説明

燃焼性の揮発性汚染物質を除去するためのマイクロチャネル装置

本発明は、プロセス流を揮発性汚染物質の燃焼温度まで加熱し、およびこの物質を燃焼させて燃焼生成物も含有する高温の清浄化済の流れを形成することを含む、プロセス流から燃焼性の揮発性汚染物質を除去するための方法においてマイクロチャネル装置を利用することを提供する。高温の清浄化済の流れは、第1の組のプロセスマイクロチャネルと熱接触している熱交換チャネルに導かれる。次に、冷却された清浄化済の流れが回収される。マイクロチャネルは触媒的な酸化のための触媒を含有し得る。処理済のプロセス流は、エチレンオキシド製造プラントからのCO廃ガス流であり得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に炭化水素を含むプロセス運転における改善に関する。想定されるプロセス改善は、オレフィンおよび酸素からのオレフィンオキシドの製造と、このオレフィンオキシドの随意の更なる変換において特別な用途を見出す。
【背景技術】
【0002】
商業規模で運転する場合、プロセス運転は、多数の重要な設計基準に合致しなければならない。今日の環境においては、プロセス設計は、環境立法を考慮に入れ、健康および安全標準に従うものでなければならない。危険な化学薬品を利用もしくは製造するプロセスは、特別な問題を引き起こし、爆発または反応暴走のリスクを最小とするために、このようなプロセス運転は時には最適ではない条件で行われなければならならず;これはプラントのランニングコスト(運転支出またはOPEX)を増大させる。このようなプロセスは、このプロセスの実施のみに必要とされる以上の装置も利用しなくてはならず;これは建設コスト(資本支出またはCAPEX)の増加を生じる。
【0003】
CAPEXおよびOPEXコストを低減することができ、特にプラントへの損傷のリスクと、一般人および/またはプロセスプラント作業員への危険のリスクを増大することなしで、プロセス運転を提供する必要性が継続して存在する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、プロセス運転においてマイクロチャネル装置を利用することを提供する。このような装置は、ある特定の応用分野における使用について以前に提案されたが、プラント安全リスクを維持、もしくは低減する一方で、CAPEXおよび/またはOPEXの低減の組み合わせをもたらすために以前に提案されたことはなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、
a)第1のプロセス流をマイクロチャネル装置中の第1の組のプロセスマイクロチャネルに流すこと、
b)上記第1のプロセス流を揮発性汚染物質の燃焼温度まで加熱し、および揮発性物質を燃焼させて燃焼生成物も含有する高温の清浄化済の流れを形成すること、
c)高温の清浄化済の流れを前記第1の組のプロセスマイクロチャネルと熱接触している熱交換チャネルに導くこと、および引き続いて
d)冷却された清浄化済のプロセス流を回収すること
を含む、第1のプロセス流から燃焼性の揮発性汚染物質を除去するための方法を提供する。エチレンオキシド製造プラントのCO廃ガス流中の揮発性有機物質の除去においてこの方法を適用することが好ましい。
【0006】
図面の簡単な説明
図1は、マイクロチャネル反応器とこの主な構成要素の概略図を示す。
図2は、プロセスマイクロチャネルおよび熱交換チャネルと、本発明の実施において使用される場合のこの運転を含む、繰り返し単位の通常の例の概略図を示す。本発明で利用されるマイクロチャネル装置もしくは反応器は、複数のこのような繰り返し単位を含み得る。
図3は、プロセス流から燃焼性の揮発性汚染物質を除去するための通常の方法の例の概略図を示す。
【0007】
発明の詳細な説明
本発明は、多数の態様において、マイクロチャネル装置を利用する方法を提供する。多くの側面において、マイクロチャネル装置は化学反応を包含し得、場合により、触媒成分も含み得る;他の方法において、マイクロチャネル装置は物理的運転のために利用される。以下に、このような装置が議論され、全般的に「マイクロチャネル反応器」と呼ばれ、この用語は、物理的な方法または触媒成分を含むもしくは含まない化学反応の方法に利用されても、マイクロチャネル装置を包含すると理解される。
【0008】
