説明

燃料電池装置

【課題】本発明は、燃料費を抑制しつつ改質水タンクに貯留された水の殺菌処理を行なうことができる燃料電池装置を提供する。
【解決手段】
本発明の燃料電池装置100は、供給された燃料と空気とを利用して電気化学反応により発電する燃料電池スタック1と、改質反応により原料ガスから改質ガスを生成し、これを燃料として燃料電池スタック1に供給する改質器2と、改質器2における改質反応で利用するための水を貯留する改質水タンク6と、空気を供給するための空気供給器7と、発電時に生じる熱を利用して空気供給器7によって供給された空気を加温する残留熱回収熱交換器10と、残留熱回収熱交換器10によって加温された空気によって、改質水タンク6に貯留されている水を加温する改質水加熱熱交換器とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水蒸気改質のための改質水タンクを具備する燃料電池装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高効率でクリーンなエネルギー源の開発が求められており、それに対する一つの候補として燃料電池が注目を浴びている。燃料電池は、水素を含有する燃料ガス(水素リッチなガス)と、酸素を含有する空気等の酸化剤ガスとを電気化学反応(発電反応)させることにより、電力と熱とを同時に発生させる装置である。
【0003】
一般的に燃料電池は、原料ガスと水とを用いて改質反応を行なう水蒸気改質法によって水素を主成分とする改質ガスを生成する。そして、生成された改質ガスに含まれる一酸化炭素を、空気中の酸素と反応させる選択酸化反応を行って燃料ガスを生成する。
【0004】
ところで、水蒸気改質を行う改質器に供給する水としては排ガスから回収した凝縮水などの純水が用いられるが、純水は微生物が発生しやすい環境となる。ここで改質器に供給する水に微生物が生じると、配管閉塞等の不具合の原因となり、それにより燃料電池の運転に悪影響を及ぼす恐れがある。
【0005】
そのため、従来から改質水タンクに貯水され改質器に供給される水に含まれる微生物を殺菌する方法が提案されている(例えば、特許文献1)。より具体的には、特許文献1では、燃料電池装置は水タンクに貯水された水を加熱する加熱部を備え、起動時または再起動時に、この貯水された水を加熱することで殺菌を行う構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−9752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1に開示されている燃料電池では、起動時または再起動時に改質水タンクに貯水された水を加熱するために、外部から加熱用ヒータ運転用のエネルギーを入力する必要があり、燃料費(エネルギーコスト)がかかるという問題があった。
【0008】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、燃料費を抑制しつつ改質水タンクに貯留された水の殺菌処理を行なうことができる燃料電池装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る燃料電池装置は、上記した課題を解決するために、供給された燃料と空気とを利用して電気化学反応により発電する燃料電池セルと、改質反応により原料ガスから改質ガスを生成し、これを前記燃料として前記燃料電池セルに供給する改質器と、前記改質器における改質反応で利用するための水を貯留する改質水タンクと、前記空気を供給するための空気供給器と、前記発電時に生じる熱を利用して前記空気供給器によって供給された空気を加温する第一熱交換器と、前記第一熱交換器によって加温された空気によって、前記改質水タンクに貯留されている水を加温する第二熱交換器と、を備える。
【0010】
上記した構成によると、前記第一熱交換器を備えているため、空気供給器によって供給された空気を、前記発電反応熱を利用して加温することができる。また、前記第二熱交換器を備えているため、加温された空気により前記改質水タンクに貯留されている水を加温することができる。
【0011】
ここで、発電時に生じる熱は、例えば、電気ヒータなどの加温装置などを備え、この加温装置によってわざわざ発生させた熱ではない。つまり、この熱を得るためだけに特に燃料費(エネルギーコスト)をかけて発生させた熱ではない。
【0012】
したがって、本発明に係る燃料電池装置は、燃料費を抑制しつつ改質水タンクに貯留された水の殺菌処理を行なうことができるという効果を奏する。
【0013】
