説明

燃料電池システム

【課題】改質器から燃料電池セルへ向けて燃料ガスを供給する際の燃料電池セルへ与える熱影響を低減させることが可能な燃料電池システムを提供すること。
【解決手段】このような燃料電池システムを構成する燃料電池モジュールは、列状配置された燃料電池セル4と配管6Bとの間に、配管6Bと列状配置された燃料電池セル4との間の熱の授受を分散するための温度勾配緩和手段としての温度緩和部材71が設けられ、温度緩和部材71は、燃料電池セル4の一端側(上端側)から他端側(下端側)に至るように且つ列状配置方向(奥行方向)に沿うように配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の燃料電池セルを備える燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、このような燃料電池システムの一例として、下記特許文献1に記載のものが提案されている。下記特許文献1に記載の燃料電池システムは、複数の燃料電池セルと改質器とを備えるものである。より具体的には、同文献図4に示されるように、ハウジング内に複数の燃料電池セルを配置してセルスタックとなし、セルスタックの上方には改質器が設けられている。改質器には被改質ガスが供給され、改質器内で改質されて燃料ガスとされた後、セルスタック下方の燃料ガスマニホールドに供給される。燃料ガスマニホールドに供給された燃料ガスは各燃料電池セルに供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−158527号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、改質器によって被改質ガスの改質が行われる場合、改質器内の改質反応は発熱反応である部分酸化改質反応や、熱自立反応であるオートサーマル改質反応や、吸熱反応である水蒸気改質反応が進行する。部分酸化改質反応の場合は、改質器から供給される燃料ガスは高温のガスとなっており、改質器から燃料ガスマニホールドへと燃料ガスを搬送する燃料ガス供給管も高温状態となっている。オートサーマル改質反応の場合は、熱自立反応であるもののセルスタック上部でオフガスが燃焼する燃焼熱を改質器が受け取って改質反応を進行させるため、改質器から供給される燃料ガスはやはり高温のガスとなっており、改質器から燃料ガスマニホールドへと燃料ガスを搬送する燃料ガス供給管も高温状態となっている。水蒸気改質反応の場合は、吸熱反応であるもののやはりセルスタック上部でオフガスが燃焼する燃焼熱を改質器が受け取って改質反応を進行させるため、改質器から供給される燃料ガスはやはり高温のガスとなっており、改質器から燃料ガスマニホールドへと燃料ガスを搬送する燃料ガス供給管も高温状態となっている。従って、空間効率を考慮してセルスタックの近傍に燃料ガス供給管を配設した場合、燃料ガス供給管の高温化がセルスタックに与える影響を考慮しなければならない。
【0005】
これに対して上記特許文献1に記載の技術では、改質器に被改質ガスを供給する被改質ガス供給管と、改質器から燃料ガスマニホールドへ燃料ガスを供給する燃料ガス供給管とを、セルスタックの集合体側面に交互に配設し、比較的低温の被改質ガス供給管及び比較的高温の燃料ガス供給管からの影響を中和させ、セルスタック集合体の周囲における温度差を低減するものとしている(上記特許文献1の段落番号0067〜0068参照)。
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術では、各被改質ガス供給管に最も近接した燃料電池セルや、各燃料ガス供給管に最も近接した燃料電池セルは、それぞれ被改質ガス供給管や燃料ガス供給管との熱の授受を直接行うものであって、それらからの熱的な影響は避けられず、燃料電池セルの発電性能の均質化は図れない場合も想定される。また、上記特許文献1に記載の技術は、複数の改質器を設けて、複数の被改質ガス供給管及び複数の燃料ガス供給管を設けることが必要となるため、燃料電池システムとしては複雑なものとなってしまい、部品点数の増加や重量の増大が避けられない。
【0007】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、燃料電池セル及び改質器を備える燃料電池システムであって、改質器から燃料電池セルへ向けて燃料ガスを供給する際の燃料電池セルへ与える熱影響を低減させることが可能な燃料電池システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明に係る燃料電池システムは、燃料ガスと酸化剤ガスとが一端側から他端側へと流れることにより作動する複数の燃料電池セルと、前記複数の燃料電池セルの他端側に対向配置され、被改質ガスを改質して燃料ガスとする改質器と、前記改質器に被改質ガスを供給する流入配管部と、前記改質器から燃料ガスを前記複数の燃料電池セルの一端へ送り出す流出配管部とを有するガス配管と、を備える燃料電池システムであって、前記燃料電池セルの他端と前記改質器との間に、前記複数の燃料電池セルからの燃料オフガスと酸化剤オフガスとが混合して燃焼する燃焼部が形成され、前記改質器は前記燃焼部からの熱を受けて前記被改質ガスの改質を行い、前記複数の燃料電池セルの少なくとも一部が列状に配置され、当該列状配置された燃料電池セルと所定間隔をおいて且つ当該列状配置された燃料電池セルが延びる方向に沿って前記流出配管部が配置されており、前記列状配置された燃料電池セルと前記流出配管部との間に、前記流出配管部と前記列状配置された燃料電池セルとの間の熱の授受を分散するための温度勾配緩和手段が設けられ、当該温度勾配緩和手段は、前記燃料電池セルの一端側から他端側に至るように且つ列状配置方向に沿うように配置されていることを特徴とする。
【0009】
本発明では、流出配管部と燃料電池セルとの間に温度勾配緩和手段を設けることで、列状配置された燃料電池セルと流出配管部との間の熱の授受を分散することが可能となり、簡単な構成で流出配管部から燃料電池セルへの局所的な熱影響を緩和することができる。例えば、一の改質器から延出する一の流出配管部を構成したとしても、その一本の流出配管部から列状配置された燃料電池セルへの局所的な熱影響を緩和することができる。更に、温度勾配緩和手段は、燃料電池セルの一端側から他端側に至るように且つ列状配置方向に沿うように配置されているので、流出配管部側に臨む燃料電池セルそれぞれと流出配管部との間に温度勾配緩和手段が介在するように構成することができる。従って、流出配管部から燃料電池セルへと伝わる熱は温度勾配緩和手段で調整され、その結果、温度勾配が緩和された熱が各燃料電池セルへと伝えられる。そのため、流出配管部から燃料電池セルへの局所的な熱影響を排除することができる。
【0010】
また、本発明に係る燃料電池システムでは、前記温度勾配緩和手段は、前記列状配置された燃料電池セルの一方の端に配置された燃料電池セル近傍から他方の端に配置された燃料電池セル近傍まで至るように、列状配置方向に沿って配置されていることも好ましい。
【0011】
本発明のこの好ましい態様では、温度勾配緩和手段が、列状配置された燃料電池セルの一方の端に配置された燃料電池セル近傍から他方の端に配置された燃料電池セル近傍まで至るように配置されているので、流出配管部と一方の端に配置された燃料電池セルとの間にも、流出配管部と他方の端に配置された燃料電池セルとの間にも、実質的に温度勾配緩和手段が介在するように配置することができる。従って、流出配管部から燃料電池セルへと伝わる熱を確実に温度勾配緩和手段で調整し、その結果、温度勾配が緩和された熱を各燃料電池セルへと伝えることができる。
【0012】
また、本発明に係る燃料電池システムでは、前記温度勾配緩和手段は、前記流出配管部及び前記改質器の少なくとも一方に繋げられることで支持されていることも好ましい。
【0013】
本発明のこの好ましい態様では、別途固定用の部材を設けることなく温度勾配緩和手段を固定することができるので、流出配管部から燃料電池セルへ伝わる熱に対して新たな外乱要因を与えることを回避することができ、温度勾配緩和手段の機能を確実に発揮させることができる。
【0014】
また、本発明に係る燃料電池システムでは、前記複数の燃料電池セルの少なくとも一部が列状配置され、当該列状配置された燃料電池セルと所定間隔をおいて且つ当該列状配置された燃料電池セルが延びる方向に沿って前記流入配管部が配置され、当該列状配置された燃料電池セルと前記流入配管部との間に、当該列状配置された燃料電池セルと前記流入配管部との間の熱の授受を分散するための第二の温度勾配緩和手段が設けられていることも好ましい。
【0015】
本発明のこの好ましい態様では、流入配管部と燃料電池セルとの間に第二の温度勾配緩和手段を設けることで、列状配置された燃料電池セルと流入配管部との間の熱の授受を分散することが可能となり、簡単な構成で流入配管部から燃料電池セルへの局所的な熱影響を緩和することができる。更に、本発明のこの好ましい態様では、複数の燃料電池セル全体の熱バランスを良好に保つことができるものである。流入配管部は改質器へと被改質ガスを供給する部分であり、流出配管部は改質器から燃料ガスを燃料電池セルへと供給する部分であるため、流入配管部は低温傾向にあり流出配管部は高温傾向にある。そのため、複数の燃料電池セルを行列配置し、一方の列状配置された燃料電池セル側に流入配管部を配置し、他方の列状配置された燃料電池セル側に流出配管部を配置すると、燃料電池セル全体としては比較的低温の流入配管部と比較的高温の流出配管部とに挟まれて温度バランスが悪化することが想定される。このように想定される状態に対して本発明のこの好ましい態様では、複数の燃料電池セルに対して流出配管部との間に温度勾配緩和手段を設ける一方で、流入配管部との間にも第二の温度勾配緩和手段を設けることで、流出配管部及び流入配管部と複数の燃料電池セルとの間の熱の授受を緩慢なものとすることができ、複数の燃料電池セル全体の温度をより均一なものとすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、改質器から燃料電池セルへ向けて燃料ガスを供給する際の燃料電池セルへ与える熱影響を低減させることが可能な燃料電池システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本願発明の実施形態に係る燃料電池モジュールを示す正面図である。
