説明

燃料電池システム

【課題】システム外の水を改質水として補給する操作を抑制または廃止できる水自立運転を実行するのに適する燃料電池システムを提供する燃料電池システムを提供する。
【解決手段】システムは、改質器2、燃料電池1と、凝縮器74と、凝縮器74で生成された凝縮水を回収して溜めるタンク44と、タンク44における所定の高水位を検知する水位センサ301,302とをもつ、制御部100は、水位センサがタンク44の水位が高水位以上であることを検知するとき、燃料電池1の最高発電出力に制限をかけることなく燃料電池1の発電出力を制御し、水位センサ301,302がタンク44の水位が高水位よりも低いことを検知するとき、燃料電池1の最高発電出力をこれの定格電力未満に出力制限することにより、タンク44の改質水の減少を抑制させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、システム外の水を改質水として補給する操作を長期にわたり抑制または廃止できる水自立運転を実行させるのに適する燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
水自立運転をさせるための固体高分子型の燃料電池システムが提供されている(特許文献1)。このものによれば、タンクの水位センサが既定水位より低いことを検出すると、燃料電池のカソードに供給されるカソードガスの供給量を相対的に減少させ、燃料電池のカソードガスの空気利用率を増大(空気量を低減)させ、凝縮器において凝縮される凝縮水の生成量を増大させる制御を行うことにしている。またタンクの水位センサが既定水位より高いことを検出すると、燃料電池のカソードに供給されるカソードガスの供給量を相対的に増加させ、燃料電池のカソードガスの空気利用率を減少(空気量を増加)させ、凝縮水において凝縮される凝縮水の生成量を減少させる制御を行うことにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-234869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記したシステムによれば、システム外の水を改質水として補給する操作を抑制または廃止できる水自立運転を実行することを目的とする。しかしながら、カソードガスの供給量を変化させるだけでは、タンクの改質水の貯留には限界があり、水自立運転には限界があるものと考えられる。
【0005】
本発明は上記した実情に鑑みてなされたものであり、システム外の水を改質水としてシステムに補給する操作を長期にわたり抑制または廃止できる水自立運転を実行する燃料電池システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る燃料電池システムは、(i)改質水で燃料原料を改質させてアノードガスを生成させる改質器と、(ii)アノードガスおよびカソードガスにより発電する燃料電池と、(iii)システムの運転に伴い発生する水蒸気含有ガスを冷却させて凝縮水を生成させる凝縮器と、(iv)凝縮器で生成された凝縮水を回収して改質水として溜めるタンクと、(v)タンクに溜められている改質水を改質器に供給する改質水搬送源と、(vi)タンクにおける水位を検知する単数または複数の水位センサと、(vii)タンクの水位が所定の高水位以上であることが水位センサにより検知されるとき、最高発電出力を出力制限せずに燃料電池の発電出力を制御し、タンクの水位が高水位よりも低い水位であることが水位センサにより検知されるとき、電力負荷の大きさに拘わらず、燃料電池の最高発電出力をこれの定格電力未満に出力制限する制御部とを具備する。
【0007】
改質器は、燃料原料を改質水(気相および/または液相の改質水)で改質させてアノードガスを生成させる。燃料電池は、アノードガスおよびカソードガスにより発電する。凝縮器は、システムの運転に伴い発生する水蒸気含有ガスを冷却させて凝縮水を生成させる。このような水蒸気含有ガスとしては、アノードガス、アノードオフガス、カソードガス、カソードオフガス、改質器から排出されるガスが例示される。凝縮器で生成された凝縮水は、タンクに液相の改質水として溜められる。タンクに溜められている改質水は、改質水搬送源により改質器に供給される。単数または複数の水位センサはタンクにおける水位を検知することができる。
【0008】
水位センサによりタンクの水位が所定の高水位以上であることが検知されるとき、制御部は、最高発電出力を出力制限せずに燃料電池の発電出力を制御する。水位センサによりタンクの水位が、高水位よりも低い中水位以下であることが検知されるとき、制御部は、電力負荷の大きさに拘わらず、燃料電池の発電出力をこれの定格電力未満に出力制限する。これにより、タンクの改質水の減少を抑制させる水自立運転を実行する。タンクの水の高水位はシステムに応じて設定され、通常の発電モードを良好に実行できる相対的に高い水位である。最高発電出力は、その時点において燃料電池の発電出力として許容される最大の出力をいう。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る燃料電池システムによれば、燃料電池を発電運転しつつも、システム外の水を改質水として補給する操作を抑制または廃止できる水自立運転を実行することができる。殊に、水自立性を高めて、長期にわたり、あるいは、半永久的に改質水を補給する補給操作を抑制または廃止させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】システムの概要を示す図である。
【図2】システムに搭載されているタンクの概要を示す図である。
【図3】制御部が実行するフローチャートである。
【図4】排気通路の排ガスの温度と水収支との関係を示すグラフである。
【図5】基準日における気温の変化を示すグラフである。
【図6】基準日において燃料電池を発電電力W1で発電しているときにおけるタンクの水収支の変動を示すグラフである。
【図7】燃料電池を発電電力W1で発電しているときにおけるタンクの水収支の変動を示すグラフである。
【図8】燃料電池を発電電力W1で発電しているときにおけるタンクの水収支の変動を示すグラフである。
【図9】システムを発電停止モードで運転しているときにおけるタンクの水収支の変動を示すグラフである。
【図10】システムを起動運転しているときにおけるタンクの水収支の関係を示すグラフである。
【図11】実施形態5に係り、システムに搭載されているタンクの概要を示す図である。
【図12】実施形態6に係り、発電モジュールの内部を示す概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一視点によれば、システムは、システムの排熱で加熱された温水を溜めると共に出水口および入水口をもつ貯湯槽と、貯湯槽の出水口から入水口まで延設された貯湯通路と、貯湯通路において凝縮器の上流に設けられ貯湯通路の水を冷却させて貯湯通路の水の温度を低下させる冷却装置と、貯湯槽に溜められている水を出水口から冷却装置および凝縮器を経て入水口に帰還させる貯湯水搬送源とを備えていることが好ましい。冷却装置が作動すると、貯湯通路のうち凝縮器よりも上流の水の温度が低下するため、凝縮器において凝縮される凝縮水の生成量が増加し、タンクの水位が高くなる。
【0012】
本発明の一視点によれば、タンクの水位が、高水位よりも低い水位であることが水位センサにより検知されるとき、制御部は、出力制限をかけつつ、冷却装置の冷却作動または貯湯水搬送源の高出力化により、凝縮器において凝縮される凝縮水の生成量を増加させる増水操作を実行し、タンクの水を高水位以上することが好ましい。この場合、燃料電池の出力制限によりタンクの水の消費量が低下するため、タンクの水位の低下が抑制される。更に冷却装置の冷却作動による貯湯通路の水(凝縮器の入口側の水)の温度を低下させることにより、凝縮器において凝縮される凝縮水の生成量を増加させることができる。燃料電池に出力制限をかけることで、冷却装置での冷却能力に対する負荷を下げることでさらに貯湯水温度を低下させ、ひいては凝縮水の生成量を増加させることで、タンクの水位を再び高水位以上に戻すことが可能となる。
【0013】
