説明

燃料電池システム

【課題】回生電力を得ることが可能な燃料電池システムにおいて、補機の特性を考慮して、余剰電力を確実に消費する。
【解決手段】移動体の制動に伴って回生電力を発生する回生電力発生手段11、12と、2次電池13と、燃料電池10または回生電力発生手段11、12からの電力を消費可能な電力消費手段31、42、51と、2次電池13の充電状態を検出する充電量検出手段100と、回生電力発生手段11、12の回生電力のうち2次電池13の充電可能電力を超える余剰電力を電力消費手段31、42、51で消費させる余剰電力処理手段100とを設ける。複数種類の電力消費手段31、42、51は単位時間当りの消費電力の増加率が異なっており、余剰電力処理手段は、2次電池13の充電状態に基づいて電力消費手段31、42、51の作動を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素と酸素との化学反応により電気エネルギーを発生させる燃料電池を備える燃料電池システムに関するもので、車両、船舶及びポータブル発電器等の移動体に適用して有効である。
【背景技術】
【0002】
燃料電池を駆動源とする燃料電池車両では、一般に減速時や降坂時に車両駆動用モータ等を用いて回生制動を行わせ、回生制動により得られる回生電力を2次電池(電力貯蔵装置)に蓄え、次の発進時や加速時に利用することで、車両燃費、車両加速性能を向上させることが行われている。
【0003】
しかしながら、降り坂が連続して続くような場合には、回生電力により2次電池が満充電状態になってしまい、駆動用モータからの回生電力を2次電池に蓄えることができなくなり、回生制動による制動力を得ることができなくなるという問題があった。このような場合、回生制動が利用できないために機械式のブレーキのみに依存することになり、さらには燃料電池車両では内燃機関車両などに比べてエンジンブレーキがない分だけ、機械式ブレーキの大型化やブレーキの操作頻度が上昇することに伴う運転者の負担増、乗車フィーリングの悪化といった問題があった。
【0004】
このため回生制動による余剰電力を処理するために、2次電池への充電を優先しつつ、余剰電力を補機で消費させる燃料電池システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の燃料電池システムでは、余剰電力を消費させる電力消費手段として、燃料電池の冷却水回路に設けられた電気ヒータ(補機)を用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4341356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1の構成では、燃料電池の余剰電力の消費が補機の応答性に左右されるため、以下の問題が生じる。つまり、応答性の悪い補機は、燃料電池の余剰電力の消費が遅れるため、その分だけ2次電池のSOCが上昇し、2次電池で受け入れ不能
結果として回生制動による制動力(減速感)が得られなくなる。
【0007】
本発明は上記問題点に鑑み、回生電力を得ることが可能な燃料電池システムにおいて、電力消費手段の特性を考慮して余剰電力を消費させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、水素と酸素とを電気化学反応させて電力を得る燃料電池(10)を備える移動体に搭載される燃料電池システムであって、前記移動体の制動に伴って回生電力を発生する回生電力発生手段(11、12)と、前記燃料電池(10)および前記回生電力発生手段(11、12)と並列に接続された2次電池(13)と、前記燃料電池(10)または前記回生電力発生手段(11、12)からの電力供給で作動して電力を消費可能な電力消費手段(31、42、51)と、前記2次電池(13)の充電状態を検出する充電量検出手段(100、S11)と、前記回生電力発生手段(11、12)の回生電力のうち前記2次電池(13)の充電可能電力を超える余剰電力を前記電力消費手段(31、42、51)で消費させる余剰電力処理手段(100、S15、S18、S21)とを備え、
前記電力消費手段(31、42、51)は複数種類設けられているとともに、前記複数種類の電力消費手段(31、42、51)は単位時間当りの消費電力の増加率が異なっており、前記余剰電力処理手段は、前記2次電池(13)の充電状態に基づいて前記複数種類の電力消費手段(31、42、51)の作動を制御することを特徴としている。
【0009】
本発明によれば、回生電力は優先的に2次電池(13)に蓄えられるとともに、回生電力が2次電池(13)に受け入れ可能な電力を超えている場合は、余剰電力が電力消費手段で消費される。そして、応答性が異なる複数種類の電力消費手段(31、42、51)の作動を、2次電池(13)の充電状態に基づいて制御することで、電力消費手段の特性を考慮して余剰電力を消費させることができる。
【0010】
また、請求項2に記載の発明では、前記余剰電力処理手段は、前記2次電池(13)の充電可能電力が小さくなるにしたがって、前記複数種類の電力消費手段(31、42、51)のうち単位時間当りの消費電力の増加率が小さい電力消費手段から優先的に作動させることを特徴としている。
【0011】
これにより、2次電池(13)の受入可能電力に余裕がある段階では応答性が悪い電力消費手段で余剰電力を消費させ、2次電池(13)の受入可能電力が小さくなるにしたがって、応答性のよい電力消費手段で余剰電力を消費させることができる。このように、2次電池(13)の充電状態に応じて電力消費手段を使い分けることで、2次電池(13)のSOCが上限値に到達することを極力回避でき、回生電力を電力消費手段で消費できる範囲が広がるため、電力消費手段が頻繁にオンオフを繰り返すことを抑制できる。
