説明

燃料電池システム

【課題】次回システム起動時に燃料電池の加湿を適切に行うことができる燃料電池システムを提供する。
【解決手段】ECU60は、システム停止時に、次回システム起動時に凝縮水が凍結しないと判断した場合には、運転温度に基づいて求められた運転圧力に応じて圧縮機34を制御して凝縮水を貯水部42aに貯留する貯水処理を行い、次回システム起動時に凝縮水が凍結すると判断した場合には、運転温度に基づいて求められた運転圧力に応じた圧縮機34の制御と、排水弁47による水排出とを水除去処理時間が経過するまで行って凝縮水を貯水部42aから排出する水除去処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池システムの運転効率を改善する手段として、例えば、特許文献1および特許文献2に記載の技術が提案されている。特許文献1には、コンプレッサのロータに水を噴霧して、コンプレッサのエネルギ効率を改善する技術が記載されている。特許文献2には、膨張機の下流で溜めた水を圧縮機の下流に噴射して、燃料電池に供給されるガスを加湿する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−294265号公報
【特許文献2】特開平7−14599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1および特許文献2には、システム停止時の水の管理については何ら検討されておらず、例えば次回のシステム起動時に水が不足して燃料電池に対する加湿量が低下し、また次回のシステム起動時に氷点下に至るような環境下では凍結によって加湿が適切になされないという問題があった。
【0005】
本発明は、前記従来の問題を解決するものであり、次回システム起動時に燃料電池の加湿を適切に行うことができる燃料電池システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、燃料と酸化剤とが供給されて発電を行う燃料電池と、前記燃料電池に供給される酸化剤が通流する酸化剤供給流路と、前記燃料電池から排出される排出酸化剤が通流する酸化剤排出流路と、前記酸化剤排出流路に配置され、前記排出酸化剤を膨張させる膨張手段と、前記酸化剤供給流路に配置される圧縮機と、前記膨張手段の下流に配置され、凝縮水を回収する水回収手段と、前記水回収手段により回収された凝縮水を前記酸化剤供給流路に噴射する水噴射手段と、を備え、システム停止時に、次回システム起動時に凝縮水が凍結しないと判断した場合には凝縮水を前記水回収手段に貯留する貯水処理を行い、次回システム起動時に凝縮水が凍結すると判断した場合には凝縮水を前記水回収手段から排出する水除去処理を行う制御部を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、燃料電池システムのシステム停止時に、次回システム起動時において水回収手段に回収された凝縮水が凍結しないと判断した場合には凝縮水を水回収手段に貯留することで、次回システム起動時(例えば、燃料電池が高温状態で起動されたとき)に凝縮水が不足するのを防止でき、燃料電池が加湿不足になるのを防止できる。また、燃料電池システムのシステム停止時に、次回システム起動時において水回収手段に回収された凝縮水が凍結すると判断した場合には凝縮水を水回収手段から除去することで、次回システム起動時に凝縮水が凍結して加湿が適切になされなくなるのを防止できる。
【0008】
また、前記制御部は、次回システム起動時における次回起動温度を予測し、前記次回起動温度が所定値より高い場合には前記貯水処理を行い、前記次回起動温度が所定値以下の場合には前記水除去処理を行うことを特徴とする。
【0009】
これによれば、温度に基づいて予測することで、次回システム起動時において凝縮水が凍結するか否かを適切に判断することができる。
【0010】
また、前記膨張手段は、エキスパンダタービン、および当該エキスパンダタービンの回生エネルギを得て前記圧縮機に駆動力を伝達する伝達軸を備えることを特徴とする。
【0011】
これによれば、エキスパンダタービンの回生エネルギを得て圧縮機を駆動することで、排出酸化剤の圧力を有効に利用することができ、圧縮機の消費電力を低減することが可能になる。
【0012】
また、前記水回収手段は、凝縮水を貯留する貯水部を備え、前記貯水部の水位を検出する水位センサおよび前記燃料電池の温度に関連した燃料電池関連温度を検出する温度センサを備え、前記制御部は、システム停止時に前記貯水処理を行う場合、前記燃料電池関連温度と前記燃料電池に必要な水蒸気量との関係、および、前記燃料電池の圧力と前記燃料電池に必要な水蒸気量との関係に基づき、検出した前記燃料電池関連温度を用いて前記燃料電池に必要な運転圧力を求め、前記水位センサによる水位値が所定値に到達するまで、前記運転圧力となるように前記圧縮機を制御することを特徴とする。
【0013】
ところで、燃料電池関連温度(以下、運転温度とする)と燃料電池に必要な水蒸気量(以下、必要水蒸気量とする)との関係、および、必要水蒸気量と燃料電池の圧力(以下、運転圧力とする)との関係に基づくことで、運転温度が上昇すると必要水蒸気量が上昇するので、運転圧力を高くすることで必要水蒸気量を減らすことができる。したがって、運転温度に基づいて運転圧力を制御することにより、膨張手段により発生する凝縮水量を調整することが可能になる。
【0014】
