説明

燃焼機関における使用のための耐磨耗潤滑油組成物

【課題】燃焼機関における使用のための耐磨耗潤滑油組成物を提供すること。
【解決手段】本発明は、硫黄含有油添加剤と組み合わせて
本質的に
a)少なくとも一種のリン酸アンモニウムエステル;
b)少なくとも一種のチオリン酸エステル;及び
c)少なくとも一種のジチオリン酸誘導体
から成る添加剤混合物を含む添加剤組成物;及び
火花点火又はディーゼル自動車用エンジンのような燃焼機関における磨耗低減のための方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼機関における使用のための潤滑油組成物、すなわち添加剤組成物に関し、該組成物は本質的に
a)少なくとも一種のリン酸アンモニウムエステル;
b)少なくとも一種のチオリン酸エステル;及び
c)少なくとも一種のジチオリン酸誘導体
から成る添加剤混合物を含む。
この混合物は、硫黄含有油添加剤と組み合わされる。本発明は、また燃焼機関における磨耗減少のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
添加剤は、潤滑油、例えば鉱油又は合成もしくは半合成油の性能特性を改善することが知られている。酸化劣化生成物の形成を減少し、及び潤滑油の長期貯蔵期間及び高安定性能を促進する特に添加剤が強く望まれている。
亜鉛ジアルキル−/ジアリールジチオホスフェート(ZnDTP)
【化1】

は、第一に選択されるの添加剤である。優れた耐磨耗性及び極圧特性に加えて、ZnDTPはまた効果的な酸化防止剤及び金属不動態化剤(metal passivator)でもある。それらの多機能性は、それらを、エンジンオイル、ショックアブゾーバーオイル(shock absorber oil)及び油圧油において莫大な量で近ごろ使用される最も広く普及した費用効率が高い添加剤群にしている。非特許文献1参照。
欧州共同体(EC)、アメリカ合衆国及び他の国々における環境省庁によって出される様々な規制は、自己点火(ディーゼル自動車用エンジン)又は火花点火(ガソリン自動車用エンジン)で動く燃焼自動車用エンジンから放出される排ガスの組成物に関して厳しい制限を要求する。それらの排出ガスが現在、環境規制を満たさないという事実を鑑みて、排出ガス後処理装置が導入された。それらの装置は、燃焼プロセスによって発生する灰粒子の形態での望ましくない副生成物の析出によって劣化する、触媒のための多孔質膜(微粒子トラップ)又は多孔性担体からなる。固体触媒の活性は、固体リン化合物及び酸性硫黄化合物の相互作用によって特に低下する。一般に灰として分類されるそれらの副生成物は、自動車用燃料及び油中に存在する潤滑油添加剤に一部起因する。
潤滑油添加剤の悪影響を最小限にするために、いわゆる低SAPS(硫酸塩灰、リン及び硫黄)エンジンオイルが開発されている、例えば非特許文献2。
灰を生じる浄化剤、リン添加剤及びZnDTPの量は、最近開発された潤滑油組成物で減少する傾向にある。それゆえに本発明は、今日迄使用される亜鉛ジアルキルジチオホスフェートの優れた抗酸化及び磨耗保護に迫る、低硫黄及びリン含有の実質的に無金属の添加剤又は添加剤の組合せを提供することをその目的とする。
特許文献1は、リン及び硫黄含有添加剤成分を含む無亜鉛油圧油を記載する。1つの成分は、トリフェニルチオリン酸型(イルガルーブ(IRGALUBE) TPPT)のチオリン酸エステルである。これは、イルガルーブ63型のジチオリン酸エステルと及び他
の任意の油添加剤成分、例えばスルホン酸アンモニウムとの組み合わせられる。
特許文献2は、β−ジチオリン酸化プロピオン酸(A)、3−(O,O−ジイソプロピルジチオホスホリル)−2−メチルプロピオン酸、トリアリール(イルガルーブ(登録商標:Irgalube)353)、トリアリールホスフェート(B)並びに鉱油及び/又は合成油を含む基油を含む潤滑油組成物を開示する。
特許文献3は、チオリン酸エステル及びジチオリン酸エステル又はリン酸チオエステル並びにポリオール部分エステル、アミン及びエポキシドの群からの油添加剤を含む油圧油組成物を開示する。
【非特許文献1】Ullmann’s Encyclopaedia of Industrial Chemistry, Lubricants and Lubrication, Wiley−VCH Verlag, HYPERLINK "javascript://" DOI: 10.1002/14356007.a15_423,論文のインターネット公開日:2002年1月15日、及び: W. J. Bartz (編): Additive fur Schmierstoffe, Expert Verlag, 1994,53ないし83頁中のC. G. A. von Eberan−Eberhorst, R. S. Hexter, A. C. Clark, B. O’Connor, R. H. Walsh, Aschegebende Extreme−Pressure− und Verschleisschutz−Additive
【非特許文献2】Shigeki Takeshima, Nippon Corp., Development and durability of low SAPS diesel engine oils for passenger cars (JSAE Paper No.20045277)
【特許文献1】米国特許第5531911号明細書
【特許文献2】国際公開第02/053687号パンフレット
【特許文献3】欧州特許出願公開第903399号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本質的に、付加的な硫黄含有油添加剤との組み合わせにおいて、
a)少なくとも一種のリン酸アンモニウムエステル;
b)少なくとも一種のチオリン酸エステル;及び
c)付加的な硫黄含有添加剤と組合せた、少なくとも一種のジチオリン酸誘導体
から成る添加剤混合物が、低金属含有量を有し及び低硫黄及びリン含有量の要求を満たす潤滑油組成物を調製するために特に有用であることが驚くべきことに見出された。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、燃焼機関における使用のための潤滑油組成物であって、該組成物における硫黄の総量が0.3質量%未満であるという条件で、
A)本質的に
a)少なくとも一種のリン酸アンモニウムエステル;
b)少なくとも一種のチオリン酸エステル;及び
c)少なくとも一種のジチオリン酸誘導体;
からなる添加剤混合物
B)少なくとも一種の付加的な硫黄含有油添加剤;
C)慣用のクランクケース油添加剤;及び
D)潤滑粘度の低硫黄油;
を含む組成物に関する。
【発明の効果】
【0005】
上述した添加剤混合物を含有する組成物は、対応するZNDTPを含有する組成物と比
較してそれらのより優れた性能によって特徴付けられる。これは、C&T PVW5106(VW(VAG)によって開発された)及び圧力示差走査熱量測定(Pressurized Differential Scanning Calorimetry)(PDSC)のような、様々な一般に認められている試験において証明し得る。
本発明に従う組成物は、内燃機関、例えば火花点火内燃機関(一般にガソリン自動車用エンジンとして知られる)又は自己点火内燃機関(一般にディーゼル自動車用エンジンとして知られる)において優れた抗酸化性を有する潤滑油としての使用のために特に適している。
前記組成物は、特にAPI(米国石油協会:アメリカ合衆国、ワシントンDC、1120LストリートNW)の分類、S−及びC−類(例えば、ASTM D 4485に記述されるようなSM、CE)、ILSAC(APIによって発表される、潤滑油国際基準化及び認定委員会)によって定義されるGF−類及びACEA(欧州自動車工業会、ベルギー国、B−1000 ブリュッセル、ルーデノイエル211)によるA、B、C及びE規格を満たす自動車用油として適している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の好ましい態様は、添加剤混合物A)が本質的に
a)式
【化2】

