説明

燃料電池装置

【課題】劣化を低減する燃料電池装置を提供する。
【解決手段】本発明の燃料電池装置1は、原燃料ガスと水とが供給され、水の供給量に応じて燃料ガスを生成する改質部6と、改質部6より燃料ガスと原燃料ガスとを含む混合ガスが供給され、混合ガス中の燃料ガスと酸素含有ガスとを用いて発電する燃料電池モジュール2と、改質部6に水を供給する水供給部と、水供給部の水の供給量を可変させて混合ガス中の燃料ガス濃度を制御する制御部8とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、次世代エネルギーとして、燃料ガス(水素含有ガス)と酸素含有ガス(空気)とを用いて電力を得ることができる燃料電池セルを複数個配列してなるセルスタックを、収納容器内に収納してなる燃料電池モジュールや、燃料電池モジュールを外装ケース内に収納してなる燃料電池装置が種々提案されている。
【0003】
そして、このような燃料電池装置は、燃料ガスを生成するために外部から供給された原燃料と水とを水蒸気改質させて燃料ガスを生成する改質部を備えることが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−059377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、燃料電池装置の起動時(再起動時を含む)に大量の燃料ガスが燃料電池モジュールに急に供給されると、燃料電池装置に備える燃料電池セルが急激に還元されることとなり、燃料電池セルが破損するおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の燃料電池装置は、原燃料ガスと水とが供給され、水の供給量に応じて燃料ガスを生成する改質部と、改質部より燃料ガスと原燃料ガスとを含む混合ガスが供給され、混合ガス中の燃料ガスと酸素含有ガスとを用いて発電する燃料電池モジュールとを備える。また、改質部に水を供給する水供給部と、水供給部の水の供給量を可変させて混合ガス中の燃料ガス濃度を制御する制御部とを備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、燃料電池装置の起動時(再起動時を含む)に大量の燃料ガスが燃料電池セルに急に供給されることを低減し、燃料電池セルが急激に還元されることを抑えることができる。それにより、燃料電池セルの破損を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態に係る燃料電池装置を示すブロック図である。
【図2】(a)は図1に示す燃料電池装置を構成する燃料電池セルスタックの側面図であり、(b)は燃料電池セルスタックの一部を拡大して示す平面図である。
【図3】(a)は図1に示す燃料電池装置に供給される燃料ガス濃度と、燃料電池モジュールの温度を示すグラフである。(b)は他の実施形態である燃料電池装置に供給される燃料ガス濃度と、燃料電池モジュールの温度を示すグラフである。
【図4】本発明の他の実施形態に係る燃料電池装置を示すブロック図である。
【図5】燃料電池装置の起動時における制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の第1の実施形態である燃料電池装置1について図1を用いて説明する。
【0010】
燃料電池装置1は、燃料ガスと酸素含有ガスとを用いて発電する燃料電池モジュール2(以下、モジュール2と略す場合がある。)と、モジュール2に原燃料ガスを供給するための原燃料供給源3と、原燃料ガスと凝縮水タンク5により供給される凝縮水とにより水蒸気改質をして燃料ガスを生成する改質部6と、改質部6から供給される燃料ガスと、酸素含有ガス供給源4から供給された酸素含有ガスとにより発電を行なう燃料電池セルスタック7(以下、セルスタック7と略す場合がある。)と、送られてきた各種信号に対して制御信号を供給する制御装置8を備えている。
【0011】
モジュール2は、収納容器(図示せず)内に備える燃料電池セル(図示せず)の複数個を電気的に直列に接続したセルスタック7により発電しており、発電に使用されなかった燃料ガスおよび酸素含有ガス(空気)はセルスタック7の上方で燃焼させ、水蒸気を含んだ排ガスを排出している。モジュール2の内部にはモジュール2の内部の温度を測定するための燃料電池モジュール温度測定部17(以下、モジュール温度測定部17と略す場合がある。)が設けられている。
【0012】