このような関係に基づいてシステム停止時において貯水処理を行うことで、例えば、運転温度が高い場合には、排出酸化剤に含まれる水分が多いので、運転圧力を高くすることで必要水蒸気量を低くでき、凝縮水量を増加させることができる。このようにして凝縮水量を制御することで凝縮水を貯水部に短い時間で確保することができる。よって、次回のシステム起動時に燃料電池が高温状態(例えば、システム停止後にすぐにシステム起動された場合)で起動されたとしても、システム停止時に貯水部に貯留された凝縮水を酸化剤供給流路に噴射することで水不足(加湿不足)を回避することができる。
【0015】
また、前記水回収手段は、回収された凝縮水を外部に排出する排水弁を備え、前記制御部は、システム停止時に前記水除去処理を行う際、前記燃料電池関連温度と水除去処理時間との関係を用いて、検出した前記燃料電池関連温度に基づいて前記水除去処理時間を求め、前記燃料電池関連温度と前記燃料電池に必要な水蒸気量との関係、および、前記燃料電池の圧力と前記燃料電池に必要な水蒸気量との関係に基づき、検出した前記燃料電池関連温度を用いて前記燃料電池に必要な運転圧力を求めて、前記運転圧力に応じた前記圧縮機の制御と、前記排水弁による水排出と、を前記水除去処理時間が経過するまで行うことを特徴とする。
【0016】
例えば、運転温度が高くなるにつれて、排出酸化剤に含まれる水分量が多くなるので、運転圧力を高くすることで、必要水蒸気量を低減でき、凝縮水が多く生成される。よって、除去すべき凝縮水量が多くなるので、水除去処理時間が長く設定される。このように運転圧力および水除去処理時間を求めて、水除去処理時間が経過するまで排出弁を開くことで、システム停止時に排出酸化剤に含まれる水分を多く排出できる。
【0017】
また、前記制御部は、外気温度、カレンダ情報、GPS情報のうち、少なくともいずれかひとつを用いて前記次回起動温度を予測することを特徴とする。
【0018】
これによれば、次回起動温度を適切に予測することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、次回システム起動時に燃料電池の加湿を適切に行うことができる燃料電池システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施形態に係る燃料電池システムを示す全体構成図である。
【図2】(a)、(b)は、水噴射機構の構成例を示す断面図である。
【図3】(a)は運転温度と必要水蒸気量との関係を示すマップ、(b)は必要水蒸気量と運転圧力との関係を示すマップである。
【図4】運転圧力と、エキスパンダで発生する水分量との関係を示すグラフである。
【図5】通常運転時での運転圧力を決定するための概略図である。
【図6】貯水処理および水除去処理を示すフローチャートである。
【図7】(a)は運転温度と運転圧力との関係を示すマップ、(b)は運転温度と処理時間との関係を示すマップである。
【図8】本実施形態の変形例に係る燃料電池システムを示す全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本実施形態に係る燃料電池システム10について、図1ないし図8を参照して説明する。なお、以下では、燃料電池システム10について、燃料電池車(四輪車、二輪車等を含む)を例に挙げて説明するが、これに限定されるものではなく、船舶や航空機、家庭用や業務用で定置式のものなど電気を必要とするあらゆるものに適用できる。
【0022】
図1に示すように、燃料電池システム10は、燃料電池12と、この燃料電池12のアノードに対して水素(燃料ガス、反応ガス)を給排するアノード系14と、燃料電池12のカソードに対して酸素を含むエア(酸化剤ガス、反応ガス)を給排するカソード系16と、燃料電池12に冷媒を循環させて冷却する冷却系17と、これらを電子制御するECU(制御部、電子制御装置)60とを備えている。
【0023】
燃料電池12は、固体高分子型燃料電池(Polymer Electrolyte Fuel Cell:PEFC)であり、MEA(Membrane Electrode Assembly、膜電極接合体)をセパレータ(図示せず)で挟持してなる単セルが複数積層されて構成されている。MEAは、電解質膜(固体高分子膜)と、これを挟持するカソード及びアノードとを備えている。各セパレータには、溝や貫通孔からなるアノード流路18及びカソード流路20が形成されている。
【0024】
この場合、アノード流路18を介して各アノードに対して水素(燃料)が供給されることによって電極反応が起こり、一方、カソード流路20を介して各カソードにエア(酸化剤)が供給されることによって電極反応が起こり、各単セルで電位差(OCV(Open Circuit Voltage)が発生して燃料電池12が発電可能な状態となる。このように発電可能な状態の燃料電池12と、外部負荷(例えば、図示しない走行用のモータ、後記する圧縮機34のモータ35(電動機))とが電気的に接続され、電流が取り出されることにより、燃料電池12が発電するようになっている。
【0025】
アノード系14は、水素が高圧で封入された水素タンク22と、エゼクタ24と、第1気液分離器26と、ドレン弁28と、パージ弁30とを備えている。
【0026】
アノードの出口ポートは、配管a3、第1気液分離器26、配管a4を介して、エゼクタ24の吸引ポートに接続されている。この場合、アノード流路18から排出された未消費(未反応)の水素を含むアノードオフガス(燃料オフガス)は、配管a3、a4を流通して燃料電池12の上流側に配置されたエゼクタ24に戻され、水素が循環するように構成されている。
【0027】
すなわち、エゼクタ24の導出ポートとアノード流路18の入口ポートとを接続する配管a2を含む複数の配管a2、a3、a4によって、水素循環ライン(燃料ガス循環ライン)が構成され、この水素循環ライン中に第1気液分離器26が配設されている。なお、エゼクタ24を省略して電動ポンプを配置して構成してもよい。
