説明

燃料電池システム

【課題】所望の改質処理が迅速且つ確実に遂行されるとともに、排ガスの有効利用を図ることを可能にする。
【解決手段】燃料電池システム10は、燃料電池スタック12、酸化剤ガス流量制御装置26、改質装置28、原燃料流量制御装置30及び排ガス流量制御装置32を備える。燃料電池システム10では、酸化剤ガス流量制御装置26は、燃料電池24が起動して燃料電池スタック12が規定温度に昇温されるまで、酸化剤ガスを改質装置28に供給して部分酸化改質を行わせるための起動用酸化剤ガス流量調整弁36を備えるとともに、排ガス流量制御装置32は、前記規定温度に達した後、排ガスを前記改質装置28に供給して前記部分酸化改質及び水蒸気改質を行っている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解質をアノード電極とカソード電極とで挟んで構成される電解質・電極接合体が、セパレータ間に積層される燃料電池を備え、複数の前記燃料電池が積層される燃料電池スタックを備える燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、固体電解質型燃料電池(以下、SOFCともいう)は、電解質に酸化物イオン導電体、例えば、安定化ジルコニアを用いており、この電解質の両側にアノード電極及びカソード電極を配設した電解質・電極接合体(MEA)を、セパレータ(バイポーラ板)によって挟持している。このSOFCは、通常、電解質・電極接合体とセパレータとが所定数だけ積層された燃料電池スタックとして使用されている。
【0003】
SOFCは、アノード電極に供給される燃料ガスと、カソード電極に供給される酸化剤ガスとの発電反応により電力を得るとともに、発電反応後の燃料ガス及び酸化剤ガス(以下、排ガス又はオフガスともいう)が排出されている。この排ガス中には、未反応の燃料ガスや酸化剤ガスが含まれるとともに、水分の他、SOFCの燃料として利用できる一酸化炭素も含まれており、この排ガスの有効利用が望まれている。
【0004】
そこで、例えば、特許文献1に開示されている燃料電池システムでは、燃料電池のアノード排ガス、あるいは、カソード排ガスの一部を改質器へ還流するための排ガス循環流路及び循環ブロアを設けており、還流した排ガスを高温雰囲気中に液体燃料を供給して気化させている。これにより、負荷変動に対する応答性を改善することができる、としている。
【0005】
また、特許文献2に開示されている固体酸化物形燃料電池システムでは、固体酸化物形燃料電池の燃料側排ガスをリサイクルして原燃料と混合して改質する構成を有している。
【0006】
具体的には、図7に示すように、固体酸化物形燃料電池1の燃料極側下流の経路に、入口が1つで出口が2つある分岐管2を備えている。分岐管2の入口と2つの出口で圧力計測を行うことで、高温燃料排ガスのリサイクル流量に関する情報を得、さらに、燃料ガス経路に流量制御弁3、もしくは、送風機、もしくは、圧縮機を備え、前記の流量に関する情報に基づいて、流量制御弁3、もしくは、送風機、もしくは、圧縮機を制御することにより、燃料リサイクル流量を制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−246047号公報
【特許文献2】特開2004−152539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の特許文献1では、負荷変動に対応して、液体燃料のコーキングを防止するものであり、排ガスを気化器に噴射供給している。
【0009】
一方、上記の特許文献2では、排ガスをリサイクルして原燃料と混合するものの、混合された後の改質器の作用については、何ら開示されていない。
【0010】
通常、SOFCは、原燃料として都市ガスが用いられる際、水蒸気改質が行われている。水蒸気改質は、吸熱反応であり、原燃料に対してより高い熱量を取り出すことができるため、高い熱効率が得られている。一方、水蒸気改質では、水を供給するためのポンプや、水を蒸気化するための蒸発器等の補機が必要となっている。
【0011】
これに対して、部分酸化改質は、発熱反応であり、投入する原燃料より得られる熱量は少なくなるものの、水を用いないため、ポンプや蒸発器等が不要になり、構成の簡素化が図られる。
【0012】