なお、前記発電時に生じる熱とは、燃料電池セルにおける電気化学反応に係る発熱であってもよいし、未利用の燃料と空気との燃焼に係る燃焼熱をも含むものであってもよい。もしくは、電気化学反応に係る発熱と未利用の燃料と空気との燃焼に係る燃焼熱との合計によって、前記改質器における改質反応を賄った際の残余の熱であってもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明は以上に説明したように構成され、燃料費を抑制しつつ改質水タンクに貯留された水の殺菌処理を行なうことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態1に係る燃料電池装置の概略構成の一例を模式的に示すブロック図である。
【図2】図1に示す燃料電池装置における改質水タンク内の改質水の加熱殺菌処理の一例を示すフローチャートである。
【図3】図1に示す実施形態1に係る燃料電池装置の変形例の概略構成の一例を模式的に示すブロック図である。
【図4】本発明の実施形態2に係る燃料電池装置の概略構成の一例を模式的に示すブロック図である。
【図5】図4に示す燃料電池装置における改質水タンク内の改質水の加熱殺菌処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(実施形態1)
[燃料電池装置の構成]
実施形態1に係る燃料電池装置100の構成について、図1を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施形態1に係る燃料電池装置100の概略構成の一例を模式的に示すブロック図である。
【0017】
図1に示すように、実施形態1に係る燃料電池装置100は、燃料電池スタック(燃料電池セル)1、改質器2、蒸発器3、改質水処理器4、改質水ポンプ(ポンプ)5、改質水タンク6、空気供給器7、原料供給器8、排ガス熱交換器9、残留熱回収熱交換器(第一熱交換器)10、改質水加熱熱交換器(第二熱交換器)11、改質水補給弁21、改質水加熱空気流量調整弁(第一弁)22、空気供給弁24、原料供給弁25、改質水供給弁26、改質水供給経路(水供給経路)31、空気供給経路32、原料供給経路33、排ガス経路34、改質水補給経路35、熱媒体経路36、改質水加熱空気供給経路(空気供給経路)37、制御部50、および温度検知器(検出器)70を備えてなる構成である。そして、燃料電池装置100では、燃料電池スタック1、改質器2、蒸発器3、および残留熱回収熱交換器10を、断熱性材料で覆われた一つのケース内に収納し、モジュール化してホットモジュール101を構成している。
【0018】
ここで、燃料電池装置100としては、例えば、固体酸化物形燃料電池(SOFC)、又は溶融炭素塩形燃料電池(MCFC)等の動作温度が高い、いわゆる高温型燃料電池を使用することができる。このため、燃料電池装置100として採用する燃料電池の型式に応じた燃料電池スタック1が使用される。なお、ここでは、燃料電池装置100としてSOFCを利用するものとして説明する。
【0019】
まず、ホットモジュール101を構成する各部の説明について行なう。
【0020】
燃料電池スタック1は、電極触媒と固体酸化物からなる電解質とを備えた単電池である燃料電池セルを複数重ねたものである。燃料電池セルの燃料極(不図示)に供給された燃料ガスと、空気極(不図示)に供給された空気(酸化剤ガス)とを電気化学反応させて電力を発生させる。また、発電に使用されなかった燃料ガス(未利用の燃料ガス)と空気(酸化剤ガス)とは、排ガス経路34にて合流され、ホットモジュール101内で燃焼される。なお、本実施形態において図示していないが、排ガス経路34内において、発電に使用されなかった未利用の燃料ガスと酸素とを燃焼するための空間(燃焼室)が設けられている。
【0021】
ここで、この未利用の燃料ガスと空気との燃焼熱と、燃料電池スタック1における電気化学反応に係る発熱との合計を本実施形態では発電発熱と称するものとする。
【0022】
また、ホットモジュール101ではこの発電発熱は、改質器2における改質反応や、蒸発器3の加熱、さらには、供給空気および原料の加熱に利用されるようになっている。ここで、発電発熱によって改質反応熱や蒸発器3の加熱を賄った残余の排熱を本実施形態では発電排熱と称することとする。そして、本発明に係る発電時に生じる熱は、燃料電池スタック1における電気化学反応に係る発熱であってもよいし、発電発熱であってもよい。あるいは、本発明に係る発電時に生じる熱は、発電排熱であってもよい。
【0023】
なお、図示しないが、燃料電池スタック1は不図示の出力制御部に電気的に接続されており、出力制御部は外部電力負荷と電気的に接続されている。
【0024】