本発明の一視点によれば、タンクの水位が、高水位よりも低い中水位未満であるとき、制御部は、燃料電池の発電運転を停止させる発電停止モードを実行することが好ましい。この場合、タンクの水の消費量が低減されるため、タンクにおける水位の低下が抑えられる。発電停止モードは、燃料電池の発電を停止するためのモーであり、燃料電池の発電を直ちに停止してから実施される場合と、燃料電池の発電出力を低下させつつ停止させる場合とを含む。
【0014】
本発明の一視点によれば、所定の基準日においてシステムが発電運転されるときにおいて、基準日の所定の基準時刻のタンクにおける改質水貯留量が相対0値と相対表示されるとき、タンクに貯留される改質水貯留量は、基準日における気温の変化に応じてプラス側およびマイナス側に変化し、基準日における気温に応じて変化する改質水貯留量の相対0値に対する最高ピーク値をVmaxとし、タンクのうちこれの高水位以上に改質水を貯留可能なタンク容量をH1とするとき、タンク容量H1は、最高ピーク値Vmaxに基づいて設定されていることが好ましい。この場合、タンクのタンク容量H1は、燃料電池の通常の発電モードに対応でき、改質水不足が抑えられる。
【0015】
本発明の一視点によれば、気温に応じて変化する改質水貯留量の相対0値に対する最小ピーク値をVminとし、タンクのうちこれの高水位未満で且つ中水位以上に改質水を貯留可能なタンク容量をH2とするとき、タンク容量H2は最小ピーク値Vminに基づいて設定されていることが好ましい。この場合、タンクのタンク容量H2は、出力制限されている燃料電池の発電運転に対応でき、改質水不足が抑制される。
【0016】
本発明の一視点によれば、水位センサは、タンクのうち高水位よりも水位が低い中水位に対して水位が低い低水位であること検知することが好ましい。この場合、タンクのうちこれの中水位未満で且つ低水位以上に改質水を貯留可能なタンク容量をH3とするとき、タンク容量H3は、システムの発電停止モードにおいて消費される改質水の量を含むことができる。タンクのタンク容量H3は、発電停止モードに対応でき、改質水不足が抑えられる。
【0017】
(実施形態1)
図1は燃料電池システム(以下、システムともいう)の概要を示す。これは固体酸化物形の燃料電池に適用している。システムは、基本的には、固体酸化物形の燃料電池1と、改質器2と、制御部100と、筐体9とを有する。更に、燃料電池システムは、筐体9の内部において、改質水系4と、燃料原料供給系5、カソードガス供給糸6、貯湯系7とを有する。なお図1では、燃料電池1は模式化されて図示されている。
【0018】
図1に示すように、改質器2は、蒸発部20と、燃料原料が供給される改質部22とを備えている。蒸発部20は、改質水系4から蒸発部20に供給される液相状の改質水を水蒸気化させる。改質部22は蒸発部20の下流に設けられており、蒸発部20で生成された水蒸気で燃料原料を水蒸気改質させてアノードガスを生成させる。アノードガスは水素ガスまたは水素含有ガスである。筐体9は、筐体9の収容室91と外気とを連通させる外気取込口92および排出口93をもつ。発電モジュール3は筐体9の内部に収容されており、発電室32を形成する断熱材で形成された容器状の断熱部30を有しており、断熱部30の内部に燃料電池1および改質器2を燃焼用空間23を介して収容して形成されている。発電モジュール3では、燃料電池1の上側には改質器2(改質部22および蒸発部20)が配置されている。発電モジュール3では、燃料電池1と改質器2(改質部22および蒸発部20)との間には、燃焼用空間23が形成されている。殊に、燃料電池1の上部と改質器2(改質部22および蒸発部20)の下部との間には、燃焼用空間23が形成されている。燃料電池1のアノードから吐出されたアノードオフガスが燃焼用空間23に排出される。アノードオフガスは、燃料電池1のアノードから排出されるガスを意味し、未反応の水素(可燃成分)を含有して燃焼可能である。カソードオフガスは未反応の酸素を含有している。燃焼用空間23に排出されたアノードオフガスは、酸素を含むカソードガスまたはカソードオフガス(燃焼用空気に相当)により燃焼され、燃焼炎24を燃焼用空間23において形成する。燃焼用空間23において燃焼炎24を形成したガスは、燃焼排気ガスとなる。燃焼用空間23における燃焼炎24は改質部22および蒸発部20の双方を加熱させ、改質部22の温度を改質反応温度領域に維持させる。
【0019】
図1に示すように、改質水系4は、改質部22における水蒸気改質において水蒸気として消費される改質水を改質部22に供給するものであり、水精製器40と改質器2とを結ぶ改質水通路41と、改質水ポンプ42(改質水搬送源)と、給水バルブ43とを有する。水精製器40は、水を浄化させ得るイオン交換樹脂等の水精製材40aを有する。改質水通路41には、タンク44、改質水ポンプ42、給水バルブ43が設けられている。
【0020】
図1に示すように、燃料原料供給系5は、炭化水素系等の燃料原料を改質器2に供給させるために燃料源50に繋がる燃料原料供給通路51と、入口バルブ52と、流量計53、脱硫器54と、燃料原料ポンプ55(燃料原料搬送源)とを有する。燃料原料供給通路51には、入口バルブ52、流量計53、脱硫器54および燃料原料ポンプ55がこの順番に設けられているが、順番はこれに限定されるものではない。カソードガス供給糸6は、空気であるカソードガスを燃料電池1のカソードに供給するカソードガス供給通路60と、除塵フィルタ61と、カソードガスポンプ62(カソードガス搬送源)と、流量計63とを有する。カソードガス供給通路60には、除塵フィルタ61、カソードガスポンプ62および流量計63がこの順番に配置されているが、この順番に限定されるものではない。除塵フィルタ61は、筐体9の収容室91に配置されている。カソードガスポンプ62が駆動すると、外気は外気取込口92から収容室91に流入し、除塵フィルタ61およびカソードガス供給通路60を介してカソードガスとして燃料電池1の入口からカソードに供給される。
【0021】
図1に示すように、貯湯系7は、凝縮器74および貯湯槽70を循環する貯湯通路71と、貯湯通路71に設けられた貯湯ポンプ72(貯湯水搬送源)と、凝縮器74とを有する。貯湯通路71は、出水口70pから凝縮器74までの往路71aと、凝縮器74から入水口70iまでの復路71cとを有する。貯湯ポンプ72が作動すると、貯湯槽70の水は出水口70pから吐出され、貯湯通路71の往路71aから凝縮器74に供給され、凝縮器74における排気ガスとの熱交換により加熱される。加熱された水は復路71cを介して入水口70iから貯湯槽70に戻る。これにより貯湯槽70は温水を貯留させる。貯湯槽70には高さ方向に沿って複数個の温度センサ70tが配置されている。
【0022】
発電モジュール3の近傍には凝縮器74が設けられている。凝縮器74は、発電モジュール3から排出される燃焼排気ガスが通過するガス通路74gと、貯湯系7の貯湯通路71の水が通過する水通路74wとをもつ。凝縮器74のガス通路74gを流れる排気ガスの熱は、水通路74wに伝達され、更に貯湯系7の貯湯通路71の水に伝達される。凝縮器74のガス通路74gから排気通路75が筐体9の排気口76に向けて延設されている。発電モジュール3の発電室32の排気ガスは、排気通路75を介して排気口76から排出される。凝縮器74のガス通路74gから凝縮水通路77が水精製器40に向けて延設されている。この排気ガスは、アノードオフガスを燃焼させた燃焼ガスである。
従って排気ガスに含まれている気相状の水分は、凝縮器74のガス通路74gにおいて水通路74wにより冷却されて凝縮水を生成する。凝縮水は凝縮水通路77から水精製器40を介して改質水タンク44に貯留される。貯湯通路71の往路71aには、これの水を冷却させ得る冷却装置79が設けられている。冷却装置79は、冷却フィンをもつラジエータ79aと、ラジエータ79aに送風してこれを冷却させる冷却ファン79cとをもつ。
【0023】
さて、燃料電池1の発電運転の開始前には、燃料原料ポンプ55が駆動し、燃料原料が脱硫器54、燃料原料供給通路51、蒸発部20および改質部22を経て燃料電池1に供給され、燃料電池1を介して燃焼用空間23に供給される。またカソードガスポンプ62が駆動するため、カソードガス(空気)が燃焼用空気として燃焼用空間23に供給される。これにより可燃性の燃料原料が燃焼用空間23においてカソードガス(燃焼用空気)により燃焼され、燃焼炎24を燃焼用空間23において形成する。燃焼炎24は改質部22および蒸発部20を高温に加熱させ、改質反応可能とさせる。
【0024】
