説明

燃料電池

【課題】アノード側流路の一の端部を閉塞させた状態で発電を行なう運転モードを有する燃料電池において、燃料ガス流れを面内で均一化させる。
【解決手段】燃料電池は、電解質膜と、電解質膜上の一対の電極と、ガスセパレータと、アノード上のガス拡散層と、ガス拡散層上の第1の流路形成層と、第1の流路形成層とガスセパレータとの間の第2の流路形成層と、を備える。ガス拡散層の面方向圧損ΔPGHと、第1の流路形成層の面方向圧損ΔPC2Hおよび厚さ方向圧損ΔPC2Vと、第2の流路形成層の面方向圧損ΔPC1Hとは、以下の(1)、(2)式の関係を満たし、燃料ガスの流路の一方の端部から燃料ガスの供給を受けつつ、燃料ガス流路の他方の端部を閉塞した状態で発電を行なう。
ΔPC2H>ΔPGH>ΔPC1H …(1)
ΔPGH≧ΔPC2V …(2)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料電池の電池性能を高めるためには、電極面全体に対して、電極活物質を含有する反応ガスを均一に供給することが重要である。電極面全体に対して反応ガスを均一に供給するための構成として、例えば、セパレータ表面において、電極に反応ガスを供給するガス流路が形成される領域に対応する領域の両端部に、ガス流路の幅方向にわたって長孔形状の貫通孔を設けると共に、セパレータ内部において、上記貫通孔と、反応ガスを給排するためのマニホールドとを連通させる受け渡し流路を設ける構成が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−6104号公報
【特許文献2】特開2007−194074号公報
【特許文献3】特開2007−265824号公報
【特許文献4】特開2008−140721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ガス流路の幅方向にわたって設けた長孔形状の貫通孔を介してガス流路に対して反応ガスを給排する場合であっても、ガス流路面全体におけるガス流れを充分に均一化できない場合があった。ガス流れが充分に均一化されず、電極に供給されるガス量にばらつきがあると、電極面において部分的に反応ガスが不足する領域が生じ、電池性能が低下する可能性がある。そのため、更なるガス流れの均一化が求められていた。このようなガス流路面内におけるガス流れの不均一は、燃料ガス(水素ガス)が供給されるアノード側流路の一方の端部から燃料ガスの供給を行ないつつ、アノード側流路の他方の端部を閉塞した状態で発電を行なう運転モードを有する燃料電池のように、燃料ガスの流れが比較的少ない燃料電池においても同様に生じる問題であった。特に、アノード側流路の上記他方の端部を閉塞した状態で発電を行なう際には、電極面上において、燃料ガスの供給口から離れた領域ほどガス流量が少なくなるため、このようにガス流量が少なくなる領域においては、ガス流れの不均一に起因するガス不足がさらに生じやすくなるという問題があった。
【0005】
本発明は、上述した従来の課題を解決するためになされたものであり、アノード側流路の一方の端部から燃料ガスの供給を行ないつつ、他方の端部を閉塞した状態で発電を行なう運転モードを有する燃料電池において、燃料ガスの流路内における燃料ガス流れを面内で均一化させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実施することが可能である。
【0007】
[適用例1]
燃料電池であって、
電解質膜と、
前記電解質膜上に形成された一対の電極と、
ガスセパレータと、
前記一対の電極の一方であるアノード上に設けられ、導電性多孔質体から成ると共に、前記アノードに供給される燃料ガスが流通可能なガス拡散層と、
前記ガス拡散層上に設けられ、前記燃料ガスが流通可能な第1の流路形成層と、
前記第1の流路形成層と前記ガスセパレータとの間に設けられ、前記燃料ガスが流通可能な第2の流路形成層と、を備え、
前記ガス拡散層内を面方向にガスが流れる際の圧損ΔPGHと、前記第1の流路形成層を面方向にガスが流れる際の圧損ΔPC2Hと、前記第1の流路形成層内を厚さ方向にガスが流れる際の圧損ΔPC2Vと、前記第2の流路形成層内を面方向にガスが流れる際の圧損ΔPC1Hとが、以下の(1)式および(2)式の関係を満たし、
前記燃料ガスの流路の一方の端部から前記燃料ガスの供給を受けつつ、前記燃料ガス流路の他方の端部を閉塞した状態で発電を行なう
燃料電池。
ΔPC2H>ΔPGH>ΔPC1H …(1)
ΔPGH≧ΔPC2V …(2)
【0008】
適用例1に記載の燃料電池によれば、第1ないし第2の流路形成層に係る圧損において(1)式および(2)式の関係が成り立つため、アノードに対して、面内で均一に燃料ガスを供給することが可能になる。そのため、アノードにおける部分的に燃料ガスが不足した領域の発生を抑制し、ガス不足に起因する燃料電池の性能低下を抑えることができる。
【0009】
[適用例2]
適用例1記載の燃料電池であって、前記第1の流路形成層および前記第2の流路形成層は、いずれも、導電性多孔質体によって構成されており、前記第1の流路形成層を構成する多孔質体は、前記第2の流路形成層を構成する多孔質体よりも空隙率が小さい燃料電池。適用例2に記載の燃料電池によれば、ガス拡散層上において、圧損が異なる2枚の多孔質体を重ね合わせて配置するという極めて簡素な構成によって第1および第2の流路形成層を形成することができる。そのため、構造の複雑化を抑えつつ、アノードに供給される燃料ガス流れを面内で均一化させるという既述した効果を得ることができる。
