説明

燃料電池装置

【課題】簡単な構成で、温度制御と湿度制御とを両立させて安定した発電を行うことができ、小型化を図ることが可能となる燃料電池装置を提供する。
【解決手段】高分子電解質膜に酸化剤極と燃料極が形成された膜電極接合体24と、酸化剤極に酸化剤を供給する酸化剤流路と、燃料極に燃料を供給する燃料流路と、を少なくとも含む燃料電池セル23を有し、
前記燃料電池セルが複数積層された燃料電池スタック11を備えた燃料電池装置であって、
前記酸化剤流路を構成する、燃料電池スタックの横断面と直交する面方向に貫通する開口部と、
前記開口部の一部分を覆うマニホールド12と、
前記マニホールドに設けられ、前記燃料電池スタックにおける発電に最低限必要な空気量を確保するための第一の送風手段13と、
前記マニホールドに設けられた前記燃料電池スタックの湿潤状態を制御するための第二の送風手段14と、を有する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池装置に関し、特に、温度制御と湿度制御とを両立させるようにした燃料電池装置に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池装置は、燃料ガスと空気等の酸化剤ガスを供給して発電する構成を有し、体積あたりの供給可能なエネルギー量が従来の電池に比べて数倍から十倍近くになる可能性を有している。
さらに、燃料を充填することにより、携帯電話、ノートPC等、小型電気機器の長時間連続使用が可能となるため期待されている。
中でも、高分子型燃料電池は、高分子電解質膜、及びその両面に配置された一対の電極からなり、常温に近い温度で使用でき、また電解質膜が液体ではなく固体であるので、安全に持ち運べるという利点を有している。
【0003】
上記高分子型燃料電池は、イオン伝導性によってその性能が左右されるが、このイオン伝導性は、上記高分子電解質膜の湿潤性に大きく依存する。
すなわち、高分子電解質膜の乾燥により導電性が著しく低下し、内部抵抗の増大により燃料電池の出力が低下する(ドライアウト現象)。
従って、高分子型燃料電池の発電には、イオンを伝導するための高分子電解質膜が適度に湿っていることが必要である。
【0004】
一方、過剰に加湿された雰囲気では、酸化剤ガスの流路等が水没し燃料電池の発電が不安定化する(フラッディング現象)。
このため、燃料電池による発電を安定して行うためには、環境雰囲気や発電状況に対応して、温度や湿度を適切に管理する必要がある。
【0005】
従来、燃料電池装置の温度や湿度の管理方式として、セパレートガス方式とディストリビュートガス方式の2つの方式が知られている。
セパレートガス方式では、冷却ガスと酸化剤ガスが独立に供給される。
また、ディストリビュートガス方式では、冷却ガス流路と酸化剤ガス流路の圧力損失に応じて、内部で分配される。
【0006】
従来、セパレートガス方式として、例えば特許文献1では、冷却ガスと酸化剤ガスの個別の流量制御を可能とし、燃料電池の温度と湿度の管理をできるようにした燃料電池システムが提案されている。
このシステムでは、高温の状況下では冷却ガス流量を増大し、低温の状況下では冷却ガス流量を低減すると共に、高湿度の状況下では酸化剤流量を増大し、低湿度の状況下では酸化剤流量を低減するように構成されている。
【0007】
また、従来のディストリビュートガス方式では、酸化剤ガスと冷却ガスの流量は個別に制御することができないため、温度の制御と湿度の制御とが干渉し合い、最適な運転状態を設定するのが困難である。
すなわち、乾燥傾向にあるときは、冷却ガス流量を増大し酸化剤流量を低減するのが好ましいが、ディストリビュートガス方式では、冷却ガス流量の増大に伴い酸化剤流量も増加してしまうという問題を有している。
一方、過加湿傾向にあるときは、冷却ガス流量を低減し酸化剤流量を増大するのが好ましいが、ディストリビュートガス方式では、冷却ガス流量の低減に伴い酸化剤流量も減少してしまうという問題を有している。
このような問題に対処するため、特許文献2に開示されているディストリビュートガス方式による燃料電池システムでは、酸化剤ガスを加湿後に酸化剤流路に供給することによって、燃料電池の温度と湿度の制御を両立させている。
【特許文献1】特開2004−192974号公報
【特許文献2】特開2003−317760号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来例のものにおいては、燃料電池装置の小型化を図る上で、つぎのような課題を有している。