次に、燃料電池1の発電運転時には、燃料原料ポンプ55が駆動し、燃料原料が燃料原料供給通路51を介して改質器2の蒸発部20に供給される。また改質水ポンプ42が駆動し、タンク44の液相状の改質水が改質水通路41を介して蒸発部20に供給される。ここで、蒸発部20は加熱されているため、蒸発部20は改質水を水蒸気化させる。水蒸気は改質部22に供給される。改質部22は燃料原料を水蒸気改質させ、アノードガスを生成させる。
【0025】
燃料原料がメタン系である場合には、水蒸気改質ではアノードガスの生成は、次の(1)式に基づくと考えられている。固体酸化物形の燃料電池1では、H他にCOも燃料となりうる。
(1)…CH+2HO→4H+CO
CH+HO→3H+CO
生成されたアノードガスは、アノードガス通路14およびアノードガスマニホルド13を介して、燃料電池1のアノードに供給されて発電に使用される。またカソードガスポンプ62が駆動しているため、筐体9の外部の外気がカソードガスとして除塵フィルタ61およびカソードガス供給通路60を介して燃料電池1のカソードに供給される。これにより燃料電池1は発電する。
【0026】
発電反応においては、アノードガスで供給されるアノードでは基本的には(2)の反応が発生すると考えられている。酸素が供給されるカソードでは基本的には(3)の反応が発生すると考えられている。カソードにおいて発生した酸素イオン(O2−)がカソードからアノードに向けて電解質を伝導する。
(2)…H+O2−→HO+2e
COが含まれている場合には、CO+O2−→CO+2e
(3)…1/2O+2e→O2−
発電反応後のアノードオフガスは、発電反応しなかった水素を含む。カソードオフガスは発電反応に未反応な酸素を含む。アノードオフガスおよびカソードオフガスは、燃料電池1の上方の燃焼用空間23に排出され、燃焼炎24を燃焼用空間23において形成する。燃焼炎24における燃焼反応において水素および酸素が反応するため、燃焼反応によりHOが生成される。燃焼した後のアノードオフガスおよびカソードオフガスは、排気ガスとなり、凝縮器74のガス通路74g、ガス出口78を経て排気通路75を流れ、更に、排気通路75の先端の排気口76から筐体9の外部に放出される。ここで、凝縮器74を流れる排気ガスは、水分を含む。この水分は、改質反応用に投入した改質水の反応余剰分、および上記(2)における発電時に生成するHO、燃焼炎24の燃焼反応により生成するHOが含まれる。排気ガスに含まれている水分は、凝縮器74のガス通路74gにおいて水通路74により冷却されて凝縮し、凝縮水を生成させる。凝縮器74のガス通路74gで生成された凝縮水は凝縮水通路77から水精製器40に供給され、水精製器40で精製される。精製された水は、タンク44に改質水44wとして貯留される。
【0027】
上記したように燃料電池1のアノードの上部からアノードオフガスが燃焼用空間23に吐出され、カソードから吐出されたカソードオフガスが燃焼用空間23に吐出され、アノードオフガスがカソードオフガスにより燃焼されて燃焼炎24を形成し、改質部22および蒸発部20を加熱させる。なお、固体酸化物形の燃料電池1を搭載するシステムによれば、定常運転における燃料電池1の作動温度は400〜1100℃の範囲内、500〜800℃の範囲内が例示される。
【0028】
排気通路75のうち凝縮器74のガス通路74gの下流の部位の排気ガスの温度T2を検知するガス温度センサ201が設けられている。貯湯通路71のうち凝縮器74の水通路74wの上流の水の温度T1を検知する水温センサ202が設けられている。具体的には、貯湯通路71の往路71aのうち冷却装置79と凝縮器74との間に水温センサ202が設けられている。水温センサ202は貯湯ポンプ72と凝縮器74との間に設けることが望ましい。センサ201,202の温度信号は制御部100に入力される。制御部100は、入力処理回路と、出力処理回路と、CPUと、メモリとを有する。制御部100は、ポンプ62,55,72,42,バルブ52,43、ファン79c等を制御する。
【0029】
燃料電池1はインバータ501およびスイッチング素子502を介して電力負荷504および商用電源505に系統連系されている。電力負荷504はブレーカ506を介して商用電源505に接続されている。燃料電池1の発電出力が不足するとき、商用電源505から電力負荷504に給電される。
【0030】
ここで、貯湯通路71の貯湯水の温度T1が既定温度以上である場合には、凝縮器74における冷却能力が低下し、凝縮器74における凝縮生成量が低下する。このためタンク44に貯留される改質水の水位が過剰に低下するおそれがある場合には、制御部100は、冷却装置79のファン79cを作動させ、貯湯通路71のうち凝縮器74の上流の往路71a(凝縮器74の入口側)の水温を低下させる。これにより凝縮器74における冷却能力が増加し、凝縮器74における凝縮生成量が増加する。このためタンク44に貯留される改質水の水位が高くなる。
【0031】
図2はタンク44を示す。タンク44には、これの高さ方向において、高水位High,高水位Highよりも低い中水位Mid,中水位Midよりも低い低水位Lowの3水準の水位が設定されている。そして各水位を検知できる高水位センサ301、中水位センサ302、低水位センサ303がそれぞれ設けられている。タンク44に貯留されている過剰の水をオーバフローさせるオーバフロー部44pが、タンク44の上部に設けられている。よって、高水位Highよりも上方にオーバフローラインOverが設けられている。外気温度が特に高温でない限り、通常の発電モードであれば、システムはオーバフローさせつつ発電する。
【0032】
各水位センサ301,302,303が水位低下を検出したときにおいて、制御部100が実行する制御の一例について、図3を参照しつつ説明する。
【0033】
(1)システムが電力負荷504の負荷に応じて通常の発電モードを実行しているときには、凝縮器74において凝縮される凝縮水の生成量が良好であり、タンク44の水量が良好である。このため、高水位センサ301がONして高水位を検知する(ステップS102のYES)。中水位センサ302がONして中水位を検知する(ステップS104のYES)。更に低い水位センサ303がONして低水位を検知する(ステップS106のYES)。この場合、制御部100は、タンク44の水位44xがオーバフロー水位overと高水位Highとの間に位置するように、燃料電池1の最高発電出力に制限をかけることなく、システムの通常の発電モードを実行させる(ステップS108)。この場合、オーバフロー部44pからオーバフローすることも含んでいる。燃料電池1の発電電力が不足していれば、系統連系している商用電源505の電力が電力負荷504に供給される。
【0034】
(2)タンク44の水位が低下している場合には、高水位センサ301がOFFで水位を検知せず(ステップS102のNO)、中水位センサ302がONで中水位を検知し(ステップS112のYES)、低水位センサ303がONで低水位を検知する(ステップS114のYES)場合がある。この場合には、タンク44の水位は、高水位Highと中水位Midとの間に位置しており、タンク44の水位はやや低下している。そこで制御部100は、電力負荷504の要請に拘わらず、燃料電池1の最高発電出力を、これの定格電力Wset未満である電力W1に出力制限させる制御を実行する(ステップS116)。定格電力Wset未満である電力W1は、定格電力Wsetの80%以下、70%以下または50%以下が好ましく、20%以上または30%以上が好ましい。このように燃料電池1の発電出力が出力制限されるため、改質器2における改質水の消費量が低下する。このため、タンク44から改質器2に供給される改質水の量が低減される。更に、冷却ファン79cをオンさせるかその回転数を(高水位High以上の水位の場合よりも)増加させる第1操作、ポンプ72の出力を(高水位High以上の水位の場合よりも)増加させる第2操作のうちの少なくとも一つを実行し、凝縮器74の水通路74wの入口の水の温度T1を低下させ、凝縮器74において凝縮する凝縮水の生成量を増加させる増水操作を実行する(ステップS118)。なお、電力負荷504の電力が不足するときには、燃料電池1と系統連系している商用電源505の電力を電力負荷504に給電させる。
【0035】