【0010】
[適用例3]
適用例1記載の燃料電池であって、前記第1の流路形成層は、導電性多孔質体によって構成され、前記ガスセパレータは、表面に、互いに平行な複数の溝を備える凹凸部が設けられており、前記第2の流路形成層は、前記ガスセパレータと前記第2のガス流路形成層との間において、前記ガスセパレータの表面に設けられた前記凹凸部によって形成される空間によって形成されている燃料電池。適用例3に記載の燃料電池によれば、ガスセパレータ表面に設けた複数の溝を備える凹凸部が形成する空間によって、面方向の圧損ΔPC1Hが小さい第2のガス流路形成層を、容易に形成することができる。
【0011】
[適用例4]
適用例1記載の燃料電池であって、前記第2および第2の流路形成層は、単一の導電性多孔質体によって構成され、前記第1の流路形成層は、前記単一の導電性多孔質体における、前記ガス拡散層と接する側の表面を含む表面近傍領域であって、該表面近傍領域に対して、前記単一の導電性多孔質体内に形成される細孔の細孔径よりも粒径の小さな複数の微粒子を埋め込んでなる領域によって構成されている燃料電池。適用例4に記載の燃料電池によれば、単一の導電性多孔質体の表面近傍領域に複数の微粒子を埋め込むことにより、面方向の圧損が互いに異なる第1および第2の流路形成層を、容易に形成することができる。
【0012】
[適用例5]
燃料電池であって、
電解質膜と、
前記電解質膜上に形成された一対の電極と、
ガスセパレータと、
前記一対の電極の一方であるアノード上に設けられ、前記アノードに供給される燃料ガスが流通可能なガス拡散層と、
前記ガス拡散層上に設けられ、前記燃料ガスが流通可能な第1の流路形成層と、
前記第1の流路形成層と前記ガスセパレータとの間に設けられ、前記燃料ガスが流通可能な第2の流路形成層と、を備え、
前記ガス拡散層と前記第1の流路形成層と前記第2の流路形成層とは、いずれも、全体として均質な導電性多孔質体によって構成され、前記第1の流路形成層の空隙率が最も低く、前記第2の流路形成層の空隙率が最も高く形成されており、
前記ガス拡散層内を面方向にガスが流れる際の圧損ΔPGHが、前記第1の流路形成層内を厚さ方向にガスが流れる際の圧損ΔPC2V以上であり、
前記燃料ガスの流路の一方の端部から前記燃料ガスの供給を受けつつ、前記燃料ガス流路の他方の端部を閉塞した状態で発電を行なう
燃料電池。
【0013】
適用例5に記載の燃料電池によれば、アノードに対して、面内で均一に燃料ガスを供給することが可能になる。そのため、アノードにおける部分的に燃料ガスが不足した領域の発生を抑制し、ガス不足に起因する燃料電池の性能低下を抑えることができる。
【0014】
[適用例6]
適用例1ないし5いずれか記載の燃料電池であって、さらに、前記燃料ガス流路の他方の端部を所定のタイミングで開閉制御する制御部を備える燃料電池。適用例6に記載の燃料電池によれば、燃料ガス流路の他方の端部を閉状態にして発電を行なうときに、アノードに対して、面内で均一に燃料ガスを供給することが可能になる。
【0015】
[適用例7]
適用例1ないし6いずれか記載の燃料電池であって、前記燃料電池は、固体高分子型燃料電池である燃料電池。適用例7に記載の燃料電池によれば、電解質膜を介してカソード側からアノード側へと窒素や水蒸気等の不純物が透過する場合であっても、アノードに対して均一に燃料ガスを供給することができることにより上記不純物の滞留が抑制され、ガス不足に起因する電池性能の低下を抑制する効果を、顕著に得ることができる。
【0016】
本発明は、上記以外の種々の形態で実現可能であり、例えば、燃料電池の製造方法や、燃料電池および燃料電池に反応ガスを供給する装置を備える燃料電池システムなどの形態で実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】燃料電池システム10の概略構成を表わすブロック図である。
【図2】単セル50の概略構成を表わす断面模式図である。
【図3】ガスセパレータ46,47の構成の概略を模式的に表わす平面図である。
【図4】単セル内燃料ガス流路31およびその近傍を拡大して示す断面模式図である。
【図5】圧損を求める際のガスの流れ方向を示す説明図である。
【図6】単セル内燃料ガス流路31内のガス流れを模式的に表わす説明図である。
【図7】単セル150の概略構成を表わす断面模式図である。
【図8】単セル250の概略構成を表わす断面模式図である。
【図9】多孔質体244の様子を拡大して示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
A.システムの全体構成:
図1は、本実施例の燃料電池システム10の概略構成を表わすブロック図である。燃料電池システム10は、発電の本体である燃料電池20と、水素供給部22と、ブロワ24と、冷媒給排部80と、を備えている。
【0019】
