説明

燃料電池発電装置

【課題】電流検知器の施工コストを低減できる燃料電池発電装置を提供する。
【解決手段】インバータ106と並列に昇圧コンバータ105に接続され燃料電池104における余剰電力を消費する余剰電力消費手段(ヒータ109と余剰電力コンバータ110)と、この余剰電力消費手段に商用電力系統102から電力を供給する電力供給回路115と、電力供給回路115と商用電力系統102を接続/遮断する接続遮断リレー116と、商用電力系統102と連系点113との間を流れる電流を検知する電流検知器111と、少なくとも接続遮断リレー116を制御すると共に接続遮断リレー116を制御したときの電流検知器111により検知した電流の大きさ及び向きの情報を基に電流検知器111の故障の有無及び電流検知器111が正しい位置・向きに設置されているか否かを判断する制御器114とを備えたので、電流検知器111の検査専用の交流負荷が不要になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池で発生した余剰電力をの内部で消費する燃料電池発電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の燃料電池発電装置は、直流入力元である燃料電池が発電した電力よりも家庭内で消費される電力が小さい場合に、燃料電池で余剰となる電力を専用の内部負荷にて消費させ、発電を安定的に継続するように構成したものが、提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
以下、図面を参照しながら、前記特許文献1に記載された従来の燃料電池発電装置について説明する。図5は、前記特許文献1に記載された従来の燃料電池発電装置のブロック図である。
【0004】
図5に示すように、従来の燃料電池発電装置1は、商用電力系統2と連系点13で接続されている。連系点13には、燃料電池発電装置1と並列に、エアコン、冷蔵庫などの家庭内負荷3が接続されている。また、商用電力系統2と連系点13とを接続する電気配線には、商用電力系統2と連系点13との間を流れる電流を検知する電流検知器11が設置されている。電流検知器11の検知信号は制御器14に入力される。
【0005】
燃料電池4は、都市ガス、プロパンガスなどの燃料ガスから水素リッチなガスを生成し、その水素によって発電する。燃料電池4の直流出力電力は、昇圧コンバータ5によって商用電力系統2の電圧より高い所定の電圧に昇圧され、インバータ6によって商用電力系統2と同期した交流電力に変換され、解列リレー12を介して商用電力系統2に連系出力される。
【0006】
また、燃料電池発電装置1は、燃料電池4にて発電時に発生する廃熱を回収して温水とする熱交換器7と、その温水を蓄える貯湯タンク8を備える。貯湯タンク8には、更にヒータ9を介して内部の水を温める循環経路が接続されており、ヒータ9には、燃料電池4の出力から余剰電力コンバータ10を介して電力が供給される。
【0007】
このような燃料電池発電装置1は、商用電力系統2に系統連系されて使用され、燃料電池4により発電した電力を単独で、若しくは商用電力と共に、テレビや冷蔵庫などの家庭内負荷3に供給する。
【0008】
ところで、家庭内負荷3で消費する電力はユーザーの操作によって刻一刻と変化する。一方、発電は燃料ガスの供給量の変更などを行い、水素リッチなガスの生成量を調整するため、家庭内負荷3の電力変動に対して、どうしても遅れが生じる。
【0009】
例えば、家庭内負荷3の消費電力が急増し、燃料電池4の発電量がそれを下回っている時には、家庭内負荷3で不足する電力は、連系している商用電力系統2から供給される。一方、家庭内負荷3の消費電力が急減した場合、燃料電池4の発電量が上回ってしまうため、このままでは余った電力(余剰電力)が商用電力系統2に逆潮流してしまうことになる。
【0010】
そこで制御器14は、電流検知器11が検知した電流の向きが連系点13から商用電力系統2へ向う向きであると、インバータ6の出力電力を小さくすると同時に、余剰電力コンバータ10を作動させ、ヒータ9で電力を消費させる。これにより、家庭内負荷3の消費電力が急減したことによって発生した余剰電力がヒータ9で消費され、逆潮流が防止される。
【0011】
上記従来の構成においては、逆潮流の発生を検知するためには、電流検知器11が検出した商用電力系統2と連系点13の間に流れる電流の大きさと向きを制御器14が正しく認識する必要がある。電流検知器11はCT等の電流センサで構成され、検出対象の電流の大きさと向きとを検出する。このような電流検知器11においては、検出対象の電流に対するその検出部、例えばCT(カレントトランスフォーマ)では検出コイルの向きが逆であると、検出対象である電流の向きを逆向きとして検出してしまい、逆潮流を正しく防止することができない。もちろん、電流検知器11が故障したり、その設置場所が正しくない(例えば連系点13から家庭内負荷3への電気配線に設置した)場合にも逆潮流を防止することができない。