水蒸気を含んだ排ガスは、モジュール2から排出された後、途中に熱交換器9を通って燃料電池装置1の外部に排出される。排ガスは水素含有ガスを燃焼させることにより生じるため、排ガス中には水蒸気が含まれることとなる。熱交換器9は、排ガスに含まれる水蒸気を冷媒と熱交換することにより、排ガス中に含まれる水蒸気を凝縮させて凝縮水を生成している。熱交換器9を通すことにより生成された凝縮水は、燃料電池装置1における凝縮水ラインL3に供給され、凝縮水タンク5に貯水される。
【0013】
凝縮水ラインL3は、熱交換器9により生成された凝縮水を改質部6に供給するための供給ラインであり、凝縮水タンク5と、凝縮水に含まれる不純物を除去するための凝縮水処理部10と、凝縮水ポンプ11とを備えている。水供給部は、モジュール2に水を供給するための部位であり、凝縮水タンク5、凝縮水処理部10および凝縮水ポンプを備える。
【0014】
凝縮水ラインL3から供給された凝縮水は、改質部6にて燃料ガスを生成する際に使用される。つまり、改質部6にて、原燃料供給源3から供給される原燃料ガスと、凝縮水ラインL3から供給される凝縮水とにより、水蒸気改質を行ない燃料ガスを生成する。水蒸気改質は吸熱反応であることから、モジュール2による燃焼熱を利用して水蒸気改質を行なうことが好ましく、燃料電池装置1では、モジュール2の内部に改質部6を設けた例を示している。それにより、モジュール2の内部で行なわれる燃焼により生じる燃焼熱を効率よく利用することができる。
【0015】
熱交換器9にて排ガスと熱交換する冷媒は冷媒ラインL5を循環しており、冷媒ラインL5は冷媒供給源12と冷媒ポンプ13とにより構成されている。冷媒としては、例えば、水を利用することができ、その場合は冷媒供給源12として水タンクを利用することができる。また、冷媒として水以外に他の液体を用いてもよく、窒素ガス等の気体を用いることもできる。
【0016】
原燃料ラインL1には、原燃料供給源3と、原燃料ポンプ14と、改質部6とを含み、凝縮水ラインL3から供給された凝縮水を改質部6に供給することにより燃料ガスを生成し、モジュール2に供給している。原燃料としては、都市ガス等の炭化水素系ガスや、石油等の液体燃料を用いることができる。原燃料供給源3は、使用する原燃料にあわせてガスボンベやタンク等を使用することができる。原燃料供給部とは、原燃料供給源3と、原燃料ポンプ14と、改質部とを含む原燃料ガスを改質部6に供給するための部位である。
【0017】
原燃料として液体燃料を用いる場合、改質部6に液体の状態で原燃料が供給されると後述する改質触媒に悪影響を与えることがあるため、原燃料を気化させるための気化部を、改質部6よりも上流側に設けてもよい。それにより、改質部6に気体状態の原燃料ガスをモジュール2に供給することができる。また、原燃料として、都市ガス等の炭化水素系ガスを用いる場合においても、気化部にて温度の上昇した原燃料ガスとすることができ、改質部6にて効率のよい改質反応を生じさせることができる。さらに、凝縮水ラインL3から供給される凝縮水を改質部6に供給する必要があるが、凝縮水も気化部にて水蒸気に気化させて改質部6に供給してもよい。
【0018】
改質部6は、原燃料ガスと水を気化させて生成した水蒸気とを改質触媒(図示せず)にて水蒸気改質することにより燃料ガスを生成している。改質部6の内部には改質部6の内部の温度を測定するための改質部温度測定部18が設けられている。改質部温度測定部18は、改質部6の内部の温度が測定できればよく、改質部6の内部に必ずしも設ける必要はない。例えば、改質部6に接するように外部に配置してもよい。
【0019】
改質触媒としては、水蒸気改質するために一般的に用いられている改質触媒を用いることができる。例えば、PtやRb等の金属を担持したものを用いることができる。これらの改質触媒の活性化温度域は、300〜450℃付近で原燃料ガスと水蒸気とが反応し、燃料ガスを生成することができる。なお、各温度における単位時間あたりの燃料ガス(水素)の生成量をそれぞれ測定することにより、単位時間あたりの最も多い燃料ガスの生成量を求めることができる。そして、最も多い燃料ガスの生成量の80%以上の燃料ガスが生成される温度域を改質触媒の活性化温度域とすることができる。
【0020】
水蒸気改質とは、例えば、原燃料ガスとしてメタノールを使った場合には、CHOH+HO→CO+3Hの反応式により燃料ガスである水素を生成することができる。このようにメタノール1モルから水素を3モル生成することができるため、効率のよい改質方法として知られている。
【0021】
