説明

燃料電池正極およびこれを用いた燃料電池

【課題】 燃料電池は、エネルギー密度が大きい反面、出力密度が小さい。一方、二次電池は、出力密度が高い反面、エネルギー密度が小さく電気容量にも限度がある。この原因の一つに電極の厚みが大きいことが上げられる。
【解決手段】 カーボンファイバーに二酸化マンガン電解析出させた正極と水素吸蔵合金を含む負極とを有する燃料電池であって、前記負極で発生する水素ガスおよび前記正極で発生する酸素ガスをそれぞれ直接かつ独立に貯蔵する水素貯蔵室および酸素貯蔵室を設けることにより、比較的小さな電極を用いて、エネルギー利用効率、エネルギー密度および負荷追従性に優れる燃料電池用の正極およびこれを用いた燃料電池を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池の正極に係る発明に関し、詳しくはカーボンファイバーを正極に用いた燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、主として携帯機器用の電源として使用する充放電可能な種々の二次電池が提案されてきた。さらには、近年、環境への配慮から、自動車や電車などの車両に充放電可能な二次電池を搭載したものが開発されている。車両に二次電池を搭載した場合には、ブレーキ時に生じる回生電力をこの搭載電池に蓄えておき、車両の動力源として使用することができるので、車両のエネルギー効率を高めることができる。
【0003】
このように車両に搭載する二次電池としては、エネルギー密度、負荷変動追従性、耐久性、製造コストなどの諸条件から、例えばニッケル水素二次電池が適しているとされる(特許文献1)。ニッケル水素二次電池は、負極に水素吸蔵合金、正極に水酸化ニッケルを活物質としてそれぞれ使用しており、正負極間のプロトンの授受により充放電が行われる。正極に水酸化ニッケルの代わりに水酸化マンガンを用いた技術が開示されている(特許文献2)。
【0004】
また、同様に携帯機器の電源や車両の動力源として、燃料電池を用いることが提案されている。燃料電池は、水素と酸素が反応してHOを生成する際に、化学エネルギーを電気エネルギーに変換する発電装置であり、環境への負荷が小さい。また、燃料電池は空気中の酸素を利用できるので、燃料となる水素を供給できれば、どこでも電気を取り出すことができ、二次電池のように電気で充電することを要しないという利点がある。
【0005】
特許文献3には、燃料電池発電システムを構成する要素を簡素化し、燃料電池発電システムの小型化を可能にするために、燃料電池発電システムは、電解質膜を挟んで互いに対向するアノードおよびカソードを有する膜電極複合体と、アノード流路板を有する。このアノード流路板には、アノードで生成されるガスを疎液性多孔体を介して回収するガス回収流路と、アノードに液体燃料を供給する燃料供給流路が形成されている。さらに、燃料をアノード流路板の外側を通ってアノード流路板の出口側から入口側に循環させるアノード循環系と、アノード循環系内を流通する燃料の液量が減少したときに、燃料タンクからアノード循環系内に、減少した分の燃料が供給されるように構成される燃料供給手段が開示されている。
【0006】
特許文献4には、メニスカス電極構造をとらない燃料電池の技術が開示されている。すなわち、膜電極接合体界面の微細構造は、三相界面(メニスカス)とよばれ、湿潤電解質膜(液相)−白金触媒(固相)−反応ガス(気相)が出会う場になっており、反応面積を広げるために複雑な細孔構造となっている。三相界面は細孔構造のために毛細管現象により水が浸入したまま滞留しやすい構造である。反応ガスに対して白金触媒の接触面積を大きくする。
【0007】
特許文献5の実施例では、ニッケル−鉄電池を例として挙げている。そのニッケル極として、電気分解による電解析出法を用いて、基材であるカーボンファイバーに、正極活物質としてニッケル/水酸化ニッケルをコートし、負極活物質として鉄/水酸化鉄をコートし、さらにその外側に多孔質樹脂をコートして構成したニッケル−鉄電池を挙げている。そして、ここでは、ニッケル極の製法として、硝酸ニッケル浴中でカーボンファイバーを陰極とし、ニッケル板を陽極として電気分解(陰分極)を行い、カーボンファイバー表面にニッケル/水酸化ニッケルを電解析出させる工程が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−110381号公報
【特許文献2】特開2010−015783号公報
【特許文献3】特開2009−081023号公報
【特許文献4】特開2011−091011号公報
【特許文献5】特開2003−317794号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
燃料電池と二次電池とをその電極構造の相違から考察すると、燃料電池は燃料を外部から供給するため、エネルギー密度が大きい反面、発電反応が電極、電解質、燃料ガスの三相界面(メニスカス)で起こるため反応面積が小さく、この結果出力密度が小さい。反応速度を上げるために白金触媒を用いるため、従来の燃料電池は高価となり、普及が進んでいない。更に、燃料電池には電気エネルギーを蓄える機能(充電機能)が無く、車両のブレ−キ作動時に発生する回生電力を蓄えることができずエネルギー損失となっている。
【0010】
一方、二次電池は電極内の活物質に蓄えられた化学エネルギーを、活物質と電解液の二相界面で電気化学反応により電気エネルギーに変換するため、反応面積が燃料電池に比べて広く、出力密度が高い。しかし、電極内の活物質に蓄えられる化学エネルギーには限度があり、エネルギー密度が小さく電気容量にも限度がある。
【0011】
更に、例えば、ニッケル−水素電池やニッケル−カドミウム電池では、ニッケル極の厚さは、最も薄くしても400μm程度であり、活物質内をイオンや電子が移動する拡散が律速になっているので、一層の高出力化(出力密度の向上)は困難である。従来の板状の電極では、厚さを薄くすると、角型構造では数多くの電極を重ねる必要があり、円筒型では電極の長さを長くして捲回する必要があり、このような観点からも高出力化には限界があった。
【0012】
本発明の目的は、上記の課題を解決するために、ガスのもつ化学エネルギーを電気エネルギーに変換して利用する燃料電池に、出力密度が大きい二次電池の反応機構を取り込むことにより、エネルギー密度や電気容量、および負荷追従性(出力密度)に優れ、電気による充電が可能な燃料電池を提供することである。
【0013】
ところで、ニッケル水素二次電池においては、一般的に、あらかじめ負極の容量を正極の容量よりも大きく設定しておくことで、密閉化を可能にしている。すなわち、満充電の状態からさらに充電が行われる過充電時には、正極において下記(1)の反応により酸素ガスが発生する。
OH→ 1/4O + 1/2HO + e (1)
【0014】
正極で発生した酸素ガスは、下記(2)の反応により負極の水素吸蔵合金(M)中の水素と反応してHOとなるので、電池内部の圧力上昇が抑えられ、電池を密閉構造とすることができる。
MH + 1/4O → M + 1/2HO (2)
【0015】
上記の、酸素ガスと水素吸蔵合金中の水素とが接触して水を生成する反応は発熱反応である。すなわち、過充電時に電池に供給された電気エネルギーは、熱エネルギーとして廃棄され、再び電気エネルギーとして取り出すことができない。
【0016】
本発明の他の目的は、過充電時に供給された電気エネルギーを水素と酸素の化学エネルギーとして蓄え、これを電気エネルギーに再変換して利用することのできる、充放電方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記した目的を達成するために、本発明に係る燃料電池正極は、水素吸蔵合金を含む負極と、正極と、前記負極と正極との間に介在して、プロトンを通過させ水素ガスおよび酸素ガスを通過させないセパレータとを有する燃料電池において、当該燃料電池には、前記負極で発生する水素ガスおよび前記正極で発生する酸素ガスをそれぞれ直接かつ独立に貯蔵する水素貯蔵室および酸素貯蔵室と備えていて、かつ、当該正極はカーボンファイバーに二酸化マンガンを電解析出して得られる(図13)。
【0018】
なお、本明細書において「直接貯蔵する」とは、負極および正極と各貯蔵室との間に昇圧装置や連通路などの追加部材を介在させずに、各電極において発生したガスを貯蔵することを意味する。
【0019】
この構成によれば、電極内部が満充電の状態からさらに電流によって充電を行った場合に、電気分解によって負極で発生する水素ガスおよび正極で発生する酸素ガスを、互いに接触・反応させることなく、水素貯蔵室および酸素貯蔵室に、それぞれ直接かつ独立に貯蔵することができる。したがって、追加のガス供給源や供給通路、昇圧装置などを要することなく、水素ガスおよび酸素ガスを各貯蔵室に貯蔵し、貯蔵された水素ガスおよび酸素ガスを、電池の放電時に電気エネルギーに変換して再利用することができる。電池の放電時には、正負極間において、水素−マンガン電池としての通常の放電反応が起こって電気エネルギーを取り出すことができる。つまり、二次電池の電極反応を介して電気エネルギーが出力されるので、急速充放電と優れた充放電追従性を得ることができる。
【0020】
放電時には、負極および正極のそれぞれにおいて、放電によって減少した電気量分が、水素貯蔵室および酸素貯蔵室にそれぞれ貯蔵された水素ガスおよび酸素ガスによる充電によって補われる。具体的には、負極においては、放電反応を表す反応式(3)に示すように、充電状態の水素吸蔵合金(MH)からプロトンが放出されるが、反応式(4)に示すように、放出された分のプロトンが、水素ガスによって補われ、負極の充電状態が維持される。
