燃料電池
【課題】複数の単電池を有し排出マニホールドを有するデッドエンドの燃料電池において、不純物が特定の単電池に蓄積しない構造を有する燃料電池を提供する。
【解決手段】排出マニホールド4は、それぞれの単電池1a〜1cの燃料極11間の連通状態および各燃料極と外部の連通状態の開閉を行う弁機構43を有し、発電時はすべての弁機構43を閉状態とし各燃料極11と外部および燃料極11間を遮断し不純物の燃料極11間の移動を防ぎ、燃料極11内の不純物の除去が必要な時は、すべての弁機構43を開状態とし不純物を排出マニホールド4から外部に放出する構成とする。
【解決手段】排出マニホールド4は、それぞれの単電池1a〜1cの燃料極11間の連通状態および各燃料極と外部の連通状態の開閉を行う弁機構43を有し、発電時はすべての弁機構43を閉状態とし各燃料極11と外部および燃料極11間を遮断し不純物の燃料極11間の移動を防ぎ、燃料極11内の不純物の除去が必要な時は、すべての弁機構43を開状態とし不純物を排出マニホールド4から外部に放出する構成とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子機器等の電源として使用される燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
現在燃料電池には多数の方式が存在するが、電子機器に用いられる燃料電池は、そのシステムの小型化・簡素化が容易である事から固体高分子形燃料電池の適用が有望である。固体高分子形燃料電池は、燃料極と酸化剤極と両極に挟持された固体高分子電解質膜とから成る単電池によって構成され、燃料極側に水素等の燃料気体を供給し、酸化剤極側に酸化剤気体、例えば酸素や空気を供給し、これらの電気化学反応により電力を発生する。また燃料極に対する水素の供給方式は大別してフロー方式とデッドエンド方式に大別される。デッドエンド方式は発電中に燃料気体を燃料電池外部へと排出せず、即ち発電で消費した燃料気体の量だけ燃料極に燃料を供給する方式である。
【0003】
このような固体高分子形燃料電池システムの発電において、燃料極内の流路に酸化剤極側から電解質膜を介し、空気などの燃料気体以外の気体(不純気体)が侵入してくる。また燃料電池の発電反応では酸化剤極側で水が生成されるが、生成水は電解質膜を通して燃料極内部へと浸透する。ここでデッドエンド方式においては上記の不純物質は燃料電池外部へと排出されず、燃料極内に蓄積する。
【0004】
単電池が積層された積層セルでは、燃料を貯蔵する燃料部と各単電池の燃料極とが、水素供給用のマニホールドによって接続されており、各単電池に対して燃料である水素を供給する。また不純物質を燃料電池外部へ排出するために各単電池には排出用流路が備えられているが、流路構造の簡略化の為に排出用流路はマニホールド構造である事が好ましい。
【0005】
単電池においては不純物質が燃料極に蓄積する量は少ない。しかし排出マニホールドを有する積層セルにおいては、各単電池の燃料極内の圧力が水素供給のばらつきによって差が生じ、圧力の低い単電池は排出マニホールド側から他の単電池から侵入してきた不純物質と水素の混合流体が回り込んでくる。その結果、圧力の低い単電池には不純物質が多く蓄積する事によって水素分圧が低下して発電性能が著しく低下してしまう。
【0006】
この現象を逆に利用して敢えて不純物質の蓄積しやすい単電池を設ける事で、他の複数の単電池に不純物質を蓄積しない方法が提案されている。(例えば、特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−47316
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の構成では、発電性能が低下する単電池が生じるという根本的な問題は解決されておらず、1つの単電池の発電性能が著しく低下して発電停止状態に至った場合、蓄積された不純物質は拡散によって再び他の単電池へ移動し、結果として他の単電池の発電性能を低下させてしまう。また1つの単電池が発電停止状態に陥っても積層セル全体の発電を停止させないようにする為に、不純物質が蓄積しやすい単電池の回路は別系統にする必要があり、燃料電池システムの運転管理が複雑化してしまう。
【0009】
そこで、本発明の目的は上記の点に鑑みてなされたもので、複数の単電池を有し排出マニホールドを有するデッドエンドの燃料電池において、不純物質が特定の単電池に蓄積しない事にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を解決するための、本発明の燃料電池の第1の特徴は、気体燃料が供給される燃料極と酸化剤源から酸化剤が供給される酸化剤極と燃料極及び酸化剤極に挟持された電解質膜から構成される単電池を複数有する発電部と、発電部外部に配置され、気体燃料または気体燃料前駆体を貯蔵する燃料部と、燃料部と単電池に接続され、複数の単電池のそれぞれの燃料極に対して気体燃料を供給する燃料マニホールドと、複数の単電池のそれぞれの燃料極に接続され、燃料極の内部の気体燃料と酸化剤から生成された不純物質と電解質膜を通して酸化剤極側から浸透してきた浸透物質とを含む内部物質を発電部外部へと移動させる排出マニホールドとを備え、発電部は発電中に気体燃料を発電部の外部へと排出しない閉鎖系であり、排出マニホールドは、燃料極それぞれの内部物質を複数の燃料極の間で移動させない閉状態と、燃料極それぞれの内部物質を全ての燃料極から発電部外部へ移動させる開状態とを制御する弁機構を有することを要旨とする。
【0011】
かかる特徴によれば、弁機構が閉状態であるときには、燃料極側に侵入した不純物質は侵入した単電池から他の単電池への移動が出来ない為、特定の単電池に蓄積する事がなく長期の安定的な発電が可能である。また弁機構が開状態であるときには、不純物質のパージを行う事ができる。
【0012】
本発明の燃料電池の第2の特徴は、第1の特徴の燃料電池において、排出マニホールドは、燃料極それぞれに接続された複数の支流路と、支流路それぞれを接続する主流路とを備え、弁機構は、支流路それぞれ、または支流路それぞれに隣接する支流路との間の主流路に少なくとも1つ設けられる弁であり、弁それぞれは、全て開状態か閉状態のどちらか一方の同じ状態を取ることを要旨とする。
【0013】
かかる特徴によれば全ての弁が同じ状態をとる事により、不純物質の排出及び他の単電池への移動の防止をより効果的に行う事が出来る。
【0014】
本発明の燃料電池の第3の特徴は、第2の特徴の燃料電池において、弁機構は、複数の弁全てを開状態か閉状態のどちらか一方の同じ状態の動きを連動させる連動部を供えていることを要旨とする。
【0015】
かかる特徴によれば、全ての弁は連動部によって接続されており、弁の開閉操作をした時に全ての弁が同期して開閉状態が切り替わり、複数の弁を個別に切り替える必要がないため、不純物質のパージを簡易な操作で行う事が出来る。
【0016】
本発明の燃料電池の第4の特徴は、第1から第3の特徴のいずれかの燃料電池において、燃料部は、発電部へ着脱可能な着脱機構を有するカートリッジであり、弁機構は、開状態または閉状態のいずれか一方の状態を制御する可動部を有し、カートリッジを着脱するときに用いられる力を可動部へ伝える伝達機構を備える事を要旨とする。
【0017】
かかる特徴によれば、カートリッジの着脱の操作に連動して可動部が移動する事により弁が開閉する。よって、特別なパージ動作を必要としない為、より簡易な操作で不純物質のパージを行う事が出来る。
【0018】
本発明の燃料電池の第5の特徴は、第4の特徴の燃料電池において、排出マニホールドはカートリッジへ接続され、内部物質はカートリッジの装着時または取り外し時の少なくともどちらか一方のときにカートリッジへと排出されることを要旨とする。
【0019】
