説明

燃料電池用電極、膜電極複合体および燃料電池、ならびにそれらの製造法

【課題】高温でも安定した出力を供給でき、長期にわたって発電性能を保つことが可能な燃料電池用電極、膜電極複合体および燃料電池の提供。
【解決手段】SnドープIn、FドープSnOまたはSbドープSnOから選択される触媒担体Aと、前記触媒担体表面に化学的に結合した酸化物粒子相Bとを具備してなるプロトン伝導性無機酸化物と、その表面に担持された酸化還元触媒相Cとを具備してなる触媒複合体、およびバインダーを含んでなる触媒層からなる燃料電池用電極、ならびにそれを具備してなる膜電極複合体および燃料電池。前記触媒複合体は、触媒担体を酸化物粒子相の原料となる物質を含む溶液中に分散させ、熱処理してプロトン伝導性無機酸化物を形成させ、さらにそのプロトン伝導性無機酸化物を触媒前駆体を含む溶液に分散させ、熱処理またはpH調整により触媒相を堆積させることにより製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロトン伝導体を含有する燃料電池用電極と、膜電極複合体と、膜電極複合体を備えた燃料電池とに関するものである。本発明は、さらにそれらの製造法にも関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料電池はプロトン伝導性膜の一方に燃料極(アノード)、他方に酸化剤極(カソード)を備える。アノードに水素あるいはメタノールなどの燃料を供給すると、アノードで電気化学的に燃料が酸化され、プロトンと電子を生成する。生成した電子は外部回路へ流れる。生成したプロトンは、プロトン伝導性膜を通してカソードに到達し、カソードに供給された酸化剤および外部回路からきた電子と反応して水を生成する。
【0003】
アノードおよびカソードには、共に優れたプロトン伝導性能が求められる。プロトン伝導体としては、パーフルオロスルホン酸含有高分子(例えば、デュポン社製の商品名ナフィオン)などが知られている。燃料電池システムを小型化するため、液体燃料のメタノールなどは高濃度で使用される場合が多い。パーフルオロスルホン酸含有高分子は、電極触媒層のプロトン伝導性バインダーとして用いた場合、高濃度のメタノールに溶解する。特に、高出力が得られる100℃以上の高温下での発電あるいは発電に伴う発熱による温度上昇によって、パーフルオロスルホン酸含有高分子の溶解は促進される。従って、安定した出力を得ることが困難である。
【0004】
無機固体酸系プロトン伝導体として固体超強酸性を有する硫酸担持金属酸化物(例えば特許文献1参照)が知られている。具体的にはジルコニウム、チタン、鉄、錫、シリコン、アルミニウム、モリブデン、およびタングステンから選ばれる元素を1種類以上含む酸化物表面に硫酸を担持させ、熱処理によって酸化物表面に硫酸を固定化させたものである。硫酸担持金属酸化物は固定化された硫酸根によってプロトン伝導性を発現するが、加水分解により硫酸根が逸脱し、プロトン伝導度の低下が起こる。そのため、発電の過程で水を生じる燃料電池、特に液体燃料を用いる燃料電池のプロトン伝導性固体電解質としては不安定であり、長期の電力安定供給には不適当である可能性がある。
【0005】
また、非特許文献1には、電極触媒層のプロトン伝導性無機バインダーとして、スルホン酸基を有するボロシロキサンプロトン伝導性固体電解質について記載されている。これは、スルホン酸基を有するボロシロキサンの原料となる金属アルコキシドのゾル溶液を触媒粒子と混合し、得られたスラリーをカーボンペーパーに塗布、熱処理して触媒層の結着剤として使用するものである。スルホン酸基を有するボロシロキサン電解質は、前述のパーフルオロスルホン酸含有高分子と同様に、スルホン酸基を介したプロトン伝導のため水分(同伴水)を多量に必要とする。水分を確保することが困難な高温下での発電では、プロトン伝導に必要な水分が減少し、プロトン伝導度が著しく低下する。また、スルホン酸基が脱離する可能性があるため、長期の電力安定供給には不適当な材料であると推測される。
【0006】
また、特許文献2には、電極触媒層にプロトン伝導性の無機材料としてPおよびSiOを含む無機ガラスを用いることが記載されている。これは燃料極および酸化剤極の電極表面にPおよびSiOを含有する無機ガラスの原料となる金属アルコレートを含有するゾルあるいは湿潤ゲルを塗布、乾燥、加熱して触媒層を結着させ、電極とするものである。PおよびSiOを含有する無機ガラスはプロトン伝導にガラス表面のOH基を利用するが、高温下での運転では乾燥によって、OH基が脱離しプロトン伝導度が低下する。また、ガラス骨格を形成するP成分が水に溶出する可能性があるため、長期の電力安定供給には困難が伴う。
【0007】
また、アノードおよびカソードは、触媒または触媒担持材同士の連続性、あるいはプロトン伝導体の連続性を十分に形成することによって高い電子伝導性、プロトン伝導性を有することが必要である。さらに電子伝導体とプロトン伝導体が接触することにより反応場となる三相界面が多く形成される必要がある。特許文献3には、電極触媒層の触媒担体に導電性金属酸化物を用いることが記載されている。長期安定性には効果が認められるが、触媒担体にプロトン伝導性を有していないため、触媒の利用効率や三相界面の形成が不十分であると考えられる。
【特許文献1】特開2004−158261公報
【特許文献2】特開2001−102071公報
【特許文献3】特開2005−149742公報
【特許文献4】特開2006−032287号公報
【非特許文献1】Eiji Higuchi, Hiroyuki Uchida, Tatsuo Fujinami, Masahiro Watanabe, Solid State Ionics, 171, 45−49(2004)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、Ti等の酸化物担体と、W等の酸化物の粒子と、触媒担持カーボンと、これらを結着させる高分子バインダーを具備する燃料電池用電極等を提案した(特許文献4)。このような燃料電池用電極等は水管理が容易で、室温から150℃付近の高温にわたって安定したイオン伝導性が維持できると考えられる。
【0009】
TiやW等の酸化物(酸化物超強酸)、触媒担持カーボン、有機ポリマーバインダーを複合化した電解質膜は、触媒担持カーボン同士の連続性や、酸化物超強酸同士の連続性、触媒担持カーボンと酸化物超強酸の連続性が形成しにくい構造になると考えられる。結果として、電極反応が起こる三相界面が十分に得られない可能性が考えられる。
【0010】
本発明は、室温から150℃付近の高温でもより安定した出力を供給することが可能であり、さらに、長期にわたって発電性能を保つことが可能な燃料電池用電極、膜電極複合体および燃料電池、ならびにそれらの製造法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による燃料電池用電極は、
SnドープIn、FドープSnOおよびSbドープSnOよりなる群から選択される少なくとも一種類からなる触媒担体と、
前記触媒担体表面に化学的に結合した、W、Mo、Cr、VおよびBよりなる群から選択される少なくとも一種類からなる元素を含む酸化物粒子相と、
を具備してなるプロトン伝導性無機酸化物と、
前記触媒担体に、直接あるいは前記酸化物粒子相を介して担持された酸化還元触媒相と、
を具備してなる触媒複合体、および
バインダー
を含んでなる触媒層を具備してなることを特徴とするものである。
【0012】
さらに、本発明による膜電極複合体および燃料電池は、上記燃料電池用電極を具備することを特徴とするものである。
【0013】
さらに本発明による燃料電池用電極の製造法は
SnドープIn、FドープSnOおよびSbドープSnOよりなる群から選択される少なくとも一種類からなる触媒担体を、W、Mo、Cr、VおよびBよりなる群から選択される少なくとも一種類からなる元素を含む物質を溶解した溶液に分散させ、
溶媒を除去し、
熱処理により元素Yの酸化物の相を形成させることによりプロトン伝導性無機酸化物を形成させ、
前記プロトン伝導性無機酸化物を、触媒前駆体である金属元素を含む物質を溶解した溶液に分散させ、
溶媒を除去もしくはpHを調整することによりプロトン伝導性無機酸化物表面に触媒前駆体を堆積させ、
還元雰囲気で熱処理することにより触媒複合体を形成させ、
前記触媒複合体とバインダーとを混合して成形、または支持体上に塗布する、
ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、室温から150℃付近の高温でも安定した出力を供給でき、長期にわたって発電性能を保つことが可能な燃料電池用電極、膜電極複合体および燃料電池を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら本発明を実施するための形態について説明する。尚、実施の形態や実施例を通して共通する構成には同一の符号を付すものとし、重複する説明は省略する。
【0016】
(第1の実施の形態)
まず、本発明の第1の実施の形態に係る燃料電池用電極について説明する。
【0017】
本実施の形態の燃料電池用電極は、酸化還元触媒が担持されたプロトン伝導性無機酸化物と有機高分子バインダーを含む触媒層を備える。触媒層は主に燃料電池用電極における燃料および酸化剤の酸化還元反応の反応場として機能する。また、触媒層は酸化還元反応で生成・消費するプロトンおよび電子の伝達層としても機能する。
【0018】
本実施の形態の触媒層は、電子伝導性を有するプロトン伝導体として無機酸化物を備える。この無機酸化物は、SnドープIn、FドープSnOおよびSbドープSnOよりなる群から選択される少なくとも一種類からなる触媒担体と、
前記触媒担体表面に、W、Mo、Cr、VおよびBよりなる群から選択される少なくとも一種類からなる元素を含む酸化物粒子相と、
前記触媒担体に直接あるいは前記酸化物粒子相を介して担持された酸化還元触媒と、バインダーとを含む触媒相と
を具備してなる。
【0019】
触媒担体(以下、触媒担体Aと称することがある)は、アノードでは触媒上で起こる燃料の酸化反応で生じた電子を触媒から回収し、また、カソードでは触媒上で起こる酸化剤の還元反応に必要な電子を触媒に供給する役割がある。したがって、触媒担体は電子伝導性を有することが求められる。本発明では導電性触媒担体として、SnドープIn、FドープSnOおよびSbドープSnOが用いられる。これらの導電性の触媒担体はプロトン伝導性を有しておらず、後に述べる方法で電子伝導性を評価できる。触媒担体の電子伝導機構は基体酸化物のInやSnOの金属イオンの一部を原子価の高い金属イオンで置換したり、酸素イオンの一部を価数の低いフッ素イオンで置換したりする方法によって、酸素が欠損し、生成した酸素空孔と共に自由電子が増加し、電子伝導性が発生する。
【0020】
本発明に使用される触媒担体は既存の手法を用いて合成することが可能である。すなわち、基体酸化物の金属元素あるいはドープする金属元素を含む塩化物、硝酸塩、水素酸、オキソ酸塩などの水溶液あるいは金属アルコキシドまたはフッ素イオンを含む水溶性、アルコール溶解性の塩などを原料に用いる。この原料溶液を素に目的とする組成の均一溶液を調整した後、ゾルゲル法、スプレー法などで均一な複合酸化物の前駆体を作製し、熱処理をして目的物を調製することが可能である。前駆体に含まれる原料成分の除去や構造の形成を十分に行うという観点から熱処理の温度は200℃以上であることが好ましい。一方、構造中に生成した酸素欠陥が失われ、電気抵抗が大きくなってしまうことを防ぐために熱処理は600℃以下であることが好ましい。したがって、熱処理温度は200〜600℃が好ましく、さらに300〜500℃がより望ましい。