燃料電池20は、単セルを複数積層したスタック構造を有している。本実施例の燃料電池20は、固体高分子型燃料電池である。各単セル内には、アノードに供給するための燃料ガスの流路である単セル内燃料ガス流路31と、カソードに供給するための酸化ガスの流路である単セル内酸化ガス流路33とが形成されている。さらに、燃料電池20には、燃料電池20内を単セルの積層方向に貫通する流路として、各々の単セル内燃料ガス流路31に連通する流路である燃料ガス供給マニホールドおよび燃料ガス排出マニホールドが形成されている。さらに、燃料電池20には、燃料電池20内を単セルの積層方向に貫通する流路として、各々の単セル内酸化ガス流路33に連通する流路である酸化ガス供給マニホールドおよび酸化ガス排出マニホールドが形成されている。本実施例の燃料電池20は、単セル内燃料ガス流路31を形成する多孔質層の構成に特徴があるが、燃料電池20の詳しい構成については、後述する。
【0020】
水素供給部22は、燃料ガスとして燃料電池20に供給する水素を貯蔵している。水素供給部22としては、例えば、水素ガスを圧縮して貯蔵する水素ボンベや、水素吸蔵合金を備える水素タンクを用いることができる。ブロワ24は、酸化ガスとして燃料電池20に空気を供給するための装置である。
【0021】
水素供給部22と燃料電池20とは、燃料ガス供給路30によって接続されている。燃料ガス供給路30には、圧力調整弁35が設けられている。圧力調整弁35は、圧力調整弁35よりも下流側における燃料ガス供給路30内の圧力が所定の圧力となるように、圧力調整を行なう。また、燃料ガス供給路30において、圧力調整弁35と燃料電池20との間には、圧力センサ36が設けられている。燃料ガス供給路30は、燃料電池20内に形成される既述した燃料ガス供給マニホールドの端部に接続されている。なお、燃料電池20内に形成される既述した燃料ガス排出マニホールドの端部には、パージ弁37が設けられている。パージ弁37は、燃料電池20の発電時には、後述するパージ処理時を除いて閉状態となっている。
【0022】
ブロワ24と燃料電池20とは、酸化ガス供給路32によって接続されている。酸化ガス供給路32は、燃料電池20内に形成される既述した酸化ガス供給マニホールドの端部に接続されている。また、燃料電池20内に形成された既述した酸化ガス排出マニホールドの端部は、酸化ガス排出路34に接続されている。燃料電池20の発電時には、ブロワ24によって空気の供給が継続して行なわれ、電気化学反応に供された残りのカソード排ガスは、酸化ガス排出路34から排出される。
【0023】
冷媒給排部80は、冷却水などの冷媒が流れる冷媒循環路83と、ラジエータ81と、冷媒循環路83内で冷媒を循環させるポンプ82と、を備えている。燃料電池20の内部には、冷媒が流れる冷媒流路が形成されており、この冷媒流路とラジエータ81とが、冷媒循環路83によって接続されている。燃料電池20では、発電に伴って熱が生じるが、燃料電池20の内部とラジエータ81との間で冷媒を循環させることにより、燃料電池20の内部温度を所定範囲に維持している。
【0024】
燃料電池20は、燃料ガス排出マニホールドの端部に既述したパージ弁37を有しており、燃料ガスが供給されるアノード側流路の一方の端部を閉塞した状態で発電を行なう運転モードを有する燃料電池(以下、アノードデッドエンド型燃料電池と呼ぶ)である。燃料電池20の発電時には、圧力調整弁35によって、圧力調整弁35よりも下流側の燃料ガスの水素圧が所定値に保たれるように、水素供給状態が調節される。すなわち、燃料電池20の発電中には、発電により消費された水素に見合う量の水素が圧力調整弁35を介して燃料電池20側へと供給され続け、各単セル内燃料ガス流路31内の水素圧は、所定の圧力に維持される。
【0025】
上記のように燃料電池20で発電が行なわれる際には、各単セル内において、酸化ガス(空気)中の窒素や、発電に伴ってカソードで生じる水に起因する水蒸気が、カソード側からアノード側へと電解質膜を透過するため、燃料電池20内の燃料ガス流路における燃料ガス(水素ガス)中の窒素濃度および水蒸気濃度が次第に上昇する。このような燃料ガス中の窒素濃度および水蒸気濃度の上昇は、電気化学反応の効率低下につながる可能性がある。そのため、本実施例の燃料電池システム10では、燃料ガス流路内の窒素濃度および/または水蒸気濃度の上昇に対応した所定のタイミングで短時間パージ弁37を開状態とするパージ処理を行ない、燃料ガス流路内における窒素濃度や水蒸気濃度を許容範囲内に抑制している。パージ弁の開弁制御は、例えば、一定時間ごと、あるいは、一定量の発電を行なうごとに行なうことができる。なお、燃料ガス流路内における水蒸気濃度や窒素濃度を許容範囲内に抑えることが可能であれば、上記したパージ弁37およびパージ処理を不要としても良い。
【0026】
B.燃料電池の構成:
図2は、本実施例の燃料電池20を構成する単セル50の概略構成を表わす断面模式図である。単セル50は、MEA(膜−電極接合体、Membrane Electrode Assembly)40と、ガス拡散層41,42と、多孔質体によって構成される第1のガス流路形成層43,第2のガス流路形成層44,第3のガス流路形成層45と、ガスセパレータ46,47と、を順次積層することによって形成される。
【0027】
