説明

燃料電池用小型ポンプ及びゴム部材

【課題】 耐メタノール特性を向上して発電効率を低下させないようにすると共に、低硬度化が可能で且つ温度依存性を低下させて耐熱老化性を向上してポンプ性能を安定させて信頼性を向上することができる燃料電池用小型ポンプ及びゴム部材を提供する。
【解決手段】 メタノールからなる燃料が貯留された貯留タンクから燃料が供給される供給孔14と燃料を電気に変換する機関部に導入する導入孔15とに連通するように設けられた圧力室12と、該圧力室12の一方面に設けられたダイヤフラム13と、前記供給孔14及び前記導入孔15にそれぞれ設けられた逆止弁17とを具備する燃料電池用小型ポンプ10であって、少なくとも前記ダイヤフラム13及び前記逆止弁17からなるゴム部材を、耐メタノール抽出率が1%以下で且つ耐メタノール膨潤率が1%以下のシリコーンゴムで形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタノールを用いた燃料電池に用いられる燃料電池用小型ポンプに関し、特に燃料電池用小型ポンプに用いられるゴム部材に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に燃料電池としては、固形高分子型燃料電池、都市ガスやメタノールなどを用いたリン酸型燃料電池、メタノールを用いたダイレクトメタノール型燃料電池などが知られている。
【0003】
このうち、ダイレクトメタノール型燃料電池は、水素容器、改質器及び一酸化炭素除去装置を用いずにメタノールを直接用いて発電するため、小型化が容易で且つ起動が早いことから、携帯電話、ノートパソコンなどのモバイル機器等の電源として用いられることが望まれている。
【0004】
ここで一般的なダイレクトメタノール型燃料電池としては、メタノールが貯留されるタンク等の貯留部と、空気極と燃料極とで電解質を挟んだ構造を有するセルを複数積み重ねたセルスタックからなる機関部と、機関部にメタノールを送る小型ポンプとで構成されている。なお、小型ポンプには、ダイヤフラム、逆止弁及びパッキン等からなるゴム部材が用いられている。
【0005】
しかしながら、小型ポンプのゴム部材として、メタノール抽出率の大きいゴム材料を使用すると、ゴム部材からメタノールへ抽出することによって燃料電池の燃料であるメタノールを汚染してしまい、汚染されたメタノールによって電極等が汚染され燃料電池の発電効率が低下してしまうという問題がある。
【0006】
また、小型ポンプのゴム部材として、メタノール膨潤率の大きいゴム材料を使用すると、ゴム部材が膨潤し、寸法形状が変化してしまうため、ゴム製品性能に影響を及ぼしてポンプ性能が低下してしまうという問題がある。
【0007】
また、小型ポンプのゴム部材にエチレン−プロピレンゴム(EPDM)を用いることで、メタノール抽出率及びメタノール膨潤率を向上することができるが、その抽出率及び膨潤率を満足しながら低硬度化することが困難である。なお、ポンプ部品の一つである逆止弁は、低硬度の方がポンプ性能が出る場合もあり、EPDMの場合、その要求を満足させることができない。
【0008】
さらに、燃料電池用小型ポンプは、稼働時に高温環境となることから、温度依存性が低いものが好ましいが、EPDM等のゴム部材を用いると温度依存により材料物性、例えば、ゴム硬度が低くなると、ゴム部材の静ばね定数も低くなり、ポンプ吐出力や密閉性等のポンプ性能に悪影響を与えてしまうという問題がある。また、燃料電池用小型ポンプは、長期に亘って使用する際に耐熱老化性が低いゴム部材を用いるのが好ましいが、EPDM等のゴム部材を用いると耐熱劣化によってポンプ性能が変化してしまい信頼性が低いという問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明はこのような課題に鑑み、耐メタノール特性を向上して発電効率を低下させないようにすると共に、低硬度化が可能で且つ温度依存性を低下させて耐熱老化性を向上してポンプ性能を安定させて信頼性を向上することができる燃料電池用小型ポンプ及びゴム部材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する本発明の第1の態様は、メタノールからなる燃料が貯留された貯留タンクから燃料が供給される供給孔と燃料を電気に変換する機関部に導入する導入孔とに連通するように設けられた圧力室と、該圧力室の一方面に設けられたダイヤフラムと、前記供給孔及び前記導入孔にそれぞれ設けられた逆止弁とを具備する燃料電池用小型ポンプであって、少なくとも前記ダイヤフラム及び前記逆止弁からなるゴム部材が、耐メタノール抽出率が1%以下で且つ耐メタノール膨潤率が1%以下のシリコーンゴムからなることを特徴とする燃料電池用小型ポンプにある。
