説明

燃料電池システム

【課題】燃料電池システムを小型化できる加湿器を提供する。
【解決手段】加湿器24は、略箱状のケース50と、このケース50に収納された複数の中空糸膜と、を備え、中空糸膜を介して燃料電池から排出されたエアオフガスと、燃料電池に供給されるエアと、の間で水分を移動させる。ケース50には、燃料電池から排出されて中空糸膜を通流したガスが排出される外周流出口56が形成され、加湿器24は、この外周流出口56の開口面積を調整可能な流出口面積調整装置70を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加湿器に関する。詳しくは、燃料電池システムを搭載した自動車に用いられる加湿器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の新たな動力源として燃料電池システムが注目されている。燃料電池システムは、例えば、反応ガスを化学反応させて発電する燃料電池と、反応ガス流路を介して燃料電池に反応ガスを供給する反応ガス供給装置と、この反応ガス供給装置を制御する制御装置と、を備える。
【0003】
燃料電池は、例えば、数十個から数百個のセルが積層されたスタック構造である。ここで、各セルは、膜電極構造体(MEA)を一対のセパレータで挟持して構成され、膜電極構造体は、アノード電極(陽極)およびカソード電極(陰極)の2つの電極と、これら電極に挟持された固体高分子電解質膜とで構成される。
【0004】
この燃料電池のカソード電極側には、エア供給路を介して、エアポンプからエアが供給される。燃料電池のアノード電極側には、水素供給路を介して、水素タンクから水素ガスが供給される。
また、燃料電池10のカソード電極側には、エア排出路が接続され、このエア排出路の途中には、背圧弁および希釈装置が設けられる。燃料電池のアノード電極側には、水素排出路が接続され、この水素排出路は、上述の希釈装置に接続される。
【0005】
ところで、上述のように、燃料電池における化学反応はMEA膜で行われるが、このMEA膜の湿度がある程度確保できないと、イオンの交換が十分行われないため、以上の燃料電池システムには、圧縮機から燃料電池に供給されるエアと、燃料電池から排出されるエアオフガスと、の間で水分交換を行う加湿装置が設けられる。具体的には、この加湿装置は、エア供給路およびエア排出路の途中に設けられる。
【0006】
この加湿器は、例えば、箱状のケースと、このケースに収納された複数の中空糸膜と、を備える。この加湿装置は、ケースを通して中空糸膜の外側に導入されたガスと、ケースを通して中空糸膜の内側に導入されたガスと、の間で水分を移動させる(特許文献1参照)。
【0007】
以上の燃料電池システムでは、水素タンクにより、燃料電池のアノード電極に反応ガスとしての水素ガスを供給し、エアポンプにより、カソード電極に反応ガスとしての酸素を含むエアを供給すると、電気化学反応により発電する。
燃料電池から排出された水素オフガスは、水素排出路を介して、希釈装置に流入する。また、背圧弁を適当な開度で開くことにより、燃料電池から排出されたエアオフガスは、エア排出路を介して、希釈装置を通り、外部に排出される。ここで、希釈装置内に滞留した水素オフガスは、希釈装置を通るエアオフガスに吸引されて、希釈されて外部に排出される。
【特許文献1】特開平6−132038号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述の燃料電池システムでは、エア排出路に加湿器に加えて背圧弁を設ける必要があり、システムが大型化する、という問題があった。
【0009】
本発明は、燃料電池システムを小型化できる加湿器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の加湿器(例えば、後述の加湿器24)は、略箱状のケース(例えば、後述のケース50)と、当該ケースに収納された複数の膜体(例えば、後述の中空糸膜62)と、を備え、当該膜体を介して燃料電池(例えば、後述の燃料電池10)から排出されたガス(例えば、後述のエアオフガス)と、前記燃料電池に供給されるガス(例えば、後述のエア)と、の間で水分を移動させる加湿器であって、前記ケースには、前記燃料電池から排出されて前記膜体を通流したガスが排出される流出口(例えば、後述の外周流出口56)が形成され、当該流出口の開口面積を調整可能な流出口面積調整手段(例えば、後述の流出口面積調整装置70)を備えることを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、燃料電池から排出されて膜体を通流したガスが排出される流出口をケースに形成し、さらに、この流出口の開口面積を調整可能な流出口面積調整手段を設けた。よって、流出口面積調整手段が従来の背圧弁の役割を担うこととなり、背圧弁が不要となるので、燃料電池システムを小型化できる。