【0012】
また、請求項3に記載の発明では、前記余剰電力処理手段は、前記2次電池(13)の充電状態に基づいて、前記複数種類の電力消費手段(31、42、51)のうち単位時間当りの消費電力の増加率が所定値より小さい電力消費手段(31)の作動を制御することを特徴としている。
【0013】
これにより、2次電池(13)の充電状態が適正な値になるように制御することが可能となる。
【0014】
また、請求項4に記載の発明では、前記移動体の制動を行う機械式ブレーキを備え、前記余剰電力のうち前記電力消費手段(31、42、51)の消費電力を超える電力に相当するエネルギを前記機械式ブレーキで消費することを特徴としている。
【0015】
これにより、機械式ブレーキの使用を最小限に抑えることができ、乗車フィーリングの悪化を極力抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1実施形態の燃料電池システムの全体構成を示す概念図である。
【図2】車両空調装置の構成を示す概念図である。
【図3】ヒータコアの斜視図である。
【図4】補機の電力消費と補機に対する電力消費指令値との関係を示す図である。
【図5】補機の応答性と優先順位の関係を示す図である。
【図6】補機のオンオフの切り替えタイミングを示す図である。
【図7】回生電力の消費処理を示すフローチャートである。
【図8】第2実施形態の燃料電池システムの概念図である。
【図9】第3実施形態の燃料電池システムの概念図である。
【図10】第4実施形態の燃料電池システムの概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について図1〜図7に基づいて説明する。本第1実施形態は、本発明の燃料電池システムを燃料電池を電源として走行する電気自動車(燃料電池車両)に適用したものである。
【0018】
図1は、本第1実施形態の燃料電池システムの全体構成を示す概念図である。図1に示すように、本第1実施形態の燃料電池システムは、水素と酸素との電気化学反応を利用して電力を発生する燃料電池(FCスタック)10を備えている。燃料電池10は、車両走行用の電動モータ(電気負荷)11や2次電池13、その他補機31、42、51などに電力を供給するように構成されている。燃料電池10では、以下の水素と酸素の電気化学反応が起こり電気エネルギーが発生する。
【0019】
アノード(水素極):H2→2H++2e-
カソード(酸素極):2H++1/2O2+2e-→H2
全体の反応: H2+1/2O2→H2
本第1実施形態では燃料電池10として固体高分子型燃料電池を用いており、基本単位となるセルが複数積層されて構成されている。各セルは、電解質膜が一対の電極で挟まれた構成となっている。なお、本発明は燃料電池の種類を限定するものではなく、他の種類の燃料電池、例えばリン酸型燃料電池、溶融炭酸塩型燃料電池、固体電解質型燃料電池にも適用可能である。
【0020】
燃料電池10にて発生した直流電力は、インバータ12で交流電流に変換され走行用モータ11に供給される。これにより、モータ11は車輪駆動力を発生させ車両を走行させることができる。また、燃料電池10が発電した電力をDC/DCコンバータ14を介して、2次電池13に蓄えることができる。
【0021】
インバータ12は、燃料電池10や2次電池13から供給された直流電流を交流電流に変換して走行用モータ11に供給して、走行用モータ11を駆動している。本第1実施形態の電気自動車では、車両減速時や降坂時に走行用モータ11を発電機として作動させて発電を行うとともにブレーキ力を得る回生制動を行い、回生制動によって発電された回生電力はインバータ12を介して2次電池13に充電できるように構成されている。ブレーキ踏力等から車両制動トルク指令値を算出し、車両制動トルク指令値から回生電力を算出することができる。なお、走行用モータ11およびインバータ12が本発明の回生電力発生手段に相当している。
【0022】
本実施形態の燃料電池システムでは、走行用モータ11による回生電力から2次電池13に充電可能な電力を引いた差が余剰電力となり、余剰電力は補機31、42、51で消費される。余剰電力が消費される補機31、42、51については後述する。補機31、42、51で消費しきれない余剰電力分は、図示しない機械式ブレーキで対応する。この場合、機械式ブレーキを使用した分だけ回生制動により発生する回生電力が小さくなる。
【0023】
また、本第1実施形態の燃料電池システムでは、2次電池13が燃料電池10と電気的に並列接続されており、燃料電池10とともに2次電池13からもモータ11に電力を供給可能に構成されている。例えば、車両発進時や加速時などに大きな電力が必要な場合、燃料電池10からだけでなく2次電池13からも電力を取り出して走行用モータ11に供給することで対応することができる。2次電池13としては、例えば一般的なニッケル水素電池を用いることができる。
【0024】
DC/DCコンバータ14は、2次電池13と燃料電池10とが同じ電圧になるように電圧変換を行う。DC/DCコンバータ14は、外部からの制御信号によって双方向に電力を伝達することができる。
【0025】
燃料電池10とDC/DCコンバータ14の間には、ダイオード15が設けられている。このダイオード15により、燃料電池10に2次電池13からの電流および走行用モータ11、インバータ12で回生された電流が流れ込み、燃料電池10が破壊されるのを防いでいる。
【0026】
燃料電池10には、水素供給装置20から水素供給経路21を介して水素が供給され、空気供給装置30から空気供給経路32を介して空気が供給されるように構成されている。