このように、水蒸気改質は、安定的に連続運転する際に好適であるものの、急速昇温には不向きである一方、部分酸化改質は、昇温時間を短くすることができる等、両者にはそれぞれ利点及び欠点が存在している。
【0013】
本発明は、この種の改質反応の相違を良好に活用することができ、しかも、発電反応後の排ガスをリサイクルして効率的な改質処理を可能にする燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、電解質をアノード電極とカソード電極とで挟んで構成される電解質・電極接合体が、セパレータ間に積層される燃料電池を備え、複数の前記燃料電池が積層される燃料電池スタックと、前記カソード電極に供給される酸化剤ガスの供給量を制御する酸化剤ガス流量制御装置と、原燃料を改質して前記アノード電極に供給される燃料ガスを生成する改質装置と、前記改質装置に供給される前記原燃料の供給量を制御する原燃料流量制御装置と、前記燃料電池スタックの発電反応により発生する排ガスの一部を、前記改質装置に導入させるとともに、排ガス供給量を制御する排ガス流量制御装置とを備える燃料電池システムに関するものである。
【0015】
この燃料電池システムでは、酸化剤ガス流量制御装置は、酸化剤ガスを燃料電池に供給する発電用酸化剤ガス流量制御部と、前記燃料電池が起動して燃料電池スタックが規定温度に昇温されるまで、前記酸化剤ガスを改質装置に供給して部分酸化改質を行わせるための起動用酸化剤ガス流量制御部とを備えている。
【0016】
そして、排ガス流量制御装置は、燃料電池スタックが規定温度に達した後、排ガスを改質装置に供給して部分酸化改質及び水蒸気改質を行わせている。
【0017】
また、この燃料電池システムでは、燃料電池スタックが規定温度に達した際、原燃料流量制御装置により改質装置に供給される原燃料中の炭素分と、排ガス流量制御装置により前記改質装置に供給される排ガス中の酸化剤ガスとのモル比が、0.55〜0.80に設定されるとともに、前記排ガス流量制御装置により前記改質装置に導入される排ガス供給量は、全排ガス量の15〜40%に設定されることが好ましい。
【0018】
さらに、この燃料電池システムでは、規定温度に達する前、原燃料流量制御装置により改質装置に供給される原燃料と、起動用酸化剤ガス流量制御部により前記改質装置に供給される酸化剤ガスとの体積比が、理論空燃比×0.9〜理論空燃比に設定されることが好ましい。
【0019】
さらにまた、この燃料電池システムでは、規定温度から定格温度までの間、原燃料流量制御装置により改質装置に供給される原燃料と、排ガス流量制御装置により前記改質装置に供給される排ガス中の酸化剤ガスとの体積比が、理論空燃比×0.9〜理論空燃比に設定されるとともに、前記排ガス流量制御装置により前記改質装置に導入される排ガス供給量は、全排ガス量の15〜40%に設定されることが好ましい。
【0020】
また、この燃料電池システムでは、規定温度から発電を開始することが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、起動用酸化剤ガス流量制御部は、燃料電池が起動して燃料電池スタックが規定温度に昇温されるまで、酸化剤ガスを改質装置に直接供給して部分酸化改質を行わせている。このため、燃料電池スタックの起動初期には、部分酸化改質による発熱量を前記燃料電池スタックの昇温のための熱量として利用することができる。従って、燃料電池スタックは、急速昇温される。
【0022】
次いで、燃料電池スタックが、規定温度、すなわち、前記燃料電池スタック中で燃料ガスの自然発火が起こる温度に達した後、燃料電池の発電により発生する排ガスの一部が、改質装置に供給される。これにより、排ガス中に含有されている水蒸気を利用して水蒸気改質が行われるとともに、前記排ガス中に含有されている未反応の酸化剤ガスを利用して部分酸化改質が行われる。このため、部分酸化改質だけを行う場合に比べ、熱効率が良好に向上する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態に係る燃料電池システムの概略構成説明図である。
【図2】前記燃料電池システムの運転方法を説明するフローチャートである。
【図3】改質器空気量と燃料量との理論空燃比の説明図である。
【図4】前記改質器空気量と前記燃料量とセル電圧の説明図である。
【図5】部分酸化改質の空燃比に基づくマップである。
