説明

燃焼式排ガス処理装置

【課題】燃焼処理室の内壁に付着する固形物を掻き取るスクレーパを排ガスの燃焼処理中に駆動して、燃焼処理室の内壁から固形物を除去することにより装置の長時間の連続運転を可能とする燃焼式排ガス処理装置を提供する。
【解決手段】排ガスを燃焼分解して処理する燃焼処理室1と、燃料ガスと支燃ガスを予め混合した混合気を供給して火炎を燃焼処理室1内に形成するメインバーナMBと、燃焼処理室1の内壁に付着した固形物を掻き取るスクレーパ30を備えた燃焼式排ガス処理装置において、排ガスを燃焼分解して処理する処理中であってスクレーパ30の非動作時には、混合気を燃焼範囲内に調整してメインバーナMBに供給し、排ガスを燃焼分解して処理する処理中であってスクレーパ30の掻き取り動作時には、混合気を燃焼範囲外に調整してメインバーナMBに供給するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シラン系ガス(SiH,TEOS等)、ハロゲン系ガス(NF,ClF,SF,CHF等)、PFC(CF,C等)などを含む排ガスを燃焼分解して処理し無害化するための燃焼式排ガス処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体、液晶、太陽電池等の製造過程からシラン系ガスやPFCガスなどを含む排ガスが排出されるが、このような排ガスは、そのままでは人体に悪影響を及ぼしたり、地球温暖化の原因になる等の地球環境に悪影響を及ぼすので、大気に放出することは好ましくない。そこで、これらの排ガスを燃焼式排ガス処理装置に導いて、燃焼による酸化無害化処理を行うことが一般に行われている。この処理方法としては、燃料ガスを用いて炉内に火炎を形成し、この火炎により排ガスを燃焼させるようにしたものが広く採用されている。
【0003】
このような燃焼式排ガス処理装置において、シラン(SiH)を含む排ガスを燃焼処理(酸化処理)すると、以下の反応式で表されるようにシリカ(SiO)が生成される。
SiH+2O → SiO+2H
生成されたシリカ(SiO)は粉末状で燃焼処理室の内壁に付着して次第に堆積していく。そのため、燃焼処理室内に付着、堆積したシリカを含む粉体固形物を定期的に除去する必要があり、排ガス処理装置には固形物を燃焼処理室の壁面から掻き取って除去するためのスクレーパが設置されている。
この種のスクレーパを備えた排ガス処理装置は、例えば、特開2006−275307号公報、特開平11−193916号公報などに記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−275307号公報
【特許文献2】特開平11−193916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した排ガス処理装置は、半導体、液晶、太陽電池等の製造装置の下流側に接続されるが、排ガス処理装置がメンテナンス又は故障で停止すると、この排ガス処理装置に接続されたCVD等の製造装置も停止しなければならない。一旦、製造装置が停止すると再立ち上げに時間がかかり、製造ラインのスループットも落ちるため、排ガス処理装置は長時間連続運転できることが好ましい。
【0006】
しかしながら、上述した従来の排ガス処理装置においては、燃焼処理室内にシリカ等の固形物が付着、堆積した場合、通常、燃料ガスおよび排ガスの供給を停止して排ガスの燃焼処理を一旦停止した状態でスクレーパを駆動し、固形物を燃焼処理室の壁面から掻き取って除去することが行われていた。これは、排ガスの燃焼処理中にスクレーパを駆動すると、スクレーパが燃料ガスの燃焼雰囲気中および排ガスの燃焼雰囲気中を移動することになり、燃料ガスの燃焼および排ガスの燃焼に悪影響を及ぼし、燃焼を安全かつ安定した状態で維持することが難しいと考えられていたためである。特に、燃焼処理室の内周壁に、燃料ガスあるいは燃料ガスと酸素の混合気を噴出し、燃焼火炎を燃焼処理室に向けて形成するメインバーナが設置されている形式の排ガス処理装置にあっては、メインバーナが稼働している最中にスクレーパがメインバーナ部を横切ることになってメインバーナの燃焼火炎に多大な影響を与えることになると考えられていた。
【0007】
本発明者らは、メインバーナの手前(上流側)に燃料ガスと酸素を予め混合する予混合器を備えた形式の排ガス処理装置を連続運転し、排ガスの燃焼処理中にスクレーパを動作させて燃焼処理室の内周壁に堆積したシリカ(SiO)等の固形物を掻き取って除去する工程を繰り返し行った結果、排ガスの燃焼処理中にスクレーパを動作させると、メインバーナ配管(メインバーナと予混合器を接続する配管)へ逆火してしまう場合があることを見出した。その理由は、メインバーナから燃料ガスと酸素の混合気を供給しているので、スクレーパの動作によりメインバーナのノズル近辺の動圧変動などのために、ノズルからの混合気の吹き出し流速が不均一となり、メインバーナ配管へ逆火が起こると考えられる。
【0008】
本発明は、上述の事情に鑑みなされたもので、燃焼処理室の内壁に付着する固形物を掻き取るスクレーパを排ガスの燃焼処理中に駆動して、燃焼処理室の内壁から固形物を除去することにより装置の長時間の連続運転を可能とする燃焼式排ガス処理装置を提供することを第1の目的とする。
また、本発明は、燃焼処理室の内壁に付着する固形物を掻き取るスクレーパを排ガスの燃焼処理中に駆動して、スクレーパがメインバーナ部を横切っても、メインバーナ配管に逆火が起こることがない燃焼式排ガス処理装置を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した目的を達成するために、本発明の第1の態様は、排ガスを燃焼分解して処理する燃焼処理室と、燃料ガスと支燃ガスを予め混合した混合気を供給して火炎を前記燃焼処理室内に形成するメインバーナと、前記燃焼処理室の内壁に付着した固形物を掻き取るスクレーパを備えた燃焼式排ガス処理装置において、前記排ガスを燃焼分解して処理する処理中であって前記スクレーパの非動作時には、前記混合気を燃焼範囲内に調整して前記メインバーナに供給し、前記排ガスを燃焼分解して処理する処理中であって前記スクレーパの掻き取り動作時には、前記混合気を燃焼範囲外に調整して前記メインバーナに供給するようにしたことを特徴とする。
【0010】
本発明の第1の態様によれば、排ガスを燃焼分解して処理する処理中であってスクレーパの非動作時には、燃料ガスと支燃ガスとを予混合した混合気を燃焼範囲内に調整してメインバーナに供給する。メインバーナに供給された混合気は燃焼範囲内にあるため、メインバーナから吹き出されるときに燃焼して火炎を形成し、メインバーナの火炎により燃焼処理室に導入された排ガスを燃焼させて処理する。この場合、支燃ガスには、例えば、酸素を使用する。排ガスを燃焼分解して処理する処理中であってスクレーパの掻き取り動作時には、燃料ガスと支燃ガスとを予混合した混合気を燃焼範囲外に調整してメインバーナに供給する。メインバーナに供給される混合気は酸素が不足して燃焼範囲外にあるため、メインバーナから吹き出されるときには燃焼しない。このように、メインバーナおよびメインバーナ配管内にある混合気を燃焼範囲外とすることにより、メインバーナおよびメインバーナ配管内への逆火を防止することができる。そして、メインバーナから吹き出した燃焼範囲外にある混合気は、別途供給された酸素や空気等と混合して燃焼範囲内となって火炎を形成し、この火炎により燃焼処理室に導入された排ガスを燃焼させて処理する。この場合、支燃ガスには、例えば、空気を使用する。
【0011】
ここで、燃料ガスには、都市ガス、天然ガス、プロパン等を用いる。支燃ガスとは、可燃物の燃焼を助けるガスとして、本発明では、酸素、空気等の酸素源を含むガスをいう。
