説明

燃料電池システム

【課題】燃料電池システムの筐体1の底面2と設置面との間に空間ができることで、底面2が空気によって冷却され、底面2に配置される筐体1内部の凍結を予防する凍結予防ヒータ8による凍結予防の効果が低減する。
【解決手段】筐体1の底面2と設置面との間の空間に断熱部材11を配置して、断熱部材11を底面2の下面に密着させることにより、外気による底面2の冷却が妨げられることで、凍結予防ヒータ8の効果を向上させることができ、信頼性の高い優れた凍結予防効果を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素と酸素を反応させ発電する燃料電池システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の燃料電池システムは、本体筐体内に燃料ガスである天然ガスなどから水素ガスを生成する改質器と、この水素ガスと酸化剤としての酸素(空気)との電気化学的反応により発電を行う燃料電池(以降、「スタック」と呼ぶ)と、スタックや改質器を円滑に作動させるための補助機器と、本体筐体内部の配管内などの水の凍結を防止するために筐体内部を加熱する凍結予防ヒータと、燃料電池システム全体の制御を行う制御装置を備えている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図5は、特許文献1に記載された従来の燃料電池システムを示すものである。
【0004】
図5に示すように、筐体101と、改質器102と、スタック103と、補助機器104と筐体101内部の凍結を防止する凍結予防ヒータ105と、制御装置106とで構成されている。筐体101のベース107を全体的に覆うように搭載プレート108が設けられており、その搭載プレート108上に、改質器102、スタック103、補助機器104、制御装置106が搭載されている。また、搭載プレート108は、ベース107上で脚108aによって支持され、ベース107から離間している。搭載プレート108とベース107との間に、凍結予防ヒータ105が配置されている。制御装置106は、燃料電池システム全体の制御を行う機能と共に、スタック103で発生した電気エネルギーを商用電圧・周波数に変換する電力変換回路や、筐体101内部の温度を検知して凍結予防ヒータ105を制御する温度制御機能を備えている。
【0005】
この構成によって、スタック103の周囲温度を温度センサ(図示せず)によって検知し、その検知に基づき制御装置106で凍結予防ヒータ105を制御することによって筐体101の内部空間を加熱し、筐体101内の温度を凍結の恐れのない温度以上に保つ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2009/034997号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、設置面の凹凸により燃料電池システムが不安定になることを解消するために、燃料電池システムには筐体101の底面から突出する突出部が形成されている。そして、この突出部と設置面とが締結部品で締結されることで、燃料電池システムが固定される。この構成では、筐体101の底面と設置面との間には隙間があり、底面の内側に凍結予防ヒータ105を設置したとしても、底面と設置面との間の隙間に空気が流れてしまう。そのため、凍結予防ヒータ105で暖められた底面が冷やされ、長時間にわたり凍結予防ヒータ105で発生する熱が底面を加熱することに使われてしまい、凍結予防ヒータ105による凍結予防の効果を低減させるという課題を有していた。
【0008】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、燃料電池システム内部の優れた凍結予防効果を有する燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記従来の課題を解決するために、本発明の燃料電池システムは、燃料ガスと酸化剤ガスとを用いて発電を行う燃料電池スタックと、少なくとも燃料電池スタックを収納する筐体と、筐体の底面に配置されている凍結予防ヒータと、を備えている燃料電池システムであって、筐体が設置面に固定される突出部を有している。これにより、筐体が設置面に固定される場合には筐体の底面と設置面との間に第1空間が形成され、筐体の底面の外側で、かつ、第1空間に配置される断熱部材をさらに備えているものである。
【0010】
これによって、燃料電池システムの筐体の底面と設置面との間に構成される第1空間に、断熱部材が形成されることで、外気が筐体の底面に接する事による底面の冷却が妨げられることで、凍結予防ヒータの効果を向上させることができ、信頼性の高い優れた凍結予防効果を得ることができる。
【0011】