かかる特徴によれば、排出マニホールドから排出された不純物質を含む燃料極の内部物質はカートリッジへと移動し、発電部からカートリッジを取り外した際に外気や発電部と遮断される為、より安全に不純物質のパージを行う事ができる。
【0020】
本発明の燃料電池の第6の特徴は、第1から第3の特徴のいずれかの燃料電池において、弁機構は、熱によって移動することにより開状態または閉状態のいずれか一方の状態を制御する可動部を有し、発電部と可動部を熱的に接続し、発電部における発電中の熱を可動部へと伝熱する伝熱部を備え、可動部が伝熱部から熱を受容している時には弁機構が閉状態となることを要旨とする。
【0021】
かかる特徴によれば、燃料電池の発電時に発生する反応熱が伝わる事により可動部が変形する事によって弁が閉構造となる。よって、特別なパージ動作を必要としない為、より簡易な操作で不純物質のパージを行う事が出来る。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、閉鎖系の構造の燃料電池においてパージの機能を確保しつつ、各単電池の燃料極側に侵入した不純物質は侵入した単電池から他の単電池への移動が出来ない為、特定の単電池に不純物質が蓄積する事がなく長期の安定的な発電が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態1に係る燃料電池100の概略図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る燃料電池100における発電試験結果である。
【図3】本発明の燃料電池100における排出マニホールドの開弁状態の概略図である。
【図4】本発明の燃料電池100における排出マニホールドの閉弁状態の概略図である。
【図5】本発明の燃料電池100における変更例の排出マニホールドの開弁状態の概略図である。
【図6】本発明の燃料電池100における変更例の排出マニホールドの閉弁状態の概略図である。
【図7】本発明の実施の形態2に係る燃料電池200の概略図である。
【図8】本発明の実施の第3にかかる燃料電池300の概略図である。
【図9】本発明の実施の形態3に係る燃料電池300の弁機構43の開弁状態の概略図である。
【図10】本発明の実施の形態3に係る燃料電池300の弁機構43の閉弁状態の概略図である。
【図11】本発明を用いない通常の閉鎖系の燃料電池400の概略図である。
【図12】本発明を用いない通常の閉鎖系の燃料電池400における発電試験結果である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明の実施の形態を説明する。
(実施の形態1)
図1に本実施の形態1における燃料電池100の概略構成図を示す。図1を用いて本実施の形態における燃料電池の構造を説明する。
【0025】
図1に示すように、燃料電池100は大別して発電部1と燃料部2からなる。発電部1は燃料極11と酸化剤極12に挟持された固体高分子電解質膜13とから構成される単電池1aの集合体によって構成される。電解質膜13の両側表面には触媒が担持された炭素で構成された触媒層が形成されている。
【0026】
ここで触媒の例としては白金粒子を担持させた触媒、ルテニウムとセレンの合金触媒などが挙げられるが、水素に対して触媒活性を有するものであれば特にこれに限らない。
【0027】
触媒層表面には触媒層に対する燃料の拡散性を確保しながら導電性を得るガス拡散層(GDL)が形成される。ガス拡散層は多孔質の導電材料であり、最も多く用いられる例として炭素繊維が挙げられる。またガス拡散層は多孔質である事からバルクの金属程の高い導電性は得られず、それ自体を電極として使用するには抵抗損失が大きい。その為ガス拡散層表面には金、SUS、アルミ、ニッケル等の金属部材やカーボンで構成される集電部材が配置され、小さな抵抗損失で集電を行う。
【0028】
また電極のうち、燃料気体が供給される側は水素と外部気体とを遮断する為のチャンバーになっている。もう一方の酸化剤が供給される側は、本実施の形態のように酸化剤として空気中の酸素を用いる場合には大気開放、酸化剤として酸素ボンベ等の大気以外の供給手段を用いる場合にはチャンバーになっている。大気開放の場合においても電解質膜等の保護や、電解質膜の挟持のために枠が備えられている。ここでは触媒層と触媒層、GDL、集電部材、チャンバー及び枠を含めたものをまとめて燃料電池の電極として扱い、水素が供給される側の電極を燃料極11、空気が供給される側の電極を酸化剤極12として扱う。
【0029】
また燃料極11及び酸化剤極12のチャンバー及び枠に導電性を利用し、隣り合う単電池の異なる極と接するように積層する事で、電気接続が容易であり体積エネルギー密度の高いスタック構造を実現することができる。また本実施の形態における発電部1は図1では3積層構造となっているが積層構造のみに限定するものではなく、同一平面上に複数の単電池1aを配置した構造や、円筒上の単電池1aを並べて配置する構造等、2つ以上の単電池1aから構成されていれば良い。
【0030】
燃料部2には燃料21が貯蔵されるが、燃料21の例としては燃料電池で使用される燃料そのものである水素の他に、水素化ホウ素ナトリウム・水素化アルミ等の金属化合物、天然ガス・メタノール・エタノール等の化石燃料等が適用される。金属化合物の場合には燃料部2の内部で加水分解を行い燃料となる水素を取り出し、化石燃料の場合には燃料部2の内部でオートサーマル反応やシフト反応等で水素を取り出す。その為燃料部2は燃料21として水素を貯蔵する場合は高圧ボンベや水素吸蔵合金ボンベ、反応させて水素を取り出す燃料前駆体を貯蔵する場合は水素発生機となる。
【0031】
また本実施の形態において燃料部2は発電部1から着脱可能なカートリッジ形式となっている事が望ましい。カートリッジ形式をとることで燃料部2内部の燃料21の残量が低下した場合には、燃料部2を交換する事で連続した発電を容易に行う事が出来る。
【0032】
燃料部2と発電部1の複数の燃料極は燃料マニホールド3に接続しており、燃料マニホールド3の内部を通して燃料極11に水素が供給される。
【0033】
さらに燃料極21は燃料マニホールド3とは別に排出マニホールド4に接続している。
排出マニホールド4はそれぞれの単電池1a,1b,1cの燃料極から伸びた支流路41a、41b,41cが、それぞれの支流路41と接続し一括して燃料極内部の流体を発電部1外部へと排出する主流路42に接続される構成となっており、いずれかの箇所にそれぞれの排出マニホールド4を通して単電池1a、1b、1c間の流体を流通できる開状態と、遮蔽できる閉状態の切替が可能な弁機構43が設けられている。弁機構43の具体的な例としては台形状の弁体を流路断面に押し付けるグローブバルブ、円筒状の流路を備えた球状の弁体が回転するボールバルブ、円形の弁体の中央に軸が備えられ軸周りに弁体が回転するバタフライバルブ等があるが、流路の開閉ができるものであれば上記例に限ることはない。
【0034】
次に、燃料電池100の発電中に生じる現象について説明する。燃料電池の発電反応において発電時には燃料部2から発電部1へと供給された水素は燃料極11に到達する。燃料極11に到達した水素は触媒上でプロトンと電子へと変わる。燃料極11で生成され、電解質膜13中を通して酸化剤極12に運搬されたプロトンは、酸化剤極12に供給された酸素と外部回路を移動してきた電子と結合し、酸化剤極12側で水を生成する。酸化剤極12側で生成された水の多くは空気中へと蒸発するが、一部は電解質膜13を通して燃料極11側へと浸透し、蓄積する。また燃料極11が水素で満たされている状態では電解質膜13を隔てた外部気体との間で気体の分圧差が生じている事から、酸化剤極12側の空気や窒素等の気体が電解質膜13を通して燃料極11の内部に侵入してくる。これら水や空気や窒素等の不純物質が燃料極11内部に蓄積する事により、燃料極11の内部の水素分圧は低下してくる。