【図6】前記燃料電池システムが発電中である際の概略説明図である。
【図7】特許文献2の固体酸化物形燃料電池システムの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1に示すように、本発明の実施形態に係る燃料電池システム10は、定置用の他、携帯用や車載用等の種々の用途に用いられている。
【0025】
燃料電池システム10は、燃料電池スタック12を備える。燃料電池スタック12は、例えば、安定化ジルコニア等の酸化物イオン導電体で構成される固体電解質(固体酸化物)14をアノード電極16とカソード電極18とで挟んで構成される電解質・電極接合体20を一対のセパレータ22で挟持する固体酸化物形の燃料電池(SOFC)24を設ける。複数の燃料電池24は、鉛直方向又は水平方向に積層される。
【0026】
燃料電池24は、アノード電極16の中央に燃料ガス(水素ガスにメタン、一酸化炭素が混合した気体)が供給される一方、カソード電極18の中央に酸化剤ガス(空気)が供給され、電解質・電極接合体20の外周部から排ガスが排出される、所謂、シールレス型燃料電池を構成する。
【0027】
燃料電池システム10は、カソード電極18に供給される酸化剤ガスの供給量を制御する酸化剤ガス流量制御装置26と、原燃料(例えば、都市ガス13A)を改質してアノード電極16に供給される燃料ガスを生成する改質装置28と、前記改質装置28に供給される前記原燃料の供給量を制御する原燃料流量制御装置30と、前記燃料電池スタック12の発電反応により発生する排ガスの一部を、前記改質装置28に導入させるとともに、排ガス供給量を制御する排ガス流量制御装置32とを備える。
【0028】
酸化剤ガス流量制御装置26は、後述する規定温度での運転から定格温度での運転時に、燃料電池スタック12に酸化剤ガスを供給する発電用酸化剤ガス流量調整弁(流量制御部)34と、燃料電池24が起動して燃料電池スタック12が規定温度に昇温されるまで、酸化剤ガスを改質装置28に供給して部分酸化改質を行わせるための起動用酸化剤ガス流量調整弁(流量制御部)36とを備える。
【0029】
発電用酸化剤ガス流量調整弁34は、発電用酸化剤ガス供給路40aに配設される一方、起動用酸化剤ガス流量調整弁36は、改質用酸化剤ガス供給路40bに配設される。
【0030】
発電用酸化剤ガス供給路40a及び改質用酸化剤ガス供給路40bは、一端で合流して空気ポンプ42に連通する。発電用酸化剤ガス供給路40aの他端は、熱交換器44を介して燃料電池スタック12のアノード電極16に連通する。改質用酸化剤ガス供給路40bの他端は、改質装置28を構成する部分酸化改質反応器46に連通する。改質装置28は、部分酸化改質反応器46と水蒸気改質反応器48とを燃料流れ方向に配置するとともに、前記部分酸化改質反応器46には、点火装置(図示せず)が配設される。
【0031】
原燃料流量制御装置30は、燃料流量調整弁50を備え、この燃料流量調整弁50は、原燃料供給路52に配設される。原燃料供給路52の上流側には、燃料ポンプ54が配置されるとともに、前記原燃料供給路52の下流側は、部分酸化改質反応器46に接続される。
【0032】
排ガス流量制御装置32は、排ガス流量調整弁56を備え、この排ガス流量調整弁56は、燃料電池スタック12の排ガス配管58に配置され、前記排ガス配管58は、熱交換器44に配設される。排ガス流量調整弁56には、排ガス戻り配管60の一端が連通するとともに、前記排ガス戻り配管60の他端は、改質装置28の部分酸化改質反応器46に連通する。
【0033】
発電用酸化剤ガス供給路40aには、発電用酸化剤ガス流量調整弁34の下流近傍に流量計62aが配置される。改質用酸化剤ガス供給路40bには、起動用酸化剤ガス流量調整弁36の出口近傍に流量計62bが配置される。
【0034】
原燃料供給路52には、燃料流量調整弁50の出口近傍に流量計62cが配置され、排ガス戻り配管60には、排ガス流量調整弁56の出口近傍に流量計62dが配置されるとともに、前記流量計62dの下流には、空燃比センサ64が配設される。
【0035】
このように構成される燃料電池システム10の動作について、図2に示すフローチャートに沿って、以下に説明する。
【0036】
燃料電池システム10を構成する燃料電池スタック12が起動されると(ステップS1)、ステップS2に進んで、酸化剤ガス流量制御装置26及び原燃料流量制御装置30が駆動される。