(式中、
1及びR2の1方は水素原子を表し、もう一方は炭素原子数1ないし20の炭化水素基を表すか、又は
1及びR2の両方が炭素原子数1ないし20の炭化水素基を表し、及びRa、Rb、Rc
びRdは互いに独立して水素原子又は炭素原子数6ないし20の炭化水素基を表す。)で
表される少なくとも一種のリン酸アンモニウムエステル;
b)式
【化3】

(式中、
1、R2及びR3は、炭素原子数3ないし20の炭化水素基を表す。)で表される少なく
とも一種のチオリン酸エステル;及び
c)式
【化4】

(式中、
1及びR2は、互いに独立して炭素原子数3ないし18のアルキル基、炭素原子数5ないし12のシクロアルキル基、炭素原子数9又は10のビシクロアルキルメチル基、炭素原子数9又は10のトリシクロアルキルメチル基、フェニル基又は炭素原子数7ないし24のアルキルフェニル基を表し、又は
1及びR2は一緒になって基
【化5】

を表し、及び
3は水素原子又はメチル基を表す。)で表される3−ジチオホスホリルプロピオン酸;
及び式
【化6】

(式中、
1及びR2は、前記式(III)に関して定義される通りであり、及び
a、Rb、Rc及びRdは互いに独立して水素原子又は炭素原子数6ないし20の炭化水素基を表す。)で表されるジチオリン酸のアンモニウム塩からなる群から選ばれる少なくとも一種のジチオリン酸誘導体からなる潤滑油組成物に関する。
【0007】
本発明の特に好ましい態様は、添加剤混合物A)が本質的に
a)前記式(I)(式中、R1及びR2の1方は水素原子を表し、及びもう一方は炭素原子
数3ないし18のアルキル基を表すか;又はR1及びR2の両方は炭素原子数3ないし18のアルキル基を表し;及びRa、Rb、Rc及びRdは互いに独立して水素原子又は炭素原子数6ないし20のアルキル基を表す。)で表される少なくとも一種のリン酸アンモニウムエステル;
b)前記式(II)(式中、R1、R2及びR3は互いに独立してフェニル基又は炭素原子
数7ないし24のアルキルフェニル基を表す。)で表される少なくとも一種のチオリン酸エステル;及び
c)前記式(III)(式中、R1及びR2は炭素原子数3ないし18のアルキル基を表し、及びR3は水素原子又はメチル基を表す。)で表される3−ジチオホスホリルプロピオ
ン酸、及び
前記式(IV)(式中、R1及びR2は炭素原子数3ないし18のアルキル基を表し、及び
a、Rb、Rc及びRdは互いに独立して水素原子又は炭素原子数6ないし20のアルキル基を表す。)で表されるジチオリン酸のアンモニウム塩からなる群から選ばれる少なくとも一種のジチオリン酸誘導体からなる潤滑油組成物に関する。
【0008】
本発明の非常に好ましい態様は、添加剤混合物A)が本質的に
a)前記式(I)(式中、R1及びR2の1方は水素原子を表し、及びもう一方は炭素原子数3ないし9のアルキル基を表すか;又はR1及びR2の両方は炭素原子数3ないし9のアルキル基を表し;及びRa、Rb、Rc及びRdは互いに独立して水素原子又は炭素原子数12ないし20のアルキル基を表す。)で表される少なくとも一種のリン酸アンモニウムエステル;
b)前記式(II)(式中、R1、R2及びR3は互いに独立してフェニル基又は(炭素原
子数1ないし9のアルキル)1ナイシ3フェニル基を表す。)で表される少なくとも一種のチオリン酸エステル;及び
c)前記式(III)(式中、R1及びR2は2−メチルプロピルを表し、及びR3はメチ
ル基を表す。)で表される3−ジチオホスホリルプロピオン酸、及び
前記式(IV)(式中、R1及びR2はイソプロピル基を表し、及びRa、Rb、Rc及びRdは互いに独立して水素原子又は炭素原子数12ないし20のアルキル基を表す。)で表されるジチオリン酸のアンモニウム塩からなる群から選ばれる少なくとも一種のジチオリン酸誘導体からなる潤滑油組成物に関する。
【0009】
本発明の非常に好ましい態様は、添加剤混合物A)が本質的に
a)前記式(I)(式中、R1及びR2の1方は水素原子を表し、及びもう一方は炭素原子数3ないし9のアルキル基を表すか;又はR1及びR2の両方は炭素原子数3ないし9のアルキル基を表し;及びRa、Rb、Rc及びRdは互いに独立して水素原子又は炭素原子数12ないし20のアルキル基を表す。)で表される少なくとも一種のリン酸アンモニウムエステル;
b)前記式(II)(式中、R1、R2及びR3はフェニル基を表すか、又は
1、R2及びR3の1つはフェニル基を表し及びR1、R2及びR3の2つが(炭素原子数1ないし9のアルキル)1ナイシ3フェニル基を表すか、又は
1、R2及びR3の2つはフェニル基を表し及びR1、R2及びR3の1つが(炭素原子数1ないし9のアルキル)1ナイシ3フェニル基を表すか、又は
1、R2及びR3が(炭素原子数1ないし9のアルキル)1ナイシ3フェニル基を表す。)
で表される少なくとも一種のチオリン酸エステル;及び
c)前記式(III)(式中、R1及びR2は2−メチルプロピル基を表し、及びR3はメ
チル基を表す。)で表される3−ジチオホスホリルプロピオン酸からなる潤滑油組成物に関する。
【0010】
成分A
成分A)に存在する添加剤混合物は、少なくとも3つの異なるホスフェート、チオホスフェート又はジチオホスフェート添加剤からなる。
前記混合物のホスフェート成分a)は、上記式(I)(式中、R1及びR2の1方は水素原子を表し、もう一方は炭素原子数1ないし20の炭化水素基を表すか、又はR1及びR2の両方が炭素原子数1ないし20の炭化水素基を表し、及びRa、Rb、Rc及びRdは互いに独立して水素原子又は炭素原子数6ないし20の炭化水素基を表す。)によって表されるもののようなリン酸アンモニウムエステルである。
好ましい態様によれば、R1及びR2の1方は水素原子を表し、及びもう一方は炭素原子数3ないし18のアルキル基を表すか、又はR1及びR2の両方が炭素原子数3ないし18のアルキル基を表し、及びRa、Rb、Rc及びRdは互いに独立して水素原子又は炭素原子数6ないし20のアルキル基を表す。
特に好ましい態様によれば、R1及びR2の1方は水素原子を表し、及びもう一方は炭素
原子数3ないし9のアルキル基を表すか、又はR1及びR2の両方が炭素原子数3ないし9のアルキル基を表し、及びRa、Rb、Rc及びRdは互いに独立して水素原子又は炭素原子数12ないし20のアルキル基を表す。
炭素原子数1ないし20の炭化水素基R1及びR2は、好ましくは炭素原子数1ないし20のアルキル基、例えばメチル基、エチル基、又は直鎖又は枝分かれした炭素原子数3ないし30のアルキル基、例えばn−プロピル基、イソプロピル基、n−、イソ−又は第三ブチル基、n−ペンチル基、イソアミル基、ネオペンチル基、2−エチルブチル基、n−ヘキシル基、1−メチルペンチル基、1,3−ジメチルブチル基、n−ヘプチル基、イソヘプチル基、n−オクチル基、1,4,4−トリメチル2−ペンチル基、3,4−、3,5−又は4,5−ジメチル−1−ヘキシル基、3−又は5−メチル−1−ヘプチル基、1,1,3,3−テトラメチルブチル基、2−エチルヘキシル基、イソブチレンの二量体から得られるような枝分かれしたオクチル基、n−ノニル基、1,1,3−トリメチルヘキシル基、トリプロピレンの三量体から得られるような枝分かれしたノニル基、1−メチルウンデシル基、2−n−ブチル−n−オクチル基、イソブチレンの三量体又はプロピレンの四量体から得られる枝分かれしたドデシル基、プロピレンの五量体から得られる枝分かれしたペンタデシル基、2−n−ヘキシル−n−デシル基又は2−n−オクチル−n−ドデシル基である。
炭素原子数6ないし20のアルキル基として定義されるRa、Rb、Rc及びRdは、6ないし20個の炭素原子を有するアルキル基に関して上記で定義されたR1及びR2と同じ意味を有する。
【0011】
式(I)によって表されるようなリン酸アンモニウムエステルは、既知の化合物であり、及び既知の方法によって調製し得る。それらの多くは、製品イルガルーブ(登録商標:Irgalube)(チバスペシャルティケミカルズAGの登録商標)349:
【化7】

