説明

燃焼器システムにおける不純物検出

【課題】本発明は、燃焼器システム(10)及び該燃焼器システム(10)において不純物を測定する方法を開示する。
【解決手段】本燃焼器システム(10)は、上流の燃料噴射部位(18)と、下流のタービン燃焼器(20)と、複数の軸方向サブゾーン(32、34、36、38)からなるタービン燃焼器(20)における火炎ゾーン(22)と、複数の軸方向サブゾーン(32、34、36、38)の少なくとも1つの非軸方向直接光学ビューを取得するように構成された光ポート組立体(24)と、光ポート組立体(24)と光導通した不純物検出システム(26)とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、総括的には光学式火炎検出に関し、具体的には、熱原子発光による燃焼器システムの液体燃料火炎内における微量元素の測定に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービン及びバーナは、気体及び液体燃料を含む様々なタイプの燃料で作動するように構成することができる。天然ガス及び合成ガスのような気体燃料は、大半の装置を作動させるが、様々な品質の留出又は灰分含有燃料を使用して作動させることができることは、ガスタービン製品ラインにとって重要なイネイブラとなる。低級液体燃料の使用に関しての1つの大きな作動上の問題点は、例えば高温ガス通路腐食及び断熱皮膜劣化のようなタービン材料に悪影響を引き起こすおそれがある微量レベル金属元素が燃料中に存在することである。これらの汚染物質は、それが存在する場合には燃焼しかつ反応物質を形成し、これら反応物質は、不都合なことにチャンバ(燃焼器)壁の内側を被覆し、幾つかのケースでは、空気流れを妨害しかつシステムが最適に作動するのを妨げる可能性がある。液体燃料中の幾つかの金属元素の質量でほぼ1ppmのオーダでの濃度は、この点に関して有害なものとなることが知られている。さらに、燃料の質は、燃焼器システムが設置される世界の様々な地域で大きく異なっている。従って、(存在する場合には)特定の環境内に存在する可能性がある汚染物質を検出しかつ測定することが極めて望ましい。
【0003】
バナジウムのような金属元素の幾らかの存在による高温腐食に抗する通常の防御策は、燃料に腐食防止剤を添加することである。腐食防止剤の濃度は一般的に、燃料中の金属汚染物質のレベルの関数として調整される。防止剤による腐食性金属元素に対する過剰補償は、タービン構成要素上に付加的な灰分付着物の形成を引き起こす可能性がある。従って、使用する時には、燃料中の腐食性金属元素のレベル並びに腐食防止剤を連続して監視するのが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7334413号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
液体燃料における不純物又は汚染物検出を行なう幾つかの現在公知の方法及びシステムが存在するが、複数の検出器システムの複雑さ及びコストに関して欠点が存在する。従って、当技術分野において不純物の測定を行なうのにより有効な方法で正確な測定を行なうことができるシステム及び方法に対する必要性が依然として存在している。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態は、燃焼器システムである。本燃焼器システムは、上流の燃料噴射部位と、下流のタービン燃焼器と、複数の軸方向サブゾーンからなるタービン燃焼器における火炎ゾーンと、複数の軸方向サブゾーンの少なくとも1つの非軸方向直接光学ビューを取得するように構成された光ポート組立体と、光ポート組立体と光導通した不純物検出システムとを備える。
【0007】
本発明の別の実施形態は、燃焼器システムである。本燃焼器システムは、上流の燃料噴射部位と、下流のタービン燃焼器と、複数の軸方向サブゾーンからなるタービン燃焼器における火炎ゾーンと、該燃焼器システムの近傍に配置されて作動時に火炎を励起させる電極組立体と、複数の軸方向サブゾーンの少なくとも2つの直接光学ビューを取得するように構成された光ポート組立体と、光ポート組立体と光導通した不純物検出システムとを備える。