MEA40は、電解質膜と、電解質膜の両面に形成された触媒電極(アノードおよびカソード)とを備えている。本実施例の燃料電池20は固体高分子型燃料電池であり、電解質膜は、高分子電解質材料、例えばパーフルオロスルホン酸を備えるフッ素系樹脂から成るプロトン伝導性のイオン交換膜によって形成することができる。触媒電極は、電気化学反応を促進する触媒、例えば、白金、あるいは白金と他の金属から成る合金を備えている。具体的には、触媒電極は、例えば、上記した触媒を導電性を有する担体(例えば、カーボン粒子)上に担持させて成る触媒担持粒子を用いて形成することができる。ガス拡散層41,42は、ガス透過性を有する導電性部材、例えば、カーボンペーパやカーボンクロスによって形成することができる。ガス拡散層41は、アノード上に配置されており、ガス拡散層42は、カソード上に配置されている。
【0028】
ガス流路形成層43〜45は、導電性及びガス透過性を有する板状の多孔質体によって構成されている。ここで、第1のガス流路形成層43は、アノード側のガス拡散層41上に面全体で接触するように配置されている。また、第2のガス流路形成層44は、第1のガス流路形成層43とガスセパレータ46との間に、両者と面全体で接触するように配置されている。また、第3のガス流路形成層45は、カソード側のガス拡散層42上に面全体で接触するように配置されている。これらのガス流路形成層43〜45の内部に形成される空間は、電気化学反応に供されるガスの流路を形成する。すなわち、ガス流路形成層43,44は、ガス拡散層41と共に、燃料ガスが流れる単セル内燃料ガス流路31を形成し、ガス流路形成層45は、ガス拡散層42と共に、酸化ガスが流れる単セル内酸化ガス流路33を形成する。
【0029】
このようなガス流路形成層43〜45は、例えばチタンなどの金属から成る多孔質体によって形成することができる。金属多孔質体としては、例えば、発泡金属焼結体や、球状または繊維状の微小な金属を焼結させた焼結体、あるいは、ラスメタル(エキスパンドメタル)やパンチングメタルを用いることができる。本実施例の燃料電池20では、第1のガス流路形成層43と第2のガス流路形成層44とでは、空隙率を異ならせることによって、多孔質体内をガスが流れる際の圧損を異ならせている。本実施例の燃料電池は、ガス拡散層41とガス流路形成層43,44における圧損の関係に特徴があり、これらの詳しい構成については後に詳しく説明する。
【0030】
また、MEA40、ガス拡散層41,42、およびガス流路形成層43〜45の外周部には、図示しないシール部が設けられている。このようなシール部によって、単セル50内のガス流路のシール性が確保される。
【0031】
ガスセパレータ46,47は、ガス不透過な導電性部材、例えば、カーボンを圧縮してガス不透過とした緻密質カーボンや、焼成カーボン、あるいはステンレス鋼などの金属材料により形成されている。ガスセパレータ46,47は、ガス流路形成層44あるいは45と接するように配置されて、MEA40との間に、既述した単セル内燃料ガス流路31あるいは単セル内酸化ガス流路33を形成する。
【0032】
図3(A)は、アノード側に配置されるガスセパレータ46における第2のガス流路形成層44と接する面の様子を表わしており、図3(B)は、カソード側に配置されるガスセパレータ47におけるガス流路形成層45と接する面の様子を表わしている。ガスセパレータ46,47は、その外周部にガスセパレータ46,47を貫通する6つの孔部を備えている。これらの6つの孔部は、燃料電池20の内部で互いに重なり合って、燃料電池内部を積層方向に貫通して流体を導くマニホールドを形成する。長方形状に形成された本実施例のガスセパレータ46,47では、一辺に沿って孔部60,61,62が形成されており、この一辺に対向する辺に沿って孔部63,64,65が形成されている。
【0033】
ガスセパレータ46,47が備える孔部60は、燃料ガスを各単セル内燃料ガス流路31に分配する燃料ガス供給マニホールドを形成し(図3中、H2 inと表わす)、孔部65は、各単セル内燃料ガス流路31から排出される燃料ガスが集合可能な燃料ガス排出マニホールドを形成する(図3中、H2 outと表わす)。また、孔部62は、酸化ガスを各単セル内酸化ガス流路33に分配する酸化ガス供給マニホールドを形成し(図3中、O2 inと表わす)、孔部63は、各単セル内酸化ガス流路33から排出されて集合した酸化ガスを外部へと導く酸化ガス排出マニホールドを形成する(図3中、O2 outと表わす)。さらに、孔部61は、燃料電池20に対して供給された冷媒を燃料電池20内で分配する冷媒供給マニホールドを形成し(図3中、CLT inと表わす)、孔部64は、燃料電池20内を流れて集合した冷媒を外部へと導く冷媒排出マニホールドを形成する(図3中、CLT outと表わす)。
【0034】
図3(A)では、ガスセパレータ46上にガス流路形成層43,44を配置した様子を示している。図3に示すように、ガスセパレータ46の表面には、ガス流路形成層43,44が丁度嵌り込むと共に、ガス流路形成層43,44と孔部60,65とを連通させる凹部66が設けられている。図3(A)に示すように、凹部66には、配置されたガス流路形成層43,44における孔部60寄りの辺に沿って、互いに離間して設けられた複数の突起部69が設けられた分配領域67が形成されており、配置されたガス流路形成層43,44における孔部65寄りの辺に沿って、同様の分配領域68が形成されている。孔部60が形成する燃料ガス供給マニホールドから、ガス流路形成層43,44が形成する単セル内燃料ガス流路31へと燃料ガスが供給される際には、燃料ガスは、ガス流路形成層43,44内へと流入するのに先立って、上記分配領域67が形成する空間内に広がる。ガスセパレータ47においても同様に、ガス流路形成層45が丁度嵌り込むと共に、ガス流路形成層45と孔部62,63とを連通させる凹部70が設けられている。