例えば、特許文献1のようなセパレートガス方式のものにおいては、冷却ガスおよび酸化剤ガスを供給するために、それぞれに個別に供給手段を設けることが必要となる。
そのため、これら各供給手段を制御するための制御手段、各ガスの供給手段を設置する空間が必要となり、小型化を図る上で不都合が生じる。
また、特許文献2のようなディストリビュートガス方式では、冷却ガスおよび酸化剤ガスの供給手段を共用できるが、酸化剤ガスを加湿後に酸化剤流路に供給するための加湿器を設けなければならない。
そのため、空間が必要となり、このディストリビュートガス方式においても、小型化を図る上で不都合が生じる。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑み、簡単な構成で、温度制御と湿度制御とを両立させて安定した発電を行うことができ、小型化を図ることが可能となる燃料電池装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、以下のように構成した燃料電池装置を提供するものである。
本発明の燃料電池装置は、高分子電解質膜の対向する面に酸化剤極と燃料極が形成された膜電極接合体と、前記酸化剤極に酸化剤を供給する酸化剤流路と、前記燃料極に燃料を供給する燃料流路と、を少なくとも含む燃料電池セルを有し、
前記燃料電池セルを複数積層して構成された燃料電池スタックを備えた燃料電池装置であって、
前記酸化剤流路を構成する、前記燃料電池スタックの横断面と直交する面方向に貫通する開口部と、
前記開口部の一部分を覆うマニホールドと、
前記マニホールドに設けられ、前記燃料電池スタックにおける発電に最低限必要な空気量を確保するための第一の送風手段と、
前記マニホールドに設けられた前記燃料電池スタックの湿潤状態を制御するための第二の送風手段と、を有することを特徴とする。
また、本発明の燃料電池装置は、前記第一の送風手段が、常時駆動可能な送風手段で構成され、
前記第二の送風手段は、前記燃料電池スタックの湿潤状態に応じて駆動可能な送風手段で構成されていることを特徴とする。
また、本発明の燃料電池装置は、前記第一及び第二の送風手段が、回転数の制御可能な送風ファンで構成され、
前記送風ファンの回転数を制御することによって前記燃料電池スタックにおける発電に最低限必要な空気量を確保する一方、前記燃料電池スタックの湿潤状態を制御することを特徴とする。
また、本発明の燃料電池装置は、前記第二の送風手段が、前記燃料電池スタックにおける、電圧、電圧の時間変化、電圧電流特性、温度あるいは湿度、から選ばれた少なくとも一つ以上の値に基づいて駆動されることを特徴とする。
また、本発明の燃料電池装置は、前記開口部における前記マニホールドに覆われた側から前記マニホールドに覆われていない側に至るまでの流路抵抗が、
前記第一の送風手段より前記マニホールドを経由して前記第二の送風手段に至るまでの流路抵抗よりも大きいことを特徴とする。
また、本発明の燃料電池装置は、前記燃料電池スタックが、前記マニホールド側に突出して設けられた放熱フィンを有することを特徴とする。
また、本発明の燃料電池装置は、前記第一及び第二の送風手段が、前記燃料電池スタックより電力が供給されると共に、前記第一の送風手段には、前記電力が前記第二の送風手段よりも多く供給されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の燃料電池装置によれば、簡単な構成で、温度制御と湿度制御とを両立させて安定した発電を行うことができ、小型化を図ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明の実施形態における燃料電池装置について説明する。
図1に、本実施形態における燃料電池装置を説明するための分解斜視図を示す。1は燃料電池装置、10は燃料タンク、11は燃料電池スタック、12はマニホールド、13は第一の送風手段としての第一の送風ファン、14は第二の送風手段としての第二の送風ファンである。
21はエンドプレート、22はエンドプレート、23は燃料電池セル、24は膜電極接合体、25はセパレータ、26は燃料流路入り口である。
【0013】
本実施形態の燃料電池装置1は、燃料タンク10、燃料電池スタック11、マニホールド12、第一の送風手段としての第一の送風ファン13、第二の送風手段としての第二の送風ファン14より構成される。
燃料タンク10は、水素ガスを充填され、必要な圧力に調圧された水素ガスを燃料電池スタック11に供給する。