燃料ガスと支燃ガスの混合気は、燃料ガスの濃度が薄すぎても濃すぎても燃焼できなくなる。燃焼できる混合気に含まれる燃料ガスの濃度の限界を燃焼限界という。燃料ガスの濃度の薄い方の燃焼限界を下限界、濃い方の燃焼限界を上限界といい、燃料ガスの濃度がこの下限界と上限界の範囲にあるとき燃料ガスは燃焼し、この濃度範囲を燃焼範囲という。この燃焼範囲に含まれない範囲を燃焼範囲外という。
【0012】
本発明の好ましい態様は、前記支燃ガス中の酸素成分比を変えることにより、前記混合気を燃焼範囲内又は燃焼範囲外に調整する。
本発明によれば、支燃ガス中の酸素成分比を100%又はその近傍、すなわち、支燃ガスを酸素とし、支燃ガスとある一定量の燃料ガスとの流量混合比を燃焼範囲内に設定する。ここで、支燃ガス中の酸素成分比を21%、すなわち支燃ガスを空気とすることにより、燃料ガスと支燃ガスの流量混合比を変えずに混合気を燃焼範囲外に調整することができる。
【0013】
本発明の好ましい態様は、前記支燃ガスは、酸素又は空気であることを特徴とする。
前記支燃ガスを酸素とすることにより、前記混合気を燃焼範囲内に調整することができる。また、前記支燃ガスを空気とすることにより、前記混合気を燃焼範囲外に調整することができる。
【0014】
本発明の第2の態様は、燃料と酸素と空気を供給して排ガスを燃焼分解して処理する燃焼処理室と、該燃焼処理室の内壁に付着した固形物を掻き取るスクレーパを備えた燃焼式排ガス処理装置において、前記排ガスを燃焼分解して処理する処理中であって前記スクレーパの非動作時と前記スクレーパの掻き取り動作時とで、前記燃焼処理室への酸素および/または空気の供給箇所を切り替えるようにしたことを特徴とする。
【0015】
本発明の第2の態様によれば、排ガスを燃焼分解して処理する処理中であってスクレーパの非動作時には、例えば、メインバーナに燃料と酸素とを供給して火炎を形成し、燃焼処理室に旋回流を供給するためのノズルに空気を供給する。排ガスはメインバーナの火炎と混合して燃焼する。排ガスを燃焼分解して処理する処理中であってスクレーパの掻き取り動作時には、例えば、メインバーナに燃料と空気とを供給し、燃焼処理室に旋回流を形成するためのノズルに空気に加えて酸素を供給する。メインバーナから吹き出した燃料は、メインバーナに供給された空気および旋回流用ノズルに供給された酸素と混合して燃焼して火炎を形成する。排ガスはこの火炎と混合して燃焼する。
【0016】
本発明の好ましい態様は、前記燃焼処理室は、燃料を供給して火炎を前記燃焼処理室内に形成するメインバーナと、前記燃焼処理室内に気体を噴出して旋回流を形成するノズルとを備え、前記スクレーパの非動作時に、燃料と酸素を前記メインバーナに供給して火炎を前記燃焼処理室内に形成し、空気を前記ノズルに供給して前記燃焼処理室内に旋回流を形成し、前記スクレーパの掻き取り動作時に、燃料と空気とを前記メインバーナに供給するとともに空気および酸素を前記ノズルに供給して前記燃焼処理室内で燃料を燃焼させて火炎を形成したことを特徴とする。
【0017】
本発明の第3の態様は、燃料と酸素と空気を供給して排ガスを燃焼分解する燃焼処理室と、該燃焼処理室の内壁に付着した固形物を掻き取るスクレーパを備えた燃焼式排ガス処理装置において、前記燃焼処理室は、排ガスの処理開始時に点火するパイロットバーナと、排ガスを燃焼分解して処理する処理中に火炎を維持するメインバーナを備え、前記排ガスを燃焼分解して処理する処理中であって前記スクレーパの非動作時には、前記メインバーナから燃料を前記燃焼処理室に供給するとともに前記パイロットバーナの燃焼を停止し、前記排ガスを燃焼分解して処理する処理中であって前記スクレーパの掻き取り動作時には、前記メインバーナから燃料を前記燃焼処理室に供給するとともに前記パイロットバーナの燃焼を維持することを特徴とする。
【0018】
本発明の第3の態様によれば、排ガスの処理開始時に始動用として使用するパイロットバーナを排ガスを燃焼分解して処理する処理中であってスクレーパの掻き取り動作中に点火しておくことにより、スクレーパの動作中における失火を防止することができる。
【0019】
本発明の好ましい態様は、前記燃料を前記パイロットバーナに供給する系路にエジェクタ機構を設けたことを特徴とする。
本発明によれば、始動用のパイロットバーナの燃料供給系路にエジェクタ機構を設置してパイロットバーナから吹き出す燃料の圧力を高めることにより、パイロットバーナ火炎が圧力変動の影響を受けにくくなり、パイロットバーナ火炎を安定させることができる。したがって、スクレーパの動作中に、燃焼処理室内で失火が起こることを防止することができる。
【0020】
本発明の好ましい態様は、前記排ガスを燃焼分解して処理する処理中であって前記スクレーパの非動作時には、前記メインバーナから燃料と酸素を前記燃焼処理室に供給し、前記排ガスを燃焼分解して処理する処理中であって前記スクレーパの掻き取り動作時には、前記メインバーナから燃料と空気を前記燃焼処理室に供給することを特徴とする。
本発明によれば、排ガスを燃焼分解して処理する処理中であってスクレーパの非動作時には、メインバーナから燃料と酸素とを燃焼処理室に供給して火炎を形成する。排ガスはメインバーナの火炎により燃焼する。排ガスを燃焼分解して処理する処理中であってスクレーパの掻き取り動作時には、メインバーナに燃料と空気とを燃焼処理室に供給する。メインバーナから吹き出した燃料は、メインバーナから吹き出した空気および別途供給された支燃ガスと混合して燃焼し、火炎を形成する。排ガスはこの火炎により燃焼する。
【0021】
本発明の好ましい態様は、前記排ガスを燃焼分解して処理する処理中であって前記スクレーパの掻き取り動作時には、前記メインバーナとは異なる場所から酸素を前記燃焼処理室に供給することを特徴とする。
本発明によれば、前記排ガスを燃焼分解して処理する処理中であって前記スクレーパの掻き取り動作時には、メインバーナとは異なる場所から酸素を燃焼処理室に供給することにより、メインバーナから吹き出した燃料は、メインバーナとは異なる場所から供給された酸素と混合して燃焼し、火炎を形成する。排ガスはこの火炎により燃焼する。
【0022】
本発明において、前記メインバーナからは燃料と酸素を予め混合した状態で前記燃焼処理室に供給することができる。また、前記メインバーナからは燃料と空気を予め混合した状態で前記燃焼処理室に供給することができる。
【0023】
本発明の第4の態様は、排ガスを燃焼分解して処理する円筒状の燃焼処理室と、該燃焼処理室に面して形成された排ガス流入口と、該燃焼処理室の側面に形成された燃料の供給口および支燃ガスの供給口と、前記燃焼処理室の内壁に付着する固形物を掻き取るスクレーパを備えた燃焼式排ガス処理装置において、前記排ガスを燃焼分解して処理する処理中に前記スクレーパを動作させて上下に駆動することにより、前記スクレーパは前記燃料の供給口を横切って該燃料の供給口の近傍の固形物を掻き取り、前記スクレーパの非動作時には、前記スクレーパは前記燃料の供給口および支燃ガスの供給口とは離間した場所に退避していることを特徴とする。
【0024】
本発明の第4の態様によれば、排ガスを燃焼分解して処理している間に、所定のタイミングでスクレーパを動作させて上下に駆動し、燃焼処理室の燃料の供給口がある部分の内壁面に付着した固形物を掻き取ることができる。このように、排ガスの燃焼分解を行っている間にも固形物を除去することにより、排ガス処理装置の長時間の連続運転が可能となる。
【0025】
本発明の好ましい態様は、前記スクレーパは、燃料ガス又は燃料を供給して前記燃焼処理室内に火炎を形成するバーナ部の内壁に付着した固形物を掻き取ることを特徴とする。
前記スクレーパは、非動作時に、前記バーナ部の天板部に隣接した待機位置に退避している。