【0012】
そこで、従来、一般的に上述のような燃料電池発電装置1を設置する場合、電流検知器11の故障の有無及び正しい位置・向きに設置されているか否かを検査していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2004−213985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、この検査は、施工者が、連系点13と燃料電池発電装置1との間の電気配線に専用の交流負荷を接続し、解列リレー12を開いた状態(発電を停止した状態)で、この専用の交流負荷に商用電力系統2から電力を供給したり停止したりし、このときに電流検知器11が検出した電流の大きさ、向きをチェックすることによって行っていた。従って、施工に手間がかかり、そのコストが高くつくという課題を有していた。
【0015】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、電流検知器の施工コストの低減が可能な燃料電池発電装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために、本発明の燃料電池発電装置は、燃料電池が発電した直流電力の電圧を昇圧する昇圧コンバータと、前記昇圧コンバータで昇圧された高電圧の直流電力を交流電力に変換して商用電力系統に出力するインバータと、前記インバータと商用電力系統を接続/遮断する解列手段と、前記インバータと並列に前記昇圧コンバータに接続され前記燃料電池における余剰電力を消費する余剰電力消費手段と、前記余剰電力消費手段に商用電力系統から電力を供給する電力供給手段と、前記電力供給手段と商用電力系統を接続/遮断する接続遮断手段と、商用電力系統と連系点との間を流れる電流を検知する電流検知手段と、少なくとも前記接続遮断手段を制御すると共に前記接続遮断手段を制御したときの前記電流検知手段により検知した電流の大きさ及び向きの情報を基に前記電流検知手段の故障の有無及び前記電流検知手段が正しい位置・向きに設置されているか否かを判断する制御手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0017】
これによって、接続遮断手段を閉じて電力供給手段を介して余剰電力消費手段に商用電力系統の電力を消費させ、商用電力系統と連系点の間に設置された電流検知手段に電流を検知されることができる。その際に、電流検知手段が検出した電流の大きさ及び向きの情報を用いて、電流検知手段が故障していないこと、及び正しい位置・向きに設置されていることを検査することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の燃料電池発電装置の余剰電力消費手段は、接続遮断手段と電力供給手段を介して商用電力系統の電力を消費し、商用電力系統と連系点の間に設置された電流検知手段に電流を検知させることができる。その結果として、従来のように燃料電池発電装置の設置時に、電流検知手段の故障・設置検査専用の交流負荷を用意する必要がなくなるので、施工コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態1における燃料電池発電装置のブロック図
【図2】本発明の実施の形態1における電流検知器の正しい位置で正しい向きに設置した場合の構成図
【図3】本発明の実施の形態1における電流検知器の正しい位置で反対向きに設置した場合の構成図
【図4】本発明の実施の形態1における電流検知器の間違った位置に設置した場合の構成図
【図5】従来の燃料電池発電装置の構成図
【発明を実施するための形態】
【0020】
第1の発明は、燃料電池が発電した直流電力の電圧を昇圧する昇圧コンバータと、前記昇圧コンバータで昇圧された高電圧の直流電力を交流電力に変換して商用電力系統に出力するインバータと、前記インバータと商用電力系統を接続/遮断する解列手段と、前記インバータと並列に前記昇圧コンバータに接続され前記燃料電池における余剰電力を消費する余剰電力消費手段と、前記余剰電力消費手段に商用電力系統から電力を供給する電力供給手段と、前記電力供給手段と商用電力系統を接続/遮断する接続遮断手段と、商用電力系統と連系点との間を流れる電流を検知する電流検知手段と、少なくとも前記接続遮断手段を制御すると共に前記接続遮断手段を制御したときの前記電流検知手段により検知した電流の大きさ及び向きの情報を基に前記電流検知手段の故障の有無及び前記電流検知手段が正しい位置・向きに設置されているか否かを判断する制御手段とを備えた燃料電池発電装置である。
【0021】