【0011】
かかる第1の態様では、耐メタノール抽出率を低下させることでメタノールの汚染を防止して機関部の汚染を防止することができ、発電効率を低下させるのを防止することができると共に、耐メタノール膨潤率を低下させることでポンプ性能を安定させて信頼性を向上することができる。また、シリコーンゴムからなるゴム部材は低硬度で且つ温度依存性が低く、耐熱老化性に優れているため、燃料電池用小型ポンプのポンプ性能を安定させて信頼性を向上することができる。
【0012】
本発明の第2の態様は、第1の態様において、前記シリコーンゴムの硬度Hsが、20〜70°であることを特徴とする燃料電池用小型ポンプにある。
【0013】
かかる第2の態様では、所定硬度のゴム部材を用いることで、燃料電池用小型ポンプのポンプ性能を向上することができる。
【0014】
本発明の第3の態様は、第1又は2の態様において、前記ゴム部材が、メチルビニルシリコーンゴム又はシリコーン変性EPDMであることを特徴とする燃料電池用小型ポンプにある。
【0015】
かかる第3の態様では、メチルビニルシリコーンゴム又はシリコーン変性EPDMからなるゴム部材によって、燃料電池用小型ポンプのポンプ性能を安定させて信頼性を向上することができる。
【0016】
本発明の第4の態様は、第1〜3の何れかの態様において、前記ゴム部材が、パッキン、Oリング及びスペーサから選択される少なくとも一つを含むことを特徴とする燃料電池用小型ポンプにある。
【0017】
かかる第4の態様では、パッキン、Oリング及びスペーサ等のゴム部材を耐メタノール特性に優れたシリコーンゴムを用いることで、燃料が漏れ出るのを防止して信頼性を向上することができる。
【0018】
本発明の第5の態様は、メタノールを燃料とする燃料電池に用いられる燃料電池用小型ポンプにおける少なくとも燃料が流通する部分のゴム部材であって、耐メタノール抽出率が1%以下で且つ耐メタノール膨潤率が1%以下であるシリコーンゴムからなることを特徴とするゴム部材にある。
【0019】
かかる第5の態様では、耐メタノール抽出率を低下させることでメタノールの汚染を防止して機関部の汚染を防止することができ、発電効率を低下させるのを防止することができると共に、耐メタノール膨潤率を低下させることでポンプ性能を安定させて信頼性を向上することができる。また、シリコーンゴムからなるゴム部材は低硬度化が可能で且つ温度依存性が低く、耐熱老化性に優れているため、燃料電池用小型ポンプのポンプ性能を安定させて信頼性を向上することができる。
【0020】
本発明の第6の態様は、第5の態様において、前記シリコーンゴムの硬度Hsが、20〜70°であることを特徴とするゴム部材にある。
【0021】
かかる第6の態様では、所定硬度のゴム部材を用いることで、燃料電池用小型ポンプのポンプ性能を向上することができる。
【0022】
本発明の第7の態様は、第5又は6の態様において、前記シリコーンゴムが、メチルビニルシリコーンゴム又はシリコーン変性EPDMであることを特徴とするゴム部材にある。
【0023】
かかる第7の態様では、メチルビニルシリコーンゴム又はシリコーン変性EPDMからなるゴム部材によって、燃料電池用小型ポンプのポンプ性能を安定させて信頼性を向上することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、燃料電池用小型ポンプに耐メタノール抽出率が1%以下で且つ耐メタノール膨潤率が1%以下のシリコーンゴムからなるゴム部材を用いることで、耐メタノール特性を向上して発電効率が低下するのを防止することができると共にポンプ性能を安定させて信頼性を向上することができる。また、シリコーンゴムからなるゴム部材は低硬度化が可能で且つ温度依存性が低く、耐熱老化性に優れているため、燃料電池用小型ポンプのポンプ性能を安定させて信頼性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0026】
図1は、燃料電池用小型ポンプの断面図である。図1に示すように、本実施形態の燃料電池用小型ポンプ10は、ポンプ本体11内にメタノールが充填される圧力室12を有する。この圧力室12は、一方面がゴム部材からなるダイヤフラム13によって画成されており、その他方面には、メタノールが貯留された図示しない燃料タンク等の貯留部に連通する導入孔14と、セルスタックからなる機関部に連通して機関部にメタノールを供給する供給孔15とが設けられている。
【0027】
また、ポンプ本体11の導入孔14と供給孔15との間には、ゴム部材からなる板状のスペーサ16が設けられている。このスペーサ16は、その両端部が導入孔14と供給孔15とにそれぞれ突出するように設けられている。このスペーサ16は、メタノールの漏出を防ぐパッキンとしての役割を有する。