本発明の好ましい態様は、前記バーナ部の下方に位置して排ガスを燃焼分解して処理する燃焼室の内壁に付着した固形物を掻き取る第2のスクレーパを備えることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記第2のスクレーパは、非動作時に、前記燃焼室の下方にあって排ガスを冷却する冷却部の待機位置に退避していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、以下に列挙する効果を奏する。
(1)排ガスを燃焼分解して処理している間に、燃焼処理室の内壁に付着した固形物を掻き取るスクレーパを動作させて燃焼処理室の内壁から固形物を除去することにより、装置の長時間の連続運転が可能となる。
(2)排ガスを燃焼分解して処理する処理中であって燃焼処理室の内壁に付着した固形物を掻き取るスクレーパの動作時に、燃料ガスと支燃ガスを予め混合した混合気を燃焼範囲外に調整してメインバーナに供給することにより、メインバーナおよびメインバーナ配管への逆火を防止することができる。
(3)排ガスを燃焼分解して処理する処理中であって燃焼処理室の内壁に付着した固形物を掻き取るスクレーパの動作時に、始動用のパイロットバーナに点火して燃焼処理室内に種火を供給することにより、スクレーパ動作中における燃焼処理室内の失火を防止することができる。
(4)始動用のパイロットバーナの燃料供給系路にエジェクタ機構を設置してパイロットバーナから吹き出す燃料の圧力を高めることにより、パイロットバーナ火炎が圧力変動の影響を受けにくくなり、パイロットバーナ火炎を安定させることができる。したがって、スクレーパの動作中に、燃焼処理室内で失火が起こることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は、本発明の燃焼式排ガス処理装置の燃焼処理室の構成例を示す模式的断面図である。
【図2】図2は、本発明にかかる燃焼式排ガス処理装置の全体構成を示す概略図である。
【図3】図3は、図2に示すエジェクタの詳細構造を示す断面図である。
【図4】図4は、エジェクタ機構およびマスフローコントローラを備えた燃焼式排ガス処理装置を示す概略図である。
【図5】図5は、2つのスクレーパと燃焼処理室との関係を示す模式的断面図である。
【図6】図6(a)および図6(b)は、上下のスクレーパを示す斜視図であり、図6(a)は第1のスクレーパを図5のVIA方向から見た斜視図であり、図6(b)は第2のスクレーパを図5のVIB方向から見た斜視図である。
【図7】図7は、第2のスクレーパの動作の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係る燃焼式排ガス処理装置の実施形態について図1乃至図7を参照して説明する。なお、図1乃至図7において、同一または相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
図1は、本発明の燃焼式排ガス処理装置の燃焼処理室の構成例を示す模式的断面図である。燃焼処理室1は、全体として円筒状の容器として構成され、上部のバーナ部2と、下部の燃焼室3とから構成されている。なお、図1においては、燃焼室3の下方にある冷却部などは図示を省略している。
【0029】
バーナ部2は、バーナにより火炎を形成して排ガスを燃焼させる空間Sを形成する有底の円筒体11と、この円筒体11から所定間隔離間して設置され円筒体11を包囲するように設けられた外筒12とを有している。そして、円筒体11と外筒12との間には、燃焼用空気を保持する空気室19と、燃料ガス(燃料)と支燃ガス(たとえば酸素)との混合気を保持する混合気室20が形成されている。空気室19と混合気室20は、空気供給源とエジェクタにそれぞれに連通されている(後述する)。円筒体11の天板部(頂部)には、例えば半導体製造装置から排出されたシラン(SiH)等を含む排ガスG1を前記空間Sに導入する排ガス導入管14が接続されている。
【0030】
円筒体11には、空気室19と空間Sを連通する複数の空気ノズル15と、混合気室20と空間Sを連通する複数のノズル16からなるメインバーナMBとが設けられている。空気ノズル15は、円筒体11の接線方向に対して所定角度をもって延びており、空間S内に旋回流を形成するように空気を吹き出すようになっている。メインバーナMBの各ノズル16も同様に、円筒体11の接線方向に対して所定角度をもって延びており、空間S内に旋回流を形成するように混合気を吹き出すようになっている。空気ノズル15およびメインバーナMB用のノズル16は、円筒体11の円周方向に所定の間隔を置いて配置されている。
【0031】
燃焼室3は、バーナ部2の後段でバーナ部2で形成された火炎を保持して排ガスを燃焼させる空間であり、バーナ部2と連続するように配置された内筒21により区画形成されている。内筒21の外側には、内筒21を囲むように円筒状の外筒22が設置されている。内筒21は繊維強化セラミックによって形成されており、外筒22はSUS等の金属によって形成されている。繊維強化セラミックは、セラミックスで形成した繊維を織って布にし、これにバインダ入りのセラミックスを塗布し、これを筒状に形成して固化したもので、通常、セラミック繊維を複数枚重ねて層状にする。また、内筒21と外筒22の間の空間に、多孔質セラミック製の断熱材23が挿入されている。多孔質セラミック製の断熱材23は、セラミックで繊維を形成しこれを成形吸引器で形成し、内筒21と外筒22の空間の形状に適合するようにしたものを用いることができる。
【0032】
断熱材23および内筒21を形成するセラミックの材料としては、例えば純度が80〜90.7%のアルミナや、Si系のもの等が挙げられる。フッ素を含む排ガスを処理する場合には、この排ガスに対して高い耐腐食性を有するアルミナを用いることが望ましい。バーナ部2の円筒体11の天板部(頂部)には、火炎を検出するための2つのUVセンサ25と、バーナ部2の点火を行うパイロットバーナPBとが設けられている。UVセンサ25は、形成される火炎を斜めから検出するために、円筒体11の頂部に対して傾けて配置されている。これは、火炎がバーナ部2内では旋回流を形成し、径方向に対して火炎が短くなるためである。UVセンサをバーナ部2の内周面側に設置した場合には、シラン(SiH)等を処理するとSiO等の固形物がバーナ部2の内周面に付着し、UVセンサが火炎を検出できなくなる恐れがあるが、このようにUVセンサ25をバーナ部2の天板部(頂部)に取りつけることより、固形物付着により火炎が検出できなくなるという問題を回避できる。また、難分解性のPFCガスを処理するためには、1300℃以上の高温が必要となるため、配管が熱により腐食する恐れがあるが、上述したようにUVセンサ25およびパイロットバーナPBをバーナ部2の天板部に取りつけることにより、このような高熱による腐食を回避できる。
【0033】
また、バーナ部2内には、スクレーパ30が上下動可能に配置されている。スクレーパ30は、概略円筒状のスクレーパ本体30aと、スクレーパ本体30aから上方に延びる棒状のアーム30bとからなり、略円筒状のスクレーパ本体30aの下端に鋸歯状の掻き取り部30cが形成されている。棒状のアーム30bは円筒体11および外筒12を貫通して上方に延びており、アーム30bの上部には、エアシリンダ31が連結されている。そして、エアシリンダ31を作動させることにより、スクレーパ30が下降し、バーナ部2の内壁面、すなわち、内筒体11の内周面に堆積したシリカ(SiO)を含む固形物を掻き取ることができるようになっている。なお、エアシリンダ31は外筒12の天板部(頂部)に固定されている。
【0034】