また、本発明の燃料電池システムの断熱部材は、筐体の設置面への設置後に、後付で筐体の底面の外側から取付ける構成としてもよい。これによって、筐体の底面への断熱材追加が必要な寒冷地仕様と底面への断熱材追加が不要な標準仕様を燃料電池システムの製造工程で作り分ける必要がなく、生産性を向上でき、また、設置面に設置するまでは、筐体の底面の下に空間ができるため、本体運搬時に底面下部の空間に搬送用リフトのアーム部を挿入でき、運搬性を向上できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の燃料電池システムは、燃料電池システム内部の優れた凍結予防効果を有し、また、生産性や運搬性に優れた燃料電池システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態1における燃料電池システムの構成図
【図2】本発明の実施の形態1における燃料電池システムの底面部の構成図
【図3】(a)本発明の実施の形態1における断熱部材の正面図、(b)本発明の実施の形態1における断熱部材の側面図
【図4】(a)本発明の実施の形態1における断熱部材の取付け方法を示す燃料電池システムの正面斜視図、(b)本発明の実施の形態1における断熱部材の取付け方法を示す燃料電池システムの側面断面図
【図5】従来の燃料電池システムの構成図
【発明を実施するための形態】
【0014】
第1の発明は燃料ガスと酸化剤ガスとを用いて発電を行う燃料電池スタックと、前記燃料電池スタックを収納する筐体と、前記筐体の底面に配置されている凍結予防ヒータと、前記筐体に設けられ、前記筐体を設置面に固定する突出部と、を備えている燃料電池システムである。そして、特に、前記筐体が前記設置面に固定される場合には前記筐体の底面と前記設置面との間に第1空間が形成され、かつ、前記第1空間には断熱部材が配置されること、を特徴とすることにより、外気が筐体の底面に接する事による底面の冷却が妨げられることで、筐体内部の凍結を予防する凍結予防ヒータの効果を向上させることができ、信頼性の高い優れた凍結予防効果を得ることができる。
【0015】
第2の発明は、特に、第1の発明において、断熱部材は、筐体の設置面への設置後に、後付で筐体の底面の外側から取付けられる。これにより、筐体の底面への断熱材追加が必要な寒冷地仕様と底面への断熱材追加が不要な標準仕様を燃料電池システムの製造工程で作り分ける必要がなく、生産性を向上できる。また、設置面に設置するまでは、筐体の底面の下に空間ができるため、本体運搬時に底面下部の空間に搬送用リフトのアーム部を挿入でき、運搬性を向上できる。
【0016】
第3の発明は、特に、第2の発明において、断熱部材は、筐体の底面の外面と接触し弾性を有する第1断熱層と、第1断熱層に接して形成される第2断熱層とを有している。これにより、弾性を有する第1断熱層を筐体の底面に接触させることで、筐体の底面に断熱層を密着させることができ、筐体の底面の断熱効果を向上させることができる。
また、断熱部材を第1断熱層と第2断熱層に分けることで、筐体の底面に接触する第1断熱層だけに弾性を持つ材料を使用して、第2断熱層の材料は弾性のない材料も使用することができることになり、第2断熱層の材料をコスト面や性能面でより良い材料を選べることができ、第2断熱層の材料の選択肢の幅を広げることができる。
【0017】
第4の発明は、特に、第3の発明において、前記第1断熱層は前記第2断熱層よりも弾性が高く、前記第2断熱層は前記第1断熱層よりも表面の摩擦係数が小さいものである。これにより、取付け性密着性の高い断熱部材を実現することができる。
【0018】
第5の発明は、特に、第1から第4の発明において、筐体の底面に、筐体内の水を排出するための第1穴が形成され、断熱部材は、第1穴に対応する位置に第2穴が形成されている。これにより、燃料電池システムのメンテナンスの際に筐体内部に雨水が入った時など、筐体の底面に水が溜まらないように、底面に水を排出するための第1穴を設け、底面の下部に取付ける断熱部材にも第1穴を閉塞しないように第2穴を形成することで、筐体の底面の第1穴から排出される水を断熱部材の第2穴を通過して外部に排出することができ、筐体底面に水が溜まることを防ぐことができる。
【0019】
第5の発明は、特に、第1〜5のいずれか1つの発明において、断熱部材は、筐体の底面の上面に部品を固定するために取付けられたねじの先端に接触しないようにねじ逃げ穴が形成されている。これにより、断熱部材を筐体の底面に取り付ける時に、断熱部材が底面から突き出たねじの先端に引っかかることなくスムーズに取り付けることができ、断熱部材の取り付け性を向上することができる。