【0008】
本発明の別の実施形態は、燃焼器システムである。本燃焼器システムは、燃料ラインと、スリップストリーム燃料ラインと、燃料ライン上に配置された上流の燃料噴射部位と、燃料ライン上に配置された下流のタービン燃焼器と、スリップストリーム燃料ライン上に配置されてタービン燃焼器に流れる燃料の不純物を分析する誘導結合プラズマ(ICP)分析器とを備える。
【0009】
本発明のさらに別の実施形態は、燃焼器システムにおいて特定の不純物を分析し測定する方法である。本方法は、燃焼器システムの火炎ゾーン内に液体燃料を噴射するステップと、燃焼器システムの火炎ゾーン内に火炎を発生させるステップと、外部励起を与えることによって火炎の温度を上昇させるステップと、火炎ゾーンの複数の軸方向サブゾーンからの火炎の直接発光信号を光ポート組立体を通して検出器システムに結合するステップと、複数の軸方向サブゾーンからの発光信号を分析して液体燃料中に存在する不純物種を検出するステップとを含む。
【0010】
本発明のこれら及びその他の特徴、態様並びに利点は、図面全体を通して同じ参照符号が同様の部品を表している添付図面を参照して以下の詳細な説明を読むことにより一層良好に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係る燃焼器システムの概略図。
【図2】本発明の一実施形態に係るエクサイタ組立体を備えた燃焼器システムの概略図。
【図3】本発明の一実施形態に係るスリップストリーム内にICP分析器を備えた燃焼器システムの概略図。
【図4】本発明の一実施形態に係るナトリウムの火炎発光スペクトルを示す図。
【図5】本発明の一実施形態に係る実験装置を示す図。
【図6】本発明の一実施形態に係る火炎の「ノズル端部ゾーン」でのマグネシウム及びバナジウムの比較火炎発光スペクトルを示す図。
【図7】本発明の一実施形態に係る「中間火炎ゾーン」でのマグネシウム及びバナジウムの比較火炎発光スペクトルを示す図。
【図8】本発明の一実施形態に係る火炎の「端部ゾーンの先端」でのマグネシウム及びバナジウムの比較火炎発光スペクトルを示す図。
【図9】本発明の一実施形態に係る火炎の「下流ゾーン」でのマグネシウム及びバナジウムの比較火炎発光スペクトルを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書で説明するシステム及び方法は、燃焼器システムにおける不純物検出に関する実施形態を含む。好適な燃焼装置には、例えば加熱炉、オーブン、及びガスタービンエンジンのようなエンジンを含むことができる。
【0013】
以下の明細書及び提出した特許請求の範囲において、数詞を付していない表現は、文脈がそうでないことを明確に示していない限り、複数の指示対象物も含む。
【0014】
熱原子発光による液体燃料火炎中の微量元素の測定(火炎光度法)は、ガスタービン用途における燃料品質の監視のための魅力的なコンセプトである。火炎光度法は、受動的なものであり、燃焼ゾーンへの光アクセスのみを必要とし、かつ入射光又は外部エネルギー入力を必要とせず、燃焼プロセスに依存して検体を励起するのに必要なエネルギーを与える。
【0015】
光学分光光度計によって燃焼火炎セルを監視することは、該燃焼セル内で燃焼する有害汚染物質の発生可能性を監視することを可能にすることができる。燃料及び検体基質の両方としてディーゼル燃料のような炭化水素燃料を使用すること及び遷移金属の識別及び定量化のために火炎光度法を使用することは、およそ未開発である。不純物識別の場合に、遷移金属元素は、公知の波長のスペクトル発光線を有する特性光線を発する。この発光は主として、それぞれの元素の原子特性によって決まる電子エネルギーレベル遷移によるものである。これらのスペクトル発光線は、分光光度計で監視する場合に、その時に燃料供給源を適切に処理することができるようにする警報条件を可能にするようにすることもできる。
【0016】