本発明およびこれらの運転での使用に好適なマイクロチャネル反応器は、WO−A−2004/099113、WO−A−01/12312、WO−01/54812、US−A−6440895、US−A−6284217、US−A−6451864、US−A−6491880、US−A−6666909、US−A−6811829、US−A−6851171、US−A−6494614、US−A−6228434、およびUS−A−6192596で述べられた。マイクロチャネル反応器を製造し、触媒を装填し、ならびにこれらの参考文献で述べられているように運転し得る方法は、本発明の実施において全般的に適用可能であり得る。
【0009】
図1を参照すると、マイクロチャネル反応器100は、ヘッダー102、複数のプロセスマイクロチャネル104、およびフッター108からなり得る。ヘッダー102は、流体がプロセスマイクロチャネル104の中に流れる通路を提供する。フッター108は、流体がプロセスマイクロチャネル104から流れる通路を提供する。
【0010】
マイクロチャネル反応器中に収められているプロセスマイクロチャネル数は極めて多いことがあり得る。例えば、この数は、10まで、または更には10まで、または2×10までであり得る。通常、プロセスマイクロチャネルの数は、少なくとも10または少なくとも100、または更に少なくとも1000であり得る。
【0011】
プロセスマイクロチャネルは、通常、平行に配列され、例えば平面のマイクロチャネルのアレーを形成し得る。プロセスマイクロチャネルの各々は、15mmまでの、例えば0.05から10mmの、特に0.1から5mmの、更に特に0.5から2mmの高さまたは幅の少なくとも1つの内部寸法を有し得る。高さまたは幅の他の内部寸法は、例えば、0.1から100cm、特に0.2から75cm、更に特に0.3から50cmであり得る。プロセスマイクロチャネルの各々の長さは、例えば、1から500cm、特に2から300cm、更に特に3から200cm、または5から100cmであり得る。
【0012】
マイクロチャネル反応器100は、プロセスマイクロチャネル104と熱交換接触している熱交換チャネル(図1に図示せず)をさらに含む。熱交換チャネルはマイクロチャネルであり得る。マイクロチャネル反応器は、熱交換流体が熱交換ヘッダー110から熱交換チャネルを通って熱交換フッター112に流れることができるようになされている。熱交換チャネルは、プロセスマイクロチャネル104中の流れに対して並流、向流で、もしくはある態様においては、好ましくは交差流方向で流れをもたらすように配列され得る。交差流方向は、矢印114および116により示される。
【0013】
熱交換チャネルの各々は、15mmまでの、例えば0.05から10mmの、特に0.1から5mmの、更に特に0.5から2mmの高さまたは幅の少なくとも1つの内部寸法を有し得る。高さまたは幅の他の内部寸法は、例えば、0.1から100cm、特に0.2から75cm、更に特に0.3から50cmであり得る。熱交換チャネルの各々の長さは、例えば、1から500cm、特に2から300cm、更に特に3から200cm、または5から100cmであり得る。
【0014】
各プロセスマイクロチャネル104と次の隣接する熱交換チャネルの間の分離は、0.05mmから5mmの、特に0.2から2mmの範囲にあり得る。
【0015】
本発明のある実施形態においては、第1の熱交換チャネルおよび第2の熱交換チャネル、または第1の熱交換チャネル、第2の熱交換チャネル、および第3の熱交換チャネル、もしくは第5までの熱交換チャネル、もしくは更なる熱交換チャネルが準備される。このようにして、このような場合には、複数の組の熱交換チャネルがあり、したがって複数の熱交換ヘッダー110および熱交換フッター112があり得、これにより各組の熱交換チャネルは、熱交換ヘッダー110から熱交換流体を受け取り、熱交換フッター112の中に熱交換流体を送達するようになされ得る。
【0016】
ヘッダー102、フッター108、熱交換ヘッダー110、熱交換フッター112、プロセスマイクロチャネル104、および熱交換チャネルは、独立して、本発明によりプロセスの運転を可能とさせる充分な強度、場合により寸法安定性、および伝熱特性を提供するいかなる構造材料からも作製され得る。好適な構造材料は、例えばスチール(例えば、ステンレススチールおよびカーボンスチール)、モネル、チタン、銅、ガラスおよびポリマー組成物を含む。熱交換流体の種類は本発明には重要でなく、熱交換流体は各種のものから選択され得る。好適な熱交換流体はスチーム、水、空気、およびオイルを含む。複数の組の熱交換チャネルを含む本発明の実施形態においては、このような組の熱交換チャネルは、異なる熱交換流体と、もしくは異なる温度を有する熱交換流体により動作し得る。