【0035】
なお、ガスセパレータ46,47の裏面には、孔部61が形成する冷媒供給マニホールドおよび孔部64が形成する冷媒排出マニホールドと連通する冷媒流路を形成するための所定形状の凹部が形成されている。
【0036】
C.単セル内燃料ガス流路の構成およびガス流れ:
図4は、本実施例の燃料電池20が備える単セル50における単セル内燃料ガス流路31およびその近傍を拡大して示す断面模式図である。単セル内燃料ガス流路31は、既述したように、ガス拡散層41と、ガス流路形成層43,44とによって形成されている。ここで、ガス拡散層41の面方向の圧損をΔPGH、厚さ方向の圧損をΔPGV、第1のガス流路形成層43の面方向の圧損をΔPC2H、厚さ方向の圧損をΔPC2V、第2のガス流路形成層44の面方向の圧損をΔPC1H、厚さ方向の圧損をΔPC1Vとする。本実施例の燃料電池では、ガス拡散層41と、ガス流路形成層43,44との間で、以下に(1)式および(2)式として示す関係が成立している。なお、多孔質体の面方向の圧損とは、四角形状の多孔質体に対して、その一辺を成す壁面から、上記一辺に対向する辺を成す壁面側へと多孔質体内にガスを流す際の圧損をいう。図5(A)に、多孔質体における面方向の圧損ΔPHを求める際のガスの流れ方向を示す。また、多孔質体の厚さ方向の圧損とは、多孔質体に対して、その一方の面から他方の面側へとガスを流す際の圧損をいう。図5(B)に、多孔質体における厚さ方向の圧損ΔPVを求める際のガスの流れ方向を示す。本実施例の燃料電池に係る説明においては、ガス拡散層41およびガス流路形成層43,44を構成する各々の多孔質体に対して同じ流量のガスを所定の方向に流したときの圧損に基づいて、各々の多孔質体間で圧損の大小関係を規定している。
【0037】
ΔPC2H>ΔPGH>ΔPC1H …(1)
ΔPGH≧ΔPC2V …(2)
【0038】
(1)式に示すように、第1のガス流路形成層43の面方向の圧損ΔPC2Hが第2のガス流路形成層44の面方向の圧損ΔPC1Hよりも高いため、燃料ガス供給マニホールドから単セル内燃料ガス流路31へと供給された燃料ガスは、第2のガス流路形成層44から第1のガス流路形成層43へと流入して第1のガス流路形成層43内で面方向に広がるのではなく、第2のガス流路形成層44内を面方向に広がりやすくなる。図6は、単セル内燃料ガス流路31内をガスが流れる様子を模式的に表わす説明図である。図6では、第2のガス流路形成層44内を面方向に燃料ガスが広がる経路を経路Aと示し、第2のガス流路形成層44から第1のガス流路形成層43へと流入した燃料ガスが第1のガス流路形成層43内で面方向に広がる経路を経路Bとして示している。また、(1)式に示すように、ガス拡散層41の面方向の圧損ΔPGHが、第2のガス流路形成層44の面方向の圧損ΔPC1Hよりも高いため、単セル内燃料ガス流路31へと供給された燃料ガスは、第2のガス流路形成層44から第1のガス流路形成層43を経由してガス拡散層41内に流入してガス拡散層41内で面方向に広がるのではなく、第2のガス流路形成層44内を面方向に広がりやすくなる。図6では、さらに、第2のガス流路形成層44から第1のガス流路形成層43を経由してガス拡散層41内に流入した燃料ガスがガス拡散層41内で面方向に広がる経路を経路Cとして示している。このように、燃料ガスは、ガス拡散層41や第1の流路形成層43において面方向に広がるよりも、第2の流路形成層44において面方向に広がりやすいため、単セル内燃料ガス流路31に流入した燃料ガスは、まず、第2の流路形成層44内で均一に広がろうとする。
【0039】
また、本実施例の燃料電池では、(1)式に示すように、第1のガス流路形成層43における面方向の圧損ΔPC2Hが大きいため、上記のように第2のガス流路形成層44内を面方向に均一に広がった後に第1の流路形成層43内に流入する燃料ガスは、面方向に流れることが抑えられつつ、厚さ方向に流れる。さらに、本実施例の燃料電池では、(2)式に示すように、ガス拡散層41の面方向の圧損ΔPGHが、第1のガス流路形成層43の厚さ方向の圧損ΔPC2V以上となっている。そのため、第1のガス流路形成層43内を厚さ方向に進んだ燃料ガスが引き続きガス拡散層41内を流れる際には、ガス拡散層41の面方向に流れることが充分に抑制されて、ガス拡散層41内を厚さ方向に流れる。以上より、各々の多孔質体の圧損に関して(1)および(2)式の関係が成り立つ本実施例の燃料電池20の単セル内燃料ガス流路31では、供給された燃料ガスは、一旦はMEA40から離れた第2のガス流路形成層44内で面方向に均一に広がる。そしてその後に燃料ガスは、面内で均一に広がった状態で、面方向への流れが抑制されつつ、第1のガス流路形成層43およびガス拡散層41内を真っ直ぐに厚さ方向に流れて、電極(アノード)に供給されるように導かれる。
【0040】