【0035】
ここで図11に示す主流路42の出口上に備えられた排出弁42aのみを有するような通常の閉鎖系の構造である燃料電池400では、各単電池1a、1b、1cに蓄積された不純物質が他の単電池に移動する事が可能である。例えば燃料電池400全体を傾けた場合には燃料極11に溜まっている水は重力方向で下方に存在する単電池へと移動してしまう。また他の例では燃料マニホールド2の各単電池1a、1b、1cの燃料極11までの流路の流路抵抗が異なる場合、その流路抵抗の最も大きい単電池の内部圧力は他の単電池の内部圧力よりも低くなり、排出マニホールド4を通して他の単電池から水素と不純物質を含む混合流体が流入する。その為これらの単電池の水素分圧は低下し、発電性能が著しく劣化してしまう。図11の構成の燃料電池で10積層の燃料電池で発電した結果を図12に示すが、発電開始後1時間程である一つの単電池の電圧が極端に低下している事が分かる。
【0036】
一方本実施の形態に示すように複数の弁43a、43b、43cを備える弁機構43を閉状態とする事によってそれぞれの単電池間での不純物質の移動が出来ない構成では、ある一つの単電池の性能が低下することがない。その構成での発電した結果を図2に示すが、上述のようにそれぞれの単電池はほぼ均等で良好な電圧値を保持し続けることができる。このように、本実施の形態に示す構造の燃料電池100によれば、燃料電池100が運転中に閉鎖系であったとしても単電池1a、1b、1c内に存在する不純物質が特定の単電池に移動して、特性の単電池の発電性能が低下することがない。
【0037】
続いて、図3、図4に排出マニホールド4の具体的な構造の一例の概略図を示す。以下弁機構43の開閉に係る動作について図3、図4を用いて説明をする。
【0038】
複数の単電池1a、1b、1cから支流路41a、41b、41cが備えられ、複数の支流路は主流路42へと接続されている。主流路42の端部には、主流路42の内部の物質を外部へと移動を可能にする排出口421が備えられている。その為、弁機構43が開状態の場合には複数の燃料極11の内部の不純物質を発電部1の外部へと排出することができる。
【0039】
次に弁機構43について説明をする。弁機構43は、主流路42と主流路42の内部に備えられた可動部431により構成されており、可動部431の一部が主流路42の内部流路を塞ぐことによって閉状態となる。可動部431はゴム材料によって構成される封止手段432と封止手段432と接触して受ける突出部433を有しており、主流路42は閉状態で封止手段432と接触するように配置された封止受部422を有している。封止手段432が突出部433と封止受部422と接触する事により、弁機構43は閉状態となる。また封止手段432と突出部433と封止受部422は各支流路41a、41b、41cの間及び排出口421と排出口から最も近い支流路41aの間に備えられる。また複数の弁機構は1つの連動部434に備えられている為、全ての弁の開閉は連動して行われる。
【0040】
さらに可動部431は、燃料部2が発電部1に装着されたときに燃料部2と接触する伝達機構5を有しており、燃料部2が発電部1に装着されたときに可動部431が押される事により閉状態へと移行する。また可動部431は燃料部2が発電部1に装着されていない時は開弁状態を保たれるように、加重手段435によって開方向へと荷重が負荷されている事が好ましい。この構造は、燃料部2がカートリッジ構造である場合に有用である。また伝達機構5は排出マニホールド4から発電部1の外部へ貫通しているが、外部空間と排出マニホールド4の内部流路を遮断するために排出マニホールド4と伝達機構5の間にOリング等の封止部436が備えられている事が望ましい。
【0041】
図3は発電部1に対して燃料部2が装着されていない状態である。この状態では加重手段435によって可動部43全体が押され、封止手段432及び突出部433は封止受部422と離間している為に弁機構43は開状態となり、燃料極11のパージを行う事が可能である。
【0042】
図4は発電部1に対して燃料部2を装着した状態である。この状態では伝達機構5が燃料部2の一部と干渉し、燃料部2を装着する力が反力となる加重手段435の力よりも大きくなった状態で可動部431は移動し、突出部433及び封止受部422が封止手段432と接する事で弁機構43は閉状態となる。
【0043】
かかる特徴によれば、燃料電池100の運転中に複数の燃料極11の不純物質の移動を抑制できる上、燃料部2が取り外されている時には燃料極11内部の不純物質を発電部1の外部へとパージする事が可能である。また複数の弁機構43はそれぞれ連動部434と接続されているために開閉を一括して制御することが出来る。さらに弁の開閉の制御は燃料部2の着脱作業に伴って行われるため、弁機構43の開閉状態の切替を極めて円滑に行う事が可能である。
【0044】
(実施の形態1の変更例)
図5、図6に本実施の形態1の変更例における弁機構43の概略図を示す。なお、本実施の形態1と同一の部分については同一の符号を付し、同様な構成、動作については説明を省略する。以下、図5、図6を用いて本実施の形態1の変更例における弁機構43の開閉に係る動作を説明する。
【0045】
図5、図6は実施の形態1の燃料電池100の弁機構43を変更したものであり、図1のAの網掛け部分における断面図である。本変更例においては複数の支流路41が可撓性を有する材料により構成されるチューブである。可動部431は発電部1の外壁により構成された空間等の、主流路の外部に備えられており、封止手段432を備えない。また可動部431は伝達機構5と連動部434を備えており、連動部434上に突出部433が備えられる。また発電部1の外壁により構成された空間には、封止受部422と支流路41aと加重手段435が収容される。各支流路41a、41b、41cは複数の突出部433と封止受部422の間に備えられており、弁機構43a、43b、43cを形成する。図3に示すように燃料部2が発電部1に装着されていない状態においては、加重手段435の作用により全ての弁機構43はそれぞれ開状態にて保持される。そして図4に示すように燃料部2が発電部1に装着されている状態では燃料部2が伝達機構5と接触する事により、突出部433は加重手段435が可動部431から受ける力の方向と逆方向へ移動して支流路41を潰すことによって各弁機構43を閉状態とする。本構成においても本実施の形態1と同様の効果を得る事が可能である。
【0046】
(実施の形態2)
図7は本実施の形態2における燃料電池200の概略構成図を示す。本実施の形態1と同一の部分については同一の符号を付し、同様な構成、動作については説明を省略する。図7を用いて本実施の形態における燃料電池の構造を説明する。
【0047】
実施の形態2は排出マニホールド42は燃料マニホールド3とは別の箇所で燃料部2と接続され、燃料極11から排出される内部物質は燃料部2へと移動する。内部物質には電解質膜13を通して燃料極11に侵入してきた酸素や窒素などの不純気体とともに発電燃料である水素も含まれており、水素以外の不純気体のみを選択的にパージをすることは難しい。特に、パージを燃料電池200の運転直後に行う場合には燃料極11の内部の主成分は水素であり、排出マニホールド42が内部物質を外部へと排出させる構造では多くの水素を大気中に放出してしまう。しかし本実施の形態2の構成においては、発電終了時の排出先が燃料部2の内部であるため、パージ作業時に水素が発電部1の外部へと出ることがない。その為本実施の形態1の効果に加え、パージ作業に伴う水素の外部漏洩を防ぐ事が可能となり、より安全性の高いパージを行う事が出来る。
【0048】