一方、燃焼室3内には、第2のスクレーパ40が上下動可能に配置されている。第2のスクレーパ40は、概略円筒状のスクレーパ本体40aと、スクレーパ本体40aから下方に延びる棒状のアーム40bとからなり、略円筒状のスクレーパ本体40aの上端に鋸歯状の掻き取り部40cが形成されている。棒状のアーム40bは、燃焼処理室1の下方にある冷却部(図示せず)を貫通して外部に延び、図示されないエアシリンダに連結されている。そして、エアシリンダを作動させることにより、第2のスクレーパ40が上昇し、燃焼室3の内壁面、すなわち、内筒21の内周面に堆積したシリカ(SiO)を含む固形物を掻き取ることができるようになっている。なお、燃焼室3の内壁面に堆積する固形物は、バーナ部2の内壁面に堆積する固形物よりも軟らかくて掻き取り易いため、スクレーパ40においては掻き取り部40cに鋸歯を設けず平坦な形態にしてもよい。
【0035】
次に、上記燃焼処理室1における動作について説明する。
先ず、燃料ガス(燃料)と支燃ガス(たとえば酸素)との混合気は、混合気室20内に導かれて保持され、円筒体11に形成された複数のノズル16からなるメインバーナMBから空間Sに向けて旋回流を作り出すように吹き出される。そして、パイロットバーナPBにより点火されると、円筒体11の内周面に火炎の旋回流(旋回炎)を形成する。
ここで、混合気は旋回炎を形成するが、旋回炎は広い当量比の範囲にわたって安定して燃焼できる特徴を有している。すなわち、旋回炎は強く旋回しているため、火炎相互に熱とラジカルを供給し合い、保炎性が高くなる。そのため、通常であれば、未燃ガスを発生したり消炎するような小さな当量比においても、未燃ガスが発生することなく、また、当量比1付近においても、振動燃焼を誘発することなく安定して燃焼させることができる。
【0036】
一方、処理すべき排ガスG1は、円筒体11の天板部の下面に開口する排ガス導入管14から前記空間Sに向けて噴出する。この噴出された排ガスG1は混合気の旋回炎と混合して燃焼するが、この際、混合気がメインバーナMBから、すなわちメインバーナMBを構成する円周方向の全てのノズル16から下流の一方向に強く旋回するように吹き出されているため、混合気の全てが火炎と充分に混合して、排ガスの燃焼効率は非常に高くなる。
【0037】
また、複数のノズル16からなるメインバーナMBからの火炎は旋回して噴射されるが、空気ノズル15から噴出された空気も旋回しているため、この空気流が火炎と混合して火炎の旋回流を一層加速して強い旋回炎を形成する。このように旋回炎を形成すると、旋回の中心部の気流の圧力が低下して、中心部に、火炎の先方から排ガス導入管14およびメインバーナMBに向けて逆流する自己循環流が発生し、この循環流がメインバーナMBからの火炎および燃焼ガスと混合してNOxの生成を抑制する。
空気ノズル15から噴出する空気に含まれる酸素を与え、2次酸化炎を形成する。この酸化炎により排ガスを酸化分解する。
【0038】
なお、メインバーナMBを構成する複数のノズル16は、上から見た場合、円筒体11の接線方向に開口し、かつ鉛直面内では斜め下方に開口するように複数設けるようにしても、火炎はバーナ部2の下流へ向かって螺旋状の旋回流を形成する。
【0039】
バーナ部2内で形成された火炎の旋回流は、燃焼室3内でも保持され、バーナ部2内で燃焼しきれなかった排ガスを予備的または補助的に燃焼させる。燃焼室3においては、内筒21を構成するセラミックスが耐熱性および耐食性に優れており、熱や腐食による消耗が少ないばかりではなく、セラミックスが繊維に強化されているので熱応力による割れも防止され、長期にわたって使用が可能である。しかも、金属の場合のような触媒効果がないために燃焼室3が高温になってもサーマルNOxの発生が抑制される。ハロゲン系のガスを分解処理しても、それに伴い生成するハロゲンガス(HCl、HF等)による内筒21の高温下での腐食やエッチングが抑制される。
【0040】
ケイ素成分を含むガスの燃焼を続けると、バーナ部2および燃焼室3の内壁に副生成物であるシリカが堆積する。下方へ向かう旋回流が形成されているため、特に空気ノズル15やメインバーナMBのノズル16の下方で、堆積シリカが中心部へ向かって成長し、排ガスの流れが遮られることがある。これらの固形堆積物を除去するために、燃焼処理室1において、上述したように排ガスの燃焼処理、すなわち排ガスの燃焼分解を行っている間に、所定のタイミングでエアシリンダ31を作動させてスクレーパ30を駆動し、バーナ部2の内壁面、すなわち円筒体11の内周面に堆積したシリカ(SiO)を含む固形堆積物を掻き取る。このように、排ガスの燃焼分解を行っている間にも固形堆積物を除去することにより、排ガス処理装置の長時間の連続運転が可能となる。このとき、スクレーパ本体30aは、メインバーナMBを構成する各ノズル16を横切ることになる。この場合、メインバーナMBから燃料ガスと酸素の混合気をバーナ部2内に供給していると、〔発明が解決しようとする課題〕の項において説明したように、メインバーナMBのノズル16近辺の動圧変動などのために、ノズル16からの混合気の吹き出し流速が不均一となり、メインバーナ配管へ逆火が起こる場合がある。
【0041】
そこで、本発明は、排ガスを燃焼処理(燃焼分解)している間にスクレーパ30を駆動してもメインバーナMB及びメインバーナ配管へ逆火が起こることがないように、以下の手段を講じている。
バーナ部2におけるスクレーパ30の動作時に、メインバーナMBに供給する燃料ガスと支燃ガスの混合気を燃焼範囲外に調整する。
燃料ガスと支燃ガスの混合気は、燃料ガスの濃度が薄すぎても濃すぎても燃焼できなくなる。燃焼できる混合気に含まれる燃料ガスの濃度の限界を燃焼限界という。燃料ガスの濃度の薄い方の燃焼限界を下限界、濃い方の燃焼限界を上限界といい、燃料ガスの濃度がこの下限界と上限界の範囲にあるとき燃料ガスは燃焼し、この濃度範囲を燃焼範囲という。この燃焼範囲に含まれない範囲を燃焼範囲外という。
【0042】
燃料ガスと支燃ガスの混合気の組成が燃焼範囲内にあるときは、メインバーナMBおよびメインバーナ配管に逆火が起こる場合がある。燃焼範囲外の組成で混合気をメインバーナMBに供給することにより、逆火が起こらなくなる。
【0043】
上述したように燃焼範囲においては逆火が起こる場合があるので、混合気の組成を燃焼範囲外の組成にする必要がある。混合気の組成と燃焼範囲(燃焼範囲外)との関係を燃料ガスをプロパンとした場合で考えてみる。支燃ガスが酸素の場合、混合気に対するプロパン成分%が、燃焼の下限界は2%で、上限界は40%であるが、支燃ガスを空気とした場合、混合気に対するプロパン成分%が、燃焼の下限界は2%で上限界は10%であることが知られている。混合気に対するプロパン成分%の燃焼範囲が、酸素を支燃ガスとした場合と比較して、空気を支燃ガスとした場合には燃焼範囲が狭くなる。例えば燃料ガスがプロパンで、プロパン/(プロパン+支燃ガス)=15%の場合、支燃ガスがOの場合は燃焼範囲内となるが、支燃ガスが空気の場合は燃焼範囲外となる。
【0044】
なお、燃料ガス(燃料)が都市ガス、天然ガス等の他のガスの場合には、プロパンが燃焼ガスである場合と同様の手法により混合気の燃焼範囲外を求めればよい。すなわち、燃料ガスと支燃ガス(酸素と空気)の混合気の組成と燃焼範囲(燃焼範囲外)の関係をもとに調整することができる。
【0045】
上述した理論に基づき、排ガスの燃焼処理中であってスクレーパ30の動作時に、メインバーナMBに供給する燃料ガスと支燃ガスの混合気を燃焼範囲外に調整する。しかしながら、メインバーナMBに供給する燃料ガスと支燃ガスの混合気を燃焼範囲外に調整すると、以下のような新たな課題が生じてくる。
1)混合気の着火性が良好であること
燃焼範囲外にある燃料ガスと支燃ガスの混合気をメインバーナMBから吹き出した後に混合気が直ちに着火する必要がある。すなわち、混合気の着火性が良好である必要がある。
2)混合気が完全燃焼するための十分な酸素を供給すること
燃焼範囲外にある混合気には、酸素が不足しているため、混合気をメインバーナMBから吹き出した後に混合気が完全燃焼するように酸素を補う必要がある。