【0028】
さらに、導入孔14と供給孔15とには、それぞれゴム部材からなる板状の逆止弁17が設けられている。この逆止弁17は、一端がポンプ本体11に固定され、他端が自由端となってスペーサ16に当接するように設けられており、逆止弁17がその弾性力によってスペーサ16に当接することによって導入孔14及び供給孔15を塞ぐようになっている。このような逆止弁17は、一方が導入孔14に燃料タンクから圧力室12に向かってメタノールが流れるように設けられ、他方が供給孔15に圧力室12から機関部に向かってメタノールが流れるように設けられている。
【0029】
一方、ダイヤフラム13は、圧力室12の一方面を塞ぐように設けられた板状のゴム部材からなり、その中央には駆動軸18の先端部が固定されている。この駆動軸18は、基端部側が図示しない駆動手段に固定されており、駆動手段によって往復運動するように設けられている。なお、駆動手段は、その駆動により駆動軸18が往復駆動するものであれば特に限定されず、例えば、電磁力、静電力、摩擦力を用いた各種モータや、圧電及び磁気歪み効果を利用した変換器、油圧式モータ及びシリンダーなどが挙げられる。そして、図示しない駆動手段の駆動により駆動軸18が往復運動することによって、ダイヤフラム13は撓み変形されるようになっている。このように駆動軸18によってダイヤフラム13が連続して撓み変形することによって、圧力室12の内容積を増大させて燃料タンク等の貯留部から圧力室12にメタノールを充填すると共に、圧力室12の内容積を減少させて圧力室12に充填されたメタノールを機関部に供給するようになっている。
【0030】
ここで、本実施形態の燃料電池用小型ポンプ10は、ダイヤフラム13、逆止弁17、スペーサ16からなるゴム部材で構成されている。そして、本実施形態では、このゴム部材の全てがメタノールに接触するように設けられているため、ゴム部材であるダイヤフラム13、逆止弁17及びスペーサ16は、耐メタノール抽出率が1%以下で、且つ耐メタノール膨潤率が1%以下のシリコーンゴムで形成されている。このようなシリコーンゴムとしては、例えば、メチルビニルシリコーンゴムやシリコーン変性EPDMなどが挙げられる。また、このようなゴム部材は、小型ポンプの流量や吐出量などのポンプ性能を向上するために、硬度Hsが20〜70°が好ましく、特に逆止弁17の硬度Hsは20〜40°が好適である。
【0031】
このようにメタノールに接触するゴム部材に、耐メタノール抽出率が1%以下のシリコーンゴムを用いることで、ゴム部材からメタノールへ抽出するのを防止して、燃料電池の燃料であるメタノールが汚染されるのを防止し、汚染されたメタノールにより機関部の電極等が汚染されて燃料電池の発電効率が低下するのを防止することができる。また、メタノールに接触するゴム部材に耐メタノール膨潤率が1%以下のシリコーンゴムを用いることで、メタノールによってゴム部材が膨潤するのを防止して、流量や吐出量などのポンプ性能を安定させて信頼性を向上することができる。また、ゴム部材にシリコーンゴムを用いることで低硬度化が容易となり、ポンプ性能を向上することができる。
【0032】
さらに、シリコーンゴムからなるゴム部材は、温度依存性が低いため、小型ポンプ10が駆動時に高温環境となった場合にも、ゴム硬度が低下して静ばね定数が低下することがなく、ポンプ特性や密封性に悪影響を与えることがない。また、シリコーンゴムからなるゴム部材は耐熱老化性が優れているため、耐熱老化による物性変化がほとんどなく、ポンプ性能の変化が少なく信頼性を向上することができる。
【0033】
なお、このような燃料電池用小型ポンプ10は、本実施形態では、高さhが30〜50mm、外径rが約5〜15mmと小型のものであり、携帯電話、ノートパソコンなどのモバイル機器の燃料電池用として利用することができるものである。
【0034】
また、本実施形態では、メタノールに接触するゴム部材であるダイヤフラム13、逆止弁17及びスペーサ16を耐メタノール特性の良好なシリコーンゴムで形成するようにしたが、特にこれに限定されず、小型ポンプに用いられる他のゴム部材、例えば、パッキン、Oリング等も、本実施形態のゴム部材と同じ材料で形成するようにしてもよい。
【0035】
また、本実施形態の燃料電池用小型ポンプ10は、ダイヤフラム13、逆止弁17及びスペーサ16からなるゴム部材で構成されたものであるが、燃料電池用小型ポンプの形状等は特にこれに限定されず、メタノールを供給する小型ポンプであれば、ゴム部材に耐メタノール抽出率が1%以下で且つ耐メタノール膨潤率が1%以下のシリコーンゴムを用いることで上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0036】