以上のように構成された本実施例の燃料電池20によれば、単セル内燃料ガス流路31を構成する各多孔質体の圧損に関して(1)式および(2)式の関係が成り立つように構成されているため、ガス拡散層41およびアノードに対して、面内で均一に燃料ガスを供給することが可能になる。そのため、アノードにおける部分的に燃料ガスが不足した領域の発生を抑制し、ガス不足に起因する燃料電池の性能低下を抑えることができる。また、本実施例によれば、ガス拡散層41上において、圧損が異なる2枚の多孔質体であるガス流路形成層43,44を重ね合わせて配置するという極めて簡素な構成によって上記効果を実現している。そのため、構造の複雑化を抑えつつ、アノードに供給する燃料ガス流れを面内で均一化するという上記効果を得ることができる。
【0041】
ここで、燃料ガスの供給を受けつつ燃料ガス排出マニホールドの一の端部を閉塞させた状態で発電を行なう運転モードを有するアノードデッドエンド型燃料電池では、単セル内燃料ガス流路において上流側から燃料ガスが供給される際には、単セル内燃料ガス流路の下流側ほど、発電によって水素が消費されるために燃料ガスの流量が少なくなる。そのため、ガス流量の少ない単セル内燃料ガス流路の下流側ほど、電極面上におけるガス流れの不均一に起因するガス不足が生じやすくなり、電池性能の低下を引き起こしやすくなる。これに対して、本実施例の燃料電池20では、アノードに対する燃料ガスの供給が、アノード面全体で均一化されているため、アノードデッドエンド型燃料電池であっても、アノードにおける局所的なガス不足がアノード面全体で抑制されて、電池性能の低下を抑えることができる。
【0042】
特に、本実施例の燃料電池20のように、固体高分子型の燃料電池では、電解質膜を介して単セル内酸化ガス流路から単セル内燃料ガス流路へと、水蒸気や空気中の窒素等の不純物の流入が起こる。このような不純物は、単セル内燃料ガス流路において、特にガス流れが少ない部位に滞留しやすい。単セル内燃料ガス流路において局所的に不純物が滞留すると、そのような領域では燃料ガスが供給され難くなり、ガス不足がさらに進行して、燃料電池の更なる性能低下を引き起こす可能性がある。本実施例の燃料電池20では、多孔質体における圧損を所定の関係とすることによってガス流れを面内で均一化しているため、相対的にガス流れの少ない部位の発生を抑制することができ、その結果、水蒸気や窒素などの不純物の局所的な滞留を抑制することができる。これにより、局所的なガス不足に起因する電池性能の低下を抑えることができる。
【0043】
なお、各々の多孔質体において同じ流量のガスを所定の方向に流したときの圧損の間で(1)式および(2)式の関係を成り立たせるには、例えばガス流路形成層43,44を発泡金属焼結体によって形成する場合には、用いる発泡剤の割合を高めることによって、第2のガス流路形成層44の空隙率を第1のガス流路形成層43の空隙率よりも高めればよい。このようなガス流路形成層43,44は、内部で均一に細孔が形成された多孔質体によって構成することが望ましく、均質な多孔質体を用いることで、単セル内燃料ガス流路31に供給された燃料ガスを、第2のガス流路形成層44内において充分に均一に面内で広げることが可能になる。
【0044】
また、本実施例では、ガスセパレータ46において、ガス流路形成層43,44におけるマニホールド孔60近傍の辺に沿った領域に分配領域67を形成し、第2のガス流路形成層44における上記辺全体に対して、より均等に燃料ガスを流入可能としているが、分配領域67は設けないこととしても良い。燃料ガス流路の一の端部を閉塞したアノードデッドエンド型燃料電池では、第2のガス流路形成層44が充分に均質な多孔質体によって形成されていれば、分配領域67を設けない場合であっても、面全体に充分に均一に燃料ガスを行き渡らせることが可能になる。
【0045】
上記のように細孔を均一に形成した多孔質体によってガス流路形成層43,44を構成する場合には、ガス流路形成層43,44では、一般には面方向の流路長の方が厚さ方向の流路長よりも遥かに長いため、各々のガス流路形成層では、面方向の圧損の方が厚さ方向の圧損よりも遥かに大きくなる。そのため、ガス拡散層41における面方向の圧損よりも面方向の圧損が大きい第1のガス流路形成層43を設ける際には、その第1のガス流路形成層43の厚さ方向の圧損を、ガス拡散層41の面方向の圧損よりも小さくすることは、容易に実現可能となる。第1のガス流路形成層43の空隙率を小さくして第1のガス流路形成層43におけるガス流れに対する抵抗を大きくするほど、第1のガス流路形成層43の厚さ方向の圧損は大きくなるが、そのような場合であっても、第1のガス流路形成層43の厚さを充分に薄くすることによって、(2)式の関係を成立させることができる。なお、第1のガス流路形成層43においては、全体に均一に細孔を形成しても良いが、細孔の形状を面方向と厚さ方向とで偏向させても良い。例えば、第1のガス流路形成層43内に形成される細孔の形状を、厚さ方向を長手方向とする細孔が3次元的に連通する形状とする場合には、第1のガス流路形成層43における厚さ方向の圧損を抑えつつ、面方向の圧損をより大きくすることが可能になる。
【0046】
ここで、ガス拡散層41および流路形成層43,44を、全体として略均一な分散状態で3次元的に細孔が形成された発泡金属等の多孔質体によって構成する場合には、本実施例の燃料電池は、以下のように規定することもできる。すなわち、ガス拡散層41、流路形成層43,44を構成する多孔質体の空隙率を比較すると、第1の流路形成層43を構成する多孔質体の空隙率が最も低く、第2の流路形成層44を構成する多孔質体の空隙率が最も高い。そして、ガス拡散層41の面方向の圧損ΔPGHは、第1の流路形成層43の厚さ方向の圧損ΔPC2V以上である、と規定することができる。