【0021】
本発明に使用される触媒担体は合成方法によって得られる電気特性が若干変動するものの、燃料電池用の触媒担体としては10−2〜10Ωcmの体積抵抗率を有することが望ましい。そのためには、基体酸化物のInやSnOにドープするSn、F、またはSb元素は0.01〜20mol%含まれていることが好ましい。さらに低抵抗化の観点からは0.1〜10mol%含まれていることがより好ましい。なお、体積抵抗率の評価は、触媒担体の粉末を圧縮成形し、4端針法により評価した。これは、成形体試料の表面に4本の針状の電極(4端針プローブ)を直線状に配置し、外側の2本の針間に一定電流を流し、内側の2本の針間に生じる電位差を測定して、抵抗を求めるものである。
【0022】
この触媒担体の表面に、特定の金属酸化物を化学的に結合させることにより、プロトン伝導性無機酸化物を形成させることができる。触媒担体Aの表面に酸化物を担持させてプロトン伝導性無機酸化物を形成させる方法は、W、Mo、Cr、BおよびVよりなる群から選択される少なくとも一種類の元素(以下、元素Yと称す)を含む物質を溶解した溶液、例えば塩化物、硝酸塩、水素酸、オキソ酸塩などの水溶液あるいは金属アルコキシドのアルコール溶液に触媒担体Aを分散し、溶媒を除去することで担持させた後、熱処理により元素Yの酸化物(以下、酸化物Bと称することがある)の相を形成させることが望ましい。しかし、プロトン伝導性無機酸化物の形成方法はこれに限定されるものではなく、任意の方法を用いることができる。また、複数の種類の元素Yを含む複合酸化物の状態で担持させてもよい。また、酸化物Bの相は、触媒担体Aの表面の少なくとも一部に担持されていれば良く、例えば、触媒担体Aの表面に偏在していたり、あるいは触媒担体Aの表面を連続的に覆うような層状物である場合が挙げられる。
【0023】
触媒担体Aに酸化物Bの前駆体を担持させた後、熱処理をすることで酸化物同士に結合を形成させる。ただし、熱処理温度は触媒担体の電気抵抗が大きくならないような温度にする必要がある。触媒担体Aと酸化物Bの間に十分な化学結合を形成させ、得られる酸化物のプロトン伝導性を高くするために処理温度は200℃以上であること好ましい。一方、触媒担体の酸素欠陥が失われ、電気抵抗が高くなることを防ぐために処理温度は600℃以下であることが好ましい。したがって、熱処理温度は200〜600℃とすることが好ましいが、300〜500℃で熱処理することがより望ましい。
【0024】
酸化物Bは、元素やpHの環境によってその溶解度が変動するものの、水溶性を有している。この酸化物Bと水溶性の低い触媒担体Aを焼成して化学的な結合を形成することによって、酸化物Bの水への溶解を抑えることができ、プロトン伝導性無機酸化物の水および液体燃料に対する安定性を高くすることができる。また、溶出した酸化物粒子Bのイオンによる他の燃料電池材料や装置の汚染も回避することができる。従って、本実施形態によれば、燃料電池において高い長期信頼性を得ることができる。
【0025】
触媒担体Aと酸化物Bが化学的に結合されていることの確認は、例えば、X線回折法(XRD)では、結晶性物質に対して物質固有の結晶格子の回折パターンが得られる。反応前後の回折パターンを比較することで、結晶性物質の結合の有無を確認できる。一方、結合される物質が非晶性物質であれば、回折パターンからの確認は困難であるが、原子吸光分析などの機器を使用した組成分析から非晶性物質の存在を確認することができる。組成分析には、エネルギー分散型X線分析(EDX)、電子プローブ微量分析(EPMA)またはX線電子分光法(XPS)を使用することが可能である。
【0026】
本実施形態においてプロトン伝導性無機酸化物として作用する酸化物複合体においては、触媒担体Aと酸化物Bが化学的に結合していれば良く、触媒担体Aと酸化物Bの結晶性は限定されるものではない。但し、ルイス酸点生成の促進、酸性度の向上に寄与する可能性、製造コストの低下、製造プロセスの容易さを考慮すれば酸化物Bは非晶質であることが望ましく、さらに酸化物Bは非晶質、触媒担体Aは結晶であることがより望ましい。ただし、上記とは逆に、触媒担体Aと酸化物Bのいずれも結晶で使用する場合、あるいは酸化物Bが結晶、触媒担体Aが非晶質で使用することも可能である。
【0027】
触媒担体Aに含まれる元素Xのモル数Mと酸化物Bに含まれる元素Yのモル数Mとの比(M/M)は、プロトンの伝導場を十分に維持してプロトン伝導度を高くするために0.001以上であることが好ましい。一方、プロトンの伝導場を元素Yを含む酸化物粒子Bが覆い隠してしまいプロトン伝導度が低くなることを防ぐためにモル比(M/M)は20以下であることが好ましい。したがって、触媒担体Aの元素Xと酸化物Bの元素Yとのモル比(M/M)は0.001以上20以下の範囲であることが好ましく、0.01以上1以下の範囲であることがより望ましい。
【0028】
本実施形態においてプロトン伝導性無機酸化物は、固体超強酸を示すことが望ましい。プロトンの解離度は酸強度として表現でき、固体酸の酸強度はHammettの酸度関数Hとして表わされ、硫酸の場合Hは−11.93である。プロトン伝導性無機酸化物は、H<−11.93となる固体超強酸性を示すことがより好ましい。また、本発明におけるプロトン伝導性無機酸化物は合成法を最適化することによって、H=−20.00まで酸性度を高めることが可能である。したがって、プロトン伝導性無機酸化物の酸強度は−20.00<H<−11.93の範囲のものを使用することが望ましい。
【0029】
プロトン伝導性を有する触媒担体における正確なプロトン伝導機構はまだ十分に解明されていないが、SnドープInのSn元素およびIn元素、FドープSnOのF元素およびSn元素、SbドープSnOのSb元素およびSn元素からなる元素Xを含有する酸化物、すなわち触媒担体Aと、W、Mo、Cr、VおよびBよりなる群から選択される少なくとも一種類からなる元素Yを含有する酸化物粒子相を構成する酸化物Bとが化学的に結合されることで、酸化物Bの構造内にルイス酸点が生成し、このルイス酸点が水和することでブレンステッド酸点になり、プロトンの伝導場が形成されると考えられる。
【0030】
このプロトン伝導性無機酸化物は、ルイス酸点によるプロトン生成反応に加えて、プロトン伝達に必要な同伴水の分子数を少なくすることができるため、プロトン伝導性無機酸化物の表面に存在する少量の水分子で高いプロトン伝導性を得ることが可能になり、発電時の厳格な水管理を行わずに大きな発電量を得ることができる。
【0031】
従って、本実施の形態の触媒層を、燃料極、酸化剤極の少なくともいずれかに含有させることで、セル抵抗を低くすることができ、燃料電池の最大発電量を増加させることができる。
【0032】
本実施形態において、酸化還元触媒粒子(以下、触媒Cということがある)はSnドープIn、FドープSnOおよびSbドープSnOよりなる群から選択される少なくとも一種類からなる触媒担体の表面に直接担持される。あるいは、触媒Cは酸化還元触媒粒子は触媒担体の表面に担持されたW、Mo、Cr、VおよびBよりなる群から選択される少なくとも一種類の元素を含有する酸化物粒子相を介して担持される。上記のような形態の触媒は燃料電池の燃料極および酸化剤極の少なくとも一方に用いられる。
【0033】
触媒粒子は燃料の酸化反応または酸化剤の還元反応の触媒として作用するものであれば任意のものを使用することができ、特に限定されない。例えば、白金、金、銀、パラジウム、イリジウム、ロジウム、ルテニウム、鉄、コバルト、ニッケル、クロム、タングステン、モリブデン、マンガン、バナジウムなどが挙げられ、単体で使用しても多元系合金であっても良い。白金は触媒活性が高く、多くの場合で使用されている。
【0034】
酸化還元触媒の担持方法は特に限定されない。担持方法の一例は、触媒前駆体である金属元素を含む物質を溶解した溶液、例えば、塩化物、硝酸塩、水素酸、オキソ酸塩などの水溶液あるいは金属アルコキシドのアルコール溶液などに前記のプロトン伝導性無機酸化物を分散させた後、溶媒を除去もしくはpHを調整することでプロトン伝導性無機酸化物表面に触媒の前駆体を堆積させ、その後、還元雰囲気で熱処理することでプロトン伝導性無機酸化物への触媒の担持が可能である。触媒の粒径は、通常は1nm以上50nm以下である。
【0035】
このような酸化還元触媒とプロトン伝導性酸化物との複合体(以下、触媒複合体ということがある)の構造は、その用いられる材料の種類や量、あるいはその製造法などにより変化するが、例えば図1に示されるような構造となる。すなわち、酸化物Bは、触媒担体Aの表面に偏在していたり(図1(a)および(b))、あるいは触媒担体Aの表面を連続的に覆うような層状物(図1(c)および(d))であってもよい。さらに、酸化還元触媒Cは、触媒担体Aに直接あるいは前記酸化物粒子Bの相を介して担持されるが、これもプロトン伝導性酸化物の表面に偏在していたり(図1(a)および(c))、プロトン伝導性酸化物表面を連続的に覆うような層状物(図1(b)および(d))であってもよい。
【0036】
本発明の実施態様において、燃料極および酸化剤極は、それぞれ、多孔体などのガス拡散性の構造体からなり、燃料ガスや液体燃料または酸化剤ガスが流通可能である。電極は上記の触媒複合体とバインダーとを含んでなる触媒層単体を成形することにより形成されていても、また触媒層を他の支持体上に形成させ電極としても良い。電極の形成方法は限定されるものではなく、例えば、上記触媒複合体と有機高分子バインダーを水やアルコールなどの有機溶媒に混合、分散してスラリーとし、このスラリーを支持体上に塗布、乾燥、焼成して触媒層を形成させる。本実施の電極における触媒量は0.01mg/cm以上10mg/cm以下である。また、触媒複合体は0.1mg/cm以上50mg/cm以下である。
【0037】
支持体は特に限定されるものではなく、例えば電解質膜を支持体とし、電解質膜上に触媒層を形成させて膜電極複合体としてもよい。あるいはガス透過性、電子伝導性を有する炭素製のペーパー、フェルト、クロスなどに触媒層を形成し、電解質膜と合わせて膜電極複合体としてもよい。
【0038】
触媒複合体を触媒層に固定化するために結着材として有機高分子バインダーを使用することが必要である。有機高分子バインダーには、燃料や酸化剤の供給あるいは発電に伴い発生するガスや生成水の除去など、触媒層内部の物質循環を円滑に促進する効果を持たせることも可能である。有機高分子バインダーに限定はない。撥水性有機高分子ではフッ素含有ポリマーや芳香族系ポリマーなどがある。具体的にはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテルコポリマー(PFA)、ポリスチレン(PS)やポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリスルホン(PSF)、ポリエーテルスルホン、ポリベンズイミダゾール(PBI)あるいは他のエンジニアリングプラスチック材料が挙げられる。
【0039】
また、有機高分子バインダーにプロトン伝導性を発現する高分子材料を用いることも可能である。具体的には、上記高分子材料にスルホン酸、リン酸、その他のプロトンキャリアをドープあるいは化学的に結合、固定化した材料、あるいはパーフルオロスルホン酸などが挙げられる。
【0040】