【0028】
第1気液分離器26は、アノード流路18の出口から排出されるアノードオフガス中に含まれる水分(結露水)を分離し、前記分離した水分を一時的に内部に貯留するものである。なお、第1気液分離器26における気液分離方式は、例えば、第1気液分離器26内において、アノードオフガスの流路断面積を増大させ、第1気液分離器26内を流通するアノードオフガスの流速を低下させることにより、水素に対して比重の大きい水分を分離する方式を採用することができる。またさらに、低温冷媒が流通する冷却管を配設し、この冷却管によってアノードオフガスを冷却して、水分を分離する方式を用いてもよい。
【0029】
第1気液分離器26内で水分が分離されたアノードオフガスは、配管a4を介して、エゼクタ24に戻され、一方、分離回収された水分は、第1気液分離器26の底部(例えば、タンク部)に一時的に貯留される。
【0030】
第1気液分離器26の底部は、配管a5、常閉型のドレン弁28、配管a6を介して、後記する希釈器32に接続されている。ドレン弁28は、第1気液分離器26に貯留された水分を排出するための弁であり、ECU60からの弁開信号(制御信号)によって弁開状態となると、第1気液分離器26の水分(貯留水)が、配管a5、ドレン弁28、配管a6を介して、希釈器32に排出される。
【0031】
なお、ドレン弁28は、燃料電池12や、燃料電池12の発電電力が充電される図示しないバッテリや図示しない降圧コンバータからの電力を用いて作動する。この他、パージ弁30や後記する排水弁47等も、燃料電池12等を電源として作動する。
【0032】
配管a4の途中の部位には、配管a7、常閉型のパージ弁30、配管a8を介して、希釈器32が接続されている。パージ弁30は、燃料電池12の発電時において、水素循環ライン(配管a2〜a4)を循環するアノードオフガス(水素)に含まれる不純物(窒素等)を排出(パージ)するバルブである。なお、アノード系14において、配管a3、a4(分岐部分まで)、a7、a8は、燃料オフガス排出流路として機能するものである。
【0033】
カソード系16は、駆動力を与えられることでエアを強制的に取り込み送出する圧縮機(コンプレッサ)34と、加湿器38と、前記圧縮機34に対して回転駆動力を伝達する伝達軸40aで連結されたエキスパンダタービン(膨張手段)40と、希釈器32と、前記希釈器32と一体的に構成された第2気液分離器(水回収手段)42と、前記圧縮機34の上流側の配管b1内に水を噴射する水噴射機構44a(44b)とを備えている。
【0034】
圧縮機34は、モータ35の動力を得て、またはモータ35の動力およびエキスパンダタービン40の回生エネルギ(動力)を得て駆動されるものであり、伝達軸40aを介して伝達される回転駆動力によって図示しないタービンブレードが回転駆動される。前記圧縮機34のタービンブレードが回転駆動されることにより、酸素を含むエアが取り込まれて燃料電池12に供給するようになっている。前記伝達軸40aは、図示しない軸受けを介して回転自在に軸支される。この圧縮機34は、下流側の配管b2を介して加湿器38に接続される。
【0035】
また、圧縮機34は、モータ35と図示しない電磁クラッチを介して接続され、ECU60によってモータ35の回転速度が制御される。また、圧縮機34とエキスパンダタービン40とを接続する伝達軸40aにも、電磁クラッチ41が設けられ、圧縮機34とエキスパンダタービン40とを接続・遮断できるようになっている。すなわち、電磁クラッチ41が接続されることにより、エキスパンダタービン40の回生エネルギを圧縮機34の動力として回収できる。また、電磁クラッチ41が遮断されることにより、エキスパンダタービン40の回生エネルギを遮断できる。なお、本実施形態では、伝達軸40aに電磁クラッチ41を設けた構成を示したが、電磁クラッチ41を設けずに圧縮機34とエキスパンダタービン40とを伝達軸40aで直結するようにしてもよい。なお、図1では、エキスパンダタービン40と圧縮機34とが伝達軸40aを介して同軸に配設される場合を例示しているが、異軸に構成されてもよい。
【0036】
加湿器38は、燃料電池12のカソード流路20の入口ポートに接続される配管b3とカソード流路20の出口ポートに接続される配管b4とを跨ぐように配設され、カソード流路20に向うエアを加湿するように構成されている。この加湿器38は、水分交換可能な図示しない中空糸膜を備え、この中空糸膜を介して、カソード流路20に向うエアと、多湿のカソードオフガスとの間で水分が交換可能となっている。加湿器38のカソードオフガスの出口ポートは、配管b5を介してエキスパンダタービン40の上流側と接続されている。また、カソード系16において、配管b1〜b3は、酸化剤供給流路として機能するものである。
【0037】
エキスパンダタービン40は、燃料電池12から排出されたカソードオフガス(排出酸化剤)の圧力を吸収(減圧)する回生タービン(膨張手段)として機能するものである。すなわち、燃料電池12から排出された(比較的高圧の)カソードオフガスの排気エネルギによってエキスパンダタービン40(回生タービン)が回転駆動され、このエキスパンダタービン40の回転力(回生エネルギ)が伝達軸40aを介して圧縮機34に伝達される。
【0038】
この場合、エキスパンダタービン40がカソードオフガスで回転駆動されることにより、前記カソードオフガスが膨張して冷却される。すなわち、エキスパンダタービン40を通過するカソードオフガスが膨張して圧力が低下することによりカソードオフガスの温度が低下し、カソードオフガスの一部が凝縮水(カソード側の凝縮水)となる。この凝縮水及びエキスパンダタービン40を通過したカソードオフガスは、配管b7を介して下流側に接続される希釈器32に排出される。
