1燃料電池セル群と比較的高温の第2燃料電池セル群とにおける水素分圧差が小さくなるように、第1燃料電池セル群および第2燃料電池セル群を決定してもよい。この場合、第1燃料電池セル群および第2燃料電池セル群における発電条件が近づくことから、発電出力の乖離率を用いた劣化判定精度が向上する。
【0063】
図11(a)は、燃料電池スタック75a,75bにおける温度と燃料ガス流量との関係の計算結果を示す図である。図11(a)において、横軸は積層方向における各燃料電池セル74を示し、左側の縦軸は燃料ガス流量を示し、右側の縦軸は各燃料電池セル74の温度を示す。横軸左側が気化部51の改質水入口側を示し、横軸右側が改質水流動方向を示す。図11(a)において、「●印」は、燃料電池スタック75aの各燃料電池セル74の温度を示す。「△印」は、燃料電池スタック75bの各燃料電池セル74の温度を示す。「○印」は、燃料電池スタック75aの各燃料電池セル74における燃料ガス流量を示す。「▲印」は、燃料電池スタック75bの各燃料電池セル74における燃料ガス流量を示す。
【0064】
図11(a)に示すように、各燃料電池スタック75a,75bにおいて、積層方向中央部に比較して両端部において温度が低くなっている。これは、両端部からの放熱に起因する。なお、気化部51の改質水入口側に位置する燃料電池セル74において、温度が大幅に低くなっている。一方で、各燃料電池スタック75a,75bにおいて、積層方向中央部に比較して両端部において燃料ガス流量が多くなっている。
【0065】
そこで、図11(b)に示すように、燃料電池スタック75aの気化部51側の1枚以上の燃料電池セル74の群を第1燃料電池セル群とし、燃料電池スタック75bの燃料ガス出口と反対側の1枚以上の燃料電池セル74の群を第2燃料電池セル群としてもよい。この場合、第1燃料電池セル群が比較的低温となり第2燃料電池セル群が比較的高温となる一方で、第1燃料電池セル群と第2燃料電池セル群との間で水素分圧差が小さくなる。したがって、第1燃料電池セル群および第2燃料電池セル群の発電条件が近づくことから、発電出力の乖離率を用いた劣化判定精度が向上する。
【0066】
また、温度の高低ではなく、酸素分圧差に基づいて、発電出力を検出する対象の第1燃料電池セル群および第2燃料電池セル群を決定してもよい。図12(a)は、燃料電池スタック75a,75bにおいて、定格発電および最小発電が行われている際の酸化剤ガス流量の計算結果を示す図である。図12(a)において、横軸は積層方向における各燃料電池セル74を示し、縦軸は各燃料電池セル74に供給される酸化剤ガス流量を示す。なお、最小発電とは、燃料電池スタック装置70が所定の発電効率を維持することが可能な最小の発電のことである。
【0067】
酸化剤ガスの分配は、酸化剤ガス導入部材76の構造等によって異なるものである。図12(a)の例では、各燃料電池スタック75a,75bにおいて気化部51側において酸化剤ガス流量が少なくなっており、反対側において酸化剤ガス流量が多くなっている。そこで、図12(b)に示すように、燃料電池スタック75a,75bの気化部51側の1枚以上の燃料電池セル74の群を第1燃料電池セル群とし、燃料電池スタック75a,75bの気化部51と反対側の1枚以上の燃料電池セル74の群を第2燃料電池セル群としてもよい。このように、第1燃料電池セル群および第2燃料電池セル群は、必ずしも、連続していなくてもよい。
【0068】
なお、気化部51における気化潜熱の影響を回避するために、図12(c)に示すように、燃料電池スタック75bの気化部51側の1枚以上の燃料電池セル74の群を第1燃料電池セル群とし、燃料電池スタック75bの気化部51側と反対側の1枚以上の燃料電池セル74の群を第2燃料電池セル群としてもよい。
【0069】
また、温度の高低または酸素分圧差ではなく、水素分圧差(燃料ガス流量差)に基づいて、発電出力を検出する対象の第1燃料電池セル群および第2燃料電池セル群を決定してもよい。例えば、水素分圧が比較的高い燃料電池セル群を第1燃料電池セル群とし、第1燃料電池セル群よりも低い水素分圧の燃料電池セル群を第2燃料電池セル群としてもよい。
【0070】