燃焼器エンジンにおいて監視することができる不純物には、例えばナトリウム(Na)、カリウム(K)、リチウム(Li)、バナジウム(V)、鉛(Pb)、カルシウム(Ca)、水素(H)及び炭素(C)が含まれる。一実施形態では、これらの元素の全てに許容される最大濃度は、約0.2ppmである。特定の実施形態では、この最大濃度は、約0.1ppmである。
【0017】
不純物の幾らかはまた、会合分子の特徴を示す関連分光吸収線を有する。不純物は、燃焼設備との測定装置の統合の複雑さのために、光吸収によって検出するのが困難となる可能性がある。従って、燃焼プロセスから発光スペクトルを直接収集することは、吸収ベースの検出と比較して不純物を検出するより簡単な方法である。
【0018】
本発明の実施形態は、燃焼器システム及び該燃焼器システムにおいて特定の不純物を分析し測定する方法を提供する。燃焼器システムは、気体燃料又は液体燃料供給することができる。図1は、本発明の実施形態に係る燃焼器システム10を示している。燃焼器システム10は、圧力境界部12、逆流スリーブ14、内側ライナ16、上流の燃料噴射部位18、下流のタービン燃焼器20、火炎ゾーン22、光ポート組立体24及び不純物検出システム26を含む。本明細書で使用する場合の火炎ゾーン22は、システムが作動している時に火炎28が存在すると想定される燃焼器システム10の一部分である。燃焼器システム10内における火炎ゾーン22は、複数の軸方向サブゾーンに分割することができる。本明細書で使用する場合の軸方向サブゾーンは、その様々な温度プロフィールによって決まる異なるゾーンである。一実施形態では、火炎ゾーンは、燃焼器システムの作動時にノズル端部における燃料噴射部位から該火炎ゾーン22の軸線に沿って上昇する温度の火炎を含む。
【0019】
例えば、火炎が図1に示すようにノズル端部から始まりかつタービンに向けて延びる場合には、火炎ゾーン22は、火炎が作動の時点で存在すると考えられるゾーンとなる。ノズル端縁ゾーン32、中間火炎ゾーン34、火炎ゾーンの先端36及び下流ゾーン38は、火炎ゾーン22の異なる軸方向サブゾーンである。一実施形態では、ノズル端縁ゾーン32は、中間火炎ゾーン34と比較してより低い温度を有し、この温度は火炎ゾーンの先端36でさらに上昇し、次に下流ゾーン38でさらに一層上昇する。
【0020】
本明細書で使用する場合の光ポート組立体24は、燃焼ゾーンの1以上の部分に配向された複数の光ポート42、44、46、48を含むことができる。一実施形態では、光ポート組立体24は、複数の軸方向サブゾーンの少なくとも1つの非軸方向直接光学ビューを取得(収集)するように構成される。本明細書で使用する場合の非軸方向ビューというのは、火炎のビューが燃焼器のノズルを通してのものではないことを意味している。本明細書で使用する場合の直接光学ビューというのは、如何なる固体介在材料もない状態での火炎のビューである。このことを達成するために、一実施形態では、光ポート42、44、46、48は、火炎28の直接光学ビューを取得するように燃焼器システムの圧力境界部12を貫通している。
【0021】
一実施形態では、複数の光ポート42、44、46、48は、火炎ゾーン22における火炎28の異なるビューを取得するように整列している。別の実施形態では、複数の光ポートは、複数の軸方向サブゾーンの少なくとも2つの直接ビューを取得するように構成される。例えば、火炎ゾーン22の軸方向サブゾーンのいずれか又は各々の垂直方向又は半径方向ビューを有する1以上の光ポートを設け、それによって燃焼器システム10の作動時に火炎の異なる部分の半径方向ビューイング(観察)を行なうことができる。異なる軸方向サブゾーンから取得した熱原子スペクトルは、燃料供給源の特定の不純物について異なる可能性がある。この差異は、単独で又は存在する他の不純物の存在下で不純物のいずれかの発光スペクトルに影響を及ぼす様々な要因によって決まる可能性がある。例えば、2つの異なる軸方向サブゾーンにおける温度差により、不純物の異なるピークの異なる顕示レベルを許す可能性がある。他の実施例では、1つの不純物の発光ピークの消滅は、最初の不純物ピークの波長での及び該波長の周りでの他の不純物発光ピークの強度によって決まる可能性があり、また発光ピークの強度は、測定時における火炎の温度によって決まる可能性がある。