(3)高水位センサ301がOFFで水位を検知せず(ステップS102のNO)、中水位センサ302がOFFで水位を検知せず(ステップS112のNO)、低水位センサ303がONで低水位を検知する(ステップS122のYES)場合がある。この場合には、タンク44の水位は、中水位Midと低水位Lowとの間に位置しており、タンク44の水位はかなり低下している。この場合、制御部100の記憶部に予め収納されている発電停止シーケンスに基づいて発電停止モードを実行する(ステップS124)。発電停止モードでは、停止指示が入力されると、改質用の燃料および改質水を改質部22に最低量投入して改質部22での改質反応を継続させ、還元性を有する水素を生成させる。カソードガスも発電モジュール3内に投入する。これにより燃料電池1の内部,改質部22の内部を還元雰囲気を維持しながら、最低の燃焼量で燃料電池1自体の温度を低下させる。既定温度まで低下後に、改質用燃料および改質水を遮断しカソードガスのみで燃料電池1を冷却し、さらに低い既定温度まで低下した後にカソードエガスを含めて全遮断させて停止させる。
【0036】
更に、中水位High以上の水位の場合よりも、冷却ファン79cの回転数を更に増加させる第1操作、ポンプ72の出力を更に増加させる第2操作のうちの少なくとも一つを実行し、凝縮器74の水通路74wの入口の水の温度T1を低下させ、凝縮器74において凝縮する凝縮水の生成量を増加させる増水操作を実行する(ステップS126)。但しステップS126を実行せず、発電停止モードを実行しても良い。なお燃料電池1の発電電力が不足するときには、商用電源505から電力負荷504に供給される。
【0037】
(4)高水位センサ301がOFFで水位を検知せず(ステップS102のNO)、中水位センサ302がOFFで水位を検知せず(ステップS112のNO)、低水位センサ303がOFFで水位を検知しない(ステップS122のNO)場合がある。この場合には、タンク44の水位は、低水位Low未満に位置しており、かなり低下している。この場合には、制御部100は、システムを緊急停止させる(ステップS130)。ここで緊急停止とは、ポンプ42を停止させ改質水の供給を停止するとともに改質器,燃焼電池の劣化を抑止するため、改質燃料,カソードエア等の反応に関わる流体の供給を停止する停止方法をいう。反応に関わらない貯湯水,換気ファン等に関してはシステム内温度に基づき作動しても構わない。緊急停止することで、発電停止モード等で改質水が無い状態で運転することによる改質部,燃料電池のコーキング等の故障を抑止することが可能となる。
【0038】
(5)各水位センサ301,302,303のON,OFFが論理的に整合するか判定する(ステップS100)。論理的に整合するときにはステップS102に進む。論理的に整合しないとき(ステップS100のNO)には、制御部100は、水位センサの張り付き等の異常で発生していると判定し、システムを緊急停止させる(ステップS130)。ここで、各水位センサはONであれば、水ありを検知し、OFFであれば、水無しを検知する。例えば、高水位センサ301がONであり、高水位を検知しているにも拘わらず、中水位センサ302がOFFで中水位を検知していない場合には、論理的にあり得ないため、水位センサの故障と推定される。また、中水位センサ302がONで中水位を検知しているにもかかわらず、低水位センサ303がOFFで低水位を検知しない場合には、論理的にあり得ないため、水位センサの故障と推定される。
【0039】
以上説明したように本実施形態によれば、タンク44の水位が高水位High以上であることがセンサ301により検知されるとき、制御部100は、燃料電池1の最高発電出力を制限させることなく、電力負荷504の大きさに応じて通常の発電モードで運転する。しかしながらタンク44の水位が高水位High未満であることをセンサ301,302により検知されるとき、制御部100は、電力負荷504の大きさに拘わらず、燃料電池1の最高発電出力を、これの定格電力Wset未満の発電電力W1に出力制限する。これによりタンク44の水量の減少を抑制させる。これによりシステムの水自立運転を実行することができる。なお、水自立運転であれば、水道水などの補給水が存在しない環境でもシステムを設置できる。更に、水道水などの補給水が存在する場合でも、水道水などの補給水がシステムに補給されることが長期にわたり抑えられるため、水精製器40のイオン交換樹脂等の水精製材40aの劣化が抑えられる。
【0040】
なお本実施形態のシステムは水自立運転が前提であるため、水道水等の補給水を水精製器40に補給させる補給配管が基本的には配置されていない。タンク44の水位が低下しても、システムに出力制限をかけつつ、タンク44の水量を増加させる増水操作を実行すれば、水自立運転が更に容易である。
【0041】
上記したように本実施形態によれば、タンク44には3水準の水位センサ、すなわち、高水位センサ301、中水位センサ302、低水位センサ303が設けられている。このため、貯湯槽70が温水で満水(満蓄)とされ、かつ、夏季のように気温が高い場合には、凝縮器74において凝縮される凝縮水の生成量が不足しがちとなるものの、システムの外部の水(例えば水道水)をシステムに補給させることなく、水自立運転が可能となる。すなわち、猛暑日を除く一年間のうちのほとんどの日において、システムの通常の発電モードによれば(水自立時)、タンク44の水は高水位Highとオーバフロー水位overとの間における水位で運転され、タンク44の水量は充分である。
【0042】
本実施形態によれば、前述したようにタンク44の水位が高水位Highよりも低下し、高水位センサ301がOFFとなって水を検知しなくなると、システムの最高発電電力が、システムの定格電力Wsetよりも低い規定発電電力W1となるように、制御部100は、電力負荷504の消費電力に拘わらず、システムの発電運転に出力制限をかける。出力制限により、改質器2において消費される改質水量を低下させる。このためシステムにおける水収支量(水収支量=凝縮器74において生成された凝縮水の量−改質器2に供給された改質水の量)を調整することができる。また、燃料電池1の発電出力が低下するときには、冷却装置79における熱負荷が低減する。これにより貯湯通路71を流れる水の温度が低下し、発電モジュール3の発電室32から排気通路75に向けて排出される排気ガスの温度の低下が可能となり、ひいては水自立運転に対して有利となる。
【0043】
本実施形態によれば、最高発電電力を既定の発電電力W1に設定した状態でシステムが発電するとき、タンク44には、所定時間で不足する水量分以上の容量が確保されている。このため、システムを停止させることなく、システムの運転継続が可能である。ここで、所定時間で不足する水量は、下記考え方で決定されている。
【0044】
すなわち、貯湯槽70の温水消費量が多く、貯湯槽70の内部に冷水が充分に存在する場合には、貯湯槽70の溜められている冷水で凝縮器74を冷却可能であり、凝縮器74における冷却能が確保され、凝縮器74において凝縮される凝縮水の生成量が充分に確保される。このためシステムの水自立が可能であり、水道水等の補給水を改質水としてシステムに補給せずとも良い。これに対して、夏季等のように、貯湯槽70の温水消費量が少なく、貯湯槽70が温水で満水となっている状態のときには、貯湯通路71の往路71aから凝縮器74の水通路74wに向かう水の温度T1は高くなるため、凝縮器74が既定熱量冷却ができず、凝縮器74において凝縮される凝縮水の生成量が不足するおそれがある。このように水の温度T1が所定温度よりも高い場合には、制御部100は、冷却装置79の冷却ファン79cを積極的に作動させるか、その出力を増加させることにより貯湯通路71の往路71aの水を積極的に冷却し、凝縮器74に供給する。この場合、凝縮器74における冷却能を高めることができ、凝縮器74において凝縮される凝縮水の生成量を増加させることができる。
【0045】
換言すれば、外気温度が低く、かつ、冷却装置79で貯湯通路71の水の温度T1を既定温度以下に冷却可能であれば、凝縮器74における冷却能力を確保でき、凝縮器74において凝縮される凝縮水の生成量が確保され、タンク44の水位が高くなる。故に、システムの水自立が可能であり、水道水等の補給水を改質水としてシステムに補給せずとも良い。
【0046】