【0037】
酸化剤ガス流量制御装置26では、発電用酸化剤ガス流量調整弁34の開度が調整されるとともに、起動用酸化剤ガス流量調整弁36の開度が調整される。一方、原燃料流量制御装置30では、燃料流量調整弁50の開度が調整される。このステップS2では、燃料流量調整弁50により改質装置28に供給される原燃料と、起動用酸化剤ガス流量調整弁36により前記改質装置28に供給される酸化剤ガスとの体積比が理論空燃比×0.9〜理論空燃比に設定される。
【0038】
この理論空燃比は、図3に示す関係を有し、改質装置28を構成する部分酸化改質反応器46では、完全燃焼される。
【0039】
このため、燃料電池スタック12のアノード電極16に供給される燃料ガス中には、一酸化炭素や未燃の酸素が残存することがなく、アノード電極16の酸化を阻止することができる。従って、部分酸化改質反応器46では、所望の部分酸化反応が得られ、発熱反応によって比較的に高温となった燃料ガスが、燃料電池スタック12のアノード電極16に供給される。
【0040】
なお、体積比が理論空燃比×0.9より小さいと、部分酸化反応で発生する熱エネルギーが減少し、昇温時におけるエネルギー効率が低下するため、昇温速度が遅くなる。また、体積理論空燃比より大きいと、酸化剤ガスが改質後の排ガス中に残存するため、電解質・電極接合体のアノード電極16を酸化して性能低下を引き起こす。
【0041】
理論空燃比は、原燃料の種類によって設定できる。例えば、水素、メタン、プロパン、都市ガスでは、体積比で換算して理論空燃比がそれぞれ2.58、9.52、23.8、9〜14となる。さらにメタノール、エタノール、液化石油ガス(LPG)、ガソリン、軽油では、重量比で換算して理論空燃比がそれぞれ6.45、9.0、15〜16、14〜16、14〜16となる。なお、都市ガス、液化石油ガス、ガソリン、軽油は、構成成分によって理論空燃比が変化する。
【0042】
一方、酸化剤ガス流量制御装置26では、空気ポンプ42を介して発電用酸化剤ガス流量調整弁34から熱交換器44を通って、燃料電池スタック12に空気が供給される。この空気は、熱交換器44を通る際に、燃料電池スタック12から排出された排ガスとの間で水分と熱の交換が行われており、燃料電池スタック12のカソード電極18には、比較的高温の酸化剤ガス(空気)が供給される。
【0043】
そして、スタック温度が、規定値未満である際には(ステップS4中、NO)、ステップS5に進んで、排ガス流量制御装置32を構成する排ガス流量調整弁56の開放作用下に、全ての排ガスが熱交換器44に供給される。これにより、燃料電池スタック12に供給される空気がさらに加熱される。
【0044】
一方、スタック温度が、規定値以上であると判断されると(ステップS4中、YES)、ステップS6に進む。なお、規定値とは、燃料ガスが燃料電池スタック12内で自然発火できる程度の温度である。
【0045】
ステップS6では、起動用酸化剤ガス流量調整弁36が閉塞されることにより、酸化剤ガスが改質装置28に直接供給されない状態にする。さらに、排ガス流量調整弁56の開度が設定される。このため、燃料電池スタック12から排出される排ガスは、熱交換器44と排ガス戻り配管60とに、それぞれ所定量ずつ流通される。
【0046】
ここで、燃料電池スタック12のA/F(空気量/燃料量)は、都市ガス13Aでは、発電下限値が8となる。この発電下限値は、図4に示すように、燃料電池スタック12の発電性能の下限値である。
【0047】
さらに、図5に示すように、部分酸化改質の空燃比、例えば、O/C(酸素と炭素のモル比に相当)のマップが作成される。そして、運転可能なO/Cの範囲で運転できるように設定し、より効率の良い高効率運転範囲となるように空燃比が設定される。次いで、排ガス中のO/Cが、上記の範囲を維持できるように、流量計62d及び空燃比センサ64で排ガスの物性値を測定し、排ガス流量調整弁56の開閉度が決定される。図5では、運転可能な範囲のO/Cは0.55〜0.80であり、最も高効率となる運転範囲となるO/Cは0.55〜0.65である。
【0048】
これにより、改質装置28は、燃料電池スタック12内での燃焼後の余剰の酸素を用いた部分酸化改質反応器46による部分酸化反応と、燃料電池スタック12内での燃焼ガス内の水素を用いた水蒸気改質反応器48による水蒸気改質とが行われる(ステップS7)。この状態が、図6に示されており、燃料電池スタック12による発電が、例えば、体積空燃比で8以上、スタック温度で600〜750℃になるように制御される。発電時の空燃比(スタック供給用空気/燃料)と理論空燃比との関係は、理論空燃比<空燃比(スタック供給用空気/燃料)となる。