【0047】
D.変形例:
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0048】
D1.変形例1:
実施例では、単セル内燃料ガス流路31を構成するガス流路形成層43,44共に、多孔質体によって形成したが、異なる構成としても良い。例えば、第2のガス流路形成層44を形成するための多孔質体を設けることなく、アノード側のガスセパレータの表面に設けた凹凸部と第1のガス流路形成層43との間に形成される空間によって、第2のガス流路形成層44を形成しても良い。図7は、このような変形例1の燃料電池を構成する単セル150の概略構成を表わす断面模式図である。図7では、実施例と共通する部分には同じ参照番号を付しており、共通する部分については詳しい説明を省略する。
【0049】
図7に示す単セル150では、MEA40の一方の面上に、実施例と同様にガス拡散層41および第1のガス流路形成層43が配置されているが、第2のガス流路形成層44を形成するための多孔質体を配置することなく、ガスセパレータ146を積層している。ガスセパレータ146は、その表面に、複数の互いに平行な溝状の凹凸部を有しており、この複数の溝状の凹凸部と第1のガス流路形成層43との間に形成される空間によって、第2のガス流路形成層44を形成している。単セル150においては、ガスセパレータ146に形成された複数の溝の各々が形成する流路に対して、ガス供給マニホールドから一様に燃料ガスが供給されるように、上記各々の溝と、燃料ガス供給マニホールドを形成するマニホールド孔60とを連通させれば良い。このように各々の溝が形成する流路に対して燃料ガスを一様に供給することにより、第2のガス流路形成層44における面方向の圧損(マニホールド孔60側からマニホールド孔65側へと第2のガス流路形成層44内を燃料ガスが流れる際の圧損)は、極めて小さくなる。このような燃料電池において、ガス拡散層41およびガス流路形成層43,44の面方向の圧損、すなわち、マニホールド孔60からマニホールド孔65へと燃料ガスが流れる向き(溝流路に平行な向き)の圧損が、既述した(1)式および(2)式を満たす場合には、実施例と同様の効果を奏することができる。
【0050】
なお、図7では、単セル内酸化ガス流路33の構成は実施例と同様としたが、カソード側のガスセパレータにも、アノード側のガスセパレータ146と同様に複数の溝状の凹凸部を設けることとしても良い。この場合には、カソード側のガスセパレータにおける上記凹凸部を形成した表面は、ガス拡散層42と直接接するように配置すればよい。
【0051】
D2.変形例2:
実施例では、ガス流路形成層43,44を、別体で用意した空隙率の異なる2つの多孔質体によって形成したが、異なる構成としても良い。例えば、ガス流路形成層43,44全体を単一の多孔質体によって形成することとして、多孔質体におけるガス拡散層41と接する表面を含む表面近傍領域に対して複数の微粒子を埋め込んで、微粒子を埋め込んだ領域を第1のガス流路形成層43としても良い。図8は、変形例2の燃料電池を構成する単セル250の概略構成を表わす断面模式図である。図8では、実施例と共通する部分には同じ参照番号を付しており、共通する部分については詳しい説明を省略する。
【0052】
図8に示す単セル250では、ガス拡散層41とガスセパレータ46との間に、単一の多孔質体である多孔質体244が配置されている。この多孔質体244におけるガス拡散層41側の表面近傍の領域には、多数の微粒子243が埋め込まれている。図9は、一方の表面に微粒子243が埋め込まれた多孔質体244の様子を拡大して示す模式図である。多孔質体244の表面に埋め込む微粒子243は、例えば、カーボン粒子を用いることができる。微粒子243は、多孔質体244内に形成される細孔の細孔径よりも小さく、燃料電池内で充分に安定な材料によって構成されていればよいが、導電性を有する材料によって構成するならば、微粒子243の埋め込みに起因する燃料電池の内部抵抗の上昇を抑制することができる。多孔質体244の表面近傍領域に対する微粒子243の埋め込みは、例えば、微粒子243を含有する微粒子含有インクを作製して、この微粒子含有インクを、多孔質体244の表面に、スプレー法等によって塗布することにより行なえばよい。上記微粒子含有インクは、バインダとしての樹脂をさらに含有していても良い。
【0053】
このような微粒子243の埋め込みにより、多孔質体244におけるガス拡散層41側の表面近傍領域では、細孔径が実質的に小さくなり、残余の領域に比べて空隙率が低くなる。これにより、多孔質体244における微粒子243が埋め込まれた領域では、面方向および厚さ方向の流路抵抗が増加し、面方向および厚さ方向の圧損が高まる。変形例2の燃料電池では、多孔質体244における微粒子243が埋め込まれた領域が、面方向の圧損が比較的大きい第1のガス流路形成層43となり、埋め込まれていない残余の領域が、面方向の圧損が比較的小さい第2のガス流路形成層44となる。ガス拡散層41と、上記ガス流路形成層43,44における圧損が、既述した(1)式および(2)式を満たす場合には、実施例と同様の効果を奏することができる。
【0054】
D3.変形例3:
実施例では、燃料電池は固体高分子型燃料電池としたが、異なる種類の燃料電池においても、本発明を同様に適用することができる。例えば、固体酸化物型の燃料電池において本願構成を適用することとしても良い。いずれの種類の燃料電池を用いる場合であっても、アノード側流路の一の端部を閉塞しつつアノード側流路に対して燃料ガスを供給して発電を行なわせる運転モードを有する燃料電池であれば、本発明を適用することにより、単セル内燃料ガス流路における燃料ガス流れを面内で均一化して、実施例と同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0055】
10…燃料電池システム
20…燃料電池
22…水素供給部
24…ブロワ
30…燃料ガス供給路
31…単セル内燃料ガス流路
32…酸化ガス供給路
33…単セル内酸化ガス流路
34…酸化ガス排出路
35…圧力調整弁
36…圧力センサ
37…パージ弁
40…MEA
41,42…ガス拡散層
43…第1のガス流路形成層
44…第2のガス流路形成層
45…第3のガス流路形成層
46,47,146…ガスセパレータ
50,150,250…単セル
60〜65…孔部
66…凹部
67,68…分配領域
69…突起部
70…凹部
80…冷媒給排部
81…ラジエータ
82…ポンプ
83…冷媒循環路
243…微粒子
244…多孔質体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池であって、
電解質膜と、
前記電解質膜上に形成された一対の電極と、
ガスセパレータと、
前記一対の電極の一方であるアノード上に設けられ、導電性多孔質体から成ると共に、前記アノードに供給される燃料ガスが流通可能なガス拡散層と、
前記ガス拡散層上に設けられ、前記燃料ガスが流通可能な第1の流路形成層と、
前記第1の流路形成層と前記ガスセパレータとの間に設けられ、前記燃料ガスが流通可能な第2の流路形成層と、を備え、
前記ガス拡散層内を面方向にガスが流れる際の圧損ΔPGHと、前記第1の流路形成層を面方向にガスが流れる際の圧損ΔPC2Hと、前記第1の流路形成層内を厚さ方向にガスが流れる際の圧損ΔPC2Vと、前記第2の流路形成層内を面方向にガスが流れる際の圧損ΔPC1Hとが、以下の(1)式および(2)式の関係を満たし、
前記燃料ガスの流路の一方の端部から前記燃料ガスの供給を受けつつ、前記燃料ガス流路の他方の端部を閉塞した状態で発電を行なう
燃料電池。
ΔPC2H>ΔPGH>ΔPC1H …(1)
ΔPGH≧ΔPC2V …(2)
【請求項2】
請求項1記載の燃料電池であって、
前記第1の流路形成層および前記第2の流路形成層は、いずれも、導電性多孔質体によって構成されており、
前記第1の流路形成層を構成する多孔質体は、前記第2の流路形成層を構成する多孔質体よりも空隙率が小さい
燃料電池。
【請求項3】
請求項1記載の燃料電池であって、
前記第1の流路形成層は、導電性多孔質体によって構成され、
前記ガスセパレータは、表面に、互いに平行な複数の溝を備える凹凸部が設けられており、
前記第2の流路形成層は、前記ガスセパレータと前記第2のガス流路形成層との間において、前記ガスセパレータの表面に設けられた前記凹凸部によって形成される空間によって形成されている
燃料電池。
【請求項4】
請求項1記載の燃料電池であって、
前記第1および第2の流路形成層は、単一の導電性多孔質体によって構成され、
前記第1の流路形成層は、前記単一の導電性多孔質体における、前記ガス拡散層と接する側の表面を含む表面近傍領域であって、該表面近傍領域に対して、前記単一の導電性多孔質体内に形成される細孔の細孔径よりも粒径の小さな複数の微粒子を埋め込んでなる領域によって構成されている
燃料電池。
【請求項5】
燃料電池であって、
電解質膜と、
前記電解質膜上に形成された一対の電極と、
ガスセパレータと、
前記一対の電極の一方であるアノード上に設けられ、前記アノードに供給される燃料ガスが流通可能なガス拡散層と、
前記ガス拡散層上に設けられ、前記燃料ガスが流通可能な第1の流路形成層と、
前記第1の流路形成層と前記ガスセパレータとの間に設けられ、前記燃料ガスが流通可能な第2の流路形成層と、を備え、
前記ガス拡散層と前記第1の流路形成層と前記第2の流路形成層とは、いずれも、全体として均質な導電性多孔質体によって構成され、前記第1の流路形成層の空隙率が最も低く、前記第2の流路形成層の空隙率が最も高く形成されており、
前記ガス拡散層内を面方向にガスが流れる際の圧損ΔPGHが、前記第1の流路形成層内を厚さ方向にガスが流れる際の圧損ΔPC2V以上であり、
前記燃料ガスの流路の一方の端部から前記燃料ガスの供給を受けつつ、前記燃料ガス流路の他方の端部を閉塞した状態で発電を行なう
燃料電池。
【請求項6】
請求項1ないし5いずれか記載の燃料電池であって、さらに、
前記燃料ガス流路の他方の端部を所定のタイミングで開閉制御する制御部を備える
燃料電池。
【請求項7】
請求項1ないし6いずれか記載の燃料電池であって、
前記燃料電池は、固体高分子型燃料電池である
燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−14376(P2011−14376A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−157440(P2009−157440)
【出願日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】