これに対して、夏季や熱帯地方等のように、外気温度がかなり高く、冷却装置79が作動したとしても、貯湯通路71の水の温度T1を規定温度以下に冷却できない場合には、凝縮器74における冷却能力を確保できず、凝縮器74において凝縮される凝縮水の生成量が良好に確保されず、タンク44において改質水の水位不足が生じるおそれがある。但し、気温が高い夏季や熱帯地方であっても、一日の中で気温変化があり、気温が低下した朝、夕方、夜間などにおいては、凝縮器74における冷却能力が確保され、凝縮器74において凝縮される凝縮水の生成量が確保される。なお貯湯槽70の温水が消費されると、水道水等の補給水が貯湯槽70に補給され、貯湯槽70は基本的には満タンとされる。
【0047】
上記した本実施形態によれば、基本的には、貯湯槽70が満水であり、かつ、夏季のように外気温度が高いときであっても、タンク44の水位が高水位High未満となれば、システムの発電電力に出力制限をかけることで、システムの運転継続が可能となる。しかしながら、予想以上の条件(設置環境等により予想以上に高温の時間帯が長い場合、貯湯ポンプ72の故障で規定流量ぶん、貯湯通路71に水を流せない場合等)で万一発生するおそれがある。この場合には、タンク44の水位がかなり下がり、高水位センサ301および中水位センサ302の双方がOFFになるおそれがある。この場合には、中水位センサ302がOFFになり、水を検知できない場合には、システムを発電停止モードに移行させる。発電停止モードで必要な水,次回の起動モードで必要な水分を中水位センサ以下の水タンク容量あることで、次回の起動に関しても外部から水補給することなく自動で起動・発電が可能となる。
【0048】
ここで、システムの発電停止モード,起動モードにおいて必要な水は、下記の内容であることが好ましい。
【0049】
システムの発電停止モード
発電停止モードはシステムの発電を停止させるための運転モードである。システムにおいては、システムの発電停止モードにおいても、次の(1),(2)の場合には、改質水を改質器2に供給する。
【0050】
(1)システムの発電停止モードでは、制御部100は、タンク44の改質水を改質器2に供給して、改質器2で水蒸気を生成させる。生成された水蒸気を排気通路75から排出させることにより、発電モジュール3の発電室32内に残留している可燃ガスを発電室32から追い出す。
【0051】
(2)システムの発電停止モードでは、燃料電池1および改質器2が既定温度以下に冷えるまで、燃料電池1および改質器2における触媒雰囲気を還元性雰囲気に保つことが好ましい。このため、制御部100は、発電停止モードでは、燃料電池1の発電を停止させているものの、改質器2に対する燃料原料および改質水の双方の供給を既定時間継続させる制御を行う。これにより改質器2の残熱を利用し、改質器2において還元性をもつ水素を生成させる。これにより燃料電池1および改質器2における触媒雰囲気を水素雰囲気に保持し、触媒の劣化を抑える。
【0052】
上記したいずれの場合においても、発電モードから発電停止モードに移行すると、燃料電池1および改質器2を冷却するために、燃焼用空気,カソードガス等を発電モジュール3の発電室32に大量に供給させて冷却を行うことが好ましい。そのため、排気通路75から排出される排ガス中に含まれる空気に対する水蒸気量の比率が相対的に低くなる。この場合、凝縮器74における凝縮水の回収は非常に少なくなり、タンク44に溜められる水の量は減少する。なお、起動モードはシステムの運転指示により燃料電池が発電開始する間でのモードである。起動モードにおいて必要な水は、燃料電池に供給されるアノードガスを生成させて燃料電池が発電できるようにするために、改質部22に供給される改質水である。
【0053】
(実施形態2)
本実施形態は前記した実施形態1と基本的には同様の構成、同様の作用効果を有するため、図1〜図3を準用する。貯湯通路71の往路71aの水の温度T1もしくは排気通路75の排気ガス温度T2に基づいて、冷却装置79の冷却ファン79cはON,OFF制御され、貯湯通路71の往路71aの水を冷却する。例えば、T1≧40℃で冷却ファン79cはONされ、T1≦42℃で冷却ファン79cはOFFとされる。もしくは、排気ガス温度T2≧43℃で冷却フアン79cはONとされ,排気ガス温度T2≦45℃で冷却ファン79cはOFFとされる。
【0054】
凝縮器74において凝縮される凝縮水の生成量は、排気ガスの飽和水蒸気曲線に基づき排気ガスの温度T2で決定される。排気ガスの温度T2は貯湯通路71の水の温度T1に基づいて決定される。このため凝縮器74において凝縮される凝縮水の生成量は、貯湯通路71の水の温度T1,排気ガスの温度T2で制御可能である。応答性を考えると、冷却装置79の冷却能力が早期に現れる貯湯通路71の水の温度T1で制御した方が好ましい。
【0055】
図2に示すように、タンク44には、高さ方向の上から、オーバフローする水位,高水位センサ301,中水位センサ302,低水位センサ303が設けられている。
【0056】
本実施形態に関しては、高水位センサ301は高水位Highを検知する。中水位センサ302は、中水位Midを検知する。低水位センサ303は導電率センサで形成されている。導電率センサについては、水が存在すれば水の導電率2〜10μS/cmを示すのに対し、水がない場合は電極間が空気となるため、0μS/cmとなり、導電率とともに純水の有無、不純物の混在の有無を検知可能である。なお、高水位センサ301、中水位センサ302および低水位センサ303といった各センサは、導電率センサでも良いしフロートセンサでも良い。
【0057】
次に制御部100が実行する制御方法について説明する。冷却ファン79cは上記のように、タンク44の水位の高さに関係なく、貯湯通路71の水の温度T1(もしくはガス温度T2)によりON,OFFされ、水の温度T1が既定温度T1−a以上の場合には、作動してオンとなり、貯湯通路71の往路71aの水を積極的に冷却させる。これにより、貯湯槽70が温水で満水(満蓄状態)である場合には、冷却装置79で冷却した貯湯水を凝縮器74の水通路74wに投入することで、凝縮器74における冷却能力を高め、凝縮器74において凝縮される凝縮水の生成量を増加させている。
【0058】
タンク44の水位センサに基づく制御を下記に記す。通常時には、タンク44の水位は高水位Highとオーバフロー水位overとの間になるようにシステムが運転される。貯湯槽70が温水で満水ではない場合には、貯湯槽70の底部付近には低温の水が存在する。この低温の水が凝縮器74の水通路74wに供給される。
【0059】
図4は、排気通路75を流れる排気ガスの排気温度T2とタンク44の改質水との特性を示す。この特性は、温度と飽和水蒸気圧との関係に基づいて求められる。図4によれば、排気通路75の排気ガスの温度T2を凝縮器74のガス通路74gにおいて42〜45℃以下まで冷却できれば、凝縮器74において凝縮する凝縮水の生成量が増加し、ひいてはタンク44に溜められる改質水の量が増加する。このため、システムにおける改質水の収支がプラスとなり、水道水等の補給水を改質水としてシステムに長期にわたり補給せずとも良く、システムは水自立可能となる。ここで、凝縮器74におけるガス通路74gの排気ガスと水通路74wの水との温度差を2℃と仮定すると、貯湯通路71の水が40〜43℃以下の温度域になるように、冷却装置79により貯湯通路71のうち凝縮器74の水通路74wの入口温度を冷却できれば、システムは水自立が可能である。
【0060】
タンク44の水位が高水位Highとオーバフロー水位overとの間に存在する場合には、タンク44に溜められている水量は、システムの定格運転が継続したとしても、充分である。このため、制御部100は、電力負荷504が消費する消費電力の大きさに基づき燃料電池1の発電電力を制御することができる。ここで定格電力とは、システムに対して指定された条件の下でも製造者が保証する使用上の限界の発電電力を意味する。また定格運転とは定格電力で発電する運転を意味する。
【0061】
これに対して、貯湯槽70が温水で満水状態であり、かつ、外気温度が高い場合(例えば夏季の猛暑日または熱帯地方等)においては、貯湯通路71の往路71a(凝縮器74の入口側)の水の温度T1が高くなるため、凝縮器74における冷却能が不足し、ひいては凝縮器74において凝縮される凝縮水の生成量が不足するおそれがある。このように外気温度が高い場合には、冷却装置79により貯湯通路71の往路71aの水を冷却しても、水の温度T1は40〜43℃を高温側に超える温度域となる。このため、仮に定格発電運転を継続させると、凝縮器74における冷却能力が不足し、凝縮器74において生成される凝縮水の生成量が不足となる。この場合、タンク44の水位が低下するおそれがある。