(式中、Rは炭素原子数3ないし18のアルキル基を表し、及びRa及びRbはアミン、炭素原子数11ないし14の枝分かれしたアルキル基、モノヘキシル基及びジヘキシルホスフェートと名付けられる生成物のような炭素原子数6ないし20のアルキル基を表す。)のように、商業上入手可能である。
本発明に従う組成物中に存在する他のリン酸アンモニウムエステルは、製品アディティン(登録商標:Additin)RC3740、RC3741又はRC 3760(アミンで中和された脂肪族アルコールのリン酸エステル)のようなドイツ国ミュンヘンのラインケミーライナウゲーエムベーハー(Rheinchemie Rheinau GmbH)によって商業上入手可能である。
【0012】
添加剤混合物のチオホスフェート成分b)は、上記の式(II)(式中、R1、R2及びR3は炭素原子数3ないし20の炭化水素基を表す。)で表されるもののようなチオリン
酸エステルである。
好ましい態様によればR1、R2及びR3は、互いに独立してフェニル基又は炭素原子数
7ないし20のアルキルフェニル基を表す。
特に好ましい態様によればR1、R2及びR3は、互いに独立してフェニル基又は(炭素
原子数1ないし9のアルキル)1ナイシ3フェニル基を表す。
非常に好ましい態様によればR1、R2及びR3は、互いに独立してフェニル基を表すか
、又は
1、R2及びR3のうち1つはフェニル基を表し、そしてR1、R2及びR3のうち2つは(炭素原子数1ないし9のアルキル)1ナイシ3フェニル基を表すか、又は
1、R2及びR3のうち2つはフェニル基を表し、そしてR1、R2及びR3のうち1つは(炭素原子数1ないし9のアルキル)1ナイシ3フェニル基を表すか、又は
1、R2及びR3が(炭素原子数1ないし9のアルキル)1ナイシ3フェニル基を表す。
炭素原子数3ないし20の炭化水素基R1、R2及びR3は、好ましくは炭素原子数3な
いし20のアルキル基、炭素原子数5ないし12のシクロアルキル基、炭素原子数5ないし12のシクロアルキル−炭素原子数1ないし4のアルキル基、フェニル基、炭素原子数7ないし20のアルキルフェニル基、炭素原子数7ないし20のアルコキシフェニル基、ナフチル基及び炭素原子数7ないし9のフェニルアルキル基である。
炭素原子数3ないし20のアルキル基は、例えばn−ノニル基、1,1,3−トリメチルヘキシル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、1−メチルウンデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基及びn−オクタデシル基である。R1、R2及びR3に対して特に
好ましい基は、イソプロピル基である。R1、R2及びR3の意味は同じ又は異なり得る。
式IIで表されるチオリン酸エステルは、例えば米国特許第5,531,911号明細書から既知である。それらの多くは商業上入手可能である。
炭素原子数5ないし12のシクロアルキル基は、例えばシクロペンチル基又はシクロヘキシル基である。炭素原子数5ないし12のシクロアルキル−炭素原子数1ないし4のアルキル基は、例えばシクロペンチルメチル基、2−シクロペンチルエチル基、シクロヘキシルメチル基又は2−シクロヘキシルエチル基である。
炭素原子数7ないし20のアルキルフェニル基は、例えば上記炭素原子数1ないし4のアルキル基の1ないし3個によって又は1もしくは2個の炭素原子数1ないし6のアルキル基又は1個の炭素原子数1ないし12のアルキル基によって置換されたフェニル基である。
炭素原子数7ないし20のアルコキシフェニル基は、例えば1ないし3個の炭素原子数1ないし4のアルコキシ基、特にメトキシ基又はエトキシ基によって、又は1又は2個の炭素原子数1ないし6のアルコキシ基もしくは1個の炭素原子数1ないし12のアルコキシ基によって置換されたフェニル基であり、それらの基は上述のアルキル基と類似である。
炭素原子数7ないし9のフェニルアルキル基は、例えばベンジル基、1−フェニル−1−エチル基又は2−フェニル−1−エチル基である。
【0013】
本発明の好ましい態様において、成分b)は式
【化8】