この構成によって、接続遮断手段を閉じて電力供給手段を介して余剰電力消費手段に商用電力系統の電力を消費させ、商用電力系統と連系点の間に設置された電流検知手段に電流を検知させることができる。その際に、電流検知手段が検出した電流の大きさ及び向きの情報を用いて、電流検知手段が故障していないこと、及び正しい位置・向きに設置されていることを検査することができる。その結果として、従来のように電流検知手段の故障・設置検査専用の交流負荷を用意する必要がなくなるので、施工コストを低減することができる。
【0022】
第2の発明は、特に第1の発明において、余剰電力消費手段は、内部負荷と、内部負荷で消費する電力量を制御する余剰電力コンバータとを備えるものであり、電力供給手段を介して商用電力系統の電力を消費する際に、内部負荷に依存せずに任意の電力を消費することができ、電流検知手段の故障・設置検査の際に、電流検知手段が検出する電流が十分な大きさになるように消費電力を調整することができるので、家庭内負荷の消費電力による誤判定を防止して、電流検知手段の故障・設置検査をより高精度に行うことができる。
【0023】
第3の発明は、特に第2の発明において、内部負荷が、通電されると発熱して水を温めるヒータであるものであり、温められた温水を貯湯タンク等に蓄え、必要に応じて家庭内へ供給することが可能となり、ヒータで消費された電力を有効に活用することができる。
【0024】
第4の発明は、特に第1から3の発明において、ユーザーが操作する操作手段を備え、制御手段は燃料電池発電装置への電源投入時、または発電起動時、または操作手段へのユーザー操作時の少なくともいずれかのタイミングで、電力供給手段と商用電力系統を接続するように接続遮断手段を制御するものであり、燃料電池発電装置の設置時に、施工者が電流検知手段の故障・設置検査を容易に行うことができる。
【0025】
第5の発明は、特に第1から4の発明において、電力供給手段はダイオードを用いた整流回路であるものであり、簡易な構成で実現することができる。
【0026】
第6の発明は、特に第1から5の発明において、制御手段が判断した電流検知手段の故障及び設置に関する情報の少なくともいずれかを表示する表示手段を備えたものであり、施工者が電流検知手段の故障・設置検査の結果を容易に確認することができる。
【0027】
以下、本発明の燃料電池発電装置の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0028】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1における燃料電池発電装置のブロック図である。
【0029】
図1に示すようにおいて、本発明の実施の形態1の燃料電池発電装置101は、商用電力系統102と連系点113でAC200Vで接続されている。連系点113には燃料電池発電装置101と並列に、エアコン、冷蔵庫などの家庭内負荷103が接続されている。また、商用電力系統102と連系点113とを接続する電気配線には商用電力系統102と連系点113との間を流れる電流を検知する電流検知器111が設置されている。電流検知器111はCT(カレントトランスフォーマ)などの電流センサで構成され、その検知信号は制御器114に入力される。
【0030】
燃料電池発電装置101は、燃料電池104の出力電圧を商用電力系統102の電圧より高い所定の電圧に昇圧する昇圧コンバータ105、昇圧コンバータ105の直流出力を商用電力系統102と同期した交流正弦波として出力するインバータ106、商用電力系統102と燃料電池発電装置101を連系/解列する解列リレー112を有する。更に昇圧コンバータ105の直流出力は、余剰電力コンバータ110を介してヒータ109にも供給可能とされている。また、余剰電力コンバータ110は、電力供給回路115、接続遮断リレー116を介して商用電力系統102にも接続されている。
【0031】
昇圧コンバータ105は、リアクトル201と昇圧用スイッチング素子202と昇圧用ダイオード203と平滑コンデンサ204で構成され、インバータ106はスイッチング素子Q301〜Q304を4石使用したフルブリッジ回路と、高周波ノイズ除去用リアクトル305と出力コンデンサ306で構成されている。また、スイッチング素子Q301〜Q304には、転流ダイオードD301〜D304がそれぞれ内蔵されている。
【0032】
余剰電力コンバータ110は、余剰電力コンバータ用スイッチング素子402と余剰電力コンバータ用ダイオード403と余剰電力コンバータ用平滑コンデンサ404と余剰電力コンバータ用リアクトル405を用いた降圧チョッパ型コンバータで構成される。
【0033】
電力供給回路115は、電力供給用ダイオードD501〜D504と、電力供給用コンデンサ501を用いた全波整流回路で構成され、接続遮断リレー116を閉じることによって商用電力系統102と接続される。