【0022】
また、火炎のより良好なビューイング角度を可能にする火炎の斜めビューを有し、それによって観察領域寸法を最大にする1以上の光ポートを設けることができる。一実施形態では、監視システムは、ガス入口及び出口に対する光ポートの位置を設計することによって、ガス入口からのガス流れとの干渉を回避する。
【0023】
一実施形態では、光ポート組立体24は、不純物検出システム26と光導通している。光ポート組立体24及び不純物検出システム26間の光導通状態は、直接的に又は光ファイバ50の組を通してかの何れかで生じさせることができる。一実施形態では、不純物検出システムは、ナトリウム、カリウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、鉛及びバナジウムからなる群から選択される1種以上の元素を含む不純物種を検出するように構成される。別の実施形態では、不純物検出システムは、ナトリウム、カリウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、鉛及びバナジウムからなる群から選択される元素の1種以上の酸化物を含む不純物種を検出するように構成される。
【0024】
一実施形態では、不純物検出システム26はセンサ組立体を含む。センサ組立体は、火炎の熱原子発光スペクトルを検知するのを助ける。燃焼システム内における不純物の濃度は、極めて低いもの、例えばppmレベルの状態のものとなる可能性がある。このような低い不純物のレベルでは、収集したスペクトルは、極めて弱いものとなりかつ検出するのが困難なものとなる。従って、熱原子発光を検出するために非常に多くの利点を有する装置が必要となる。この実施形態のセンサ組立体は、熱原子発光を検出しかつさらなる分析のために送信することができるいずれか1以上の測定器を含むことができる。実施例には、分光光度計、光ダイオード、アバランシェ光ダイオード及び光電子増倍管が含まれる。一実施形態では、センサ組立体は、アバランシェ光ダイオード(APD)を含む。さらに別の実施形態では、アバランシェ光ダイオードは、約500nmにおいて10%よりも大きい量子効率を有する。一実施形態では、センサ組立体は、300〜700nmの範囲の入射波長において10%よりも大きい量子効率を有する光電子増倍管(PMT)を含む。幾つかの実施形態では、PMTは、1000以上のゲインレベルで作動する。
【0025】
一実施形態では、不純物検出システム26はさらに、センサ組立体からの出力信号を分析するように構成された分析器組立体を含む。分析器組立体は、電子信号プロセッサを含むことができ、この電子信号プロセッサは、センサ組立体から受信した又は該センサ組立体によって別の方法で送信されたリアルタイムデータを分析しかつ処理するように構成される。
【0026】
収集した熱スペクトルはまた、意図した不純物の熱スペクトルの明瞭さを低下させるバックグラウンドノイズを含む可能性がある。例えば、ノッチフィルタのような光学フィルタにより、他の材料からのバックグラウンド放射又は照射が選択不純物に関連する信号を混乱させるのを防止することができる。従って、一実施形態では、不純物検出システム26はさらに、タービン燃焼器における燃料中に存在する不純物の特有の熱原子発光の通過を選択的に可能にするように構成されたフィルタ組立体を含む。
【0027】
薄膜、厚膜又はバルクフォームの希土類ドープガラス、或いは厚膜ポリマーの形態の誘電体材料を備えたフィルタ組立体を使用することを含む幾つかの方法を使用して、光学フィルタ処理を実行することができる。誘電体材料の薄膜フィルタは、それらを光学的に調整して使用者の要求を満たすことができるような可撓性を備えている。例えば、フィルタは、該フィルタが可視及び/又は紫外線(UV)光線の多くを遮断しながら、580〜600nm光線のみを通過させるのを可能にするように設計することができる。原理的には、これにより、大きな波長範囲を有する検出器が可能になって、ナトリウムのような特定の発光線(590nmの)を観察することができる。フィルタ組立体は、様々な方法で燃焼器システム内に導入することができる。一実施形態では、光学フィルタ30は、火炎ゾーン22から信号を受信する表面の不純物検出組立体26上に直接付着させるか又は光ポートの内部に組込まれる。