なお、発電性能因子に基づいた第1燃料電池セル群と第2燃料電池セル群との区分けは、上記に限定されるものではないが、スタック電圧取り出しの難易の観点から、A列の燃料電池スタック75aを第1燃料電池セル群としかつB列の燃料電池スタック75bを第2燃料電池セル群とすることが好ましい。この場合、第1燃料電池セル群と第2燃料電池セル群とが異なる列に区分けされるため、電圧の取り出しが容易となる。
【0071】
本実施形態によれば、発電性能因子に基づいて区分けされた第1燃料電池セル群および第2燃料電池セル群の発電出力の乖離率に基づいて、燃料電池スタック75の劣化を判定することができる。また、乖離率に基づいて燃料電池スタック装置70の運転条件を変更することによって、燃料電池スタック75の劣化に応じた適切な運転条件を設定することができる。
【0072】
(第2の実施形態)
燃料電池スタック装置70の運転条件を変更することなく、燃料電池スタック75の劣化を判定してもよい。例えば、定期点検時に劣化を判定する場合には、点検後に燃料電池スタック75を交換する場合もある。この場合においては、劣化の判定後に燃料電池スタック装置70の発電が不要になることがある。したがって、燃料電池スタック75の交換が必要か否かを判定できればよい。そこで、第2の実施形態においては、運転条件を変更せずに、燃料電池スタック75の劣化を判定する例について説明する。
【0073】
図13は、第2の実施形態に係る燃料電池システム101の全体構成を示すブロック図である。燃料電池システム101が図1の燃料電池システム100と異なる点は、報知装置80をさらに備える点である。例えば、報知装置80は、燃料電池スタック75が劣化していると判定された場合に、ユーザ等に点検を促す表示、警告音の発報等を行う。それにより、燃料電池スタック75の交換等を早期に実施することができる。
【0074】
図14は、燃料電池スタック75の劣化を判定する場合に実行されるフローチャートの一例を示す図である。まず、CPU12は、電圧センサ81から、燃料電池スタック75aの発電電圧VAおよび燃料電池スタック75bの発電電圧VBを取得する(ステップS11)。
【0075】
次に、CPU12は、乖離率(%)=(VB−VA)/VB×100(%)がしきい値以上であるか否かを判定する(ステップS12)。ステップS12において「Yes」と判定された場合、CPU12は、ユーザに対する部品交換等の告知を報知装置80に報知させる(ステップS13)。その後、CPU12は、フローチャートの実行を終了する。また、ステップS12において「No」と判定された場合にも、CPU12は、フローチャートの実行を終了する。図13のフローチャートによれば、燃料電池スタック75の劣化に応じて、ユーザに適切な報知を行うことができる。なお、図14のフローチャートにおいて、発電電圧の代わりに他の発電出力を用いてもよい。
【0076】
なお、上記実施形態は、固体高分子形、固体酸化物形、炭酸溶融塩形等の他のいずれのタイプの燃料電池にも適用可能である。ただし、固体酸化物形のように高温の反応ガスを用いる燃料電池においては、温度差に基づいて発電性能が変化しやすい傾向にある。したがって、上記各実施形態は、固体酸化物形燃料電池に対して特に有効である。また、第2の実施形態に係る報知装置80を第1の実施形態に組み入れてもよい。この場合、劣化判定に応じて、運転条件を変更するとともに、燃料電池スタック75の交換を促すことができる。
【符号の説明】
【0077】
10 制御部
11 入出力ポート
12 CPU
13 記憶部
20 原燃料供給部
30 改質水供給部
40 酸化剤ガス供給部
50 改質器
60 燃焼室
70 燃料電池スタック装置
71 カソード
72 アノード
74 燃料電池セル
75 燃料電池スタック
80 報知装置
81 電圧センサ
82 電流センサ
90 熱交換器
100 燃料電池システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスと酸化剤ガスとで発電を行なう燃料電池セルの複数個が直列接続された燃料電池スタックにおいて、発電性能因子に基づいて区分けされた第1の燃料電池セル群および第2の燃料電池セル群の発電出力を検出する検出部と、
該検出部により検出された前記第1の燃料電池セル群と前記第2の燃料電池セル群との間の発電出力の乖離率に基づいて、前記燃料電池セルの運転条件を変更する運転条件変更部と、を備えることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