改質器2は、外部から供給された原料と水蒸気との混合ガスから水蒸気改質法によって水素の含有率を高めた改質ガスを生成するものである。この改質ガスが燃料ガスとして燃料電池スタック1に供給される。改質器2は、改質触媒を有しており、改質触媒としては、例えば、アルミナ等の触媒担体にルテニウム(Ru)を担持させたルテニウム系触媒や同様の触媒担体にニッケル(Ni)を担持させたニッケル系触媒等を使用することができる。なお、改質触媒はこれらに限定されるものではなく、水蒸気改質反応を触媒することができれば、どの様な物質を使用してもよい。
【0025】
蒸発器3は、改質器2において水蒸気改質反応を行なうために水蒸気を発生させるものである。蒸発器3は、後述する改質水ポンプ5によって改質水タンク6から供給された改質水を、発電発熱、ならびにホットモジュール101内に設けられた不図示の高温部によって加熱し、水を気化させて水蒸気を発生させる。そして、発生させた水蒸気を改質器2に送る。
【0026】
残留熱回収熱交換器10は、改質水加熱空気供給経路37を通じて空気供給器7から供給された空気にホットモジュール101内の残留熱を伝達させるための熱交換器である。例えば、残留熱回収熱交換器10は、チューブ式熱交換器などにより実現できる。本実施形態では、燃料電池装置100の停止後にホットモジュール101内に蓄えられている発電排熱を残留熱と称するものとする。
【0027】
本実施の形態に係る燃料電池装置100では、上述した構成を有するホットモジュール101に対して、以下のようにして外部から空気(酸化剤ガス)、原料、および水(改質水)等が供給される。さらにまた、このホットモジュール101から発電排熱を有する排ガスが以下のようにして外部に排出される。
【0028】
まず、燃料電池装置100の動作時には、以下のようにしてホットモジュール101内に、空気(酸化剤ガス)、原料ガス、改質水が供給される。
【0029】
すなわち、ホットモジュール101における燃料電池スタック1には、空気供給器7によって、空気供給経路32を通じて空気が供給される。空気供給器7として、例えば、ブロアを用いることができる。また、ホットモジュール101における改質器2には原料供給器8によって、原料供給経路33を通じて原料が供給される。原料供給器8は、原料を流量調整しながら供給できるものであればよい。原料供給インフラ(infrastructure)に接続される原料供給器8として、例えば、流量調整弁、昇圧器及び流量調整弁等を用いることができる。独立の原料供給器8として、例えば、原料ガスボンベ等を用いることができる。また、蒸発器3には、改質水ポンプ5によって、改質水タンク6内に貯水された改質水(凝集水)が、この改質水(凝縮水)から金属イオン等を除去する改質水処理器4を介して供給される。なお、改質水処理器4は、例えば、イオン交換樹脂などにより実現できる。
【0030】
また、燃料電池装置100の動作時には、以下のようにしてホットモジュール101から、燃料電池スタック1での発電時に生じる発電排熱を有する排ガスが排出される。
【0031】
すなわち、ホットモジュール101から発電排熱を有する排ガスが排ガス経路34を通じて、排ガス熱交換器9に流入し、改質水タンク6に向かう。この排ガス熱交換器9には熱媒体経路36を流通する熱媒体も流入している。そして、排ガス熱交換器9は、排ガスと熱媒体(例えば、水)との間で熱交換を行ない、熱媒体を加熱する。これにより、熱媒体は、例えば、蒸気または温水となり二次利用される。一方、この熱交換により排ガスの温度は低下し、排ガス中に含まれる水蒸気は凝縮され、改質水(凝縮水)として改質水タンク6に貯水される。その後、排ガスは大気へと放出される。
【0032】
なお、排ガス熱交換器9に供給される熱媒体の温度は、排ガス中の水蒸気が凝縮されてできる水量が蒸発器3に供給すべき水量と同じとなるような温度であれば良い。例えば40℃以下が好適である。また、上述した排ガス熱交換器9は、例えば、プレート式熱交換器により実現できる。ただし、排ガス熱交換器9は、このプレート式熱交換器に限定されるものではなく、排ガス中の水蒸気が凝縮できる形状のものであればよい。
【0033】
一方、燃料電池装置100の動作停止時には、以下のようにして空気がホットモジュール101内に供給される。すなわち、動作停止指示に応じて制御部50から出力された制御指示により、空気供給弁24を閉状態とし、改質水加熱空気流量調整弁22を開状態とする。そして、空気供給器7から排出される所定量の空気が改質水加熱空気供給経路37を通じて残留熱回収熱交換器10に供給される。この残留熱回収熱交換器10は、改質水加熱空気供給経路37を通じて供給された空気にホットモジュール101内の残留熱を伝達させるための熱交換器である。残留熱回収熱交換器10は、例えば、チューブ式熱交換器などにより実現できる。残留熱回収熱交換器10により加熱された空気は以下のように流通して大気へと放出される。
【0034】