また図7に示すように燃料部2の内部には燃料21を収容するスペースとは別に、パージされた内部物質を収容するためのスペースである移動室22が存在していても良い。移動室22が無い構造では、燃料部2へと排出された不純物質が燃料21と混在してしまう。そのため燃料部2を装着する際にパージを行ってしまうと、その後の燃料電池200の運転において燃料部2は燃料極11に対して水素だけでなく不純物質も同時に供給してしまう。つまりパージをするタイミングが燃料部2を取り外す時だけに限られてしまう。それに対して図9のように移動室22を有する構造であれば、燃料部2を装着する際にパージをする事が出来る為、燃料部2の交換後には燃料電池200は常に高水素濃度の運転をする事が出来る。
【0049】
(実施の形態3)
図8は本実施の形態3における燃料電池300の概略図を示す。図9、図10に本実施の形態3における燃料電池300の弁機構43の概略図を示す。なお、本実施の形態1および2と同一の部分については同一の符号を付し、同様な構成、動作については説明を省略する。以下、図8、図9、図10を用いて本実施の形態における弁機構43の開閉に係る動作を説明する。
【0050】
図8に示すように弁機構43a、43b、43cはそれぞれの弁機構43に近接する単電池1a、1b、1cと伝熱部6によって接続されている。発電部1で発生した熱が伝熱部6を介して弁機構43に伝わる事によって、弁機構43の開閉状態を制御する構造となっている。
【0051】
図10、図11に示すように弁機構431は可動部431と伝熱部431cと支流路42によって構成される。可動部431は支流路42の断面を覆う遮蔽体431aと、遮蔽体431aに取り付けられ熱によって形状を変化させる熱変形部431bによって構成される。熱変形部431bの具体例としてはバイメタルや、形状記憶合金が挙げられる。バイメタルは熱膨張率の異なる2種類の金属を張り合わせた構造体であり、棒状、線状、板状、ぜんまい状の形状で用いられており、本実施例においては遮蔽体431aを移動できるのであれば形状は問わない。熱変形部431bにバイメタルを用いる場合、常温では遮蔽体431aが支流路42を覆わず、高温時に覆うように可動部43を配置する。また熱変形部431bに形状記憶合金を用いる場合も、熱変形部431bに熱が加わった時に遮蔽体431aが支流路42を覆うよう復元するように可動部431を配置する。また温度が低いときに閉状態である弁機構431を開状態に移行できるように、図9、図10に示すように可動部431は加重手段435によって荷重を受けている事が好ましい。
【0052】
熱変形部431bの一部は発電部1の発電反応時の熱を伝熱する伝熱部438と接している。図9、図10に示す例では発電箇所の熱を効率的に利用できるように、アノード側の集電部材を伝熱部438として利用している。ただし発電時の発熱を熱変形部431bに伝えられるのであれば伝熱部438は発電部1のその他の構成部材であったり、既存の発電部1の構成部材とは別に備えていても良い。
【0053】
次に弁機構43の開閉の動作について説明をする。前述のように燃料電池が発電をしていない状態では弁機構43は開状態となっている。その為燃料電池を発電させる前、あるいは後のどちらのタイミングでも燃料極11の内部の不純物質をパージする事が出来る(図9)。ここで燃料部2から燃料極11へと水素が供給され燃料電池300が発電を開始すると、電解質膜13及び触媒層上で行われる電気化学反応により熱が発生する。電解質膜13及び触媒層上で発生した熱はガス拡散層111を介して伝熱体438である集電部材へと伝わり、伝熱体438と接している熱変形部431bに伝熱する。熱変形部431bは熱を受けて変形し、遮蔽体431aが支流路42の断面を覆うように移動する事で弁機構431は閉状態となる(図10)。
【0054】
本実施の形態によれば、特別な操作を行う事無く燃料電池300が発電していない状態では複数の燃料極11の内部のパージをする事が可能である。また発電状態では弁機構43が閉状態となり複数の燃料極11が独立し、単電池に蓄積した不純物質が他の単電池へ移動することが無く、燃料極11を水素分圧が高く良好な発電を長時間維持できる。
【0055】
以上、本発明の一例を説明したが、具体例を説明したに過ぎない。特に本発明を限定するものではなく、各部の具体的構成等は適宜変更可能である。また、各実施の形態及び変更例の作用効果は、本発明から生じる最も好適な作用及び効果を列挙したに過ぎず、本発明による作用及び効果は、各実施の形態及び変更例に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0056】
100,200,300:燃料電池
1:発電部
1a、1b、1c:単電池
2:燃料部
3:燃料マニホールド
4:排出マニホールド
5:伝達機構
11:燃料極
12:酸化剤極
13:電解質膜
21:燃料
22:移動室
41a、41b、41c:支流路
42:主流路
42a:排出弁
421:排出口
422:封止受部
43:弁機構
43a、43b、43c:弁
431:可動部
432:封止手段
433:突出部
434:連動部
435:加重手段
436:封止部
【技術分野】
【0001】
本発明は電子機器等の電源として使用される燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
現在燃料電池には多数の方式が存在するが、電子機器に用いられる燃料電池は、そのシステムの小型化・簡素化が容易である事から固体高分子形燃料電池の適用が有望である。固体高分子形燃料電池は、燃料極と酸化剤極と両極に挟持された固体高分子電解質膜とから成る単電池によって構成され、燃料極側に水素等の燃料気体を供給し、酸化剤極側に酸化剤気体、例えば酸素や空気を供給し、これらの電気化学反応により電力を発生する。また燃料極に対する水素の供給方式は大別してフロー方式とデッドエンド方式に大別される。デッドエンド方式は発電中に燃料気体を燃料電池外部へと排出せず、即ち発電で消費した燃料気体の量だけ燃料極に燃料を供給する方式である。
【0003】
このような固体高分子形燃料電池システムの発電において、燃料極内の流路に酸化剤極側から電解質膜を介し、空気などの燃料気体以外の気体(不純気体)が侵入してくる。また燃料電池の発電反応では酸化剤極側で水が生成されるが、生成水は電解質膜を通して燃料極内部へと浸透する。ここでデッドエンド方式においては上記の不純物質は燃料電池外部へと排出されず、燃料極内に蓄積する。
【0004】
単電池が積層された積層セルでは、燃料を貯蔵する燃料部と各単電池の燃料極とが、水素供給用のマニホールドによって接続されており、各単電池に対して燃料である水素を供給する。また不純物質を燃料電池外部へ排出するために各単電池には排出用流路が備えられているが、流路構造の簡略化の為に排出用流路はマニホールド構造である事が好ましい。
【0005】
単電池においては不純物質が燃料極に蓄積する量は少ない。しかし排出マニホールドを有する積層セルにおいては、各単電池の燃料極内の圧力が水素供給のばらつきによって差が生じ、圧力の低い単電池は排出マニホールド側から他の単電池から侵入してきた不純物質と水素の混合流体が回り込んでくる。その結果、圧力の低い単電池には不純物質が多く蓄積する事によって水素分圧が低下して発電性能が著しく低下してしまう。
【0006】
この現象を逆に利用して敢えて不純物質の蓄積しやすい単電池を設ける事で、他の複数の単電池に不純物質を蓄積しない方法が提案されている。(例えば、特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−47316