【0017】
本発明において使用のマイクロチャネル反応器は、1つ以上のプロセスマイクロチャネルと1つ以上の熱交換チャネルそれぞれを含む複数の繰り返し単位を含み得る。ここで図2を参照すると、これは通常の繰り返し単位とこの運転を示す。
【0018】
プロセスマイクロチャネル210は、上流末端220と下流末端230を有し、本発明のある特定の態様に対しては、触媒(図示せず)を場合により含み得る第1の区分240からなり得る。第1の区分240は、第1の熱交換チャネル250と熱交換接触し、プロセスマイクロチャネル210と第1の熱交換チャネル250の第1の区分240の間の熱交換を可能とし得る。繰り返し単位は、1つ以上の第1のオリフィス280を通って第1の区分240の中に至る第1のフィードチャネル260を含み得る。通常、1つ以上の第1のオリフィス280は、もう一つの第1のオリフィス280に対して下流に配置され得る。運転時、フィードは、上流末端220中の開口および/または第1のフィードチャネル260および1つ以上の第1のオリフィス280を通ってプロセスマイクロチャネル210の第1の区分240の中に入り得る。
【0019】
プロセスマイクロチャネル210は、第2の区分340を含み、これは触媒を含むようになされ得るか、もしくはなされ得ない。第2の区分340は、第1の区分240の下流に配置される。第2の区分340は、第2の熱交換チャネル350と熱交換接触にあり得、プロセスマイクロチャネル210の第2の区分340と第2の熱交換チャネル350の間の熱交換を可能とする。ある実施形態においては、第2の区分340は、第2の熱交換チャネル350中の熱交換流体との熱交換により第1の区分240において得られ、受け取られる生成物を急冷するようになされる。急冷は、必要とされるならば、複数の、例えば2つもしくは3つもしくは4つの第2の熱交換チャネル350の存在により段階で行われ得る。このような複数の第2の熱交換チャネル350は、異なる温度を有し、特に第2の区分340の下流方向において低い温度を有する熱交換流体を含む第2の熱交換チャネル350と熱交換が行われる熱交換流体を含むようになされ得る。繰り返し単位は、1つ以上の第2のオリフィス380を通って第2の区分340の中に至る第2のフィードチャネル360を含み得る。運転時、フィードは、プロセスマイクロチャネル210中の上流から、ならびに第2のフィードチャネル360および1つ以上の第2のオリフィス380を通って第2の区分340の中に入り得る。
【0020】
第1および第2のオリフィス280もしくは380と組み合わされた、第1および第2のフィードチャネル260もしくは360によって、1つ以上の第1もしくは第2のオリフィス280もしくは380は、もう一つの第1もしくは第2のオリフィス280もしくは380それぞれに対して下流に配置され、反応物質の補給が可能となる。反応物質の補給が本発明のいくつかの実施形態で利用可能である。
【0021】
プロセスマイクロチャネル210は、第1の区分240の下流および第2の区分340の上流に配置されている中間区分440を含み得る。中間区分440は、第3の熱交換チャネル450と熱交換接触にあり得、プロセスマイクロチャネル210の中間区分440と第3の熱交換チャネル450の間の熱交換を可能とする。
【0022】
ある実施形態において、プロセスマイクロチャネル210は、第2の区分340の下流の第3の区分(図示せず)と、場合により第2の区分340の下流および第3の区分の上流の第2の中間区分(図示せず)を含み得る。第3の区分は、第4の熱交換チャネル(図示せず)と熱交換接触にあり得、プロセスマイクロチャネル210の第3の区分と第4の熱交換チャネルの間の熱交換を可能とする。第2の中間区分は、第5の熱交換チャネル(図示せず)と熱交換接触にあり得、プロセスマイクロチャネル210の第2の中間区分と第5の熱交換チャネルの間の熱交換を可能とする。繰り返し単位は、1つ以上の第3のオリフィス(図示せず)を通って第3の区分の中に至る第3のフィードチャネル(図示せず)を含み得る。通常、1つ以上の第3のオリフィスは、もう一つの第3のオリフィスに対して下流に配置され得る。運転時、フィードは、プロセスマイクロチャネル210中の上流から、ならびに第3のフィードチャネルおよび1つ以上の第3のオリフィスを通して第3の区分の中に入り得る。