【0027】
水素供給装置20としては例えば水素吸蔵合金等の水素貯蔵材を内蔵して純水素を貯蔵する水素タンクを用いることができる。水素供給経路21には、シャットバルブ22および水素レギュレータ23が設けられている。燃料電池1に水素を供給する際には、シャットバルブ22を開き、水素レギュレータ23によって所望の圧力にした水素を燃料電池1に供給する。
【0028】
水素排出経路24からは、未反応水素ガス、蒸気(あるいは水)および空気極から固体高分子膜を通過して混入した窒素、酸素などが排出される。水素排出経路24には、シャットバルブ25が設けられており、燃料電池10の運転条件に応じて開閉される。
【0029】
空気供給装置30としては、例えばエアコンプレッサを用いることができる。エアコンプレッサ30は、コンプレッサ用モータ31にて駆動される。空気供給経路32には供給空気加湿用の加湿器33が設けられている。加湿器33は燃料電池10から排出される排気空気に含まれる水分を回収し、この水分を用いてエアコンプレッサ30の吐出後の空気を加湿する装置である。これにより、発電時における電気化学反応のために、燃料電池10内の固体高分子膜を水分を含んだ湿潤状態にしておくことができる。なお、コンプレッサ用モータ31は回生電力の余剰電力を消費させる補機を構成しており、回生電力の余剰電力が消費される。
【0030】
空気排出経路34からは、未反応空気、蒸気(あるいは水)および水素極から固体高分子膜を通過して混入した水素などが排出される。レギュレータ35は、空気排出経路34に設けられており、燃料電池10を効率的に運転するために、燃料電池10に供給される空気の圧力を調整している。
【0031】
燃料電池10は発電に伴い発熱を生じる。固体高分子型燃料電池では、膜の耐熱温度や効率の点から80℃前後で運転する必要がある。このため、燃料電池システムには、燃料電池10を冷却するための冷却システムが設けられている。
【0032】
冷却システムは、燃料電池10に冷却水を循環させる冷却水経路40、冷却水を圧送する冷却水循環ポンプ41、冷却水の放熱を行うラジエータ43等から構成されている。冷却水としては、低温時でも凍結しないようにエチレングリコールと水の混合溶液を用いている。なお、冷却水が本発明の熱媒体に相当し、冷却水経路40が本発明の熱媒体経路に相当し、ラジエータ43が本発明の放熱器に相当している。
【0033】
冷却水循環ポンプ41はポンプ用モータ42と機械的に接続されており、ポンプ用モータ42を回転させることにより冷却水循環ポンプ41を回転させて燃料電池10に冷却水を循環させることができる。冷却水循環ポンプ41の回転数を調整することで、冷却水経路40の冷却水流量を調整することができる。燃料電池10で発生した熱は、冷却水を介してラジエータ43で系外に排出される。なお、ポンプ用モータ42は回生電力の余剰電力を消費させる補機を構成しており、回生電力の余剰電力が消費される。
【0034】
冷却ファン44は冷却ファンモータ45と機械的に接続されており、冷却ファンモータ45を回転させることにより冷却ファン44を回転させてラジエータ43に送風し、ラジエータ43より熱を外気に放出させることができる。なお、ラジエータ43は車両走行時に走行風(ラム圧)を利用できる位置に搭載するのがのぞましい。
【0035】
サーモスタット46は、公知の技術であり冷却水温度が所定の値より大きい場合は、ラジエータ43側に冷却水が流れるようにし、逆に冷却水温度が所定の値より小さい場合はラジエータバイパス経路47に冷却水が流れるよう制御することで温度制御を行っている。
【0036】
このような冷却系によって、冷却水循環ポンプ41による流量制御、冷却ファン44による風量制御、サーモスタット46によるバイパス制御で冷却水の温度を調整し、燃料電池10の温度制御を行うことができる。
【0037】
また、本第1実施形態の構成では、冷却水が直接燃料電池10内部と接するため、冷却水の導電率が大きいと、漏電による感電や燃料電池システム効率の低下をまねく。このため、本第1実施形態では、冷却水経路40にイオン吸着用経路48を設け、イオン吸着用経路48にイオン交換樹脂(イオン吸着手段)49を配置している。
【0038】
イオン交換樹脂49は、各部品より冷却水に溶出したイオンを吸着し、冷却水の導電率上昇を抑えることができる。ちなみにイオン吸着装置49は、冷却水が流れる位置であれば、どこに設置してもよい。さらに、本第1実施形態では、導電率の小さい冷却水として、エチレングリコールと水の混合物を用いている。
【0039】
また、冷却水経路40における燃料電池10の出口近傍には、冷却水温度を検出する温度センサ50が設けられている。
【0040】
冷却水経路40における燃料電池10の下流側であってラジエータ43の上流側には、冷却水を加熱する電気ヒータ51が設けられている。上述のように電気ヒータ51には燃料電池システムの余剰電力が供給される。電気ヒータ51は、供給電力を調整することで出力(加熱温度)を調整できる。また、電気ヒータ51は、DC/DCコンバータ14などの電力変換器を介することなくインバータ12と直接接続されている。DC/DCコンバータ14を介して電気的に接続した場合、DC/DCコンバータ14が破壊したときに電気ヒータ51にて電力消費ができなくなり回生制動ができなくなる。このため、これらを電気的に直接接続することで燃料電池システムの信頼性を向上させることができる。
【0041】
なお、電気ヒータ51は、上述のコンプレッサ用モータ31、ポンプ用モータ42とともに回生電力の余剰電力を消費させる補機を構成しており、回生電力の余剰電力が消費される。また、補機を構成するコンプレッサ用モータ31、ポンプ用モータ42、電気ヒータ51が本発明の電力消費手段を構成している。補機による回生電力の消費については後述する。