プロトン伝導性酸化物もしくは触媒が担持された触媒複合体は水分が表面に存在する場合においてプロトン伝導体としての機能を発現する。有機高分子バインダーに親水性有機高分子を選択することにより、触媒複合体に十分な水分を供給することが可能となり、高いプロトン伝導性を有する触媒層を実現することができる。親水性有機高分子は、20℃以上における平衡吸湿率が5%以上の有機高分子であることが望ましい。また、親水性高分子は構造中にヒドロキシル基、カルボキシル基、エーテル結合、アミド結合およびエステル結合のうちいずれかを有していることが望ましい。親水性高分子材料として、具体的には、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリアミド、ポリエステル、ポリ酢酸ビニルなどが挙げられる。なお、平衡吸湿率は、温度20℃以上、相対湿度95%以上に調節した恒温恒湿中に試料膜を1週間放置して吸湿量が平衡状態となったものの重量を計測し、この試料の105℃で2時間乾燥後の重量との差より測定される。
【0041】
触媒層形成における熱処理温度は、炭化水素系の有機高分子バインダーでは分解温度を考慮すればおおむね200℃以下である。しかし、フッ素系有機高分子バインダーなど分解温度が高いものであれば400℃以下の加熱にも耐えられる。詳細に関しては明らかになっていないが、有機高分子バインダーに親水性有機高分子を選択した場合、200℃以下の熱処理によって、触媒複合体と親水性有機高分子の間で酸化反応や脱水反応、水素結合からなる相互作用、親水性有機高分子の結晶化などが生じ、親水性有機高分子の膨潤や溶解を防ぐことができるものと推測される。少なくとも、ポリビニルアルコールに関しては、200℃以下の温度で熱処理することで、ポリビニルアルコール中の親水性のヒドロキシル基が固体超強酸により酸化されて疎水性のケトン基になることが赤外分光分析(IR)の結果から示唆されている。熱処理温度は有機高分子の分解や劣化が起こらない温度で実施することが必要であり、200℃以下の温度で熱処理することが望ましい。
【0042】
プロトン伝導性、導電性を高く維持しつつ多孔性を保持した触媒層構造を形成することが望ましいため、有機高分子バインダーの配合比は、触媒層全重量(Wcat)に対して有機高分子バインダー(W)の重量比(W/Wcat)が0.001〜0.5の範囲であることが望ましい。この範囲にすることによって、触媒が担持された触媒複合体の連続性を高くすることができるため、プロトン伝導度と導電度を向上することができる。
【0043】
有機高分子バインダーは、その構造に応じて水に対する親和性が変化するが、触媒層あるいは電極の撥水性および親水性を必要に応じて変更することができる。たとえば、撥水性材料としては、酸化ケイ素SiOの表面をトリメチルシリル基で修飾した疎水性シリカ(例えば、日本アエロジル社製RX200)などを用いることができる。また、親水性材料としては酸化ケイ素SiOや、紫外線を照射して超親水化処理をした酸化チタンTiOなどを用いることができる。
【0044】
以上説明した本実施の形態によれば、室温から150℃付近の高温でも安定した駆動が可能であり、さらに電極内のプロトン伝導性、導電性等を高めることができる。
【0045】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施形態は、燃料極と、酸化剤極と、燃料極および酸化剤極の間に配置される電解質膜とを具備する膜電極複合体に関する。燃料極と酸化剤極の少なくとも一方の電極は、触媒層を含み、その構成および効果については第1の実施形態と同様である。
【0046】
電解質膜は特に限定されることはなく、パーフルオロスルホン酸含有高分子電解質膜(例えば、デュポン社製の商品名ナフィオンなど)などが挙げられる。しかし、高温下でも安定した出力を得られるため、有機高分子に酸化物超強酸を含有したプロトン伝導性固体電解質膜を選択しても良い。
【0047】
有機高分子に含有される酸化物超強酸は、Ti、Zr、Hf、Nb、Al、Ga、In、Si、Ge、SnおよびCeよりなる群から選択される少なくとも一種類からなる元素Mを含有する酸化物担体Hと、前記酸化物担体Hの表面に担持され、W、Mo、Cr、VおよびBよりなる群から選択される少なくとも一種類からなる元素Nを含有する酸化物粒子Kと、前記酸化物粒子Kおよび前記酸化物担体Hのうち少なくとも一方に含有され、Y、Sc、La、Sm、Gd、Mg、Ca、SrおよびBaよりなる群から選択される少なくとも一種類からなる元素Oとを含有する。
【0048】
酸化物超強酸における正確なプロトン伝導機構はまだ解明されていないが、元素Mを含有する酸化物担体(以下、酸化物担体Hと称す)の表面に元素Nを含有する酸化物粒子(以下、酸化物粒子Kと称す)が担持されることで、酸化物粒子Nの構造内にルイス酸点が生成し、このルイス酸点が水和することでブレンステッド酸点になり、プロトンの伝導場が形成されると考えられる。また、プロトン伝導性無機材料が非晶質構造を有した場合、このこともルイス酸点生成の促進に寄与しているものと推測される。
【0049】
ルイス酸点によるプロトン生成反応に加えて、プロトン伝達に必要な同伴水の分子数を少なくすることができるため、プロトン伝導性無機材料の表面に存在する少量の水分子で高いプロトン伝導性を得ることが可能になり、発電時の厳格な水管理を行わずに大きな発電量を得ることができる。従って、この酸化物超強酸を電解質膜に含有させることで、燃料電池のセル抵抗を低くすることができ、燃料電池の最大発電量を増加させることができる。
【0050】
また、この酸化物超強酸を含有する電解質膜によると、メタノールのような液体燃料の透過を抑制することが可能である。特に、酸化物超強酸の材料間の結着性を高めるために電解質膜に高分子材料を添加すると、プロトン伝導性電解質膜の緻密性がさらに高くなるため、液体燃料の透過をさらに抑えることが可能である。
【0051】
酸化物担体Hは、上記元素Mを含むガスを分解して酸化物を作る気相法、あるいは上記元素Mを含む金属アルコキシドを原料としてゾル―ゲル法などから合成することができるが、合成方法は限定されるものではない。また、複数の元素を含む複合酸化物から酸化物担体Hが形成されていても良い。元素Mを含有する酸化物Hとしては、例えば、TiO、ZrO、HfO、Nb2O、Al、Ga、In、SiO、GeO、SnOおよびCeOなどが挙げられる。製造コストを抑えつつ高いプロトン伝導性を得るには、TiOを使用することが望ましい。ところで、酸化物担体Hの形状には粒子状、繊維状、平板状、層状、多孔性などの形状が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0052】
酸化物担体Hの表面への酸化物粒子Kの担持は、例えば以下に説明する方法で行うことができる。元素Nを含む物質を溶解した溶液に酸化物担体Hを分散させ、溶液中の溶媒を蒸発させた後、酸化物担体Hの表面上の元素Nを含む物質を熱処理により酸化物粒子Kとすることにより担持がなされる。元素Nを含む物質を溶解した溶液としては、例えば、塩化物水溶液、硝酸塩水溶液、水素酸塩水溶液、オキソ酸塩水溶液、金属アルコキシドのアルコール溶液などを挙げることができる。なお、担持方法はこれに限定されるものではない。また、酸化物粒子Kは、複数の元素を含む複合酸化物から形成されていても良い。
【0053】
酸化物粒子Kは、酸化物担体Hの表面の少なくとも一部に担持されていれば良く、例えば、酸化物担体Hの表面に偏在していたり、あるいは酸化物担体Hの表面を連続的に覆うような層状物である場合が挙げられる。また、酸化物粒子Kおよび酸化物担体Mの結晶性は限定されるものではなく、酸化物粒子Kと酸化物担体Hのいずれも結晶質であっても良い。ルイス酸点生成の促進、酸性度の向上に寄与する可能性、製造コストの低下、製造プロセスの容易さを考慮すれば、酸化物粒子Kおよび酸化物担体Hはいずれも非晶質であることが望ましい。さらに、酸化物粒子Bが結晶質で、酸化物担体Mが非晶質であっても良いが、酸化物粒子Kが非晶質で、酸化物担体Hが結晶質であることがより望ましい。
【0054】
酸化物担体Hに酸化物粒子Kが担持されていることの確認は下記に説明する方法で調べることが可能である。例えば、X線回折法(XRD)では、結晶性物質に対して物質固有の結晶格子の回折パターンが得られる。担持前後の回折パターンを比較することで、結晶性の担持物の有無を確認できる。一方、担持物が非晶性物質であれば、回折パターンからの確認ができないため、原子吸光分析などの機器を使用した組成分析から非晶性の担持物の存在を確認することができる。組成分析には、エネルギー分散型X線分析(EDX)、電子プローブ微量分析(EPMA)またはX線電子分光法(XPS)を使用することが可能である。
【0055】
ところで、酸化物粒子Kは、元素やpHの環境によってその溶解度が変動するものの、水溶性を有している場合がある。この酸化物粒子Kを水溶性の低い酸化物担体Hに担持させているため、酸化物粒子Kの水への溶解を抑えることができ、酸化物超強酸の水および液体燃料に対する安定性を高くすることができる。また、溶出した酸化物粒子Kから生じたイオンによって、他の燃料電池材料や装置が汚染されるのを回避することができる。従って、燃料電池において高い長期信頼性を得ることができる。さらに、安価な酸化物担体Hを母材とすることで電池の製造コストを抑えることも可能である。
【0056】
上記酸化物超強酸は、例えば、酸化物担体Hの表面に酸化物粒子Kを焼成により担持することにより形成される。焼成温度によっては結合力の不足により十分な酸性が得られないことがある。また、構成酸化物が飛散し、目的の組成が得られず、プロトン伝導場の減少が起こる可能性がある。さらに、焼成を施すことにより酸化物の結晶性の増加などに伴う結晶構造の変化が起こり、酸化物超強酸に応力が生じる。酸化物超強酸に生じた応力によって、酸化物担体Hと酸化物粒子Kの結合力が低下し、分離する恐れがある。酸化物担体Hと酸化物粒子Kの分離は、酸性度の低下やプロトン伝導場の減少を招く。
【0057】
酸化物超強酸に、Y、Sc、La、Sm、Gd、Mg、Ca、SrおよびBaよりなる群から選択される少なくとも一種類からなる元素Oを含む酸化物Lを第3の成分として含有させることが望ましい。これにより、酸化物Lをプロトン伝導性無機材料の構造安定剤として機能させることができる。酸化物Lの具体例としては、Y、Sc、La、Sm、Gd、MgO、CaO、SrOおよびBaOなどが挙げられる。酸化物Lは、酸化物担体Hおよび酸化物粒子Kのうち少なくとも一方に含有させることができるが、燃料電池において高出力を得る観点から、酸化物担体Hに酸化物Lを含有させることが望ましい。
【0058】
酸化物超強酸中の上記元素Oの含有量は、元素M、元素Nおよび元素Oの合計モル量を100mol%とした際に、0.01〜40mol%の範囲にすることが望ましい。含有量を0.01mol%以上にすることによって、酸化物超強酸の安定性を向上することができる。含有量を40mol%以下にすることによって、酸化物超強酸の固体超強酸性を維持することができる。含有量のより好ましい範囲は、0.1〜10mol%である。
【0059】