MH → M + H + e (3)
M + 1/2H → MH (4)
【0021】
一方正極においては、放電反応を表す反応式(5)に示すように、充電状態の二酸化マンガン(MnO)から還元されたオキシ水酸化マンガンが、反応式(6)に示すように酸素ガスによって再び酸化され、正極の充電状態が維持される。
MnO+ H + e → MnOOH (5)
MnOOH + O → MnO + HO (6)
各貯蔵室の水素ガスおよび酸素ガスが消費され、充電状態が維持されるとともに、通常の水素−マンガン電池として作動して放電がなされる。
【0022】
正極の二酸化マンガンは放電によりオキシ水酸化マンガンとなるが、オキシ水酸化マンガンは充電すると、二酸化マンガンに戻り放電が可能となる。一方、オキシ水酸化マンガンは酸素ガスに接触させると水素原子と反応して二酸化マンガンになって放電が可能となる。
【0023】
つまり、オキシ水酸化マンガンは充電すると水素原子を放出し二酸化マンガンとなり、発生した水素は負極に貯蔵される(MH)。満充電された後さらに充電を行うと電解液を電気分解して、負極から水素ガスが発生し、正極から酸素ガスが発生する。発生した酸素ガスを容器に貯蔵しておくと放電した際に二酸化マンガン内に水素原子が生成されても気体の酸素ガスが水素原子と反応して燃料電池のように作動する。もちろん二次電池としても作動するので、高出力が可能となる。
【0024】
すなわち、本発明に係る燃料電池において、外部に取り出すことのできる電気エネルギーは、正負極の各活物質量によって規制される二次電池としての容量に加えて、各貯蔵室にガスのエネルギーとして蓄えることが可能である。この場合、各貯蔵室およびこれを含む電池の耐圧性能および密閉性能を高めることにより、体積あたりのガス貯蔵量を増加させる、つまり電池の体積エネルギー密度を向上させることが可能となる。
【0025】
本発明に係る電池の上記のような作用及び効果は、負極および正極を、それぞれ、電気化学反応を利用せず、水素ガスおよび酸素ガスによって化学的に充電することにより得られるものである。なお、本明細書において、「負極を充電」「正極を充電」とは、通常の電気化学反応によって当該電池を充電した場合の負極における還元反応および正極における酸化反応を、正負極それぞれにおいて独立に起こさせることをいう。
【0026】
二酸化マンガンを正極とする水溶液系電池として、亜鉛マンガン一次電池が広く知られている。亜鉛マンガン電池は専ら一次電池として使用され、二次電池として使用されない。これは、マンガン電池の正極がその放電過程において、二酸化マンガンMnO→オキシ水酸化マンガンMnOOH→水酸化マンガンMn(OH)と変化するのであるが、水酸化マンガンまで放電すると充電できない四三酸化マンガンMnができてしまうからである。
【0027】
このため、二酸化マンガンが二次電池の正極として使用されなかった。そこで発明者らは、二酸化マンガンがオキシ水酸化マンガンまでしか放電しなければ四三酸化マンガンを生ずることがなく、再度充電が可能なので劣化しないと考え、そのことを実験により確認した。すなわち、
【0028】
二酸化マンガンが放電によりオキシ化しても、酸素ガスに接触させれば二酸化マンガンに戻るので、水酸化マンガンまで反応が進むことがなく不可逆な四三酸化マンガンが生じることがない。つまり二酸化マンガンがオキシ化した段階で、正極を酸素ガスと接触させて充電することにより、二酸化マンガンを正極として用いることに成功した。
【0029】
一方、水酸化ニッケルや水酸化マンガンを正極材料とする技術が開示されているが(例えば特許文献2)、水酸化ニッケルは二次電池正極としては成立するのであるが酸素と反応してオキシ化しないので、本発明のような燃料電池の正極にはならない。また、特許文献2において正極材料に用いた水酸化マンガンは燃料電池正極反応の触媒として機能するものであって、放電後の活物質が酸素で元の充電状態に戻るのではなく、放電した活物質はそのままの状態であるところ、本願発明の燃料電池において、二酸化マンガンが活物質として電気で充電もできるし、酸素ガスでも充電できるというものである。活物質は放電した後、酸素と化学的に反応することによって、充電したときと同じ物質に戻るので、特許文献2における水酸化マンガンとは、反応が全く異なる。
【0030】
二次電池の電気容量は電極材に含まれる活物質の量で定まることは前述した通りである。このため、二次電池は高エネルギー密度化するには限度がある。一方、上記のように酸素により充電が可能となればその電気容量は燃料電池の例の示す通り大きなものとなる。
【0031】
本発明の特徴とするところは、正極に二酸化マンガンを採用し、負極に水素吸蔵合金を採用して、それぞれの電極を酸素ガスおよび水素ガスで充電することにより電気容量の増大を図り、放電時は二次電池反応により速やかな電力の取り出しを可能にしたところにある。すなわち、水素および酸素の化学エネルギーを電気エネルギーに変換して再利用することを可能とし、エネルギー利用効率およびエネルギー密度ならびにパワーを飛躍的に高めることができる。また、電池コストの多くは活物質の材料費であり、少ない活物質量で大きな電気容量が可能となることから電池コストの低減が可能となる。
【0032】
正極および負極を、それぞれ酸素ガスおよび水素ガスに触れさせることにより充電できることを、発明者らは、実験によって確認した。図11、12に、正極および負極それぞれについて半電池を構成して、酸素ガスおよび水素ガスによって充電する実験を行った結果を示す。
【0033】
図11は、水素吸蔵合金を負極とし、銀(Ag)を参照極とし、アルカリ系電解液を用いて半電池を構成して、水素ガスの加圧投入による負極の充電を行ったときの充電量の変化を時間に対してプロットしたものである。図11(a)の左右の縦軸は、それぞれ、充電量を水素吸蔵合金の単位重量に対する吸蔵された水素の物質量(mmol/g)、および、単位重量に対する電気容量(mAh/g)で示しており、横軸は経過時間(分)を示している。
【0034】
この実験では、負極が完全に放電された状態から充電を開始しており、図11(a)の曲線a、bは、それぞれ、水素ガスを0.5MPaおよび0.3Mpaで加圧投入したときの充電量の変化を表わしている。図11(a)から分かるように、水素ガスを供給して充電を開始してから10分間で、0.5MPaおよび0.3Mpaのいずれの条件においても、各圧力における充電量の理論値に対してほぼ80%まで充電された。
【0035】
図11(b)の縦軸は負極の電位(V vs.Ag/AgCl)を、横軸は放電量(mAh/g)を示す。この実験では、水素ガスで充電された負極はアルカリ溶液中でほぼすべて放電可能であることを示している。
【0036】
図12はオキシ水酸化マンガンを正極とし、銀(Ag)を参照極とし、アルカリ系電解液を用いて半電池を構成して、酸素ガスの加圧投入による充電、および放電を行ったときの正極の電位変化を時間に対してプロットしたものである。図12の縦軸は正極の電位(V vs.Ag/AgCl)を、横軸は経過時間(分)を示す。
【0037】
図12(a)の(i)は、正極に酸素ガスが加圧投入された後の参照極に対する電位を示しており、(ii)では酸素ガス供給を停止し、0.2C放電を行った場合のグラフである。正極を酸素ガスに接触させた場合(実線)、60分経過でほぼ満充電の状態を示し、その後に0.2Cで放電をしていることを示している。一方、酸素ガスに接触をさせない場合(点線)、殆ど充電が行なわれていないことを示している。これにより、酸素ガスにより燃料電池カソード反応(酸化還元反応)が起こり、酸素ガス遮断後に二次電池反応による放電が確認できた。
図12(b)は、0.2Cでの放電状態での酸素ガスによる充電の状況を示しており、放電中であっても、酸素ガスによる充電が可能であることを示している。
【0038】
これら図11および図12に示した実験結果により、正極と負極にそれぞれ酸素ガスおよび水素ガスを供給することで、それぞれ独立に充電可能であることが確認された。
【0039】
以上のように、本発明に係る燃料電池によれば、負極および正極に、水素ガスおよび酸素ガスを直接的に、かつ互いに独立に蓄える貯蔵室を設けることにより、追加のガス供給系統を設けることなく充電時に供給された電気エネルギーをガスとして貯蔵し、電気エネルギーに再変換して利用することが可能となる。これにより、従来の密閉型二次電池においては過充電時に熱として廃棄されていたエネルギーを電気エネルギーとして再利用できるので、エネルギー利用効率が向上するとともに、取り出すべき電気エネルギーをガスの化学エネルギーとして蓄えることができ、エネルギー密度が飛躍的に向上する。
【0040】
また、二次電池の電極反応を介して電気エネルギーを入出力するので、従来の燃料電池ではできなかった充電が可能となり、更には負荷変動に対する追従性が大幅に改善される。しかもこのような電池を、ガス供給のための追加の部材・装置を要しない簡単な構造を採用することによって、安価に製造・供給することが可能となる。
【0041】
正極に二酸化マンガンを使用することにより、例えば、水酸化マンガンに比べて耐久性があり、水酸化ニッケルに比べると安価でエネルギー密度が向上するといえる。電池寿命について、これまで四三酸化マンガンにまで還元されて生成された充電不可能な物質の形成を酸素ガスによって阻止し、サイクル耐久性を確保することができた。
【0042】
本発明に係る燃料電池正極は、カーボンファイバーにニッケル被覆し、次いで硫酸塩浴中で陰分極し、次いで苛性アルカリ水溶液中で化成処理したものであってもよい(図13)。
【0043】