【0042】
冷却水として、エチレングリコール水溶液を用いた場合には、酸素存在下で熱分解温度以上になると分解してギ酸などの有機酸を生成する。これらの有機酸は、冷却水中でイオン化し冷却水の導電率を上昇させる。電気ヒータ51は冷却水と接する表面の温度がもっとも高くなるので、本第1実施形態では電気ヒータ51の冷却水と接する表面あるいは電気ヒータ51内部の冷却水と接する表面近傍に温度センサ52を設けている。
【0043】
本第1実施形態では、温度センサ52にて検出した温度に基づいて、冷却水が冷却水の熱分解温度以下になるように冷却水の温度制御を行う。この温度制御を開始する温度を、熱分解温度以下の熱分解速度が大きくなる温度に設定してもよい。電気ヒータ51による加熱温度を低下させるためには、電気ヒータ51に循環する冷却水流量を増加させるか、あるいは電気ヒータ51に供給する電力を低下させる。このような制御を行うことで、冷却水の熱分解によるイオンの発生を抑制しイオン交換樹脂49の寿命を長くすることができる。
【0044】
冷却水経路40には、冷却水を電気ヒータ51をバイパスさせるための電気ヒータバイパス経路53が設けられている。電気ヒータバイパス経路53は、電気ヒータ51の上流側で冷却水経路40から分岐し、電気ヒータ51の下流側で冷却水経路40に合流している。冷却水経路40と電気ヒータバイパス経路53との分岐点には、流量調整弁(電気ヒータバイパス流量調整手段)54が設けられている。本第1実施形態では、流量調整弁54としてロータリバルブを用いている。流量調整弁54により、電気ヒータ51側あるいは電気ヒータバイパス経路53側に流れる冷却水の割合をそれぞれ0〜100%の間で任意に調整することができる。
【0045】
冷却水経路40における電気ヒータ51の下流側であってラジエータ43の上流側には、室内暖房用ユニット55が設けられている。室内暖房用ユニット55は、ヒータコア(暖房用放熱器)56、室内暖房用ファン57、ファン用モータ58、暖房用放熱器バイパス経路59、オンオフ弁(暖房用放熱器バイパス流量調整手段)60を備えている。
【0046】
ヒータコア56は冷却水を熱源として、ヒータコア56を通過する空気を加熱するものである。室内暖房用ファン57は室内暖房用ファンモータ58と機械的に接続されており、室内暖房用ファンモータ58を回転させることにより室内暖房用ファン57を回転させてヒータコア56に送風する。
【0047】
図2は、車両用空調装置の構成を示す概念図である。図2に示すように、車室内空気あるいは車室外空気を室内暖房用ファン57によってヒータコア56に送り、ヒータコア56を通過後の空気を車室内に送風できるように、ヒータコア56および室内暖房用ファン57の周囲にはダクトが設置されている。
【0048】
図2に示すように、室内暖房用ファン13は室内空気あるいは室外空気のエバポレータ62に送られる。エバポレータ62は、内部で低圧低温の冷媒が蒸発することで空気の冷却を行うものである。ヒータコア56は、エバポレータ62の空気流れ下流側に設置されている。ヒータコア56には、エバポレータ62通過後の空気をヒータコア56を通過させるかどうかを制御するエアミックスドア63が設けられている。
【0049】
空気温度を低くして冷房したい場合には、エアミックスドア63を閉じてヒータコア56に空気が通過しないようにする。逆に空気温度を高くして暖房したい場合には、エアミックスドア63を開いてヒータコア56に空気が通過するようにする。除湿を行う場合には、エアミックスドア63を開いてエバポレータ62で冷却除湿した空気をヒータコア56で加熱し、室内に導入する。エアミックスドア63はオンオフ制御ではなく、必要な空気温度に応じ開度を調節できる。
【0050】
ここで、常にヒータコア56に温水が流れる構成とすると、例えば夏場で暖房の必要がないときにも、ヒータコア56から熱が放出され空調性能に悪影響を与えたり、室内冷房のためのエネルギーが余分に必要になり車両燃費を悪化させることになる。特にエネルギー回生時は、ヒータコア56の上流にある電気ヒータ51から大きな熱が冷却水に放出されるので、エアミックスドア63を閉じただけでは充分でなく、回生電力による熱が車室内に侵入することが考えられる。また、エアミックスドア63の設置のために大きなスペースを必要とする。そこで本第1実施形態では、オンオフ弁60およびバイパス経路59を設置することで上記の問題を回避している。
【0051】
図1に戻り、暖房用放熱器バイパス経路59は、ヒータコア56をバイパスするように冷却水経路40に設けられており、ヒータコア56の上流側で冷却水経路40から分岐し、ヒータコア56の下流側で冷却水経路40に合流している。
【0052】
オンオフ弁60は、冷却水経路40における暖房用放熱器バイパス経路59との分岐点の下流側であってヒータコア56の上流側に設けられている。オンオフ弁60は、外部からの制御で冷却水循環流路40を開閉可能な電気式の開閉弁であり、通常時(非通電時)は閉状態となっている。オンオフ弁60を開状態にすることで冷却水はヒータコア56に流れ、オンオフ弁60を閉状態にすることで冷却水は暖房用放熱器バイパス経路59に流れる。このような簡易な構成のオンオフ弁60を用いることで、システムを簡易な構成とすることができ、コスト低減を図ることができる。
【0053】
図3はヒータコア56の斜視図である。ヒータコア56はチューブとフィンで構成される熱交換器であり、チューブ内を冷却水が流れ、外部を空気が流れ熱交換を行うことができる。図3中の矢印は冷却水の流れを示している。また、図3に示すように、ヒータコア56、暖房用放熱器バイパス経路59、オンオフ弁60が一体的に構成されている。これらの構成要素56、59、60を一体化することで、車両への搭載性を向上させることができる。なお、これらの構成要素56、59、60のうち任意の2つの組合せを一体化した場合も車両への搭載性を向上させることができる。