【0023】
フィードチャネルの各々はマイクロチャネルであり得る。これらは、15mmまでの、例えば0.05から10mmの、特に0.1から5mmの、更に特に0.5から2mmの高さまたは幅の少なくとも1つの内部寸法を有し得る。高さまたは幅の他の内部寸法は、例えば、0.1から100cm、特に0.2から75cm、更に特に0.3から50cmであり得る。フィードチャネルの各々の長さは、例えば、1から250cm、特に2から150cm、更に特に3から100cm、または5から50cmであり得る。
【0024】
プロセスマイクロチャネルの区分の各々の長さは、例えば、必要とされる熱交換容量により、もしくは区分中に含有され得る触媒の量により相互に独立して選択され得る。この区分の長さは、独立して少なくとも1cm、または少なくとも2cm、または少なくとも5cmであり得る。この区分の長さは、独立して多くても250cm、または多くても150cm、または多くても100cm、または多くても50cmであり得る。この区分の他の寸法は、プロセスマイクロチャネル210の対応する寸法により規定される。
【0025】
本発明のマイクロチャネル反応器は、既知の方法、例えば従来の機械加工、レーザー切断、成形、型打ち、およびエッチングおよびこれらの組み合わせを用いて製造され得る。本発明のマイクロチャネル反応器は、通路を可能とさせる除去済の形状付きのシートを形成することにより製造され得る。このようなシートの積重体は、既知の方法、例えば拡散接合、レーザー溶接、冷溶接、拡散ろう付け、およびこれらの組み合わせを使用することにより組み立てられて集積化素子を形成する。本発明のマイクロチャネル反応器は、反応物質の入力、生成物の出力、および熱交換流体の流れを制御するための適切なヘッダー、フッター、バルブ、導管ライン、および他の形状を含む。これらは図面中には示されていないが、当業者によれば容易に設置可能である。また、プロセスマイクロチャネルに入る前に、フィードの温度制御のための、特にフィードまたはフィード成分を加熱するための、もしくはプロセスマイクロチャネルを出た後で生成物の温度制御のための、特に生成物を冷却するための更なる熱交換装置(図示せず)があり得る。このような更なる熱交換装置は、マイクロチャネル反応器と一体であり得るが、通常、別々の装置である。これらは図面中には示されていないが、当業者によれば容易に設置可能である。
【0026】
触媒は、存在する場合には、プロセスマイクロチャネルの1つ以上中に収めるのに好適ないかなる形のものでもあり得る。このような触媒は、いかなる既知の方法によってもプロセスマイクロチャネルの指定された区分に設置され得る。触媒は、固体の形のものであり、プロセスマイクロチャネルの指定された区分において充填床を形成し得、ならびに/もしくはプロセスマイクロチャネルの指定された区分の壁の少なくとも一部上に被膜を形成し得る。別法としては、触媒は、マイクロチャネル装置の指定された区分に配置され得る挿入物上の被膜の形のものであり得る。被膜は、ウオッシュコーティングまたは蒸気堆積などのいかなる好適な堆積方法によっても作製され得る。触媒がいくつかの触媒的に有効な成分からなる場合には、堆積は、プロセスマイクロチャネルの指定された区分の壁の少なくとも一部の上に第1の触媒成分、例えば金属または金属成分を堆積し、第1の成分の堆積の前に、一緒に、もしくは以降に少なくとも同一の壁の上に、1つ以上の更なる触媒成分を堆積することにより行われ得る。
【0027】
ある実施形態においては、触媒は均質で、固体の形でないことがあり得、この場合には触媒は、関連のフィードもしくはプロセス流の1つ以上の成分と一緒にプロセスマイクロチャネルの指定された区分にフィードされ、反応混合物またはプロセス流と共にマイクロチャネルを通ることができる。
【0028】