【0012】
この場合、前記流出口面積調整手段は、前記ケースの流出口の上を移動可能な流出口遮蔽部(例えば、後述の流出口遮蔽部71)と、当該流出口遮蔽部を移動させる流出口遮蔽部移動機構(例えば、後述の流出口遮蔽部移動機構72)と、を備えることが好ましい。
【0013】
この発明によれば、流出口遮蔽部および流出口遮蔽部移動機構を含んで流出口面積調整手段を構成したので、簡素な構成で流出口の開口面積を調整できる。
【0014】
この場合、前記ケースには、前記燃料電池から排出されたガスが流入する流入口(例えば、後述の外周流入口55)が形成され、当該流入口の開口面積を調整可能な流入口面積調整手段(例えば、後述の流入口面積調整装置80)を備えることが好ましい。
【0015】
燃料電池から排出されたガスの圧力が高くなると、このガスに含まれる水蒸気量が少なくなり、水蒸気に成り得なかった水分は凝縮する。すると、水蒸気と結露水とを含むガスが膜体を通流することになり、加湿器の加湿効率が低下する、という問題がある。
そこで、本発明によれば、流入口の開口面積を調整可能な流入口面積調整手段を設けた。よって、流入口の開口面積を小さくすることにより、加湿器内のガスの圧力を低くできるので、上記作用に加え、ガスに含まれる水蒸気量を増加させて、加湿器の加湿効率を向上できる。
【0016】
この場合、前記流入口面積調整手段は、前記ケースの流入口の上を移動可能な流入口遮蔽部(例えば、後述の流入口遮蔽部81)と、当該流入口遮蔽部を移動させる流入口遮蔽部移動機構(例えば、後述の流入口遮蔽部移動機構82)と、を備えることが好ましい。
【0017】
この発明によれば、流入口遮蔽部および流入口遮蔽部移動機構を含んで流入口面積調整手段を構成したので、簡素な構成で流入口の開口面積を調整できる。
【0018】
この場合、前記流出口面積調整手段は、前記燃料電池に要求する出力に応じて前記流出口遮蔽部移動機構を制御する制御部(例えば、後述の制御装置30)をさらに備えることが好ましい。
【0019】
この発明によれば、燃料電池に要求する出力に応じて流出口遮蔽部移動機構を制御する制御部を設けた。例えば、燃料電池に要求する出力が小さい場合には、燃料電池内の圧力を低くするため、流出口遮蔽部を移動させて流出口の開口面積を大きくして、燃料電池からガスが排出されやすくする。一方、燃料電池に要求する出力が大きい場合には、燃料電池内の圧力を高くするため、流出口遮蔽部を移動させて流出口の開口面積を小さくして、燃料電池からガスが排出されにくくする。よって、燃料電池の要求する出力に応じて、燃料電池内を適正な圧力に調整して、燃料電池の発電効率を向上できる。
【0020】
この場合、前記流入口面積調整手段は、前記燃料電池が必要とする加湿量に応じて前記流入口遮蔽部移動機構を制御する制御部をさらに備えることが好ましい。
【0021】
この発明によれば、燃料電池が必要とする加湿量に応じて流入口遮蔽部移動機構を制御する制御部を設けた。例えば、燃料電池が必要とする加湿量が少ない場合には、加湿器内のガスの圧力を高くするため、流入口遮蔽部を移動させて流入口の開口面積を大きくして、加湿器内にガスが流入しやすくする。一方、燃料電池が必要とする加湿量が多い場合には、加湿器内のガスの圧力を低くして加湿効率を高めるため、流入口遮蔽部を移動させて流入口の開口面積を小さくして、加湿器内にガスを流入しにくくする。よって、燃料電池が必要とする加湿量に応じて、加湿器内を適正な圧力に調整して、燃料電池の発電効率を向上できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、燃料電池から排出されて膜体を通流したガスが排出される流出口をケースに形成し、さらに、この流出口の開口面積を調整可能な流出口面積調整手段を設けた。よって、流出口面積調整手段が従来の背圧弁の役割を担うこととなり、背圧弁が不要となるので、燃料電池システムを小型化できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の実施形態の説明にあたって、同一構成要件については同一符号を付し、その説明を省略もしくは簡略化する。