この構成によれば、硫酸塩浴中で炭素繊維(カーボンファイバー)を陰極とし、ニッケル板を陽極として電気分解(陰分極)を行い、炭素繊維(カーボンファイバー)の表面に二酸化マンガンを電解析出させる。電解析出法により生成された二酸化マンガンは、高温の苛性アルカリ水溶液への浸漬処理(化成処理)を行う。苛性アルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどが使用可能であり、これらの混合水溶液も使用可能である。
【0044】
本発明に係る燃料電池正極においては、カーボンファイバーは、単繊維1000〜24000本が束になった状態であってもよいし、カーボンファイバーが、単繊維2〜10本が撚られている状態であってもよい。
【0045】
本発明に用いるカーボンファイバー(黒鉛ファイバーを含む)の直径は、特に限定されないが、集電体として用いる際に、汎用のニッケル極集電体の厚さが基準となる。具体的には、焼結式や発泡状ニッケル極の集電体は400μm以上であり、本発明ではそれより相当薄いことが好ましい。このような観点から、カーボンファイバーの単繊維の直径は、5〜20μmであるのが好ましく、5〜15μmであるのがより好ましい。
【0046】
単繊維の直径が5μm未満のように小さい場合には、その機械的強度が不十分であり、圧着端子で束ねる際の締め付けや、析出した活物質の重量のために、ファイバーが切断されてしまうおそれがある。また、直径が小さいために電気伝導性が低下し、均一に活物質を析出することが難しいというおそれもある。一方、単繊維の直径が大きくなり、100μmを超える場合には、活物質は剥離・脱落しやすくなり、充放電のサイクル寿命も低下するおそれがある。この理由には、カーボンファイバー側面の曲率が関係している。カーボンファイバー上では、複数の球状二酸化マンガン結晶核が電解析出して、互いに繋がって円筒状に成長すると考えられる。曲率の大きい(半径の小さい)ファイバー上では、円周方向では球状結晶と同様に、二酸化マンガン結晶の曲率は大きくなり、歪みが生じにくいと考えられる。一方、曲率が小さく(半径は大きく)なるにしたがって、カーボンファイバーの円周方向は平板に近づくため、二酸化マンガン結晶の形状も平板型に近づき、歪みが生じやすくなり、剥離・脱落しやすくなると考えられる。
【0047】
用いるカーボンファイバーは、単繊維でもよいし、複数の単繊維を集合させたものも有効である。集合させる場合には、単繊維1000〜24000本を1束とすることが好ましく、2000〜6000本を1束とすることがより好ましい。このファイバーの束の1端を圧着端子などで固定することにより、1つの電極が形成される。
【0048】
また、単繊維2〜10本が撚られている状態で1本のカーボンファイバーを形成したものも有効であり、このようなカーボンファイバーが撚られた、撚り糸状のものを100〜2000本束ねて、電極を形成することがより好ましい。1000本以上のカーボンファイバーを束にした状態では、溶液の移動を抑制できるファイバー間に、二酸化マンガンが均一に析出することができ、より好ましい。ファイバーの本数が1000本未満の場合、ファイバー間の溶液の拡散が早すぎて、電解析出効率が低下するおそれがある。一方、束ねる単繊維数を20000本まで増やした場合、その断面の直径は10mm程度になるが、この大きさを超えると、ファイバーの束の内側でめっき液の拡散が著しく妨げられるため、電析物の厚さが不均一になる傾向がある。特に、溶液の移動を抑制できるファイバーの束の内側には、厚く電析物が堆積して、十分に集電されない領域が生じやすくなるため、利用率の低下を招く。このようなことから、各々のファイバーに均一に二酸化マンガンを析出するためには、ファイバーの本数は1000〜24000本が好ましく、2000〜6000本がより好ましい。
【0049】
本発明に係る燃料電池正極は、カーボンファイバーに同心状に2〜4μmの厚さで二酸化マンガンが電解析出されていてもよく、ニッケル被覆層の厚さが、0.2〜8μmであってもよい。更には、ニッケル被覆の工程が、無電解ニッケルめっき、次いで電解ニッケルめっきを施したものであってもよい(図2)。
【0050】
カーボンファイバーはそのままでは疎水性であるから、界面活性剤を用いて親水化処理を施すことで、電解析出可能である。しかし、これだけでは導電性が不十分であるため、電析物はファイバー間に不均一に析出してしまう。そこで、各々のファイバーに均一にニッケル被覆をすることにより、各々のファイバー上に同心円状に均一な厚さの活物質層の形成を試みた。その理由としては、ファイバー表面の電気伝導性が関係している。カーボンファイバーの電気抵抗率はおよそ4×10−7Ωmであるが、ニッケル被覆することによって6×10−8Ωmとなるので、電気伝導性は約10倍に向上する。つまり、ニッケル被覆することで、ファイバー表面の電気伝導性や親水性が向上し、均一な二酸化マンガン活物質層を電解析出することができると考えた。
【0051】
カーボンファイバーへのニッケル被覆の方法としては、電解ニッケルめっき、無電解ニッケルめっき、ニッケルカルボニルの熱分解によってニッケルを堆積させる方法などが適用できるが、1000本以上からなるカーボンファイバーの束の各々のファイバーに均一にニッケル被覆する方法としては、無電解ニッケルめっき法で薄くニッケル被覆し、次いで電解ニッケルめっき法を用いてもよい
【0052】
めっき層の厚さは、0.2〜8μmであるのが好ましく、0.5〜5μmであるのがより好ましい。ニッケルめっき層の厚さが0.2μm未満の場合には、十分な導電性が得られないおそれがある。
【0053】
本発明に係る燃料電池は、上記の燃料電池正極と、水素吸蔵合金を含む負極とを備えている。そして、本発明に係る燃料電池は、前記負極、正極、セパレータ、水素貯蔵室、および酸素貯蔵室を収容する筒状の外装体を有していることが好ましい(図14)。上述のように、本発明に係る燃料電池においては、単位体積あたりのガス貯蔵可能量が増せば、電気として取り出すことのできるエネルギー量が増す。換言すれば、電池の外装体の耐圧性を向上させることにより、電池のエネルギー密度を高めることが可能となる。
【0054】
本発明に係る燃料電池において、前記正極中に含まれる四三酸化マンガン(Mn)の量が重量比で5%以下である(図14)。この構成によれば、正極の二酸化マンガンが水酸化マンガンまで放電が進むと充電できない四三酸化マンガンMnが生じてしまうことは前述したとおりであるところ、不可逆な四三酸化マンガンMnが生じなければ、正極は劣化することなく、酸素により再度充電ができる。四三酸化マンガンMnが5%以下であれば劣化の程度は小さい。したがって、好ましくは四三酸化マンガンMnの量が重量比で2%以下であって、より好ましくは0.5%未満であることが望ましい。
【0055】
本発明に係る燃料電池は、前記負極および前記正極の少なくともいずれか一方が、前記負極の前記セパレータに接する面に親水性を有する材料を配置して、前記水素貯蔵室に接する面に疎水性を有する材料を配置した負極、および、前記正極の前記セパレータに接する面に親水性を有する材料を配置して、前記酸素貯蔵室に接する面に疎水性を有する材料を配置した正極であることが望ましい(図14)。
【0056】
この構成によれば、負極のセパレータに接触する側は親水性にしてあり、ガスの通過を阻止して電解液に常に濡れている状態を保ってイオン導電性を確保している。また、水素ガスに接触している側は疎水性にしてあり負極が濡れずに水素ガスと良好な接触を保つようにしてある。正極のセパレータに接触する側は親水性にしてあり、ガスの通過を阻止して電解液に常に濡れている状態を保ってイオン導電性を確保してある。
また、酸素ガスに接触している側は疎水性にしてあり正極が濡れずに酸素ガスと良好な接触を保つようにしてある。なおセパレータは、常に電解液を含んでいて、気体が通過しないようにしてあるので、水素ガス貯蔵室と酸素ガス貯蔵室とは独立して、水素ガスと酸素ガスとが交じり合うことなく独立に貯蔵できるようになっている。
【0057】
二次電池は固体と液体が反応するもので、大きな反応面積を持っているため高出力が可能となる。しかし、酸化剤と還元剤を固体である電極の中に保有しているのでエネルギー量が少ない。一方、燃料電池は固体(電極)と液体(電解質)と気体(水素ガス、酸素ガス)の3つの相が接している極めて小さな界面を反応面としているので高出力が不可能である。しかし、酸化剤と還元剤をそのまま供給するため大きなエネルギー密度を有する。この両者の長所を組み合わせたのが本発明に係る正極を用いた燃料電池である。
【0058】
ところで、固体(電極)と液体(電解質)の反応面をもつ二次電池特性と、固体(電極)と気体と液体の反応面をもつ燃料電池特性を1つの電極中で実現することができれば、更に高出力化と大エネルギー容量化が可能となる。そこで、電極の電解液に接触する界面を親水性とし、気体と接触する界面を疎水性とした。電極の一方の面を親水性とし、他方の面を疎水性とする代わりに、電極全体が親水性と疎水性を併せもつ材料で構成してもよい。
【0059】
本発明に係る燃料電池は、前記電解液が前記酸素貯蔵室に保持されている(図14)。その理由は、放電した時に発生する水は正極表面で生成され、充電時に水の電気分解も正極界面で行われるからである。
【0060】
本発明に係る燃料電池は、前記外装体の内側に、径方向の空間を介して、筒状の正極と筒状の負極が前記セパレータを介して配置され、前記正極の前記セパレータの反対側の面に接して前記酸素貯蔵室が形成され、前記負極の前記セパレータの反対側の面に接して前記水素貯蔵室が形成されている構造とすることも可能である。正極を外側に配置する構造を採用すれば、正極の表面積が負極の表面積より大きくすることが可能となり、蓄電池の出力は電極表面積に比例するので、その分出力を大きくすることができる。