ある態様においては、本発明は、酸素または空気を用いるアルキレンの直接的なエポキシ化によるアルキレンオキシド、および特にエチレンオキシドの製造方法において特別な用途を見出す。Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology,3rd edition,Volume 9,1980,pages 445−447を参照のこと。空気をベースとする方法においては、空気または酸素により富化された空気が酸化剤源として使用され、酸素をベースとする方法においては、高純度(少なくとも95モル%)の酸素が酸化剤源として使用される。現在は、大部分のエポキシ化プラントは酸素をベースとする。このエポキシ化方法は、広い範囲から選択される反応温度を用いて行われ得る。好ましくは、エポキシ化反応器内の反応温度は、150℃から340℃の範囲に、更に好ましくは180から325℃の範囲にある。反応は、好ましくは1000から3500kPaの範囲の圧力で行われる。
【0029】
揮発性汚染物質が工業的化学プロセスによりしばしば生成される。このような汚染物質は、しばしば大気に放出されるが、環境立法が強化されると共に、少量のこのような汚染物質しか商業用製造プラントから放出を可能としていない。
【0030】
放出ガスまたは廃ガス中で汚染が起こる可能性のある一つのこのような領域は、エチレンオキシドの製造においてである。バルクエチレンオキシド製品の回収の後に残る残存ガスは、エチレン酸化反応器に再循環される。再循環ガスの一部または全部の側流は、過剰COを除去するために、水性CO吸収剤により通常洗浄され、過剰COは、吸収剤から引き続いてストリッピングされ、および放出され得るか、もしくは好ましくは使用するため、もしくは副生成物として販売するために回収される。再循環ガス側流の洗浄時、少量の炭化水素がCO吸収剤中に溶解ならびに/もしくは同伴され、二酸化炭素の汚染を回避するためには除去される必要があるという問題が特に大容量の製造プラントにおいて生じる。
【0031】
放出ガスから揮発性汚染物質を除去するために、種々の系が提案されてきた。このような汚染物質は、有機炭化水素、例えばエチレン、メタン、エチレンオキシド、およびハロゲン含有化合物であり得る。汚染物質が揮発性有機化合物である場合には、現在の除去方法は熱分解または触媒的分解、好ましくは燃焼を利用する。
【0032】
多くの工業的プロセスにおいては、放出ガスは、酸化装置中で熱的もしくは反応器が触媒を含有する場合には触媒的に充填床反応器中で完全燃焼することにより、清浄化され、これらの不純物を除去する。ある場合には、このような反応器は、発生する燃焼熱を回収するために熱交換器と組み合わされる。このような燃焼または焼却は、例えば触媒焼却器内で行うことができ、これにより1つ以上の触媒床は高温(ほぼ300℃から800℃の範囲内;通常500℃)まで加熱され、および大気圧で運転される。熱的な燃焼系においては、この温度は、700から1000℃の範囲内にあり得、大気圧でも運転される。従って、エネルギー損失を最小とし、効率を改善するために種々の熱交換機構も組み込まれる。
【0033】
更に高性能なシステムは逆流型反応器である。逆流型反応器は当分野で周知である。このような反応器の一般的な原理は、「Reverse−Flow Operation in Fixed Bed Catalytic Reactors」,Cata.Rev.Sci.Eng.,28(1),1−68(1996)で詳述された。
【0034】
逆流型反応器は、多数の異なる大規模の不均質プロセス、例えば揮発性有機汚染物質の触媒的焼却、二酸化イオウによる硫化水素酸化、ルテニウムおよびコバルト触媒上のフィッシャー・トロプシュ合成、煙道ガス中での一酸化炭素および/または酸化窒素の選択的還元、およびUS−A−6,261,093、CA−A−1,165,264、US−A−5,753,197、およびUS−A−5,589,142で述べられているような類似のプロセスで使用されてきた。
【0035】
固定触媒床上の触媒反応用の単純な逆流型反応器は、少なくとも1つの触媒床と、場合により触媒床を所定の位置に保持する不活性材(inerts)としばしば呼ばれる耐火性充填物の1つ以上の触媒床を含む反応器容器からなり、不活性材は、また、それぞれの反応器の入口または出口の間の流体またはガス状反応媒体の流れ方向の振動を可能とさせる必要な構成および切り替えバルブと一緒に更なる熱容量ももたらす。
【0036】
逆流型反応器は、機械的破壊を引き起こす機械的応力を受け易い切り替えバルブを系が含むという難点を有する。
【0037】
本発明は、放出ガスまたは他のガス流中の揮発性汚染物質を燃焼するためにマイクロチャネル装置を利用する。この装置は、このような汚染物質を除去する有効な手段であり、有効な熱交換を燃焼と同一の装置中で行うことが可能となり、これによりこの2つのプロセスを一つの装置に合体して、潜在的に低いCAPEXが得られる。特に、逆流型系に比して複雑な切り替え機構が回避され、プロセスは単純で高信頼性となる。