【0062】
出力制限をかけることで、高温側のガス通路から低温側への伝熱量が抑制され、ひいては同温度の貯湯水が供給されたとしても冷却装置79での熱負荷が低減することができ、往路71aの水の温度T1を低温側に冷却することが可能となる。また、排気ガス温度T2が同一としても回収水(=凝縮水−改質水)の絶対量の不足分を減少させることができる。タンク44のうち高水位High以上でオーバフロー水位over以下に溜められる水のタンク容量をH1とする。タンク44のうちこれの高水位High未満で且つ中水位Mid以上に溜められる水のタンク容量をH2とする。
【0063】
タンク容量H1,H2の決定について以下に説明を加える。図5の特性線WAは、ある年の夏季の特定の基準日において実際に測定した気温変化を示す。この基準日は、凝縮水の生成にとって1年間におけるほぼ最悪条件となるように、システムが設置される所定国(日本国)における年間最高気温を示した猛暑日を示す。図5の特性線WAに示すように、昼間において、7時(午前7時)から15時(午後3時)にかけて外気温度が上昇している。2時(午前2時)から7時(午前7時)には、外気温度が相対的に低い。20時(午後8時)から24時(午前0時)には、外気温度が相対的に低い。貯湯槽が温水で満蓄状態の場合、貯湯水の冷却装置の冷却能力が外気温度で左右されるため、外気温度が高い場合には、凝縮器74における凝縮が制限され、凝縮器74において生成される凝縮水の生成量が低下し、タンク44の水位が低下する傾向がある。このため、タンク44のタンク容量H1,H2の決定にあたり、凝縮水の生成量の減少が激しい年間最高気温を示す猛暑日を基準とする。よって猛暑日を基準日として設定している。
【0064】
図6は、冷却装置79で貯湯通路71の水を冷却しつつ、燃料電池1の発電電力W1(定格電力の80%)にて、1日中発電運転を継続させている状態における単位時間当たりの水収支のシミレーション結果を示す。この場合、外気温度に対して+4℃まで、冷却装置79の能力,凝縮器74の能力で排気ガスを冷却可能であった場合においての規定時間(1分当り)の水収支を示す。図6の横軸は時間を示し、縦軸はタンク44の水収支(相対表示)を示す。ここで、昼間には外気温度が上昇しているため、図6の特性線WBに示すように、凝縮器74において凝縮される生成水量が低下し、9時(午前9時)〜19時(午後7時)にかけて、外気温度の影響を受けて水収支がマイナスとなる。しかし夜間には、外気温度が低下しているため、凝縮器74において凝縮される凝縮水の生成量が増加し、図6の特性線WBに示すように、水収支がプラスとなる。
【0065】
図7および図8の特性線WCは、上記した基準日における一日あたりのタンク44における水収支のシミレーション結果を示す。この場合、燃料電池1は連続して発電しており、その発電出力はW1(定格電力の80%)である。図7の横軸は時間を示し、縦軸はタンク44の水収支(相対表示)を示す。各時間での累積をみていくと、1日運転において水収支がゼロとなるように、基準日における所定の基準時刻(図7および図8では24時=午前0時)を設定し、この基準時刻(24時)におけるタンク44の水の貯留量を相対0値と相対表示する。
【0066】
図7及び図8の特性線WCによれば、タンク44に貯留される水貯留量は、基準日の一日における気温の変化に応じてプラス側およびマイナス側に交互に曲線(例えばサインカーブ)状に変化する。すなわち、特性線WCによれば、1時から8時にかけて水収支プラスが維持されつつ、水は増加し続けている。更に、9時から14時にかけて、水収支プラスはプラスが維持されつつも水は減少し続ける。14時から18時にかけて、水収支マイナスが維持されつつ、水は減少し続ける。19時〜24時にかけて、水収支マイナスが維持されつつ、水は増加し続ける。
【0067】
ここで、基準日(猛暑日)における気温に応じて変化するタンク44における改質水貯留量について、相対0値に対する最高ピーク値をVmaxとする。また、改質水貯留量の相対0値に対する最小ピーク値をVminとする。
【0068】
本実施形態によれば、タンク44のうちこれの高水位High以上でオーバフロー水位over以下に改質水を貯留可能なタンク容量をH1とすると、タンク容量H1は、凝縮水の生成量が低下する傾向がある猛暑日における最高ピーク値Vmaxに基づいて設定されている。具体的には、タンク容量H1は、最高ピーク値Vmaxと第1マージン容量Vαとの合計和に基づいて設定されている。第1マージン容量Vαは、安全率を考慮したタンク44における余裕水量を意味し、システムの種類、システムの設置環境等に応じて適宜設定される。VmaxおよびVαの量が同一単位であれば、Vmax>Vαとすることができる。
【0069】
また、タンク44のうちこれの高水位High未満で且つ中水位Mmid以上に改質水を貯留可能なタンク容量をH2とすると、タンク容量H2は、凝縮水の生成量が低下する傾向がある猛暑日における最小ピーク値Vminに基づいて設定されている。具体的には、タンク容量H2は、最小ピーク値Vminと第2マージン容量Vβとの合計和に基づいて設定されている。第2マージン容量Vβは、安全率を考慮したタンク44における余裕水量を意味し、システム、システムの設置環境等に応じて適宜設定される。VminおよびVβの量が同一単位であれば、Vmin>Vβとすることができる。なおVα=Vβ,Vα>Vβ、Vα<Vβにできる。Vα>Vβであれば、高水位High以上の水量を増加できる利点があり、出力制限を抑制できる。なおVα=Vβ≒0でも良い。
【0070】
このような本実施形態によれば、タンク44の容量の大型化を抑えつつ、システムの水自立が可能であり、水道水等の補給水を改質水としてシステムに長期にわたり補給せずともよいことが理解できる。つまり、図8の特性線WCによれば、0時〜14時(午後2時)までは、余剰の凝縮水をタンク44に貯蓄することができる。これに対して14時(午後2時)〜24時(午前0時)では、タンク44の水位が低下するが、14時〜24時までのほぼ10時間相当分における不足水の容量は、タンク容量H2として、タンク44に確保することができる。従って、タンク1における貯留水量が低下しつつも、システムを発電停止させることなく、燃料電池1を継続的に発電運転させることが可能となる。本実施形態によれば、上記観点に基づき、タンク44のタンク容量H1,タンク容量H2は決定されている。上記したようにタンク44のタンク容量H1,H2が決定されている。このため、凝縮水の生成量が低下する猛暑日であっても、タンク44は水不足になることはない。
【0071】
しかしながら想定外の環境状態、貯湯ポンプ72の故障等で、凝縮器74が冷却されない場合等には、異常等の諸要因によりタンク44の水位が更に低下するおそれがある。そこで、中水位センサ302がOFF(水がない)である検出した場合には、制御部100はシステムを発電モードから発電停止モード゛に移行する。発電停止モードは、システムが正常に停止するときにおける発電停止手段である。
【0072】
発電停止モードについて、次のi〜iiiにおいて説明を加える。
【0073】
i.発電停止指示により、制御部100は、ポンプ55,42の出力を低下させ、改質器2に供給される燃料原料および改質水を最低流量とさせる。更に、制御部100は、カソードガスポンプ62の出力を増加させてカソードガスを増加させる。これにより、燃焼用空間23における燃焼炎24の燃焼を継続しながら、発電モジュール3の内部を冷却させる。この場合、改質器2もしくは燃料電池1の温度が既定温度Tc以下になるまで、燃料電池1のアノード等のアノード系を還元雰囲気にするため、燃料原料および改質水を改質器2に供給させ、還元性をもつ水素含有ガスを生成させながら、発電モジュール3を冷却させる。
【0074】
ii.改質器2もしくは燃料電池1の温度が既定温度Tc以下に低下したら、ポンプ55,42を停止させ、燃料原料および改質水を改質器2に供給させる操作を遮断させる。この場合、発電モジュール3の発電室32に残留している水素をカソードガスで排気通路75に排出させてパージさせる。
【0075】
iii.改質器2もしくは燃料電池1の温度がiiより低い既定温度Te以下に冷却されたら、システムを完全停止させ、システムの補機類(例えばバルブやポンプ)も完全停止させる。
