説明

燃料電池システム

【課題】緊急停止時における燃料極の劣化を抑制可能な燃料電池システムを提供する。
【解決手段】燃料電池システムが、原燃料の供給を送出ポンプ4の吸込側で遮断可能な供給遮断弁1と、供給遮断弁1と送出ポンプ4との間に設けられ、原燃料を吸着可能であり且つ送出ポンプ4が作動すると吸着している原燃料を放出可能な吸着剤を有する吸着器3と、を備え、送出ポンプ4は、当該送出ポンプ4が作動していない間は吸込側と送出側との間での原燃料ガスの流通が遮断される構造であり、燃料電池システムの緊急停止の際に、制御手段11は、供給遮断弁1を閉じると共に、送出ポンプ4と改質水ポンプ5と空気ブロア8の作動を停止させて燃料電池14に対する燃料ガス及び酸化剤ガスの供給を停止する緊急停止制御を行った後、送出ポンプ4と改質水ポンプ5とを作動させる供給停止時作動制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改質水ポンプによって供給される改質水を気化して水蒸気を生成する気化器と、送出ポンプによって供給される原燃料及び前記気化器で生成される水蒸気を用いて燃料ガスを生成する改質器と、前記改質器から供給される燃料ガスとブロアによって供給される酸化剤ガスとを反応させて発電する燃料電池と、前記燃料電池の運転を制御する制御手段と、を備える燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
固体酸化物型燃料電池(SOFC)は、酸素イオンを伝導する固体電解質を間に挟むように、燃料ガス(水素、一酸化炭素等)が供給される燃料極及び酸化剤ガス(空気、酸素等)が供給される空気極を設けて構成される。固体電解質の材料としては一般的にはイットリアをドープしたジルコニアが用いられており、700℃から1000℃の高温で、燃料ガスと酸化剤ガスとを電気化学反応させて発電が行われる。固体酸化物形燃料電池は、他の燃料電池システムやガスエンジン等に比べて、特に高発電効率での発電が可能なことから、有望な発電技術として開発が行われている。
このような燃料電池を備えた燃料電池システムでは、セルスタック(セルスタックを構成する燃料電池セル)から排出された、反応に用いられなかった余剰の燃料ガスと酸化剤ガスとを燃焼させ、その燃焼熱を、燃料電池のセルスタックを高温に保つために利用すること、改質器での水蒸気改質反応で必要な熱に利用することなども行われている。
【0003】
このような燃料電池システムの停止方法としては、燃料ガス及び酸化剤ガスの供給を即座に停止させるのではなく、燃料ガス及び酸化剤ガスの流量を減少させながら供給することにより、燃料極を還元状態に保持しつつ、セルスタック温度を低下させるような方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2006−294508号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
但し、燃料電池システムにおいて異常が発生した場合には、特許文献1に記載のように燃料ガス及び酸化剤ガスを流し続ける訳にはいかず、燃料ガス及び酸化剤ガスの供給を供給遮断弁などを用いて物理的に即座に停止する必要がある。このような緊急停止を行った場合、セルスタックの温度が高い状態のままで燃料ガス及び酸化剤ガスの供給が停止されるため、セルスタックの劣化を促進してしまう可能性がある。特に、上述したようなセルスタックから排出された余剰の燃料ガスと酸化剤ガスとを燃焼させる構成の燃料電池システムでは、供給遮断弁を閉じた後、セルスタック内に残留する酸化剤ガスがその燃焼部を介してセルスタックの内部の燃料ガスの供給系統に侵入する可能性がある。その場合、セルスタックを構成する燃料電池セルの燃料極が酸化剤ガスによって酸化され、本来の性能を発揮できなくなるおそれがある。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、緊急停止時における燃料電池の劣化を抑制可能な燃料電池システムを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明に係る燃料電池システムの特徴構成は、改質水ポンプによって供給される改質水を気化して水蒸気を生成する気化器と、送出ポンプによって供給される原燃料及び前記気化器で生成される水蒸気を用いて燃料ガスを生成する改質器と、前記改質器から供給される燃料ガス及びブロアによって供給される酸化剤ガスを反応させて発電する燃料電池と、前記燃料電池の運転を制御する制御手段と、を備える燃料電池システムであって、