酸化物超強酸は、固体超強酸を示すことが望ましい。プロトンの解離度を酸強度として表現でき、固体酸の酸強度はHammettの酸度関数Hとして表わされ、100%硫酸の場合、Hは−11.93(理論値)である。酸化物超強酸は、H<−11.93となる固体超強酸性を示すことがより好ましい。また、合成法を最適化することによって、酸度関数Hが−20.00の酸性度まで高めることが可能である。したがって、酸化物超強酸の酸強度は−20.00≦H<−11.93の範囲にすることができる。酸化物超強酸の固体超強酸性は、実施例にて後述するように、酸化物超強酸を含む膜の固体超強酸性を測定することにより間接的に求めることができる。
【0060】
上述したように酸化物超強酸の表面がプロトンの伝導場になるため、酸化物超強酸の比表面積は可能な限り大きいことが好ましいが、取り扱い性や均一な合成の制御を容易にするという観点から2000m/g以下であることが好ましい。また、十分なプロトン伝導性が得るために、比表面積が10m/g以上であることが好ましい。よって、比表面積は、10〜2000m/gの範囲にすることが好ましい。
【0061】
酸化物担体Hの元素Mのモル数Mに対する酸化物粒子Kの元素Nのモル数Mの比(M/M)は、0.0001〜20の範囲であることが好ましい。担持量が十分な量とし、プロトンの伝導場を十分に維持してプロトン伝導度を高くするためにモル比(M/M)は0.0001以上であることが好ましい。一方、担持量が過多になり、プロトンの伝導場が元素Nを含む酸化物粒子Kで覆い隠されて、プロトン伝導度が低くなることを防ぐためにモル比(M/M)が20以下であることが好ましい。モル比(M/M)のより望ましい範囲は、0.01〜1である。
【0062】
酸化物超強酸は、例えば、酸化物担体Hに酸化物粒子Kの前駆体を担持させた後、大気中のような酸化雰囲気で熱処理することにより得られる。酸化物担体Hと酸化物粒子Kの間に十分な化学結合を形成させ、得られる酸化物超強酸のプロトン伝導性を高くするために、処理温度が200℃以上であることが好ましい。一方、粒子同士の融合による比表面積の縮小に起因するプロトン伝導性の低下を防ぐために処理温度は1000℃以下であることが好ましい。したがって熱処理温度は200〜1000℃とすることが好ましい。また、200℃の低温では、酸化物担体Hと酸化物粒子Kの間に結合を形成するのに比較的長時間の熱処理を要することがある。一方、1000℃付近の高温になると結合が形成しやすいため、短時間での熱処理での合成が可能である。よって、熱処理温度のさらに好ましい範囲は、400〜700℃である。
【0063】
有機高分子は特に限定はない。撥水性有機高分子ではフッ素含有ポリマーや芳香族系ポリマーなどがある。具体的にはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテルコポリマー(PFA)、ポリスチレン(PS)やポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリスルホン(PSF)、ポリエーテルスルホン、ポリベンズイミダゾール(PBI)あるいは他のエンジニアリングプラスチック材料が挙げられる。中でも、ポリアクリロニトリル(PAN)は極性が高いために好ましい。
【0064】
また、プロトン伝導性を発現する高分子材料を用いることも可能である。具体的には、上記高分子材料にスルホン酸、リン酸、その他のプロトンキャリアをドープあるいは化学的に結合、固定化した材料、あるいはパーフルオロスルホン酸などが挙げられる。
【0065】
酸化物超強酸は水分が表面に存在する場合においてプロトン伝導体としての機能を発現する。酸化物超強酸を含有する高分子に親水性有機高分子を選択することにより、酸化物超強酸に十分な水分を供給することが可能となり、高いプロトン伝導性を有するプロトン伝導性固体電解質を実現することができる。親水性高分子とは20℃以上における平衡吸湿率が5%以上の有機高分子を示し、例えば、高分子構造中にヒドロキシル基、カルボキシル基、エーテル結合、アミド結合、エステル結合を含有している。親水性高分子材料は具体的にはポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリアミド、ポリエステル、ポリ酢酸ビニルなどがある。なお、平衡吸湿率は温度20℃以上、相対湿度95%以上に調節した恒温恒湿中に試料膜を1週間放置して吸湿量が平衡状態となったものの重量を計測し、この試料の105℃で2時間乾燥後の重量との差より測定した。プロトン伝導性固体電解質膜において、酸化物超強酸と有機高分子の配合比は、高いプロトン伝導度を維持しつつ、液体燃料の透過を阻止する条件を満たすことが望ましい。膜全重量(W)に対しプロトン伝導性無機酸化物(W)の重量比(W/W)が0.1よりも小さいとプロトン伝導性無機酸化物の連続性が低下して伝導度が低くなる恐れがあるため、前記の重量比(W/W)が0.1以上0.999以下の範囲であることが望ましい。
【0066】
プロトン伝導性固体電解質は酸化物超強酸、有機高分子を溶媒に溶解させた有機高分子溶液からなるスラリーを調整し、このスラリーをガラス基盤や樹脂基板上にキャスト、乾燥することによって溶媒を除去した後、熱処理することで作製される。熱処理温度は、炭化水素系の有機高分子では分解温度を考慮すればおおむね200℃以下である。しかし、フッ素系有機高分子など分解温度が高いものであれば400℃以下の加熱にも耐えられる。詳細に関しては明らかになっていないが、電解質膜の材料に親水性有機高分子を選択した場合、200℃以下の熱処理によって、酸化物超強酸と親水性有機高分子の間で酸化反応や脱水反応、水素結合からなる相互作用、親水性有機高分子の結晶化などが生じ、親水性有機高分子の膨潤や溶解を防ぐことができるものと推測される。少なくとも、ポリビニルアルコールに関しては、200℃以下の温度で熱処理することで、ポリビニルアルコール中の親水性のヒドロキシル基が固体超強酸により酸化されて疎水性のケトン基になることが赤外分光分析(IR)の結果から示唆されている。
【0067】
熱処理温度は有機高分子の分解や劣化が起こらない温度で実施することが必要であり、200℃以下の温度で熱処理することが望ましい。
【0068】
プロトン伝導性固体電解質を燃料電池の固体電解質として使用する際には、一般的には膜の状態で使用されるが、これに限定されるものではなく筒状で用いることも可能である。即ち、酸化物超強酸と上記の親水性有機高分子の分散混合物を、直接膜状にキャスティングする方法、あるいは、該分散混合物を多孔質芯材、織布または不織布などに含浸キャスティングするなどの方法を採用することができる。
【0069】
プロトン伝導性固体電解質膜の厚さは、特に、制限はないが強度や液体燃料の透過性、プロトン伝導性など実用に耐え得る膜を得るには10μm以上が好ましく、また、膜抵抗の低減のためには300μm以下が好ましい。特に、燃料電池の内部抵抗を小さくするためには、10〜100μmがより好ましい。
【0070】
膜の厚さを制御するには、例えば前記の酸化物超強酸と上記の有機高分子の分散混合物を、直接膜状にキャスティングする場合、キャストする酸化物超強酸と上記の有機高分子の分散混合物の量あるいはキャスト面積で変更できるほか、膜形成後、ホットプレス機などにより膜を加熱、加圧して、膜厚さを薄くすることもできるが、特に限定されるものではない。
【0071】
電解質膜と電極との接合は、加熱、加圧できる装置を用いて実施される。一般的にはホットプレス機により行われる。その際のプレス温度は電解質膜に使用する高分子のガラス転移温度以上であれば良く、一般には100℃以上400℃以下である。プレス圧は使用する電極の硬さに依存するが、通常、5kg/cm〜200kg/cmである。
【0072】
本実施の形態の膜電極複合体によれば、室温から150℃付近の高温でも安定した出力を供給でき、さらに電極内のプロトン伝導性と電子伝導性を高めることができる。特に、燃料極、電解質膜、および酸化剤極に酸化物超強酸を用いることでプロトンや電子を速やかに移動させることができる。
【0073】
(第3の実施の形態)
第3の実施形態に係る燃料電池は、第2の実施形態に係る膜電極複合体を備えるものである。
【0074】
第3の実施形態に係る燃料電池を、図面を参照して説明する。図2は本発明の第3の実施形態に係る燃料電池を模式的に示した断面図を示す。
【0075】
図2に示す液体燃料電池のスタック100は、複数の単電池を積層することによって形成される。スタック100の側面には、燃料導入路1が配置されている。燃料導入路1には、液体燃料タンク(図示しない)から導入管(図示しない)を通して液体燃料が供給される。液体燃料はメタノールを含むものが好ましい。液体燃料には、例えば、メタノール水溶液、メタノールを使用することができる。各単電池は、燃料極(アノードともいう)2と、酸化剤極(カソードともいう)3と、燃料極2および酸化剤極3の間に配置された電解質膜4とから構成された膜電極複合体(起電部)5を備える。燃料極2および酸化剤極3は、燃料や酸化剤ガスを流通させるとともに電子を通すように、導電性の多孔質体で構成されていることが望ましい。
【0076】
各単電池は、燃料極2に積層された燃料気化部6と、燃料気化部6に積層された燃料浸透部7と、酸化剤極3に積層されたカソードセパレータ8とをさらに備える。燃料浸透部7は、液体燃料を保持する機能を有する。この液体燃料は、燃料導入路1から供給される。この燃料気化部6は、燃料浸透部7に保持された液体燃料の気化成分を燃料極2に導く役割をなす。カソードセパレータ8の酸化剤極3と対向する面には、酸化剤ガスを流すための酸化剤ガス供給溝9が連続溝として設けられている。また、カソードセパレータ8は、隣り合う起電部5同士を直列に接続する役割も果たしている。
【0077】
なお、図2のように単電池を積層してスタック100を構成する場合、セパレータ8、燃料浸透部7および燃料気化部6は、発生した電子を伝導する集電板としての機能も果たすため、カーボンを含有した多孔質体などの導電性材料により形成されることが望ましい。
【0078】
上述したように、図2の単電池におけるセパレータ8は、酸化剤ガスを流すチャンネルとしての機能を併せ持つものである。このように、セパレータとチャンネルとの両方の機能を有する部品8(以下、チャンネル兼用セパレータと称する)を用いることによって、部品点数を削減することができるので、よりいっそう燃料電池の小型化を図ることが可能となる。あるいは、このセパレータ8に代えて通常のチャンネルを用いることもできる。
【0079】
燃料貯蔵タンク(図示せず)から液体燃料導入路1に液体燃料を供給する方法としては、燃料貯蔵タンク内に収容された液体燃料を自由落下させて、液体燃料導入路1に導入する方法が挙げられる。この方法は、スタック100の上面より高い位置に燃料貯蔵タンクを設けなければならないという構造上の制約はあるものの、液体燃料導入路1に確実に液体燃料を導入することができる。他の方法としては、液体燃料導入部1の毛管力によって、燃料貯蔵タンクから液体燃料を引き込む方法が挙げられる。この方法を採用した場合には、燃料貯蔵タンクと液体燃料導入路1との接続点、すなわち液体燃料導入路1に設けられた燃料入口の位置を、スタック100の上面より高くする必要がない。したがって、例えば、自然落下法と組み合わせると、燃料タンクの設置場所を自在に設定することができるという利点がある。
【0080】
ただし、毛管力で液体燃料導入路1に導入された液体燃料を、引き続き円滑に毛管力で燃料浸透部7に供給するためには、液体燃料導入路1の毛管力より燃料浸透部7への毛管力のほうが大きくなるように設定することが望まれる。なお、液体燃料導入路1の数は、スタック100の側面に沿って1つに限定されるものではなく、スタックの他方の側面にも液体燃料導入路1を形成することが可能である。
【0081】