【0049】
そして、スタック温度が、定格運転温度に達していない際には(ステップS8中、NO)、ステップS9に進んで、燃料電池スタック12に供給される酸化剤ガス量及び改質装置28に導入されるリサイクル量の増減が行われる。
【0050】
一方、スタック温度が、定格運転温度以上であると判断されると(ステップS8中、YES)、ステップS10に進んで、排ガス流量調整弁56の開度が調整される。規定温度から定格温度に移行する間、改質装置28に供給される原燃料と、前記改質装置28に供給される酸化剤ガスとの体積比が理論空燃比×0.9〜理論空燃比に設定されるとともに、前記改質装置28に導入される排ガス供給量は、全排ガス量の15〜40%に設定される。
【0051】
これにより、定格運転に移行し(ステップS11)、この定格運転時には、改質装置28に供給される原燃料中の炭素分と排ガス中の酸化剤ガスとのモル比が0.55〜0.80、より好ましくは、0.55〜0.65に設定し、運転されるとともに、前記改質装置28に導入される排ガス供給量は、全排ガス量の25%に設定される。そして、運転停止指令がなされるまで(ステップS12中、YES)、定格運転が継続される。
【0052】
モル比が0.55より小さいと、炭素が燃料電池スタック12内や電解質・電極接合体20で析出、すなわち、コーキングし易くなり、電極での触媒機能を低下させる。0.80より大きいと、コーキングするだけでなく、運転効率も低下する。モル比が0.55〜0.80の範囲で運転が可能となるが、0.55〜0.65の範囲で最も高い効率で運転できる。
【0053】
この場合、本実施形態では、起動用酸化剤ガス流量調整弁36は、燃料電池24が起動して燃料電池スタック12が規定温度に昇温されるまで開放され、酸化剤ガスを改質装置28に空気を直接供給して部分酸化改質を行わせている。このため、燃料電池スタック12の起動初期には、部分酸化改質による発熱量を前記燃料電池スタック12の昇温のための熱量として利用することができる。従って、燃料電池スタック12は、急速昇温される。
【0054】
次いで、燃料電池スタック12が、規定温度、すなわち、前記燃料電池スタック12中で燃料ガスの自然発火が起こる温度に達した後、燃料電池24の発電により発生する排ガスの一部が、改質装置28に供給される。これにより、改質装置28では、水蒸気改質反応器48において、排ガス中に含有されている水蒸気を利用して水蒸気改質が行われるとともに、部分酸化改質反応器46において、前記排ガス中に含有されている未反応の酸化剤ガスを利用して部分酸化改質が行われる。このため、部分酸化改質だけを行う場合に比べ、熱効率が良好に向上する。という効果が得られる。
【0055】
また、燃料電池システム10では、規定温度に達する前、原燃料流量制御装置30により改質装置28に供給される原燃料と、起動用酸化剤ガス流量調整弁36により前記改質装置28に供給される酸化剤ガスとの体積比が、理論空燃比×0.9〜理論空燃比に設定されている。従って、燃料流量に対して、理論空燃比の改質器空気を部分酸化触媒に供給することにより、改質後の燃料ガスは、完全燃焼することになる。これにより、酸素や一酸化炭素等の酸化剤ガスを含むことがない。
【0056】
さらに、燃料電池システム10では、規定温度に達した際、原燃料流量制御装置30により改質装置28に供給される原燃料中の炭素分と、排ガス流量制御装置32により前記改質装置28に供給される酸化剤ガスとのモル比が、0.55〜0.65に設定されるとともに、前記排ガス流量制御装置32により前記改質装置28に導入される排ガス供給量は、全排ガス量の15〜40%に設定されている。このため、所望の水蒸気改質と部分酸化改質とが良好に遂行されるという利点がある。
【0057】
さらにまた、燃料電池システムでは、規定温度から定格温度までの間、原燃料流量制御装置30により改質装置28に供給される原燃料と、排ガス流量制御装置32により前記改質装置28に供給される酸化剤ガスとの体積比が、理論空燃比×0.9〜理論空燃比に設定されるとともに、前記排ガス流量制御装置32により前記改質装置28に導入される排ガス供給量は、全排ガス量の15〜40%に設定されている。従って、部分酸化改質が良好に行われるとともに、所望の水蒸気改質が良好に遂行される。