【0034】
また、燃料電池発電装置101は、燃料電池104で発生する廃熱を回収し、温水として蓄える貯湯タンク108を備え、貯湯タンク108には熱交換器107を介して循環する水経路と、ヒータ109を介して循環する水経路が接続されており、それぞれの循環経路は水ポンプ(図示しない)で貯湯タンク108の水が循環するように構成されている。熱交換器107は燃料電池104での発電時に発生する熱を熱源として循環する水を温めるように構成されている。ヒータ109は昇圧コンバータ105と余剰電力コンバータ110を介して燃料電池104の出力電力を熱に変換し、循環する水を温めるように構成されている。
【0035】
また、燃料電池発電装置101は、施工者やメンテ作業者が所定の操作を行なうための操作部117と、エラー情報や動作情報等を表示する表示部118を備えている。操作部117はタクトスイッチやメンブレンスイッチなどで、表示部118は液晶や7セグメントLEDなどで構成される。
【0036】
以上のように構成された燃料電池発電装置101において、以下その動作、作用を説明する。
【0037】
まず、燃料電池104が発電を行い、家庭内負荷103に対して商用電力系統102と供に電力供給を行っている場合の動作を説明する。
【0038】
燃料電池104は、都市ガス、プロパンガスなどの燃料ガスを元に改質器や変成器(図示しない)を用いて水素リッチなガスを生成し、生成された水素リッチなガス中の水素と、空気中に含まれる酸素との電気化学反応によって発電し、直流電力を発生する。
【0039】
ここで、燃料電池104の出力電圧は、例えば固体高分子型の燃料電池であれば、固体高分子電解質膜の両面に設けたアノードとカソードのガス経路に水素リッチなガスと空気を供給して、水素と酸素の電気化学反応によって電力を発生させるわけであるが、この固体高分子電解質膜の両面にガス経路を設けた単位発電体であるセルを直列接続する数によって決定され、一般的にはDC数十V程度である。本実施の形態では燃料電池104の出力電圧はDC40Vとする。
【0040】
商用電力系統102の電圧がAC200Vである場合、電圧のピークは283Vに達するため、インバータ106の入力側の電圧としてはそれ以上の電圧が必要となる。また、商用電力系統102が変動することを考慮すると通常DC350V程度の電圧が必要である。
【0041】
そこで、制御器114は、昇圧コンバータ105を動作させて燃料電池104の定格出力DC40VをDC350Vまで昇圧する。具体的には昇圧用スイッチング素子202をONしてリアクトル201にエネルギーを蓄積し、昇圧用スイッチング素子202をOFFした際にリアクトル201に蓄えられたエネルギーが昇圧用ダイオード203を介して平滑コンデンサ204に電圧として蓄えられる。
【0042】
以上の動作を繰り返すことにより、DC40VをDC350Vまで昇圧する。ここで、スイッチングの周波数を高くすれば、同一サイズのリアクトルであっても、より大きなエネルギーを取り出すことができる。そのため、昇圧コンバータ105の小型化の観点より、数十KHz以上の高周波でスイッチングするのが望ましく、本実施の形態のスイッチング周波数は50KHzとする。
【0043】
次に制御器114はインバータ106を動作させて商用電力系統102に同期した交流波形を出力させる。4石のスイッチング素子Q301〜Q304を高周波でスイッチング動作させることで、昇圧コンバータ105の平滑コンデンサ204に一時的に蓄えられた電力を略正弦波として出力する。この略正弦波の出力電流には高周波成分が含まれているが、高周波ノイズ除去用リアクトル302と出力コンデンサ303で平滑されて滑らかな正弦波となる。そして、解列リレー112を閉状態にして商用電力系統102と連系し、家庭内負荷103に電力を供給する。
【0044】
このとき、燃料電池発電装置101の出力電力が家庭内負荷3の消費電力よりも小さい場合には、商用電力系統102から家庭内負荷103側へ電流が流れ込み、逆に燃料電池発電装置101の出力電力が家庭内負荷103よりも大きい場合には、商用電力系統102へ電流が流れる(逆潮流)ことになる。そこで、電流検知器111にて、連系点113と商用電力系統102の間に流れる電流の大きさと向きを検知し、その情報を制御器114に入力して逆潮流が発生しないように制御する。
【0045】
ここで、まず、家庭内負荷103の消費電力が燃料電池104の発電電力よりも大きければ、発電電力はすべて家庭内負荷103で消費され、更に不足する電力が商用電力系統102から供給される。このときには、商用電力系統102から連系点113に向かって電流が流れている。そしてその状態から、ユーザーがエアコン等の電源をOFFし、家庭内負荷103の消費電力が急減し、燃料電池104の発電電力よりも小さくなると、燃料電池発電装置101の出力電力が家庭内負荷103で消費しきれずに、余った電力が商用電力系統102に供給されることになる。