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0021】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における燃料電池システムを側面から見たときの構成図を示すものである。
【0022】
図1において、筐体1は、燃料電池システム本体の外郭を形成する筐体で、スタック5や改質器6とその周辺の構成要素を内部に収納するものである。筐体1の底面2の下部には、脚部3が構成され、脚部3で筐体1全体の重量を支える。脚部3は、例えば、別部品として底面2に取り付けて構成されてもよいし、あるいは、絞りや曲げ加工により底面2から突き出されて加工されたものとして構成されてもよい。本実施の形態においては、脚部3は、図2に示すように、底面2の下面の端に沿って3箇所設けられている。なお、脚部3の数は、2箇所あるいは、4箇所以上であってもよい。
【0023】
脚部3は、燃料電池システムの設置面に載せられて締結部品(図示せず)で設置面50と固定される。締結部品としては、例えばアンカーボルトが使用される。
【0024】
本発明の燃料電池システムに脚部3を設ける理由は、脚部3を設けず燃料電池システムを設置面に固定しようとすると、底面2と設置面とが面接触になるため、設置面にわずかな凹凸があるだけで、設置された燃料電池システムが不安定になるためである。
【0025】
脚部3を設けることにより、底面2と設置面との間には第1空間4が構成される。
【0026】
なお、脚部3内部の空間に断熱部材を設けても良い。これは、寒冷地など低温で使用される場合、脚部3内部の空間の空気によって脚部3が冷却され、脚部3の冷却によって筐体1の底面2が冷却されることを防ぐ場合に有効である。
【0027】
筐体1の底面2には、図2に示すように排水用第1穴12が数箇所設けられる。これは、燃料電池システムのメンテナンスの際に筐体1内部に雨水が入った時など、筐体1の底面2に水が溜まらないように、底面2から水を排出するための穴である。排水用第1穴12の大きさは、排水性を考慮して、φ2〜φ5程度が望ましい。
【0028】
スタック5は、固体高分子電解質膜の両側に触媒を担持した燃料極と空気極を形成して一体化された触媒層を、水素ガスや空気を送り込むための流路を形成したセパレータで挟持してセルを構成し、セルを集合化して構成される。
【0029】
改質器6は、触媒からなる改質部とこの改質部を加熱するバーナーにより構成される。補助機器7は、スタック5や改質器6を円滑に作動させるための装置や配管で構成されている。補助機器7は、図示しないが、筐体1の外部に設けられる貯湯槽と貯湯配管により接続されている機器、筐体1の外部と都市ガスなどの原料ガスを供給される原料ガス配管で接続されている機器、及び、それらの機器を接続する配管の総称である。
【0030】
補助機器7は、例えば、原料ガス配管、制御弁、ガス昇圧ポンプ、空気ブロワ、空気配管、貯湯配管、循環ポンプ、熱交換器、排水素ガス配管、凝縮水タンク、フィルターなどからなる空気浄化装置、イオン交換樹脂からなるイオン交換装置、及び、温度センサなどがある。原料ガス配管は、筐体1の外部から供給される原料ガスを改質器6に搬送するものである。制御弁は、原料ガスの供給を制御するために原料ガス配管に配置されている弁である。ガス昇圧ポンプは、原料ガスを昇圧して改質器6に送るものである。空気ブロワは、スタック5に空気を供給するためのものである。空気配管は、スタック5に空気を搬送するものである。貯湯配管は、貯湯槽から供給される湯を搬送するものである。循環ポンプは、貯湯配管内で水を循環させるものである。熱交換器は、改質器6、スタック5などからの排ガスの熱を回収し貯湯槽へ供給する水に伝達するものである。排水素ガス配管は、スタック5で反応に使われなかった水素ガス(排水素ガス)を搬送するものである。凝縮水タンクは、排水素ガスから得られる凝縮水を蓄積するものである。温度センサは、筐体1内部の温度を検出するものである。
【0031】
また、補助機器7の中で水を扱う装置や配管としては、例えば、冷却水配管、循環ポンプ、熱交換器、改質水ポンプ、制御弁、水抜き配管などがある。冷却水配管は、スタック5の温度上昇を防ぐための冷却水を搬送するためのものである。循環ポンプは、冷却水配管内に冷却水を循環させるためのものである。熱交換器は、スタック5での化学反応により温められた冷却水から熱を回収し、貯湯槽へ供給する水に伝達するためのものである。改質水ポンプは、改質器6に原料ガスの改質反応のために必要な水を搬送するためのものである。制御弁は、改質水ポンプから改質器6に搬送される水の量を制御するためのものである。水抜き配管は、燃料電池システムのメンテナンス時に燃料電池システム内の各装置から水を抜いて筐体1の外部に排出するためのものである。
【0032】