【0039】
希釈器32は、例えば、多段に積層されたボックス体からなり、各層間を連通する希釈空間が形成されている。例えば、希釈器32を構成する最下段の希釈空間部内には、第2気液分離器42が一体的に設けられている。また、この希釈器32は、パージ時(パージ弁30が弁開状態のとき)に配管a8から導入されるアノードオフガス中の水素を、エキスパンダタービン40を通過して排出されるカソードオフガスで希釈するものであり、この希釈されたアノードオフガスは、カソードオフガスとともに第2気液分離器42、配管b8、図示しないサイレンサ(消音器)等を経由して大気中に排出される。したがって、エキスパンダタービン40の下流は、大気に連通することにより、大気圧に近い圧力となっている。
【0040】
第2気液分離器42は、凝縮水を貯水する貯水部42a(水回収手段)を備えており、前記希釈器32の希釈空間で希釈されたアノードオフガスに含まれる水分が分離回収され、貯水部42aに貯留される。このように希釈器32内に第2気液分離器42および貯水部42aを配設して一体化することにより、燃料電池システム10を小型化することができる。なお、貯水部42aには、ドレン弁28が弁開状態となったとき、配管a5,a6を介して第1気液分離器26で貯留された水(アノード側の凝縮水)が貯留される。
【0041】
なお、本実施形態では、希釈器32内に貯水部42aを備えた第2気液分離器42を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、希釈器32と、貯水部42aを備えた第2気液分離器42とを別体で構成してもよい。また、本実施形態では、第2気液分離器42に貯水部42aを設けた場合を例に挙げて説明したが、希釈器32、第2気液分離器42、貯水部42aをそれぞれ別体で構成してもよい。また、貯水部42aを備えた第2気液分離機42が、希釈器32とエキスパンダタービン40との間の配管b7に設けられていてもよく、貯水部42aのみが希釈器32とエキスパンダタービン40との間の配管b7に設けられていてもよい。
【0042】
前記第2気液分離器42で分離され、貯水部42aに回収された水(凝縮水)は、配管b9を介して水噴射機構44a,44b(水噴射手段)に導入される。この水噴射機構44a,44bは、貯水部42aに貯留された凝縮水を圧縮機34の上流側に噴射し、配管b1内を流通するエアを加湿するものである。なお、カソード系16において、配管b4〜b7は、酸化剤排出流路として機能するものである。
【0043】
図2(a)に示す水噴射機構44aは、オリフィスタイプを示したものであり、圧縮機34の上流側の配管b1中にオリフィス部50を設け、配管b1の下流側に設けられた圧縮機34の作用で取り込まれたエアをオリフィス部50に通すようになっている。そして、前記取り込まれたエアは、オリフィス部50を通過する際にその流速が増すと共にオリフィス部50の出口側の圧力が低下し、負圧が発生する。この負圧による吸引作用によって第2気液分離器42の貯水部42a内に貯留された水が管路b9を通じて導出され、エアが流通する配管b1に対して好適に水を噴射することができる。
【0044】
また、図2(b)に示す水噴射機構44bは、ポンプタイプを示したものであり、第2気液分離器42内の貯水部42aの水を電動ポンプ56で吸い上げ、配管b1内に臨むインジェクタ58の先端部から電動ポンプ56で吸い上げた水を噴射させるものである。
【0045】
図1に戻って、貯水部42aには、常閉型の排水弁47を備えた配管b10が接続されている。排水弁47は、貯水部42aに貯留された凝縮水を外部(車外)に排出するものであり、排水弁47を弁開状態とすることにより、貯水部42aに貯留された水を排出して、貯水部42a内の水を除去することができる。
【0046】
冷却系17は、冷媒を循環させて燃料電池12を冷却するものであり、燃料電池12に形成された冷媒流路(不図示)と接続され、冷媒流路の出口ポートが配管c1を介してラジエータ36の入口ポートと接続され、ラジエータ36の出口ポートが配管c2、冷媒ポンプ37、配管c3を介して冷媒流路の入口ポートと接続されて構成されている。なお、図示していないが、冷却系17は、ラジエータ36をバイパスするバイパス配管、ラジエータ36とバイパス配管の流路を切り替える切替弁(サーモスタット弁)を備えている。
【0047】
このような冷却系17では、例えば、燃料電池12の温度が高温(所定温度以上)となった場合に、冷媒がラジエータ36を通流するように切替弁が切り換えられることにより、ラジエータ36で放熱された冷媒が燃料電池12に導入されるようになり、燃料電池12が冷却される。
【0048】
ECU60(制御部)は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、プログラムなどを記憶したROM(Read Only Memory)などで構成され、圧縮機34のモータ35および冷媒ポンプ37のモータ(不図示)の回転速度を制御し、水噴射機構44b(電動ポンプ、インジェクタ)を制御し、排水弁47、ドレン弁28、パージ弁30の開閉を制御する。
【0049】
また、ECU60は、配管c1に設けられた燃料電池12の冷媒の出口温度(燃料電池関連温度)を検出する冷媒温度センサ61(温度センサ)、圧縮機34の吸気温度(燃料電池関連温度)を検出する吸気温度センサ62(温度センサ)、外気温度(燃料電池関連温度)を検出する外気温度センサ63(温度センサ)、貯水部42aの水位を検出する水位センサ64からの検出値(冷媒温度、吸気温度、外気温度、水位)を取得する。