【0054】
図1に戻り、本第1実施形態の燃料電池システムには、外気温を検出する外気温センサ61が設けられている。さらに燃料電池システムには、車両システムおよび各構成機器を制御する電子制御装置(ECU)100が設けられている。制御装置100は、各種入力信号に基づいて、燃料電池システムを構成する各種制御機器の作動を制御するもので、CPU、ROM、RAM、I/O等を備えた周知のマイクロコンピュータによって構成され、ROM等の記憶部に記憶された制御プログラムに従って各種演算等の処理を実行する。本発明の熱媒体温度調整手段は、ECU100により構成される。ECU100は、温度センサ52、61の検出温度に基づいて、電気ヒータ51に対する電力供給量の調整、冷却水流量の調整等を行い、冷却水温度を調整する。また、ECU100は、走行用モータ11による回生電力を2次電池13に充電させるとともに、補機31、42、51に電力消費指令を出力することで、回生電力のうち2次電池13で吸収できない余剰電力を補機31、42、51で消費させるように構成されている。
【0055】
図4は、補機31、42、51の消費電力と補機31、42、51に対する電力消費指令値との関係を示している。図4に示すように、補機31、42、51の電力消費量の変化は、補機31、42、51に対する電力消費指令値の変化に対して遅れが生じる。コンプレッサ用モータ31、ポンプ用モータ42、電気ヒータ51の単位時間当りの消費電力の変化率である応答性は、それぞれ異なっている。本実施形態の電気ヒータ51では、突入電流を防止するための制御を行っているため、最も応答性が悪くなっている。コンプレッサ用モータ31とポンプ用モータ42とでは、コンプレッサ用モータ31の方が応答性が悪い。これらの補機の応答性は、電気ヒータ51<コンプレッサ用モータ31<ポンプ用モータ42の順序となっている。本実施形態では、電気ヒータ51を補機Aとし、コンプレッサ用モータ31を補機Bとし、ポンプ用モータ42を補機Cとしている。
【0056】
図5は、補機A、B、Cで回生電力を消費させる際に用いられる優先順位を示している。図5に示すように、応答性(時定数)が悪い補機ほど優先順位を高くしている。このため、補機Aが最も使用される優先順位が高くなり、次いで補機B、補機Cの順になる。ECU100による補機A、B、Cに対する電力消費指令は、2次電池13のSOC(充電状態)に基づいて行われる。SOCは、満充電状態に対する残存容量(%)で示される。本実施形態では、2次電池13の性能が低下するSOC限界値を80%としている。
【0057】
図6は、2次電池13のSOCと補機A、B、Cのオンオフの切り替えの関係を示している。図6に示すように、補機AはSOCが第1所定値(60%)以上でオンになり、補機BはSOCが第2所定値(65%)以上でオンになり、補機CはSOCが第3所定値(70%)以上でオンになる。また、各補機A、B、CがオフになるSOCは、ハンチング防止のためにヒステリシス幅を持たせてある。具体的には、各補機A、B、CがオンになったSOCより2%低いSOCとなった場合に、各補機A、B、Cがオフに切り替わるようになっている。また、本実施形態では、2次電池13のSOCがSOC上限値(充電量の上限値)に到達した場合には、2次電池13への充電を行わず、回生電力を各補機A、B、Cで消費させるとともに、余剰分を機械式ブレーキで対応するように構成されている。SOC上限値は、第4所定値(75%)に設定している。なお、第1〜第4所定値の括弧内で示した具体的な数値は一例であり、これらの数値は2次電池13の種類や補機A、B、Cの応答性等を考慮して任意に設定することができる。
【0058】
次に、本第1実施形態の燃料電池システムでの回生電力の消費処理について図7のフローチャートに基づいて説明する。図7に示す回生電力の消費処理は、ECU100が所定の制御プログラムを実行することによって実現するものであり、所定の制御周期で繰り返し実行される。
【0059】
まず、走行用モータ11にて回生電力が発生しているか否かを判定する(S10)。この結果、回生電力が発生していない場合は(S10:NO)、回生電力の消費処理を終了する。一方、回生電力が発生している場合は(S10:YES)、2次電池13のSOCを検出する(S11)。
【0060】
次に、2次電池13のSOCが第1所定値(60%)を下回っているか否かを判定する(S12)。この結果、SOCが第1所定値(60%)を下回っていると判定された場合には(S12:YES)、回生電力を2次電池13に充電する(S13)。一方、SOCが第1所定値(60%)以上であると判定された場合には(S12:NO)、2次電池13のSOCが第2所定値(65%)を下回っているか否かを判定する(S14)。
【0061】
この結果、SOCが第2所定値(65%)を下回っていると判定された場合には(S14:YES)、回生電力を補機Aで消費し(S15)、余剰電力を2次電池13に充電する(S16)。一方、SOCが第2所定値(65%)以上であると判定された場合には(S15:NO)、2次電池13のSOCが第3所定値(70%)を下回っているか否かを判定する(S17)。
【0062】
この結果、SOCが第3所定値(70%)を下回っていると判定された場合には(S17:YES)、回生電力を補機A、Bで消費し(S18)、余剰電力を2次電池13に充電する(S19)。一方、SOCが第3所定値(70%)以上であると判定された場合には(S17:NO)、2次電池13のSOCが第4所定値(75%)を下回っているか否かを判定する(S20)。