(式中、xは0ないし2.7を表し、yは3−(x+z)を表し、zは0ないし3−(x+y)及びx+y+z=3を表し、及びArは上記で定義したようなフェニル基、炭素原子数7ないし18のアルキルフェニル基、炭素原子数7ないし18のアルコキシフェニル基、ナフチル基又は炭素原子数7ないし9のフェニルアルキル基を表す。)で表されるチオリン酸エステルの混合物からなる。それらのチオリン酸エステルの調製は、欧州特許出願公開第368803号明細書において記載されている。式I’で表される好ましいチオリン酸エステルは、n−デシルフェニル−n−ノニルフェニル−フェニル−チオホスフェ
ート、o−第三ブチルフェニル−o−イソプロピルフェニル−フェニルチオホスフェート、又はn−ヘキシルフェニル−フェニルチオホスフェート混合物のような物質を含むイルガルーブ211型のトリアリールチオホスフェート混合物である。
本発明の更なる好ましい態様において、成分b)はO,O,O−トリス(2(又は4)−炭素原子数9又は10のイソアルキルフェニル)ホスホロチオエートのような、トリフェニルチオホスフェート型(イルガルーブTPPT)のチオリン酸エステルからなる。
【0014】
添加剤混合物のジチオホスフェート成分c)は、式(III)又は式(IV)で表されるもののようなジチオリン酸誘導体である。化合物(III)において、R1及びR2は互いに独立して炭素原子数3ないし18のアルキル基、炭素原子数5ないし12のシクロアルキル基、炭素原子数9又は10のビシクロアルキルメチル基、炭素原子数9又は10のトリシクロアルキルメチル基、フェニル基又は炭素原子数7ないし24のアルキルフェニル基を表すか;又はR1及びR2は一緒になって基:
【化9】

を表し;及び
3は水素原子又はメチル基、好ましくは水素原子を表す。
炭素原子数3ないし18のアルキル基として定義されるR1及びR2は、好ましくはイソプロピル基、イソブチル基又は2−エチルヘキシル基である。
他の基は、n−プロピル基、n−又は第三−ブチル基、n−ペンチル基、イソアミル基、ネオペンチル基、2−エチルブチル基、n−ヘキシル基、1−メチルペンチル基、1,
3−ジメチルブチル基、n−ヘプチル基、イソヘプチル基、n−オクチル基、1,4,4−トリメチル2−ペンチル基、3,4−、3,5−又は4,5−ジメチル−1−ヘキシル基、3−又は5−メチル−1−ヘプチル基、1,1,3,3−テトラメチルブチル基、イソブチレンの二量体から得られるような枝分かれしたオクチル基、n−ノニル基、1,1,3−トリメチルヘキシル基、トリプロピレンの三量体から得られるような枝分かれしたノニル基である。
炭素原子数5ないし12のシクロアルキル基、炭素原子数9又は10のビシクロアルキルメチル基、炭素原子数9又は10のトリシクロアルキルメチル基、炭素原子数7ないし24のアルキルフェニル基は、米国特許第5,922,657号明細書に特定されたものである。
化合物(III)は、例えば米国特許第5,922,657号明細書から既知である。
【0015】
式(IV)で表されるジチオリン酸のアンモニウム塩において、R1及びR2は式(III)について定義される通りであり、及びRa、Rb、Rc及びRd
は互いに独立して水素原子又は炭素原子数6ないし20の炭化水素基を表す。炭素原子数6ないし20のアルキル基として定義されるRa、Rb、Rc及びRd
はリン酸アンモニウム(I)及び6ないし20個の炭素原子のアルキル基について上記で定義されるRa、Rb、Rc及びRdと同じ意味を有する。
特に好ましい態様は、式
【化10】

で表されるジチオリン酸のアンモニウム塩、例えばO,O−ジイソプロピル水素ジチオホスフェートアルキルアミンに関する。
特に好ましい態様によれば、ジチオリン酸誘導体は3−ジチオホスホリルプロピオン酸(III)(ここで、R1及びR2は炭素原子数3ないし18のアルキル基を表し、及びR3は水素原子又はメチル基を表す。)、及びジチオリン酸のアンモニウム塩(IV)(こ
こで、R1及びR2は炭素原子数3ないし18のアルキル基を表し、及びRa、Rb、Rc
びRdは互いに独立して水素原子又は炭素原子数6ないし20のアルキル基を表す。)か
らなる群から選ばれる。
非常に好ましい態様によれば、ジチオリン酸誘導体は3−ジチオホスホリルプロピオン酸(III)(ここで、R1及びR2は炭素原子数3ないし18のアルキル基を表し、及びR3は水素原子又はメチル基を表す。)、及びジチオリン酸のアンモニウム塩(IV)(
ここで、R1及びR2は炭素原子数3ないし18のアルキル基を表し、及びRa、Rb、Rc
及びRdは互いに独立して水素原子又は炭素原子数6ないし20のアルキル基を表す。)
からなる群から選ばれる。
非常に好ましい態様は、3−ジチオホスホリル−2−メチルプロピオン酸(III)、例えば3−[[ビス(2−メチルプロポキシ)ホスフィノチオイル]チオ]−2−メチルプロパン酸:
【化11】