【0046】
そこで、本来、家庭内負荷103の変動に応じて燃料電池104の発電主力を調整しなければならない。一方、燃料電池104の発電出力は、燃料ガスの供給量の変更などを行い、水素リッチなガスの生成量を調整するため、家庭内負荷103の消費電力変動に対してどうしても遅れが生じる。そのため、前述のような家庭内負荷103の消費電力変動が発生すると、連系点113から商用電力系統102に向かって電流が流れ込むことになる。
【0047】
そこで、制御器114は、電流検知器111にて検知した電流の大きさと向きに応じてインバータ106の出力電力を制御し、連系点113から商用電力系統102へ電流が流れ込まない(逆潮流しない)ように制御する。
【0048】
具体的には商用電力系統102から連系点113に流れる電流の向きを正とした場合に、電流検知器111で検出した電流が負の値である場合には、インバータ106の出力を低下させる。そして同時に、余剰電力コンバータ110を動作させてインバータ106で低下させた分の電力(燃料電池104で発生する余剰電力=家庭内負荷3の消費電力−燃料電池104の発電電力)をヒータ109にて消費させる。
【0049】
このようにして、逆潮流を防止しながら発電出力を行うことができる。また、このときヒータ109は貯湯タンク108から循環してくる水を温めるので、余剰電力を熱として有効利用することができる。
【0050】
このときの余剰電力コンバータ110の動作を説明する。余剰電力コンバータ110は、余剰電力コンバータ用スイッチング素子402をONして余剰電力コンバータ用リアクトル405にエネルギーを蓄積し、余剰電力コンバータ用スイッチング素子402をOFFした際に余剰電力コンバータ用リアクトル405に蓄えられたエネルギーを余剰電力コンバータ用ダイオード403と余剰電力コンバータ用平滑コンデンサ404を介してヒータ109に電力供給する。このとき、余剰コンバータ用スイッチング素子402のON/OFF時間を調整することにより、ヒータ109で消費する電力を調整することが可能である
続いて、設置工事完了後の電流検知器111の故障・設置検査動作について説明する。設置工事が完了すると、施工者は燃料電池発電装置101の設置工事が正しく行われたか確認するわけであるが、その際に、電流検知器111の故障・設置検査も行なう必要が有る。そこで、施工者は電流検知器111の故障・設置検査を行なうために、操作部117に所定の操作を行なう。
【0051】
設置工事完了後、燃料電池104は発電出力を行なっていないので、制御器114は昇圧コンバータ105、インバータ106を停止させ、解列リレー112を開いている。制御器114は操作部117の操作信号を受けると、まず、接続遮断リレー116を閉じて、電力供給回路115と商用電力系統102を接続する。すると、商用電力系統102の交流電力は、電力供給用ダイオードD501〜D504で構成されたブリッジ回路を介することによって全波整流されて、直流電力として電力供給用コンデンサ501に充電される。ここで、商用電力系統102の電圧はAC200Vで、ピーク電圧は283Vであるので、電力供給用コンデンサ501の電圧はDC283Vまで上昇する。
【0052】
続いて、制御器114は、余剰電力コンバータ110を動作させて、電力供給用コンデンサ501に蓄えられた直流電力をヒータ109で消費させる。このときにヒータ109で消費する電力は、故障・設置検査を行うために必要十分な電流を確保するという観点では、できるだけ大きく設定されることが望ましいが、一方で不要な電力消費を防ぐという観点では、できるだけ小さく設定されるべきであり、本実施の形態では1000Wとする。
【0053】
この一連の動作によって、商用電力系統102の交流電力がヒータ109で消費されることになるので、商用電力系統102から連系点113に向かって5A(=ヒータ109の消費電力/商用電力系統電圧=1000W/200V)電流が流れる。
【0054】
続いて、電流検知器111の故障・設置検査の判定であるが、制御器114は予め定められた判定基準に従って判定を行う。判定基準は、ヒータ109の消費電力や家庭内負荷103の消費電力に応じて設定されるべきであり、本実施の形態では、ヒータ109の消費電力の半分である2.5Aとする。電流値が2.5A以上(正の向き)の場合には、電流検知器111が正しい位置かつ正しい向きで設置されていると認識して、OK判定を、2.5A未満(正の向き)および負の向きの電流の場合には設置位置が間違っている、もしくは向きが間違っている、もしくは故障していると認識して、NG判定をする。
【0055】