【0050】
また、ECU60は、IG65から燃料電池システム10を起動(システム起動)するIG−ON信号、燃料電池システム10を停止(システム停止)するIG−OFF信号を取得する。また、ECU60は、貯水部42a内の水を除去する時間を計測するタイマ66と接続され、このタイマ66により計測された時間(水除去処理時間)を取得するように構成されている。
【0051】
また、ECU60は、システム停止時(IG−OFF)に、次回システム起動時(次回のIG−ON時)に凝縮水が凍結しないと判断した場合には凝縮水を貯水部42aに貯留する貯水処理を行い、次回システム起動時に凝縮水が凍結すると判断した場合には凝縮水を貯水部42aから排出する水除去処理を行う手段を備えている。例えば、次回システム起動時における次回起動温度を予測し、凍結するか否かを決定するための所定値(例えば、1気圧下で純水の凝固点である0℃)を基準として、予測した次回起動温度が所定値を超える場合には凍結しないと判断して貯水処理を行うことができ、また所定値以下の場合に凍結すると判断して水除去処理を行う。
【0052】
なお、次回起動温度の予測は、例えば、外気温度、カレンダ情報、GPS情報のうち、少なくともいずれかひとつを用いて予測することができる。外気温度は、例えば、システム停止時(現在)の車外の気温であり、外気温度センサ63によって検出することができる。なお、外気温度の検出は、外気温度センサ63に限定されるものではなく、吸気温度センサ62により検出するようにしてもよい。カレンダ情報とは、現在の年月日、曜日、時刻などであり、例えば、季節(例えば、夏季であるか、冬季であるか)に基づいて凍結の有無を判断できる。GPS情報とは、例えば、GPS用の人工衛星から送られてくる情報(例えば、経度、緯度)を含むものであり、例えば車両に搭載されたカーナビゲーション装置により算出された情報に基づいて自車位置(例えば、沖縄であるか、北海道であるか)が算出される。
【0053】
また、次回起動温度については、外気温度とカレンダ情報とGPS情報の複数を組み合わせて予測してもよい。また、次回起動温度を予測する他の手段としては、これまでの運転パターンに基づいて予測してもよく、気象情報に基づいて予測してもよい。
【0054】
前記貯水処理を行う場合には、図3(a)に示すように、運転温度(燃料電池関連温度)と必要水蒸気量(燃料電池12に必要な水蒸気量)との関係を示すマップ、および、図3(b)に示すように、運転圧力(燃料電池12の圧力)と必要水蒸気量(燃料電池12に必要な水蒸気量)との関係を示すマップに基づいて、検出した運転温度(運転温度、燃料電池関連温度)から運転圧力(燃料電池12に必要な運転圧力)を求めることができる。なお、運転圧力とは、カソード流路20を通流するエアに必要とされる圧力(目標圧力)を意味している。
【0055】
図3(a)に示すマップは、燃料電池12で所定の電力を発生させる際に、燃料電池12を通流する空気の圧力(燃料電池12の圧力)が一定である場合において、燃料電池12の温度(燃料電池関連温度)と、燃料電池12に導入される空気が相対湿度100%となるための必要水蒸気量(燃料電池12に必要な水蒸気量:g/min)との関係を示している。これは、温度上昇に伴い、飽和水蒸気圧が上がるためである。図3(b)に示すマップは、燃料電池12で所定の電力を発生させる際に、燃料電池12の温度が一定である場合において、燃料電池12を通流する空気の圧力(燃料電池12の圧力)と、燃料電池12に導入される空気が相対湿度100%となるための必要水蒸気量(燃料電池12に必要な水蒸気量:g/min)との関係を示している。これは、圧力を高くすると、飽和水蒸気圧が低下するためである。
【0056】
よって、図3(a)および図3(b)に示すマップにより、運転圧力を上昇させることにより、燃料電池12(カソード流路20)に供給されるエアを相対湿度100%にするのに必要な水蒸気量を減少させることが可能になる。換言すると、運転温度が上昇したとしても、運転圧力を高くすることによって飽和水蒸気圧の上昇を抑え、相対湿度を100%に近づけることができる。つまり、図3(a)および図3(b)のマップを参照して運転圧力を調整することにより、燃料電池12から凝縮水として排出する量を調整することができる。したがって、運転温度に基づいて運転圧力を制御することにより、凝縮水量を調整することができる(図7(a)参照)。なお、図3(a)および図3(b)に示す各マップは、燃料電池12の電解質膜の種類等に応じて適宜変更されるものであり、実験やシミュレーションなどによって予め求められる。
【0057】
図4は、燃料電池12の運転圧力とエキスパンダタービン40で発生する水分量(凝縮水量)との関係を示すグラフである。すなわち、図4に示すように、運転圧力が上昇すると、エキスパンダタービン40での前後差圧が拡大するので、エキスパンダタービン40を通過後の温度低下が大きくなり、カソードオフガスに含まれる水蒸気から凝縮水になる量が増加する。したがって、運転圧力を上昇させることにより、エキスパンダタービン40において発生する凝縮水量が増加する。これにより、貯水部42aを介して圧縮機34に供給される水噴射量を増加させることができる。
【0058】
図5は、通常運転時(システム起動時、IG−ON時)での運転圧力を決定するための概略図である。図5に示すように、ECU60は、運転温度と運転圧力との関係を示すマップに基づいて、運転温度から運転圧力を決定することができる。なお、運転温度とは、例えば、冷媒温度センサ61によって検出されるFC(燃料電池)冷媒温度である。