【図2】本願発明の実施形態に係る燃料電池モジュールを示す斜視図である。
【図3】本願発明の実施形態に係る燃料電池モジュールを示す側面図である。
【図4】本願発明の実施形態に係る燃料電池モジュールを構成する燃料電池セルユニットを説明するための図である。
【図5】図3において、温度緩和部材が配置されている近傍を平面視した模式的な図である。
【図6】図1〜図3に示す燃料電池モジュールを含む燃料電池システムの概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0019】
図1は、本発明に係る燃料電池システムを構成する燃料電池モジュールの一実施形態を示す正面図である。また、図2は、カバー部材を外して示す燃料電池モジュールの斜視図であり、図3は、カバー部材を外して示す燃料電池モジュールの側面図である。以下の説明では、図1〜図3を適宜参照しながら説明する。
【0020】
図1に示すように、燃料電池モジュールFCMは、カバー部材1とベース部材2とによって密閉される空間内に10個の燃料電池セルスタック400を並べて配置している。従って、この燃料電池モジュールFCMでは、カバー部材1とベース部材2とによって、燃料電池セル4等が内包される容器が形成されている。各燃料電池セルスタック400には、16個の燃料電池セル4が2列になって配置されている。これらの燃料電池セル4は、電気的に直列に接続されている。
【0021】
各燃料電池セル4は、管状であり、燃料電池セル4の管内を燃料電池セル4の一端(図1〜3においては、図中下方の端)から他端(図1〜3においては、図中上方の端)へと流れるガスと、その管外を一端から他端へと流れるガスの作用により作動する。本実施形態では、燃料電池セル4の管内を流れるガスは、水素又は炭化水素燃料等を改質した改質ガス等の燃料ガスであり、燃料電池セル4の管外を流れるガスは、酸素を含む空気等の酸化剤ガスである。
【0022】
燃料電池セルユニット30について、図4を参照しながら説明する。図4は、燃料電池セルユニット30を示す部分断面図である。図4に示すように、燃料電池セルユニット30は、燃料電池セル4によって形成され且つ上下方向に延びる管状構造体であり、円筒形の燃料電池セル4と、燃料電池セル4の一方の端部4aに取付けられた内側電極端子40と、他方の端部4bに取付けられた外側電極端子42と、を有している。
【0023】
燃料電池セル4は、円筒形の内側の電極層44と、円筒形の外側の電極層48と、これらの電極層44、48の間に配置された円筒形の電解質層46と、内側の電極層44の内側に構成される貫通流路50とを有している。また、燃料電池セル4の一方の端部4aに、内側の電極層44が電解質層46及び外側の電極層48に対して露出した内側電極露出周面44aと、電解質層46が外側の電極層48に対して露出した電解質露出周面46aとが設けられている。燃料電池セル4の他方の端部4bは、外側の電極層48が露出した外側電極露出周面48aによって構成されている。
【0024】
内側の電極層44は、例えば、Niと、CaやY、Sc等の希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたジルコニアとの混合体、Niと、希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたセリアとの混合体、Niと、Sr、Mg、Co、Fe、Cuから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンガレートとの混合体、の少なくとも一種から形成される。電解質層46は、例えば、Y、Sc等の希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたジルコニア、希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたセリア、Sr、Mgから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンガレート、の少なくとも一種から形成される。外側の電極層48は、例えば、Sr、Caから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンマンガナイト、Sr、Co、Ni、Cuから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンフェライト、Sr、Fe、Ni、Cuから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンコバルタイト、銀、などの少なくとも一種から形成される。この場合、内側の電極層44が燃料極になり、外側の電極層48が空気極になる。内側の電極層44の厚さは、例えば、1mmであり、電解質層46の厚さは、例えば、30μmであり、外側の電極層48の厚さは、例えば、30μmであり、その外径は、例えば、1〜10mmである。