に関する。
この化合物は商業上入手可能であり、そして商標イルガルーブ(IRGALUBE)353のもと販売されている。
【0016】
本発明の好ましい態様において、定義された添加剤混合物における成分a)、b)及びc)のリン含有量は、組成物に基づき800ppm未満である。特に好ましい態様において、リン含有量は400ないし800ppm、特に300ないし700ppmである。成分b)と成分c)の質量比は、約10:10:80及び80:10:10ないし10:80:10質量%の範囲内で変わり得る。
組成物中の成分A)の総含有量は重大な意味を持つものではないが、組成物中の成分A)の好ましい総含有量は、組成物の総質量に基づき1.0ないし0.001、好ましくは0.1ないし0.01質量%の範囲内であるか、好ましくは組成物の総リン含有量によって表して0.01ないし0.1%である。
【0017】
成分B
燃焼機関における使用に適している本発明に従う潤滑油組成物は、上記の成分A)を含
み、該成分には本質的に
a)少なくとも一種のリン酸アンモニウムエステル;
b)少なくとも一種のチオリン酸エステル;及び
c)少なくとも一種のジチオリン酸誘導体
からなる添加剤混合物が存在する。
【0018】
この添加剤混合物は、少なくとも一種の付加的な硫黄を含有する油添加剤と混合される。様々な硫黄を含有する油添加剤が適している。下記の群から選ばれるジチオグリシジルエーテルが好ましい。
【化12】

【化13】

【0019】
それらの化合物は既知である。それらの調製は、欧州特許出願公開第0166696号明細書において記載されている。他の態様によれば付加的な硫黄含有油添加剤B)は式
【化14】

[式中、R1はヒドロキシ基、アミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、2−ヒドロキシアルキルチオ基又はR2−Sを表し、及びR2は部分式
【化15】