本実施形態では、燃料タンク10に貯蔵した水素ガスを用いて発電を行うが、メタノール等の液体燃料を供給してもよい。
燃料電池スタック11は、一組のエンドプレート21、22の間に、複数の燃料電池セル23を積層して構成されている。
また、各燃料電池セル23は、膜電極接合体24とセパレータ25より構成される。
この膜電極接合体24は、高分子電解質膜に対向するそれぞれの面に白金微粒子等よりなる触媒層を形成してあり、一方の触媒層が酸化剤極、他方の触媒層が燃料極となっている。
膜電極接合体24とセパレータ25との間には、ガス拡散層が配置される。
ガス拡散層はカーボンクロスのような反応物を透過する導電性を有するシート材料である。
エンドプレート21には、燃料タンク10を接続して燃料電池スタック11に水素ガスを供給する燃料流路入り口26が設けられる。
【0014】
つぎに、本実施形態のセパレータについて説明する。
図2に、本実施形態のセパレータを説明するための図を示す。
水素ガスは、燃料流路入り口26を通じて各燃料電池の燃料流路31に分配供給される。
燃料流路入り口26と各燃料流路31間の流路は、セパレータ25に設けられた貫通口32を重ね合わせて形成される。
セパレータ25の酸化剤極側には、酸化剤流路が形成される。
図2(a)に示したセパレータは、酸化剤流路33に導電性の多孔質材料を配置した例である。
図2(b)に示すように、セパレータに複数の溝34を形成して酸化剤流路とすることも可能である。
各燃料電池セル23の酸化剤流路は、セパレータの一方の側面(図中手前)に設けられる開口部と、セパレータの他方の側面(図中奥)に設けられる開口部との間を貫通する。
開口部より酸化剤流路に取り入れられる空気は、ガス拡散層を通じて膜電極接合体の酸化剤極に供給される。
酸化剤流路の開口部は燃料電池スタック表面でその一部分がマニホールドによって覆われる。
【0015】
本実施形態の燃料電池装置における送風方向を説明する。
図3に、本実施形態の燃料電池装置における送風方向を説明するための図1中におけるA−A’断面図を示す。
図3において、酸化剤流路の開口部が設けられる燃料電池スタックの一方の表面27(図1中手前)には、開口部を束ねるマニホールド12が形成される。
また、マニホールドで覆われない燃料電池スタック表面の酸化剤流路の開口部28(図1中奥)は、大気に開放される。
マニホールド12には、少なくとも第一と第二の送風ファン13、14が設けられる。送風ファン13、14は駆動により、酸化剤流路あるいはマニホールド内へ空気を流通させる。
燃料電池装置の発電中に、第一の送風ファン13は常時駆動する。一方、第二の送風ファン14は、燃料電池スタックの湿潤状態に応じて駆動する。
マニホールドは燃料電池表面と開口部および送風ファンにより閉鎖空間を形成するが、多少のリークがあって良い。
【0016】
図3(b)、(c)中の矢印は、空気の流れを示した模式図である。
図3(b)は、送風ファン13および14を共に駆動した時の空気の流れを示す。
酸化剤流路の大気に開放された開口部28より導入される空気は、酸化剤流路を流通する。
酸化剤流路を流通する空気は一部の酸素が燃料電池の発電に伴い消費されると共に、発電により発生する水分を含んでマニホールドを経て、各送風ファン13、14より排出される。
図3(c)は、送風ファン13が駆動され、送風ファン14が駆動されていない時の空気の流れを示す。
図3(b)と同様に、開口部28より導入される空気は、酸化剤流路を流通し、開口部27よりマニホールドに放出される。
マニホールドでは、停止状態の送風ファン14よりマニホールドに導入された空気と共に、送風ファン13より排出される。
【0017】
図3(b)と図3(c)を比較した時、酸化剤流路を流通する空気流量(矢印(i))は、図3(b)の方が、図3(c)より大きい。
すなわち、送風ファン14の駆動により酸化剤流路を流通する空気流量が増大し、送風ファン14の駆動を停止すると酸化剤流路を流通する空気流量が減少する。
燃料電池スタックの湿潤状態が乾燥状態であると判断した際には、送風ファン14の駆動を停止する。
これにより、酸化剤流路を流通する空気流量が減少し、燃料電池スタックの湿潤状態を加湿される方向へ制御可能となる。
一方、燃料電池スタックの湿潤状態が過加湿状態であると判断した際には、送風ファン14の駆動を行う。これにより、酸化剤流路を流通する空気流量が増大し、燃料電池スタックの湿潤状態を乾燥する方向へ制御可能となる。
【0018】
このように、湿潤状態の制御のために、第二の送風ファン14の駆動の有無を制御する一方、第一の送風ファン13は常時駆動される。