【0025】
内側電極端子40は、内側電極外周面44aを全周にわたって外側から覆うように配置され且つそれと電気的に接続された本体部分40aと、本体部分40aから燃料電池セル4の長手方向に延びる管状部分40bとを有している。本体部分40a及び管状部分40bは、円筒形であり且つ同心に配置され、管状部分40bの管径は、本体部分40aの管径よりも細くなっている。管状部分40bは、貫通流路50と連通し且つ外部と通じる接続流路40cを有している。本体部分40aと管状部分40bとの間の段部40dは、内側の電極層44の端面44bと当接している。
【0026】
外側電極端子42は、外側電極外周面48を全周にわたって外側から覆うように配置され且つそれと電気的に接続された本体部分42aと、本体部分42aから燃料電池セル4の長手方向に延びる管状部分42bとを有している。本体部分42a及び管状部分42bは、円筒形であり且つ同心であり、管状部分42bの管径は、本体部分42aの管径よりも細くなっている。管状部分42bは、貫通流路50と連通し且つ外部と通じる接続流路42cを有している。本体部分42aと管状部分42bとの間の段部42dは、環状の絶縁部材52を介して外側の電極層48、電解質層46及び内側の電極層44の端面44cと当接している。
【0027】
内側電極端子40の全体形状と外側電極端子42の全体形状とは同一である。また、内側電極端子40と燃料電池セル4、及び、外側電極端子42と燃料電池セル4とは、その全周にわたって導電性のシール材54によってシールされ且つ固定されている。シール材54は、例えば、銀、銀とガラスの混合物、金、ニッケル、銅、チタンなどを含む各種ロウ材である。
【0028】
内側電極端子40の接続流路40c、燃料電池セル4の貫通流路50、及び外側電極端子42の接続流路42cは、燃料電池セルユニット30の管内流路30cを構成する。
【0029】
図1〜図3に戻り、燃料電池セルスタック400について説明する。燃料電池セルスタック400は、16本の燃料電池セルユニット30と、上支持板400aと、下支持板400bと、接続部材(図に明示しない)と、外部端子(図に明示しない)とを備えている。
【0030】
上支持板400a及び下支持板400bは矩形であり、それぞれ、燃料電池セルユニット30を2行×8列で支持するように燃料電池セルユニット30の管状部分40b、42bに嵌合する貫通孔(図に明示しない)を有している。上支持板400a及び下支持板400bは、電気絶縁性材料で形成されており、例えば、耐熱性のセラミックスで形成されている。具体的には、アルミナ、ジルコニア、スピネル、フォルステライト、マグネシア、チタニアなどを用いることが好ましい。
【0031】
16本の燃料電池セルユニット30は、それらが電気的に直列に接続されるように配列されている。詳細には、燃料電池セルユニット30は、隣接した燃料電池セルユニット30の内側電極端子40が交互に上側及び下側に配置されるように配列されている。更に、16本の燃料電池セルユニット30を電気的に直列に接続するための接続部材(図に明示しない)が設けられている。接続部材(図に明示しない)は、隣接した1つの内側電極端子40と1つの外側電極端子42とを電気的に接続する。直列に接続された16本の燃料電池セルユニット30の両端部の内側電極端子40及び外側電極端子42にはそれぞれ、外部と電気的な接続を行うための外部端子(図に明示しない)が設けられている。接続部材(図に明示しない)、外部端子(図に明示しない)は、例えば、ステンレス鋼、ニッケル基合金、クロム基合金などの耐熱金属や、ランタンクロマイトなどのセラミック材料で形成される。各燃料電池セルスタック400の外部端子(図に明示しない)は電気的に直列に接続されていて、その一方の端は電極棒13に接続され、他方の端は図示しない電極棒に接続されている。
【0032】
上述したように、燃料電池セルスタック400において、燃料電池セルユニット30の内側電極端子40が設けられている端部4aと外側電極端子42が設けられている端部4bとは上下交互になるように配置されている。従って、燃料電池セル4の内外におけるガスの流れを説明した際の、一端とは燃料電池セル4の端部4a及び端部4bの内、ガスタンク3側に配置される端部を指し示すものであり、他端とは燃料電池セル4の端部4a及び端部4bの内、改質器5側に配置される端部を指し示すものである。