ここでまず、図2に示すように、電流検知器111が正しく設置されている場合について説明する。電流検知器111における矢印は、電流検知器111が正と認識する電流の向きを表しており、商用電力系統102から連系点113へ電流が流れる向きが正と認識することを示している。
【0056】
施工者が操作部117に所定の操作を行なうと、制御器114は先に述べた故障・設置検査の動作を開始するので、商用電力系統102から燃料電池発電装置101に5Aの電流が流れる。このとき、電流検知器111は正の向きに5Aの電流が流れているという情報を制御器114に伝達する。制御器114は、伝達された電流値がOKの判定基準である2.5A(正の向き)以上であるので、表示部118に検査結果がOKである旨を表示すると同時に、故障・設置検査の動作を停止する。
【0057】
ところで、電流検知器111が断線等の故障をしていると、制御器114には電流値が0Aであるという情報が伝達されるので、NGの判定基準である2.5A(正の向き)未満に合致することになり、表示部118にNGの表示を行う。
【0058】
続いて、図3に示すように、電流検知器111が正しい位置ではあるが、間違った向きに設置された場合について説明する。故障・設置検査が行なわれて、商用電力系統102から燃料電池発電装置101に5Aの電流が流れる。その時、電流検知器111には5A(負の向き)の電流が検出される。制御器114は、検出された電流値がNGの判定基準である負の向きの電流と合致するので、表示部118にNGである旨を表示する。なお、この時に電流が負の向きであるので、電流検知器111の向きが逆であることを同時に表示することも可能である。
【0059】
続いて、図4に示すように、電流検知器111が、連系点113から家庭内負荷103の間の配線に取り付けられた場合につい説明する。故障・設置検査が行なわれて、商用電力系統102から燃料電池発電装置101に5Aの電流が流れるが、電流検知器111には電流は検出されない(0A)ので、制御器114は検出された電流値がNGの判定基準と合致するとして、表示部118にNGである旨を表示する。
【0060】
ところで、この故障・設置検査のタイミングで家庭内負荷103が動作してしまうと、電流検知器111は電流値を検出してしまう。そのため、家庭内負荷103の消費電流が2.5A以上である場合には、電流検知器111から制御器114に電流値が2.5A(正の向き)であるという情報が伝達されるために、誤ってOK判定をしてしまう可能性がある。
【0061】
しかしながら、この誤判定は、制御器114の判定方法を変更することで回避することが可能である。例えば、故障・設置検査の一連の動作を複数回実施し、その都度毎の判定の多数決や全数一致を採用して最終的なOK/NG判定を行うなどの手法である。また、さらに、多数決判定で全数一致しなかった場合には、ヒータ109で消費させる電力を増加させ、判定基準を変更することによって家庭内負荷103の消費電力の影響を小さくすることができる。
【0062】
具体的には、ヒータ109の消費電力が2000Wになるように余剰電力コンバータ110の出力を増加させて、故障・設置検査を実施する。このとき、商用電力系統102から燃料電池発電装置101に流れる電流は10A(=2000W/200V)となるので、制御器114における判定基準もヒータの消費電流の半分である5A(正の向き)に増加させる。判定基準が5A(正の向き)まで増加するので、家庭内負荷103の消費電流の影響も5Aまでは排除することができ、故障・設置検査の誤判定の可能性を低減することができる。
【0063】
本実施の形態の燃料電池発電装置101は、燃料電池104が発電した直流電力の電圧を昇圧する昇圧コンバータ105と、昇圧コンバータ105で昇圧された高電圧の直流電力を交流電力に変換して商用電力系統102に出力するインバータ106と、インバータ106と商用電力系統102を接続/遮断する解列手段としての解列リレー112と、インバータ105と並列に昇圧コンバータ105に接続され燃料電池104における余剰電力を消費する余剰電力消費手段(本実施の形態では、通電されると発熱して水を温めるヒータ109からなる内部負荷と、内部負荷(ヒータ109)で消費する電力量を制御する余剰電力コンバータ110とで余剰電力消費手段を構成)と、ヒータ109と余剰電力コンバータ110とからなる余剰電力消費手段に商用電力系統102から電力を供給する電力供給手段としての電力供給回路115と、電力供給手段(電力供給回路115)と商用電力系統102を接続/遮断する接続遮断手段としての接続遮断リレー116と、商用電力系統102と連系点113との間を流れる電流を検知する電流検知手段としての電流検知器111と、少なくとも接続遮断手段(接続遮断リレー116)を制御すると共に接続遮断手段(接続遮断リレー116)を制御したときの電流検知手段(電流検知器111)により検知した電流の大きさ及び向きの情報を基に電流検知手段(電流検知器111)の故障の有無及び電流検知手段(電流検知器111)が正しい位置・向きに設置されているか否かを判断する制御手段としての制御器114とを備えた燃料電池発電装置である。