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の構成では、発電性能が低下する単電池が生じるという根本的な問題は解決されておらず、1つの単電池の発電性能が著しく低下して発電停止状態に至った場合、蓄積された不純物質は拡散によって再び他の単電池へ移動し、結果として他の単電池の発電性能を低下させてしまう。また1つの単電池が発電停止状態に陥っても積層セル全体の発電を停止させないようにする為に、不純物質が蓄積しやすい単電池の回路は別系統にする必要があり、燃料電池システムの運転管理が複雑化してしまう。
【0009】
そこで、本発明の目的は上記の点に鑑みてなされたもので、複数の単電池を有し排出マニホールドを有するデッドエンドの燃料電池において、不純物質が特定の単電池に蓄積しない事にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を解決するための、本発明の燃料電池の第1の特徴は、気体燃料が供給される燃料極と酸化剤源から酸化剤が供給される酸化剤極と燃料極及び酸化剤極に挟持された電解質膜から構成される単電池を複数有する発電部と、発電部外部に配置され、気体燃料または気体燃料前駆体を貯蔵する燃料部と、燃料部と単電池に接続され、複数の単電池のそれぞれの燃料極に対して気体燃料を供給する燃料マニホールドと、複数の単電池のそれぞれの燃料極に接続され、燃料極の内部の気体燃料と酸化剤から生成された不純物質と電解質膜を通して酸化剤極側から浸透してきた浸透物質とを含む内部物質を発電部外部へと移動させる排出マニホールドとを備え、発電部は発電中に気体燃料を発電部の外部へと排出しない閉鎖系であり、排出マニホールドは、燃料極それぞれの内部物質を複数の燃料極の間で移動させない閉状態と、燃料極それぞれの内部物質を全ての燃料極から発電部外部へ移動させる開状態とを制御する弁機構を有することを要旨とする。
【0011】
かかる特徴によれば、弁機構が閉状態であるときには、燃料極側に侵入した不純物質は侵入した単電池から他の単電池への移動が出来ない為、特定の単電池に蓄積する事がなく長期の安定的な発電が可能である。また弁機構が開状態であるときには、不純物質のパージを行う事ができる。
【0012】
本発明の燃料電池の第2の特徴は、第1の特徴の燃料電池において、排出マニホールドは、燃料極それぞれに接続された複数の支流路と、支流路それぞれを接続する主流路とを備え、弁機構は、支流路それぞれ、または支流路それぞれに隣接する支流路との間の主流路に少なくとも1つ設けられる弁であり、弁それぞれは、全て開状態か閉状態のどちらか一方の同じ状態を取ることを要旨とする。
【0013】
かかる特徴によれば全ての弁が同じ状態をとる事により、不純物質の排出及び他の単電池への移動の防止をより効果的に行う事が出来る。
【0014】
本発明の燃料電池の第3の特徴は、第2の特徴の燃料電池において、弁機構は、複数の弁全てを開状態か閉状態のどちらか一方の同じ状態の動きを連動させる連動部を供えていることを要旨とする。
【0015】
かかる特徴によれば、全ての弁は連動部によって接続されており、弁の開閉操作をした時に全ての弁が同期して開閉状態が切り替わり、複数の弁を個別に切り替える必要がないため、不純物質のパージを簡易な操作で行う事が出来る。
【0016】
本発明の燃料電池の第4の特徴は、第1から第3の特徴のいずれかの燃料電池において、燃料部は、発電部へ着脱可能な着脱機構を有するカートリッジであり、弁機構は、開状態または閉状態のいずれか一方の状態を制御する可動部を有し、カートリッジを着脱するときに用いられる力を可動部へ伝える伝達機構を備える事を要旨とする。
【0017】
かかる特徴によれば、カートリッジの着脱の操作に連動して可動部が移動する事により弁が開閉する。よって、特別なパージ動作を必要としない為、より簡易な操作で不純物質のパージを行う事が出来る。
【0018】
本発明の燃料電池の第5の特徴は、第4の特徴の燃料電池において、排出マニホールドはカートリッジへ接続され、内部物質はカートリッジの装着時または取り外し時の少なくともどちらか一方のときにカートリッジへと排出されることを要旨とする。
【0019】
かかる特徴によれば、排出マニホールドから排出された不純物質を含む燃料極の内部物質はカートリッジへと移動し、発電部からカートリッジを取り外した際に外気や発電部と遮断される為、より安全に不純物質のパージを行う事ができる。
【0020】
本発明の燃料電池の第6の特徴は、第1から第3の特徴のいずれかの燃料電池において、弁機構は、熱によって移動することにより開状態または閉状態のいずれか一方の状態を制御する可動部を有し、発電部と可動部を熱的に接続し、発電部における発電中の熱を可動部へと伝熱する伝熱部を備え、可動部が伝熱部から熱を受容している時には弁機構が閉状態となることを要旨とする。
【0021】
かかる特徴によれば、燃料電池の発電時に発生する反応熱が伝わる事により可動部が変形する事によって弁が閉構造となる。よって、特別なパージ動作を必要としない為、より簡易な操作で不純物質のパージを行う事が出来る。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、閉鎖系の構造の燃料電池においてパージの機能を確保しつつ、各単電池の燃料極側に侵入した不純物質は侵入した単電池から他の単電池への移動が出来ない為、特定の単電池に不純物質が蓄積する事がなく長期の安定的な発電が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態1に係る燃料電池100の概略図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る燃料電池100における発電試験結果である。
【図3】本発明の燃料電池100における排出マニホールドの開弁状態の概略図である。
【図4】本発明の燃料電池100における排出マニホールドの閉弁状態の概略図である。
【図5】本発明の燃料電池100における変更例の排出マニホールドの開弁状態の概略図である。
【図6】本発明の燃料電池100における変更例の排出マニホールドの閉弁状態の概略図である。
【図7】本発明の実施の形態2に係る燃料電池200の概略図である。
【図8】本発明の実施の第3にかかる燃料電池300の概略図である。
【図9】本発明の実施の形態3に係る燃料電池300の弁機構43の開弁状態の概略図である。
【図10】本発明の実施の形態3に係る燃料電池300の弁機構43の閉弁状態の概略図である。
【図11】本発明を用いない通常の閉鎖系の燃料電池400の概略図である。
【図12】本発明を用いない通常の閉鎖系の燃料電池400における発電試験結果である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明の実施の形態を説明する。
(実施の形態1)
図1に本実施の形態1における燃料電池100の概略構成図を示す。図1を用いて本実施の形態における燃料電池の構造を説明する。
【0025】
図1に示すように、燃料電池100は大別して発電部1と燃料部2からなる。発電部1は燃料極11と酸化剤極12に挟持された固体高分子電解質膜13とから構成される単電池1aの集合体によって構成される。電解質膜13の両側表面には触媒が担持された炭素で構成された触媒層が形成されている。
【0026】
ここで触媒の例としては白金粒子を担持させた触媒、ルテニウムとセレンの合金触媒などが挙げられるが、水素に対して触媒活性を有するものであれば特にこれに限らない。
【0027】
触媒層表面には触媒層に対する燃料の拡散性を確保しながら導電性を得るガス拡散層(GDL)が形成される。ガス拡散層は多孔質の導電材料であり、最も多く用いられる例として炭素繊維が挙げられる。またガス拡散層は多孔質である事からバルクの金属程の高い導電性は得られず、それ自体を電極として使用するには抵抗損失が大きい。その為ガス拡散層表面には金、SUS、アルミ、ニッケル等の金属部材やカーボンで構成される集電部材が配置され、小さな抵抗損失で集電を行う。