【0059】
また、図5に示すように、ECU60は、燃料電池12から取り出される電流指令値(IFC(A))に応じたマップ(IFC:大、中、小のいずれか)を複数備えており、これらの中から適宜選択して、運転圧力を決定することができる。このように、システム起動時には、運転温度が上昇するにつれて運転圧力も上昇するように制御される。
【0060】
なお、図5は、3段階(IFC:大、中、小)を示すマップであるが、これに限定されるものではなく、さらに多数の電流指令値に応じたマップ(10段階、20段階など)に基づいて決定してもよい。また、電流指令値(IFC)は、スロットル開度(アクセルペダルの踏込み量)のみに基づいて設定されるものではなく、燃料電池12の発電電力を高電圧バッテリ(不図示)に充電するのに必要な電力、発電電力を補機類に供給するのに必要な電力など総合的に判断して設定されるものである。
【0061】
図6は貯水処理および水除去処理を示すフローチャートである。なお、本実施形態の燃料電池システム10では、伝達軸40aに設けられた電磁クラッチ41は繋がってエキスパンダタービン40の回生エネルギが圧縮機34に伝達されているものとして説明する。
【0062】
ステップS101において、ECU60は、IG65がオフ(IG−OFF)にされたか否かをIG−OFF信号に基づいて判断し、IG−OFFされていないと判断した場合には(No)、ステップS101の処理を繰り返し、IG−OFF(システム停止)されたと判断した場合には(Yes)、ステップS102に進む。
【0063】
ステップS102において、ECU60は、次回起動時における温度(次回起動温度)を予測する。なお、次回起動温度は、前記したように、外気温度、カレンダ情報、GPS情報の少なくともひとつに基づいて予測される。
【0064】
ステップS103に進み、ECU60は、予測した次回起動温度が所定値A以下であるか否かを判断する。所定値Aは、凝縮水が凍結するか否かを判断するための閾値であり、例えば0℃に設定される。なお、次回起動温度は、次回のシステム起動時点における温度に限定されるものではなく、システム停止から次回システム起動までの間において最も低く予測される温度(最悪の状況を想定した温度)に基づいて設定してもよい。これにより、0℃以下になっている最中にIG−ON(システム起動)されるのを防止できる。
【0065】
また、ステップS103において、ECU60は、次回起動温度が所定値Aを超えると判断した場合には(No)、貯水部42aの凝縮水は凍結しないと判断して、ステップS104に進む。
【0066】
<貯水処理>
ステップS104において、ECU60は、運転温度に基づいて運転圧力を決定する。運転圧力は、図7(a)において破線で示すマップ(貯水処理時マップ)に基づいて決定する。図7(a)は、運転温度に基づいて運転圧力を決定するためのマップであり、図3(a)および図3(b)のマップ、および、実験やシミュレーションなどによって予め求められる。図7(a)に示すマップに基づいて、運転圧力を決定することにより、エキスパンダタービン40で発生する凝縮水量を制御できる。例えば、運転温度が上昇するにつれて、カソードオフガスに含まれる水分が多くなるので、運転圧力を上昇させることにより、エキスパンダタービン40において発生する凝縮水量を増加させることができる。したがって、次回システム起動時に必要となる水量を確保することができる。
【0067】
そして、ステップS105に進み、ECU60は、水位センサ64からの水位(水位値)が所定水位(所定値)Bに到達したか否かを判断する。なお、所定水位Bは、例えば、貯水部42aが満水になる水位に設定される。ステップS105において、ECU60は、検出した水位が所定水位Bに到達していないと判断した場合には(No)、ステップS105の処理を繰り返し、検出した水位が所定水位Bに到達したと判断した場合には(Yes)、ステップS112に進み、圧縮機34の運転を停止する。
【0068】
このように、貯水処理を行う場合、運転温度が高いときには、カソードオフガスに含まれる水分が多いので、運転圧力を高めることにより、エキスパンダタービン40で発生する凝縮水を多く発生させることができる。また、運転温度が低いときには、カソードオフガスに含まれる水分が少ないので、運転圧力を低下させることにより、圧縮機34の消費電力が無駄に使用されるのを防止できる。
【0069】
<水除去処理>
ステップS103において、ECU60は、次回起動温度が所定値A以下であると判断した場合には(Yes)、貯水部42aに貯留された凝縮水が凍結すると判断して、ステップS106に進む。
【0070】
ステップS106において、ECU60は、運転温度に基づいて運転圧力を決定する。すなわち、図7(a)に示すマップ(実線で示す水除去処理時マップ)に基づいて、システム停止時の運転温度から運転圧力を決定する。水除去処理を行う場合には、図7(a)において破線で示す貯水処理時のマップよりも運転圧力を減圧する。
【0071】
このように、水除去処理時には、運転圧力を全体的に減圧して水除去処理を行うことにより、水分の蒸発を促進することができるので、圧力を上げて細部(流路等)に詰まった凝縮水を掃き出す点を考慮するよりも、乾燥の点において効果的である。なお、図示していないが、ECU60は、決定された運転圧力に対応した回転速度となるようにモータ35を制御して圧縮機34を駆動する。これにより、燃料電池12のカソード流路20を通流するエアの圧力が調整される。
【0072】