すなわち、残留熱回収熱交換器10により加熱された空気は、改質水加熱空気供給経路37を通じて改質水タンク6内に配置された改質水加熱熱交換器11に供給される。そして、この改質水加熱熱交換器11にて改質水タンク6に貯留されている改質水(凝縮水)と改質水加熱空気供給経路37を通じて供給された空気との間で熱交換を行い、改質水(凝縮水)を加熱するとともに、冷却された空気は大気へと放出される。
【0035】
なお、改質水加熱熱交換器11は、改質水タンク6内の水を所定温度(好ましくは60℃)まで加熱できるものであればよく、例えば、チューブ式熱交換器によって実現できる。
【0036】
改質水タンク6は、排ガス経路34を通じてホットモジュール101から排出される排ガスに含まれる水分が凝縮されて生成された改質水(凝縮水)を貯留するためのタンクである。貯留する水量は、例えば、2Lであるが、得られる凝縮水の水量に応じて、貯留すべき水量は適宜設定される。また、排ガスの凝縮により生成された水量が、蒸発器3に送るべき水量に満たない場合は、制御部50からの指示に応じて改質水補給弁21が開く。そして、熱媒体経路36を流通して排ガス熱交換器9に供給される熱媒体(水)の一部が改質水タンク6に供給され、改質水タンク6内の水を補充できるように構成されている。
【0037】
逆に、排ガスの凝縮により生成された水量が、改質水タンク6の容量を超えるような場合は、オーバーフロー経路(不図示)をさらに設け、このオーバーフロー経路を介して排水できるように構成されている。
【0038】
また、燃料電池装置100は改質水タンク6内の水温が所定の温度に達したことを、この改質水タンク6内に設けられた温度検知器70によって検知できるように構成されている。温度検知器70の検知信号は制御部50に入力され、制御部50は、この温度検知器70の検知信号に基づいて、改質水タンク6内の水温が所定温度に達したことを検知する。
【0039】
なお、本実施の形態においては、燃料電池スタック1、改質器2、蒸発器3、残留熱回収熱交換器10は、ホットモジュール101内に収納される構成としたが、本発明はこれに限られたものではない。例えば、燃料電池スタック1を除く上述した部材のうちのいずれか一部がホットモジュール101の外部にある構成であっても構わないし、ホットモジュールを形成しない構成であっても構わない。
【0040】
[改質水タンク内の改質水の加熱殺菌処理]
以下において、図2を参照して上述した構成を有する燃料電池装置100における改質水タンク6内に貯留する改質水の加熱殺菌処理について説明する。図2は、図1に示す燃料電池装置100における改質水タンク6内の改質水の加熱殺菌処理の一例を示すフローチャートである。
【0041】
まず、燃料電池装置100が運転停止する場合、制御部50が、運転停止モード開始信号を発信する。これにより、燃料電池装置100が運転停止モードを開始する(ステップS11、これ以降S11のように称する)。なお、運転停止モードの開始トリガの一例としては、例えば、不図示の入力部から燃料電池装置100に入力された停止指示などが挙げられる。
【0042】
次に、制御部50は、不図示の出力制御部を制御して外部電力負荷との接続を遮断する(S12)。
【0043】
次に、制御部50は、原料の供給を停止させる(S13)。具体的には、制御部50は、原料供給器8を停止させ、原料供給弁25を閉弁状態とする。これにより、ホットモジュール101への原料供給が停止される。なお、燃料電池装置100は原料供給器8を備えないように構成される場合があるが、このような構成の場合、ステップS13では原料供給弁25の閉弁だけが行なわれる。
【0044】
さらに、制御部50は、改質水の供給を停止する(S14)。具体的には、制御部50は、改質水ポンプ5を停止させ、改質水供給弁26を閉弁状態とする。これにより、ホットモジュール101への改質水供給が停止される。
【0045】
このようにステップS12からS14の各ステップを順次行なうことで、燃料電池スタック1での発電を停止させる。
【0046】
なお、燃料電池スタック1において、燃料ガスが不足している状態で電気回路が遮断されていない場合、いわゆる燃料枯れを起こしてセルの劣化が生じる。このため、まずステップS12で外部電力負荷を遮断し、ステップS13で燃料電池スタック1への燃料ガス(原料)の供給を止める。なお、燃料枯れとは、燃料ガスの流量が発電に必要な量より少ない状態で発電(すなわち、燃料ガスの酸化)が行なわれることである。このような燃料枯れの現象が生じると、燃料極にあるNiが燃料ガスの代わりに酸化し、体積膨張して、燃料電池セルが割れてしまう可能性がある。
【0047】
ところで、燃料電池装置100の運転停止時には、改質水タンク6内にほぼ純水である改質水が貯水されている。このため、燃料電池装置100の運転停止中に、改質水タンク6内において微生物が成長および増殖し、改質水供給経路31の閉塞を引き起こす可能性がある。