前記原燃料の供給を前記送出ポンプの吸込側で遮断可能な供給遮断弁と、
前記供給遮断弁と前記送出ポンプとの間に設けられ、原燃料を吸着可能であり且つ前記送出ポンプが作動すると吸着している原燃料を放出可能な吸着剤を有する吸着器と、を備え、
前記送出ポンプは、当該送出ポンプが作動していない間は吸込側と送出側との間での原燃料ガスの流通が遮断される構造であり、
前記燃料電池システムを緊急停止する際に、前記制御手段は、前記供給遮断弁を閉じると共に、前記送出ポンプと前記改質水ポンプと前記ブロアの作動を停止させることで前記燃料電池に対する燃料ガス及び酸化剤ガスの供給を停止する緊急停止制御を行った後、前記送出ポンプと前記改質水ポンプとを作動させる供給停止時作動制御を行うように構成されている点にある。
【0008】
上記特徴構成によれば、供給遮断弁の下流側に上記吸着器が設けられているので、供給遮断弁が閉じられたとしても、供給停止時作動制御により、吸着器に吸着されている原燃料を改質器へと供給できる。即ち、緊急停止制御が行われたとしても、上記送出ポンプ及び上記改質水ポンプを作動させることで改質器において水蒸気改質反応を行わせることができ、その反応により生成された燃料ガスを燃料電池へ供給できる。その結果、燃料電池の内部の燃料ガスの供給系統にある程度の圧力で燃料ガスを供給することができるので、酸化剤ガスが燃料ガスの供給系統に侵入しないようにすることができる。
従って、緊急停止時における燃料電池の劣化を抑制可能な燃料電池システムを提供できる。
【0009】
本発明に係る燃料電池システムの特徴構成は、前記制御手段は、前記供給停止時作動制御において、前記送出ポンプと前記改質水ポンプとを間欠的に作動させるように制御する点にある。
【0010】
上記特徴構成によれば、吸着器に吸着されている原燃料の量には限りがあるが、送出ポンプを連続的に作動させる場合に比べて、吸着器に吸着されている原燃料を長期間にわたって改質器へ供給できる。その結果、上記供給停止時作動制御を長期間にわたって実施できる。
【0011】
本発明に係る燃料電池システムの特徴構成は、前記燃料電池の内部の温度を検出する温度検出手段を備え、
前記制御手段は、前記温度検出手段により検出される前記燃料電池の内部の温度が所定温度以下になるまで、前記供給停止時作動制御を行うように構成されている点にある。
【0012】
上記特徴構成によれば、上記供給停止時作動制御が、例えば燃料極に酸化剤ガスが触れたとしても燃料極の酸化反応が容易に進行しないような所定温度以下になるまで行うことで、燃料電池の劣化を効果的に抑制できる。
【0013】
本発明に係る燃料電池システムの特徴構成は、前記吸着器は、前記原燃料に含まれる硫黄化合物を除去する脱硫器内に具備して構成されている点にある。
【0014】
上記特徴構成によれば、吸着器は、前記原燃料に含まれる硫黄化合物を除去する脱硫器内に具備して構成されているので、吸着器と脱硫器とを別個に備える場合に比べて、燃料電池システムを小型にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に図面を参照して本発明に係る燃料電池システムについて説明する。
図1は、燃料電池システムの構成を示す図である。この燃料電池システムにおいて、固体酸化物型燃料電池(SOFC)である燃料電池本体(本発明でいう「燃料電池」)10は、供給される燃料ガス及び酸化剤ガスを反応させて発電する複数の燃料電池セル(図示せず)を配列してなるセルスタック(図示せず)を有する。燃料ガスとしては水素、一酸化炭素などを用いることができ、酸化剤ガスとしては酸素(空気)を用いることができる。燃料ガスは各燃料電池セルの燃料極(図示せず)に供給され、酸化剤ガスは各燃料電池セルの空気極(図示せず)に供給される。燃料極と空気極との間には、イットリアをドープしたジルコニアなどで構成される固体酸化物電解質(図示せず)が設けられる。
【0016】
本発明に係る燃料電池システムは、改質水ポンプ5によって供給される改質水を気化して水蒸気を生成する気化器6と、送出ポンプ4によって供給される原燃料及び気化器6で生成される水蒸気を用いて燃料ガスを生成する改質器7と、改質器7から供給される燃料ガス及び空気ブロア8によって供給される酸化剤ガスを反応させて発電する燃料電池本体10と、燃料電池本体10の運転を制御する制御手段11とを備える。燃料電池システムは、更に、原燃料の供給を送出ポンプ4の吸込側で遮断可能な供給遮断弁1と、供給遮断弁1と送出ポンプ4との間に設けられ、原燃料を吸着可能であり且つ送出ポンプ4が作動すると吸着している原燃料を放出可能な吸着剤を有する吸着器3とを備える。
【0017】