また、上述したような燃料貯蔵タンクは電池本体から着脱可能とすることができる。これによって、燃料貯蔵タンクを交換することで、電池の作動を継続して長時間行なうことが可能となる。また、燃料貯蔵タンクから液体燃料導入路1への液体燃料の供給は、上述したような自然落下やタンク内の内圧等で液体燃料を押し出すような構成、あるいは、液体燃料導入路1の毛管力によって燃料を引き出すような構成とすることもできる。
【0082】
上述したような手法によって、液体燃料導入路1内に導入された液体燃料は、燃料浸透部7に供給される。燃料浸透部7の形態は、液体燃料をその内部に保持し、気化した燃料のみを燃料気化部6を通して燃料極2に供給するような機能を有していれば特に限定されるものではない。例えば、液体燃料の通路を有して、その燃料気化部6との界面に気液分離膜を具備するものとすることができる。さらに、補機を用いずに毛管力により燃料浸透部7に液体燃料を供給する場合には、燃料浸透部7の形態は、液体燃料を毛管力で浸透し得るものであれば特に限定されるものではなく、粒子やフィラーからなる多孔質体や、抄紙法で製造した不織布、繊維を織った織布等のほかに、ガラスやプラスチック等の板との間に形成された狭い隙間等も用いることができる。
【0083】
ここで、燃料浸透部7として多孔質体を用いた場合について説明する。液体燃料を燃料浸透部7側に引き込むための毛管力としては、まず燃料浸透部7を構成する多孔質体自体の毛管力が挙げられる。このような毛管力を利用する場合、多孔質体である燃料浸透部7の孔を連結させた、いわゆる連続孔とし、その孔径を制御するとともに、液体燃料導入部1側の燃料浸透部7側面から少なくとも他の一面まで連続した連続孔とすることによって、液体燃料を横方向で円滑に毛管力で供給することが可能となる。
【0084】
燃料浸透部7として用いられる多孔質体の孔径等は、液体燃料導入路1の液体燃料を引き込むことができるものであればよく、特に限定されるものではないが、液体燃料導入路1の毛管力を考慮したうえで、0.01〜150μm程度とすることが好ましい。また、多孔質体における孔の連続性の指標となる孔の体積は、20〜90%程度とすることが好ましい。燃料浸透部7の製造を容易にするために、孔径は0.01μm以上である事が好ましく、一方、毛管力を十分に維持するために150μm以下である事が好ましい。また、連続孔の量が減少して閉鎖された孔が増え、毛管力が低下することを防ぐために孔の体積が20%以上であることが好ましい。その一方、連続孔の量が過度に増加して、強度的に弱くなることを防ぎ、製造を容易にするために孔の体積は90%以下であることが好ましい。実用的には、燃料浸透部7を構成する多孔質体は、孔径が0.5〜100μmの範囲であることが好ましく、孔の体積は30〜75%の範囲とすることが望ましい。
【0085】
このような燃料電池は、室温からでも電池反応が生じるが、50℃〜150℃の高い温度で作動させる方が、電極の触媒活性が向上し電極過電圧が減少するために望ましい。また、電極触媒層のプロトン伝導性を有した触媒担体のプロトン伝導能を十分に発揮させるため、水分管理が容易な温度で作動させることが望ましい。燃料電池の作動温度の好ましい範囲は室温〜150℃である。
【0086】
以下、具体的ではあるが限定的ではない実施例を示して、本発明の実施の形態について説明する。
【0087】
実施例1
四塩化スズ五水和物SnCl・5HOを1gと硝酸インジウム三水和物In(NO)・3HOを19.6gとを溶解したエタノール溶液を調整した。これを350℃に加熱したガラス基板上に噴霧し、原料を酸化、熱分解して、SnドープInを得た。さらガラス基板にからSnドープInを回収、粉砕して触媒担体とした。このとき、InへのSnドープ量は5mol%だった。
【0088】
トリメトキシボランB(OCHを0.7g溶解したエタノール溶液50mlに前工程で調整した触媒担体を分散し、加水分解した後、溶媒を除去した。得られた前駆体を350℃で4時間熱処理を処理して触媒担体に酸化ホウ素を担持したプロトン伝導性無機酸化物を得た。このときSnドープInのSn元素およびIn元素に対するB元素の比は0.1だった。
【0089】
前工程で合成したプロトン伝導性無機酸化物を500mLの水に分散させ、0.1mol/L塩化白金酸水溶液HPtClと0.1mol/L塩化ルテニウム塩酸水溶液HRuClと0.1mol/L炭酸水素アンモニウム水溶液NaHCOとを同時に滴下した。pHを7〜8に調整し、固体分をろ過、乾燥して、PtRu触媒の前駆体を担持したプロトン伝導性無機酸化物を得た。これを200℃の水素中で還元してPtRu触媒とした。このとき、PtRu量は全重量の10%となった。
【0090】
同様に、前工程で合成したプロトン伝導性無機酸化物を500mLの水に分散させ、0.1mol/Lの塩化白金酸水溶液HPtClと0.1mol/Lの炭酸水素アンモニウム水溶液NaHCOとを同時に滴下した。pHを7〜8に調整し、固体分をろ過、乾燥して、Pt触媒の前駆体を担持したプロトン伝導性無機酸化物を得た。これを200℃の水素中で還元してPt触媒とした。このとき、Pt量は全重量の10%となった。
【0091】
PtRuを担持したプロトン伝導性無機酸化物0.5gとカーボン0.5g、5%ポリビニルアルコール水溶液1g、水1g、エタノール1gを混合した。この混合物をジルコニアボールとともに密閉容器に移し、卓上ボールミルで6時間混合することでアノード触媒スラリーを調製した。このスラリーをカーボンペーパー上に塗布し、60℃、1時間で乾燥した。さらにこの電極を150℃、1時間で焼成し、アノードとした。このアノードは、厚さ50μmの触媒層からなり、Pt触媒量4.2mg/cmだった。
【0092】
Ptを担持したプロトン伝導性無機酸化物0.5gとカーボン0.5g、5%ポリビニルアルコール水溶液1g、水1g、エタノール1gを混合した。この混合物をジルコニアボールとともに密閉容器に移し、卓上ボールミルで6時間混合することでカソード触媒スラリーを調整した。このスラリーをカーボンペーパー上に塗布し、60℃、1時間で乾燥した。さらにこの電極を150℃、1時間で焼成し、カソードとした。このカソードは、厚さ50μmの触媒層からなり、Pt触媒量4.3mg/cmだった。
【0093】
なお、触媒担体およびプロトン伝導性無機酸化物の元素比は以下に説明する方法で測定した。元素比の測定方法はエネルギー分散型X線分析(EDX)、X線電子分光法(XPS)、高周波プラズマ発光分析(ICP)により行った。
【0094】
実施例2
四塩化スズ五水和物SnCl・5HOを1gと硝酸インジウム三水和物In(NO)・3HOを19.6gとを溶解したエタノール溶液を調整した。これを350℃に加熱したガラス基板上に噴霧し、原料を酸化、熱分解して、SnドープInを得た。さらガラス基板にからSnドープInを回収、粉砕して触媒担体とした。このとき、InへのSnドープ量は5mol%だった。
【0095】
塩化バナジウムVClを1g溶解したエタノール溶液50mlに前工程で調整した触媒担体を分散し、加水分解した後、溶媒を除去した。得られた前駆体を350℃で4時間熱処理を処理して触媒担体に酸化バナジウムを担持したプロトン伝導性無機酸化物を得た。このときSnドープInのSn元素およびIn元素に対するV元素の比は0.1だった。
【0096】
前工程で合成したプロトン伝導性無機酸化物を500mLの水に分散させ、0.1mol/L塩化白金酸水溶液HPtClと0.1mol/L塩化ルテニウム塩酸水溶液HRuClと0.1mol/L炭酸水素アンモニウム水溶液NaHCOとを同時に滴下した。pHを7〜8に調整し、固体分をろ過、乾燥して、PtRu触媒の前駆体を担持したプロトン伝導性無機酸化物を得た。これを200℃の水素中で還元してPtRu触媒とした。このとき、PtRu量は全重量の11%となった。
【0097】
同様に、前工程で合成したプロトン伝導性無機酸化物を500mLの水に分散させ、0.1mol/Lの塩化白金酸水溶液HPtClと0.1mol/Lの炭酸水素アンモニウム水溶液NaHCOとを同時に滴下した。pHを7〜8に調整し、固体分をろ過、乾燥して、Pt触媒の前駆体を担持したプロトン伝導性無機酸化物を得た。これを200℃の水素中で還元してPt触媒とした。このとき、Pt量は全重量の10%となった。
【0098】
PtRuを担持したプロトン伝導性無機酸化物0.5gとカーボン0.5g、5%ポリビニルアルコール水溶液1g、水1g、エタノール1gを混合した。この混合物をジルコニアボールとともに密閉容器に移し、卓上ボールミルで6時間混合することでアノード触媒スラリーを調整した。このスラリーをカーボンペーパー上に塗布し、60℃、1時間で乾燥した。さらにこの電極を150℃、1時間で焼成し、アノードとした。このアノードは、厚さ51μmの触媒層からなり、Pt触媒量4.1mg/cm2だった。
Ptを担持したプロトン伝導性無機酸化物0.5gとカーボン0.5g、5%ポリビニルアルコール水溶液1g、水1g、エタノール1gを混合した。この混合物をジルコニアボールとともに密閉容器に移し、卓上ボールミルで6時間混合することでカソード触媒スラリーを調整した。このスラリーをカーボンペーパー上に塗布し、60℃、1時間で乾燥した。さらにこの電極を150℃、1時間で焼成し、カソードとした。このカソードは、厚さ52μmの触媒層からなり、Pt触媒量4.2mg/cmだった。
【0099】
実施例3
四塩化スズ五水和物SnCl・5HOを1gと硝酸インジウム三水和物In(NO)・3HOを19.6gとを溶解したエタノール溶液を調整した。これを350℃に加熱したガラス基板上に噴霧し、原料を酸化、熱分解して、SnドープInを得た。さらガラス基板にからSnドープInを回収、粉砕して触媒担体とした。このとき、InへのSnドープ量は5mol%だった。
【0100】
塩化クロム六水和物を1.7g溶解したエタノール溶液50mlに前工程で調整した触媒担体を分散し、加水分解した後、溶媒を除去した。得られた前駆体を350℃で4時間熱処理を処理して触媒担体に酸化クロムを担持したプロトン伝導性無機酸化物を得た。このときSnドープInのSn元素およびIn元素に対するCr元素の比は0.1だった。
【0101】
前工程で合成したプロトン伝導性無機酸化物を500mLの水に分散させ、0.1mol/L塩化白金酸水溶液HPtClと0.1mol/L塩化ルテニウム塩酸水溶液HRuClと0.1mol/L炭酸水素アンモニウム水溶液NaHCOとを同時に滴下した。pHを7〜8に調整し、固体分をろ過、乾燥して、PtRu触媒の前駆体を担持したプロトン伝導性無機酸化物を得た。これを200℃の水素中で還元してPtRu触媒とした。このとき、PtRu量は全重量の10%となった。
【0102】
同様に、前工程で合成したプロトン伝導性無機酸化物を500mLの水に分散させ、0.1mol/Lの塩化白金酸水溶液HPtClと0.1mol/Lの炭酸水素アンモニウム水溶液NaHCOとを同時に滴下した。pHを7〜8に調整し、固体分をろ過、乾燥して、Pt触媒の前駆体を担持したプロトン伝導性無機酸化物を得た。これを200℃の水素中で還元してPt触媒とした。このとき、Pt量は全重量の11%となった。
【0103】
PtRuを担持したプロトン伝導性無機酸化物0.5gとカーボン0.5g、5%ポリビニルアルコール水溶液1g、水1g、エタノール1gを混合した。この混合物をジルコニアボールとともに密閉容器に移し、卓上ボールミルで6時間混合することでアノード触媒スラリーを調整した。このスラリーをカーボンペーパー上に塗布し、60℃、1時間で乾燥した。さらにこの電極を150℃、1時間で焼成し、アノードとした。このアノードは、厚さ53μmの触媒層からなり、Pt触媒量4.5mg/cmだった。