【0048】
そこで、制御部50は、改質水加熱空気流量調整弁22の開度を調整するように制御する一方、空気供給弁24を閉弁状態とするように制御する。具体的には、空気供給器7から排出される空気流量が予め設定された所定流量となるように改質水加熱空気流量調整弁22の開度が調整され、所定流量の空気が、改質水加熱空気供給経路37を流通する。このようにして改質水加熱空気供給経路37を流れる空気流量の設定を行なう(S15)。
【0049】
なお、改質水加熱空気供給経路37を流れる空気流量の設定を行なうタイミングとしては、燃料電池装置100の運転停止モード開始直後であっても構わないし、燃料電池スタック1や改質器2内のパージ処理が終了した後であっても構わない。ここでパージ処理とは、燃料電池装置100における、ホットモジュール101内の水素を含むガスを外部へ排出する処理である。
【0050】
改質水加熱空気供給経路37を流通する空気は、残留熱回収熱交換器10によってホットモジュール101内の残留熱を吸熱して温度上昇した後に、改質水加熱熱交換器11に供給される。なお、改質水加熱空気供給経路37を通じて残留熱回収熱交換器10を介して改質水加熱熱交換器11に供給される空気の流量は、次の点を考慮して設定される。すなわち、この空気の流量は、加熱された空気の温度が改質水加熱熱交換器11および排ガス経路34を構成する部材の耐熱温度以下となるように設定される。
【0051】
改質水加熱熱交換器11では、改質水タンク6内の改質水と、残留熱回収熱交換器10から供給された空気との間で熱交換が行なわれる。これにより、改質水タンク6内の改質水を予め設定した微生物を加熱殺菌可能な所定温度まで加熱することができる。その後、この空気は排ガス経路34から排ガスとともに大気へと放出される。このようにして、改質水タンク6内の改質水の加熱殺菌が行なわれる。なお、上述した加熱殺菌可能な所定温度とは、好ましくは略60℃である。
【0052】
そこで、制御部50は、改質水タンク6内に設置された温度検知器70により検知される改質水タンク6内の水温Ttが所定温度(略60℃)以上となったか否か判定する(S16)。ここで、温度検知器70により検知された水温Ttが60℃以上に達した場合(Tt≧60℃)、制御部50は、改質水加熱空気供給経路37への空気の供給を停止させる(S17)。より具体的には、制御部50は、空気供給器7に対して空気の供給を停止するように指示するとともに、改質水加熱空気流量調整弁22には閉弁状態となるように指示する。これにより、改質水加熱空気供給経路37への空気の供給は停止される。なお、Tt<60℃の間では、改質水加熱空気供給経路37への空気の供給は継続される。
【0053】
この後、制御部50は、運転停止モードを終了させる(S18)。
【0054】
以上、本発明の実施の形態により、燃料電池装置100の運転停止時に、改質水タンク6内の水を加熱することにより、改質水タンク6内に貯水された改質水を殺菌することができる。この際、ホットモジュール101内の残留熱で加熱した空気を用いて改質水を加熱するため、電気ヒータ等の外部加熱部を備える必要がなく、殺菌に必要なエネルギーコストを低減することができる。
【0055】
なお、本実施形態においては、図1に示すように、燃料電池スタック1と残留熱回収熱交換器10とを互いに隣接する位置に配置して、残留熱を熱回収しやすい構成としているが、これに限定されるものではない。例えば、図3に示すように、改質器2と残留熱回収熱交換器10とが互いに隣接するように配置された構成としても良い。図3は図1に示す実施形態1に係る燃料電池装置100の変形例の概略構成の一例を模式的に示すブロック図である。すなわち、改質水タンク6内の改質水を所定温度まで加熱するのに必要な熱出力が得られるならば、残留熱回収熱交換器10はホットモジュール101内のいずれの場所に設置しても良い。
【0056】
つまり、この残留熱回収熱交換器10は、ホットモジュール101内における任意の位置に配置することができる。特には、燃料電池スタック1の近傍に配置される。そして、燃料電池スタック1で生じる反応熱等を含む発電発熱を熱源とする残留熱と、改質水加熱空気供給経路37を通過する空気との間で熱交換を行なう構成であることが好ましい。あるいは、残留熱回収熱交換器10は、改質器2の近傍に配置される。そして、改質器2での改質反応を賄った後の発電排熱を熱源とする残留熱と改質水加熱空気供給経路37を通過する空気との間で熱交換を行なう構成としてもよい。
【0057】
また、上記では改質水タンク6内に貯留された改質水を加熱殺菌する構成であった。しかしながら、改質水タンク6内の改質水だけではなく、例えば改質水供給経路31における改質水タンク6と改質水供給弁26との間の配管内にある改質水に菌が発生する場合もある。