【0028】
一実施形態では、フィルタ組立体は、異なる通過帯域幅を有するように調整して異なる不純物の波長範囲に適用可能にすることができる。一実施形態では、フィルタ組立体の通過帯域幅は30nm以下である。別の実施形態では、フィルタ組立体の通過帯域幅は10nm以下である。
【0029】
不純物の発光の波長は、不純物元素を特定(識別)するのに役立つが、発光光線の強度は、不純物の濃度を定量化するために使用することができる。例えば、バナジウムのような幾つかのケースでは、一般的なガスタービン火炎温度は、原子の有効な励起を生じさせるのに充分なほど高くない。励起状態で存在する原子の数は、火炎内でのプラズマの発生などにより火炎温度を上昇させることによって増加させることができる。火炎の両側に設置した電極間のギャップを通して電気を流すことにより、サンプルを霧化しかつ得られた原子をより高い電子状態に励起するのに必要なエネルギーを得ることができる。
【0030】
一実施形態に係る燃焼器システム10は、図2に示すように火炎ゾーン22の温度を上昇させるように配置されたエクサイタ組立体を含む。図2のエクサイタ組立体は、火炎28を貫通して放電を行ない、それによって高い燃焼温度を発生させかつプラズマを発生させるように構成された電極組立体60を含む。作動状態にある時の電極組立体60は、火炎を励起させる。電極組立体60は、一対の電極62、64を含むことができるか又は複数の非接続電極対を含むことができる。火炎の近辺に電極を挿入しかつ放電を行なうことによって又は電磁誘導によって達成された火炎28のプラズマ励起により、より高い温度でのより有効な原子励起が可能になる。
【0031】
一実施形態では、電極組立体60は、火炎ゾーン22内にプラズマ66を発生させる高速振動電磁場を含む。さらに別の実施形態では、プラズマ66は、RFコイルによって発生される。別の例示的な実施形態では、誘導結合プラズマ(ICP)分析器を使用して、タービン燃焼器に流れる燃料の不純物を分析するようにする。さらに別の実施形態では、火炎28の周りに複数のRFコイル及び電極を配置して、該火炎28との間の電磁エネルギーのオーバラップを高める電磁場分布を形成する。
【0032】
燃料中の不純物の分析は、図3に示すようにシステムの燃焼器チャンバ内又は燃料のスリップストリームを供給するチャンバ内かのいずれかで行なうことができる。スリップストリーム72は、火炎ゾーン22に流入する主燃料ライン70から取出すことができる。燃料ライン又はスリップストリームで生じる火炎の熱原子発光を分析して、燃料中の不純物の識別及び定量化を行なうことができる。一実施形態では、ICP分析器74は、スリップストリーム燃料ライン上に配置して、タービン燃焼器に流れる燃料の不純物を分析するようにする。
【0033】
一実施形態は、燃料中の不純物を測定しかつ分析する方法を含む。一実施形態では、燃料中の特定の不純物は、燃料器システム10内で燃料を燃焼させることによって測定されかつ分析される。別の実施形態では、燃料は、燃料ラインのスリップストリーム用として形成した燃焼ゾーン内で燃焼させる。例示的な実施形態では、燃料はICP74の内部で燃焼させる。例えば、液体燃料は、上流の燃料噴射部位を通して燃焼システム10の火炎ゾーン22内に噴射される。火炎ゾーン22の複数の軸方向サブゾーン内で発生した火炎の直接発光信号は、光ポート組立体24を通して不純物検出システム26に結合される。複数の軸方向サブゾーンからの発光信号は、分析されて液体燃料中に存在する不純物種を検出する。先のパラグラフで開示したように、火炎の温度は、外部励起を与えることによって上昇させて、測定の精度を高めることができる。この方法を使用することによって検出した不純物種には、ナトリウム、カリウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、鉛及びバナジウムからなる群から選択される1種以上の元素及び/又は該元素の酸化物が含まれる。一実施形態では、不純物種を検出する方法は、該不純物種の異なるピーク強度帯域幅の比較を含む。