(式中、R3は50ないし400個の炭素原子を有するアルキル基を表し、及びR4は水素原子又はメチル基を表す。)によって表されるポリオレフィン残基を表す。]で表される
ポリアルキル化1,3,4−チアジアゾール化合物である。
上記ポリアルキル化1,3,4−チアジアゾール化合物は、既知の化合物である。それらの調製は、欧州特許出願公開第0406517号明細書に記載されている。
特に好ましい化合物は、炭素原子数9のアルキルジチオチアジアゾールであり、商標 ハイテック(登録商標:Hitec)4313の名のもと販売され商業上入手可能である。
様々な政府機関によって出された環境規制は、組成物中の硫黄総量が0.3質量%未満、好ましくは0.2質量%未満であると規定する。上記添加剤の組み合わせが、0.10質量%未満、好ましくは0.05質量%未満及び特に0.01質量%未満の含有量の硫黄が存在する燃料に加えられる。
【0020】
成分C
本発明に従う組成物は、成分A)及びB)に加えて追加の慣用の油添加剤を含む。そのような添加剤は、更なる酸化防止剤、金属奪活剤、さび止め剤、粘度指数向上剤(viscosity index enhancer)、流動点降下剤、分散剤、浄化剤、更なる極圧添加剤及び耐磨耗添加剤を含む。そのような添加剤は、それらのそれぞれに対し慣用の量で加えられ、それぞれの場合において約0.01ないし10.0質量%、好ましくは0.1ないし1.0質量%に及ぶ。更なる添加剤の例は、以下に与えられる。
1. フェノール系/アミン系酸化防止剤:
1.1. アルキル化モノフェノール
2,6−ジ−第三ブチル−4−メチルフェノール、2−ブチル−4,6−ジメチルフェノール、2,6−ジ−第三ブチル−4−エチルフェノール、2,6−ジ−第三ブチル−4−n−ブチルフェノール、2,6−ジ−第三ブチル−4−イソブチルフェノール、2,6−ジシクロペンチル−4−メチルフェノール、2−(α−メチルシクロヘキシル)−4,6−ジメチルフェノール、2,6−ジオクタデシル−4−メチルフェノール、2,4,6−トリシクロヘキシルフェノール、2,6−ジ−第三ブチル−4−メトキシメチルフェノール、線状ノニルフェノール又は側鎖において分岐したノニルフェノール、例えば2,6−ジノニル−4−メチルフェノール、2,4−ジメチル−6−(1’−メチル−ウンデシ−1’−イル)フェノール、2,4−ジメチル−6−(1’−メチルヘプタデシ−1’−イル)フェノール、2,4−ジメチル−6−(1’−メチルトリデシ−1’−イル)フェノール及びそれらの混合物
1.2. アルキルチオメチルフェノール
2,4−ジオクチルチオメチル−6−第三ブチルフェノール、2,4−ジオクチルチオメチル−6−メチルフェノール、2,4−ジオクチルチオメチル−6−エチルフェノール、2,6−ジドデシルチオメチル−4−ノニルフェノール
1.3. ヒドロキノン及びアルキル化ヒドロキノン
2,6−ジ−第三ブチル−4−メトキシフェノール、2,5−ジ−第三ブチルヒドロキノン、2,5−ジ−第三アミルヒドロキノン、2,6−ジフェニル−4−オクタデシルオキシフェノール、2,6−ジ−第三ブチルヒドロキノン、2,5−ジ−第三ブチル−4−ヒ
ドロキシアニソール、3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシアニソール、3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニルステアレート、ビス(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)アジペート
【0021】
1.4. トコフェロール
α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール又はδ−トコフェロール及びそれらの混合物(ビタミンE)
1.5. ヒドロキシ化チオジフェニルエーテル
2,2’−チオビス(6−第三ブチル−4−メチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−オクチルフェノール)、4,4’−チオビス(6−第三ブチル−3−メチルフェノール)、4,4’−チオビス(6−第三ブチル−2−メチルフェノール)、
4,4’−チオビス(3,6−ジ−第二アミルフェノール)、4,4’−ビス(2,6−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)ジスルフィド
1.6. アルキリデンビスフェノール
2,2’−メチレンビス(6−第三ブチル−4−メチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(6−第三ブチル−4−エチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス[4−メチル−6−(α−メチルシクロヘキシル)フェノール]、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス(6−ノニル−4−メチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス(4,6−ジ−第三ブチルフェノール)、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ−第三ブチルフェノール)、2,2’−エチリデン−ビス(6−第三ブチル−4−イソブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス[6−(α−メチルベンジル)−4−ノニルフェノール]、2,2’−メチレン−ビス[6−(α,α−ジメチルベンジル)−4−ノニルフェノール]、4,4’−メチレン−ビス(2,6−ジ−第三ブチルフェノール)、4,4’−メチレンビス(6−第三ブチル−2−メチルフェノール)、1,1−ビス(5−第三ブチル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)ブタン、2,6−ビス(3−第三ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェノール、1,1,3−トリス(5−第三ブチル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)ブタン、1,1−ビス(5−第三ブチル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)−3−n−ドデシルメルカプトブタン、エチレングリコールビス[3,3−ビス(3’−第三ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)ブチレート]、ビス(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ジシクロペンタジエン、ビス[2−(3’−第三ブチル−2’−ヒドロキシ−5’−メチルベンジル)−6−第三ブチル−4−メチルフェニル]テレフタレート、1,1−ビス(3,5−ジメチル−2−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(5−第三ブチル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)−4−n−ドデシルメルカプトブタン、1,1,5,5−テトラ(5−第三ブチル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)ペンタン。
【0022】
1.7. O−、N−及びS−ベンジル化合物
3,5,3’,5’−テトラ−第三ブチル−4,4’−ジヒドロキシジベンジルエーテル、オクタデシル−4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルベンジル−メルカプトアセテート、トリデシル−4−ヒドロキシ−3,5−ジ−第三ブチルベンジル−メルカプトアセテート、トリス(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)アミン、ビス(4−第三ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)ジチオテレフタレート、ビス(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)スルフィド、イソオクチル−3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル−メルカプトアセテート
1.8. ヒドロキシベンジル化マロネート
ジオクタデシル−2,2−ビス(3,5−ジ−第三ブチル−2−ヒドロキシベンジル)マロネート、ジオクタデシル−2−(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)マロネート、ジドデシルメルカプトエチル−2,2−ビス(3,5−ジ−第三ブチル
−4−ヒドロキシベンジル)マロネート、ジ[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル]−2,2−ビス(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)マロネート
1.9. ヒドロキシベンジル芳香族化合物
1,3,5−トリス(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2,4,6−トリメチルベンゼン、1,4−ビス(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2,3,5,6−テトラメチルベンゼン、2,4,6−トリス(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)フェノール
【0023】
1.10. トリアジン化合物
2,4−ビス−オクチルメルカプト−6−(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2−オクチルメルカプト−4,6−ビス(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2−オクチルメルカプト−4,6−ビス(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェノキシ)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェノキシ)−1,2,3−トリアジン、1,3,5−トリス(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(4−第三ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレート、2,4,6−トリス(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニルエチル)−1,3,5−トリアジン、1,3,5−トリス(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオニル)ヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジン、1,3,5−トリス(3,5−ジシクロヘキシル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート
1.11. アシルアミノフェノール
4−ヒドロキシラウリン酸アニリド、4−ヒドロキシステアリン酸アニリド、N−(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)カルバミン酸オクチルエステル
【0024】
1.12. β−(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸のエステルであって、一価または多価アルコール、例えば、
メタノール、エタノール、n−オクタノール、イソオクタノール、オクタデカノール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、チオジエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ペンタエリトリトール、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、N,N’−ビス(ヒドロキシエチル)シュウ酸ジアミド、3−チアウンデカノール、3−チアペンタデカノール、トリメチルヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、4−ヒドロキシメチル−1−ホスファ−2,6,7−トリオキサビシクロ[2.2.2]オクタンとのエステル