【0058】
そこで、実施形態2として、改質水タンク6および配管内にある改質水を併せて殺菌する構成について図4を参照して以下に説明する。図4は、本発明の実施形態2に係る燃料電池装置100の概略構成の一例を模式的に示すブロック図である。
【0059】
(実施形態2)
実施形態2に係る燃料電池装置100は、実施形態2に係る燃料電池装置100と比較して以下の点で相違する。なお、実施形態1に係る燃料電池装置100が備える部材と同じ部材には同じ符号を付しその説明は省略するものとする。
【0060】
図4に示すように、実施形態2に係る燃料電池装置100は、実施形態1に係る燃料電池装置100の構成に加えて、改質水加熱循環経路(循環経路)38および改質水加熱循環経路開閉弁23をさらに備える点で相違する。
【0061】
改質水加熱循環経路38は、改質水タンク6内にある改質水を循環させるための経路である。この改質水加熱循環経路38を流通して循環する改質水は、途中で改質水加熱熱交換器11を通過する。改質水加熱循環経路38は、改質水供給経路31から分岐して、改質水加熱熱交換器11を介して改質水タンク6にもどるように形成されている。改質水供給経路31において、改質水加熱循環経路38との分岐点は、改質水供給弁26が備えられている位置よりも前段(改質水タンク6側)となる。
【0062】
改質水加熱循環経路開閉弁23は、改質水加熱循環経路38への改質水の流入を制御する弁である。改質水加熱循環経路開閉弁23は、改質水加熱循環経路38において改質水加熱熱交換器11の前段に備えられる。
【0063】
また、実施形態2に係る燃料電池装置100は、実施形態1に係る燃料電池装置100の構成と比較して、改質水加熱熱交換器11が改質水タンク6の外部に設置されている点でも相違する。
【0064】
なお、実施形態2に係る燃料電池装置100のように、改質水加熱熱交換器11に改質水を強制的に流動させることができる構成では、この改質水加熱熱交換器11を、例えばプレート式熱交換器により実現できる。
【0065】
このように構成される実施形態2に係る燃料電池装置100は、図5のフローチャートで示すように改質水タンク6内の改質水、および配管内の改質水の加熱殺菌処理を行なう。なお、図5は、図4に示す燃料電池装置100における改質水タンク6内の改質水の加熱殺菌処理の一例を示すフローチャートである。
【0066】
すなわち、図2に示すステップS11と同様に制御部50が運転停止モード開始信号を発信し、運転停止モードを開始させる(S21)。さらに制御部50は、外部電力負荷の遮断(S22)、原料供給の停止(S23)、改質水供給の停止(S24)を順次行ない燃料電池装置100での発電を停止させる。なお、ステップS21〜S23までの処理は、図2に示すステップS11〜13までの処理と同様であるため、その説明は省略する。ステップS24については、図2に示すステップS14と異なり、具体的には、制御部50は、改質水供給弁26を閉弁状態とし、ホットモジュール101への改質水の供給を停止させる。さらに、制御部50は、改質水加熱循環経路開閉弁23の開度を調整し開弁状態とするとともに、改質水ポンプ5により改質水タンク6から汲み上げる改質水の水量を調節するように制御する。これにより、改質水タンク6の改質水が、改質水加熱循環経路38を流通し、改質水加熱熱交換器11を通過して改質水タンク6に戻るように循環する。
【0067】
さらに、制御部50は、改質水加熱空気流量調整弁22の開度を調整するように制御する一方、空気供給弁24は閉弁状態とするように制御する。具体的には、空気供給器7から排出される空気流量が予め設定された所定流量となるように改質水加熱空気流量調整弁22の開度が調整され、所定流量の空気が、改質水加熱空気供給経路37を流通する。このようにして改質水加熱空気供給経路37を流れる空気流量の設定を行なう(S25)。そして、この改質水加熱空気供給経路37を流通する空気は、残留熱回収熱交換器10によってホットモジュール101内の残留熱を吸熱して温度上昇した後に、改質水加熱熱交換器11に供給される。
【0068】
改質水加熱熱交換器11では、改質水加熱空気供給経路37を流れる、残留熱を有する空気と、改質水加熱循環経路38を流れる改質水との間で熱交換が行なわれる。これにより、改質水タンク6内の改質水を予め設定した微生物を加熱殺菌可能な所定温度まで加熱することができる。その後、この空気は排ガス経路34から排ガスとともに大気へと放出される。このようにして、改質水タンク6内の改質水の加熱殺菌が行なわれる。なお、上述した加熱殺菌可能な所定温度とは、好ましくは略60℃である。
【0069】