前記運転条件変更部は、前記乖離率が所定値以上になった場合に、前記燃料電池セルの運転条件を変更することを特徴とする請求項1記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記所定値は、前記燃料電池スタックの発電出力が高いほど大きいことを特徴とする請求項2記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記発電性能因子として、前記燃料電池セルの温度を用い、
比較的低温の前記燃料電池セル群を前記第1の燃料電池セル群とし、
該第1の燃料電池セル群と比較して高温の前記燃料電池セル群を前記第2の燃料電池セル群とすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記発電性能因子として、各前記燃料電池セルに供給される酸化剤ガス流量を用い、
酸化剤ガス流量が比較的少ない前記燃料電池セル群を前記第1の燃料電池セル群とし、
該第1の燃料電池セル群と比較して酸化剤ガス流量が多い前記燃料電池セル群を前記第2の燃料電池セル群とすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の燃料電池システム。
【請求項6】
前記発電出力は、発電電力、発電電流および発電電圧の少なくともいずれか1つであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の燃料電池システム。
【請求項7】
前記運転条件変更部は、前記乖離率が所定値以上になった場合に、前記燃料電池セルの定格出力を低下させることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の燃料電池システム。
【請求項8】
前記燃料電池スタックから排出される燃料オフガスを燃焼させることによって前記燃料電池スタックを加熱する燃焼室を備え、
前記運転条件変更部は、前記乖離率が所定値以上になった場合に、前記燃料電池セルへの燃料ガス供給量を増加させることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の燃料電池システム。
【請求項9】
改質水と原燃料とから水蒸気改質反応によって前記燃料ガスを生成する改質器を備え、前記燃料電池スタックは、前記改質器に沿って配置され、
前記第1の燃料電池セル群は、前記改質器の改質水入口側に配置された燃料電池セル群であり、
前記第2の燃料電池セル群は、前記第1の燃料電池セル群よりも、前記改質器の燃料ガス出口側に配置された燃料電池セル群であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の燃料電池システム。
【請求項10】
前記第1の燃料電池セル群および前記第2の燃料電池セル群は、並行配置され、
前記改質器は、前記第1の燃料電池セル群の積層方向に沿って延び、折り返して、前記第2の燃料電池のセル群の積層方向に沿って延びるように設けられていることを特徴とする請求項9記載の燃料電池システム。
【請求項11】
燃料ガスと酸化剤ガスとで発電を行なう燃料電池セルの複数個が直列接続された燃料電池スタックにおいて、発電性能因子に基づいて区分けされた第1の燃料電池セル群および第2の燃料電池セル群の発電出力を検出する検出部と、
該検出部により検出された前記第1の燃料電池セル群と前記第2の燃料電池セル群との間の発電出力の乖離率に基づいて、前記燃料電池スタックの劣化判定を行う劣化判定部と、を備えることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項12】
前記劣化判定部によって前記燃料電池スタックが劣化していると判定された場合に、ユーザに劣化に係る情報を報知する報知手段を備えることを特徴とする請求項11記載の燃料電池システム。
【請求項13】
燃料ガスと酸化剤ガスとで発電を行なう燃料電池セルの複数個が直列接続された燃料電池スタックにおいて、発電性能因子に基づいて区分けされた第1の燃料電池セル群および第2の燃料電池セル群の発電出力を検出する検出ステップと、