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態に係る加湿器が適用された燃料電池システム1のブロック図である。
燃料電池システム1は、車両に搭載され、反応ガスを反応させて発電を行う燃料電池10と、この燃料電池10に水素ガスやエア(空気)を供給する供給装置20と、これらを制御する制御部としての制御装置30と、を有する。
【0024】
このような燃料電池10は、アノード電極(陽極)側にアノードガスとしての水素ガスが供給され、カソード電極(陰極)側にカソードガスとしての酸素を含むエアが供給されると、電気化学反応により発電する。
【0025】
供給装置20は、燃料電池10のカソード電極側にエアを供給するエアポンプ21と、アノード電極側に水素ガスを供給する水素タンク22と、燃料電池10から排出されるガスを処理する希釈器23と、燃料電池10に供給されるエアを加湿する加湿器24と、を含んで構成される。
【0026】
エアポンプ21は、エア供給路41を介して、燃料電池10のカソード電極側に接続されている。
燃料電池10のカソード電極側には、エア排出路42が接続され、このエア排出路42の途中には、上述の希釈器23が設けられる。
また、エア排出路42の燃料電池10近傍には、圧力センサ421が設けられている。
【0027】
水素タンク22は、水素供給路43を介して、燃料電池10のアノード電極側に接続されている。
燃料電池10のアノード電極側には、水素排出路44が接続され、この水素排出路44は、希釈器23に接続される。
【0028】
エア供給路41およびエア排出路42の途中には、上述の加湿器24が設けられる。加湿器24は、中空糸膜62を用いて、エア排出路42を流れるエアオフガスに含まれる水分を、エア供給路41を流れるエアに移動させることにより、燃料電池10に供給されるエアを加湿する。
【0029】
図2は、加湿器24の斜視図であり、図3は、加湿器24の断面図である。図4(a)は、図3のX−X断面図であり、図4(b)は、図3のY−Y断面図である。なお、これら図2〜図4において、燃料電池10から排出される湿潤気体であるエアオフガスの流れを白矢印で示し、燃料電池10に供給される乾燥気体であるエアの流れを黒矢印で示す。
【0030】
加湿器24は、円柱形状であり、外周流出口56が形成され、その内部空間と外部とを仕切れるように構成された略箱状のケース50と、このケース50の外周流出口56の開口面積を調整する流出口面積調整手段としての流出口面積調整装置70と、ケース50に収納された複数の膜体としての中空糸膜62と、を備える。
【0031】
ケース50は、両端が開放された円筒形状の筒部51と、この筒部51の両端側内周面に形成されて筒部51の両端を塞ぐポッティング部52a、52bと、を備える。
ポッティング部52a、52bは、ポッティング(樹脂盛り)により形成されている。
筒部51の長手方向一端面(ポッティング部52aが形成された側)を端部流入口53とし、他端面(ポッティング部52bが形成された側)を端部流出口54とする。
【0032】
筒部51の長手方向他端側(ポッティング部52bが形成された側)の外周面には、8個の外周流入口55が周方向に所定間隔おきに形成されている。また、筒部51の長手方向一端側(ポッティング部52aが形成された側)の外周面には、8個の外周流出口56が周方向に所定間隔おきに形成されている。
外周流入口55および外周流出口56は、筒部51のポッティング部52a、52bよりも内側の位置に形成されており、これら外周流入口55および外周流出口56を通して、ケース50の内部と外部とが連通している。
【0033】
流出口面積調整装置70は、ケース50の外周面に設けられた流出口遮蔽部71と、この流出口遮蔽部71を移動させる流出口遮蔽部移動機構72と、を備える。
流出口遮蔽部71は、円環形状であり、ケース50の外周面を覆うように設けられている。これにより、この流出口遮蔽部71は、ケース50の外周流出口56の上を移動可能となっている。