凍結予防ヒータ8は、スタック5や補助機器7の水を扱う装置や配管の中の水が凍結することを防止するために、筐体1内部の空気を加熱して、筐体1内の温度を凍結の恐れのない温度に保つためのもので、筐体1の底面2の上面に固定具9で取り付けられる。凍結予防ヒータ8は、例えば、シーズヒータが使用される。本実施の形態1では、図2に示すように、凍結予防ヒータ8は、筐体1の底面2に2本配置される。凍結予防ヒータ8の本数は、筐体1の大きさや凍結予防ヒータ8の性能によって決められるもので2本に限られ
るものではない。
【0033】
制御装置10は、100V以上を扱う高電圧回路と低電圧回路から構成されている。高電圧回路は、インバータと電源回路で構成されており、筐体1の外部の商用電源に接続されている。インバータは、スタック5で発電される直流電力を交流電力に変換して商用電源に接続された負荷に供給するものである。電源回路は、交流商用電源を直流低電圧に変換するものである。一方、低電圧回路は、筐体1内のスタック5や改質器6等の各装置を制御するための回路である。例えば、商用電源に接続された負荷の消費電力に基づいて補助機器7である原料ガス配管から改質器6に供給される原料ガスの流量を調整する。これにより燃料電池システムにおける発電電力の制御や、スタック5や改質器6の温度制御を行うことができる。また、制御装置10は、補助機器7の温度センサで検知された筐体1内部の温度を用いて凍結予防ヒータ8を動作させ、筐体1内部の温度を制御する機能も備えている。
【0034】
断熱部材11は、底面2下部の第1空間4に、底面2下面に密着して取り付けられる。なお、断熱部材11を取り付けた状態で、断熱部材11の下面と設置面との間には隙間を設けることが望ましい。これにより、断熱部材11を取り付け易くすることができ、設置面に凹凸部があっても断熱部材11に当たる事なく安定して設置できる。
【0035】
断熱部材11は、図3に示すように、第1断熱層13と第2断熱層14と固定板15で構成される。固定板15に第2断熱層14が取り付けられ、第2断熱層14の上に第1断熱層13が取り付けられる。第1断熱層13及び第2断熱層14は、例えば両面テープによって取り付けられる。第1断熱層13は、弾性を有した材料を使用し、底面2の下面に隙間なく密着できるようにすることで、底面2の下面との密着性や断熱部材11を取り付ける時の取り付け性を向上させることができる。また、第1断熱層13は表面が滑らかな材料(例えば、発泡ポリエチレン)を使用し、筐体1の底面2の下面に接しながら滑らかにスライドできることが望ましい。第2断熱層14は、底面2の下部の第1空間4を塞いで断熱性能を得る目的で構成される。第2断熱層14の厚みは、断熱部材11の取り付け性を考慮して、断熱部材11を底面2に取り付けた状態で、断熱部材11の下面と設置面との間に隙間ができるような構成としても良い。第2断熱層14の材料としては、例えば、発泡スチロールを使用する。
【0036】
固定板15には、剛性があり、耐食性の優れた板金を使用する。固定板15には、筐体1に取り付けるためのねじ穴を設ける。
【0037】
なお、第1断熱層13、第2断熱層14、及び固定板15には、図3(a)に示すように、排水用第2穴16を構成する。排水用第2穴16は、筐体1の底面2に水が溜まらないように排水するために底面2に設けられた排水用第1穴12を塞がないように、排水が断熱部材11を通過して外部に排水できるようにする目的で設けられる。排水用第2穴16は、断熱部材11を筐体1の底面2に取り付けた状態で、底面2に設けられた排水用第1穴12の下に配置されるように構成する。穴の大きさは、排水性を考慮して、φ2〜φ5程度が望ましい。
【0038】
また、第1断熱層13、及び、第2断熱層14には、図3(a)に示すように、ねじ逃げ穴17を構成する。ねじ逃げ穴17は、底面2の上面に部品を固定するために、底面2の下面から突き出た状態で取付けられたねじの先端が、断熱部材11に接触して引っかからないように、断熱部材11の取り付け性向上の目的で形成される。ねじ逃げ穴17の大きさは、底面2の下面から突き出たビスの先端より大きく、かつ、断熱部材11の取り付け作業の時に、断熱部材11にビスが接触しない大きさで構成する。ただし、ねじ逃げ穴17を大きく開けすぎると断熱性能が低下するため、例えば、断熱部材11の取り付け方
向に長穴となる形状で構成する。ねじ逃げ穴17は、第1断熱層13だけに設けられる構成としてもよい。
【0039】
なお、断熱部材11は、第1断熱層13だけで十分な断熱性能を得られれば、第1断熱層13だけで構成されてもよい。あるいは、第2断熱層14だけで、底面2の下面との密着性や取り付け性が得られれば、第2断熱層14だけで構成されてもよい。
【0040】