3)火炎保持性が通常運転時と同等であること
混合気がメインバーナMBから吹き出して形成された火炎の火炎保持性が通常運転時(スクレーパを動作させていない通常の排ガス処理時)と同等であることが必要である。
【0046】
上記課題1)〜3)を解決するために、本発明は、以下の手段を講じている。
(1)処理される排ガスが燃焼し難いガス(CF,C等のPFCガス)の場合
i)通常運転時(スクレーパを動作させていない通常の排ガス処理時)には、燃料ガスと酸素とを予混合した混合気をメインバーナMBからバーナ部2内に供給する。混合気は燃焼範囲内にある。そして、空気ノズル15からは空気をバーナ部2内に供給して旋回流を形成する。
ii)スクレーパ動作中は、燃料ガスと空気とを予混合した混合気をメインバーナMBからバーナ部2内に供給する。この場合、混合気は燃焼範囲外にあるため、不足する酸素(O)は旋回流を形成するための空気ノズル15から供給する。すなわち、メインバーナMBおよびメインバーナ配管内にある混合気を燃焼範囲外とすることにより、メインバーナMBおよびメインバーナ配管内への逆火を防止する。そして、混合気の着火性、火炎保持性を確保するとともに排ガスの処理性能を下げないために、不足する酸素を補うために空気ノズル15に酸素を別途供給して空気ノズル15から酸素をバーナ部2内に供給する。この場合、空気ノズル15から空気もバーナ部2内に供給して旋回流を形成する。このように、不足する酸素を補充することにより、通常運転時とスクレーパ動作中とにおいて、全体として燃焼処理室1に供給する排ガス、燃料ガス、酸素、空気の流量比率は、変えないようにする。
【0047】
(2)処理される排ガスが燃焼し易いガス(SiHなどのシラン系ガス)の場合
i)通常運転時(スクレーパを動作させていない通常の排ガス処理時)には、燃料ガスと酸素とを予混合した混合気をメインバーナMBからバーナ部2内に供給する。混合気は燃焼範囲内にある。そして、空気ノズル15からは空気をバーナ部2内に供給して旋回流を形成する。
ii)スクレーパ動作中は、燃料ガスと空気とを予混合した混合気をメインバーナMBからバーナ部2内に供給する。この場合、混合気は燃焼範囲外にあるが、排ガスが燃焼し易いガスであるため、空気ノズル15から酸素を補充する必要がなく、空気ノズル15からは、通常運転時と同様に、空気をバーナ部2内に供給して旋回流を形成する。メインバーナMBから吹き出した混合気は、空気ノズル15から供給された空気と混合して燃焼範囲内となって燃焼する。
【0048】
(3)処理される排ガスの種類に拘らず、スクレーパ動作中は、種火をパイロットバーナにより供給する。これにより、スクレーパ動作中におけるバーナ部2内の失火を防止することができる。
【0049】
次に、上記手段(1)〜(3)を備えた燃焼式排ガス処理装置の全体構成について図2を参照して説明する。
図2に示すように、バーナ部2の混合気室20は混合気供給管26によってエジェクタ(予混合器)50に接続されている。そして、エジェクタ50には、燃料ガス供給ラインL1と酸素供給ラインL2とが接続されている。燃料ガス供給ラインL1には、エジェクタ50から上流側に向かって開閉弁V11、マスフローコントローラMFC1、圧力調整弁V12が順次設置されており、燃料ガス供給ラインL1の上流端は燃料ガス供給源(燃料供給源)に接続されている。酸素供給ラインL2には、エジェクタ50から上流側に向かって開閉弁V21、マスフローコントローラMFC2、開閉弁V22、圧力調整弁V23が順次設置されており、酸素供給ラインL2の上流端は酸素供給源に接続されている。
【0050】
また、バーナ部2の空気室19には、空気供給ラインL3が接続されている。空気供給ラインL3には、空気室19から上流側に向かって開閉弁V31,V32、流量センサFS1、圧力調整弁V33、ヘッダーR1が順次設置されており、空気供給ラインL3の上流端は空気供給源に接続されている。パイロットバーナPBには、パイロットバーナ用空気供給ラインL4が接続されている。パイロットバーナ用空気供給ラインL4には、パイロットバーナPBから上流側に向かって開閉弁V41、流量センサFS2、圧力調整弁V42、ヘッダーR1が順次設置されている。圧力調整弁V33,V42は、空気供給源から供給される空気の圧力を2段階、一次空気用の圧力(たとえば0.37MPa)とパイロットバーナ用の圧力(たとえば0.45MPa)とに調整できるように設定されている。
【0051】
前記パイロットバーナPBには、パイロットバーナ用燃料ガス供給ラインL5が接続されている。パイロットバーナ用燃料ガス供給ラインL5には、パイロットバーナPBから上流側に向かって開閉弁V51、流量計FI1が順次設置されている。そして、パイロットバーナ用燃料ガス供給ラインL5の上流端は燃料ガス供給ラインL1に接続されている。
【0052】
一方、酸素供給ラインL2から分岐して酸素供給バイパスラインBP1が設置されており、酸素供給バイパスラインBP1の下流端は空気供給ラインL3に接続されている。なお、酸素供給バイパスラインBP1は、酸素供給ラインL2における酸素供給源と制御弁V23とを結ぶ管路部分から分岐し、空気供給ラインL3における開閉弁V31と空気室19とを結ぶ管路部分に接続されている。酸素供給バイパスラインBP1には、上流側から下流側に向かって圧力調整弁V61、流量計FI2、開閉弁V62、逆止弁V63が順次設置されている。さらに、空気供給ラインL3から分岐して空気供給バイパスラインBP2が設置されており、空気供給バイパスラインBP2には開閉弁V81が設置されている。そして、空気供給バイパスラインBP2の下流端は酸素供給ラインL2に接続されている。なお、空気供給バイパスラインBP2は、空気供給ラインL3における流量センサFS1と開閉弁V31とを結ぶ管路部分から分岐し、酸素供給ラインL2における開閉弁V22とマスフローコントローラMFC2とを結ぶ管路部分に接続されている。
【0053】
図3は、図2に示すエジェクタ50の詳細構造を示す断面図である。図3に示すように、エジェクタ50は、支燃ガス(たとえば酸素)が噴出するノズル部101と、ディフューザ102aを内部に有したディフューザ部102とから構成されている。ノズル部101には酸素供給ラインL2が接続されており、ディフューザ部102には燃料ガス供給ラインL1と混合気供給管26とが接続されている。エジェクタ50においては、支燃ガス(たとえば酸素)がノズル部101から高速で噴出すると、ディフューザ102aの圧力が低下するので、燃料ガス供給ラインL1から燃料ガスを吸い込み、燃料ガスと支燃ガス(たとえば酸素)が予混合され、ディフューザ102aに連なる拡張部103で減速増圧し、燃料ガスと支燃ガスの混合気が混合気供給管26へ吐き出される。
【0054】
次に、図2に示すように構成された燃焼式排ガス処理装置における排ガス処理工程について説明する。
(1)処理される排ガスが燃焼し難いガスの場合
i)通常運転時(スクレーパを動作させていない通常の排ガス処理時)には、燃料ガス供給源から燃料ガスを燃料ガス供給ラインL1を介してエジェクタ50に供給し、酸素供給源から酸素を酸素供給ラインL2を介してエジェクタ50に供給する。このとき、マスフローコントローラMFC1により燃料ガスの質量流量が正確に制御され、所望の流量の燃料ガスをエジェクタ50に供給することができる。また、マスフローコントローラMFC2により酸素の質量流量が正確に制御され、所望の流量の酸素をエジェクタ50に供給することができる。エジェクタ50により、燃料ガスと酸素とを予混合し、混合気を混合気供給管26を介して混合気室20に供給し、メインバーナMBからバーナ部2内に混合気を吹き出す。混合気は燃焼範囲内にあるため、メインバーナMBから吹き出されるときに燃焼して火炎の旋回流(旋回炎)を形成する。空気ノズル15から噴射された空気も旋回しているため、この空気流がメインバーナMBの火炎と混合して火炎の旋回流を一層加速して強い旋回炎を形成する。