【0063】
この結果、SOCが第4所定値(75%)を下回っていると判定された場合には(S20:YES)、回生電力を補機A、B、Cで消費し(S21)、余剰電力を2次電池13に充電する(S22)。一方、SOCが第4所定値(75%)以上であると判定された場合には(S20:NO)、回生電力を補機A、B、Cで消費し(S23)、余剰電力分を機械式ブレーキで対応する(S24)。これにより、余剰電力に相当する回生電力の発生が抑えられる。
【0064】
以上説明した本実施形態の構成によれば、回生電力は優先的に2次電池13に蓄えられるとともに、回生電力が2次電池13に受け入れ可能な電力を超えている場合は、余剰電力を補機A、B、Cで消費している。複数種類の補機A、B、Cは、それぞれの応答性に応じて回生電力を消費させる優先順位が設定されており、2次電池13のSOCに応じて、応答性が悪い補機から優先的に回生電力を消費させるように構成している。
【0065】
これにより、2次電池13の受入可能電力に余裕がある段階では応答性が悪い補機で余剰電力を消費させ、2次電池13の受入可能電力が小さくなるにしたがって(SOCが大きくなるにしたがって)、応答性のよい補機で余剰電力を消費させることとなる。このように、2次電池13のSOCに応じて補機A、B、Cを使い分けることで、2次電池13のSOCが上限値に到達することを極力回避でき、回生電力を補機A、B、Cで消費できる範囲が広がるため、補機A、B、Cが頻繁にオンオフを繰り返すことを抑制できる。この結果、補機A、B、Cの耐久性や効率を向上させることができ、補機A、B、Cの頻繁なオンオフに起因する騒音や振動の発生を抑制できる。また、機械式ブレーキの使用頻度を低減できるので、乗車フィーリングの悪化を防ぐことができる。
【0066】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図8に基づいて説明する。本第2実施形態は、上記第1実施形態と比較して、主に冷却水を燃料電池10には循環させないで、電気ヒータ51およびヒータコア56に循環させることが可能な冷却水閉ループを形成した点が異なる。以下、上記第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0067】
図8は、本第2実施形態の燃料電池システムの概略構成を示す概念図である。図8では、冷却系以外の構成要素の図示を省略している。
【0068】
図8に示すように、上記第1実施形態のサーモスタット46の代わりに、本第2実施形態では冷却水経路40とラジエータバイパス経路47との合流点に流量調整弁64を設けている。本実施形態では、この流量調整弁64を第2流量調整弁64とし、上述の流量調整弁54を第1流量調整弁54とする。また、冷却水経路40におけるラジエータ43の下流側に温度センサ65を設けている。
【0069】
第2流量調整弁64と温度センサ65の基本的な機能は、上記第1実施形態のサーモスタット46と同様である。すなわち、ラジエータ43通過後の冷却水温度を温度センサ65にて検出し、その温度検出値に基づいて所望の冷却水温度になるように、第2流量調整弁64を操作し、ラジエータ43あるいはバイパス経路47に流れる冷却水流量比を制御することができる。さらに本第2実施形態の第2流量調整弁64は上記機能に加え、冷却水経路40の上流側と下流側、バイパス経路47の全方向にシャットできるように構成されている。
【0070】
冷却水経路40における第1流量調整弁54の下流側であって電気ヒータ51の上流側に第2の冷却水循環ポンプ66が設けられている。この冷却水循環ポンプ66は、冷却水経路40と電気ヒータバイパス経路53によって形成される閉ループAのいずれの箇所に設けてもよい。本実施形態では、閉ループAに設けられる冷却水循環ポンプ66を第2冷却水循環ポンプ66とし、第1実施形態で説明した冷却水循環ポンプ41を第1冷却水循環ポンプ41とする。第2冷却水循環ポンプ66は、第1冷却水循環ポンプ41に比較して循環させる冷却水が少ないので、第1冷却水循環ポンプ41より小型のものを用いることができる。
【0071】
第1冷却水循環ポンプ41は、主に燃料電池10に冷却水を供給する燃料電池冷却用ポンプとして構成され、第2冷却水循環ポンプ66は、主にヒータコア56に冷却水を供給する空調用ポンプとして構成される。なお、上記第1実施形態で説明したS26の処理(図5参照)では、電気ヒータ51に供給される冷却水流量を増大させればよく、第1冷却水循環ポンプ41または第2冷却水循環ポンプ66の少なくとも一方を作動させることで行うことができる。
【0072】
本第2実施形態の第1流量調整弁54は、燃料電池10から流れてきた冷却水を電気ヒータ51側あるいは電気ヒータバイパス経路53側に0〜100%の範囲で分配する機能に加え、電気ヒータバイパス経路53から流れてくる冷却水を電気ヒータ51側に流す機能を有している。
【0073】
第2流量調整弁64を全方向に閉じ、第2冷却水循環ポンプ66を作動させることで、冷却水は冷却水経路40と電気ヒータバイパス経路53によって形成される閉ループAを循環する。この場合には、冷却水は燃料電池10には循環せず、電気ヒータ51およびヒータコア56に循環することとなる。
【0074】
このように、閉ループAは熱容量の大きい燃料電池10とは独立した暖房回路となるので、熱容量を小さくでき暖房の立ち上がり性能を向上できる。さらに燃料電池10や配管などからの放熱を減少できるので、熱損失を低減でき立ち上がり性能を向上できる。また、圧力損失の大きな燃料電池10を通過しない回路を形成できるので、燃料電池10が発電していないときに暖房のみを使用したいときは第2冷却水循環ポンプ66で冷却水を循環させることで、第1冷却水循環ポンプ66の消費動力を低減できる。