【0104】
Ptを担持したプロトン伝導性無機酸化物0.5gとカーボン0.5g、5%ポリビニルアルコール水溶液1g、水1g、エタノール1gを混合した。この混合物をジルコニアボールとともに密閉容器に移し、卓上ボールミルで6時間混合することでカソード触媒スラリーを調整した。このスラリーをカーボンペーパー上に塗布し、60℃、1時間で乾燥した。さらにこの電極を150℃、1時間で焼成し、カソードとした。このカソードは、厚さ51μmの触媒層からなり、Pt触媒量4.4mg/cmだった。
【0105】
実施例4
四塩化スズ五水和物SnCl・5HOを1gと硝酸インジウム三水和物In(NO)・3HOを19.6gとを溶解したエタノール溶液を調整した。これを350℃に加熱したガラス基板上に噴霧し、原料を酸化、熱分解して、SnドープInを得た。さらガラス基板にからSnドープInを回収、粉砕して触媒担体とした。このとき、In2O3へのSnドープ量は5mol%だった。
【0106】
七モリブデン酸六アンモニウム四水和物(NH4)Mo24・4HOを1.1g溶解したエタノール溶液50mlに前工程で調整した触媒担体を分散し、加水分解した後、溶媒を除去した。得られた前駆体を350℃で4時間熱処理を処理して触媒担体に酸化モリブデンを担持したプロトン伝導性無機酸化物を得た。このときSnドープInのSn元素およびIn元素に対するMo元素の比は0.1だった。
【0107】
前工程で合成したプロトン伝導性無機酸化物を500mLの水に分散させ、0.1mol/L塩化白金酸水溶液HPtClと0.1mol/L塩化ルテニウム塩酸水溶液HRuClと0.1mol/L炭酸水素アンモニウム水溶液NaHCOとを同時に滴下した。pHを7〜8に調整し、固体分をろ過、乾燥して、PtRu触媒の前駆体を担持したプロトン伝導性無機酸化物を得た。これを200℃の水素中で還元してPtRu触媒とした。このとき、PtRu量は全重量の12%となった。
【0108】
同様に、前工程で合成したプロトン伝導性無機酸化物を500mLの水に分散させ、0.1mol/Lの塩化白金酸水溶液HPtClと0.1mol/Lの炭酸水素アンモニウム水溶液NaHCO3とを同時に滴下した。pHを7〜8に調整し、固体分をろ過、乾燥して、Pt触媒の前駆体を担持したプロトン伝導性無機酸化物を得た。これを200℃の水素中で還元してPt触媒とした。このとき、Pt量は全重量の12%となった。
【0109】
PtRuを担持したプロトン伝導性無機酸化物0.5gとカーボン0.5g、5%ポリビニルアルコール水溶液1g、水1g、エタノール1gを混合した。この混合物をジルコニアボールとともに密閉容器に移し、卓上ボールミルで6時間混合することでアノード触媒スラリーを調整した。このスラリーをカーボンペーパー上に塗布し、60℃、1時間で乾燥した。さらにこの電極を150℃、1時間で焼成し、アノードとした。このアノードは、厚さ51μmの触媒層からなり、Pt触媒量4.3mg/cmだった。
【0110】
Ptを担持したプロトン伝導性無機酸化物0.5gとカーボン0.5g、5%ポリビニルアルコール水溶液1g、水1g、エタノール1gを混合した。この混合物をジルコニアボールとともに密閉容器に移し、卓上ボールミルで6時間混合することでカソード触媒スラリーを調整した。このスラリーをカーボンペーパー上に塗布し、60℃、1時間で乾燥した。さらにこの電極を150℃、1時間で焼成し、カソードとした。このカソードは、厚さ50μmの触媒層からなり、Pt触媒量4.3mg/cmだった。
【0111】
実施例5
四塩化スズ五水和物SnCl・5HOを1gと硝酸インジウム三水和物In(NO)・3HOを19.6gとを溶解したエタノール溶液を調整した。これを350℃に加熱したガラス基板上に噴霧し、原料を酸化、熱分解して、SnドープInを得た。さらガラス基板にからSnドープInを回収、粉砕して触媒担体とした。このとき、InへのSnドープ量は5mol%だった。
【0112】
塩化タングステンWClを2.5g溶解したエタノール溶液50mlに前工程で調整した触媒担体を分散し、加水分解した後、溶媒を除去した。得られた前駆体を350℃で4時間熱処理を処理して触媒担体に酸化タングステンを担持したプロトン伝導性無機酸化物を得た。このときSnドープInのSn元素およびIn元素に対するW元素の比は0.1だった。
【0113】
前工程で合成したプロトン伝導性無機酸化物を500mLの水に分散させ、0.1mol/L塩化白金酸水溶液HPtClと0.1mol/L塩化ルテニウム塩酸水溶液HRuClと0.1mol/L炭酸水素アンモニウム水溶液NaHCOとを同時に滴下した。pHを7〜8に調整し、固体分をろ過、乾燥して、PtRu触媒の前駆体を担持したプロトン伝導性無機酸化物を得た。これを200℃の水素中で還元してPtRu触媒とした。このとき、PtRu量は全重量の10%となった。
【0114】
同様に、前工程で合成したプロトン伝導性無機酸化物を500mLの水に分散させ、0.1mol/Lの塩化白金酸水溶液H2PtCl6と0.1mol/Lの炭酸水素アンモニウム水溶液NaHCO3とを同時に滴下した。pHを7〜8に調整し、固体分をろ過、乾燥して、Pt触媒の前駆体を担持したプロトン伝導性無機酸化物を得た。これを200℃の水素中で還元してPt触媒とした。このとき、Pt量は全重量の10%となった。
【0115】
PtRuを担持したプロトン伝導性無機酸化物0.5gとカーボン0.5g、5%ポリビニルアルコール水溶液1g、水1g、エタノール1gを混合した。この混合物をジルコニアボールとともに密閉容器に移し、卓上ボールミルで6時間混合することでアノード触媒スラリーを調整した。このスラリーをカーボンペーパー上に塗布し、60℃、1時間で乾燥した。さらにこの電極を150℃、1時間で焼成し、アノードとした。このアノードは、厚さ50μmの触媒層からなり、Pt触媒量4.1mg/cm2だった。
【0116】
Ptを担持したプロトン伝導性無機酸化物0.5gとカーボン0.5g、5%ポリビニルアルコール水溶液1g、水1g、エタノール1gを混合した。この混合物をジルコニアボールとともに密閉容器に移し、卓上ボールミルで6時間混合することでカソード触媒スラリーを調整した。このスラリーをカーボンペーパー上に塗布し、60℃、1時間で乾燥した。さらにこの電極を150℃、1時間で焼成し、カソードとした。このカソードは、厚さ52μmの触媒層からなり、Pt触媒量4.3mg/cmだった。
【0117】
実施例6
四塩化スズ五水和物SnCl・5HOからフッ化アンモニウムNHFを0.11gに、硝酸インジウム三水和物In(NO)・3HOから四塩化スズ五水和物SnCl・5HOを20gに変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、Fドープ量が5mol%のFドープSnO2の触媒担体を得た。
【0118】
次いで、触媒担体表面に酸化ホウ素を担持したプロトン伝導性無機酸化物を得た。このときFドープSnOのF元素およびSn元素に対するB元素の比は0.1だった。さらに、プロトン伝導性無機酸化物表面にPtRu触媒およびPt触媒を担持した。このとき、PtRu量は全重量の10%、Pt量は全重量の13%となった。
【0119】
この触媒が担持されたプロトン伝導性無機酸化物を用いて、実施例1と同様にして、アノード、カソードを作製した。アノードは、厚さ52mの触媒層からなり、Pt触媒量4.1mg/cmだった。また、カソードは、厚さ53mの触媒層からなり、Pt触媒量4.4mg/cmだった。
【0120】
実施例7
四塩化スズ五水和物SnCl・5HOからフッ化アンモニウムNHFを0.11gに、硝酸インジウム三水和物In(NO)・3HOから四塩化スズ五水和物SnCl4・5HOを20gに変更した以外は実施例2と同様の操作を行い、Fドープ量が5mol%のFドープSnOの触媒担体を得た。
【0121】
次いで、触媒担体表面に酸化バナジウムを担持したプロトン伝導性無機酸化物を得た。このときFドープSnOのF元素およびSn元素に対するV元素の比は0.1だった。さらに、プロトン伝導性無機酸化物表面にPtRu触媒およびPt触媒を担持した。このとき、PtRu量は全重量の12%、Pt量は全重量の14%となった。
【0122】
この触媒が担持されたプロトン伝導性無機酸化物を用いて、実施例1と同様にして、アノード、カソードを作製した。アノードは、厚さ50mの触媒層からなり、Pt触媒量4.2mg/cmだった。また、カソードは、厚さ50mの触媒層からなり、Pt触媒量4.3mg/cmだった。
【0123】
実施例8
四塩化スズ五水和物SnCl・5HOからフッ化アンモニウムNHFを0.11gに、硝酸インジウム三水和物In(NO)・3HOから四塩化スズ五水和物SnCl・5HOを20gに変更した以外は実施例2と同様の操作を行い、Fドープ量が5mol%のFドープSnOの触媒担体を得た。
【0124】
次いで、触媒担体表面に酸化クロムを担持したプロトン伝導性無機酸化物を得た。このときFドープSnOのF元素およびSn元素に対するCr元素の比は0.1だった。さらに、プロトン伝導性無機酸化物表面にPtRu触媒およびPt触媒を担持した。このとき、PtRu量は全重量の12%、Pt量は全重量の14%となった。
【0125】
この触媒が担持されたプロトン伝導性無機酸化物を用いて、実施例2と同様にして、アノード、カソードを作製した。アノードは、厚さ51mの触媒層からなり、Pt触媒量4.2mg/cmだった。また、カソードは、厚さ50mの触媒層からなり、Pt触媒量4.3mg/cmだった。
【0126】
実施例9
四塩化スズ五水和物SnCl・5HOからフッ化アンモニウムNHFを0.11gに、硝酸インジウム三水和物In(NO)・3HOから四塩化スズ五水和物SnCl・5HOを20gに変更した以外は実施例3と同様の操作を行い、Fドープ量が5mol%のFドープSnOの触媒担体を得た。
【0127】
次いで、触媒担体表面に酸化モリブデンを担持したプロトン伝導性無機酸化物を得た。このときFドープSnOのF元素およびSn元素に対するMo元素の比は0.1だった。さらに、プロトン伝導性無機酸化物表面にPtRu触媒およびPt触媒を担持した。このとき、PtRu量は全重量の13%、Pt量は全重量の12%となった。
【0128】
この触媒が担持されたプロトン伝導性無機酸化物を用いて、実施例4と同様にして、アノード、カソードを作製した。アノードは、厚さ53mの触媒層からなり、Pt触媒量4.2mg/cm2だった。また、カソードは、厚さ50mの触媒層からなり、Pt触媒量4.1mg/cm2だった。
【0129】
実施例10
四塩化スズ五水和物SnCl・5HOからフッ化アンモニウムNHFを0.11gに、硝酸インジウム三水和物In(NO)・3HOから四塩化スズ五水和物SnCl・5HOを20gに変更した以外は実施例3と同様の操作を行い、Fドープ量が5mol%のFドープSnOの触媒担体を得た。
【0130】
次いで、触媒担体表面に酸化タングステンを担持したプロトン伝導性無機酸化物を得た。このときFドープSnOのF元素およびSn元素に対するW元素の比は0.1だった。さらに、プロトン伝導性無機酸化物表面にPtRu触媒およびPt触媒を担持した。このとき、PtRu量は全重量の13%、Pt量は全重量の10%となった。
【0131】