【0061】
筒状の外装体を有する燃料電池の場合、好ましくは、前記外装体の内側に、径方向の空間を介して配置された筒状の正極と、前記セパレータを介して前記正極の内側に配置された筒状の負極とを備え、前記酸素貯蔵室が前記径方向の空間に形成されており、前記水素貯蔵室が前記負極の内方に形成されている(図14)。
【0062】
このように構成することにより、水素貯蔵室および酸素貯蔵室を形成するための追加の部材を要せず、必要最小限の部材のみを用いて、簡単な構造を有する電池とすることができる。したがって、電池の寸法を小さくし、またこれにより耐圧性を確保してエネルギー密度を高めながらも、組立作業が容易になる。
【発明の効果】
【0063】
以上のように、本発明に係る燃料電池正極およびこれを用いた燃料電池によれば、二次電池の電極反応を介して電気エネルギーを出力するので、従来の燃料電池と比較して、負荷変動に対する追従性が大幅に改善される。
【0064】
さらには、過充電時に負極および正極において発生する水素ガスおよび酸素ガスを、それぞれ直接的にかつ独立に蓄える貯蔵室を設けることにより、追加のガス供給装置を要することなく、水素および酸素の化学エネルギーを電気エネルギーに変換して再利用することが可能となり、エネルギー利用効率およびエネルギー密度を飛躍的に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】二酸化マンガン粉末の走査電子顕微鏡(SEM)の写真である。
【図2】本発明に係る燃料電池の正極の電極構造を模式的に表した図である。(a)はペースト状電極であり、(b)はファイバー状電極であり、(c)はニッケルメッキを施したファイバー状電極である。
【図3】ファイバー状二酸化マンガン電極の製造装置の概略構成を示す図面である。
【図4】カーボンファイバーとチタン板のリニアボルタンメトリー測定結果を示すリニアボルタモグラムである。
【図5】リニアボルタンメトリー測定後にX線回折(XRD)測定を行った結果を示すグラフである。
【図6】二酸化マンガンの電解析出前のカーボンファイバーのSEM写真である。
【図7】二酸化マンガンの電解析出後のカーボンファイバーのSEM写真である。(a)は電解析出開始1時間後のSEM写真であり、(b)は電解析出開始2時間後のSEM写真であり、(c)は電解析出開始3時間後のSEM写真であり、(b)は電解析出開始4時間後のSEM写真である。
【図8】電解析出開始4時間後のXRD測定の結果を示すグラフである。
【図9】交流インピーダンス測定結果を示すグラフである。(a)はナイキストプロットであり、(b)は等価回路である。
【図10】ファイバー状二酸化マンガン電極の放電曲線を示すグラフである。
【図11】水素ガスで水素吸蔵合金を充電したときの実験結果を示すグラフである。
【図12】酸素ガスで二酸化マンガン電極を充電したときの実験結果を示すグラフである。
【図13】本発明の第1実施形態に係る燃料電池の構造を模式的に示す断面図である。
【図14】本発明の第2実施形態に係る燃料電池の構造を示す断面図である。
【図15】本発明の第3実施形態に係る燃料電池の構造を示す断面図である。
【図16】本発明の第4実施形態に係る燃料電池の構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0066】
以下、実施例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
電析装置の説明
【0067】
次に、本発明に係る燃料電池用の正極に用いられるファイバー状二酸化マンガン電極の製造方法について説明する。先ず、ファイバー状二酸化マンガン電極に使用する二酸化マンガンの製造方法について説明し、その後に、電解析出装置を用いて正極の製造方法についての説明を行う。
<二酸化マンガンの製造方法>
【0068】
二酸化マンガンの合成方法には共沈法、ゾルゲル法、水熱合成法、電解析出法等様々な方法が報告されている。この中でも、電解析出法により得られた二酸化マンガンが乾電池などの正極物質として一般的に使われている。電解析出法は合成方法が簡単で、得られた二酸化マンガンはアルカリ性電解液で反応性が最も優れているγ型の結晶構造をとっている。硫酸塩電解液、電解液の温度80〜99℃、電流密度50A/mで電解させることによってアノード電極上に二酸化マンガンを析出させる。その反応を(7)〜(9)に示す。(7)はアノードの反応式(1.23 V vs SHE)であり、(8)はカソードの反応式 (0 V vs SHE) であり、(9)は全反応式である。
Mn2++2HO→MnO+4H+2e (7)
2H + 2e → H (8)
Mn2++2HO → MnO+H+2H (9)
【0069】
アノード電極として最もよく使われるのはチタン(Ti)板である。本実施例においては、0.10×15×60mmのチタン板をアノード電極として用いた。ある一定の厚み以上の二酸化マンガンがチタン板表面に析出されると、その析出物はチタン板表面から機械的に剥離される。そのあと、純水で洗浄し、アンモニア水またはアルカリ性溶液で中和処理し、乾燥、粉砕の一連のプロセスを経た後、二酸化マンガン粉末が得られる。得られた粉末の走査電子顕微鏡(SEM)写真を図1に示す。図1を見ると二酸化マンガンの粉末の粒径は数μm〜数十μmまで分布している。これを燃料電池用の電極として使うために、導電助剤、バインダー等と混練して、多孔質の金属基盤に塗布、乾燥、圧着のプロセスが追加的に必要となる。
<カーボンファイバーの製造>
【0070】
市販のポリアクリロニトリルファイバーを3本用いた撚り糸を黒鉛化した黒鉛ファイバーを、集電体として用いた。この集電体を構成するファイバーの直径は平均18μmであり、これを構成している各単繊維の平均直径は、6.5μmであった。
【0071】
この集電体に、電解でニッケルめっきを施した。ニッケルめっきは、硫酸ニッケル350g/L、塩化ニッケル45g/Lおよび硼酸42g/Lを主成分として含む、いわゆるワット浴により行った。具体的には、長さ40mmの黒鉛ファイバー12000本を、2枚の発泡状ニッケル片で挟んで圧着することにより固定し、これを端子としてワット浴中に入れた。なお、対極としては、厚さ2mmのニッケル板を使用した。ニッケルめっきは、ファイバー表面に、めっき厚が平均で5μmになるように施した。これをファイバー状集電体とした。
<ファイバー状二酸化マンガン電極の製造>
【0072】
既存のペースト状電極の構造の概略図を図2(a)に示す。前述したようにペースト状の活物質である二酸化マンガン22と導電助剤23(図ではグラファイト)の混練物を多孔質金属基板からなる集電体21に塗布して作製する。このペースト状電極の問題点としては(1)活物質の粒径が大きい、(2)比表面積が小さい、(3)導電助剤と活物質の接触面積が小さくて高出力時に電気抵抗が支配的になる等が挙げられる。
【0073】
図2(b)にはファイバー状電極の概略図を示す。ファイバー状電極は、この図からも分かるように電極構造が非常にシンプルである。すなわち、カーボンファイバー25が集電体及び導電助剤の役割を同時に持つファイバー状導電体を集電体として、これに活物質である電析二酸化マンガン26をコーティングさせた形である。活物質のコーティングは電解二酸化マンガン合成法を用いて製作することができる。この方法は、電解液のpH、温度、通電時間、電流波形、電圧制御法、電流制御法などを調節することによって、数十ナノサイズから数ミクロンサイズまで活物質の厚みを変えることができ、析出した二酸化マンガンの多孔性も調整することができる。ファイバー状電極のメリットとしては(1)比表面積が大きい、(2)導電体と活物質の接触面積が大きいので高出力に対応できる、(3)製作プロセスが非常に簡単、(4)活物質の厚み、多孔性等のコントロールできる等が考えられる。なお、図2(c)はカーボンファイバー25にニッケルメッキを施しニッケルメッキ層27を形成してから、電析により二酸化マンガン26を取付けた電極である。これについては、後述する。
【0074】
図3にファイバー状二酸化マンガン電極の作製に使う製造装置の概略図を示す。正極製造装置30は、計算機31からの指令を受けて製造条件を整える電気化学測定器32と、電解槽33とからなる。電解槽33には、硫酸塩からなる電解液35が満たされている。具体的には、0.66M MnSOと0.34M HSOを混合した液を電解液35とした。なお、電解槽33の上面にはカバー34が設けられており、側面には電解液35の温度調整を行うための温度調節器付きのヒーター39が取付けられている。
【0075】
この硫酸塩電解液35の中に、アノード36にはファイバー状集電体を、対極となるカソード37にはニッケル板を配置した。アノード36には、直径6.5μmのカーボンファイバー(HTA-12, TOHO TENAX Co.,Ltd.)を12,000本、電解液35に浸漬される長さが40mmとなるように取付けた。カソード37には、銅メッシュ(0.20φ×80×20 mm, 50 mesh, Nilaco Corp.)を用いた。
【0076】
ファイバー状二酸化マンガン電極は、アノード36とカソード37の間に電流を流すことでカーボンファイバー表面に二酸化マンガン(MnO)を析出させて作製した。この際、参照電極38として水銀硫酸水銀(Hg/HgSO)(0.615 V vs. SHE)電極を用いてアノード36の電位変化を測定した。作製時の電解液35の温度は温度調節器付きヒーター39で85℃になるよう調整した。そして電流密度が1Am-2で、電解析出時間を1、2、3、4時間とする、4つのケースについて正極を作製した。それぞれのケースにおいて、電解析出後の正極を、純水で洗浄し、1M NaOH水溶液で中和処理し、80℃で乾燥を行った。