そして、ステップS107に進み、ECU60は、運転温度に基づいて水除去処理時間を決定する。すなわち、図7(b)に示すマップに基づいて、システム停止時の運転温度から水除去処理時間を決定する。図7(b)に示すように、運転温度が高い場合には、カソードオフガスに含まれる水分が多く、生成される凝縮水量も多くなるため、水除去処理時間が長く設定される。また、運転温度が低い場合には、カソードオフガスに含まれる水分が少なく、生成される凝縮水量も少なくなるため、水除去処理時間が短く設定される。なお、水除去処理時間については、現時点での貯水部42aの水位を加味して設定することが好ましい。
【0073】
なお、運転温度としては、FC冷媒温度を挙げることができるが、これに限定されるものではなく、燃料電池12の温度を直接に測定するものであってもよく、またアノード流路18の出口温度、カソード流路20の出口温度などであってもよい。また、FC冷媒温度などの運転温度を、外気温度や吸気温度に基づいて補正してもよい。
【0074】
そして、ステップS108に進み、ECU60は、排水弁47を開弁する。これにより、貯水部42aに貯留された凝縮水が、配管b10を介して外部への排出が開始される。排水弁47が開弁している間は、生成された凝縮水が配管b10を通って外部に排出されるので、貯水部42aに凝縮水が溜まることはない。
【0075】
そして、ステップS109に進み、ECU60は、タイマ66の作動を開始し、水除去処理時間の計測を開始する。
【0076】
そして、ステップS110に進み、ECU60は、決定された水除去処理時間が経過したか否かを判断し、水除去処理時間が経過していないと判断した場合には(No)、ステップS110の処理を繰り返し、水除去処理時間が経過したと判断した場合には(Yes)、ステップS111に進み、排水弁47を閉弁する。そして、ステップS112に進み、ECU60は、圧縮機34の運転を停止する。
【0077】
このように、水除去処理を行う場合、運転温度が高いときには、カソードオフガスに含まれる水分が多いので、運転圧力を高めることにより(図7(a)参照)、エキスパンダタービン40で発生する凝縮水が多く生成され、水除去処理時間が長く設定される(図7(b)参照)。また、運転温度が低いときには、カソードオフガスに含まれる水分が少ないので、運転圧力を低下させることにより、エキスパンダタービン40で発生する凝縮水が少なくなり、水除去処理時間が短く設定される。さらに、水除去処理を行う場合に貯水処理時よりも減圧運転を行うことにより、飽和水蒸気圧が上昇して水分の蒸発が促進することで、貯水部42aを含む凝縮水が流れる流路を乾燥させることが可能になる。
【0078】
<燃料電池システムの効果>
以上説明したように、本実施形態に係る燃料電池システム10によれば、システム停止時において次回システム起動時に貯水部42aに貯留された凝縮水が凍結しないと判断した場合には、システム停止時に貯水部42aに凝縮水を溜めておくことで、次回システム起動時に燃料電池12が高温状態でシステム起動された場合にも水不足(加湿不足)が生じるのを防止できる。
【0079】
また、本実施形態では、次回システム起動時における次回起動温度を予測し、次回起動温度が所定値Aより高い場合には貯水処理を行い、次回起動温度が所定値A以下の場合には水除去処理を行うようにしたものである。このように温度に基づいて予測することで、次回システム起動時において凝縮水が凍結するか否かを適切に判断することができる。その結果、燃料電池12の加湿が適切に行われなくなるのを防止できる。
【0080】
また、本実施形態によれば、膨張手段としてエキスパンダタービン40、当該エキスパンダタービン40の回生エネルギを得て圧縮機34に駆動力を伝達する伝達軸40aを備えることで、カソードオフガス(排出酸化剤)の圧力を有効に利用することができ、圧縮機34の消費電力を低減することができる。
【0081】
また、本実施形態では、貯水処理を行う場合、図3(a)および図3(b)の関係から得られた図7に示すマップ(破線)に基づいて、検出した運転温度を用いて運転圧力を求め、水位センサ64による水位値が所定水位Bに到達するまで前記運転圧力となるように圧縮機34を制御するものである。これにより、次回システム起動時に貯水部42aから凝縮水を直ちに噴射できるので、高温始動時などにおける水不足(加湿不足)を回避することができる。さらに、運転温度が高い場合には、運転圧力を高めて、エキスパンダタービン40の前後差圧を大きくして、カソードオフガスの温度を大きく低下させることにより、凝縮水量の発生を多くして、貯水部42aに短時間で凝縮水を溜めることができる。また、運転温度が低い場合には、運転圧力を低下させることで、モータ35の消費電力を低減することができる。
【0082】
また、本実施形態では、水除去処理を行う場合、図3(a)および図3(b)の関係から得られた図7に示すマップ(実線)に基づいて、検出した運転温度を用いて運転圧力を求め、この運転圧力に対応した回転速度でモータ35を制御して圧縮機34を駆動するともに、排水弁47を開弁して水除去処理時間が経過するまで水排出を行うものである。これにより、システム停止中に氷点下に至る可能性があるときに水除去処理を行うことで、次回システム起動時での凍結を防止することで燃料電池12に対して加湿が適切になされなくなるのを防止することができる。
【0083】
また、本実施形態によれば、次回起動温度として、外気温度、カレンダ情報、GPS情報のうち、少なくともいずれかひとつを用いることにより、次回起動温度を適切に予測することが可能になる。
【0084】
<変形例>