この触媒が担持されたプロトン伝導性無機酸化物を用いて、実施例5と同様にして、アノード、カソードを作製した。アノードは、厚さ53mの触媒層からなり、Pt触媒量4.4mg/cmだった。また、カソードは、厚さ50mの触媒層からなり、Pt触媒量4.1mg/cmだった。
【0132】
実施例11
四塩化スズ五水和物SnCl・5HOから塩化アンチモンSbClを0.7gに、硝酸インジウム三水和物In(NO)・3HOから四塩化スズ五水和物SnCl・5HOを20gに変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、Sbドープ量が5mol%のSbドープSnOの触媒担体を得た。
【0133】
次いで、触媒担体表面に酸化ホウ素を担持したプロトン伝導性無機酸化物を得た。このときSbドープSnOのSb元素およびSn元素に対するB元素の比は0.1だった。さらに、プロトン伝導性無機酸化物表面にPtRu触媒およびPt触媒を担持した。このとき、PtRu量は全重量の11%、Pt量は全重量の12%となった。
【0134】
この触媒が担持されたプロトン伝導性無機酸化物を用いて、実施例1と同様にして、アノード、カソードを作製した。アノードは、厚さ50mの触媒層からなり、Pt触媒量4.2mg/cmだった。また、カソードは、厚さ51mの触媒層からなり、Pt触媒量4.3mg/cmだった。
【0135】
(実施例12)
四塩化スズ五水和物SnCl・5HOから塩化アンチモンSbClを0.7gに、硝酸インジウム三水和物In(NO)・3HOから四塩化スズ五水和物SnCl・5HOを20gに変更した以外は実施例2と同様の操作を行い、Sbドープ量が5mol%のSbドープSnOの触媒担体を得た。
【0136】
次いで、触媒担体表面に酸化バナジウムを担持したプロトン伝導性無機酸化物を得た。このときSbドープSnOのSb元素およびSn元素に対するV元素の比は0.1だった。さらに、プロトン伝導性無機酸化物表面にPtRu触媒およびPt触媒を担持した。このとき、PtRu量は全重量の11%、Pt量は全重量の10%となった。
【0137】
この触媒が担持されたプロトン伝導性無機酸化物を用いて、実施例2と同様にして、アノード、カソードを作製した。アノードは、厚さ52mの触媒層からなり、Pt触媒量4.1mg/cmだった。また、カソードは、厚さ51mの触媒層からなり、Pt触媒量4.2mg/cmだった。
【0138】
実施例13
四塩化スズ五水和物SnCl・5HOから塩化アンチモンSbClを0.7gに、硝酸インジウム三水和物In(NO)・3HOから四塩化スズ五水和物SnCl・5H2Oを20gに変更した以外は実施例3と同様の操作を行い、Sbドープ量が5mol%のSbドープSnOの触媒担体を得た。
【0139】
次いで、触媒担体表面に酸化クロムを担持したプロトン伝導性無機酸化物を得た。このときSbドープSnOのSb元素およびSn元素に対するCr元素の比は0.1だった。さらに、プロトン伝導性無機酸化物表面にPtRu触媒およびPt触媒を担持した。このとき、PtRu量は全重量の10%、Pt量は全重量の12%となった。
【0140】
この触媒が担持されたプロトン伝導性無機酸化物を用いて、実施例3と同様にして、アノード、カソードを作製した。アノードは、厚さ50mの触媒層からなり、Pt触媒量4.0mg/cmだった。また、カソードは、厚さ54mの触媒層からなり、Pt触媒量4.3mg/cmだった。
【0141】
実施例14
四塩化スズ五水和物SnCl・5H5Oから塩化アンチモンSbClを0.7gに、硝酸インジウム三水和物In(NO)・3HOから四塩化スズ五水和物SnCl・5HOを20gに変更した以外は実施例4と同様の操作を行い、Sbドープ量が5mol%のSbドープSnO2の触媒担体を得た。
【0142】
次いで、触媒担体表面に酸化モリブデンを担持したプロトン伝導性無機酸化物を得た。このときSbドープSnOのSb元素およびSn元素に対するMo元素の比は0.1だった。さらに、プロトン伝導性無機酸化物表面にPtRu触媒およびPt触媒を担持した。このとき、PtRu量は全重量の13%、Pt量は全重量の12%となった。
【0143】
この触媒が担持されたプロトン伝導性無機酸化物を用いて、実施例4と同様にして、アノード、カソードを作製した。アノードは、厚さ52mの触媒層からなり、Pt触媒量4.1mg/cmだった。また、カソードは、厚さ53mの触媒層からなり、Pt触媒量4.2mg/cmだった。
【0144】
実施例15
四塩化スズ五水和物SnCl・5HOから塩化アンチモンSbClを0.7gに、硝酸インジウム三水和物In(NO)・3HOから四塩化スズ五水和物SnCl・5HOを20gに変更した以外は実施例5と同様の操作を行い、Sbドープ量が5mol%のSbドープSnOの触媒担体を得た。
【0145】
次いで、触媒担体表面に酸化タングステンを担持したプロトン伝導性無機酸化物を得た。このときSbドープSnOのSb元素およびSn元素に対するW元素の比は0.1だった。さらに、プロトン伝導性無機酸化物表面にPtRu触媒およびPt触媒を担持した。このとき、PtRu量は全重量の11%、Pt量は全重量の12%となった。
【0146】
この触媒が担持されたプロトン伝導性無機酸化物を用いて、実施例5と同様にして、アノード、カソードを作製した。アノードは、厚さ51mの触媒層からなり、Pt触媒量4.3mg/cmだった。また、カソードは、厚さ52mの触媒層からなり、Pt触媒量4.4mg/cmだった。
【0147】
比較例1
10%PtRu担持カーボンをアノード触媒として含有する電極(触媒量:PtRu4mg/cm、E−tek社製)に5%ナフィオン溶液を含浸させたものをアノードとして用意した。また、10%Pt担持カーボンをカソード触媒として含有する電極(触媒量:Pt4mg/cm、E−tek社製)に5%ナフィオン溶液を含浸させたものをカソードとして用意した。
【0148】
比較例2
塩化バナジウムVClを2g溶解した蒸留水300mlに酸化ケイ素SiOを5g加えた混合溶液を常に撹拌しながら80℃まで加熱し、100ml/時の蒸発速度で水を除去した。この後さらに100℃の乾燥器内で12時間保持して粉末を得た。この粉末をメノウ乳鉢で粉砕して粉末状にした後、アルミナ坩堝内において昇温速度100℃/時で600℃まで加熱し、さらに600℃を4時間保持することにより、酸化バナジウムのバナジウム元素(X)と酸化ケイ素のシリコン元素(Y)との元素比X/Yが0.1で、比表面積が55m/gである酸化バナジウム担持酸化ケイ素を得た。この酸化バナジウム担持酸化ケイ素についてX線回折測定を行ったところ、回折ピークはすべて酸化ケイ素に帰属されるものしか観測されず、酸化バナジウムは非晶質構造を有していることを確認することができた。
【0149】
10%Pt担持カーボン粉末0.5gと前工程で調整した酸化物超強酸粉末0.5g、5%PVA水溶液水1g、エタノール1g、水1gを混合した。この混合物をジルコニアボールとともに密閉容器に移し、卓上ボールミルで6時間混合することでカソード触媒スラリーを調整した。このスラリーをカーボンペーパー上に塗布し、60℃、1時間で乾燥した。さらにこの電極を窒素気流中、150℃、1時間で焼成し、カソードとした。このカソードは、厚さ52μmの触媒層からなり、Pt触媒量4.2mg/cmだった。
【0150】
また、10%PtRu担持カーボン粉末0.5gと前工程で調整した酸化物超強酸粉末0.5g、5%PVA水溶液水1g、エタノール1g、水1gを混合した。この混合物をジルコニアボールとともに密閉容器に移し、卓上ボールミルで6時間混合することでアノード触媒スラリーを調整した。このスラリーをカーボンペーパー上に塗布し、60℃、1時間で乾燥した。さらにこの電極を窒素気流中、150℃、1時間で焼成し、アノードとした。このアノードは、51μmの触媒層からなり、PtRu触媒量4.5mg/cmだった。
【0151】
実施例1〜15で得られたアノード電極およびカソード電極の触媒層をカーボンペーパーから剥離、粉砕し、プロトン伝導性無機酸化物について、m−ニトロトルエン(pKa=−11.99)、p−ニトロフルオロベンゼン(pKa=−12.40)、p−ニトロクロロベンゼン(pKa=−12.70)、m−ニトロクロロベンゼン(pKa=−13.16)、2、4−ジニトロトルエン(pKa=−13.75)、2、4−ジニトロフルオロベンゼン(pKa=−14.52)1,3,5−トリニトロベンゼン(pKa=−16.04)からなる酸性指示薬により、固体超強酸性を示すことがわかった。また、酸化物超強酸が着色している場合、酸性指示薬の変色から固体酸性を評価することは難しい。そのような場合、固体超強酸性はアンモニア昇温脱理法(TPD)法を用いても測定が可能である.これは固体酸試料にアンモニアガスを吸着させ、試料を昇温することで脱離するアンモニアの脱離量と脱離温度を検出し、解析するものである。各プロトン伝導性無機酸化物のHammettの酸度関数Hは表1に示す通りであった。
【0152】
実施例1〜15で得られた触媒を担持した電子伝導性を有するプロトン伝導性無機酸化物の体積低効率は4探針法により、以下のようにして測定した。まず、粉末試料1gを直径10mmのペレット状に圧縮成型した。このペレット表面上に4探針プローブを0.3mm間隔で一直線状に並ぶように接触させた。外側の2針間に電流を印加し、内側の2針間で電位差を測定して体積抵抗率を求めた。各プロトン伝導性無機酸化物の体積抵抗率は表1に示す通りであった。
【0153】
また、実施例1〜15および比較例1〜2の電極を用いて以下に説明する方法で液体燃料電池を組み立てた。この液体燃料電池の断面模式図を図3に示す通りである。
【0154】
燃料極2と酸化剤極3の間にパーフルオロスルホンサン膜(デュポン社製、商品名:ナフィオン117膜)プロトン伝導性膜4を配置し、120℃で5分間、100kg/cm2の圧力でホットプレスして接合することにより膜電極複合体を作製し、起電部5を得た。
こうして得られた起電部5の燃料極2に、燃料気化部6としての平均孔径100μmかつ気孔率70%のカーボン多孔質板を積層した。この燃料気化部6上に燃料浸透部7としての平均孔径5μm、気孔率40%のカーボン多孔質板を配置した。これらを、酸化剤ガス供給溝9付きの酸化剤極ホルダー8と、燃料極ホルダー10との内部に組み込んで、図3に示すような構成を有する単電池を作製した。この単電池の反応面積は10cmである。なお、酸化剤極ホルダー8の酸化剤ガス供給溝9は、深さが2mmで、幅が1mmである。
【0155】
このようにして得た液体燃料電池に、20%メタノール水溶液を図3に示すように燃料浸透部7の側面から毛管力で導入した。一方、酸化剤ガスとして1atmの空気を100ml/minでガスチャンネル9に流し、発電を行った。発電反応に伴って発生した炭酸ガス(CO)は、図3に示されるように燃料気化部6から放出した。最大発電量を下記表1に示す。
【0156】
また、液体燃料電池のセル抵抗は、カーボン製のセルホルダーに接触している電流取り出し板間に1kHzの交流電圧を印加し、流れる電流値を計測する抵抗計によって測定した。セル抵抗は表1に示す通りであった。
【0157】
各膜電極複合体について、セル抵抗と20%メタノール溶液使用時の最大発電量を測定した。得られた結果は表1に示すとおりであった。
【表1】

【0158】
表1から明らかなように、実施例1〜15の電極は、比較例1のナフィオン溶液を触媒層バインダーに使用した電極と比較しセル抵抗は大きく低下したことがわかる。
【0159】