【0038】
このようにして、マイクロチャネル装置の酸化装置としての使用は、運転が単純で容易であり、先行の提案よりも潜在的に低コストである。この装置は、高熱集積化を高効率の燃焼と組み合わせる。このことは低ppm量の汚染物質の除去に極めて重要である。先行の提案においては、高性能な逆流型反応器によっても、切り替えバルブ経由でもしくは過熱を避けるためのバイパス機構を通して漏洩が起こり、系が信頼できない。マイクロチャネル装置は、別々の熱交換器もしくはバイパス系とは別の他の機構経由での熱制御を可能とさせ、および切り替えバルブを利用しない。
【0039】
したがって、本発明は、
a)第1のプロセス流をマイクロチャネル装置中の第1の組のプロセスマイクロチャネルに流すこと、
b)上記第1のプロセス流を揮発性汚染物質の燃焼温度まで加熱し、および揮発性物質を燃焼させて燃焼生成物も含有する高温の清浄化済の流れを形成すること、
c)高温の清浄化済の流れを上記第1の組のマイクロチャネルと熱接触している、好ましくは第2の組のプロセスマイクロチャネルであり得る、熱交換チャネルに導くこと、および引き続いて
d)冷却された清浄化済のプロセス流を回収すること
を含む燃焼性の揮発性汚染物質を第1のプロセス流から除去するための方法を提供する。
【0040】
揮発性汚染物質は、エタン、エチレン、メタン、エチレンオキシドおよびハロゲン含有化合物、例えば有機塩化物の有機炭化水素のいずれでもあり得る。このような汚染物質は、第1のプロセス流の重量で0.05から1重量%、例えば重量で0.05から0.5%の範囲の量で存在し得る。
【0041】
揮発性汚染物質の燃焼または焼却がマイクロチャネル装置内の第1の組のプロセスマイクロチャネル内で行われ、水および二酸化炭素の燃焼生成物を生じる。これらは、ガス流の残りと共に除去されるべき処理済の流れと共にマイクロチャネル装置から搬出され得る。これらの加熱されたガスは、上記の第1のマイクロチャネル組と熱的な関係にある第1の組の熱交換チャネルまで導かれる。このようにして、加熱されたガスは、第1のプロセス流を燃焼温度まで加熱する。開始と、起こり得る熱損失を可能とさせるために、この工程の運転の開始時に第1のプロセス流を加熱し、および第1の組のマイクロチャネル内で燃焼温度に達するために必要な熱を確保するために、追加の加熱器具が必要であり得る。このような追加の加熱器具は、単純なバーナーによりもしくは例えば第2の組の熱交換チャネルとして、マイクロチャネル装置の中に容易に組み込み可能である。マイクロチャネル装置が高温の清浄化済の流れからの熱損失を低減するということ、およびこのような補助的な加熱手段が先行の提案ほど必要とされないということが期待される。
【0042】
第1の組の熱交換チャネルは、好ましくは、第2の組のマイクロチャネルの形の第1の組に隣接する。2組の(マイクロ)チャネルは、2つのプロセス流に対して並流の流れ、向流流れ、または交差流流れを可能とするように配置可能である。最も好ましくは、向流もしくは交差流の流れ、および特に向流流れを確定する配置である。第1のプロセス流と熱接触して配列するように、高温の清浄化済の流れがマイクロチャネル装置を出、再び入るように装置をセットアップし得るが、熱経済の理由により、第1のプロセス流との熱交換が行われるまで、高温の清浄化済の流れは、マイクロチャネル装置中に残ることが好ましい。このようにして、好ましくは、第1のプロセス流は、第1の組のマイクロチャネルを通って流れ、次に第1の組のマイクロチャネルの全長に隣接して配置される第1の組の熱交換チャネルに導かれる。この実施形態においては、冷却された清浄化済のプロセス流は、通常、第1のプロセス流が入る地点に近接して装置を出る。しかしながら、マイクロチャネル反応器からの出口は、いかなる好適な地点にあってもよく、およびある実施形態においては装置の入口地点の反対端にあり得る。
【0043】
例えば、第1のプロセス流が処理前に既に加熱されているために、もしくは燃焼反応を熱的に制御する必要があるために、燃焼が第1のプロセス流の加熱に必要とされるよりも過剰な熱をもたらす場合には、燃焼反応から過剰な熱を除去することができる第2の組の熱交換チャネルがマイクロチャネル装置中にさらに存在し得る。この熱は、例えばスチームの製造に直接的に、もしくは別の場所で使用可能である。上記の第2の組の熱交換チャネルも好ましくはマイクロチャネルであり、次いで第3の組のマイクロチャネルを形成する。別法としては、高温ガスの一部が放出可能である。