1.13. β−(5−第三ブチル−4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロピオン酸のエステルであって、多価アルコール、例えば、
1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、チオジエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ペンタエリトリトール、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、N,N’−ビス(ヒドロキシエチル)シュウ酸ジアミド、3−チアウンデカノール、3−チアペンタデカノール、トリメチルヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、4−ヒドロキシメチル−1−ホスファ−2,6,7−トリオキサビシクロ[2.2.2]オクタンとのエステル
1.14. β−(3,5−ジシクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸のエステルであって、一価または多価アルコール、例えば、
メタノール、エタノール、オクタノール、オクタデカノール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、チオジエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリ
コール、ペンタエリトリトール、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、N,N’−ビス(ヒドロキシエチル)シュウ酸ジアミド、3−チアウンデカノール、3−チアペンタデカノール、トリメチルヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、4−ヒドロキシメチル−1−ホスファ−2,6,7−トリオキサビシクロ[2.2.2]オクタンとのエステル。
【0025】
1.15. 3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル酢酸のエステルであって、一価または多価アルコール、例えば、
メタノール、エタノール、オクタノール、オクタデカノール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、チオジエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ペンタエリトリトール、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、N,N’−ビス(ヒドロキシエチル)シュウ酸ジミド、3−チアウンデカノール、3−チアペンタデカノール、トリメチルヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、4−ヒドロキシメチル−1−ホスファ−2,6,7−トリオキサビシクロ[2.2.2]オクタンとのエステル
1.16. β−(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸のアミド
N,N’−ビス(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオニル)ヘキサメチレンジアミン、N,N’−ビス(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオニル)トリメチレンジアミン、N,N’−ビス(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオニル)ヒドラジン
1.17. アスコルビン酸(ビタミンC)
【0026】
1.18. アミン系酸化防止剤
N,N’−ジ−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−第二ブチル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ビス(1,4−ジメチルペンチル)−p−フェニレンジアミン、N,N’−ビス(1−エチル−3−メチルペンチル)−p−フェニレンジアミン、N,N’−ビス(1−メチルヘプチル)−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジシクロヘキシル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ(2−ナフチ−2−イル)−p−フェニレンジアミン、N−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−(1,3ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−(1−メチルヘプチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−シクロヘキシル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、4−(p−トルエンスルホンアミド)−ジフェニルアミン、N,N’−ジメチル−N,N’−ジ−第二ブチル−p−フェニレンジアミン、ジフェニルアミン、N−アリルジフェニルアミン、4−イソプロポキシジフェニルアミン、4−n−ブチルアミノフェノール、4−ブチリルアミノフェノール、4−ノナノイルアミノフェノール、4−ドデカノイルアミノフェノール、4−オクタデカノイルアミノフェノール、ビス(4−メトキシフェニル)アミン、2,6−ジ−第三ブチル−4−ジメチルアミノメチルフェノール、2,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、N,N,N’,N’−テトラメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、1,2−ジ[(2−メチルフェニル)アミノ]エタン、1,2−ジ(フェニルアミノ)プロパン、(o−トリル)ビグアニド、ジ[4−(1’,3’−ジメチルブチル)フェニル]アミン、第三オクチル化N−フェニル−1−ナフチルアミン、モノ−及びジアルキル化第三ブチル/第三オクチルジフェニルアミンの混合物、モノ−及びジアルキル化ノニルジフェニルアミンの混合物、モノ−及びジアルキル化ドデシルジフェニルアミンの混合物、モノ−及びジアルキル化イソプロピル/イソヘキシルジフェニルアミンの混合物、モノ−及びジアルキル化第三ブチルジフェニルアミンの混合物、2,3−ジヒドロ−3,3−ジメチル−4H−1,4−ベンゾチアジン、フェノチアジン、モノ−及びジアルキル化第三ブチル/第三オクチルフェノチ
アジンの混合物、モノ−及びジアルキル化第三オクチルフェノチアジンの混合物、N−アリルフェノチアジン、N,N,N’,N’−テトラフェニル−1,4−ジアミノブテ−2−エン、N,N−ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジニ−4−イル)ヘキサメ
チレンジアミン、ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジニ−4−イル)セバケート、2,2,6,6−テトラメチルピペリジノ−4−オン、2,2,6,6−テトラメチルピペリジノ−4−オール
【0027】
2. 更なる酸化防止剤
2.1.脂肪族又は芳香族ホスフィット、チオジプロピオン酸もしくはチオ二酢酸のエステル又はジチオカルバミン酸の塩、2,2,12,12−テトラメチル−5,9−ジヒドロキシ−3,7,11−トリチアトリデカン及び2,2,15,15−テトラメチル−5,12−ジヒドロキシ−3,7,10,14−テトラチアヘキサデカン
2.2.硫黄含有複素環式化合物:2−メルカプトベンゾチアゾール、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ジメルカプトベンゾチアジアゾール及びその誘導体;3,5−ビス[ジ(2−エチルヘキシル)アミノメチル]−1,3,4−チアジアゾリノ−2−オン
2.3.アミノ化合物:サリチリデン−プロピレンジアミン、サリチルアミノグアニジン及びその塩
【0028】
3.腐食防止剤
3.1 有機酸、それらのエステル、金属塩、アミン塩及び無水物:
アルキルコハク酸及びアルケニルコハク酸及びそれらのアルコール、ジオール又はヒドロキシカルボン酸との部分エステル、アルキルコハク酸及びアルケニルコハク酸の部分アミド、4−ノニルフェノキシ酢酸、アルコキシカルボン酸及びアルコキシエトキシカルボン酸、例えばドデシルオキシ酢酸、ドデシルオキシ(エトキシ)酢酸及びそのアミン塩、及びまたN−オレオイル−サルコシン、ソルビタンモノオレエート、ナフテン酸鉛、アルケニルコハク酸無水物、例えばドデセニルコハク酸無水物、2−(2−カルボキシエチル)−1−ドデシル−3−メチルグリセロール及びその塩、特にそのナトリウム及びトリエタノールアミン塩
3.2 窒素含有化合物
3.2.1 第三脂肪族又は脂環式アミン並びに有機酸及び無機酸のアミン塩、例えば油溶性アルキルアンモニウムカルボキシレート、及び1−[N,N−ビス(2−ヒドロキシ
エチル)アミノ]−3−(4−ノニルフェノキシ)プロパノ−2−オール
3.2.2 複素環式化合物:置換されたイミダゾリン及びオキサゾリン、例えば2−ヘプタデセニル−1−(2−ヒドロキシエチル)−イミダゾリン
3.2.3 硫黄含有化合物:バリウムジノニルナフタレンスルホネート、カルシウム石油スルホネート、アルキルチオ置換された脂肪族カルボン酸、脂肪族2−スルホカルボン酸のエステル及びその塩
【0029】
4.粘度指数向上剤(Viscosity Index Increasers)
ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ビニルピロリドン/メタクリレートコポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリブテン、オレフィンコポリマー、スチレン/アクリレートコポリマー、ポリエーテル
5.流動点降下剤
ポリ(メタ)アクリレート、エチレン/ビニル酢酸コポリマー、アルキルポリスチレン、フマル酸コポリマー、アルキル化ナフタレン誘導体
6.分散剤/界面活性剤
コハク酸アミド又はイミド、ポリブテニルリン酸誘導体、塩基性マグネシウム、カルシウムスルホネート及びバリウムスルホネート並びにカルシウムスルホネート及びバリウムフェノレート
【0030】
7.極圧及び耐磨耗添加剤
硫黄及びハロゲン含有化合物、例えば塩素化パラフィン、硫化オレフィン又は植物油(大豆油、菜種油)、アルキルスルフィド又はアリール−ジ−スルフィドもしくはアリール−トリ−スルフィド、ベンゾトリアゾール又はその誘導体、例えばビス(2−エチルヘキシル)アミノメチルトルトリアゾール、ジチオカルバメート、例えばメチレン−ビス−ジブチルジチオカルバメート、2−メルカプトベンゾチアゾールの誘導体、例えば1−[N,
N−ビス(2−エチルヘキシル)アミノメチル]−2−メルカプト−1H−1,3−ベン
ゾチアゾール、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールの誘導体、例えば2,5−ビス(第三ノニルジチオ)−1,3,4−チアジアゾール
8.摩擦係数減少剤の例
ラード油、オレイン酸、牛脂、菜種油、硫化油脂(sulphurated fats)、アミド、アミン。更なる例は、欧州特許出願公開第0565487号明細書において与えられている。
9.特別な添加剤
乳化剤:石油スルホネート、アミン、例えばポリオキシエチル化脂肪アミン、非イオン性界面活性物質;緩衝剤:例えばアルカノールアミン;殺生物剤:トリアジン、チアゾリノン、トリス−ニトロメタン、モルホリン、ピリデンチオールナトリウム;処理速度向上剤:カルシウム及びバリウムスルホネート
【0031】
成分C)として加えられるための追加の添加剤混合物の例は、下記に与えられる:
【表1】