【0077】
作製したファイバー状二酸化マンガン電極の特性を次節で説明する。すなわち、結晶構造の評価にX線回折測定(XRD)を行った結果を図5および図8を用いて説明し、電極の表面観察の結果を走査型電子顕微鏡(SEM)写真図6、図7を用いて説明し、交流インピーダンス法、0.2Cの定電流充放電測定を室温で行った結果を図9を用いて説明する。
<ファイバー状二酸化マンガン電極の試験結果>
上記で説明した方法により作製されたファイバー状二酸化マンガン電極の試験結果について、以下に説明する。
【0078】
前述した条件でカーボンファイバー上に生じる二酸化マンガン析出反応とチタン板上での反応の違いを調べるために、リニアボルタンメトリー測定を行った。走査速度は0.5mV/sで、測定範囲はOCPから0.9V(vs. Hg/HgSO)まで行った。その結果を図4に示す。この結果から、チタン板とカーボンファイバーをアノード電極として使った両場合ともに約0.65V(vs. Hg/HgSO)から二酸化マンガンの析出が始まる。この電位を標準水素電極に対する値として表すと1.26Vとなり、反応式(7)で示す理論値に近い値であることがわかる。
二酸化マンガンの析出が始まった0.65V(vs. Hg/HgSO)以上の電位から電流が発生しているが、その検出された電流値はチタン板の方が少々高いことがわかる。今回試験で使用したチタン板の導電率は2.34×10−1Ω−1、面積は約1.8×10−3でカーボンファイバーの導電率は6.7×10−1Ω−1、面積は約9.8×10−3である。導電率ではチタン板の方が2ケタ以上大きいが、直径がミクロンサイズであるカーボンファイバーは表面積が大きいため、チタン板を使用した場合と大きな差が出てないことがわかる。
【0079】
またリニアボルタンメトリー測定後に各表面にできた析出物のXRD測定を行った。その結果を図5に示す。(a)で示すグラフがカーボンファイバーの結果であり、(b)で示すグラフがチタン板の結果である。この結果をみると、γ型の二酸化マンガン由来の特徴ピークである2θ = 20.9°,36.6°,40.6°,54.2°,66.0°が見られ、カーボンファイバー上でも、チタン板表面上で析出した場合と同じ結晶構造を持った二酸化マンガンが確認できた。
【0080】
図6には試験前のカーボンファイバーの走査電子顕微鏡(SEM)写真を、図7(a)〜(d)には前述した試験条件でカーボンファイバー表面に1時間から4時間の電解析出時間で二酸化マンガンを析出したときのSEM写真を示す。1時間電析を行った電極では(図7(a))、カーボンファイバー表面に粒径2〜4mmのMnOの二次粒子が析出される。電析時間を2時間以上にすると、カーボンファイバー表面がMnOで覆われ、そのファイバーの直径は9mm(図7(b))、11mm(図7(c))、14mm(図7(d))と厚みが電析時間と共に増加することが分かる。図8には4時間の定電流電解析出した後の電極のXRDパターンを示す。リニアボルタンメトリー測定後の電極と同様に2θ = 21.9°,36.9°,41.9°,55.6°が見られ、γ型の二酸化マンガンであることが確認できた。
【0081】
このファイバー状電極を用いて前述したようにアルカリ性電解液にて半電池試験を行った。すなわち、作製したファイバー状二酸化マンガン電極を作動電極とし、対極に発泡ニッケルシートを、参照極に飽和塩化カリウム水溶液に浸漬させたAg/AgCl電極(0.199 V vs. SHE)をそれぞれ用い、6M KOH水溶液にて交流インピーダンス法、0.2Cの定電流充放電測定を室温で行った。その試験結果を図9に示す。図9(a)はナイキストプロットであり、図9(b)は等価回路である。測定時の周波数範囲は10mHz〜100kHzとした。図9から電流密度1Am-2で2時間析出した電極が最も小さい電荷移動抵抗を持っていることが分かる。
電解析出時間の影響を調べるため、析出時間ごとの電極について表1に開回路電位(OCP)及び電荷移動抵抗をまとめた。この測定は作製したファイバー電極を多孔質金属板で圧着せずに電解液に浸したものである。1時間電析した電極の場合は、二酸化マンガンがカーボンファイバー表面をすべて覆うまでは至らず、表面に付着しているだけである(図7(a))。このため、電解液の中で付着してあった粒子は剥がれやすくなっている。よって開回路電位と電荷移動抵抗が他の電極と比べて劣っていると考えられる。2時間以上電析した電極の場合は析出された二酸化マンガンの厚みが増えるとともに開回路電位は下がり、電荷移動抵抗は大きくなることが分かる。導電率が比較的に小さい二酸化マンガン層が厚くなるにつれて、電子移動抵抗が増えて最終的に反応抵抗も増えたためであると考えられる。
【表1】

【0082】
図10にファイバー状二酸化マンガン電極と市販のペースト状電極(MnO:CB:PTFE=10:3:1)の放電特性(3サイクル目)を示す。析出された二酸化マンガン粒子が電解液中で剥がれるのを防ぐために電極を2枚のニッケルフォームに挟み、6MPaで圧着してから定電流放電試験を行った。電析時間が2時間以下のファイバー状電極はペースト状の電極に比べて作動電位及び放電容量が向上することが分かる。これは、析出された二酸化マンガン層が薄く、活物質と導電体との接触が向上されるためであると考えられる。2時間以上電析した電極場合はペースト状の電極とほぼ同様の作動電位を持つが、反応末期で急速に電位が低下することが見られた。これは交流インピーダンス結果からと同様に導電率が比較的に小さい二酸化マンガン層が厚く内部抵抗が大きくなったため、層内まで反応が十分に行われなかったからだと考えられる。
【0083】
以上の試験結果から、0.66M MnSOと0.34M HSOを混合した電解液を用いて、電解液の温度80〜99℃、電流密度50A/mで2〜3時間、少なくとも2時間電解析出した場合に良好なファイバー状状二酸化マンガン電極を得ることができる。この条件に合致しなくても、これに等価なファイバー状状二酸化マンガン電極であればよく、カーボンファイバーに同心状に2〜4μmの厚さで二酸化マンガンが電解析出されておればよい。
<第一実施形態>
【0084】
図13は、本発明に係る正極を用いた燃料電池の基本構成を有する、第1実施形態に係る電池C1の構造を模式的に示す断面図である。この電池C1は、水素および酸素の化学エネルギーを電気エネルギーに変換して利用する燃料電池に二次電池の反応機構を取り込んだ燃料電池として構成したものであり、セパレータ5を介して対向する負極4および正極6、水素貯蔵室8を形成する負極ケース1、ならびに酸素貯蔵室9を形成する正極ケース2を主要な構成要素として備えている。
【0085】
負極4は、ニッケル水素二次電池で一般的に用いられているランタンニッケルのような水素吸蔵合金を主要な活物質として含んでいる。正極6の活物質には、二酸化マンガンを採用している。負極4と正極6との間にセパレータ5とともに介在させる電解液3としては、二次電池で一般的に用いられているアルカリ系水溶液、例えば、KOH水溶液、NaOH水溶液、LiOH水溶液などを用いることができる。
【0086】
正極6の活物質に二酸化マンガンを採用していることが本願発明の特徴とするところである。従来、二酸化マンガンは亜鉛マンガン電池で知られる水溶液系一次電池に使用されてきているところ、二次電池に使用されることはなかった。これは、マンガン電池の正極がその放電過程において、二酸化マンガンMnO→オキシ水酸化マンガンMnOOH→水酸化マンガンMn(OH)と変化するのであるが、水酸化マンガンまで放電すると再度充電できない四三酸化マンガンMnが生じてしまうからである。
【0087】
発明者らは、二酸化マンガンがオキシ水酸化マンガンまでしか放電しなければ四三酸化マンガンを生ずることがなく、酸素ガスにより充電が可能であることを実験により確認した。すなわち、二酸化マンガンが放電によりオキシ化しても、酸素ガスに接触させれば二酸化マンガンに戻るので、水酸化マンガンまで反応が進むことがなく不可逆な四三酸化マンガンが生じることがない。つまり二酸化マンガンがオキシ化した段階で酸素ガスと接触させて充電することにより、二酸化マンガンを正極として用いることに成功した。
【0088】
負極4としては、例えば、負極活物質、導電性フィラーおよび樹脂に溶剤を加えてペースト状にしたものを、基板上に塗布して板状に成形し硬化させたものを使用した。正極6としては、前述したファイバー状二酸化マンガン電極を使用した。
【0089】
導電性フィラーとしては、カーボンファイバー、カーボンファイバーにニッケルメッキを施したもの、炭素粒子、炭素粒子にニッケルメッキを施したもの、有機繊維にニッケルメッキを施したもの、繊維状ニッケル、ニッケル粒子、ニッケル箔のいずれかを単独で、または組み合わせて用いることができる。樹脂はバインダーとして用いるものであって、軟化温度120℃までの熱可塑性樹脂、硬化温度が常温から120℃までの樹脂、120℃以下の蒸発温度を有し溶剤に溶解する樹脂、水に可溶な溶剤に溶解する樹脂、アルコールに可溶な溶剤に溶解する樹脂などを用いることができる。基板としては、ニッケル板のような電気伝導性のある金属板を用いることができる。また、金属板の代わりに発泡ニッケルシートを使用してもよい。
【0090】