具体的には、図1に示す例では、原燃料として、メタンを主成分とする天然ガス(都市ガス)を用いている。そして、原燃料は送出ポンプ4によって脱硫器2に引き込まれ、吸着器3を経由して改質器7に供給される。脱硫器2は、原燃料中に含まれる硫黄化合物を除去する。吸着器3には、原燃料であるメタンなどの炭化水素ガスを吸着する性能を有する吸着剤が収容されている。吸着剤としては、活性炭、ゼオライトなどを用いることができる。
送出ポンプ4は、当該送出ポンプ4が作動していない間は吸込側と送出側との間での原燃料ガスの流通が遮断される構造のものである。例えば、吸込側と送出側との間がダイヤフラム膜によって隔てられるダイヤフラム式ポンプを利用できる。送出ポンプ4から改質器7に供給される原燃料としてのメタンの供給量は、流量センサ9によって検出可能である。
【0018】
燃料電池本体10は、上述したように、改質器7から供給される燃料ガス及び空気ブロア8によって供給される酸化剤ガスを反応させて発電を行う。反応に用いられなかった余剰の燃料ガス及び酸化剤ガスは、燃料電池本体10に併設されるバーナなどの燃焼器13により燃焼される。尚、燃焼器13は、燃料電池本体10の外部に併設される場合に限定されず、燃料電池本体10の内部に収容されていてもよい。燃焼器13で発生する燃焼熱は、燃料電池本体10のセルスタックを高温に保つため、改質器7での水蒸気改質反応で必要な熱に利用するためなどに利用できる。
【0019】
燃料電池本体10には、セルスタックの所定部位の温度を検出する温度検出手段12が設けられている。なお、温度検出手段12は、セルスタックの所定部位の温度を直接的または間接的に検出できれば、セルスタックの近傍等の燃料電池本体10の内部や、燃料電池本体10の外面等にも設けることができる。なお、以下の説明においては温度検出手段12を燃料電池本体10の内部(セルスタック近傍)に設け、温度検出手段12が測定する温度を内部温度という。この内部温度は、これまで説明してきた燃料電池の内部の温度のことである。
【0020】
次に、燃料電池システムの内部で何らかの異常が発生し、燃料電池システムを緊急停止する際に制御手段11が行う制御について説明する。図2は、制御手段11が行う緊急停止制御及びその後の供給停止時作動制御での燃料電池本体10の内部温度、原燃料流量及び改質水流量の時間的な変化を示すグラフである。
図2に示すように、制御手段11は、燃料電池システムの内部で何らかの異常が発生し、燃料電池システムを緊急停止する場合に、時刻t1において供給遮断弁1を閉じると共に、改質器7に原燃料を供給するための送出ポンプ4と、改質器7に水蒸気を供給するための(即ち、気化器6に改質水を供給するための)改質水ポンプ5と、酸化剤ガスを供給する空気ブロア8との作動を停止させる緊急停止制御を行う。尚、図2には示していないが、空気ブロア8の停止タイミングは、送出ポンプ4及び改質水ポンプ5の停止タイミングと同時でよい。制御手段11は、上述した送出ポンプ4、改質水ポンプ5及び空気ブロア8の停止制御と同時もしくはこれよりも早く、インバータなどの電力変換器(図示せず)を用いて、燃料電池本体11から取り出す発電電流もゼロとなるような制御を行う。
【0021】
このように、緊急停止制御において送出ポンプ4及び改質水ポンプ5及び空気ブロア8の作動が停止されることで、燃料電池本体10への燃料ガス及び酸化剤ガスの供給が停止される。その結果、燃料ガス及び酸化剤ガスを燃焼していた燃焼器13での発熱量や、発電に伴うジュール熱などの発熱量がゼロになる。
この状態で、燃料電池本体を囲う筐体の外壁などから放熱されることにより、燃料電池本体10の内部温度も減少し始める。
【0022】
その後、図2に示すように制御手段11は、時刻t1において緊急停止制御を行った後、送出ポンプ4と改質水ポンプ5とを作動させる供給停止時作動制御を行う。尚、制御手段11は、供給停止時作動制御において、空気ブロア8を作動させない。本発明に係る燃料電池システムでは、供給遮断弁1の下流側に吸着器3が設けられているので、供給遮断弁1が閉じられたとしても、送出ポンプ4を作動させることで吸着器3に吸着されている原燃料を改質器7へと供給できる。よって、緊急停止制御が行われたとしても、送出ポンプ4及び改質水ポンプ5を作動させることで改質器7において水蒸気改質反応を行わせることができ、その反応により生成された燃料ガスを燃料電池本体10へ供給できる。その結果、燃料電池本体10の内部の燃料ガスの供給系統にはある程度の圧力で燃料ガスを供給することができるので、酸化剤ガスが燃焼器13を経由して燃料電池本体10の燃料ガスの供給系統に侵入しないようにすることができる。そして、燃料電池本体10のセルスタックを構成する燃料電池セルの燃料極が酸化剤ガスによって酸化されないようにすることができる。