発電で必要とされる酸素を酸化剤極に供給するために最低限必要な酸化剤流路の空気流量は、送風ファン13の駆動により確保する。
一方、燃料電池スタックの湿潤状態の制御は送風ファン14の駆動の有無により制御可能である。ここでは、送風ファン14の駆動の有無で制御したが、送風ファン14の回転数の制御を含んでも良い。
第一の送風ファン13を常時駆動することにより、発電に必要な最低限の空気流路が確保される。
また、第二の送風ファン14の駆動制御によって、酸化剤流路の空気流量制御が行えるので、燃料電池の湿潤状態に適した湿度制御が可能となる。
【0019】
上述したように、燃料電池スタックの湿潤状態が乾燥状態であると判断した際に、送風ファン14の駆動を停止すると酸化剤流路を流通する空気流量は減少するが、マニホールドを流通する空気流量(矢印(ii))が増大する。
マニホールドを流通する空気流量の増大は、燃料電池スタックからの熱の放熱を促進する効果がある。このため、燃料電池スタックの温度が低減される。
一方、燃料電池スタックの湿潤状態が過加湿状態であると判断した際に、送風ファン14の駆動を行うと酸化剤流路を流通する空気流量は増大するが、マニホールドを流通する空気流量は減少する。
マニホールドを流通する空気流量が減少するので、燃料電池スタックからの放熱が抑制される。このため、燃料電池スタックの温度が上昇する。
【0020】
燃料電池スタックが乾燥状態にあるときに燃料電池スタックの温度を低下すると、酸化剤流路を流通する空気の温度も低下するので空気流量に伴う水分の持ち出しが抑制可能となる。
一方、燃料電池スタックが過加湿状態にあるときに温度が上昇すると、空気流量に伴う水分の持ち出しが増大される。
すなわち、燃料電池の湿潤状態に適した湿度制御と同時に、燃料電池の湿潤状態に適した温度制御が実現される。
本実施の形態によれば、このように簡便な構成と、さらには簡便な制御によって、湿潤状態の微細な制御が可能となる。そのため、小型化に適した燃料電池装置において安定した発電が可能となる。
【0021】
図4は本実施形態の燃料電池装置の制御について説明するための模式図である。
制御回路15は、燃料電池スタック11の出力より電力が供給される。
燃料電池スタックの出力は、例えばDC―DCコンバータを介して外部に電力を供給することも可能である。
制御回路15は、燃料電池の湿潤状態をセンサー16の信号に基づいて判断し、送風ファン14の駆動の有無あるいは回転数を制御する。
送風ファン13は、燃料電池スタックの湿潤状態に関係なく常時駆動される。
燃料電池スタックの湿潤状態は、例えば、該燃料電池スタックにおける、電圧、該電圧の時間変化、出力電流の変化に伴う電圧変化等による電圧電流特性、温度あるいは湿度、から選ばれた少なくとも一つ以上の値に基づいて判断される。
センサー16は、これらの少なくとも一つ以上より選ばれた信号を制御回路に伝える。
これにより、燃料電池の湿潤状態のきめ細かい制御が可能となるので、発電効率の高い駆動が可能となる。
【0022】
以上、送風ファン13、14駆動時の送風方向を図3(b)で示す方向として説明したが、送風ファンの送風方向はこれに限られるものではない。
例えば、図5(a)、(b)、(c)の構成例で示した送風方向に設定しても良い。
図5(a)で示した構成例では、図3(b)と同様に、燃料電池スタックの湿潤状態が乾燥状態であると判断した際には、送風ファン14の駆動を停止する。
一方、燃料電池スタックの湿潤状態が過加湿状態であると判断した際には、送風ファン14の駆動を行う。
図5(b)、(c)で示した構成例では、燃料電池スタックの湿潤状態が過加湿状態であると判断した際には、送風ファン14の駆動を停止する。
一方、燃料電池スタックの湿潤状態が乾燥状態であると判断した際には、送風ファン14の駆動を行う。
【0023】
酸化剤流路を流通する空気流量と、マニホールドを流通する空気流量は、送風ファンやその回転数によって任意に選択できる。
マニホールドに覆われた側からマニホールドに覆われていない側に至るまでの流路抵抗と、第一の送風手段よりマニホールドを経由して前記第二の送風手段に至るまでの流路抵抗によっても設計できる。
例えば、酸化剤流路の開口部面積や流路断面積、導電性の多孔質材料の気孔率、酸化剤流路の溝の形状等によって酸化剤流路の流路抵抗は決定される。
また、マニホールドの流路抵抗は、流路の形状や送風ファンの開口部形状等によって決定される。ここでマニホールドの流路抵抗は、例えば図3(c)の送風ファン14の駆動が停止された状態での流路抵抗を意味する。