【0028】
また電極のうち、燃料気体が供給される側は水素と外部気体とを遮断する為のチャンバーになっている。もう一方の酸化剤が供給される側は、本実施の形態のように酸化剤として空気中の酸素を用いる場合には大気開放、酸化剤として酸素ボンベ等の大気以外の供給手段を用いる場合にはチャンバーになっている。大気開放の場合においても電解質膜等の保護や、電解質膜の挟持のために枠が備えられている。ここでは触媒層と触媒層、GDL、集電部材、チャンバー及び枠を含めたものをまとめて燃料電池の電極として扱い、水素が供給される側の電極を燃料極11、空気が供給される側の電極を酸化剤極12として扱う。
【0029】
また燃料極11及び酸化剤極12のチャンバー及び枠に導電性を利用し、隣り合う単電池の異なる極と接するように積層する事で、電気接続が容易であり体積エネルギー密度の高いスタック構造を実現することができる。また本実施の形態における発電部1は図1では3積層構造となっているが積層構造のみに限定するものではなく、同一平面上に複数の単電池1aを配置した構造や、円筒上の単電池1aを並べて配置する構造等、2つ以上の単電池1aから構成されていれば良い。
【0030】
燃料部2には燃料21が貯蔵されるが、燃料21の例としては燃料電池で使用される燃料そのものである水素の他に、水素化ホウ素ナトリウム・水素化アルミ等の金属化合物、天然ガス・メタノール・エタノール等の化石燃料等が適用される。金属化合物の場合には燃料部2の内部で加水分解を行い燃料となる水素を取り出し、化石燃料の場合には燃料部2の内部でオートサーマル反応やシフト反応等で水素を取り出す。その為燃料部2は燃料21として水素を貯蔵する場合は高圧ボンベや水素吸蔵合金ボンベ、反応させて水素を取り出す燃料前駆体を貯蔵する場合は水素発生機となる。
【0031】
また本実施の形態において燃料部2は発電部1から着脱可能なカートリッジ形式となっている事が望ましい。カートリッジ形式をとることで燃料部2内部の燃料21の残量が低下した場合には、燃料部2を交換する事で連続した発電を容易に行う事が出来る。
【0032】
燃料部2と発電部1の複数の燃料極は燃料マニホールド3に接続しており、燃料マニホールド3の内部を通して燃料極11に水素が供給される。
【0033】
さらに燃料極21は燃料マニホールド3とは別に排出マニホールド4に接続している。
排出マニホールド4はそれぞれの単電池1a,1b,1cの燃料極から伸びた支流路41a、41b,41cが、それぞれの支流路41と接続し一括して燃料極内部の流体を発電部1外部へと排出する主流路42に接続される構成となっており、いずれかの箇所にそれぞれの排出マニホールド4を通して単電池1a、1b、1c間の流体を流通できる開状態と、遮蔽できる閉状態の切替が可能な弁機構43が設けられている。弁機構43の具体的な例としては台形状の弁体を流路断面に押し付けるグローブバルブ、円筒状の流路を備えた球状の弁体が回転するボールバルブ、円形の弁体の中央に軸が備えられ軸周りに弁体が回転するバタフライバルブ等があるが、流路の開閉ができるものであれば上記例に限ることはない。
【0034】
次に、燃料電池100の発電中に生じる現象について説明する。燃料電池の発電反応において発電時には燃料部2から発電部1へと供給された水素は燃料極11に到達する。燃料極11に到達した水素は触媒上でプロトンと電子へと変わる。燃料極11で生成され、電解質膜13中を通して酸化剤極12に運搬されたプロトンは、酸化剤極12に供給された酸素と外部回路を移動してきた電子と結合し、酸化剤極12側で水を生成する。酸化剤極12側で生成された水の多くは空気中へと蒸発するが、一部は電解質膜13を通して燃料極11側へと浸透し、蓄積する。また燃料極11が水素で満たされている状態では電解質膜13を隔てた外部気体との間で気体の分圧差が生じている事から、酸化剤極12側の空気や窒素等の気体が電解質膜13を通して燃料極11の内部に侵入してくる。これら水や空気や窒素等の不純物質が燃料極11内部に蓄積する事により、燃料極11の内部の水素分圧は低下してくる。
【0035】
ここで図11に示す主流路42の出口上に備えられた排出弁42aのみを有するような通常の閉鎖系の構造である燃料電池400では、各単電池1a、1b、1cに蓄積された不純物質が他の単電池に移動する事が可能である。例えば燃料電池400全体を傾けた場合には燃料極11に溜まっている水は重力方向で下方に存在する単電池へと移動してしまう。また他の例では燃料マニホールド2の各単電池1a、1b、1cの燃料極11までの流路の流路抵抗が異なる場合、その流路抵抗の最も大きい単電池の内部圧力は他の単電池の内部圧力よりも低くなり、排出マニホールド4を通して他の単電池から水素と不純物質を含む混合流体が流入する。その為これらの単電池の水素分圧は低下し、発電性能が著しく劣化してしまう。図11の構成の燃料電池で10積層の燃料電池で発電した結果を図12に示すが、発電開始後1時間程である一つの単電池の電圧が極端に低下している事が分かる。
【0036】
一方本実施の形態に示すように複数の弁43a、43b、43cを備える弁機構43を閉状態とする事によってそれぞれの単電池間での不純物質の移動が出来ない構成では、ある一つの単電池の性能が低下することがない。その構成での発電した結果を図2に示すが、上述のようにそれぞれの単電池はほぼ均等で良好な電圧値を保持し続けることができる。このように、本実施の形態に示す構造の燃料電池100によれば、燃料電池100が運転中に閉鎖系であったとしても単電池1a、1b、1c内に存在する不純物質が特定の単電池に移動して、特性の単電池の発電性能が低下することがない。
【0037】
続いて、図3、図4に排出マニホールド4の具体的な構造の一例の概略図を示す。以下弁機構43の開閉に係る動作について図3、図4を用いて説明をする。
【0038】
複数の単電池1a、1b、1cから支流路41a、41b、41cが備えられ、複数の支流路は主流路42へと接続されている。主流路42の端部には、主流路42の内部の物質を外部へと移動を可能にする排出口421が備えられている。その為、弁機構43が開状態の場合には複数の燃料極11の内部の不純物質を発電部1の外部へと排出することができる。
【0039】
次に弁機構43について説明をする。弁機構43は、主流路42と主流路42の内部に備えられた可動部431により構成されており、可動部431の一部が主流路42の内部流路を塞ぐことによって閉状態となる。可動部431はゴム材料によって構成される封止手段432と封止手段432と接触して受ける突出部433を有しており、主流路42は閉状態で封止手段432と接触するように配置された封止受部422を有している。封止手段432が突出部433と封止受部422と接触する事により、弁機構43は閉状態となる。また封止手段432と突出部433と封止受部422は各支流路41a、41b、41cの間及び排出口421と排出口から最も近い支流路41aの間に備えられる。また複数の弁機構は1つの連動部434に備えられている為、全ての弁の開閉は連動して行われる。
【0040】
さらに可動部431は、燃料部2が発電部1に装着されたときに燃料部2と接触する伝達機構5を有しており、燃料部2が発電部1に装着されたときに可動部431が押される事により閉状態へと移行する。また可動部431は燃料部2が発電部1に装着されていない時は開弁状態を保たれるように、加重手段435によって開方向へと荷重が負荷されている事が好ましい。この構造は、燃料部2がカートリッジ構造である場合に有用である。また伝達機構5は排出マニホールド4から発電部1の外部へ貫通しているが、外部空間と排出マニホールド4の内部流路を遮断するために排出マニホールド4と伝達機構5の間にOリング等の封止部436が備えられている事が望ましい。