酸素含有ガスラインL2には、酸素含有ガス供給源4と、酸素含有ガスポンプ15とを有している。そして、酸素含有ガスはモジュール2に供給され、セルスタック7にて発電に使用されている。酸素含有ガス供給部とは、酸素含有ガス供給源4と、酸素含有ガスポンプ15とを含み、モジュール2に酸素含有ガスを供給するための部位である。酸素含有ガスとしては、酸素や空気を用いることができ、酸素を用いる場合には酸素含有ガス供給部としてガスボンベを用いることができ、空気を用いる場合には酸素含有ガス供給部として外気を用いることができる。
【0022】
排ガスラインL4には、排ガス中に含まれる場合がある有害成分を処理するための排ガス処理部16を有しており、上述したように、排ガスは、モジュール2に供給され、発電に使用されなかった燃料ガスと酸素含有ガスとを混合し燃焼させることにより生成している。そのため、排ガスは、燃焼により生じた水蒸気と、燃焼されなかった燃料ガス、不完全燃焼により生じたCOおよび酸素含有ガスとを含んでいる。排ガスラインL4は、熱交換器9の内部を通って燃料電池装置1の外部に排出されており、温度の高い排ガスに含まれる水蒸気は凝縮され、凝縮水として凝縮水ラインL3に供給される。
【0023】
排ガス処理部16は、有害成分として排ガスに含まれる燃料ガスやCO等の可燃性のガスを燃料電池装置1の外部に排出しないように、排ガスラインL4の下流側に設けられており、燃焼触媒等により構成することができる。燃焼触媒としては、一般的に知られているものを使用することができ、例えば、PtやRb等の金属が担持したものを用いることができる。
【0024】
モジュール温度測定部17や改質部温度測定部18は熱電対やサーミスタを使用することができる。熱電対やサーミスタは計測する温度域に従って、適宜用いればよい。
【0025】
制御部8としては、例えば、CPU,ROM,RAM,入出力インターフェースを主体に構成されるマイクロコンピュータを用いることができる。そして、制御部8は、システムの各部を制御することにより、燃料電池装置1の運転を制御している。
【0026】
また、燃料電池装置1としては、発電効率のよい固体酸化物形燃料電池装置を用いることができる。固体酸化物形燃料電池装置は、通常350〜750℃の高温下で発電しており、燃焼により生じた熱を吸熱反応である水蒸気改質反応に利用している。また、燃焼により発生した温度の高い排ガスの有する熱は、熱交換器9にて冷媒として設けられた給湯用の水と熱交換することにより、水を温めることができ、発電により生じた熱を効率よく利用することができる。
【0027】
図2を用いて燃料電池装置1を構成するセルスタック7および燃料電池セル20について説明する。
【0028】
セルスタック7は、複数個の燃料電池セル20を集電部材28を介して電気的に直列に接続してなり、複数個の燃料電池セル20を配列した両端には燃料電池セル20で発電した電量を外部に引き出すための導電部材29が配置されている。そして、燃料電池セル20の下端部はガラス等のシール材により、燃料電池セル20に燃料ガスを供給するためのガスタンク30に接合されている。
【0029】
また、図2に示す導電部材29は、集電部材28と接続されている平板部29aと、燃料電池セル20の配列方向に沿って外側に向けて延びた形状で、燃料電池セル20の発電により生じる電流を引出すための電流引出し部29bとにより構成されている。
【0030】
そして、燃料電池モジュール2の内部の温度を測定するためのモジュール温度測定部17がセルスタック7の上方に設けられており、モジュール2の内部の温度を測定している。
【0031】
次に図2(a)の一部を拡大した平面図である図2(b)を用いて、燃料電池装置1を構成する燃料電池セル20について説明する。
【0032】
燃料電池セル20は、中空平板型の燃料電池セル20で、全体的に見て柱状の形状をしたNiを含有してなる多孔質の導電性支持体21(以下、支持体21と略す場合がる。)を備えている。支持体21の内部には、適当な間隔で複数の燃料ガス流路22が長手方向に貫通するように形成されており、燃料電池セル20は、この導電性支持体21上に各種の部材が設けられた構造を有している。
【0033】
支持体21は、互いに平行な一対の平坦面nと、一対の平坦面nをそれぞれ接続する弧状面(側面)mとで構成されている。平坦面nの両面は互いにほぼ平行に形成されており、一方の平坦面n(下面)と両側の弧状面mを覆うように多孔質であり、Niを含有してなる燃料極23が設けられており、さらに、この燃料極23を覆うように、緻密質な固体電解質24が積層されている。また、固体電解質24の上には、燃料極23と対面するように、多孔質な酸素極25が積層されている。また、燃料極23および固体電解質24が積層されていない他方の平坦面n(上面)には、固体電解質24とインターコネクタ27との接合を強固にするための密着層26を介してインターコネクタ27が形成されている。