【符号の説明】
【0058】
10…燃料電池システム 12…燃料電池スタック
14…固体電解質 16…アノード電極
18…カソード電極 20…電解質・電極接合体
24…燃料電池 26…酸化剤ガス流量制御装置
28…改質装置 30…原燃料流量制御装置
32…排ガス流量制御装置 34…発電用酸化剤ガス流量調整弁
36…起動用酸化剤ガス流量調整弁 42…空気ポンプ
44…熱交換器 46…部分酸化改質反応器
48…水蒸気改質反応器 50…燃料流量調整弁
52…原燃料供給路 54…燃料ポンプ
56…排ガス流量調整弁 58…排ガス配管
60…排ガス戻り配管 62a〜62d…流量計
64…空燃比センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質をアノード電極とカソード電極とで挟んで構成される電解質・電極接合体が、セパレータ間に積層される燃料電池を備え、複数の前記燃料電池が積層される燃料電池スタックと、
前記カソード電極に供給される酸化剤ガスの供給量を制御する酸化剤ガス流量制御装置と、
原燃料を改質して前記アノード電極に供給される燃料ガスを生成する改質装置と、
前記改質装置に供給される前記原燃料の供給量を制御する原燃料流量制御装置と、
前記燃料電池スタックの発電反応により発生する排ガスの一部を、前記改質装置に導入させるとともに、排ガス供給量を制御する排ガス流量制御装置と、
を備える燃料電池システムであって、
前記酸化剤ガス流量制御装置は、前記酸化剤ガスを前記燃料電池に供給する発電用酸化剤ガス流量制御部と、
前記燃料電池が起動して前記燃料電池スタックが規定温度に昇温されるまで、前記酸化剤ガスを前記改質装置に供給して部分酸化改質を行わせるための起動用酸化剤ガス流量制御部と、
を備えるとともに、
前記排ガス流量制御装置は、前記燃料電池スタックが前記規定温度に達した後、前記排ガスを前記改質装置に供給して前記部分酸化改質及び水蒸気改質を行わせることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
請求項1記載の燃料電池システムにおいて、前記燃料電池スタックが前記規定温度に達した際、前記原燃料流量制御装置により前記改質装置に供給される前記原燃料中の炭素分と、前記排ガス流量制御装置により前記改質装置に供給される前記排ガス中の前記酸化剤ガスとのモル比が、0.55〜0.80に設定されるとともに、
前記排ガス流量制御装置により前記改質装置に導入される前記排ガス供給量は、全排ガス量の15〜40%に設定されることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項3】
請求項1又は2記載の燃料電池システムにおいて、前記規定温度に達する前、前記原燃料流量制御装置により前記改質装置に供給される前記原燃料と、前記起動用酸化剤ガス流量制御部により前記改質装置に供給される前記酸化剤ガスとの体積比が、理論空燃比×0.9〜理論空燃比に設定されることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の燃料電池システムにおいて、前記規定温度から定格温度までの間、前記原燃料流量制御装置により前記改質装置に供給される前記原燃料と、前記排ガス流量制御装置により前記改質装置に供給される前記排ガス中の前記酸化剤ガスとの体積比が、理論空燃比×0.9〜理論空燃比に設定されるとともに、
前記排ガス流量制御装置により前記改質装置に導入される前記排ガス供給量は、全排ガス量の15〜40%に設定されることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の燃料電池システムにおいて、前記規定温度から発電を開始することを特徴とする燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−243564(P2012−243564A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−112374(P2011−112374)
【出願日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】