(実施例1及び2)
実施例1のゴム部材として、メチルビニルシリコーンゴムからなる試験片を用意した。また、実施例2のゴム部材として、シリコーン変性EPDMからなる試験片を用意した。
【0037】
(比較例1〜4)
比較例1のゴム部材としてエチレン−プロピレンゴム(EPDM)からなる試験片、比較例2のゴム部材としてフロロシリコーンゴムからなる試験片、比較例3のゴム部材としてスチレン−ブタジエンゴム(SBR)からなる試験片、比較例4のゴム部材としてブタジエンゴム(BR)からなる試験片を用意した。
【0038】
(試験例1)
実施例1、2及び比較例1〜4の試験片の硬度、破断強度、引裂強度、反発弾性、破断伸び及び圧縮永久歪みからなるゴム特性を測定した。この結果を図2及び3にグラフとして示す。なお、試験方法は、JIS規格によるものである。
【0039】
図2及び3に示すように、実施例1、2及び比較例1〜4の試験片の硬度Hsは20〜70°であり、実施例1、2及び比較例1〜4の全てのゴム部材を小型ポンプのゴム部材として利用することができることが分かった。
【0040】
また、上述のように小型ポンプの逆止弁には、硬度Hsが20〜40°のゴム部材を用いるのが好ましいが、比較例1〜4のゴム部材は、硬度Hsが40°より大きいことから、比較例1〜4のゴム部材を小型ポンプの逆止弁に用いると、流量及び吐出量などのポンプ性能が低くなってしまう。これに対し、実施例1及び2のゴム部材は、硬度Hsが20〜40°であるため、小型ポンプの逆止弁に用いることでポンプ性能の低下を防止することができる。
【0041】
(試験例2)
実施例1、2及び比較例1〜4の試験片の寸法及び乾燥重量を測定する。試験片の寸法測定は、試験片を2枚のガラス板に挟んで測定する。このとき、ガラス板の試験片に加える荷重は、ガラス板の自重のみとし、その他の荷重を加えないようにした。
【0042】
これら実施例1、2及び比較例1〜4の試験片を100%メタノールが半分充填されたサンプル瓶(30ml)に浸漬する。このとき一つのサンプル瓶に入れる試験片は最大3つまでとし、試験片の加硫系の異なるものは、別のサンプル瓶に入れるようにする。
【0043】
このような状態で、常温で48時間放置した後、試験片を取り出し、ガーゼで軽く試験片表面についた液を拭き取り、試験後の寸法を測定する。この試験後の寸法測定は、試験前と同じ条件、すなわち、2枚のガラス板で挟んだ状態で行う。また、各試験片の寸法測定後、試験片を自然乾燥(室温放置)させた後、乾燥重量を測定する。
【0044】
この試験結果から下記式(1)に示す計算により変化率を求めた。この結果を図4に示す。
【0045】
【数1】

【0046】
図4に示す試験結果から、実施例1、2及び比較例1の試験片では、耐メタノール抽出率及び耐メタノール膨潤率の両方が1%以下と低く抑えられており、これらの材料を使用することでメタノールへの抽出及びメタノールによる膨潤を抑えて燃料電池の発電効率の低下がなく、ポンプ性能の低下を防止することができる。
【0047】
(実施例3)
実施例3として、硬度Hsが70°のメチルビニルシリコーンゴムでダイヤフラムを形成した。
【0048】
(比較例5)
比較例5として、実施例3と同じ硬度、すなわち、硬度Hsが70°のEPDMでダイヤフラムを形成した。
【0049】
(試験例3)
実施例3及び比較例5のダイヤフラムの温度依存性について試験した。試験方法は、図5に示すように、容器200内に精製水201を充填し、この容器200内にダイヤフラム213の両端を支持する支持アーム202を有する支持治具203を精製水201に浸漬した状態で設置する。そして、精製水201を所定の温度にした状態で、ダイヤフラム213の中央部を荷重−変位測定試験機(クリープ試験機)204の先端で押圧し、このときのクリープ試験機204による荷重と変位とを測定した。なお、精製水の温度は、25℃(初期)と70℃とで測定した。この結果を図6に示す。
【0050】
図6(a)に示す結果から、実施例3のメチルビニルシリコーンゴムからなるダイヤフラムは、精製水が25℃及び70℃の温度であっても荷重と変位との関係は特に変化しないことが分かった。これに対し、図6(b)に示す結果から、比較例5のダイヤフラムは、精製水の温度が25℃と70℃とで、荷重に対する変位量が大きく変わってしまうことが分かった。
【0051】
このため、実施例3のメチルビニルシリコーンゴムで形成したダイヤフラムを用いた小型ポンプは、温度変化によって変位量が変わることなく、常に安定したポンプ性能を維持することができる。特に燃料電池用小型ポンプは、高温環境下で使用されるものであるため、実施例3のダイヤフラムは、燃料電池用小型ポンプに用いて良好なものである。
【0052】