【0044】
二酸化炭素プロセス流から揮発性有機炭化水素を除去するために、最も好ましくはエチレン、メタン、およびエチレンオキシドの1つ以上を除去するために、このような方法が利用されるということが好ましい。この二酸化炭素流は、好ましくはエチレンオキシド製造プラントからのCO廃ガス流である。得られる純度レベルは、清浄化されたCOが工業製品として販売され得るということを意味する。
【0045】
しかしながら、本発明の方法は、現在は、酸化装置または焼却器を利用して揮発性有機不純物を除去するいかなる状況においても利用され、例えば、石油化学商業プラントからの任意の放出ガスまたはタンクファームからのオフガスを処理し、実際に1ppmから10体積%の揮発性有機炭化水素不純物を有する任意のガス流を清浄化し得る。
【0046】
このマイクロチャネル装置によって、揮発性汚染物質の触媒的燃焼または焼却が可能となるようになされ得る。前述のように、触媒は、多数の好適な方法でプロセスマイクロチャネルの中に組み込み可能である。触媒的燃焼に最も適する触媒成分は、当業者には周知である。好適な触媒成分は、触媒的に有効な成分として、白金、パラジウム、ロジウム、レニウム、ニッケル、コバルトおよびマンガンから選択される金属またはカチオン性金属成分を含み、耐火性酸化物キャリアー、例えばアルミナも存在し得るが、必要ではない。この触媒は、マイクロチャネル内の充填物として、もしくはプロセスマイクロチャネルの、最も好適には第1の組のプロセスマイクロチャネルの1つ以上の壁上のウオッシュコート経由で固体の形で組み込まれ得る。
【0047】
本発明の方法は、熱および触媒焼却器に対して上記した従来の温度および圧力で行われる。
【0048】
ここで、本発明を次の実施例により例示する。
【実施例】
【0049】
400,000mt/a エチレンオキシドプラント中で反応器系への循環ガスの流れは、600mt/時である。この流れは、主としてメタン、エチレン、酸素、アルゴン、二酸化炭素および窒素からなる。反応器入口における温度は140℃であり、圧力は2000kPaゲージである。図3中で反応器1内部の触媒の上でエチレンオキシドと二酸化炭素を製造する。EOをEO吸収器2中で洗浄し、再循環ガスの一部をCO吸収器3中で洗浄し、COを除去する。
【0050】
COスクラブに使用される吸収剤は、通常、循環する活性化された高温カーボネート溶液である。吸収器3の底部からのCOにより飽和された吸収剤をライン5経由でCOストリッパー4の頂部までフィードする。ここで、COを廃ガス流7として大気に放出する。平均して、このCO廃ガス流はこの実施例においては18mt/時である。COストリッパー4の底部の流れ6はCOを欠如し、吸収器3の頂部まで循環で戻される。放出されるCOガス流7は、エチレンおよびメタンのような痕跡の炭化水素、この実施例では0.1重量%のエチレンおよび0.2重量%のメタンを含有することができる。また、前述の炭化水素よりもずっと低濃度であるが、時には痕跡のエチレンオキシドをこのガス流中で検出することができる。
【0051】
今日では、ますます多くの国が更に低レベルの炭化水素排出およびエチレンオキシド排出を要求する。従って、CO廃ガス流に後処理をしばしば行ってこれらの成分を環境上の許可で示されているレベル以下まで除去する。この分野において通常使用される技術は酸化、言い換えれば酸化装置中での炭化水素の燃焼である。これは、熱酸化法または触媒的な酸化法のいずれかであり得る。適当な熱バランスを維持するために、これらの酸化装置はしばしば循環モードで運転される。下記の概略図に示す系はこのような逆流型系である。ガスは、以降2つの小室AおよびB(実線)を通って流れる。両方の小室は予熱域と燃焼域を有する。CO流中の炭化水素を予熱し、および小室A中で燃焼させる。このようにして、小室A中の予熱域を冷却する。高温ガスによって、小室B中の予熱域を燃焼が可能な温度まで加熱する。小室B中で所望の温度に達したならば、ガス流の方向を切り替え、BおよびAから反対方向(点線)に流し、および逆過程を行う。
【0052】