そこで、制御部50は、改質水タンク6内に設置された温度検知器70により検知された改質水タンク6内の水温Ttが所定温度(略60℃)以上となったか否か判定する(S26)。ここで、温度検知器70により検知された水温Ttが60℃以上に達した場合(Tt≧60℃)、制御部50は、改質水加熱空気供給経路37への空気の供給を停止させる(S27)。より具体的には、制御部50は、空気供給器7に対して空気の供給を停止するように指示するとともに、改質水加熱空気流量調整弁22には閉弁状態となるように指示する。これにより、改質水加熱空気供給経路37への空気の供給は停止される。なお、Tt<60℃の間では、改質水加熱空気供給経路37への空気の供給は継続される。
【0070】
この後、制御部50は、改質水加熱空気供給経路37への空気の供給停止を指示すると、さらに改質水加熱循環経路38への改質水の供給停止を指示する(S28)。より具体的には、制御部50は、改質水ポンプ5による改質水の汲み上げを停止するように制御するとともに、改質水加熱循環経路開閉弁23を閉弁状態となるように制御する。これにより、改質水加熱循環経路38への改質水の供給は停止される。
【0071】
この後、制御部50は、運転停止モードを終了させる(S29)。
【0072】
以上のように改質水タンク6と改質水加熱熱交換器11との間で改質水を循環させ、改質水を加熱することで改質水タンク6内の改質水のみならず、改質水タンク6と改質水供給弁26との間における配管に溜まった改質水についても加熱殺菌を行なうことができる。また、この改質水の加熱殺菌処理を、ホットモジュール101内の残留熱で加熱した空気を用いて行なうため、電気ヒータ等の外部加熱部を備える必要がなく、殺菌に必要なエネルギーコストを低減することができる。
【0073】
なお、上述した実施形態1、2では改質水の加熱殺菌処理の開始タイミングは、運転停止モード開始信号受信直後であったがこのタイミングに限定されるものではない。つまり、ホットモジュール101は断熱材に覆われ、断熱効果が高い構造となっている。したがって、ホットモジュール101内において残留熱が一定期間、高温のまま存在することとなる。そのため、ホットモジュール101内の残留熱が改質水タンク6内の改質水を加熱殺菌できる温度を維持している期間内であれば、運動停止モード開始信号受信から一定の期間経過後であってもよい。ただし、改質水タンク6内の雑菌が成長して所定の大きさよりも大きくなる前に、改質水の加熱殺菌を行なう必要がある。なぜならば、改質水タンク6内の雑菌が所定の大きさよりも大きくなり十分に成長した段階で改質水を加熱殺菌したとしても、その菌の死体により詰まりが生じる可能性があるからである。
【0074】
また、実施形態1、2において上述した改質水の加熱殺菌処理は、運転停止モード開始信号受信直後に1回だけ行なう構成であった。しかしながら、加熱殺菌処理の処理回数は1回に限定されるものではなく、ホットモジュール101内の残留熱により改質水タンク6内の改質水を殺菌できる期間内において数回、実施される構成であってもよい。
【0075】
また、上述した実施形態1、2に係る燃料電池装置100では、制御部50が、温度検知器70により検知された水温Ttが所定の温度(60℃)に達したか否か判定するように構成されていた。そして、温度検知器70により検知された水温Ttが所定の温度(60℃)に達した場合、制御部50は、改質水加熱空気供給経路37への空気供給を停止させるように制御する構成であった。また、実施形態2では、さらに改質水加熱循環経路38への改質水供給を停止させるように制御する構成であった。
【0076】
しかしながら、この構成に限定されるものではない。例えば、事前にホットモジュール101内の残留熱を含む空気をどれだけの期間、流通させれば改質水タンク6内の改質水が所定温度(60℃)に達するか調べておく。そして、温度検知器70の代わりに、制御部50から運転停止モード開始信号が出力されてからの経過時間を計測する計測器を備える。そして、制御部50は、この計測器による計測結果から所定時間を経過したか否か判定する構成であってもよい。そして、所定の時間が経過すると、制御部50は、改質水加熱空気供給経路37への空気供給、さらには改質水加熱循環経路38への改質水供給を停止させるように制御する。
【0077】
さらには、改質水加熱空気供給経路37への空気供給、さらには改質水加熱循環経路38への改質水供給の停止判定を、制御部50は以下の基準に基づいて行なってもよい。すなわち、燃料電池装置100は、実施形態1または実施形態2に示す構成において、温度検知器70と計測器とを共に備える。そして、改質水タンク6内の改質水の水温が所定の温度(60℃)に達した状態が、所定期間継続したか否かについて判定してもよい。
【0078】