【0041】
図3は発電部1に対して燃料部2が装着されていない状態である。この状態では加重手段435によって可動部43全体が押され、封止手段432及び突出部433は封止受部422と離間している為に弁機構43は開状態となり、燃料極11のパージを行う事が可能である。
【0042】
図4は発電部1に対して燃料部2を装着した状態である。この状態では伝達機構5が燃料部2の一部と干渉し、燃料部2を装着する力が反力となる加重手段435の力よりも大きくなった状態で可動部431は移動し、突出部433及び封止受部422が封止手段432と接する事で弁機構43は閉状態となる。
【0043】
かかる特徴によれば、燃料電池100の運転中に複数の燃料極11の不純物質の移動を抑制できる上、燃料部2が取り外されている時には燃料極11内部の不純物質を発電部1の外部へとパージする事が可能である。また複数の弁機構43はそれぞれ連動部434と接続されているために開閉を一括して制御することが出来る。さらに弁の開閉の制御は燃料部2の着脱作業に伴って行われるため、弁機構43の開閉状態の切替を極めて円滑に行う事が可能である。
【0044】
(実施の形態1の変更例)
図5、図6に本実施の形態1の変更例における弁機構43の概略図を示す。なお、本実施の形態1と同一の部分については同一の符号を付し、同様な構成、動作については説明を省略する。以下、図5、図6を用いて本実施の形態1の変更例における弁機構43の開閉に係る動作を説明する。
【0045】
図5、図6は実施の形態1の燃料電池100の弁機構43を変更したものであり、図1のAの網掛け部分における断面図である。本変更例においては複数の支流路41が可撓性を有する材料により構成されるチューブである。可動部431は発電部1の外壁により構成された空間等の、主流路の外部に備えられており、封止手段432を備えない。また可動部431は伝達機構5と連動部434を備えており、連動部434上に突出部433が備えられる。また発電部1の外壁により構成された空間には、封止受部422と支流路41aと加重手段435が収容される。各支流路41a、41b、41cは複数の突出部433と封止受部422の間に備えられており、弁機構43a、43b、43cを形成する。図3に示すように燃料部2が発電部1に装着されていない状態においては、加重手段435の作用により全ての弁機構43はそれぞれ開状態にて保持される。そして図4に示すように燃料部2が発電部1に装着されている状態では燃料部2が伝達機構5と接触する事により、突出部433は加重手段435が可動部431から受ける力の方向と逆方向へ移動して支流路41を潰すことによって各弁機構43を閉状態とする。本構成においても本実施の形態1と同様の効果を得る事が可能である。
【0046】
(実施の形態2)
図7は本実施の形態2における燃料電池200の概略構成図を示す。本実施の形態1と同一の部分については同一の符号を付し、同様な構成、動作については説明を省略する。図7を用いて本実施の形態における燃料電池の構造を説明する。
【0047】
実施の形態2は排出マニホールド42は燃料マニホールド3とは別の箇所で燃料部2と接続され、燃料極11から排出される内部物質は燃料部2へと移動する。内部物質には電解質膜13を通して燃料極11に侵入してきた酸素や窒素などの不純気体とともに発電燃料である水素も含まれており、水素以外の不純気体のみを選択的にパージをすることは難しい。特に、パージを燃料電池200の運転直後に行う場合には燃料極11の内部の主成分は水素であり、排出マニホールド42が内部物質を外部へと排出させる構造では多くの水素を大気中に放出してしまう。しかし本実施の形態2の構成においては、発電終了時の排出先が燃料部2の内部であるため、パージ作業時に水素が発電部1の外部へと出ることがない。その為本実施の形態1の効果に加え、パージ作業に伴う水素の外部漏洩を防ぐ事が可能となり、より安全性の高いパージを行う事が出来る。
【0048】
また図7に示すように燃料部2の内部には燃料21を収容するスペースとは別に、パージされた内部物質を収容するためのスペースである移動室22が存在していても良い。移動室22が無い構造では、燃料部2へと排出された不純物質が燃料21と混在してしまう。そのため燃料部2を装着する際にパージを行ってしまうと、その後の燃料電池200の運転において燃料部2は燃料極11に対して水素だけでなく不純物質も同時に供給してしまう。つまりパージをするタイミングが燃料部2を取り外す時だけに限られてしまう。それに対して図9のように移動室22を有する構造であれば、燃料部2を装着する際にパージをする事が出来る為、燃料部2の交換後には燃料電池200は常に高水素濃度の運転をする事が出来る。
【0049】
(実施の形態3)
図8は本実施の形態3における燃料電池300の概略図を示す。図9、図10に本実施の形態3における燃料電池300の弁機構43の概略図を示す。なお、本実施の形態1および2と同一の部分については同一の符号を付し、同様な構成、動作については説明を省略する。以下、図8、図9、図10を用いて本実施の形態における弁機構43の開閉に係る動作を説明する。
【0050】
図8に示すように弁機構43a、43b、43cはそれぞれの弁機構43に近接する単電池1a、1b、1cと伝熱部6によって接続されている。発電部1で発生した熱が伝熱部6を介して弁機構43に伝わる事によって、弁機構43の開閉状態を制御する構造となっている。
【0051】
図10、図11に示すように弁機構431は可動部431と伝熱部431cと支流路42によって構成される。可動部431は支流路42の断面を覆う遮蔽体431aと、遮蔽体431aに取り付けられ熱によって形状を変化させる熱変形部431bによって構成される。熱変形部431bの具体例としてはバイメタルや、形状記憶合金が挙げられる。バイメタルは熱膨張率の異なる2種類の金属を張り合わせた構造体であり、棒状、線状、板状、ぜんまい状の形状で用いられており、本実施例においては遮蔽体431aを移動できるのであれば形状は問わない。熱変形部431bにバイメタルを用いる場合、常温では遮蔽体431aが支流路42を覆わず、高温時に覆うように可動部43を配置する。また熱変形部431bに形状記憶合金を用いる場合も、熱変形部431bに熱が加わった時に遮蔽体431aが支流路42を覆うよう復元するように可動部431を配置する。また温度が低いときに閉状態である弁機構431を開状態に移行できるように、図9、図10に示すように可動部431は加重手段435によって荷重を受けている事が好ましい。
【0052】
熱変形部431bの一部は発電部1の発電反応時の熱を伝熱する伝熱部438と接している。図9、図10に示す例では発電箇所の熱を効率的に利用できるように、アノード側の集電部材を伝熱部438として利用している。ただし発電時の発熱を熱変形部431bに伝えられるのであれば伝熱部438は発電部1のその他の構成部材であったり、既存の発電部1の構成部材とは別に備えていても良い。
【0053】
次に弁機構43の開閉の動作について説明をする。前述のように燃料電池が発電をしていない状態では弁機構43は開状態となっている。その為燃料電池を発電させる前、あるいは後のどちらのタイミングでも燃料極11の内部の不純物質をパージする事が出来る(図9)。ここで燃料部2から燃料極11へと水素が供給され燃料電池300が発電を開始すると、電解質膜13及び触媒層上で行われる電気化学反応により熱が発生する。電解質膜13及び触媒層上で発生した熱はガス拡散層111を介して伝熱体438である集電部材へと伝わり、伝熱体438と接している熱変形部431bに伝熱する。熱変形部431bは熱を受けて変形し、遮蔽体431aが支流路42の断面を覆うように移動する事で弁機構431は閉状態となる(図10)。
【0054】