断熱部材11の筐体1の底面2への取り付け方法は、図4に示すように、まず、脚部3の間の第1空間4に断熱部材11を挿入して、底面2の奥方向へスライドさせる。断熱部材11をスライドさせていくと、底面2の奥側の脚部3に設けられた断熱部材支持板18に断熱部材11の先端が接触して、断熱部材11の下面が支持される。さらにスライドさせていくと、断熱部材11が底面2の左右の脚部3に設けられた断熱部材取付部19に当たる。その後、取付ねじ20で断熱部材11に設けられたねじ穴を通して断熱部材11は断熱部材取付部19にねじ止めされて、取付けが完了する。なお、断熱部材支持板18は、板金などの弾性を持った材料が望ましく、脚部3に、別部品として、ねじなどの締結部品により取り付けて構成しても良いし、曲げ加工などにより脚部3に一体物として構成しても良い。また、断熱部材取付部19も、脚部3に、別部品として、ねじなどの締結部品により取り付けて構成しても良いし、曲げ加工などにより脚部3に一体物として構成しても良い。
【0041】
次に、筐体1内の各装置間の接続について説明する。改質器6は補助機器7と原料ガス配管で接続され、筐体1外部から原料ガスの供給を受ける。スタック5は、改質器6と補助機器7である水素ガス配管により接続され、改質器6から水素ガスの供給を受ける。また、スタック5は、補助機器7である空気を供給する空気ブロワと空気配管で接続され、空気ブロワから空気の供給を受ける。制御装置10は、スタック5と電気ケーブルで接続され、スタック5で発電された直流電力が制御装置10に伝達される。制御装置10と改質器6は電気ケーブルで接続され、制御装置10により動作を制御される。制御装置10と補助機器7であるポンプや制御弁は電気ケーブルで接続され、制御装置10により動作を制御される。制御装置10と補助機器7である温度センサ、及び凍結予防ヒータ8は電気ケーブルで接続され、制御装置10により筐体1内部の温度を温度センサで検知して、凍結予防ヒータ8の動作を制御して、筐体1内部の温度を制御する。
【0042】
以上のように構成された燃料電池システムについて、以下その動作、作用を説明する。
【0043】
まず、筐体1外部の都市ガス管などと接続された補助機器7の原料ガス配管から制御弁によりガスの量を制御されながら改質器6にメタンなどの原料ガスが供給される。改質器6では、原料ガスは改質器6に供給され、水素への改質反応に使用される。改質器6で生成された水素ガスは補助機器7の水素ガス配管を通ってスタック5へ供給される。一方、補助機器7である空気ブロワは制御装置10に制御されており、空気配管を通して空気をスタック5に供給する。スタック5では、供給された水素ガスと空気中の酸素を化学反応させて直流電力を発電する。発電された直流電力は、制御装置10のインバータにより交流電力に変換され商用電源に供給される。
【0044】
次に燃料電池システム動作中の凍結予防ヒータ8の動作について説明する。
【0045】
制御装置10により筐体1内部の温度が補助機器7の温度センサで検知され、検知される温度が5℃以下の場合は、凍結予防ヒータ8がONされ、筐体1内部の空気が加熱される。また、検知される温度が10℃に達すると凍結予防ヒータ8がOFFになる。この制御によって、筐体1内部の温度を水が凍結しない温度に保つことができ、筐体1内部の装置や配管内の水の凍結を防止する。なお、本実施の形態では、凍結予防ヒータ8をONす
る温度を5℃、OFFする温度を10℃としているが、これに限らず、筐体1内部の温度を、筐体1内部の装置や配管内の水が凍結しない温度に保つことができれば、閾値の温度を別のものとしてもよい。
【0046】
次に燃料電池システムの運搬性について説明する。
【0047】
燃料電池システムは部品点数も多く、重量は100kg程度と重たいため、製造ラインでの燃料電池システムのライン間の移動作業等の際には、機械式のリフトで移動を行うが、本実施の形態1では、燃料電池システムを設置面に設置するまでは、筐体1の底面2の下に第1空間4があるため、第1空間4にリフトのアーム部を挿入することができ、リフトのアーム部に底面2を載せて移動することができる。
【0048】
次に燃料電池システムの生産性について説明する。
【0049】
断熱部材11は設置場所の温度が低い寒冷地向けにのみ必要であり、寒冷地を除く地域向けの標準仕様においては、断熱部材11が無い場合でも筐体1内部の装置や配管内の水が凍結することは無いため、断熱部材11は不要となる。断熱部材11は、筐体1の設置面への設置後に、後付で筐体1の底面2の外側から取付けることが可能であるため、寒冷地仕様と標準仕様の燃料電池システムを作り分ける必要が無く、生産性を向上することができる。
【0050】
以上のように、本実施の形態においては、筐体1を設置面に固定する突出部としての脚部3を有し、筐体1の底面2と設置面との間の空間に断熱部材11を配置して、断熱部材11を底面2の下面に密着させることにより、外気による底面2の冷却が妨げられることで、凍結予防ヒータ8の効果を向上させることができ、信頼性の高い優れた凍結予防効果を得ることができる。