【0033】
カバー部材1は、正面側の側壁(図示しない)と、燃料電池スタックセルスタック400の配列方向の側壁101,102と、背面側の側壁103と、天井104とによって直方体状に形成されている。側壁101の下端部には、フランジ部1aが形成されている。カバー部材1のフランジ部1aをベース部材2に当接させることで、カバー部材1とベース部材2とによって密閉される空間が形成されている。
【0034】
カバー部材1とベース部材2とによって形成される内部空間は、仕切板15によって二つの空間に分離されている。仕切板15によって分離されている空間の内、燃料電池セルスタック400が配置されている空間が発電室である。仕切板15によって分離されている空間の内、他方の空間が排気ガス室である。
【0035】
仕切板15にはガスタンク3が載置されている。ガスタンク3には、燃料電池セルスタック400が10個並べて配置されており、ガスタンク3から燃料ガスが、それぞれの燃料電池セルスタック400を構成する燃料電池セル4に供給される。
【0036】
より具体的には、ガスタンク3の上面には、燃料電池セルスタック400の下支持板400bとほぼ同じ形状の開口部(図示しない)が設けられており、その開口部に下支持板400bを密接させてガスタンク3と各燃料電池セルスタック400とが接続されている。従って、燃料電池セルスタック400を構成する燃料電池セル4は、その先端部分を上部側に向けてガスタンク3に立設されている。
【0037】
一方、各燃料電池セルスタック400の上方は、空気と燃料ガスとが混合して燃焼する燃焼部18となっている。燃料ガスは、ガスタンク3から、燃料電池セルユニット30の管内流路30cを通り、燃焼部18に向けて上昇する。また、燃料電池セル4の外側を流れる空気も、燃焼部18に向けて上昇する。背面側の側壁102において燃焼部18に対応する部分には、燃焼ガスと空気との燃焼を開始させるための点火装置19が設けられている。点火装置19により燃料ガスと空気とが混合して燃焼する。燃料電池セルスタック400を構成する燃料電池セル4は、燃焼部18によって上方から加熱される。
【0038】
燃料ガスとなる被改質ガスは、燃料ガス供給管8を通って燃料電池モジュールFCM内に導入される。燃料ガス供給管8は、仕切板15に対して立設された配管6A(流入配管部)を介して改質器5に繋がっている。燃料ガス供給管8から導入された被改質ガス(都市ガス等)は、水蒸気等を適宜混合され、配管6Aを通って改質器5へと導入される。改質器5に導入された燃料ガスは、改質器5内に収められている改質触媒によって改質される。改質された燃料ガスは、配管6B(流出配管部)を通ってガスタンク3へと供給される。改質器5に封入されている改質触媒としては、アルミナの球体表面にニッケルを付与したもの、アルミナの球体表面にルテニウムを付与したもの、が適宜用いられる。
【0039】
改質器5に対して配管6Aが繋がっている部分と、改質器5に対して配管6Bが繋がっている部分とは、長手方向において一端近傍と他端近傍とに引き離されている。これによって、改質器5に供給された燃料ガスは改質触媒に十分に触れることが可能となる。また、配管6A,6Bは、燃料電池セル4の長手方向からみて改質器5の投影領域内において一直線状に設けられている。つまり、配管6A,6Bは、改質器5の上方側から見て改質器5からはみ出さない領域に設けられている。
【0040】
また、カバー部材1の側壁101,102,103、及び天井104は、二重壁構造になっており、その二重壁の間の空間を気体が通過可能なように構成されている。側壁102の内部空間と、天井104の内部空間と、側壁103の内部空間とはそれぞれ繋がっている。側壁102の下部には空気供給管10が連通されていて、空気が供給されるように構成されている。
【0041】
側壁102に供給された空気は、天井104から側壁103へと流れ、その流れる過程において発電室内から伝わる熱によって加熱されるように構成されている。側壁103へ流れ込んだ空気は、空気流路103aに流れ込むように構成されている。空気流路103aは、側壁101から側壁102へ向けて延びるように形成され、側壁103の内側において仕切板15の上面近傍に沿って配置されている。空気流路103aには所定間隔をおいて、空気流入孔103bが設けられている。
【0042】
側壁103から空気流路103aに流れ込んだ空気は、空気流入孔103bを通って発電室内へと流れ込むように構成されている。空気流入孔103bを通って発電室内へと流れ込んだ空気は、燃料電池セル4の外側の通路を通って各燃料電池セル4の下方から上方へと流れる。各燃料電池セル4の上方に至った空気は、各燃料電池セル4の管内流路を通った燃料ガスと合わせて燃焼される。
【0043】