【0034】
燃料極23および固体電解質24は、導電性支持体21の両端の弧状面mを経由して他方の平坦面n(上面)まで形成されており、固体電解質24の両端にインターコネクタ27の両端が位置するように積層され、固体電解質24とインターコネクタ27で支持体21を取り囲み、内部を流通する燃料ガスが外部に漏出しないように構成されている。
【0035】
燃料ガスは、燃料電池セル20の燃料ガス流路22の下端部から上端部に流れ、燃料電池セル20の上方に放出され、燃料電池セル20の上端部で燃焼に使用される。従って、燃料電池セル20の燃焼する側の上端部が下端部よりも高温となっている。
【0036】
図3を用いて、燃料電池装置1の起動時におけるモジュール2に供給される原燃料ガスおよび燃料ガスについて説明する。
【0037】
燃料電池装置1を構成する燃料電池セル20は、導電率を向上させるために支持体21や燃料極23にNi等の金属元素を含有している。燃料電池装置1が発電している間は、燃料電池セル20は、燃料電池セル20の支持体21および燃料極23に、燃料ガス(水素含有ガス)が供給されて発電を行なっている。そのため、支持体21および燃料極23は、還元状態にあり、支持体21や燃料極23に含有されているNiは金属元素の状態で含有されている。
【0038】
しかしながら、燃料電池装置1の作動を停止させると、燃料ガスの供給が停止されることから、燃料電池セル20の支持体21および燃料極23が酸化雰囲気に曝される場合があり、それにより、支持体21や燃料極23に含まれるNi等の金属元素が酸化され、NiO等の金属酸化物として支持体21や燃料極23に含有される場合がある。
【0039】
また、地震、停電、落雷、台風等の自然災害により、燃料電池装置1が緊急停止した場合には、燃料ガスおよび酸素含有ガスの供給を瞬時に停止する制御を行なうことにより、燃料電池セル20が酸化雰囲気に曝される場合がある。
【0040】
そして、燃料ガスが所定の温度域で供給されると、支持体21や燃料極23を構成しているNiO等の金属酸化物がNi等の金属に還元されることとなるが、支持体21および燃料極23に金属酸化物が含有されている状態でこの還元反応が急速に行なわれると、燃料電池セル20の内部に応力が生じ、燃料電池セル20が破損する場合がある。
【0041】
図3(a)に示すように、燃料電池装置1は、燃料ガスおよび原燃料ガス(原燃料を気化させたものも含む)を供給し、所定の温度域においては、モジュール2(燃料電池セル20)に供給される原燃料ガスの濃度よりもモジュール2(燃料電池セル20)に供給される燃料ガスの濃度が小さくなるように水供給部の水供給量を制御している。
【0042】
それにより、燃料電池セル20に急に燃料ガスが共有されないこととなり、燃料電池セル20の支持体21や燃料極23に含有されている金属が金属の酸化物の状態であっても、金属の酸化物が急速に還元されることを低減することができる。そのため、燃料電池セル20の内部に大きな応力が生じることを低減することができ、燃料電池セル20に破損が生じることを抑えることができる。
【0043】
さらに、燃料電池セル20の支持体21や燃料極23に含有される金属の酸化物が還元される所定の温度域においても、燃料ガスの供給をすることにより、支持体21や燃料極23に含有されている金属の酸化物を、金属元素にゆっくりと還元することができる。それにより、支持体21や燃料極23に金属元素の状態でNi等を含有することができ、燃料電池装置1の発電時において、燃料電池セル20の導電率を向上させることができることから、発電効率の向上した燃料電池装置1とすることができる。
【0044】
所定の温度域とは、支持体21や燃料極23に含有される金属元素により異なるが、例えば、金属元素としてNiを用いた場合には、200〜300℃とすることができる。つまり、所定の温度域とは、燃料電池セル20を構成する部材に含まれる金属酸化物が還元され、金属元素となる温度範囲を示す。
【0045】
燃料電池セル20が所定の温度域であるかどうかの判断はモジュール温度測定部17により、検知することができる。モジュール温度測定部17をセルスタック7の上方に配置することで、燃料電池セル20の最も温度が高い部位の温度を測定することができ、燃料電池セル20に含まれる金属酸化物が急激に還元しないように、燃料ガスの供給を制御することができる。
【0046】