【0051】
また、本実施の形態の断熱部材11は、筐体1の設置面への設置後に、後付で筐体1の底面2の前方から取り付ける構成とする。これにより、断熱部材11の追加が必要な寒冷地仕様と断熱部材11の追加が不要な標準仕様を燃料電池の製造工程で作り分ける必要がなく、生産性を向上できる。また、燃料電池システムを設置面に設置するまでは、筐体1の底面2の下に第1空間4ができるため、筐体1の運搬時に底面2の下部に搬送用リフトのアーム部を挿入できることで、運搬性を向上できる。
【0052】
また、本実施の形態の断熱部材11は、弾性を有する第1断熱層13と、第2断熱層14とを有していることにより、第1断熱層13を筐体1の底面2に密着させることができ、筐体の底面の断熱効果を向上させることができる。
【0053】
また、本実施の形態の筐体1の底面2に、排水用第1穴12を形成し、断熱部材11には、排水用第2穴16を形成することにより、排水用第1穴12が閉塞されることなく、底面2から排出される水は排水用第2穴16を通過させて外部に排出することができ、底面2に水が溜まることを防ぐことができる。
【0054】
また、本実施の形態の断熱部材11にねじ逃げ穴17を形成することにより、断熱部材11を筐体1の底面2に取り付ける時に、断熱部材11が底面2から突き出たねじの先端に引っかかることなくスムーズに取り付けることができ、断熱部材11の取り付け性を向上することができる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
以上のように、本発明にかかる燃料電池システムは、燃料電池システム内部の優れた凍
結予防効果を有することが可能となるので、寒冷地向けの他の設備機器等の用途にも適用できる。
【符号の説明】
【0056】
1 筐体
2 底面
3 脚部
4 第1空間
5 スタック
6 改質器
7 補助機器
8 凍結予防ヒータ
9 固定具
10 制御装置
11 断熱部材
12 排水用第1穴
13 第1断熱層
14 第2断熱層
15 固定板
16 排水用第2穴
17 ねじ逃げ穴
18 断熱部材支持板
19 断熱部材取付部
20 取付ねじ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスと酸化剤ガスとを用いて発電を行う燃料電池スタックと、
前記燃料電池スタックを収納する筐体と、
前記筐体の底面に配置されている凍結予防ヒータと、
前記筐体に設けられ、前記筐体を設置面に固定する突出部と、
を備えている燃料電池システムであって、
前記筐体が前記設置面に固定される場合には前記筐体の底面と前記設置面との間に第1空間が形成され、かつ、前記第1空間には断熱部材が配置されること、
を特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
前記断熱部材は、前記筐体の設置面への設置後に、後付で前記筐体の底面の外側から取付けられる請求項1記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記断熱部材は、前記筐体の底面の外面と接触し弾性を有する第1断熱層と、前記第1断熱層に接して形成される第2断熱層とを有していること、
を特徴とする請求項2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記第1断熱層は前記第2断熱層よりも弾性が高く、前記第2断熱層は前記第1断熱層よりも表面の摩擦係数が小さい請求項3記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記筐体の底面には、前記筐体内の水を排出するための第1穴が形成され、
前記断熱部材は、前記第1穴に対応する位置に第2穴が形成されている請求項1〜4のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項6】
前記断熱部材は、前記筐体の底面の上面に部品を固定するために取付けられたねじの先端に接触しないようにねじ逃げ穴が形成されている請求項1〜5のいずれか1項に記載の燃料電池システム。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図1】
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【公開番号】特開2013−69520(P2013−69520A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−206918(P2011−206918)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】