一方、処理すべき排ガスG1は排ガス導入管14からバーナ部2内に供給され、混合気の旋回炎と混合して燃焼する。バーナ部2内で形成された火炎の旋回流(旋回炎)は、燃焼室3内でも保持され、バーナ部2内で燃焼しきれなかった排ガスを予備的または補助的に燃焼させる。
【0055】
ii)スクレーパ動作中は、燃料ガス供給源から燃料ガスを燃料ガス供給ラインL1を介してエジェクタ50に供給し、空気供給源から空気を空気供給ラインL3から分岐した空気供給バイパスラインBP2を介してエジェクタ50に供給する。このとき、マスフローコントローラMFC1により燃料ガスの質量流量が正確に制御され、所望の流量の燃料ガスをエジェクタ50に供給することができる。また、マスフローコントローラMFC2により空気の質量流量が正確に制御され、所望の流量の空気をエジェクタ50に供給することができる。エジェクタ50により、燃料ガスと空気とを予混合し、混合気を混合気供給管26を介して混合気室20に供給し、メインバーナMBからバーナ部2内に混合気を吹き出す。混合気は酸素が不足して燃焼範囲外にあるため、メインバーナMBから吹き出されるときには燃焼しない。このように、メインバーナMBおよびメインバーナ配管内にある混合気を燃焼範囲外とすることにより、メインバーナMBおよびメインバーナ配管内への逆火を防止する。そして、混合気の着火性、火炎保持性を確保するとともに排ガスの処理性能を下げないために、不足する酸素を補う。そのため、酸素供給源から酸素を酸素供給バイパスラインBP1を介して空気ノズル15に供給する。空気ノズル15に供給する酸素の流量は、流量計FI2により計測して調整する。このとき、空気ノズル15に、空気供給ラインL3を介して空気も同時に供給する。空気ノズル15に供給される空気の流量は、流量センサFS1により計測して調整する。こうして、空気ノズル15から酸素と空気の混合ガスが噴出され、バーナ部2内に混合ガスの旋回流が形成されてメインバーナMBから吹き出された混合気(燃料ガスと空気の混合気)と混合される。その結果、燃料ガスと酸素と空気の混合気が燃焼範囲内となり、直ちに燃焼して火炎を形成する。
一方、処理すべき排ガスG1は排ガス導入管14からバーナ部2内に供給され、混合気の旋回炎と混合して燃焼する。バーナ部2内で形成された火炎の旋回流(旋回炎)は、燃焼室3内でも保持され、バーナ部2内で燃焼しきれなかった排ガスを予備的または補助的に燃焼させる。
【0056】
なお、空気予混合(燃料ガスと空気の予混合)は、スクレーパ40を動作させる前に行い、スクレーパ40の動作後にも続行する。すなわち、空気予混合は、スクレーパ40の動作の前の所定時間、スクレーパ40の動作中、およびスクレーパ40の動作後の所定時間行う。スクレーパ40は、エアシリンダ41(図1参照)を作動させることにより、待機位置(図2の実線で示す位置)からバーナ部2の下端のやや下方位置(図2の点線で示す位置)まで下降した後に上昇する。
【0057】
(2)処理される排ガスが燃焼し易いガスの場合
i)通常運転時(スクレーパを動作させていない通常の排ガス処理時)には、燃料ガス供給源から燃料ガスを燃料ガス供給ラインL1を介してエジェクタ50に供給し、酸素供給源から酸素を酸素供給ラインL2を介してエジェクタ50に供給する。このとき、マスフローコントローラMFC1により燃料ガスの質量流量が正確に制御され、所望の流量の燃料ガスをエジェクタ50に供給することができる。また、マスフローコントローラMFC2により酸素の質量流量が正確に制御され、所望の流量の酸素をエジェクタ50に供給することができる。エジェクタ50により、燃料ガスと酸素とを予混合し、混合気を混合気供給管26を介して混合気室20に供給し、メインバーナMBからバーナ部2内に混合気を吹き出す。混合気は燃焼範囲内にあるため、メインバーナMBから吹き出されるときに燃焼して火炎の旋回流(旋回炎)を形成する。空気ノズル15から噴射された空気も旋回しているため、この空気流がメインバーナMBの火炎と混合して火炎の旋回流を一層加速して強い旋回炎を形成する。
一方、処理すべき排ガスG1は排ガス導入管14からバーナ部2内に供給され、混合気の旋回炎と混合して燃焼する。バーナ部2内で形成された火炎の旋回流(旋回炎)は、燃焼室3内でも保持され、バーナ部2内で燃焼しきれなかった排ガスを予備的または補助的に燃焼させる。
【0058】
ii)スクレーパ動作中は、燃料ガス供給源から燃料ガスを燃料ガス供給ラインL1を介してエジェクタ50に供給し、空気供給源から空気を空気供給ラインL3から分岐した空気供給バイパスラインBP2を介してエジェクタ50に供給する。このとき、マスフローコントローラMFC1により燃料ガスの質量流量が正確に制御され、所望の流量の燃料ガスをエジェクタ50に供給することができる。また、マスフローコントローラMFC2により空気の質量流量が正確に制御され、所望の流量の空気をエジェクタ50に供給することができる。エジェクタ50により、燃料ガスと空気とを予混合し、混合気を混合気供給管26を介して混合気室20に供給し、メインバーナMBからバーナ部2内に混合気を吹き出す。混合気は酸素が不足して燃焼範囲外にあるため、メインバーナMBから吹き出されるときには燃焼しない。このように、メインバーナMBおよびメインバーナ配管内にある混合気を燃焼範囲外とすることにより、メインバーナMBおよびメインバーナ配管内への逆火を防止する。排ガスが燃焼し易いガスであるため、空気ノズル15から酸素を補充する必要はなく、空気ノズル15からは、通常運転時と同様に、空気をバーナ部2内に供給する。したがって、空気ノズル15から空気が噴出され、バーナ部2内に空気の旋回流が形成されてメインバーナMBから吹き出された混合気(燃料ガスと空気の混合気)と混合される。その結果、混合気に酸素が補充されて燃焼範囲内となり、直ちに燃焼して火炎を形成する。
一方、処理すべき排ガスG1は排ガス導入管14からバーナ部2内に供給され、混合気の旋回炎と混合して燃焼する。バーナ部2内で形成された火炎の旋回流(旋回炎)は、燃焼室3内でも保持され、バーナ部2内で燃焼しきれなかった排ガスを予備的または補助的に燃焼させる。スクレーパ40の動作は(1)で説明したとおりである。
【0059】
(3)処理される排ガスが燃焼し難い場合と燃焼し易い場合のいずれの場合にも、排ガスの燃焼処理中であってスクレーパ40の動作中は、燃料ガス供給源から燃料ガスをパイロットバーナ用燃料ガス供給ラインL5を介してパイロットバーナPBに供給する。すなわち、処理される排ガスの種類に拘らず、スクレーパ動作中は、種火をパイロットバーナにより供給する。これにより、スクレーパ動作中における失火を防止することができる。
なお、排ガス処理装置の始動時にパイロットバーナPBを点火することは、従来の排ガス処理装置と同様である。
【0060】
本発明者らは、図2に示すように構成された燃焼式排ガス処理装置における排ガス処理工程を繰り返し行った結果、スクレーパの動作中に、パイロットバーナPBの種火が消失し、バーナ部2内で失火が起こる場合があることを見出した。
本発明者らは、種々の実験を行うとともに実験結果の解析を進めた結果、パイロットバーナPBには、燃料ガス供給源の供給圧(例えば、2.8kPa)のみにより燃料が供給されるため、パイロットバーナ火炎はバーナ以降の圧力変動の影響を受け易く、火炎が消失して失火の原因となることを究明した。これに対して、メインバーナMBにおいては、燃料ガスはエジェクタで吸引されているため、圧力変動の影響を受けにくいことも究明した。
【0061】
そこで、本発明は、パイロットバーナ火炎を安定化し、失火を防止するために、以下の手段を講じている。
(1)パイロットバーナに燃料ガスを供給する系路にエジェクタ機構を設置する。