これに対して従来は、緊急停止制御を行った場合、それ以降、送出ポンプ4及び改質水ポンプ5などは何ら作動されることはなかった。
【0023】
更に、図2に示すように、制御手段11は、供給停止時作動制御において、送出ポンプ4と改質水ポンプ5とを間欠的に作動させる。吸着器3に吸着されている原燃料の量には限りがあるが、送出ポンプ4と改質水ポンプ5とを間欠的に作動させることで、送出ポンプ4を連続的に作動させる場合に比べて、吸着器3に吸着されている原燃料を長期間にわたって改質器7へ供給できる。その結果、上記供給停止時作動制御を長期間にわたって実施できる。
更に、制御手段11は、温度検出手段12により検出される燃料電池本体10の内部の温度が、燃料極に酸化剤ガスが触れたとしても燃料極の酸化反応が容易に進行しないような所定温度以下になるまで上記供給停止時作動制御を行なうため、燃料極の劣化を効果的に抑制できる。
【0024】
<別実施形態>
上記実施形態では、吸着器3と脱硫器2とが別々に構成される例について説明したが、図3に示すように、吸着器(吸着剤3a)は、脱硫器2内に具備して(即ち、脱硫器2が脱硫用触媒と吸着剤3aとを共に収容して)構成されていてもよい。その場合、吸着器3と脱硫器2とを別個に備える場合に比べて、燃料電池システムを小型にできるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】燃料電池システムの構成を示す図
【図2】燃料電池本体の内部温度、原燃料流量及び改質水流量の時間的な変化を示すグラフ
【図3】別実施形態の燃料電池システムの構成を示す図
【符号の説明】
【0026】
1 供給遮断弁
2 脱硫器
3 吸着器
4 送出ポンプ
5 改質水ポンプ
6 気化器
7 改質器
8 空気ブロア
10 燃料電池本体(燃料電池)
11 制御手段
12 温度検出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
改質水ポンプによって供給される改質水を気化して水蒸気を生成する気化器と、送出ポンプによって供給される原燃料及び前記気化器で生成される水蒸気を用いて燃料ガスを生成する改質器と、前記改質器から供給される燃料ガス及びブロアによって供給される酸化剤ガスを反応させて発電する燃料電池と、前記燃料電池の運転を制御する制御手段と、を備える燃料電池システムであって、
前記原燃料の供給を前記送出ポンプの吸込側で遮断可能な供給遮断弁と、
前記供給遮断弁と前記送出ポンプとの間に設けられ、原燃料を吸着可能であり且つ吸着している原燃料を前記送出ポンプが作動する動作状態で放出可能な吸着剤を有する吸着器と、を備え、
前記送出ポンプは、当該送出ポンプが作動していない間は吸込側と送出側との間での原燃料ガスの流通が遮断される構造であり、
前記燃料電池システムを緊急停止する際に、前記制御手段は、前記供給遮断弁を閉じると共に、前記送出ポンプと前記改質水ポンプと前記ブロアの作動を停止させることで前記燃料電池に対する燃料ガス及び酸化剤ガスの供給を停止する緊急停止制御を行った後、前記送出ポンプと前記改質水ポンプとを作動させる供給停止時作動制御を行うように構成されていることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
前記制御手段は、前記供給停止時作動制御において、前記送出ポンプと前記改質水ポンプとを間欠的に作動させるように制御することを特徴とする請求項1記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記燃料電池の内部の温度を検出する温度検出手段を備え、
前記制御手段は、前記温度検出手段により検出される前記燃料電池の内部の温度が所定温度以下になるまで、前記供給停止時作動制御を行うように構成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記吸着器は、前記原燃料に含まれる硫黄化合物を除去する脱硫器内に具備して構成されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−27579(P2010−27579A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−191337(P2008−191337)
【出願日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】