また、実験やシミュレーション等によりデータテーブルを作成し、そのデータテーブルに基づいて、モジュール温度測定部17により測定された温度から燃料電池セル20の温度を推定することもできる。それにより、燃料電池セル20に供給される燃料ガスの流量をさらに正確な温度に基づき制御することができる。
【0047】
所定の温度域において、モジュール2に供給される燃料ガスおよび原燃料ガスの量に対する燃料ガスの比率(燃料ガス濃度と称する場合がある)は、他の温度域における燃料ガス濃度よりも低く設定されている。つまり、燃料ガスと原燃料ガスとが混合され、燃料ガス濃度が原燃料ガス濃度よりも低い混合ガスがモジュール2に供給されている。
【0048】
例えば、所定の温度域における燃料ガス濃度を20体積%に設定することができ、それにより、モジュール2を構成する燃料電池セル20が急激に還元することを抑えることができる。燃料ガス濃度は、燃料電池セル20に供給される燃料ガスを燃料電池セル20の内部を流れる流体(混合ガス)で除したものとすることができる。燃料電池セル20の内部を流れる流体とは、原燃料ガス(液体の原燃料を用いた場合には、気化させたもの)、水蒸気、原燃料に含まれる不純物および燃料ガスを挙げることができる。
【0049】
燃料電池セル20の内部を流れる流体(混合ガス)の流量と燃料ガス量との関係は、実験やシミュレーションにより求めることができる。例えば、燃料電池セル20の内部を流れる流体の流量と、各種ガスの供給量に伴い生成される燃料ガスとの関係のデータテーブルを作成し、そのデータテーブルに基づいて、各種原燃料の量を制御して所定の燃料ガス濃度となるように制御してやればよい。
【0050】
所定の温度域における燃料ガス濃度は、燃料電池装置1の構成によって適宜設定することができるが、例えば、10〜30体積%とすることができる。これにより、所定の温度域において、燃料ガスの供給量を減らすとともに、原燃料ガスも供給することから、原燃料ガスおよび燃料ガスを燃焼に用いることができ、燃料電池装置1の起動時間を長くすることなく、燃料電池セル20の還元をゆっくりと行なうことができる。
【0051】
また、燃料電池装置1の通常作動時の燃料ガス濃度は、モジュール2等の構成により適宜設定することができるが、例えば60〜90体積%とすることができる。
【0052】
なお、実験やシミュレーションにより、燃料電池セル20が還元されるまで供給する燃料ガスの量を求めておき、燃料電池セル20に上述した求めた燃料ガスの流量を所定の温度域にて供給した後に、燃料ガス濃度を変更してもよい。それにより、燃料電池セル20を還元することができ、燃料電池装置1の発電効率を向上させることができる。
【0053】
燃料ガス濃度を変更させる手段としては、供給される水蒸気の体積(S)を原燃料ガス
の体積(C)で除したS/Cを変更することにより燃料ガス濃度を変更することができる。つまり、水供給部から改質部6に供給される水供給量を可変させることにより、燃料ガス濃度を変更することができる。例えば、所定の温度域におけるS/Cを、所定の温度域以外におけるS/Cの1.2〜1.8倍にすることにより、燃料ガス濃度を減らすことができる。なお、通常運転時は、例えば、S/Cを1.5〜3とすることができ、モジュール2の温度が所定の温度域にある場合は、S/Cを1.8〜5とすることができる。
【0054】
燃料ガス濃度は、改質部6から燃料電池モジュール2に供給される燃料ガスおよび原燃料ガスを含む流体を、ガスクロマトグラフィーを用いることにより、求めることができる。ガスクロマトグラフィーとしては、熱伝導度型検出器TCDや電子捕獲型検出器ECDを挙げることができ、ガスクロマトグラヴィーを用いて流体に含まれる各種ガス濃度(体積%)を求めることができ、燃料ガス濃度を求めることができる。
【0055】
また、供給される原燃料ガスの量および水蒸気の量から平衡計算により、生成される燃料ガス流量および原燃料ガス流量を算出し、燃料ガス濃度および燃料ガス濃度を求めることもできる。
【0056】
図3(b)を用いて他の燃料ガス濃度の設定の仕方について説明する。図3(b)においてモジュール2の内部の温度Tmが650℃以上の領域は燃料電池装置1が通常作動していることを示す。
【0057】
起動開始時から所定の温度域に達するまでは、所定の温度域における燃料ガス濃度となるように徐々に、燃料ガスを生成している。そして、所定の温度域にモジュール2の温度Tmがある場合に、図3(b)では燃料ガス濃度が20%とあるように、燃料ガス濃度はある一定の値に制御される。
【0058】