【0075】
本第2実施形態では、冷却水経路40における電気ヒータ51の直下に水素を燃料とする触媒燃焼式ヒータ67を設けている。例えば氷点下においては、燃料電池10が発電起動できなかったり、さらには2次電池13も電解液が凍結して電力が得られない場合がある。このため、本第2実施形態では、水素触媒ヒータ67を補助用ヒータとして電気ヒータ51と併設し、電気ヒータ51の電力が得られない場合の熱源として用いている。水素触媒ヒータ67を熱源として、室内暖房を行ったり、燃料電池10を暖機することができる。
【0076】
また、水素触媒ヒータ67の冷却水と接する表面あるいは水素触媒ヒータ67内部の冷却水と接する表面近傍に、電気ヒータ51と同様に温度センサ68を設けている。発熱するヒータ67表面において、冷却水の温度が高くなるので、ヒータ67表面近傍の温度を検出することで、冷却水が冷却水の熱分解温度以下になるように制御する。この制御は熱媒体温度調整手段としてのECU100により行われる。
【0077】
水素触媒ヒータ67の温度を低下させるためには、冷却水の流量を増加させるか、あるいは水素触媒ヒータ67に供給する水素量を減少させるか、あるいは供給空気量を増加させればよい。このような制御を行うことで、冷却水の熱分解によるイオンの発生を抑制しイオン交換樹脂の寿命を増加させることができる。
【0078】
また、補助用ヒータとして水素触媒ヒータ67を用いる理由は、燃料電池10の燃料である水素を用いることができ、かつ燃焼式ヒータに比べて作動温度が低い(600℃以下)からである。
【0079】
また、低温環境下では触媒の活性が低く、燃焼起動できなかったり、未燃水素が多く発生する。このため、水素触媒ヒータ67を電気ヒータ51の直下に設けることで、低温時に電気ヒータ51を作動させ冷却水を加熱し、触媒を活性温度以上に昇温させることができる。このとき、回生電力により余剰電力が発生していれば、余剰電力により電気ヒータ51を介して触媒を加熱することができることになる。
【0080】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について図9に基づいて説明する。本第3実施形態は、上記第2実施形態と比較して、電気ヒータバイパス経路53が設けられていない点が異なるものである。以下、上記第2実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0081】
図9は、本第3実施形態の燃料電池システムの概略構成を示す概念図である。図9では、冷却系以外の構成要素の図示を省略している。
【0082】
図9に示すように、本第3実施形態では、電気ヒータ51あるいは水素触媒ヒータ67をバイパスさせる電気ヒータバイパス経路53が存在しない。このため、冷却水を電気ヒータ51側あるいは電気ヒータバイパス経路53側に分配する第1流量調整弁54を設ける必要がなく、冷却水経路40の構成を簡素にできる。
【0083】
本第3実施形態では、車室内の暖房が必要なときは、オンオフ弁60を開状態とし、必要に応じて電気ヒータ51あるいは水素触媒ヒータ67を駆動し冷却水を加熱する。また、本第3実施形態でも、上記第1実施形態、第2実施形態と同様に回生電力を熱としてラジエータ43あるいはヒータコア56で消費することができる。
【0084】
さらに、本第3実施形態のシステム構成をさらに簡略化するためには、オンオフ弁60と暖房用放熱器バイパス経路59を廃止する構成としてもよい。
【0085】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について図10に基づいて説明する。本第4実施形態は、上記第2実施形態と比較して、電気ヒータ51を含む閉ループの構成が異なっている。以下、上記第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0086】
図10に示すように、本第4実施形態では、冷却水経路40に、冷却水を電気ヒータ51をバイパスさせるための第2の電気ヒータバイパス経路69が設けられている。本実施形態では、この電気ヒータバイパス経路69を第2電気ヒータバイパス経路69とし、上述の電気ヒータバイパス経路53を第1電気ヒータバイパス経路53としている。
【0087】
第2電気ヒータバイパス経路69は、冷却水経路40における第1の電気ヒータバイパス経路53との分岐点より下流側で分岐し、冷却水経路40における第1の電気ヒータバイパス経路53との合流点より上流側で合流する。また、本実施形態の流量調整弁54は、冷却水経路40と第2の電気ヒータバイパス経路69の分岐点に設けられている。
【0088】
このような構成によって、冷却水は冷却水経路40と第2電気ヒータバイパス経路69からなる第2の閉ループBを循環することができる。また、冷却水経路40と第1電気ヒータバイパス経路53によって、閉ループBとは独立して燃料電池10に冷却水を循環させることができる。
【0089】
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各請求項に記載した範囲を逸脱しない限り、各請求項の記載文言に限定されず、当業者がそれらから容易に置き換えられる範囲にも及び、かつ、当業者が通常有する知識に基づく改良を適宜付加することができる。
【0090】
例えば、図1で示した例では1個のECU100を用いて各種制御を行っているが、機器毎にECUを設け、それぞれのECU同士で通信を行うように構成してもよい。
【0091】