【0024】
通常の運転では、燃料電池スタックでの発生水分量を除去するために必要な酸化剤流路を流通する空気流量は、燃料電池スタックでの発熱を放熱するために必要なマニホールドを流通する空気流量よりも少ない。
このため、マニホールドの流路抵抗は、酸化剤流路の流路抵抗より小さく設定することが好ましい。
マニホールドを流通する空気により、燃料電池スタックの発熱を効率的に放熱するためには、例えば図6(a)、(b)で示したセパレータを用いることが可能である。
図6(a)のセパレータは、マニホールド側にセパレータと一体化した放熱フィン35が形成さる。
図6(b)のセパレータは、導電性の多孔質材料がマニホールド側に突出して設けられた構成となっている。
図6(c)は、図6(b)のセパレータを用いた時の、図1中A−A’の断面図である。
このように、燃料電池スタックの構成材料をマニホールド側にはみ出して放熱フィン35とすれば、マニホールドを流通する空気と放熱フィンの接触面積が増大するため、燃料電池スタックより有効に熱を奪うことが可能となる。
マニホールドを流通する空気流量の増大や放熱フィンによって、放熱量の増大可能である。これにより温度制御をより効率的に行えるので、燃料電池の湿潤状態制御が可能な範囲が広がり、より広範囲な環境雰囲気や発電状況においても安定した発電が可能となる。
【0025】
図7は本実施形態において使用可能な送風ファンの構成例を示す。
横軸に送風ファンへの入力電圧、縦軸に送風ファンの回転数を示す。送風ファンの回転数は入力電圧の増大に伴い増加する。
また、一定電圧Vth以下では送風ファンは駆動されない。
図8に、制御回路を不要とした燃料電池装置における、燃料電池スタック11と送風ファン13、14の電気的な接続方法の構成例を示す。
第一の送風ファン13は第二の送風ファン14よりも多くの燃料電池から電力を供給される。
ファンの送風方向は、図3(b)あるいは図5(a)に示した方向とする。
【0026】
燃料電池スタックが適切な湿潤状態にある時、燃料電池スタック内の各燃料電池は所望の出力電圧が出力される。
これにより、送風ファン13、14共にVth以上の電圧が燃料電池より供給される。
送風ファン13、14共に駆動される時の、酸化剤流路内を流通する空気流量は、発電により発生する水分を除去するに十分な流量が確保されるよう設計される。
このため、燃料電池スタックは徐々に乾燥状態へ移行する。
燃料電池スタックが乾燥状態に移行するのに伴い、各燃料電池の出力電圧は徐々に低下する。
【0027】
送風ファン14は、送風ファン13よりも少ない燃料電池から電力が供給されるため、燃料電池の出力電圧の低下により送風ファン13より先に供給電圧がVth以下となる。
すると、送風ファン13は駆動される一方、送風ファン14の駆動は停止される。
このとき、酸化剤流路内を流通する空気流量は、発電により発生する水分を除去するに十分な流量が確保されなくなるよう設計される。
また、マニホールド内の空気流量が増大するので、燃料電池スタックからの放熱量も増大する。酸化剤流路内を流通する空気流量の減少と燃料電池スタックの温度の低下により、燃料電池スタックは、徐々に加湿状態へ移行する。
このように、送風ファンへの電力の供給を燃料電池スタックから行うと同時に、第一の送風ファンは第二の送風ファンよりも多くの燃料電池から電力を供給するように配線すると、燃料電池スタックの湿潤状態をパッシブに制御することが可能となる。
【0028】
本発明の燃料電池は、以上の本実施形態で説明した構成に限定されるものではない。
また、本実施形態の燃料電池装置は、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、プロジェクタ、プリンタ、ノート型パソコン等の持ち運び可能な電子機器に着脱可能に装備される独立したユニットとしても実施できる。
また、電子機器に燃料電池装置の発電部だけを一体に組み込んで、燃料タンクを着脱させる形式でも実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施形態における燃料電池装置を説明するための分解斜視図。
【図2】本発明の実施形態におけるセパレータを説明するための図。
【図3】本発明の実施形態における送風方向を説明するための図1中におけるA−A’断面図。
【図4】本発明の実施形態における燃料電池装置の制御について説明するための模式図。
【図5】本発明の実施形態における図3とは異なる送風方向を説明するための図。