モジュール2の温度Tmが所定の温度を超えてから、モジュール2の温度Tmが上昇するまで、ある一定の時間は燃料ガス濃度を変更しないように制御する。これは、所定の温度域付近においても、燃料電池セル20を構成する支持体21や燃料極23が還元する場合があるため、所定の温度域と同様に燃料ガス濃度を通常作動時よりも小さい値に設定することで、燃料電池セル20が急速に還元されることを低減することができる。
【0059】
次に、発電の効率がよいS/Cに設定し、原燃料ガスと水(水蒸気)とを改質部6に供給し、燃料ガスを生成して燃料電池セル20に供給する。燃料電池装置1の通常起動時においても、混合ガスが燃料電池モジュール2に供給されており、混合ガスは、原燃料ガス、CO燃料ガスおよび水蒸気を含んでいる。
【0060】
図3(a)では断続的に燃料ガス濃度が変化し、図3(b)では連続的に変化する例を示したが、燃料ガス濃度は断続的に変化しても、連続的に変化してもよい。所定の温度域における燃料ガス濃度を正確に制御するのならば、所定の温度域における燃料ガス濃度は連続的に変化するように設定し、その他は断続的になるように設定すればよい。
【0061】
なお、所定の温度域付近の所定の温度より高い温度における燃料ガス濃度を一定にした例を示したが、所定の温度付近の所定の温度より低い温度における燃料ガスも一定にしてもよい。それにより、燃料電池セル20の還元を長時間化することができ燃料電池セル20が急速に還元されることを低減することができる。
【0062】
燃料ガス濃度の他の制御方法としては、図1に示すように改質部6に、改質部6の内部の温度を測定する改質部温度測定部18を設け、改質部温度測定部18にて検知された温度に基づいて、改質部6に供給する凝縮水の量を制御する方法が挙げられる。
【0063】
改質部6に備えられている改質触媒の温度が活性化温度域となるように燃料電池装置1は制御されているが、モジュール2の内部の温度が、燃料電池セル20の支持体21や燃料極23に含まれている金属酸化物が還元する温度域である所定の温度域において、改質部6の内部の温度が改質触媒の活性化温度域を下回るように凝縮水を水蒸気改質に使用されるよりも多く供給する制御を行なえばよい。例えば、改質部温度測定部18により測定される温度を250℃となるように、凝縮水を多く供給することで、原燃料ガスが燃料ガスに改質される量が少なくなるので、燃料ガス濃度を下げることができる。供給する水(凝縮水)の量等は実験やシミュレーションに基づいて適宜設定すればよい。
【0064】
制御装置8は、モジュール温度測定部17により検知された温度があらかじめ設定しておいた所定の温度域であるかどうかを判断する。そして、所定の温度域である場合には、あらかじめ設定された燃料ガス濃度となるように原燃料供給ポンプ14と循環水ポンプ11との作動を制御する。また、改質部温度測定部18により測定される温度は改質触媒が活性化する温度に制御する。それにより、水蒸気改質することで、燃料電池セル20が還元する所定の温度域において、燃料ガスおよび原燃料ガスが混合された混合ガスを供給することができ、燃料電池セル20を還元することができる。
【0065】
また、モジュール2の内部の温度が所定の温度域にある場合おいて、燃料ガス濃度を小さくするために、改質部温度測定部18により測定される温度を改質触媒の活性化温度域以下となるように凝縮水を供給してもよい。
【0066】
図4を用いて本発明の第2の実施形態である燃料電池装置31について説明する。
【0067】
燃料電池装置31は、冷媒ラインL5に循環流路32と循環流路32を流れる冷媒の量を制御する弁部33a、33bが設けられている。その他の構成は第1の実施形態に係る燃料電池装置1と同様である。なお、燃料電池装置1と同じ部材については、同じ番号を付している。
【0068】
モジュール2の外部に設けられた冷媒ラインL5が備える循環流路32は、一部がモジュール2の内部に配置されており、改質部6と循環流路32とが接するように設けられている。循環流路32を流れる流量は、弁部33a、33bにより制御されている。弁部としては、循環流路32に流れを切り替えるために電磁弁により設けることができる。また、流量を調整するために電動弁により設けることもできる。
【0069】
循環流路32を流れる冷媒としては、上述したように冷媒ラインL5を流れる冷媒でよいが、冷媒を水とすることで冷媒ラインL5を簡単に設けることができる。
【0070】