【0076】
タンク44のうち中水位Mid未満で且つ低水位Low以上のタンク容量をH3とする。タンク容量H3の設定方法について説明する。すなわち、図9はシステムの発電停止モードにおけるタンク44の水収支例を示す。発電停止モードでは、前述したように、改質器2に供給される燃料原料の燃焼量および改質水量が少ないのに対し、発電モジュール3の内部を冷却させるため発電モジュール3内に供給されるカソードガス量が多くなる。このため、排気通路75を流れる排気ガスに含まれる水蒸気分率が低くなるため、排気ガスの温度が10℃以下に冷却されないと、凝縮器74において凝縮される凝縮水の生成量が不足することになる。しかし実際には、排気ガスの温度を10℃以下に冷却することは困難であるため、発電停止モードでは、最悪の場合には改質水がVshortageぶん不足するおそれがある。そこで、タンク44のうち、中水位Mid未満で且つ低水位Low以上のタンク容量H3については、発電停止モード゛で不足する不足値Vshortageと、次回の起動で必要な分の水量Vstartとを確保することが好ましい。ここで、図10は起動モード゛における水収支を示すが、発電運転時とほぼ同等の水収支特性を示すため、図10の特性に拘わらず、水量Vstartとしては実質的に数10cc程度であれば良いと考えられる。
【0077】
以上説明したように本実施形態によれば、タンク44の中水位センサ302がOFFを検知したため、システム停止が発生した場合であっても、次回の燃料電池1の起動は自動で可能であり、新しい水を改質水としてシステムに補給をすることなく、燃料電池1を起動させることが可能となる。
【0078】
タンク44の中水位Midが検知されると、システムは発電モードから発電停止モードに移行する。同様に、予想外の諸要因等にて、タンク44の水位が更に低下し、水位が低水位Low未満となった場合には、制御部100は緊急停止を行う。ここで、緊急停止とは、改質水を改質器2に供給を停止することを前提とした停止方法であり、更に改質器2に収容されている改質触媒および燃料電池が劣化しないように、燃料原料等を改質器に供給することも止める。貯湯水,換気空気等のように、発電と直接的に関係なき部位は稼動してもよいし、あるいは、全補機を停止しても良い。これにより、タンク44の改質水が完全になくなった場合において、改質器2に供給する改質水が不足して改質触媒および燃料電池1が劣化することが抑止され、改質器2および燃料電池1の劣化が抑止される。この場合には、制御部100は、異常である判定し、貯湯ホ゜ンフ゜の点検等をメンテナンスするとともに、改質水の補給を実施する。
【0079】
以上説明したように本実施形態においても、前記した実施形態と同様に、タンク44の水位が高水位High以上であることがセンサにより検知されるとき、制御部100は、電力負荷504の大きさに応じて燃料電池1の発電出力を制御する。タンク44の水位が高水位High未満であることをセンサにより検知されるとき、制御部100は、電力負荷504の大きさに拘わらず、燃料電池1の発電出力をこれの定格電力未満に出力制限することにより、タンク44の改質水の減少を抑制させる。これによりシステムの水自立運転を実行することができる。
【0080】
すなわち、一連の制御、およびタンク44の構成により、新しい水を改質水としてシステムに補給することなく、水自立の発電運転が可能となる。タンク44の改質水の水位が過剰に低下する場合のような異常時には、改質器2および燃料電池1が劣化するに至る前にシステム停止することが可能となる。
【0081】
純水は高い電気絶縁性をもつ。改質水の品質が劣化すれば、水の電気伝導率が高くなる。このため、低水位センサ303として導電率計を用いた場合には、水精製器40のイオン交換樹脂の劣化、水精製能力の劣化、燃料電池の劣化等に起因してタンク44の水質が悪化(つまり、導電率が上昇)していることが、水の導電率の異常として検知が可能となる。殊に、低水位センサ303はタンク44に設けられている水位センサのうち最も下方に配置されている。このため、タンク44の水位の変動に拘わらず、タンク44に溜められている水の品質を検知できる効果が得られる。
【0082】
(実施形態3)
本実施形態は前記した実施形態1,2と同様な構成および作用効果を示すため、図1〜図10を準用できる。前述したように、夏季の猛暑日などのように、外気温度が極めて高いときには、貯湯通路71の水の温度T1が高くなり、凝縮器74における凝縮水の生成量が低下し、タンク44の水量が低下する。そこで制御部100は、タンク44の水位が高水位High未満になったら、冷却装置79の冷却ファン79cの出力を、通常の発電モードの場合(水位が高水位High以上の場合)よりも増加させる。更に、必要に応じて、貯湯ポンプ72の単位時間あたりの出力(回転数)を、通常の発電モードの場合(水位が高水位High以上の場合)よりも増加させる。これにより貯湯通路71のうち凝縮器74の水通路74wの入口の水の温度T1が更に低下する。よって、凝縮器74における熱交換量を増加できる。ひいては凝縮器74において生成される凝縮水の生成量を増加でき、タンク44の水位を更に高めて高水位High以上にできる。
【0083】
(実施形態4)
本実施形態は前記した実施形態1,2と同様な構成および作用効果を示すため、図1〜図10を準用できる。前述したように、夏季の猛暑日などのように、外気温度が極めて高いときには、貯湯通路71の水の温度T1が高くなり、凝縮器74における凝縮水の生成量が低下し、タンク44の水量が低下する。そこで制御部100は、タンク44の水位が中位Mid未満になったら、冷却装置79の冷却ファン79cの出力を通常の発電モードの場合(水位が中水位Mid以上の場合)よりも増加させる。更に、必要に応じて、貯湯ポンプ72の単位時間あたりの出力(回転数)を、通常の発電モードの場合(水位が中水位Mid以上の場合)よりも増加させる。これにより貯湯通路71のうち凝縮器74の水通路74wの入口の水の温度T1が更に低下し、凝縮器74における熱交換量を増加できる。ひいては凝縮器74において生成される凝縮水の生成量を増加でき、タンク44の水の水位を高めて高水位High以上にできる。
【0084】
(実施形態5)
図11は実施形態5を示す。本実施形態は前記した実施形態と同様な構成および作用効果を示すため、他の図を準用できる。図11に示すように、タンク44には、タンク44の高さ方向において、高水位High,中水位Midの2水準の水位をそれぞれ検知できる高水位センサ301、中水位センサ302がそれぞれ設けられている。タンク44に貯留されている過剰の水をオーバフローさせるオーバフロー部44pが設けられている。よって、高水位Highよりも上方にオーバフローラインOverが設けられている。各水位センサが水位低下を検出したときにおいて、制御部100が実行する制御について説明する。
【0085】
(1)システムが正常に発電運転しているときには、凝縮器74において凝縮される凝縮水の生成量が良好であり、タンク44の水量が良好であるため、中水位センサ302および高水位センHighが全てONして水位を検知する。この場合、タンク44の水を常にオーバフロー部44pからオーバフローさせながら、制御部100は、オーバフロー水位overと高水位Highとの間の水位で、システムを通常の発電モードで運転させることができる。この場合、定格電力Wsetに設定した状態で、燃料電池1を発電しても、タンク44における水不足は発生しない。
【0086】
(2)高水位センサ301がOFFで水位を検知せず、中水位センサ302がONで水位を検知する場合がある。この場合には、タンク44の水位は、高水位Highと中水位Midとの間に位置する。この場合、タンク44の水位はやや低下している。そこで制御部100は、電力負荷504の要請に拘わらず、燃料電池1の最高発電出力を、システムの定格電力Wset未満である電力W1に出力制限させる。このように燃料電池1の発電出力が定格電力Wset未満に出力制限されるため、改質器2における改質水の消費量が低下する。このため、タンク44から改質器2に供給される改質水の量が低減される。燃料電池1の発電電力が不足するときには、商用電源505から電力負荷504に供給される。
【0087】