なお、本発明は前記した実施形態に限定されるものではなく、図8の変形例に示すように、圧縮機34と加湿器38との間の配管b2にさらに別のエア供給機39を設けた燃料電池システム10Aとしてもよい。このエア供給機39は、例えば、エアコンプレッサやファン等からなり、エキスパンダタービン40の回生エネルギによらないで図示しない電動モータによって駆動される。このエア供給機39は、ECU60からの制御信号に基づいて作動すると、配管b1から酸素を含むエアが取り込まれて燃料電池12に供給するようになっている。図8に示す変形例では、燃料電池12に対する上流側に圧縮機34を配設し、その下流側にエア供給機39を直列に配設するようにしているが、これに限定されるものではなく、燃料電池12に対する上流側にエア供給機39を配設し、その下流側に圧縮機34を配設するようにしてもよい。
【0085】
また、本実施形態では、膨張手段として断熱機械膨張式のエキスパンダタービン40を例に挙げて説明したが、断熱機械膨張式に限定されるものではなく、断熱自由膨張式のものを用いて構成するようにしてもよい。断熱自由膨張式のものとしては、エキスパンダタービン40に替えて配管b5上に背圧弁を設ける構成を挙げることができ、背圧弁の開度を絞ることにより、背圧弁の上流側の圧力が高く、下流側の圧力が低くなって、背圧弁の前後差圧が大きくなり、凝縮水の発生を促進することができる。
【0086】
また、本実施形態では、加湿器38を備えた燃料電池システム10を例に挙げて説明したが、圧縮機34の上流に凝縮水を噴射する構成のみで燃料電池12の加湿が適切に行われるものであれば、加湿器38を備えない燃料電池システムであってもよい。
【符号の説明】
【0087】
10,10A 燃料電池システム
12 燃料電池
34 圧縮機
40 エキスパンダタービン
40a 伝達軸
42 第2気液分離器(水回収手段)
42a 貯水部(水回収手段)
44a,44b 水噴射機構(水噴射手段)
47 排水弁
60 ECU(制御部)
61 冷媒温度センサ(温度センサ)
62 吸気温度センサ(温度センサ)
63 外気温度センサ(温度センサ)
64 水位センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料と酸化剤とが供給されて発電を行う燃料電池と、
前記燃料電池に供給される酸化剤が通流する酸化剤供給流路と、
前記燃料電池から排出される排出酸化剤が通流する酸化剤排出流路と、
前記酸化剤排出流路に配置され、前記排出酸化剤を膨張させる膨張手段と、
前記酸化剤供給流路に配置される圧縮機と、
前記膨張手段の下流に配置され、凝縮水を回収する水回収手段と、
前記水回収手段により回収された凝縮水を前記酸化剤供給流路に噴射する水噴射手段と、を備え、
システム停止時に、次回システム起動時に凝縮水が凍結しないと判断した場合には凝縮水を前記水回収手段に貯留する貯水処理を行い、次回システム起動時に凝縮水が凍結すると判断した場合には凝縮水を前記水回収手段から排出する水除去処理を行う制御部を備えることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
前記制御部は、次回システム起動時における次回起動温度を予測し、前記次回起動温度が所定値より高い場合には前記貯水処理を行い、前記次回起動温度が所定値以下の場合には前記水除去処理を行うことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記膨張手段は、エキスパンダタービン、および当該エキスパンダタービンの回生エネルギを得て前記圧縮機に駆動力を伝達する伝達軸を備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記水回収手段は、凝縮水を貯留する貯水部を備え、
前記貯水部の水位を検出する水位センサおよび前記燃料電池の温度に関連した燃料電池関連温度を検出する温度センサを備え、
前記制御部は、システム停止時に前記貯水処理を行う場合、前記燃料電池関連温度と前記燃料電池に必要な水蒸気量との関係、および、前記燃料電池の圧力と前記燃料電池に必要な水蒸気量との関係に基づき、検出した前記燃料電池関連温度を用いて前記燃料電池に必要な運転圧力を求め、前記水位センサによる水位値が所定値に到達するまで、前記運転圧力となるように前記圧縮機を制御することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記水回収手段は、回収された凝縮水を外部に排出する排水弁を備え、
前記制御部は、システム停止時に前記水除去処理を行う際、前記燃料電池関連温度と水除去処理時間との関係を用いて、検出した前記燃料電池関連温度に基づいて前記水除去処理時間を求め、
前記燃料電池関連温度と前記燃料電池に必要な水蒸気量との関係、および、前記燃料電池の圧力と前記燃料電池に必要な水蒸気量との関係に基づき、検出した前記燃料電池関連温度を用いて前記燃料電池に必要な運転圧力を求めて、前記運転圧力に応じた前記圧縮機の制御と、前記排水弁による水排出と、を前記水除去処理時間が経過するまで行うことを特徴とする請求項4に記載の燃料電池システム。
【請求項6】
前記制御部は、外気温度、カレンダ情報、GPS情報のうち、少なくともいずれかひとつを用いて前記次回起動温度を予測することを特徴とする請求項2から請求項4のいずれか1項に記載の燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−164457(P2012−164457A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−22543(P2011−22543)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】