(2)パイロットバーナ用燃料ガス供給ラインにマスフローコントローラを設置する。
【0062】
次に、上記手段(1)(2)を備えた燃焼式排ガス処理装置について図4を参照して説明する。
図4に示す燃焼式排ガス処理装置は、図2に示す燃焼式排ガス処理装置に、エジェクタ機構を追加するとともにパイロットバーナ用燃料ガス供給ラインL5にマスフローコントローラを設置したものである。
【0063】
図4に示すように、パイロットバーナPBはパイロットバーナ用エジェクタ70に接続されている。そして、パイロットバーナ用エジェクタ70には、パイロットバーナ用燃料ガス供給ラインL5と空気供給ラインL6とが接続されている。パイロットバーナ用燃料ガス供給ラインL5には、パイロットバーナ用エジェクタ70から上流側に向かって開閉弁V51、マスフローコントローラMFC3が順次設置されている。パイロットバーナ用燃料ガス供給ラインL5の上流端は燃料ガス供給ラインL1に接続されている。空気供給ラインL6には、パイロットバーナ用エジェクタ70から上流側に向かって開閉弁V71、流量コントローラFIC、圧力調整弁V72が順次設置されている。パイロットバーナ用エジェクタ70は、図3に示すエジェクタ50と同様の構造であるため、図示は省略する。図4に示す燃焼式排ガス処理装置におけるその他の構成は、図2に示す燃焼式排ガス処理装置と同様である。
【0064】
図4に示す燃焼式排ガス処理装置においては、空気供給源から空気を空気供給ラインL6を介してパイロットバーナ用エジェクタ70に供給し、燃料ガス供給源から燃料ガスをパイロットバーナ用燃料ガス供給ラインL5を介してパイロットバーナ用エジェクタ70に供給する。パイロットバーナ用エジェクタ70において、空気を高速で噴出することにより負圧を発生させ燃料ガスを引き込む。燃料ガス供給源の元圧は、例えば2.8kPa程度と低いが、燃料ガスはパイロットバーナ用エジェクタ70にて昇圧されるため、パイロットバーナ用エジェクタ70から吐出されてパイロットバーナPBに供給される燃料ガスは、例えば、20kPa程度の高い圧力になる。そのため、パイロットバーナ火炎はバーナ以降の圧力変動の影響を受けにくくなる。これと併行して、マスフローコントローラMFC3により燃料ガスの質量流量を正確に制御してパイロットバーナPBに所望の質量流量の燃料ガスを供給することができる。また、パイロットバーナ用エジェクタ70に供給される空気の流量は、流量コントローラFICにより正確に制御され、パイロットバーナ用エジェクタ70において所望の負圧を形成できる。
【0065】
このように、パイロットバーナPBに燃料ガスを供給する系路にエジェクタ機構を設置することによりパイロットバーナPBから噴出する燃料ガスの圧力を高めるとともに、パイロットバーナ用燃料ガス供給ラインL5にマスフローコントローラMFC3を設置することによりパイロットバーナPBに所望の質量流量の燃料ガスを正確に供給することができ、パイロットバーナ火炎を安定させることができる。したがって、スクレーパ40の動作中に、パイロットバーナ火炎が消失することなく、バーナ部2内で失火が起こることを防止することができる。
【0066】
次に、本発明の燃焼式排ガス処理装置における2つのスクレーパ30,40について図5乃至図7を参照して説明する。
図5は、2つのスクレーパ30,40と燃焼処理室1との関係を示す模式的断面図である。図5に示すように、バーナ部2内には、スクレーパ30が上下動可能に配置されている。スクレーパ30は、概略円筒状のスクレーパ本体30aと、スクレーパ本体30aから上方に延びる棒状のアーム30bとからなり、略円筒状のスクレーパ本体30aの下端に鋸歯状の掻き取り部30cが形成されている。棒状のアーム30bの上部には、エアシリンダ31(図1参照)が連結されており、エアシリンダ31を作動させることによりスクレーパ30が下降し、バーナ部2の内壁面に堆積したシリカ(SiO)を含む固形物を掻き取ることができるようになっている。
【0067】
また、燃焼室3内には、第2のスクレーパ40が上下動可能に配置されている。第2のスクレーパ40は、概略円筒状のスクレーパ本体40aと、スクレーパ本体40aから下方に延びる棒状のアーム40bとからなり、略円筒状のスクレーパ本体40aの上端に鋸歯状の掻き取り部40cが形成されている。棒状のアーム40bは、燃焼処理室1の下方にある冷却部4を貫通して外部に延び、図示されないエアシリンダに連結されている。そして、エアシリンダを作動させることにより第2のスクレーパ40が上昇し、燃焼室3の内壁面に堆積したシリカ(SiO)を含む固形物を掻き取ることができるようになっている。なお、スクレーパ40においては、上述したように、掻き取り部40cに鋸歯を設けず平坦な形態にしてもよい。
【0068】
図5に示すように、スクレーパ30は、バーナ部2の天板近傍の待機位置からバーナ部2の下端のやや下方位置まで下降した後に上昇する一往復で一回の動作が終了する。この一回の動作は約10秒に設定されている。スクレーパ30の運転頻度は、例えば、15分に1回などに設定する。これに対して、第2のスクレーパ40は、燃焼室3の下方の冷却部4内の待機位置から燃焼室3の所定位置まで上昇した後に下降する一往復を行った後、前記待機位置から再度上昇して前回の上昇位置より高い位置まで上昇した後に下降する一往復を行う等の複数回の往復運動で一回の動作が終了する。スクレーパ40の運転頻度は、スクレーパ30の運転頻度よりも低く設定されている。スクレーパ30およびスクレーパ40が途中で停止したまま放置されることがないように、スクレーパ本体30aおよびスクレーパ本体40aの各位置を検出する位置センサ(図示せず)が設置されている。
【0069】
図5に示すように、燃焼室3の下方には冷却部4が設置されている。冷却部4には、複数のノズル53が周方向に間隔を置いて設けられており、これらノズル53から中心に向けて水をシャワー状に噴射することによって、排ガスの冷却と排ガス中の粒子の捕捉とを行うようになっている。また、冷却部4の下方には、冷却部4より排出された排水と排水中に捕捉された粒子等を貯留するトラップ5が設置されている。なお、冷却部4において冷却および洗浄された排ガスは、冷却部4の側壁から延設された排気ダクト6(図2参照)を介して装置外部に排出されるようになっている。
【0070】
図6(a)および図6(b)は、上下のスクレーパ30,40を示す斜視図である。図6(a)は、スクレーパ30を図5のVIA方向から見た斜視図であり、図6(b)は、第2のスクレーパ40を図5のVIB方向から見た斜視図である。
図6(a)に示すように、スクレーパ30は天板部を有した概略円筒状のスクレーパ本体30aを備え、スクレーパ本体30aには、シリカ等の固形物を掻き取るための鋸歯状の掻き取り部30cが形成されている。そして、スクレーパ本体30aの天板部には、排ガス流入用の3つの開口h1およびパイロットバーナ用の開口h2が形成されている。
図6(b)に示すように、スクレーパ40はリング状のスクレーパ本体40aを備え、スクレーパ本体40aの上端には、シリカ等の固形物を掻き取るための掻き取り部40cが形成されている。なお、図6(b)に示す例においては、掻き取り部40cは鋸歯状でなく平坦になっている。燃焼室3の内壁に付着したシリカを含む固形物は、バーナ部2の内壁に付着したシリカを含む固形物よりも軟らかくて掻き取り易いため、掻き取り部40cは平坦な形態になっている。リング状のスクレーパ本体40aの中心部には、直径方向に延びるバー40dが設けられており、バー40dにアーム40b(図5参照)が固定されるようになっている。
【0071】