なお、実施例3としてシリコーンゴムからなるダイヤフラムを例示したが、温度依存性の低いシリコーンゴムを、燃料電池用小型ポンプの逆止弁等の他のゴム部材に用いることで、ポンプ性能を安定させることができる。
【0053】
以上、試験例1〜3の結果から分かるように、実施例1及び2のシリコーンゴムからなる試験片は、低硬度にしても耐メタノール特性が高いため、実施例1及び2のゴム部材を燃料電池用小型ポンプに用いることで、発電効率を低下させることなく、ポンプ性能を安定させて信頼性を向上することができる。また、比較例1のEPDMからなるゴム部材も耐メタノール特性が高いが、上述のように試験例3の結果から実施例3のシリコーンゴムからなるダイヤフラムは、比較例5のEPDMからなるダイヤフラムに比べて温度依存性が低いため、実施例1及び2のシリコーンゴムからなるゴム部材も、比較例1のEPDMからなるゴム部材に比べて温度依存性が低いものである。このようなことから、実施例1〜3のゴム部材を燃料電池用小型ポンプに用いることで、温度変化によって流量等のポンプ性能が変化することがなく、ポンプ性能を安定させて信頼性を向上することができる。
【0054】
また、実施例1〜3のシリコーンゴムは、比較例1〜5のEPDM等に比べて耐熱老化性に優れているため、燃料電池用小型ポンプのポンプ性能が変化することがなく、ポンプ性能を安定させて信頼性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の一実施形態に係る燃料電池用小型ポンプの断面図である。
【図2】本発明の実施例及び比較例に係るゴム部材のゴム特性を示すグラフである。
【図3】本発明の実施例及び比較例に係るゴム部材のゴム特性を示すグラフである。
【図4】本発明の試験例1に係る試験結果を示すグラフである。
【図5】本発明の試験例2に係る試験方法の概略図である。
【図6】本発明の試験例2に係る試験結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0056】
10 燃料電池用小型ポンプ
11 小型ポンプ本体
12 圧力室
13、213 ダイヤフラム
14 導入孔
15 供給孔
16 スペーサ
17 逆止弁
18 駆動軸
200 容器
201 精製水
203 支持治具
204 クリープ試験機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタノールからなる燃料が貯留された貯留タンクから燃料が供給される供給孔と燃料を電気に変換する機関部に導入する導入孔とに連通するように設けられた圧力室と、該圧力室の一方面に設けられたダイヤフラムと、前記供給孔及び前記導入孔にそれぞれ設けられた逆止弁とを具備する燃料電池用小型ポンプであって、
少なくとも前記ダイヤフラム及び前記逆止弁からなるゴム部材が、耐メタノール抽出率が1%以下で且つ耐メタノール膨潤率が1%以下のシリコーンゴムからなることを特徴とする燃料電池用小型ポンプ。
【請求項2】
請求項1において、前記シリコーンゴムの硬度Hsが、20〜70°であることを特徴とする燃料電池用小型ポンプ。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記ゴム部材が、メチルビニルシリコーンゴム又はシリコーン変性EPDMであることを特徴とする燃料電池用小型ポンプ。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかにおいて、前記ゴム部材が、パッキン、Oリング及びスペーサから選択される少なくとも一つを含むことを特徴とする燃料電池用小型ポンプ。
【請求項5】
メタノールを燃料とする燃料電池に用いられる燃料電池用小型ポンプにおける少なくとも燃料が流通する部分のゴム部材であって、
耐メタノール抽出率が1%以下で且つ耐メタノール膨潤率が1%以下であるシリコーンゴムからなることを特徴とするゴム部材。
【請求項6】
請求項5において、前記シリコーンゴムの硬度Hsが、20〜70°であることを特徴とするゴム部材。
【請求項7】
請求項5又は6において、前記シリコーンゴムが、メチルビニルシリコーンゴム又はシリコーン変性EPDMであることを特徴とするゴム部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−79934(P2006−79934A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−262605(P2004−262605)
【出願日】平成16年9月9日(2004.9.9)
【出願人】(000242426)北辰工業株式会社 (55)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】