【図6】本発明の実施形態におけるセパレータの構成例を説明するための図である。(a)はマニホールド側にセパレータと一体化した放熱フィンが形成された構成例を示す図。(b)は、導電性の多孔質材料がマニホールド側に突出して設けられた構成例を示す図。(c)は(b)のセパレータを用いた時の、図1中におけるA−A’の断面図。
【図7】本発明の実施形態において利用可能な送風ファンの構成例を説明するための図。
【図8】本発明の実施形態における燃料電池装置と送風ファンの電気的な接続方法を説明するための図。
【符号の説明】
【0030】
1:燃料電池装置
10:燃料タンク
11:燃料電池スタック
12:マニホールド
13:第一の送風手段(第一の送風ファン)
14:第二の送風手段(第二の送風ファン)
15:制御回路
16:センサー
21:エンドプレート
22:エンドプレート
23:燃料電池セル
24:膜電極接合体
25:セパレータ
26:燃料流路入り口
27:マニホールで覆われる開口部
28:マニホールで覆われない開口部
31:燃料流路
32:貫通口
33:導電性の多孔質材料を配置した酸化剤流路
34:溝により形成された酸化剤流路
35:放熱フィン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子電解質膜の対向する面に酸化剤極と燃料極が形成された膜電極接合体と、前記酸化剤極に酸化剤を供給する酸化剤流路と、前記燃料極に燃料を供給する燃料流路と、を少なくとも含む燃料電池セルを有し、
前記燃料電池セルを複数積層して構成された燃料電池スタックを備えた燃料電池装置であって、
前記酸化剤流路を構成する、前記燃料電池スタックの横断面と直交する面方向に貫通する開口部と、
前記開口部の一部分を覆うマニホールドと、
前記マニホールドに設けられ、前記燃料電池スタックにおける発電に最低限必要な空気量を確保するための第一の送風手段と、
前記マニホールドに設けられた前記燃料電池スタックの湿潤状態を制御するための第二の送風手段と、
を有することを特徴とする燃料電池装置。
【請求項2】
前記第一の送風手段は、常時駆動可能な送風手段で構成され、
前記第二の送風手段は、前記燃料電池スタックの湿潤状態に応じて駆動可能な送風手段で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池装置。
【請求項3】
前記第一及び第二の送風手段は、回転数の制御可能な送風ファンで構成され、 前記送風ファンの回転数を制御することによって前記燃料電池スタックにおける発電に最低限必要な空気量を確保する一方、前記燃料電池スタックの湿潤状態を制御することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池装置。
【請求項4】
前記第二の送風手段は、
前記燃料電池スタックにおける、電圧、電圧の時間変化、電圧電流特性、温度あるいは湿度、から選ばれた少なくとも一つ以上の値に基づいて駆動されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の燃料電池装置。
【請求項5】
前記開口部における前記マニホールドに覆われた側から前記マニホールドに覆われていない側に至るまでの流路抵抗が、
前記第一の送風手段より前記マニホールドを経由して前記第二の送風手段に至るまでの流路抵抗よりも大きいことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の燃料電池装置。
【請求項6】
前記燃料電池スタックは、前記マニホールド側に突出して設けられた放熱フィンを有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の燃料電池装置。
【請求項7】
前記第一及び第二の送風手段は、前記燃料電池スタックより電力が供給されると共に、前記第一の送風手段には、前記電力が前記第二の送風手段よりも多く供給されることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の燃料電池装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−146883(P2008−146883A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−329948(P2006−329948)
【出願日】平成18年12月6日(2006.12.6)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】