また、上記各実施形態では、コンプレッサ用モータ31、ポンプ用モータ42、電気ヒータ51を回生電力のうち2次電池13に充電できない余剰電力を消費させる補機(電力消費手段)として構成したが、これに限らず、他の機器(例えば冷却ファンモータ45や室内暖房用ファンモータ58等)を余剰電力を消費させる補機(電力消費手段)としてもよい。
【0092】
また、上記各実施形態では、複数種類の補機A、B、Cをそれぞれの応答性に応じて優先順位を設定し、2次電池13のSOCに応じて補機A、B、Cを使い分けるようにしたが、これに限らず、一部の補機のみを2次電池13のSOCの値に応じてオンオフさせるようにしてもよい。「一部の補機」は、単位時間当りの消費電力の増加率が所定値より小さい補機(例えば補機A)とすることができる。具体的には、回生電力のうち2次電池13で受け入れできない余剰電力が発生した場合に、応答性の悪い補機Aのみを2次電池13のSOCの値に応じてオンオフさせ、応答性のよい補機B、Cは2次電池13のSOCの値に関わらず、余剰電力を消費させるための電力消費目標値に追従するように作動させて電力消費させるようにすればよい。これにより、2次電池13のSOCが適正な値になるように制御することが可能となる。
【0093】
また、上記各実施形態では、複数種類の補機A、B、Cをそれぞれの応答性に応じて優先順位を設定し、2次電池13のSOCに応じて補機A、B、Cを使い分けるようにしたが、これに限らず、複数種類の補機D、E、Fをそれぞれの耐久性に応じて優先順位を設定し、2次電池13のSOCに応じて補機D、E、Fを使い分けるようにしてもよい。例えば、耐久性が補機D>補機E>補機Fの順番とした場合に、2次電池13のSOCが第1所定値(60%)以上第2所定値(65%)未満では補機Dで回生電力の余剰電力を消費させ、2次電池13のSOCが第2所定値(65%)以上第3所定値(70%)未満では補機D、Eで回生電力の余剰電力を消費させ、2次電池13のSOCが第3所定値(70%)以上第4所定値(75%)未満では補機D、E、Fで回生電力の余剰電力を消費させるようにすればよい。このように、それぞれの耐久性に応じて補機D、E、Fを使い分けることで、補機D、E、Fの製品寿命を長くすることができる。
【0094】
また、上記各実施形態では、2次電池13で消費できない回生電力の余剰電力を補機で消費させるように構成したが、これに限らず、回生電力の余剰電力を走行用モータ11やインバータ12で消費させるようにしてもよい。具体的には、3相交流の位相角を走行用モータ11やインバータ12の効率が低下する角度とすることで、走行用モータ11やインバータ12で余剰電力を消費させることができる。
【符号の説明】
【0095】
10 燃料電池
11 走行用モータ(回生電力発生手段)
12 インバータ(回生電力発生手段)
13 2次電池
30 エアコンプレッサ
31 コンプレッサ用モータ(電力消費手段)
41 冷却水循環ポンプ
42 ポンプ用モータ(電力消費手段)
51 電気ヒータ(電力消費手段)
100 電子制御装置(ECU)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素と酸素とを電気化学反応させて電力を得る燃料電池(10)を備える移動体に搭載される燃料電池システムであって、
前記移動体の制動に伴って回生電力を発生する回生電力発生手段(11、12)と、
前記燃料電池(10)および前記回生電力発生手段(11、12)と並列に接続された2次電池(13)と、
前記燃料電池(10)または前記回生電力発生手段(11、12)からの電力供給で作動して電力を消費可能な電力消費手段(31、42、51)と、
前記2次電池(13)の充電状態を検出する充電量検出手段(100、S11)と、
前記回生電力発生手段(11、12)の回生電力のうち前記2次電池(13)の充電可能電力を超える余剰電力を前記電力消費手段(31、42、51)で消費させる余剰電力処理手段(100、S15、S18、S21)とを備え、
前記電力消費手段(31、42、51)は複数種類設けられているとともに、前記複数種類の電力消費手段(31、42、51)は単位時間当りの消費電力の増加率が異なっており、
前記余剰電力処理手段は、前記2次電池(13)の充電状態に基づいて前記複数種類の電力消費手段(31、42、51)の作動を制御することを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
前記余剰電力処理手段は、前記2次電池(13)の充電可能電力が小さくなるにしたがって、前記複数種類の電力消費手段(31、42、51)のうち単位時間当りの消費電力の増加率が小さい電力消費手段から優先的に作動させることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記余剰電力処理手段は、前記2次電池(13)の充電状態に基づいて、前記複数種類の電力消費手段(31、42、51)のうち単位時間当りの消費電力の増加率が所定値より小さい電力消費手段(31)の作動を制御することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記移動体の制動を行う機械式ブレーキを備え、
前記余剰電力のうち前記電力消費手段(31、42、51)の消費電力を超える電力に相当するエネルギを前記機械式ブレーキで消費することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−99081(P2013−99081A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239068(P2011−239068)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】