【0034】
流出口遮蔽部移動機構72は、送りねじ機構であり、ねじが刻設された軸部721と、この軸部721を回転駆動する進退モータ722と、を備える。軸部721は、流出口遮蔽部71のナット部711に螺合されている。
この流出口遮蔽部移動機構72によれば、進退モータ722を駆動することにより軸部721が回転し、流出口遮蔽部71をケース50の軸方向に沿って移動することができる。
【0035】
中空糸膜62は、ケース50の長手方向に沿って延びており、これら中空糸膜62の両端側は、ポッティング部52a、52bを貫通して、外部に露出している。よって、中空糸膜62の一端側は、ケース50の端部流入口53に連通し、他端側は、ケース50の端部流出口54に連通している。
【0036】
中空糸膜62は、内側から外側に至る内径数nm(ナノメートル)の微細な毛管を多数有している。これらの毛管中では、蒸気圧が低下して容易に水分が凝縮し、この凝縮した水分は、毛管現象により吸い出されて中空糸膜を透過する。
【0037】
次に、加湿器24の動作を説明する。
まず、ケース50の端部流入口53に乾燥気体であるエアを導入するとともに、ケース50の外周流入口55に湿潤気体であるエアオフガスを導入する。
【0038】
エアは、端部流入口53から各中空糸膜62の内部に流入し、各中空糸膜62の内側を通流して、端部流出口54から排出される。
一方、エアオフガスは、ケース50の外周流入口55からケース50内に流入し、ケース50内に配置された各中空糸膜62の外側を通流して、外周流出口56から排出される。
【0039】
このように中空糸膜62の内側をエアが通流し、中空糸膜62の外側をエアオフガスが通流すると、これらのガスの間で水分が移動する。
具体的には、中空糸膜62の外側ではエアオフガス中の水分が凝縮し、内側では水分が蒸発する。同時に、中空糸膜62の外側から内側に向けて、外側で凝縮したエアオフガスの水分が毛管現象により供給される。これにより、中空糸膜62の内側を通流するエアの加湿が行われる。つまり、中空糸膜62の内側と外側を通流するガスの水分含有量の差を推進力として、水透過(水分離)が行われる。
【0040】
上述の制御装置30は、供給装置20を制御して、以下の手順で燃料電池10を発電させる(図1)。
すなわち、エアポンプ21を駆動することにより、エア供給路41を介して、燃料電池10のカソード側にエアを供給する。同時に、水素タンク22から、水素供給路43を介して、燃料電池10のアノード側に水素ガスを供給する。
【0041】
燃料電池10に供給された水素ガスおよびエアは、発電に供された後、燃料電池10からアノード側の生成水などの残留水と共に、水素オフガスおよびエアオフガスとして、水素排出路44およびエア排出路42に流入する。
その後、水素オフガスは、希釈器23に流入し、希釈器23においてエアオフガスで希釈されて、外部に排出される。
【0042】
ここで、制御装置30は、燃料電池10に要求する出力に応じて流出口遮蔽部移動機構72を制御することにより、流出口遮蔽部71を移動させて、外周流出口56の開口面積を調整する。
すなわち、図5に示すように、燃料電池10に要求する出力が小さい場合には、燃料電池10内の圧力を低くする。この場合、外周流出口56の開口面積を大きくして、燃料電池10からガスが排出されやすくする。
一方、燃料電池10に要求する出力が大きい場合には、燃料電池10内の圧力を高くする。この場合、外周流出口56の開口面積を小さくして、燃料電池10からガスが排出されにくくする。
【0043】
具体的には、制御装置30は、燃料電池10に要求する出力に応じて、目標とする燃料電池10内の圧力を設定する。そして、この設定した圧力値を中心とする所定範囲に、圧力センサ421で測定される圧力が収まるように、流出口遮蔽部移動機構72を制御する。
【0044】
すなわち、以下の図6のフローチャートに従い、圧力センサ421で測定した圧力値が所定の範囲(第1の圧力値から第2の圧力値までの範囲)に収まるように、流出口遮蔽部71を制御する。
【0045】
ステップS1では、イグニッションがオンされて燃料電池システムが起動し、燃料電池10で発電が開始される。
ステップS2では、圧力センサ421で測定した圧力値が所定の第1の圧力値より高いか否かを判定する。この判定がYESである場合には、ステップS3に移り、流出口遮蔽部71の位置を調整して、外周流出口56の開口面積を増大させる。一方、この判定がNOである場合には、ステップS4に移る。