図7は、第2のスクレーパ40の動作の一例を示す模式図である。図7に示すように、スクレーパ40は、燃焼室3の下方にある冷却部4の1次冷却シャワーの下方の待機位置(実線で示す)から燃焼室3内の所定位置(L,M,H)までの上下運動を3回行うように設定されている。すなわち、スクレーパ40は、1回目にはLまで上昇して元(待機位置)に戻り、2回目にはMまで上昇して元に戻り、3回目にはHまで上昇して元に戻る。これら3回の上下運動で一回のスクレーパ動作が終了するが、この動作時間は約20秒に設定されている。
【0072】
これまで本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。特に、実施形態では燃料と酸素源を予め混合気室で混合してから混合気として供給する例を示したが、本発明は、請求項4乃至10に記載されているように予混合式に限られず、広く燃焼式排ガス処理装置に適用できる。
【符号の説明】
【0073】
1 燃焼処理室
2 バーナ部
3 燃焼室
4 冷却部
5 トラップ
6 排気ダクト
11 円筒体
12 外筒
14 排ガス導入管
15 空気ノズル
16 ノズル
19 空気室
20 混合気室
21 内筒
22 外筒
23 断熱材
25 UVセンサ
26 混合気供給管
30 スクレーパ
30a スクレーパ本体
30b アーム
30c 掻き取り部
31 エアシリンダ
40 スクレーパ
40a スクレーパ本体
40b アーム
40c 掻き取り部
40d バー
50 エジェクタ
70 パイロットバーナ用エジェクタ
101 ノズル部
102 ディフューザ部
102a ディフューザ
103 拡張部
h1,h2 開口
BP1 酸素供給バイパスライン
BP2 空気供給バイパスライン
FI1,FI2 流量計
FIC 流量コントローラ
FS1,FS2 流量センサ
G1 排ガス
L1 燃料ガス供給ライン
L2 酸素供給ライン
L3 空気供給ライン
L4 パイロットバーナ用空気供給ライン
L5 パイロットバーナ用燃料ガス供給ライン
L6 空気供給ライン
MB メインバーナ
MFC1,MFC2,MFC3 マスフローコントローラ
R1 ヘッダー
PB パイロットバーナ
S 空間
V11,V21,V22,V31,V32,V41,V51,V62,V71,V81 開閉弁
V12,V23,V33,V42,V61,V72 圧力調整弁
V63 逆止弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガスを燃焼分解して処理する燃焼処理室と、燃料ガスと支燃ガスを予め混合した混合気を供給して火炎を前記燃焼処理室内に形成するメインバーナと、前記燃焼処理室の内壁に付着した固形物を掻き取るスクレーパを備えた燃焼式排ガス処理装置において、
前記排ガスを燃焼分解して処理する処理中であって前記スクレーパの非動作時には、前記混合気を燃焼範囲内に調整して前記メインバーナに供給し、
前記排ガスを燃焼分解して処理する処理中であって前記スクレーパの掻き取り動作時には、前記混合気を燃焼範囲外に調整して前記メインバーナに供給するようにしたことを特徴とする燃焼式排ガス処理装置。
【請求項2】
前記支燃ガス中の酸素成分比を変えることにより、前記混合気を燃焼範囲内又は燃焼範囲外に調整することを特徴とする請求項1に記載の燃焼式排ガス処理装置。
【請求項3】
前記支燃ガスは、酸素又は空気であることを特徴とする請求項1または2に記載の燃焼式排ガス処理装置。
【請求項4】
燃料と酸素と空気を供給して排ガスを燃焼分解して処理する燃焼処理室と、該燃焼処理室の内壁に付着した固形物を掻き取るスクレーパを備えた燃焼式排ガス処理装置において、
前記排ガスを燃焼分解して処理する処理中であって前記スクレーパの非動作時と前記スクレーパの掻き取り動作時とで、前記燃焼処理室への酸素および/または空気の供給箇所を切り替えるようにしたことを特徴とする燃焼式排ガス処理装置。
【請求項5】
前記燃焼処理室は、燃料を供給して火炎を前記燃焼処理室内に形成するメインバーナと、前記燃焼処理室内に気体を噴出して旋回流を形成するノズルとを備え、
前記スクレーパの非動作時に、燃料と酸素を前記メインバーナに供給して火炎を前記燃焼処理室内に形成し、空気を前記ノズルに供給して前記燃焼処理室内に旋回流を形成し、
前記スクレーパの掻き取り動作時に、燃料と空気とを前記メインバーナに供給するとともに空気および酸素を前記ノズルに供給して前記燃焼処理室内で燃料を燃焼させて火炎を形成したことを特徴とする請求項4に記載の燃焼式排ガス処理装置。
【請求項6】
燃料と酸素と空気を供給して排ガスを燃焼分解する燃焼処理室と、該燃焼処理室の内壁に付着した固形物を掻き取るスクレーパを備えた燃焼式排ガス処理装置において、
前記燃焼処理室は、排ガスの処理開始時に点火するパイロットバーナと、排ガスを燃焼分解して処理する処理中に火炎を維持するメインバーナを備え、
前記排ガスを燃焼分解して処理する処理中であって前記スクレーパの非動作時には、前記メインバーナから燃料を前記燃焼処理室に供給するとともに前記パイロットバーナの燃焼を停止し、
前記排ガスを燃焼分解して処理する処理中であって前記スクレーパの掻き取り動作時には、前記メインバーナから燃料を前記燃焼処理室に供給するとともに前記パイロットバーナの燃焼を維持することを特徴とする燃焼式排ガス処理装置。
【請求項7】
前記燃料を前記パイロットバーナに供給する系路にエジェクタ機構を設けたことを特徴とする請求項6に記載の燃焼式排ガス処理装置。
【請求項8】
前記排ガスを燃焼分解して処理する処理中であって前記スクレーパの非動作時には、前記メインバーナから燃料と酸素を前記燃焼処理室に供給し、
前記排ガスを燃焼分解して処理する処理中であって前記スクレーパの掻き取り動作時には、前記メインバーナから燃料と空気を前記燃焼処理室に供給することを特徴とする請求項6に記載の燃焼式排ガス処理装置。
【請求項9】
前記排ガスを燃焼分解して処理する処理中であって前記スクレーパの掻き取り動作時には、前記メインバーナとは異なる場所から酸素を前記燃焼処理室に供給することを特徴とする請求項8に記載の燃焼式排ガス処理装置。
【請求項10】
排ガスを燃焼分解して処理する円筒状の燃焼処理室と、該燃焼処理室に面して形成された排ガス流入口と、該燃焼処理室の側面に形成された燃料の供給口および支燃ガスの供給口と、前記燃焼処理室の内壁に付着する固形物を掻き取るスクレーパを備えた燃焼式排ガス処理装置において、
前記排ガスを燃焼分解して処理する処理中に前記スクレーパを動作させて上下に駆動することにより、前記スクレーパは前記燃料の供給口を横切って該燃料の供給口の近傍の固形物を掻き取り、
前記スクレーパの非動作時には、前記スクレーパは前記燃料の供給口および支燃ガスの供給口とは離間した場所に退避していることを特徴とする燃焼式排ガス処理装置。
【請求項11】
前記スクレーパは、燃料ガス又は燃料を供給して前記燃焼処理室内に火炎を形成するバーナ部の内壁に付着した固形物を掻き取ることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の燃焼式排ガス処理装置。
【請求項12】
前記バーナ部の下方に位置して排ガスを燃焼分解して処理する燃焼室の内壁に付着した固形物を掻き取る第2のスクレーパを備えることを特徴とする請求項11に記載の燃焼式排ガス処理装置。
【請求項13】
前記第2のスクレーパは、非動作時に、前記燃焼室の下方にあって排ガスを冷却する冷却部の待機位置に退避していることを特徴とする請求項12に記載の燃焼式排ガス処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−38666(P2011−38666A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−184636(P2009−184636)
【出願日】平成21年8月7日(2009.8.7)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】