また、上述した実施形態1、2に係る燃料電池装置100として、固体酸化物形燃料電池(SOFC)を例に挙げて説明した。しかしながら、既に上述しているように、燃料電池装置100は溶融炭素塩形燃料電池(MCFC)であってもよいし、それ以外の型式の燃料電池であってもよい。少なくとも、改質水を約60℃まで加温できる熱が得られる燃料電池であればよい。
【0079】
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明の燃料電池装置は、燃料電池装置の運転停止時に、少ないエネルギーコストで、改質水タンク内に貯水された水を殺菌することが可能であるので、改質水を貯留する改質水タンクを備えた燃料電池装置において有用である。
【符号の説明】
【0081】
1 燃料電池スタック
2 改質器
3 蒸発器
4 改質水処理器
5 改質水ポンプ
6 改質水タンク
7 空気供給器
8 原料供給器
9 排ガス熱交換器
10 残留熱回収熱交換器
11 改質水加熱熱交換器
21 改質水補給弁
22 改質水加熱空気流量調整弁
23 改質水加熱循環経路開閉弁
24 空気供給弁
25 原料供給弁
26 改質水供給弁
31 改質水供給経路
32 空気供給経路
33 原料供給経路
34 排ガス経路
35 改質水補給経路
36 熱媒体経路
37 改質水加熱空気供給経路
38 改質水加熱循環経路
50 制御部
70 温度検知機構
100 燃料電池装置
101 ホットモジュール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給された燃料と空気とを利用して電気化学反応により発電する燃料電池セルと、
改質反応により原料ガスから改質ガスを生成し、これを前記燃料として前記燃料電池セルに供給する改質器と、
前記改質器における改質反応で利用するための水を貯留する改質水タンクと、
前記空気を供給するための空気供給器と、
前記発電時に生じる熱を利用して前記空気供給器によって供給された空気を加温する第一熱交換器と、
前記第一熱交換器によって加温された空気によって、前記改質水タンクに貯留されている水を加温する第二熱交換器と、を備える燃料電池装置。
【請求項2】
記第一熱交換器によって加温された、前記空気供給器によって供給される空気を、前記第二熱交換器に導くための空気供給経路と、
前記空気供給経路への前記空気の流入を制限するために、該空気供給経路に設けられた第一弁と、
当該燃料電池装置の運転停止時に、前記第一弁が開状態となるように制御する制御部と、を備える請求項1に記載の燃料電池装置。
【請求項3】
前記改質水タンクに貯留された水の温度を検出する検出器を備え、
前記検出器によって検出した前記水の温度が所定の温度に達した場合、前記制御部は、空気の供給を停止するように前記空気供給器を制御する請求項2に記載の燃料電池装置。
【請求項4】
前記燃料電池セルにおける前記電気化学反応は発熱反応であり、
前記第一熱交換器は、前記燃料電池セルの近傍に配置され、前記発熱反応により生じる熱を利用して前記空気供給器によって供給された空気を加温する請求項1から3のいずれか1項に記載の燃料電池装置。
【請求項5】
前記改質器は、前記燃料電池セルにおける前記電気化学反応に係る発熱及び未利用の燃料の燃焼熱を利用して改質反応により原料ガスから改質ガスを生成するよう構成されており、
前記第一熱交換器は、前記改質器の近傍に配置され、前記電気化学反応に係る発熱及び未利用の燃料の燃焼熱を前記改質ガス生成に利用した後の残留熱を利用して前記空気供給器によって供給された空気を加温する請求項1から3のいずれか1項に記載の燃料電池装置。
【請求項6】
前記第二熱交換器は、前記改質水タンク内に貯留された水の中に位置するよう設置されている請求項1から5のいずれか1項に記載の燃料電池装置。
【請求項7】
前記改質水タンクの水を前記改質器に供給するためのポンプと、
前記改質水タンクの水を供給するための水供給経路と、
前記水供給経路から分岐し、前記ポンプによって供給された前記改質水タンクの水を循環させて該改質水タンクに戻すための循環経路と、を備え、
前記第二熱交換器は、前記循環経路上に設置されている請求項1から5のいずれか1項に記載の燃料電池装置。
【請求項8】
固体酸化物型燃料電池または溶融炭酸塩型燃料電池である請求項1から7のいずれか1項に記載の燃料電池装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−4295(P2013−4295A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−133883(P2011−133883)
【出願日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】