【0046】
ステップS4では、圧力センサ421で測定した圧力値が所定の第2の圧力値より低いか否かを判定する。この判定がYESである場合には、ステップS5に移り、流出口遮蔽部71の位置を調整して、外周流出口56の開口面積を減少させる。一方、この判定がNOである場合には、ステップS6に移る。
ステップS6では、燃料電池10の発電を継続するか否かを判定する。この判定がYESである場合には、ステップS2に戻り、NOである場合には、ステップS7に移り、燃料電池の発電を終了する。
【0047】
本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)燃料電池10から排出されて中空糸膜62の外側の面を通流したエアオフガスが排出される外周流出口56をケース50に形成し、さらに、この外周流出口56の開口面積を調整可能な流出口面積調整装置70を設けた。よって、流出口面積調整装置70が従来の背圧弁の役割を担うこととなり、背圧弁が不要となるので、燃料電池システム1を小型化できる。
【0048】
(2)流出口遮蔽部71および流出口遮蔽部移動機構72を含んで流出口面積調整装置70を構成したので、簡素な構成で外周流出口56の開口面積を調整できる。
【0049】
(3)燃料電池10に要求する出力に応じて流出口遮蔽部移動機構72を制御する制御装置30を設けた。よって、燃料電池10の要求する出力に応じて、燃料電池10内を適正な圧力に調整して、燃料電池10の発電効率を向上できる。
【0050】
〔第2実施形態〕
図7は、本発明の第2実施形態に係る加湿器24Aの斜視図である。
本実施形態では、加湿器24Aに、ケース50の外周流入口55の開口面積を調整する流入口面積調整手段としての流入口面積調整装置80が設けられている点が、第1実施形態と異なる。
【0051】
流入口面積調整装置80は、ケース50の外周面に設けられた流入口遮蔽部81と、この流入口遮蔽部81を移動させる流入口遮蔽部移動機構82と、を備える。
流入口遮蔽部81は、円環形状であり、ケース50の外周面を覆うように設けられている。これにより、この流入口遮蔽部81は、ケース50の外周流入口55の上を移動可能となっている。
【0052】
流入口遮蔽部移動機構82は、送りねじ機構であり、ねじが刻設された軸部821と、この軸部821を回転駆動する進退モータ822と、を備える。軸部821は、流入口遮蔽部81のナット部811に螺合されている。
この流入口遮蔽部移動機構82によれば、進退モータ822を駆動することにより軸部821が回転し、流入口遮蔽部81をケース50の軸方向に沿って移動することができる。
【0053】
また、制御装置30は、燃料電池10が必要とする加湿量に応じて流入口遮蔽部移動機構82を制御することにより、流入口遮蔽部81を移動させて、外周流入口55の開口面積を調整する。
すなわち、燃料電池が必要とする加湿量が少ない場合には、加湿器24A内のガスの圧力を高くするため、外周流入口55の開口面積を大きくして、加湿器24A内にガスが流入しやすくする。一方、燃料電池が必要とする加湿量が多い場合には、加湿器24A内のガスの圧力を低くして加湿効率を高めるため、外周流入口55の開口面積を小さくして、加湿器24A内にガスが流入しにくくする。
【0054】
本実施形態によれば、上述の(1)〜(3)の効果に加えて、以下のような効果がある。
(4)外周流入口55の開口面積を調整可能な流入口面積調整装置80を設けた。よって、外周流入口55の開口面積を小さくすることにより、加湿器24A内のエアオフガスの圧力を低くできるので、このエアオフガスに含まれる水蒸気量を多くして、加湿器24Aの加湿効率を向上できる。
【0055】
(5)流入口遮蔽部81および流入口遮蔽部移動機構82を含んで流入口面積調整装置80を構成したので、簡素な構成で外周流入口55の開口面積を調整できる。
【0056】
(6)制御装置30により、燃料電池10が必要とする加湿量に応じて流入口遮蔽部移動機構82を制御した。よって、燃料電池10が必要とする加湿量に応じて、加湿器24A内を適正な圧力に調整して、燃料電池10の発電効率を向上できる。