負極4の水素ガス貯蔵室8に接触している側は疎水性材料を多く使用して水素吸蔵合金が濡れずに水素ガスと接触するようにしてある。セパレータ5に接触する側は親水性にしてあり、水素ガスの通過を阻止して電解液に常に濡れている状態を保ってイオン導電性を確保している。正極6の酸素ガス貯蔵室9に接触している側は疎水性材料を多く使用して二酸化マンガンが濡れずに酸素ガスと接触するようにしてある。セパレータ5に接触する側は親水性にしてあり、ガスの通過を阻止して電解液に常に濡れている状態を保ってイオン導電性を確保している。疎水性を有する炭素やテフロン(登録商標)等を各電極4、6のガス貯蔵室8,9に面する側に塗布もしくは噴霧してもよく、また、親水性を有する改質ナイロンを各電極4,6のセパレータ5に接触する面に塗布もしくは噴霧してもよい。更には、親水性と疎水性の両方の性質をもった酢酸ビニルを造粒してバインダーとして用いてもよい。
【0091】
セパレータ5は、プロトン(H)を透過させるが水素ガスおよび酸素ガスを透過させない孔径を有する膜を使用している。セパレータ5を形成する素材としては、例えば、ポリエチレン繊維やポリプロピレン繊維などのポリオレフィン系繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、ポリフルオロエチレン系繊維、ポリアミド系繊維などを使用することができる。セパレータ5には電解液3が保持されている。さらに、本実施形態では、セパレータ5の両表面を水(電解液3)で濡らして水封セパレータとして形成することにより、ガス不透過性を高め、水素ガスおよび酸素ガスがセパレータ5を通過して互いに接触し反応することを一層確実に防止している。
【0092】
負極4の、正極6に対向する面と反対側の面は、箱形の負極ケース1によって気密に覆われており、負極ケース1の内方空間は、負極4で発生する水素ガスを直接、つまり負極4との間に昇圧装置や連通路などの追加部材を介在させずに貯蔵する水素貯蔵室8として機能する。同様に、正極6の、負極4に対向する面と反対側の面は、箱形の正極ケース2によって覆われており、正極ケース2の内方空間は、正極で発生する酸素ガスを直接貯蔵する酸素貯蔵室9として機能する。水素貯蔵室9と酸素貯蔵室9とは、独立に、つまり、水素貯蔵室9と酸素貯蔵室9とが互いに連通しないように構成されている。酸素貯蔵室9には、正負極間に介在させた電解液3と同種類の電解液が、酸素貯蔵室9の容積の約1/3程度充填されている。
【0093】
酸素貯蔵室9に充填される電解液3の量が少なければ、電気分解されるべき水の量が少なくなり、過充電時に発生する水素ガスおよび酸素ガスの量が少なくなる。一方、電解液の量が多ければ、ガスの貯蔵容積が減少する。このような観点から、酸素貯蔵室9に充填される電解液3の量は、酸素貯蔵室9の容積の20〜50%の範囲にあることが好ましく、25〜40%の範囲にあることがより好ましい。
【0094】
上記のように構成された電池C1は、以下のように動作する。電池C1は、上述のように、正極6を除き、負極4、電解液3およびセパレータ5に、一般的な二次電池と同様の材料を用いて構成されており、二次電池としての満充電の状態までは、通常どおり電流による充電を行うことができる。
【0095】
電池C1が満充電状態に達した後、さらに電流を供給し続けると、負極4からは水素ガスが、正極6からは酸素ガスがそれぞれ発生するが、これら水素ガスおよび酸素ガスは、互いに接触することなく、水素貯蔵室8および酸素貯蔵室9にそれぞれ貯蔵される。また、ガス貯蔵室8,9に蓄えられた水素ガスもしくは酸素ガスにより、負極4および正極6が充電される。
【0096】
電池C1の放電が開始されると、負極4および正極6間では、二次電池としての通常の放電反応が起こって負荷に電流が流れる。このとき、負極4および正極6のそれぞれにおいて、放電によって減少した電気量分が、水素貯蔵室8および酸素貯蔵室9にそれぞれ貯蔵された水素ガスおよび酸素ガスによる充電によって補われる。すなわち、負極4においては、充電状態の水素吸蔵合金(MH)から放出された分のプロトンが、水素ガスによって補われ、負極の充電状態が維持される。一方正極6においては、充電状態の二酸化マンガン(MnO)から放電(還元)されたオキシ水酸化マンガン(MnOOH)が、酸素ガスによって再び酸化され、正極の充電状態が維持される。各貯蔵室8,9の水素ガスおよび酸素ガスが消費された後は、通常の二次電池として作動して放電がなされる。
【0097】
すなわち、本実施形態に係る電池C1は、二次電池として通常の充電により電極に蓄えることのできるエネルギーに加えて、過充電時に供給される電気エネルギーを、各貯蔵室8,9にガスとして蓄え、これを電気エネルギーに再変換して利用することが可能である。
【0098】
この場合、各貯蔵室8,9およびこれを含む電池C1の耐圧性能と密閉性能を高めることにより、体積あたりのガス貯蔵量を増加させて、電池C1のエネルギー密度を従来の二次電池と比較して大幅に、例えば数10倍程度に向上させることが可能となる。しかも、各貯蔵室8,9には、過充電時に負極4で発生した水素ガスおよび正極6で発生した酸素ガスが直接貯蔵されるので、ガスの昇圧装置や連通路を追加で設ける必要がなく、簡単な構造によって、安価に製造・供給することが可能な電池とすることができる。
【0099】
さらには、上述のように、電池C1の放電時には、二次電池の電極反応を介して電気エネルギーが出力されるので、従来の燃料電池と比較して、負荷に対する追従性とパワーが大幅に向上する。これにより、例えば車両のような、瞬間的に高出力が要求される負荷変動の大きい用途にも、追加の二次電池やキャパシタなどの蓄電装置を伴うことなく、単独で適用することが可能となる。
【0100】
しかも、本実施形態に係る電池C1において、正極6は二酸化マンガンであるので耐久性に優れ、正極活物質として用いることにより、充電速度および寿命特性をともに向上させることができる。
<第二実施形態>
【0101】
次に、本発明に係る燃料電池を耐圧性能に優れ、取り扱いの容易な電池構造に適用した例について説明する。図14は、本発明の第2実施形態に係る電池C2の構造を示す断面図である。この電池C2は、図13とともに説明した第1実施形態の電池C1と同様の基本構成を有するが、図14に示すように管状の外装体10を採用して耐圧性能と取扱性能を向上させ、これによりエネルギー密度の増大を図るとともに取り扱いを容易なものとした。なお、本実施形態に係る電池C2の電池としての基本要素である、負極、正極、セパレータおよび電解液については、以下で特に説明する点を除いて、上記の第1実施形態と同様の物質および構造を採用することができる。
【0102】
管状に形成されている外装体10は、より具体的には、円筒部10aと、円筒部10aの一端に続く外装体10の底となる底部10bを有しており、その内方に、負極を形成する負極板14、正極を形成する正極板16、これら負極板14および正極板16の間に介在するセパレータ15、および電解液13を収容している。負極板14および正極板16はそれぞれ、円筒状の周壁14a、16aと、底部14b、16bとを有する有底の筒状に形成されており、外装体10の内側に、径方向の空間を介して正極板16が配置され、正極板16のさらに内側に、セパレータ15を介して負極板14が配置されている。この電池C2においては、外装体10と正極板16との間の径方向の空間が酸素貯蔵室19として機能し、負極板14の内方に形成された空間が水素貯蔵室18として機能する。
【0103】
外装体10は、導電性素材、具体的にはニッケルメッキを施した鉄で形成されている。この外装体10の底部10bの内面に、正極板16の底部16bの外面が接合されており、外装体10が電池C2の正極端子として機能する。一方、負極板14の底部14bと反対側(図14の右方)の右端部14cに、円板状の負極端子11が接合されている。具体的には、負極板14は、その右端部14cが、外装体10および正極板16の右方端面10c、16cよりも右方に突出するように配置されており、右端部14cの外周面に、外装体10および正極板16の各右方端面10c、16cを覆うドーナツ状の絶縁部材17の内径面17aを嵌合させたうえで、負極端子11の一方の面である内面(図14の左面)が負極板14の右端部14cに接合されている。
【0104】
負極板14としては、例えば、活物質である水素吸蔵合金の粉末に、導電剤としてのカーボンおよびバインダーとしてのエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)を加えて混合したものを、ニッケル金属メッシュで形成した基体に塗布して固めたものや造粒して表面積を増やしたものを使用することができる。一方正極板16としては、前述したファイバー状二酸化マンガン電極を使用することができる。別な実施形態として、例えば、活物質として二酸化マンガンの粉末を、負極板14の場合と同様に、導電剤としてのカーボンおよびバインダーとしてのエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)を加えて混合したものを、ニッケル金属メッシュで形成した基材に塗布して固めたものや造粒して表面積を増やしたものを使用することもできる。
【0105】
ここで、負極板14の水素ガス貯蔵室18に接触している側は、好ましくは疎水性材料を多く使用して水素吸蔵合金が濡れずに水素ガスと接触するようにしてある。セパレータ15に接触する側は親水性にしてあり、水素ガスの通過を阻止して電解液に常に濡れている状態を保ってイオン導電性を確保している。正極板16の酸素ガス貯蔵室19に接触している側は、好ましくは疎水性材料を多く使用して二酸化マンガンが濡れずに酸素ガスと接触するようにしてある。セパレータ15に接触する側は親水性にしてあり、ガスの通過を阻止して電解液に常に濡れている状態を保ってイオン導電性を確保している。疎水性を有する炭素やテフロン(登録商標)等を各電極板14、16のガス貯蔵室18,19に面する側に塗布もしくは噴霧してもよく、また、改質ナイロンを各電極板14,16のセパレータ15に面する側に塗布もしくは噴霧してもよい。