【実施例】
【0034】
実施例1
燃焼しているジェット燃料の光学発光を特徴づけるために、スプレー燃料火炎燃焼器装置を使用した。シリンジポンプを使用してクリーンジェット燃料を汚染物質含有燃料と混合して、汚染物の異なる濃度を生成した。図4は、異なるナトリウムの濃度を有する火炎内のナトリウム発光線の相対的強度を示している。発光強度は、燃料中におけるナトリウム濃度にほぼ比例していた。百分率で表したナトリウムの濃度が、テスト時に得られた最大濃度と比較して決定された。
【0035】
実施例2
図5に示すように、実験システム80を設定して、光学式火炎分光法によって液体燃料不純物の可能性を評価した。異なる不純物レベルの液体燃料を使用して、予熱空気を用いた大気圧燃焼実験を行なった。空気圧縮機82により、予熱燃焼空気を供給し、また天然ガス圧縮機84により、天然ガスを供給した。加圧液体分配タンク86から、液体燃料を供給した。分配タンクは、ガスシリンダ(図示せず)からの窒素で加圧した。
【0036】
図5に示すように試験装置を垂直方向に配置して、ガスが試験装置の出口から下向きに流れるようにした。燃焼セクション90は、石英管92で構成して、燃料ノズル94及び燃焼プロセスへの視覚アクセスを可能にした。石英管は、その長さが15インチ〜20インチの範囲にありかつその直径が4.92インチであった。8ポート排気プローブ96を使用して、発光測定を行なった。プローブ96により、燃焼器ライナにわたる如何なる半径方向移動も行なわないで、領域平均発光を測定した。火炎の発火は、スパークにより点火した水素トーチ98を使用することによって達成した。データ収集装置(図示せず)と共同させたデータ収集ソフトウェアによって、システム温度、流量計圧力、流量、ノズル圧力低下、火炎温度及び発光を監視した。
【0037】
燃焼実験においては、燃料としてディーゼルを使用し、またクリーンディーゼル、マグネシウム(Mg)を含有したディーゼル、並びにマグネシウム及びバナジウム(V)を含有したディーゼルの試験運転を3000°F及び3300°Fの温度で行なった。外部実験室による使用クリーンディーゼルの独自の分析によると、ナトリウム、ニッケル及びバナジウムのレベルは、検出可能限界値以下であることを示した。具体的には、バナジウム及びニッケルのレベルは3ppmm(parts per million meters)以下であり、またナトリウムのレベルは5ppmm以下であった。燃料は、鋼製圧力容器の内部に取付けられたポリウレタン容器内に静かに注いでシステム内に送給するようにした。
【0038】
所望レベルの汚染物質を有する燃料を得るために、化学天秤を使用して100ppb又はそれよりも多くの量として油溶性有機金属標準品を20mlガラスびんに計り分けかつこの油溶性有機金属標準品を清浄な2リットルガラス容器内に収容された既知量のディーゼル燃料内にピペットによって量的に移動させた。燃料は、均質になるまで振り動かした。バナジウム混入燃料の場合には、数日後に、幾らかの分離が観察されたが、手作業による撹拌でその混合物を素早く再均質化させた。
【0039】
幾つかの光コリメータポート、USB分光器及びコンピュータを備えた光学式火炎スペクトル収集装置(図示せず)を使用して、大気圧燃焼試験装置80内で発生させた火炎の光学スペクトルを取得した。光コリメータは、試験装置上に取付けかつ火炎の異なる部分から発した光線を収集するように調整した。光ファイバケーブルを使用して、光線を収集しかつ収集光線を小型USB分光器に送信した。コンピュータにより、捕捉光学スペクトルを蓄積した光ファイバ分光器を制御した。付加的な高分解能分光器(0.02nm分解能)を付加して、火炎のノズル端縁部分から高分解能スペクトルを取得した。光学フィルタとして、特に最も輝度の強いMg発光線に調整した518nm狭帯域フィルタを導入した。
【0040】