本実施の形態によれば、特別な操作を行う事無く燃料電池300が発電していない状態では複数の燃料極11の内部のパージをする事が可能である。また発電状態では弁機構43が閉状態となり複数の燃料極11が独立し、単電池に蓄積した不純物質が他の単電池へ移動することが無く、燃料極11を水素分圧が高く良好な発電を長時間維持できる。
【0055】
以上、本発明の一例を説明したが、具体例を説明したに過ぎない。特に本発明を限定するものではなく、各部の具体的構成等は適宜変更可能である。また、各実施の形態及び変更例の作用効果は、本発明から生じる最も好適な作用及び効果を列挙したに過ぎず、本発明による作用及び効果は、各実施の形態及び変更例に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0056】
100,200,300:燃料電池
1:発電部
1a、1b、1c:単電池
2:燃料部
3:燃料マニホールド
4:排出マニホールド
5:伝達機構
11:燃料極
12:酸化剤極
13:電解質膜
21:燃料
22:移動室
41a、41b、41c:支流路
42:主流路
42a:排出弁
421:排出口
422:封止受部
43:弁機構
43a、43b、43c:弁
431:可動部
432:封止手段
433:突出部
434:連動部
435:加重手段
436:封止部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体燃料が供給される燃料極と酸化剤源から酸化剤が供給される酸化剤極と前記燃料極及び前記酸化剤極に挟持された電解質膜から構成される単電池を複数有する発電部と、
前記発電部外部に配置され、前記気体燃料または前記気体燃料前駆体を貯蔵する燃料部と、
前記燃料部と前記単電池に接続され、複数の前記単電池のそれぞれの前記燃料極に対して前記気体燃料を供給する燃料マニホールドと、
複数の前記単電池のそれぞれの前記燃料極に接続され、前記燃料極の内部の前記気体燃料と前記酸化剤から生成された不純物質と前記電解質膜を通して前記酸化剤極側から浸透してきた浸透物質とを含む内部物質を前記発電部外部へと移動させる排出マニホールドとを備え、
前記発電部は発電中に前記気体燃料を前記発電部の外部へと排出しない閉鎖系であり、
前記排出マニホールドは、
前記燃料極それぞれの前記内部物質を複数の前記燃料極の間で移動させない閉状態と、前記燃料極それぞれの前記内部物質を全ての前記燃料極から前記発電部外部へ移動させる開状態とを制御する弁機構を有することを特徴とする燃料電池。
【請求項2】
前記排出マニホールドは、
前記燃料極それぞれに接続された複数の支流路と、
前記支流路それぞれを接続する主流路とを備え、
前記弁機構は、前記支流路それぞれ、または前記支流路それぞれに隣接する前記支流路との間の前記主流路に少なくとも1つ設けられる弁であり、
前記弁それぞれは、全て前記開状態か前記閉状態のどちらか一方の同じ状態を取ることを特徴とする請求項1記載の燃料電池。
【請求項3】
前記弁機構は、複数の前記弁全てを前記開状態か前記閉状態のどちらか一方の同じ状態の動きを連動させる連動部を供えていることを特徴とする請求項2記載の燃料電池。
【請求項4】
前記燃料部は、前記発電部へ着脱可能な着脱機構を有するカートリッジであり、
前記弁機構は、前記開状態または前記閉状態のいずれか一方の状態を制御する可動部を有し、
前記カートリッジを着脱するときに用いられる力を前記可動部へ伝える伝達機構を備える事を特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の燃料電池。
【請求項5】
前記排出マニホールドは前記カートリッジへ接続され、前記内部物質は前記カートリッジの装着時または取り外し時の少なくともどちらか一方のときに前記カートリッジへと排出されることを特徴とする請求項4に記載の燃料電池。
【請求項6】
前記弁機構は、熱によって移動することにより前記開状態または前記閉状態のいずれか一方の状態を制御する可動部を有し、
前記発電部と前記可動部を熱的に接続し、前記発電部における発電中の熱を前記可動部へと伝熱する伝熱部を備え、
前記可動部が前記伝熱部から前記熱を受容している時には前記弁機構が閉状態となることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の燃料電池。
【請求項1】
気体燃料が供給される燃料極と酸化剤源から酸化剤が供給される酸化剤極と前記燃料極及び前記酸化剤極に挟持された電解質膜から構成される単電池を複数有する発電部と、
前記発電部外部に配置され、前記気体燃料または前記気体燃料前駆体を貯蔵する燃料部と、
前記燃料部と前記単電池に接続され、複数の前記単電池のそれぞれの前記燃料極に対して前記気体燃料を供給する燃料マニホールドと、
複数の前記単電池のそれぞれの前記燃料極に接続され、前記燃料極の内部の前記気体燃料と前記酸化剤から生成された不純物質と前記電解質膜を通して前記酸化剤極側から浸透してきた浸透物質とを含む内部物質を前記発電部外部へと移動させる排出マニホールドとを備え、
前記発電部は発電中に前記気体燃料を前記発電部の外部へと排出しない閉鎖系であり、
前記排出マニホールドは、
前記燃料極それぞれの前記内部物質を複数の前記燃料極の間で移動させない閉状態と、前記燃料極それぞれの前記内部物質を全ての前記燃料極から前記発電部外部へ移動させる開状態とを制御する弁機構を有することを特徴とする燃料電池。
【請求項2】
前記排出マニホールドは、
前記燃料極それぞれに接続された複数の支流路と、
前記支流路それぞれを接続する主流路とを備え、
前記弁機構は、前記支流路それぞれ、または前記支流路それぞれに隣接する前記支流路との間の前記主流路に少なくとも1つ設けられる弁であり、
前記弁それぞれは、全て前記開状態か前記閉状態のどちらか一方の同じ状態を取ることを特徴とする請求項1記載の燃料電池。
【請求項3】
前記弁機構は、複数の前記弁全てを前記開状態か前記閉状態のどちらか一方の同じ状態の動きを連動させる連動部を供えていることを特徴とする請求項2記載の燃料電池。
【請求項4】
前記燃料部は、前記発電部へ着脱可能な着脱機構を有するカートリッジであり、
前記弁機構は、前記開状態または前記閉状態のいずれか一方の状態を制御する可動部を有し、
前記カートリッジを着脱するときに用いられる力を前記可動部へ伝える伝達機構を備える事を特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の燃料電池。
【請求項5】
前記排出マニホールドは前記カートリッジへ接続され、前記内部物質は前記カートリッジの装着時または取り外し時の少なくともどちらか一方のときに前記カートリッジへと排出されることを特徴とする請求項4に記載の燃料電池。
【請求項6】
前記弁機構は、熱によって移動することにより前記開状態または前記閉状態のいずれか一方の状態を制御する可動部を有し、
前記発電部と前記可動部を熱的に接続し、前記発電部における発電中の熱を前記可動部へと伝熱する伝熱部を備え、
前記可動部が前記伝熱部から前記熱を受容している時には前記弁機構が閉状態となることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の燃料電池。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−192556(P2011−192556A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−58448(P2010−58448)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】
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