【0106】
また親水性と疎水性の両方の特性を有する酢酸ビニルを造粒したバインダー用いて電極を製作してもよい。更には酢酸ビニルを造粒したバインダーと親水性材料を混合したものを電極14,16のセパレータ15側に塗布してもよく、酢酸ビニルを造粒したバインダーと疏水性材料を混合したものを電極14,16のガス貯蔵室18,19側に塗布してもよい。
【0107】
外装体10の寸法については、外径を13.5mm〜14.5mmとして、長さを49.0mm〜50.5mmの範囲とすることが好ましい。また、外径を10.5mm〜9.5mmとして、長さを42.5mm〜44.5mmの範囲としてもよい。そのような寸法とすることにより、市販の単3形電池もしくは単4形電池と寸法上の互換性を実現することができる。
上記のように構成した第2実施形態に係る電池C2によれば、上述した第1実施形態に係る電池C1によって得られる効果に加えて、以下の効果が得られる。
【0108】
電池C2の外装体10は、図14に示すように、管状の構造を有しているので、優れた耐圧性を確保してエネルギー密度を高めることが容易となるのみならず、後述のように、多数のC2電池を並列直列に接続して充放電容量の大きな電池モジュールを構成することも容易となる。特に、本実施形態の電池C2は、外装体10の内側に、径方向の空間を介して配置された筒状の正極板16と、セパレータ15を介して正極板16の内側に配置された筒状の負極板14とを備え、酸素貯蔵室19が径方向の空間に形成されており、水素貯蔵室18が負極板14の内方に形成されているので、水素貯蔵室18および酸素貯蔵室19を形成するための追加の部材を要せず、必要最小限の部材のみを用いて、簡単な構造を有する電池とすることができる。したがって、電池の寸法を小さくし、またこれにより耐圧性を確保してエネルギー密度を高めながらも、組立作業が容易になる。
<第三実施形態>
【0109】
次に、本発明の第3実施形態に係る電池C3について説明する。図15は、第3実施形態に係る電池C3の構造を示す断面図であり、本発明の第2実施形態に係る電池C2の外部構造の一部を変更したものである。その変更点を中心に説明する。この電池C3は、外装体10の軸方向の一端に負極板14に電気的に接続された負極端子11を有し、軸方向の他端に正極板16に電気的に接続された外装体10である正極端子を有している。そして、図15に示すように正極端子11の中央に突起部11aが設けられていて、外装体10の底部10bの中央に底部凹部10dが設けられている。当該突起部と穴部とを嵌合させることにより2つの燃料電池が直列に接続される。
【0110】
この構成によれば、配線を必要とせずに複数の燃料電池を直列に接続することができる。突起部の外周に凸部を設けて穴部の内周面にグルーブを設けて突起部の凸部が穴部のグルーブに嵌るようになっているが、他の嵌合方法であってもよい。市販の単3形電池等と寸法上の互換を図るために、外装体10の底部10bに突起部を設けて、負極端子11の中央に凹部を設ける構造としてもよい。
【0111】
正極端子と負極端子にタップを切って、負極端子11の突起部11dをボルトとし、外装体10の底部10bに設けた凹部10dをナットとしてもよい。接続がより確実となる。
<第四実施形態>
【0112】
図16は、本発明の第4実施形態に係る電池C4の構造を示す断面図である。この電池C4は、図13において説明した第1実施形態の電池C1と同様の基本構成を有するが、詳細構造について異なっている。なお、本実施形態に係る電池C4の電池としての基本要素である、負極、正極、セパレータおよび電解液については、以下で特に説明する点を除いて、上述の第1実施形態と同様の物質および構造を採用することができる。
【0113】
この電池C4は、水素および酸素の化学エネルギーを電気エネルギーに変換して利用する燃料電池に二次電池の反応機構を取り込んだ燃料電池として構成したものであり、セパレータ55を介して対向する負極54および正極56、水素貯蔵室58を形成する負極ケース51、ならびに酸素貯蔵室59を形成する正極ケース52を主要な構成要素として備えている。
【0114】
負極54は、ニッケル水素二次電池で一般的に用いられているランタンニッケルのような水素吸蔵合金を主要な活物質として含んでいる。正極56の活物質には、二酸化マンガンを採用している。負極54と正極56との間にセパレータ55とともに介在させる電解液53としては、二次電池で一般的に用いられているアルカリ系水溶液、例えば、KOH水溶液、NaOH水溶液、LiOH水溶液などを用いることができる。
【0115】
正極56の活物質に二酸化マンガンを採用していることが本願発明の特徴とするところである。従来、二酸化マンガンはマンガン電池で知られる一次電池に使用されてきているところ、二次電池に使用されることはなかった。その理由につては、第1実施形態に係る電池C1において説明済みなので記載を省略する。
【0116】
負極54としては、例えば、負極活物質、導電性フィラーおよび樹脂に溶剤を加えてペースト状にしたものを、基板上に塗布して板状に成形し硬化させたものを使用することができる。同様に、正極56としては、前述したファイバー状二酸化マンガン電極を使用する。
【0117】
導電性フィラーとしては、カーボンファイバー、カーボンファイバーにニッケルメッキを施したもの、炭素粒子、炭素粒子にニッケルメッキを施したもの、有機繊維にニッケルメッキを施したもの、繊維状ニッケル、ニッケル粒子、ニッケル箔のいずれかを単独で、または組み合わせて用いることができる。樹脂はバインダーとして用いるものであって、軟化温度120℃までの熱可塑性樹脂、硬化温度が常温から120℃までの樹脂、120℃以下の蒸発温度を有し溶剤に溶解する樹脂、水に可溶な溶剤に溶解する樹脂、アルコールに可溶な溶剤に溶解する樹脂などを用いることができる。基板としては、ニッケル板のような電気伝導性のある金属板を用いることができる。また、基板の代わりに発泡ニッケルシートを使用してもよい。
【0118】
負極54の水素ガス貯蔵室58に接触している側は疎水性材料を多く使用して水素吸蔵合金が濡れずに水素ガスと接触するようにしてある。セパレータ55に接触する側は親水性にしてあり、水素ガスの通過を阻止して電解液に常に濡れている状態を保ってイオン導電性を確保している。正極56の酸素ガス貯蔵室59に接触している側は疎水性材料を多く使用して二酸化マンガンが濡れずに酸素ガスと接触するようにしてある。セパレータ55に接触する側は親水性にしてあり、ガスの通過を阻止して電解液に常に濡れている状態を保ってイオン導電性を確保している。
【0119】
疎水性を有する炭素やテフロン(登録商標)等を各電極54、56のガス貯蔵室58,59に面する側に塗布もしくは噴霧してもよく、また、改質ナイロンを各電極54,56のセパレータ55に面する側に塗布もしくは噴霧してもよい。また親水性と疎水性の両方の特性を有する酢酸ビニルを造粒したバインダー用いて電極を製作してもよい。更には酢酸ビニルを造粒したバインダーと親水性材料を混合したものを電極54,56のセパレータ55側に塗布してもよく、酢酸ビニルを造粒したバインダーと疏水性材料を混合したものを電極54,56のガス貯蔵室58,59側に塗布してもよい。
【0120】
セパレータ55は、プロトン(H)を透過させるが水素ガスおよび酸素ガスを透過させない孔径を有する膜を使用している。セパレータ5を形成する素材としては、例えば、ポリエチレン繊維やポリプロピレン繊維などのポリオレフィン系繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、ポリフルオロエチレン系繊維、ポリアミド系繊維などを使用することができる。セパレータ5には電解液53が保持されている。さらに、本実施形態では、セパレータ55の両表面を水(電解液53)で濡らして水封セパレータとして形成することにより、ガス不透過性を高め、水素ガスおよび酸素ガスがセパレータ55を通過して互いに接触し反応することを一層確実に防止している。
【0121】
負極54の、正極56に対向する面と反対側の面は、箱形の負極ケース51によって気密に覆われており、負極ケース51の内方空間は、負極54で発生する水素ガスを直接、つまり負極54との間に昇圧装置や連通路などの追加部材を介在させずに貯蔵する水素貯蔵室58として機能する。同様に、正極56の、負極54に対向する面と反対側の面は、箱形の正極ケース52によって覆われており、正極ケース52の内方空間は、正極で発生する酸素ガスを直接貯蔵する酸素貯蔵室59として機能する。水素貯蔵室59と酸素貯蔵室59とは、独立に、つまり、水素貯蔵室59と酸素貯蔵室59とが互いに連通しないように構成されている。酸素貯蔵室59には、正負極間に介在させた電解液53と同種類の電解液が、酸素貯蔵室59の容積の約1/3程度充填されている。
【0122】
負極ケース51および正極ケース52は、熱伝導度および電気電導度の高い材料で構成するが好ましく、鋼材で構成されているがアルミニウムであってもよい。しかしながら、鋼材は酸化しやすく、接触抵抗が増大しやすいので、ニッケルメッキを施すことにより、接触抵抗の低減を図っている。負極ケース51および正極ケース52は、それぞれ電池C4の負極端子および正極端子として作用する。
【0123】
ガスの圧力はセパレータ55の膨らみにより均圧化され、セパレータ55は親水性で気体の通過を阻止するので、電解液53のみが通過して均圧化を助ける。水素貯蔵室58および酸素貯蔵室59は、それぞれ負極ケース51と正極ケース52圧密シールされている。
【0124】