側壁103の内側上端には、排気ガス流出スリット103cが設けられている。各燃料電池セル4の上方において燃料ガスと空気とが燃焼して発生した排気ガスは、排気ガス流出スリット103cを通って側壁103の内部空間に入る。側壁103へと入り込んだ排気ガスは、側壁103の内部空間を下方へと流れ、排気ガス室17へと至って一時的に貯留される。排気ガス室17へと至った排気ガスは、排気ガス管11を通って燃料電池モジュールFCMの外部へと排出される。
【0044】
燃料電池セルスタック400として行列配置されている燃料電池セルユニット30(燃料電池セル4)の、長手側で最も外側に列状配置される燃料電池セルユニット30(燃料電池セル4)の近傍には温度勾配緩和手段としての温度緩和部材70,71が配置されている。
【0045】
温度緩和部材70は、配管6Aと、配管6A側に列状配置(図1において、図中左端に奥行方向(図に垂直方向)に列状配置)されている燃料電池セルユニット30(燃料電池セル4)との間に配置されている。温度緩和部材70は、ステンレスといった金属材料によって構成され、遮蔽板701と、上支持部702、下支持部703とを備えている。
【0046】
遮蔽板701は、その直近において列状配置されている燃料電池セルユニット30(燃料電池セル4)の一端側(図中下端)から他端側(図中上端)に至るように形成されている。遮蔽板701はまた、その直近において列状配置されている燃料電池セルユニット30(燃料電池セル4)の列状配置方向に沿うように形成されている。遮蔽板701は、その直近において列状配置されている燃料電池セルユニット30(燃料電池セル4)の、一方の端に配置された燃料電池セルユニット30(燃料電池セル4)から他方の端に配置された燃料電池セルユニット30(燃料電池セル4)まで至るように、列状配置方向に沿って配置されている。
【0047】
遮蔽板701の上端には上支持部702が一体的に繋がれている。上支持部702は、配管6Aに繋がれて固定されている。遮蔽板701の下端には下支持部703が一体的に繋がれている。下支持部703は、ガスタンク3を避けて仕切板15に固定可能なように折り曲げられている。尚、本実施形態において上支持部702を配管6Aに固定したけれども、上支持部702を改質器5に繋げて固定することも好ましい。
【0048】
続いて、温度緩和部材71は、配管6Bと、配管6B側に列状配置(図1において、図中右端に奥行方向(図に垂直方向)に列状配置)されている燃料電池セルユニット30(燃料電池セル4)との間に配置されている。温度緩和部材71は、ステンレスといった金属材料によって構成され、遮蔽板711と、上支持部712、下支持部713とを備えている。
【0049】
遮蔽板711は、その直近において列状配置されている燃料電池セルユニット30(燃料電池セル4)の一端側(図中下端)から他端側(図中上端)に至るように形成されている。遮蔽板711はまた、その直近において列状配置されている燃料電池セルユニット30(燃料電池セル4)の列状配置方向に沿うように形成されている。遮蔽板711は、その直近において列状配置されている燃料電池セルユニット30(燃料電池セル4)の、一方の端に配置された燃料電池セルユニット30(燃料電池セル4)から他方の端に配置された燃料電池セルユニット30(燃料電池セル4)まで至るように、列状配置方向に沿って配置されている。
【0050】
より具体的には、図3において最も左端(一方の端)に配置されている燃料電池セルユニット30(燃料電池セル4)の近傍であってやや内側から、同図において最も右端(他方の端)に配置されている燃料電池セルユニット30(燃料電池セル4)の近傍であってやや外側まで至るように形成されている。図3に示すように、遮蔽板711には切り欠き部711aが設けられており、同図正面から見た場合に左端の燃料電池セルユニット30(燃料電池セル4)が見通せるように構成されている。これは、図3において最も右端(他方の端)に配置されている燃料電池セルユニット30(燃料電池セル4)と電極棒13とを電気的に接続するための接続部材23が設けられており、この接続部材23と温度緩和部材71とが接触しないように設けられているものである。
【0051】
図5に、図3の温度緩和部材71が設けられている近傍を平面視(図3において上方視)した場合の模式的な配置図を示す。図5に示すように、温度緩和部材71を構成する遮蔽板711には切り欠き部711aが設けられており、左端の燃料電池セルユニット30(燃料電池セル4)には遮蔽板711が掛からず、左端の燃料電池セルユニット30(燃料電池セル4)と電極棒13とを繋ぐ接続部材23が遮蔽板711と干渉しないように構成されている。このように構成しても、列状配置されている燃料電池セルユニット30(燃料電池セル4)と遮蔽板711と配管6Bとはそれぞれ所定間隔をおくように配置されているので、配管6Bと列状配置されている燃料電池セルユニット30(燃料電池セル4)との間には遮蔽板711が介在することになる。そのため、例えば配管6Bから発せられる熱は遮蔽板711によってその温度勾配が緩和され、列状配置されている燃料電池セルユニット30(燃料電池セル4)それぞれへ伝わる熱の温度ムラが極力低減されるように構成されている。尚、上述した温度緩和部材70についても同様である。