循環流路32は、改質部6に接するように配置されており、燃料ガス濃度を調整する手段として用いることができる。例えば、第1の実施形態である燃料電池装置1の場合は、モジュール2の内部の温度が所定の温度であり、燃料ガス濃度を低くしようとした際に、改質部6に水蒸気改質に必要な量よりも多い量の凝縮水を供給することで、改質部6の温度を低減させ、改質触媒が活性化しない温度まで下げることにより、燃料ガス濃度を小さくする制御を行なっているが、第2の実施形態である燃料電池装置31は、循環流路32に冷媒を流すことで、改質部6の温度を低下させることができる。それにより、改質触媒を活性化温度域以下にすることができ、燃料ガス濃度を小さくすることができる。
【0071】
循環流路32に流す冷媒の量は、実験やシミュレーションにより求めたデータテーブルに基づき、改質部6の温度制御と循環流路32を流れる冷媒の量との関係から求めることができる。循環流路32には通常作動時において、冷媒は流れておらず、燃料ガス濃度を
制御する場合や燃料電池装置31の緊急停止時等に循環流路32を流れるように制御される。
【0072】
図5に示すフローチャートを参照して、起動時における循環流路32を流れる冷媒の制御方法について説明する。
【0073】
燃料電池装置31は、外部からの信号として起動スイッチ等の入力が確認されると、起動を開始する(S101)。そして、モジュール温度測定部17の温度が、所定の温度範囲内にあるかどうかを判断する(S102)。所定の温度範囲とは、上述した通り、200〜300℃と設定することができる。制御部8にて、モジュール温度測定部17の温度が所定の温度範囲内にあると検知されるまで、このS102を繰り返し、所定の温度範囲内にあると検知されると次のS103へ向かう。
【0074】
続いて、制御部8は、改質部温度測定部18の温度が、改質触媒の活性化する温度範囲内にあるかどうかを判断する(S103)。改質触媒が活性化する温度を示し上述した通り、300〜450℃と設定することができる。制御部8にて、改質部温度測定部18の温度が改質触媒の活性化する温度範囲内にあると検知されるまで、このS103を繰り返す。なお、改質部6を素早く昇温させるためにヒータ等を設けてもよい。
【0075】
改質触媒の活性化する温度範囲内と検知されると、電動弁33a、33bを制御して循環流路32に冷媒が流れるように制御する(S104)。具体的には電動弁33bを冷媒が循環流路32に多く流れるように制御し、電動弁33aは循環流路32を流れた燃料ガスを循環流路32へ再度流すのではなく、冷媒供給源12を通るように冷媒の流れを制御する。それにより、冷媒供給源12に温度の上昇した冷媒を供給することができる。
【0076】
また、循環流路32を流れた冷媒を冷媒供給源12を通り、熱交換器9を通じて再度、循環流路32に流れるよう電動弁33a、33bを制御することにより、温度の低下した冷媒を循環流路32に供給することができる。
【0077】
モジュール2の内部が所定の温度範囲内の時に、循環流路32を冷媒が流れ、改質部6を冷却することから、改質部6の温度を改質触媒の活性化する温度範囲外、つまりは改質触媒の活性化する温度よりも低くすることができ、燃料ガス濃度を小さくすることができる。それにより、燃料電池セル20が急激に還元されることを低減することができる。
【0078】
そして、モジュール温度測定部17で測定される温度が所定の温度範囲外かどうかを判断する(S105)。制御部8にて、モジュール温度測定部17の温度が所定の温度範囲内にあると検知されるまで、このS105を繰り返す。そして、モジュール温度測定部17で測定される温度が所定の温度範囲外と検知されると、弁部33a、33bを制御して循環流路32に冷媒が供給されないようにする(S106)。
【0079】
弁部33a、33bの制御としては、まず、弁部33bを制御して、循環流路32に冷媒が流れないように制御する。そして、弁部33aは循環流路32から冷媒が流れ込むように電動弁33bを開け、かつ弁部33bから供給された冷媒が冷媒供給源12に流れるように電動弁33aを制御する。そして冷媒ポンプ13は冷媒が流れるように作動し続ける。
【0080】
それにより、循環流路32の内部を流れる冷媒を冷媒供給源12に流すことができる。また、モジュール2内は高温となっているため、冷媒は気体として存在しているため循環流路32の内部で膨張し、冷媒供給源12へと押し出されるようになる。そのため、冷媒ポンプ13を所定時間作動させることで、循環流路32内に冷媒がほぼ存在しないことと
なる。冷媒ポンプを作動させる所定時間は、実験やシミュレーションにより求めることができる。
【0081】
そして、冷媒ポンプ13を所定時間作動させて、循環流路32内の冷媒を冷媒供給源12に供給した後、電動弁33aを制御し、循環流路32に冷媒が流れないようにする。このような制御を経て、燃料電池装置31は通常作動することとなる。