表1の比較例1から明らかなように、ナフィオン溶液を触媒層に使用した電極を備えた燃料電池においては、20%メタノール溶液では触媒層でのメタノールの反応が十分に起こらず、メタノールクロスオーバーの影響が大きく出力に影響し、また、セル抵抗が大きいため、最大でも2.0mW/cmの発電量しか得ることができなかった。
【0160】
また、表1の比較例2で示されるように、SiOの表面に酸化バナジウムを担持して得られたプロトン伝導性無機酸化物を使用した触媒層を含む電極を備えた燃料電池においては、電子伝導性がないため、セル抵抗が高く、最大発電量も低かった。これに対して、実施例1〜15のプロトン伝導性無機酸化物を触媒の支持材に使用した電極を備えた燃料電池では、電極反応が良好に起こり、また、触媒層の抵抗も低く、セル抵抗が低いため、良好な発電量が得られた。そのうち、触媒担体としては が体積低効率が最も低かった。また、プロトン伝導性無機酸化物としては、触媒担体としてSbドープSnOを使用した実施例11〜15の燃料電池の発電量が大きく、最も優れていたのはタングステン酸化物粒子が担持されている実施例15であった。
【0161】
実施例1〜15の酸化物超強酸を触媒層のバインダーに使用した電極を用いた単位セルについて、燃料として20%メタノール水溶液を供給し、空気を流すとともに、セルの両面を40℃に加熱して10mA/cmの電流をとり、電池性能の時間的安定性を観測した。その結果、数時間経過後でも出力は安定していた。
【0162】
ナフィオン溶液を触媒層バインダーに使用した電極(比較例1)を電解質膜として備えた燃料電池について、燃料として20%メタノール水溶液を供給し、空気を流すとともに、セルの両面を40℃に加熱して10mA/cmの電流をとり、電池性能の時間的安定性を観測した。その結果、数分のうちに、出力を得ることが不可能になった。
【0163】
実施例16
四塩化スズ五水和物SnCl・5HOを1gから0.1gに変更した以外は実施例4と同様の操作を行い、Snドープ量が0.5mol%のSnドープInの触媒担体を得た。
【0164】
次いで、触媒担体表面に酸化モリブデンを担持したプロトン伝導性無機酸化物を得た。このときSbドープSnOのSb元素およびSn元素に対するMo元素の比は0.1だった。さらに、プロトン伝導性無機酸化物表面にPtRu触媒およびPt触媒を担持した。このとき、PtRu量は全重量の12%、Pt量は全重量の13%となった。
【0165】
この触媒が担持されたプロトン伝導性無機酸化物を用いて、実施例4と同様にして、アノード、カソードを作製した。アノードは、厚さ54mの触媒層からなり、Pt触媒量4.2mg/cmだった。また、カソードは、厚さ51mの触媒層からなり、Pt触媒量4.0mg/cmだった。
【0166】
実施例17
四塩化スズ五水和物SnCl・5HOを1gから2.2gに変更した以外は実施例4と同様の操作を行い、Snドープ量が10mol%のSnドープInの触媒担体を得た。
【0167】
次いで、触媒担体表面に酸化モリブデンを担持したプロトン伝導性無機酸化物を得た。このときSbドープSnOのSb元素およびSn元素に対するMo元素の比は0.1だった。さらに、プロトン伝導性無機酸化物表面にPtRu触媒およびPt触媒を担持した。このとき、PtRu量は全重量の11%、Pt量は全重量の14%となった。
【0168】
この触媒が担持されたプロトン伝導性無機酸化物を用いて、実施例4と同様にして、アノード、カソードを作製した。アノードは、厚さ51mの触媒層からなり、Pt触媒量4.3mg/cmだった。また、カソードは、厚さ50mの触媒層からなり、Pt触媒量4.2mg/cmだった。
【0169】
得られた実施例16〜17について、酸性度関数、体積低効率、セル抵抗、20%メタノール溶液を使用した場合の最大発電量とを前述した方法と同様にして測定した。得られた結果は下記表2に示す通りであった。なお、表2には、前述した実施例4の結果を併記する。
【表2】

【0170】
表2から明らかなように、触媒担体に添加される元素の添加量を変更すると体積低効率が変化した。これを受けて、セル抵抗、最大発電量も変化することがわかった。
【0171】
実施例18
塩化バナジウムVClを2g溶解した蒸留水300mlに酸化ケイ素SiOを5g加えた混合溶液を常に撹拌しながら80℃まで加熱し、100ml/時の蒸発速度で水を除去した。この後さらに100℃の乾燥器内で12時間保持して粉末を得た。この粉末をメノウ乳鉢で粉砕して粉末状にした後、アルミナ坩堝内において昇温速度100℃/時で600℃まで加熱し、さらに600℃を4時間保持することにより、酸化バナジウムのバナジウム元素(X)と酸化ケイ素のシリコン元素(Y)との元素比X/Yが0.1で、比表面積が53m/gである酸化バナジウム担持酸化ケイ素を得た。この酸化バナジウム担持酸化ケイ素についてX線回折測定を行ったところ、回折ピークはすべて酸化ケイ素に帰属されるものしか観測されず、酸化バナジウムは非晶質構造を有していることを確認することができた。
【0172】
このプロトン伝導性無機材料粉末1gを5%ポリビニルアルコール(PVA)の水溶液2gに加え、室温で10分間撹拌し、スラリーを調製した。このスラリーを四フッ化エチレンペルフルオロアルコキシビニルエーテル共重合体(PFA)樹脂製シャーレに入れ、溶媒を大気中、60℃、150℃で乾燥させ、電解質膜とした。膜全重量(T)に対するプロトン伝導性無機材料(S)の比S/Tは0.9となり、電解質膜の膜厚は150μmだった。
【0173】
実施例1で得られた燃料極および酸化剤極と、実施例18で得られたプロトン伝導性膜を使用すること以外は、前述した実施例1で説明したのと同様にして燃料電池を作製した。
【0174】
得られた実施例18について、燃料電池のセル抵抗と20%メタノール溶液を使用した場合の最大発電量を測定した。得られた結果は下記表3に示す通りであった。なお、表3には、前述した実施例1、比較例1の結果を併記する。
【表3】

【0175】
表3から明らかなように、電極や電解質膜に使用したプロトン伝導体の抵抗が小さいためセル抵抗が小さく、比較例1で得た膜電極複合体よりも実施例1および実施例18で得た膜電極複合体は高い出力特性を示した。
【0176】
以上詳述したように本発明によれば、小型で性能が高く、しかも安定した出力を供給可能な燃料電池を得ることが可能となり、その工業的価値は絶大である。
【0177】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0178】
【図1】本発明による触媒複合体の構造の例を示す模式断面図。
【図2】本発明の燃料電池の一実施形態に係る液体燃料電池を模式的に示した断面図。
【図3】実施例の液体燃料電池の構成を模式的に示した断面図。
【符号の説明】
【0179】
A 触媒担体A
B 酸化物B
C 酸化還元触媒C
1 液体燃料導入路
2 アノード
3 カソード
4 電解質膜
5 膜電極複合体(起電部)
6 燃料気化部
7 燃料浸透部
8 カソードセパレータ
9 酸化剤ガス供給溝
10 酸化剤極側ホルダー
11 燃料極側ホルダー
100 スタック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
SnドープIn、FドープSnOおよびSbドープSnOよりなる群から選択される少なくとも一種類からなる触媒担体と、
前記触媒担体表面に化学的に結合した、W、Mo、Cr、VおよびBよりなる群から選択される少なくとも一種類からなる元素を含む酸化物粒子相と、
を具備してなるプロトン伝導性無機酸化物と、
前記触媒担体に、直接あるいは前記酸化物粒子相を介して担持された酸化還元触媒相と、
を具備してなる触媒複合体、および
バインダー
を含んでなる触媒層を具備してなることを特徴とする燃料電池用電極。
【請求項2】
前記触媒担体が10−2Ωcm以上10Ωcm以下の体積抵抗率を有する、請求項1に記載の燃料電池用電極。
【請求項3】
前記触媒担体にドープされたSn元素、F元素、またはSb元素の含有率が0.01mol%以上20mol%以下である、請求項1または2に記載の燃料電池用電極。
【請求項4】
SnドープInのSn元素およびIn元素、FドープSnOのF元素およびSn元素、またはSbドープSnOのSb元素およびSn元素からなる元素Xのモル数Mに対する、W、Mo、Cr、VおよびBよりなる群から選択される少なくとも一種類からなる元素Yのモル数Mの比(M/M)が、0.001以上20以下である、請求項1から3のいずれか1項に記載の燃料電池用電極。
【請求項5】
前記酸化物粒子相が担持された触媒担体は、Hammettの酸度関数Hが、−20.00<H<−11.93である請求項1に記載の燃料電池用電極。
【請求項6】
燃料極と、酸化剤極と、前記燃料極および前記酸化剤極の間に配置された電解質膜とを具備してなる膜電極複合体であって、
前記燃料極および前記酸化剤極の少なくとも一方が触媒層を含み、前記触媒層は、
SnドープIn、FドープSnOおよびSbドープSnOよりなる群から選択される少なくとも一種類からなる触媒担体と、
前記触媒担体表面に化学的に結合した、W、Mo、Cr、VおよびBよりなる群から選択される少なくとも一種類からなる元素を含む酸化物粒子相と、
を具備してなるプロトン伝導性無機酸化物と、
前記触媒担体に、直接あるいは前記酸化物粒子相を介して担持された酸化還元触媒相と、
を具備してなる触媒複合体、および
バインダー
を具備してなることを特徴とする膜電極複合体。
【請求項7】
燃料極と、酸化剤極と、前記燃料極および前記酸化剤極の間に配置された電解質膜とを具備してなる燃料電池であって、
前記燃料極および前記酸化剤極の少なくとも一方が触媒層を含み、前記触媒層は、
SnドープIn、FドープSnOおよびSbドープSnOよりなる群から選択される少なくとも一種類からなる触媒担体と、
前記触媒担体表面に化学的に結合した、W、Mo、Cr、VおよびBよりなる群から選択される少なくとも一種類からなる元素を含む酸化物粒子相と、
を具備してなるプロトン伝導性無機酸化物と、
前記触媒担体に、直接あるいは前記酸化物粒子相を介して担持された酸化還元触媒相と、
を具備してなる触媒複合体、および
バインダー
を具備してなることを特徴とする燃料電池。
【請求項8】
SnドープIn、FドープSnOおよびSbドープSnOよりなる群から選択される少なくとも一種類からなる触媒担体を、W、Mo、Cr、VおよびBよりなる群から選択される少なくとも一種類からなる元素を含む物質を溶解した溶液に分散させ、
溶媒を除去し、
熱処理により元素Yの酸化物の相を形成させることによりプロトン伝導性無機酸化物を形成させ、
前記プロトン伝導性無機酸化物を、触媒前駆体である金属元素を含む物質を溶解した溶液に分散させ、
溶媒を除去もしくはpHを調整することによりプロトン伝導性無機酸化物表面に触媒前駆体を堆積させ、
還元雰囲気で熱処理することにより触媒複合体を形成させ、
前記触媒複合体とバインダーとを混合して成形、または支持体上に塗布する、
ことを特徴とする燃料電池用電極の製造法。
【請求項9】
前記プロトン伝導性酸化物を形成させるための熱処理を200〜600℃で行う、請求項8に記載の製造法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−34300(P2008−34300A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−208241(P2006−208241)
【出願日】平成18年7月31日(2006.7.31)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】