【0057】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、上述の各実施形態では、加湿器24をカソード電極側に設けたが、これに限らず、MEA膜の材質によっては、アノード電極側に取り付けてもよい。
また、上述の各実施形態では、膜体を中空糸膜62としたが、これに限らず、平板状の平膜としてもよい。
また、上述の各実施形態では、加湿器24、24Aを円柱形状としたが、これに限らず、直方体形状としても略箱状のケースとして適している。
【0058】
また、上述の各実施形態では、筒部51の外周面に端部流入口53を設けて、筒部51の外周側からエアオフガスを導入したが、これに限らない。すなわち、エアオフガスの通流する配管を筒部51の内部に設けて、筒部51の内側からエアオフガスを導入する、インナー型の加湿器としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の第1実施形態に係る加湿器が適用された燃料電池システムのブロック図である。
【図2】前記実施形態に係る加湿器の斜視図である。
【図3】前記実施形態に係る加湿器の断面図である。
【図4】前記実施形態に係る加湿器のX−X断面図およびY−Y断面図である。
【図5】前記実施形態に係る加湿器について、燃料電池内の圧力と外周流出口の開口面積との関係を示す図である。
【図6】前記実施形態に係る加湿器の制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図7】本発明の第2実施形態に係る加湿器の斜視図である。
【符号の説明】
【0060】
10 燃料電池
24、24A 加湿器
30 制御装置(制御部)
50 ケース
56 外周流出口(流出口)
55 外周流入口(流入口)
62 中空糸膜(膜体)
70 流出口面積調整装置(流出口面積調整手段)
71 流出口遮蔽部
72 流出口遮蔽部移動機構
80 流入口面積調整装置(流入口面積調整手段)
81 流入口遮蔽部
82 流入口遮蔽部移動機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略箱状のケースと、当該ケースに収納された複数の膜体と、を備え、当該膜体を介して燃料電池から排出されたガスと、前記燃料電池に供給されるガスと、の間で水分を移動させる加湿器であって、
前記ケースには、前記燃料電池から排出されて前記膜体を通流したガスが排出される流出口が形成され、
当該流出口の開口面積を調整可能な流出口面積調整手段を備えることを特徴とする加湿器。
【請求項2】
前記流出口面積調整手段は、前記ケースの流出口の上を移動可能な流出口遮蔽部と、
当該流出口遮蔽部を移動させる流出口遮蔽部移動機構と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の加湿器。
【請求項3】
前記ケースには、前記燃料電池から排出されたガスが流入する流入口が形成され、
当該流入口の開口面積を調整可能な流入口面積調整手段を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の加湿器。
【請求項4】
前記流入口面積調整手段は、前記ケースの流入口の上を移動可能な流入口遮蔽部と、
当該流入口遮蔽部を移動させる流入口遮蔽部移動機構と、を備えることを特徴とする請求項3に記載の加湿器。
【請求項5】
前記流出口面積調整手段は、前記燃料電池に要求する出力に応じて前記流出口遮蔽部移動機構を制御する制御部をさらに備えることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の加湿器。
【請求項6】
前記流入口面積調整手段は、前記燃料電池が必要とする加湿量に応じて前記流入口遮蔽部移動機構を制御する制御部をさらに備えることを特徴とする請求項3から5のいずれかに記載の加湿器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−146809(P2010−146809A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−321281(P2008−321281)
【出願日】平成20年12月17日(2008.12.17)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】