【0052】
遮蔽板711の上端には上支持部712が一体的に繋がれている。上支持部712は、配管6Bに繋がれて固定されている。遮蔽板711の下端には下支持部713が一体的に繋がれている。下支持部713は、ガスタンク3を避けて仕切板15に固定可能なように折り曲げられている。尚、本実施形態において上支持部712を配管6Bに固定したけれども、上支持部712を改質器5に繋げて固定することも好ましい。
【0053】
続いて、図6を参照しながら燃料電池モジュールFCMを用いた燃料電池システムFCSの構成について説明する。図6は、燃料電池システムFCSの制御的な構成を示すブロック図である。図6に示すように、燃料電池システムFCSは、燃料電池モジュールFCMと、燃料電池モジュールFCMに空気を供給する空気供給部APと、燃料電池モジュールFCMに燃料ガスとなる被改質ガスを供給する燃料供給部FPと、燃料電池モジュールFCMに水を供給する水供給部WPと、燃料電池モジュールFCMから電力を取り出す電力取出部EPとを備えている。空気供給部AP、燃料供給部FP、水供給部WP、及び電力取出部EPは補器ユニットADUに収められている。
【0054】
燃料電池モジュールFCM、空気供給部AP、燃料供給部FP、水供給部WP、及び電力取出部EPは、燃料電池システム制御部CSから出力される制御信号に基づいて制御される。燃料電池システム制御部SCは、CPU、ROM及びRAMといったメモリ、及び制御信号やセンサ信号を授受するためのインターフェイスによって構成されている。燃料電池システム制御部SCには、操作装置CS1、表示装置CS2、及び報知装置CS3が取り付けられている。
【0055】
操作装置CS1から入力される操作指示信号は燃料電池システム制御部CSに出力され、燃料電池システム制御部CSは、その操作指示信号に基づいて、燃料電池モジュールFCM等を制御する。燃料電池システム制御部CSが制御した情報や、所定の警告情報は、表示装置CS2及び報知装置CS3に出力される。操作装置CS1、表示装置CS2、及び報知装置CS3の具体的なハードウェア構成は特に限定されるものではなく、必要となる機能に応じて最適なハードウェア構成が選択される。一例としては、操作装置CS1として、キーボード、マウス、タッチパネルといったハードウェアが用いられる。表示装置CS2としては、CRTディスプレイ、液晶ディスプレイといった表示系のハードウェアが用いられる。報知装置CS3としては、スピーカー、点灯器といったハードウェアが用いられる。
【0056】
燃料電池システム制御部CSには、燃料電池システムFCSの各所に設けられたセンサからセンサ信号が出力される。燃料電池システム制御部CSに信号を出力するセンサとしては、改質器温度センサDS1、スタック温度センサDS2、排気温度センサDS3、改質器内圧力センサDS4、水位センサDS5、水流量センサDS6、燃料流量センサDS7、改質用空気流量センサDS8、発電用空気流量センサDS9、電力状態検出部DS10、貯湯状態検出センサDS11、一酸化炭素検出センサDS12、可燃ガス検出センサDS13が設けられている。
【0057】
改質器温度センサDS1は、改質器5の温度を測定するためのセンサであって、本実施形態の場合は2つ設けられている。スタック温度センサDS2は、発電室に配置されている燃料電池セル4の温度を測定するためのセンサであって、複数の燃料電池セル4からなる燃料電池セルスタック400近傍に配置されている。排気温度センサDS3は、燃焼部18から排出される排気ガスの温度を測定するためのセンサであって、燃焼部18から改質器5近傍を通って温水製造装置(図示しない)に至る経路に配置されている。改質器内圧力センサDS4は、改質器5内の圧力を測定するためのセンサである。なお、ここでは改質器5内の圧力をセンサで測定するようにしているが、改質器5の前段で燃料と水が混合される部分の圧力を検出するものであっても良い。
【0058】
水位センサDS5は、貯水タンク(図示しない)の水位を測定するためのセンサであって、本実施形態の場合は4つ設けられている。水流量センサDS6は、補器ユニットADUから燃料電池モジュールFCMへと供給される純水の流量を測定するためのセンサである。燃料流量センサDS7は、補器ユニットADUから燃料電池モジュールFCMへと供給される被改質ガスの流量を測定するためのセンサである。改質用空気流量センサDS8は、補器ユニットADUから燃料電池モジュールFCMの改質器5へと供給される改質用空気の流量を測定するためのセンサである。発電用空気流量センサDS9は、補器ユニットADUから燃料電池モジュールFCMへと供給される発電用空気の流量を測定するためのセンサである。