清浄なCOガス流8を大気に放出するか、もしくは他の用途に使用することができる。このような循環系においては、切り替えバルブは機械的応力を受け易く、および機械的もしくは更には化学的(腐食)破壊に敏感である。このプラントは環境上の許可に準拠しなければならないので、酸化装置の破壊の場合には全体のEOユニットを中断しなければならず、甚大な経済的な衝撃を及ぼす。
【0053】
本発明においては、2つの小室AおよびBをCO廃ガス流を受け入れるために第1の組のプロセスマイクロチャネルを有する単一のマイクロチャネル装置により置き換えられ、揮発性炭化水素汚染物質を燃焼させるために、ガス流を燃焼温度に供する。次に、ガス流を第1の組と熱接触にある第2の組のプロセスマイクロチャネルの中に流し、高温の出口ガスは、燃焼小室にフィードされる冷たいガスを直接に加熱することができる。このようにして、切り替えを回避し、および系の信頼性と単純性を大々的に増大させる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】マイクロチャネル反応器とこの主な構成要素の概略図を示す。
【図2】プロセスマイクロチャネルおよび熱交換チャネルと、本発明の実施において使用される場合のこの運転を含む、繰り返し単位の通常の例の概略図を示す。
【図3】プロセス流から燃焼性の揮発性汚染物質を除去するための通常の方法の例の概略図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)第1のプロセス流をマイクロチャネル装置中の第1の組のプロセスマイクロチャネルに流すこと、
b)前記第1のプロセス流を揮発性汚染物質の燃焼温度まで加熱し、および揮発性物質を燃焼させて燃焼生成物も含有する高温の清浄化済の流れを形成すること、
c)高温の清浄化済の流れを前記第1の組のプロセスマイクロチャネルと熱接触している熱交換チャネルに導くこと、および引き続いて
d)冷却された清浄化済のプロセス流を回収すること
を含む、第1のプロセス流から燃焼性揮発性汚染物質を除去するための方法。
【請求項2】
高温の清浄化済の流れがマイクロチャネル装置内で第1のプロセス流に向流で流れることを可能とするように、前記第1の組のプロセスマイクロチャネルおよび前記熱交換チャネルが配置される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記熱交換チャネルが第2の組のマイクロチャネルである、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
二酸化炭素プロセス流から炭化水素汚染物質を除去するための方法である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
汚染物質がエチレン、メタンおよびエチレンオキシドならびにこれらの2つ以上の混合物から選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
マイクロチャネル装置が燃焼性の揮発性汚染物質の1つ以上を触媒的に酸化するのに好適な触媒を含有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
触媒が白金、パラジウム、ロジウム、レニウム、ニッケル、コバルトおよびマンガンから選択される少なくとも1つの金属を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
触媒が第1の組のプロセスマイクロチャネルの1つ以上のチャネルの壁上にウオッシュコートされている、請求項6または請求項7に記載の方法。
【請求項9】
第1のプロセス流がエチレンオキシド製造プラントからのCO廃ガス流である、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−520943(P2009−520943A)
【公表日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−546454(P2008−546454)
【出願日】平成18年12月20日(2006.12.20)
【国際出願番号】PCT/EP2006/070032
【国際公開番号】WO2007/071741
【国際公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(590002105)シエル・インターナシヨナル・リサーチ・マートスハツペイ・ベー・ヴエー (301)
【Fターム(参考)】