(3)高水位センサ301がOFFで水位を検知せず、中水位センサ302がOFFで水位を検知しない場合がある。この場合には、タンク44の水位は、中水位Midよりも低い位置となる。この場合、タンク44の水位はかなり低下している。この場合、制御部100は、発電モードから、システムの発電運転を停止させて発電停止モードに移行させ、タンク44から改質器2に供給する改質水を低減または0とする。必要に応じて、発電停止モードを所定時間実行した後に、緊急停止モードに移行させることができる。
【0088】
(実施形態6)
図12は実施形態6を示す。本実施形態は前記した実施形態と同様な構成および作用効果を示すため、他の図を準用できる。図12に示すように、複数の燃料電池1は、カソードガスが供給される通路32rを介して並設されてスタックを形成している。燃料電池1同士は図略の集電体により電気的に接続されている。燃料電池1は、アノードガスが流れる通路11rをもつ多孔質導電部11wと、燃料極として機能するアノード11と、カソードガスが供給される通路32rに対面する酸化剤極として機能するカソード12と、アノード11およびカソード12で挟まれた固体酸化物を母材とする電解質膜15と、緻密質のコネクタ10xとを有する。固体酸化物は、酸素イオン(O2−)を伝導させる性質性をもつものであり、YSZ等のジルコニア系、ランタンガレート系が例示される。アノード11は、ニッケル−セリア系サーメットが例示される。カソード12は、サマリウムコバルタイト、ランタンマンガナイトが例示される。材質は上記に限定されるものではない。なお、燃料電池1の下部には、アノードガスを燃料電池1の入口に案内するアノードガスマニホルド13が配置されている。
【0089】
(その他)
上記した実施形態によれば、タンク44の高水位を検知する水位センサ301、中水位を検知する302が設けられているが、単一のセンサで高水位、中水位、低水位を検知することにしても良い。低水位センサ303を水位センサ301,302と一体化させても良い。要するにタンク44における複数段階の水位を検知できれば良い。凝縮器74で生成された凝縮水を、水精製機能をもつ水精製器40に溜めて精製させた後にタンク44に貯留させているが、これに限らず、凝縮器74で生成された凝縮水をタンク44に貯留させた後、水精製器40から改質器2に向けて搬送させても良い。
【0090】
上記した実施形態は固体酸化物形の燃料電池システムに適用しているが、これに限らず、アノードガス、アノードオフガス、カソードオフガスといった水蒸気含有ガスを凝縮させて凝縮水を生成させる凝縮器を有する燃料電池システムであれば良く、固体高分子形、溶融炭酸塩形またはリン酸形の燃料電池システムに適用することもできる。本発明は上記し且つ図面に示した実施形態のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できる。
【0091】
上記した記載から次の技術的思想も把握できる。
[付記項1]改質水で燃料原料を改質させてアノードガスを生成させる改質器と、アノードガスおよびカソードガスにより発電する燃料電池と、システムの運転に伴い発生する水蒸気含有ガスを冷却させて凝縮水を生成させる凝縮器と、凝縮器で生成された凝縮水を回収して液相状の改質水として溜めるタンクと、タンクに溜められている改質水を改質器に供給する改質水搬送源と、タンクにおける水位を検知する単数または複数の水位センサと、水位センサの検知結果に応じて燃料電池の発電を制御する制御部とを具備する燃料電池システム。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明は例えば定置用、車両用、電気機器用、電子機器用、可搬用の燃料電池システムに適用できる。
【符号の説明】
【0093】
図中、1は燃料電池、2は改質器、20は蒸発部、22は改質部、3は発電モジュール、32は発電室、4は改質水系、40は水精製器、41は改質水通路、42は改質水ポンプ(改質水搬送源)、43は給水バルブ、44はタンク、5は燃料原料供給系、50は燃料源、51は燃料原料供給通路、6はカソードガス供給系、60はカソードガス供給通路、7は貯湯系、70は貯湯槽、70iは入水口、70pは出水口、71は貯湯通路、72は貯湯ポンプ(貯湯水搬送源)、74は凝縮器、75は排気通路、76は排気口江、77は凝縮水通路、79は冷却装置、79aはラジエータ、79cは冷却ファン、301は高水位センサ(水位センサ)、302は中水位センサ(水位センサ)、303は低水位センサ(水位センサ)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
改質水で燃料原料を改質させてアノードガスを生成させる改質器と、
アノードガスおよびカソードガスにより発電する燃料電池と、
システムの運転に伴い発生する水蒸気含有ガスを冷却させて凝縮水を生成させる凝縮器と、
前記凝縮器で生成された凝縮水を回収して液相状の改質水として溜めるタンクと、
前記タンクに溜められている改質水を前記改質器に供給する改質水搬送源と、
前記タンクにおける水位を検知する単数または複数の水位センサと、
前記タンクの水位が所定の高水位以上であることが前記水位センサにより検知されるとき、最高発電出力を出力制限せずに前記燃料電池の発電出力を制御し、前記タンクの水位が前記高水位よりも低い水位であることが前記水位センサにより検知されるとき、電力負荷の大きさに拘わらず、前記燃料電池の最高発電出力をこれの定格電力未満に出力制限する制御部とを具備する燃料電池システム。
【請求項2】
請求項1において、前記システムの排熱で加熱された温水を溜めると共に出水口および入水口をもつ貯湯槽と、前記貯湯槽の前記出水口から前記入水口まで延設された貯湯通路と、前記貯湯通路において前記凝縮器の上流に設けられ前記貯湯通路の水を冷却させて前記貯湯通路の水の温度を低下させる冷却装置と、前記貯湯槽に溜められている水を前記出水口から前記冷却装置および前記凝縮器を経て前記入水口に帰還させる貯湯水搬送源とを具備しており、
前記タンクの水位が前記高水位未満であることが前記水位センサにより検知されるとき、前記制御部は、前記出力制限をかけつつ、前記冷却装置の冷却作動または前記貯湯水搬送源の高出力化により、前記凝縮器において凝縮される凝縮水の生成量を増加させる増水操作を実行し、前記タンクの水位を前記高水位以上にする燃料電池システム。
【請求項3】
請求項1または2において、前記タンクの水位が前記高水位よりも低い中水位未満であるとき、前記制御部は、前記燃料電池の発電運転を停止させる発電停止モードを実行する燃料電池システム。
【請求項4】
請求項1〜3のうちの一項において、所定の基準日において前記システムが発電運転されるときにおいて、前記基準日の所定の基準時刻の前記タンクにおける改質水貯留量が相対0値と相対表示されるとき、前記タンクに貯留される改質水貯留量は、前記基準日における気温の変化に応じてプラス側およびマイナス側に変化し、
前記基準日における気温に応じて変化する改質水貯留量の相対0値に対する最高ピーク値をVmaxとするとき、前記タンクのうちこれの高水位以上に改質水を貯留可能なタンク容量をH1とするとき、前記タンク容量H1は、前記最高ピーク値Vmaxに基づいて設定されている燃料電池システム。
【請求項5】
請求項4において、気温に応じて変化する改質水貯留量の相対0値に対する最小ピーク値をVminとし、前記タンクのうちこれの前記高水位未満で且つ前記高水位よりも低い中水位以上に改質水を貯留可能なタンク容量をH2とするとき、前記タンク容量H2は前記最小ピーク値Vminに基づいて設定されている燃料電池システム。
【請求項6】
請求項1〜5のうち一項において、前記水位センサは、前記タンクの水の前記高水位よりも低い中水位より更に低い低水位を検知可能であり、
前記タンクのうちこれの前記中水位未満で且つ前記低水位以上に改質水を貯留可能なタンク容量をH3とするとき、前記タンク容量H3は、前記燃料電池の発電運転を停止させる発電停止モード、および、前記燃料電池を起動させる起動モードにおいて消費される改質水の量を含む燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−34701(P2011−34701A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−177375(P2009−177375)
【出願日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】