【0064】
この構成によって、接続遮断手段(接続遮断リレー116)を閉じて電力供給手段(電力供給回路115)を介して余剰電力消費手段(ヒータ109と余剰電力コンバータ110)に商用電力系統102の電力を消費させ、商用電力系統102と連系点113の間に設置された電流検知手段(電流検知器111)に電流を検知させることができる。その際に、電流検知手段(電流検知器111)が検出した電流の大きさ及び向きの情報を用いて、電流検知手段(電流検知器111)が故障していないこと、及び正しい位置・向きに設置されていることを検査することができる。その結果として、従来のように電流検知手段(電流検知器111)の故障・設置検査専用の交流負荷を用意する必要がなくなるので、施工コストを低減することができる。
【0065】
また、本実施の形態の燃料電池発電装置101は、余剰電力消費手段を、内部負荷(ヒータ109)と、内部負荷(ヒータ109)で消費する電力量を制御する余剰電力コンバータ110とで構成したので、電力供給手段(電力供給回路115)を介して商用電力系統102の電力を消費する際に、内部負荷(ヒータ109)に依存せずに任意の電力を消費することができ、電流検知手段(電流検知器111)の故障・設置検査の際に、電流検知手段(電流検知器111)が検出する電流が十分な大きさになるように消費電力を調整することができるので、家庭内負荷103の消費電力による誤判定を防止して、電流検知手段(電流検知器111)の故障・設置検査をより高精度に行うことができる。
【0066】
また、本実施の形態の燃料電池発電装置101は、内部負荷を、通電されると発熱して水を温めるヒータ109で構成したので、温められた温水を貯湯タンク108等に蓄え、必要に応じて家庭内へ供給することが可能となり、ヒータ109で消費された電力を有効に活用することができる。
【0067】
また、本実施の形態の燃料電池発電装置101は、ユーザーが操作する操作手段としての操作部117を備え、制御手段(制御器114)は、燃料電池発電装置101への電源投入時、または発電起動時、または操作手段(操作部117)へのユーザー操作時の少なくともいずれかのタイミングで、電力供給手段(電力供給回路115)と商用電力系統102を接続するように接続遮断手段(接続遮断リレー116)を制御するので、燃料電池発電装置101の設置時に、施工者が電流検知手段(電流検知器111)の故障・設置検査を容易に行うことができる。
【0068】
また、本実施の形態の燃料電池発電装置101は、電力供給手段(電力供給回路115)を、電力供給用ダイオードD501〜D504と、電力供給用コンデンサ501を用いた全波整流回路で構成しているので、簡易な構成で電力供給手段(電力供給回路115)を実現することができる。
【0069】
また、本実施の形態の燃料電池発電装置101は、制御手段(制御器114)が判断した電流検知手段(電流検知器111)の故障及び設置に関する情報の少なくともいずれかを表示する表示手段としての表示部118を備えたので、施工者が電流検知手段(電流検知器111)の故障・設置検査の結果を容易に確認することができる。
【0070】
以上のように、本実施の形態においては、燃料電池発電装置101は、接続遮断リレー116、電力供給回路115、および余剰電力コンバータ110を介して、内部のヒータ109で商用電力系統102の電力を消費し、商用電力系統102と連系点113の間に設置された電流検知器111に電流を検知させることができる。その結果として、従来のように燃料電池発電装置101の設置時に、電流検知器111の故障・設置検査専用の交流負荷を用意する必要がなくなるので、施工コストを低減することができる。
【0071】
そして、余剰電力コンバータ110にてヒータ109で消費する電力を任意に制御することができるので、家庭内負荷103の影響等によって電流検知器111の故障・設置検査の誤判定の可能性がある場合のみ、ヒータ109で消費する電力を増加させて、商用電力系統102から連系点113に流れる電流を増加させることができる。それによって、できるだけ少ない電力で、家庭内負荷103の消費電流による誤検知を防止して、電流検知器111の故障・設置検査をより高精度に行うことができる。
【0072】
なお、本実施の形態では余剰電力コンバータ110を降圧チョッパ型コンバータとしたが、昇降圧型コンバータとして構成するのが、より好適である。この場合、よりヒータ109で消費する電力をより広範囲で調整することが可能となる。
【0073】