酸素貯蔵室59に充填される電解液53の量が少なければ、電気分解されるべき水の量が少なくなり、過充電時に発生する水素ガスおよび酸素ガスの量が少なくなる。一方、電解液の量が多ければ、ガスの貯蔵容積が減少する。このような観点から、酸素貯蔵室59に充填される電解液53の量は、酸素貯蔵室9の容積の20〜50%の範囲にあることが好ましく、25〜40%の範囲にあることがより好ましい。
【0125】
上記のように構成された電池C4は、以下のように動作する。電池C4は、上述のように、正極56を除き、負極54、電解液53およびセパレータ55に、一般的な二次電池と同様の材料を用いて構成されており、二次電池としての満充電の状態までは、通常どおり電流による充電を行うことができる。電池C4が満充電状態に達した後、さらに電流を供給し続けると、負極54からは水素ガスが、正極56からは酸素ガスがそれぞれ発生するが、これら水素ガスおよび酸素ガスは、互いに接触することなく、水素貯蔵室58および酸素貯蔵室59にそれぞれ貯蔵される。また、ガス貯蔵室58,59に蓄えられた水素ガスもしくは酸素ガスにより、負極54および正極56が充電される。
【0126】
電池C4の放電が開始されると、負極54および正極56間では、二次電池としての通常の放電反応が起こって負荷に電流が流れる。このとき、負極54および正極56のそれぞれにおいて、放電によって減少した電気量分が、水素貯蔵室58および酸素貯蔵室59にそれぞれ貯蔵された水素ガスおよび酸素ガスによる充電によって補われる。
【0127】
すなわち、負極54においては、充電状態の水素吸蔵合金(MH)から放出された分のプロトンが、水素ガスによって補われ、負極の充電状態が維持される。一方正極56においては、充電状態の二酸化マンガン(MnO)から放電(還元)されたオキシ水酸化マンガン(MnOOH)が、酸素ガスによって再び酸化され、正極の充電状態が維持される。各貯蔵室58,59の水素ガスおよび酸素ガスが消費された後は、通常の二次電池として作動して放電がなされる。
【0128】
すなわち、本実施形態に係る電池C4は、二次電池として通常の充電により電極に蓄えることのできるエネルギーに加えて、過充電時に供給される電気エネルギーを、各貯蔵室58,59にガスとして蓄え、これを電気エネルギーに再変換して利用することが可能である。この場合、各貯蔵室58,59およびこれを含む電池C4の耐圧性能と密閉性能を高めることにより、体積あたりのガス貯蔵量を増加させて、電池C4のエネルギー密度を従来の二次電池と比較して大幅に、例えば数10倍程度に向上させることが可能となる。しかも、各貯蔵室58,59には、過充電時に負極54で発生した水素ガスおよび正極56で発生した酸素ガスが直接貯蔵されるので、ガスの昇圧装置や連通路を追加で設ける必要がなく、簡単な構造によって、安価に製造・供給することが可能な電池とすることができる。
【0129】
さらには、上述のように、電池C4の放電時には、二次電池の電極反応を介して電気エネルギーが出力されるので、従来の燃料電池と比較して、負荷に対する追従性が大幅に向上する。これにより、例えば車両のような、瞬間的に高出力が要求される負荷変動の大きい用途にも、追加の二次電池やキャパシタなどの蓄電装置を伴うことなく、単独で適用することが可能となる。
【0130】
しかも、本実施形態に係る電池C4において、正極56は二酸化マンガンであるので耐久性に優れ、正極活物質として用いることにより、充電速度および寿命特性をともに向上させることができる。
【0131】
図16(a)において、セパレータ55の外周面55aは電気絶縁材で構成され、セパレータ55と同じ厚みを有した絶縁部67で覆われている。負極ケース51の外周面51a、正極ケース52の外周面52aおよび絶縁部67の外周面67aは面一となるようにそれぞれ負極ケース51,正極ケース52および絶縁部67の外形寸法が調製されている。絶縁部67は気密性を有する材料で構成されているので、セパレータ55は乾燥状態で通気性があるが電解液の作用でガスの通過は阻止されているが、例えば電解液に溶解した酸素もしくは水素がセパレータ55の外周面55aに到達しても、酸素ガスもしくは水素ガスが電池C4の外部に漏れることはない。
【0132】
負極ケース51および正極ケース52の開口部には、それぞれ負極54および正極56の厚みに等しい段差65、66が設けられていて、それぞれ負極54および正極56が負極ケース51および正極ケース52の開口部を覆うように取り付けられている。
【0133】
以上のとおり、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能である。したがって、そのようなものも本発明の範囲内に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0134】
本発明に係る燃料電池用正極およびこれを用いた燃料電池は、産業用のみならず民生用の蓄電および発電設備としてとして好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0135】
1 負極ケース
2 正極ケース
3 電解液
4 負極
5 セパレータ
6 正極
8 水素貯蔵室
9 酸素貯蔵室
10 外装体
11 負極端子
13 電解液
14 負極板
15 セパレータ
16 正極板
17 絶縁部材
18 水素貯蔵室
19 酸素貯蔵室
21 集電体
22 二酸化マンガン
23 導電助剤(グラファイト)
25 カーボンファイバー
26 電析二酸化マンガン
27 ニッケルメッキ層
30 正極製造装置
31 計算機
32 電気化学測定器
33 電解槽
34 カバー
35 電解液
36 アノード
37 カソード
38 参照電極
39 ヒーター
51 負極ケース
52 正極ケース
53 電解液
54 負極
55 セパレータ
56 正極
58 水素貯蔵室
59 酸素貯蔵室
65 段差
66 段差
67 絶縁部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素吸蔵合金を含む負極と、正極と、前記負極と正極との間に介在して、プロトンを通過させ水素ガスおよび酸素ガスを通過させないセパレータとを有する燃料電池において、
当該燃料電池には、前記負極で発生する水素ガスおよび前記正極で発生する酸素ガスをそれぞれ直接かつ独立に貯蔵する水素貯蔵室および酸素貯蔵室と備えていて、
かつ、当該正極はカーボンファイバーに二酸化マンガンを電解析出して得られる燃料電池正極。
【請求項2】
前記正極が、カーボンファイバーにニッケル被覆し、次いで硫酸塩浴中で陰分極し、次いで苛性アルカリ水溶液中で化成処理して得られる請求項1に記載の燃料電池正極。
【請求項3】
カーボンファイバーは、単繊維1000〜24000本が束になった状態である請求項1または2のいずれか一項に記載の燃料電池正極。
【請求項4】
カーボンファイバーが、単繊維2〜10本が撚られている状態である請求項1〜3のいずれか一項に記載の燃料電池正極。
【請求項5】
カーボンファイバーに同心状に2〜4μmの厚さで二酸化マンガンが電解析出されている請求項1〜4のいずれか一項に記載の燃料電池正極。
【請求項6】
ニッケル被覆層の厚さが、0.2〜8μmである請求項1〜6のいずれか一項に記載の燃料電池正極。
【請求項7】
ニッケル被覆の工程が、無電解ニッケルめっき、次いで電解ニッケルめっきからなる請求項1〜6のいずれか一項に記載の燃料電池正極。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の燃料電池正極と、水素吸蔵合金を含む負極とを備えた燃料電池。
【請求項9】
前記燃料電池が、前記負極、正極、セパレータ、水素貯蔵室、および酸素貯蔵室を収容する筒状の外装体を有する請求項8に記載の燃料電池。
【請求項10】
前記正極中に含まれる四三酸化マンガン(Mn)の量が重量比で5%以下である請求項8または9のいずれか一項に記載の燃料電池。
【請求項11】
前記負極および前記正極の少なくともいずれか一方が、
前記負極の前記セパレータに接する面に親水性を有する材料を配置して、前記水素貯蔵室に接する面に疎水性を有する材料を配置した負極、
および、
前記正極の前記セパレータに接する面に親水性を有する材料を配置して、前記酸素貯蔵室に接する面に疎水性を有する材料を配置した正極、
である請求項8〜10のいずれか一項に記載の燃料電池。
【請求項12】
前記電解液が前記酸素貯蔵室に保持されている請求項8〜11のいずれか一項に記載の燃料電池。
【請求項13】
前記外装体の内側に、径方向の空間を介して、筒状の正極と筒状の負極が前記セパレータを介して配置され、前記正極の前記セパレータの反対側の面に接して前記酸素貯蔵室が形成され、前記負極の前記セパレータの反対側の面に接して前記水素貯蔵室が形成されている請求項8〜12のいずれか一項に記載の燃料電池。
【請求項14】
前記外装体の内側に、径方向の空間を介して配置された筒状の正極と、前記セパレータを介して前記正極の内側に配置された筒状の負極とを備え、前記酸素貯蔵室が前記径方向の空間に形成されており、前記水素貯蔵室が前記負極の内方に形成されている請求項8〜13のいずれか一項に記載の燃料電池。

【図2】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−93146(P2013−93146A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−233497(P2011−233497)
【出願日】平成23年10月25日(2011.10.25)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【Fターム(参考)】