各火炎について、火炎の異なる部分から4つの異なるスペクトルを各々収集した。図6〜図9に、それぞれノズル端縁ゾーン102、中間火炎ゾーン104、火炎ゾーンの先端106及び下流ゾーン108から取得した火炎発光スペクトル112、114、116、118をそのそれぞれの高分解能スペクトル122、124、126、128と共に示している。火炎の4つの部分全てについて、スペクトル132が100ppm Mg及び100ppm Vの両方に関連している場合には、付加的なMg関連発光ピークを検出し、また100ppm Mgのみに関連するスペクトル134は、クリーンディーゼル燃料の火炎から取得した発光スペクトル136と比較した。これらのピークは、384nmの原子Mg発光線及び372nmのマグネシウム酸化物(Mg−O)発光線として特定した。「ノズル端縁ゾーン」112において、518nmの弱いピークを観察した。このピークは、他の場所では検出されなかった。100ppm Mg及び100ppm Vの両方で汚染された燃料の発光スペクトル132は、「下流ゾーン」116以外の全ての位置において100ppm Mgでのみ汚染された燃料によって発生した火炎の発光スペクトル134に非常に類似していた。この位置において、バナジウム汚染燃料の光学スペクトルは、Mg関連ピークが存在しないことを示した。この現象は、Vと反応することによる火炎種からの原子Mg及びMg−Oの消滅に起因するものである。この点において、Mg発光は、火炎の異なる部分の火炎発光を調べかつ比較した時に、Vの存在を間接的に検出するように使用することができる。従って、Mg及びMg−Oの検出により、直接的なバナジウムの検出をせずにバナジウムの存在を推測する方法を可能にすることができる。
【0041】
本明細書で説明した実施形態は、特許請求の範囲に記載した本発明の要素に対応する要素を有するシステム及び方法の実施例である。本明細書は、特許請求の範囲に記載した本発明の要素に同様に対応する別の要素を有する実施形態を当業者が製作しかつ使用することを可能にすることができる。従って、本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲の文言と相違しないシステム及び方法を包含し、またさらに特許請求の範囲の文言と本質的でない相違を有するその他の物品、システム及び方法を包含する。本明細書では、一部の特徴及び実施形態のみを例示しかつ説明してきたが、当業者には多くの修正及び変更を想起することができるであろう。特許請求の範囲は、全てのそのような修正及び変更を保護するものである。
【符号の説明】
【0042】
10 燃焼器システム
12 圧力境界部
14 逆流スリーブ
16 内側ライナ
18 燃料噴射部位
20 タービン燃焼器
22 火炎ゾーン
24 光ポート組立体
26 不純物検出システム
28 火炎
30 光学フィルタ
32 ノズル端縁ゾーン
34 中間火炎ゾーン
36 火炎ゾーンの先端
38 下流ゾーン
42、44、46、48 光ポート
50 光ファイバ
60 電極組立体
62、64 一対の電極
66 プラズマ
70 主燃料ライン
72 スリップストリーム燃料ライン
74 ICP分析器
80 システム
82 空気圧縮機
84 ガス圧縮機
86 液体分配タンク
90 燃焼セクション
92 石英管
94 燃料ノズル
96 排気プローブ
98 水素トーチ
102 ノズル端縁ゾーン
104 中間火炎ゾーン
106 火炎ゾーンの先端
108 下流ゾーン
112 ノズル端縁ゾーンの火炎発光スペクトル
114 中間火炎ゾーンの火炎発光スペクトル
116 火炎ゾーンの先端の火炎発光スペクトル
118 下流ゾーンの火炎発光スペクトル
122 ノズル端縁ゾーンの高分解能火炎スペクトル
124 中間火炎ゾーンの高分解能火炎スペクトル
126 火炎ゾーンの先端の高分解能火炎スペクトル
128 下流ゾーンの高分解能火炎スペクトル
132 100ppm Mg及び100pm Vに関連するスペクトル
134 100ppm Mgに関連するスペクトル
136 クリーンディーゼル燃料のスペクトル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼器システム(10)であって、
上流の燃料噴射部位(18)と、
下流のタービン燃焼器(20)と、