そして、燃料電池104で発生した余剰電力消費と、電流検知器111の故障・設置検査時の商用電力系統102の電力消費とを水を温めるヒータ109で行うので、温められた温水を貯湯タンク等に蓄え、必要に応じて家庭内へ供給することが可能となり、ヒータ109で消費された電力を有効に活用することができる。
【0074】
そして、電流検知器111の故障・設置検査の判定結果を表示部118に表示するので、施工者が電流検知器の故障・設置検査の結果を容易に確認することができる。また検査結果がNGの場合に、判定理由が電流の向きが反対である場合には、電流検知器111の向きが反対であること合わせて表示することができるので、施工者が施工ミスを容易に修正することができる。
【0075】
なお、本実施の形態では、電流検知器111の故障・設置検査を施工者による操作時としたが、燃料電池発電装置101への電源投入時に自動的に行うようにしてもよい。この場合、設置工事が完了後の電源投入時に必ず電流検知器111の故障・設置検査が行われるので、施工者が万が一操作を忘れた場合にも、設置工事の確認を確実に行うことができる。
【0076】
また、さらに発電が起動される毎に故障・設置検査を行うようにしてもよい。この場合、燃料電池発電装置101および電流検知器111が設置されてから、なんらかの不具合、例えば、落雷による電流検知器111の故障や、他の電気設備の設置等による一時的な電流検知器111付け外し等が発生した場合にも、自動的に故障・設置検査が可能となり、商用電力系統102への逆潮流を確実に防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0077】
以上のように、本発明にかかる燃料電池発電装置は、内部で商用電力系統の電力を消費することができるので、商用電力系統と連系点の間に設置された電流検知器に電流を検知させることができる。その結果として、従来のように燃料電池発電装置の設置時に、電流検知器の故障・設置検査専用の交流負荷を用意する必要がなくなるので、施工時に商用電力系統と連系点に電流を流して施工が正しく行われていることを確認しなければならないような機器全般に、適用することができる。
【符号の説明】
【0078】
101 燃料電池発電装置
102 商用電力系統
104 燃料電池
105 昇圧コンバータ
106 インバータ
109 ヒータ(内部負荷)
110 余剰電力コンバータ
111 電流検知器(電流検知手段)
112 解列リレー(解列手段)
113 連系点
114 制御器(制御手段)
115 電力供給回路(電力供給手段)
116 接続遮断リレー(接続遮断手段)
117 操作部(操作手段)
118 表示部(表示手段)
D501〜D504 電力供給用ダイオード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池が発電した直流電力の電圧を昇圧する昇圧コンバータと、前記昇圧コンバータで昇圧された高電圧の直流電力を交流電力に変換して商用電力系統に出力するインバータと、前記インバータと商用電力系統を接続/遮断する解列手段と、前記インバータと並列に前記昇圧コンバータに接続され前記燃料電池における余剰電力を消費する余剰電力消費手段と、前記余剰電力消費手段に商用電力系統から電力を供給する電力供給手段と、前記電力供給手段と商用電力系統を接続/遮断する接続遮断手段と、商用電力系統と連系点との間を流れる電流を検知する電流検知手段と、少なくとも前記接続遮断手段を制御すると共に前記接続遮断手段を制御したときの前記電流検知手段により検知した電流の大きさ及び向きの情報を基に前記電流検知手段の故障の有無及び前記電流検知手段が正しい位置・向きに設置されているか否かを判断する制御手段とを備えた燃料電池発電装置。
【請求項2】
余剰電力消費手段は、内部負荷と、前記内部負荷で消費する電力量を制御する余剰電力コンバータとを備える請求項1記載の燃料電池発電装置。
【請求項3】
内部負荷が、通電されると発熱して水を温めるヒータである請求項2記載の燃料電池発電装置。
【請求項4】
ユーザーが操作する操作手段を備え、制御手段は燃料電池発電装置への電源投入時、または発電起動時、または前記操作手段へのユーザー操作時の少なくともいずれかのタイミングで、電力供給手段と商用電力系統を接続するように接続遮断手段を制御する請求項1から3のいずれか1項記載の燃料電池発電装置。
【請求項5】
電力供給手段は、ダイオードを用いた整流回路である請求項1から4のいずれか1項記載の燃料電池発電装置。
【請求項6】
制御手段が判断した電流検知手段の故障及び設置に関する情報の少なくともいずれかを表示する表示手段を備えた請求項1から5いずれか1項記載の燃料電池発電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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