該検出ステップにより検出された前記第1の燃料電池セル群と前記第2の燃料電池セル群との間の発電出力の乖離率に基づいて、前記燃料電池セルの運転条件を変更する運転条件変更ステップと、を含むことを特徴とする燃料電池システムの制御方法。
【請求項14】
前記運転条件変更ステップにおいて、前記乖離率が所定値以上になった場合に、前記燃料電池セルの運転条件を変更することを特徴とする請求項13記載の燃料電池システムの制御方法。
【請求項15】
前記所定値は、前記燃料電池スタックの発電出力が高いほど大きいことを特徴とする請求項14記載の燃料電池システムの制御方法。
【請求項16】
前記発電性能因子として、前記燃料電池セルの温度を用い、
比較的低温の前記燃料電池セル群を前記第1の燃料電池セル群とし、
該第1の燃料電池セル群と比較して高温の前記燃料電池セル群を前記第2の燃料電池セル群とすることを特徴とする請求項13〜15のいずれか一項に記載の燃料電池システムの制御方法。
【請求項17】
前記発電性能因子として、各前記燃料電池セルに供給される酸化剤ガス流量を用い、
酸化剤ガス流量が少ない前記燃料電池セル群を前記第1の燃料電池セル群とし、
該第1の燃料電池セル群と比較して酸化剤ガス流量が多い前記燃料電池セル群を前記第2の燃料電池セル群とすることを特徴とする請求項13〜15のいずれか一項に記載の燃料電池システムの制御方法。
【請求項18】
前記発電出力は、発電電力、発電電流および発電電圧の少なくともいずれか1つであることを特徴とする請求項13〜17のいずれか一項に記載の燃料電池システムの制御方法。
【請求項19】
前記運転条件変更ステップにおいて、前記乖離率が所定値以上になった場合に、前記燃料電池セルの定格出力を低下させることを特徴とする請求項13〜18のいずれか一項に記載の燃料電池システムの制御方法。
【請求項20】
前記燃料電池スタックから排出される燃料オフガスを燃焼させることによって前記燃料電池スタックを加熱する燃焼ステップを含み、
前記運転条件変更ステップにおいて、前記乖離率が所定値以上になった場合に、前記燃料電池セルへの燃料ガス供給量を増加させることを特徴とする請求項13〜18のいずれか一項に記載の燃料電池システムの制御方法。
【請求項21】
改質水と原燃料とから水蒸気改質反応によって前記燃料ガスを生成する改質器を備え、前記燃料電池スタックは、前記改質器に沿って配置され、
前記第1の燃料電池セル群は、前記改質器の改質水入口側に配置された燃料電池セル群であり、
前記第2の燃料電池セル群は、前記第1の燃料電池セル群よりも、前記改質器の燃料ガス出口側に配置された燃料電池セル群であることを特徴とする請求項13〜20のいずれか一項に記載の燃料電池システムの制御方法。
【請求項22】
前記第1の燃料電池セル群および前記第2の燃料電池セル群は、並行配置され、
前記改質器は、前記第1の燃料電池セル群の積層方向に沿って延び、折り返して、前記第2の燃料電池のセル群の積層方向に沿って延びるように設けられていることを特徴とする請求項21記載の燃料電池システムの制御方法。
【請求項23】
燃料ガスと酸化剤ガスとで発電を行なう燃料電池セルの複数個が直列接続された燃料電池スタックにおいて、発電性能因子に基づいて区分けされた第1の燃料電池セル群および第2の燃料電池セル群の発電出力を検出する検出ステップと、
該検出ステップにより検出された前記第1の燃料電池セル群と前記第2の燃料電池セル群との間の発電出力の乖離率に基づいて、前記燃料電池スタックの劣化判定を行う劣化判定ステップと、を含むことを特徴とする燃料電池スタックの劣化判定方法。
【請求項24】
前記劣化判定ステップにおいて前記燃料電池スタックが劣化していると判定された場合に、ユーザに劣化に係る情報を報知する報知ステップ手段を含むことを特徴とする請求項23記載の燃料電池スタックの劣化判定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−249171(P2011−249171A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−122113(P2010−122113)
【出願日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】