【0059】
電力状態検出部DS10は、センシング手段の集合体であって、燃料電池モジュールFCMから取り出す発電電力の状態を検出する部分である。貯湯状態検出センサDS11は、センシング手段の集合体であって、温水製造装置(図示しない)の貯湯状態を検出する部分である。
【0060】
一酸化炭素検出センサDS12は、一酸化炭素検知器CODに備えられているセンサであって、燃料電池モジュールFCM内における一酸化炭素のハウジング内への漏れを検出するセンサである。可燃ガス検出センサDS13は、可燃ガス検知器(図示しない)に備えられているセンサであって、燃料電池モジュールFCM及び補器ユニットADU内における可燃ガスの漏洩を検出するセンサである。
【符号の説明】
【0061】
1:カバー部材
1a:フランジ部
2:ベース部材
3:ガスタンク
4:燃料電池セル
4a:端部
4b:端部
5:改質器
6A:配管
6B:配管
8:燃料ガス供給管
10:空気供給管
11:排気ガス管
13:電極棒
15:仕切板
17:排気ガス室
18:燃焼部
19:点火装置
21:温度センサ
30:燃料電池セルユニット
30c:管内流路
40:内側電極端子
40a:本体部分
40b:管状部分
40c:接続流路
40d:段部
42:外側電極端子
42a:本体部分
42b:管状部分
42c:接続流路
42d:段部
44:電極層
44a:内側電極露出周面
44a:内側電極外周面
44b:端面
44c:端面
46:電解質層
46a:電解質露出周面
48:電極層
48:外側電極外周面
48:電極層
48a:外側電極露出周面
50:貫通流路
52:絶縁部材
54:シール材
101,102,103:側壁
103a:空気流路
103b:空気流入孔
103c:排気ガス流出スリット
104:天井
400:燃料電池セルスタック
400a:上支持板
400b:下支持板
23:接続部材
70,71:温度緩和部材
701:遮蔽板
702:上支持部
703:下支持部
711:遮蔽板
711a:切り欠き部
712:上支持部
713:下支持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスと酸化剤ガスとが一端側から他端側へと流れることにより作動する複数の燃料電池セルと、
前記複数の燃料電池セルの他端側に対向配置され、被改質ガスを改質して燃料ガスとする改質器と、
前記改質器に被改質ガスを供給する流入配管部と、前記改質器から燃料ガスを前記複数の燃料電池セルの一端へ送り出す流出配管部とを有するガス配管と、を備える燃料電池システムであって、
前記燃料電池セルの他端と前記改質器との間に、前記複数の燃料電池セルからの燃料オフガスと酸化剤オフガスとが混合して燃焼する燃焼部が形成され、前記改質器は前記燃焼部からの熱を受けて前記被改質ガスの改質を行い、
前記複数の燃料電池セルの少なくとも一部が列状に配置され、当該列状配置された燃料電池セルと所定間隔をおいて且つ当該列状配置された燃料電池セルが延びる方向に沿って前記流出配管部が配置されており、
前記列状配置された燃料電池セルと前記流出配管部との間に、前記流出配管部と前記列状配置された燃料電池セルとの間の熱の授受を分散するための温度勾配緩和手段が設けられ、当該温度勾配緩和手段は、前記燃料電池セルの一端側から他端側に至るように且つ列状配置方向に沿うように配置されていることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
前記温度勾配緩和手段は、前記列状配置された燃料電池セルの一方の端に配置された燃料電池セル近傍から他方の端に配置された燃料電池セル近傍まで至るように、列状配置方向に沿って配置されていることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記温度勾配緩和手段は、前記流出配管部及び前記改質器の少なくとも一方に繋げられることで支持されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記複数の燃料電池セルの少なくとも一部が列状配置され、当該列状配置された燃料電池セルと所定間隔をおいて且つ当該列状配置された燃料電池セルが延びる方向に沿って前記流入配管部が配置され、当該列状配置された燃料電池セルと前記流入配管部との間に、当該列状配置された燃料電池セルと前記流入配管部との間の熱の授受を分散するための第二の温度勾配緩和手段が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−18456(P2011−18456A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−160447(P2009−160447)
【出願日】平成21年7月7日(2009.7.7)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】