複数の軸方向サブゾーン(32、34、36、38)からなる前記タービン燃焼器(20)における火炎ゾーン(22)と、
前記複数の軸方向サブゾーン(32、34、36、38)の少なくとも1つの非軸方向直接光学ビューを取得するように構成された光ポート組立体(24)と、
前記光ポート組立体(24)と光導通した不純物検出システム(26)と
を備えるシステム。
【請求項2】
前記光ポート組立体(24)が、複数の光ポート(42、44、46、48)を含む、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
前記複数の光ポート(42、44、46、48)が、前記複数の軸方向サブゾーン(32、34、36、38)の少なくとも2つの直接ビューを取得するように構成される、請求項2記載のシステム。
【請求項4】
前記不純物検出システム(26)が、ナトリウム、カリウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、鉛及びバナジウムからなる群から選択される1種以上の元素を含む不純物種を検出するように構成される、請求項1記載のシステム。
【請求項5】
前記不純物検出システム(26)が、ナトリウム、カリウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、鉛及びバナジウムからなる群から選択される元素の1種以上の酸化物を含む不純物種を検出するように構成される、請求項1記載のシステム。
【請求項6】
前記火炎ゾーン(22)の温度を上昇させるように配置されたエクサイタ組立体をさらに含む、請求項1記載のシステム。
【請求項7】
前記エクサイタ組立体が、プラズマ(66)放電を発生するように構成された電極組立体(60)を含む、請求項6記載のシステム。
【請求項8】
燃焼器システム(10)であって、
上流の燃料噴射部位(18)と、
下流のタービン燃焼器(20)と、
複数の軸方向サブゾーン(32、34、36、38)からなる前記タービン燃焼器(20)における火炎ゾーン(22)と、
該燃焼器システム(10)の近傍に配置されて作動時に前記火炎(28)を励起させる電極組立体(60)と、
前記複数の軸方向サブゾーン(32、34、36、38)の少なくとも2つの直接光学ビューを取得するように構成された光ポート組立体(24)と、
前記光ポート組立体(24)と光導通した不純物検出システム(26)と
を備えるシステム。
【請求項9】
燃焼器システム(10)であって、
燃料ライン(70)と、
スリップストリーム燃料ライン(72)と、
前記燃料ライン(70)上に配置された上流の燃料噴射部位(18)と、
前記燃料ライン(70)上に配置された下流のタービン燃焼器(20)と、
前記スリップストリーム燃料ライン(72)上に配置されて前記タービン燃焼器(20)に流れる燃料の不純物を分析する誘導結合プラズマ(ICP)分析器(74)と
を備えるシステム。
【請求項10】
燃焼器システム(10)において特定の不純物を分析し測定する方法であって、
前記燃焼器システム(10)の火炎ゾーン(22)内に液体燃料を噴射するステップと、
前記燃焼器システム(10)の火炎ゾーン(22)内に火炎(28)を発生させるステップと、
外部励起を与えることによって前記火炎(28)の温度を上昇させるステップと、
前記火炎ゾーン(22)の複数の軸方向サブゾーン(32、34、36、38)からの前記火炎(28)の直接発光信号を光ポート組立体(24)を通して検出器システムに結合するステップと、
前記複数の軸方向サブゾーン(32、34、36、38)からの前記発光信号を分析して前記液体燃料中に存在する不純物種を検出するステップと
を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−122817(P2011−122817A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−272249(P2010−272249)
【出願日】平成22年12月7日(2010.12.7)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】