【0082】
燃料電池装置31は、モジュール温度計測部17で測定した温度と改質部温度測定部18により測定した温度に基づいて、燃料ガス濃度よりも原燃料ガス濃度が低い混合ガスを供給し、燃料ガスの流量が、モジュール2に供給される原燃料ガスの流量よりも少なくなるように制御している。そのため、特に燃料電池装置31が緊急停止をした後に、再起動する場合において、燃料電池セル20が急速に還元することを抑えることができる。また、改質部6の温度やモジュール2の温度が下がりきっておらず、高い温度のまま起動するいわゆるホットスタート時においても、モジュール2の内部の温度と、改質部6の温度とを検知してそれぞれの温度に合わせて燃料ガス濃度が小さくなるように制御するため、燃料電池セル20が急速に還元されることを抑えることができ、燃料電池セル20の破損を低減することができる。
【0083】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更、改良等が可能である。
【0084】
例えば、凝縮水ラインL3を設けずに外部に水供給部を設けて、水供給部から改質器に直接水を供給する構成でもよい。また、冷媒ラインL5として給湯システムを用いることにより、給湯器の水を温めるために熱交換させることにより、排ガスの温度を下げることができるとともに、給湯器に温められた湯を供給することができ、効率のよい発電・給湯コージェネレーションシステムとすることができる。なお、この場合、冷媒供給源12は給湯器となる。
【符号の説明】
【0085】
1、31:燃料電池装置
2:燃料電池モジュール
3:原燃料供給源
4:酸素含有ガス供給源
5:凝縮水タンク
6:改質部
7:燃料電池セルスタック
8:制御部
9:熱交換器
10:凝縮水処理部
11:凝縮水ポンプ
12:冷媒供給源
13:冷媒ポンプ
14:原燃料ポンプ
15:酸素含有ガスポンプ
16:排ガス処理部
17:燃料電池モジュール温度測定部
18:改質部温度測定部
20:燃料電池セル
32:循環流路
L1:原燃料ライン
L2:酸素含有ガスライン
L3:凝縮水ライン
L4:排ガスライン
L5:冷媒ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原燃料ガスと水とが供給され、前記水の供給量に応じて燃料ガスを生成する改質部と、該改質部より前記燃料ガスと前記原燃料ガスとを含む混合ガスが供給され、該混合ガス中の前記燃料ガスと酸素含有ガスとを用いて発電する燃料電池モジュールと、
前記改質部に前記水を供給する水供給部と、
該水供給部の前記水の供給量を可変させて前記混合ガス中の燃料ガス濃度を制御する制御部とを備える燃料電池装置。
【請求項2】
前記燃料電池モジュールの温度を測定する燃料電池モジュール温度測定部をさらに備え、
前記制御部は、前記燃料電池モジュール温度測定部により測定された温度が所定の温度域にある場合に、前記水供給部の前記水の供給量を可変させて前記混合ガス中の燃料ガス濃度を制御することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池装置。
【請求項3】
前記改質部の温度を測定する改質部温度測定部をさらに備え、
前記制御部は、前記改質部温度測定部により測定された温度が前記改質部に備える改質触媒の活性化温度域である場合に、前記改質部に供給される前記水の量を、前記水蒸気改質に使用される量よりも多くなるように前記水供給部を制御することを特徴とする請求項1または2に記載の燃料電池装置。
【請求項4】
前記改質部の温度を測定する改質部温度測定部と、
循環水供給部より供給される循環水を循環させる循環水路と、をさらに備え、
該循環水路と前記改質部とが接して配置されているとともに、
前記制御部は、前記改質部温度測定部により測定された温度が前記改質部に備える改質触媒の活性化温度域である場合に、
前記循環流路を流れる前記循環水の水量を増加させるように前記循環水供給部を制御することを特徴とする請求項1または2に記載の燃料電池装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−142225(P2012−142225A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−615(P2011−615)
【出願日】平成23年1月5日(2011.1.5)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】