【0032】
上記添加剤は、それ自体既知の方法で上記成分A)及びB)と混合し得る。対象とする潤滑油に実用的な濃度を与えるために希釈され得る、濃縮物又はいわゆる“添加剤パック(additive pack)”を調製することも可能である。好ましい態様において、成分A)、B)及びC)は濃縮物中で室温で液状である。該濃縮物は、成分D)に従う基油の添加によって希釈し得る。
【0033】
成分D
潤滑粘度の低硫黄油は、燃焼機関油の調製のために使用し得る。低硫黄油における総硫黄含有量は、組成物の総質量に関して0.3質量%を上回る制限を越えるべきではない。
適する燃焼機関油は、例えば鉱油、天然油、合成油又はそれらの混合物に基づく。それらの油は既知であり、当業者によく知られており、標準的な文献、例えばChemist
ry and Technology of Lubricants;Mortier,R.M.及びOrszulik, S.T. (著者); 1992、英国ではBlackie and Son Ltd,米国では VCH−Publishers N.Y., ISBN0−216−92921−0,208頁以下参照及び269頁以下参照;Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology,第5版 1969, J. Wiley& Sons, New York,第13巻,533頁以下参照(油圧油); Performance Testing of Hydraulic Fluids; R. Tourret and E.P. Wright, Hyden& Son Ltd. GB,The Institute of Petroleum Londonのため, ISBN0855013176; Ullmann’s Encycloped
ia of Ind. Chem.,第5完全改訂版, Verlag Chemie,
DE−Weinheim,米国ではVCH−Publishers,第A15巻,423頁参照(潤滑油),第A13巻,165頁以下参照(油圧油)に記載される。
【0034】
潤滑粘度の基油は、好ましくは80質量%以上の飽和炭化水素成分を含有する鉱油由来の潤滑性基油である。鉱油由来の潤滑性基油を製造するための様々な方法が使用できる。例えば、潤滑性基油は、原油の常圧又は減圧蒸留から生成される潤滑性油留分に精製処理、例えば脱歴、溶剤精製、例えばフルフラールを用いた溶媒抽出、水素化分解、溶媒又は接触脱ろう、例えば溶媒又は接触脱ろう、水素処理、例えば水素化分解又は水素化精製(hydrofinishing)、粘度処理、例えば酸処理又は活性化粘度による洗浄、又は化学精製、例えば苛性ソーダ又は硫酸などでの洗浄を受けさせることによって得られ得るパラフィン油又はナフテン油であり得る。
【0035】
鉱油由来の潤滑性基油を製造するための好ましい方法は、下記の技術的方法からなり、ここで下記の油のうちの1つは原料油として使用される:
1)パラフィン原油及び/又は混合原油の常圧蒸留から生成される留出分;
2)パラフィン原油及び/又は混合原油の全減圧軽油(whole vacuu m
gas oil)(WVGO)
3)前記1)及び/又は2)に従い得られる生成物に軽い(mild)水素化分 解法(MHC)を受けさせることによって得られる油;
4)前記1)ないし3)に従い得られる生成物から選ばれた2種以上の混合物;
5)前記1)、2)、3)又は4)に従い得られた生成物からの脱歴油(DAO );
6)前記5)に従い得られた生成物に軽い水素化分解法を受けさせることによっ て得られた油;及び
7)前記1)ないし6)に従い得られた油の群から選ばれた2種以上の油の混合 物。
【0036】
原料油自体かそれともそれから回収される潤滑性油画分は、請求の範囲に記載されている組成物の成分a)として有用である潤滑性油画分を得るために上記の方法のような慣用の精製法によって精製される。基油は、個々の成分として又は上記基油の2種以上の組み合わせで組成物中に存在し得る。いわゆるガスから液体法(gas to liquid)又はその他の方法によってガス状の原料から得られる基油(GTL油)は、請求項に記載された潤滑油の主要な又は主要でない成分として使用し得る。
【0037】
潤滑粘度の他の基油、例えば植物性及び動物性油、油脂、牛脂、ワックス及びそれらの混合物に基づく油が使用し得る。植物性及び動物性油、油脂、牛脂及びワックスは、例えばパーム核油、パーム油、オリーブ油、菜種油(rapeseed oil)、菜種油(rape oil)、アマニ油、大豆油、綿実油、ひまわり油、ココナッツ油、トウモロ
コシ油、ヒマシ油、低級オリーブ油及びそれらの混合物、魚油、及びまたその化学的に改質された、例えばエポキシ化及びスルホキシド化された形態、又はその遺伝子工学により製造された形態、例えば遺伝子組み換え大豆油である。
【0038】
合成油の例は、脂肪族又は芳香族カルボキシエステル、ポリマー状エステル、酸化ポリアルキレン、リン酸エステル、ポリ−α−オレフィン又はシリコーン、二価酸と一価アルコールとのジエステル、例えばジオクチルセバケート又はジノニルアジペートのような、トリメチロールプロパンと一価酸との又はそのような酸の混合物とのトリエステル、例えばトリメチロールプロパントリペラルゴナート、トリメチロールプロパントリカプリレート又はその混合物、ペンタエリトリトールと一価酸との又はそのような酸の混合物とのテトラエステル、例えばペンタエリトリトールテトラカプリレート、又は一価及び二価酸と多価アルコールとの複合エステル、例えばトリメチロールプロパンとカプリン酸及びセバシン酸との複合エステル、又はそれらの混合物に基づく潤滑油を含む。鉱油は別として、ポリ−α−オレフィン、エステルベースの潤滑油、ホスフェート、グリコール、ポリグリコール及びポリアルキレングリコール並びに水とそれらの混合物が特に適している。
【0039】
有機又は無機増粘剤(基油脂)も、上記潤滑油又はその混合物に加えられ得る。
本発明の更なる態様は、
A)本質的に
a)少なくとも一種のリン酸アンモニウムエステル;
b)少なくとも一種のチオリン酸エステル;及び
c)少なくとも一種のジチオリン酸誘導体;
からなる添加剤混合物
B)硫黄含有油添加剤
を含む添加剤組成物に関する。
該添加剤組成物は、慣用の混合技術によって調製される。本発明に従う組成物は、基油成分D)の質量に基づき、成分A)及びB)を含む、好ましくは0.01ないし5.0質量%、特に0.02ないし1.0質量%の添加剤組成物の量を含む。
【0040】
本発明の更なる態様は、燃焼機関、特に火花点火又はディーゼル自動車用エンジンで使用するための
a)少なくとも一種のリン酸アンモニウムエステル;
b)少なくとも一種のチオリン酸エステル;及び
c)少なくとも一種のジチオリン酸誘導体;
からなる添加剤混合物に関する。
本発明の更なる態様は、燃焼機関における磨耗の低減のための方法に関し、該方法は上記潤滑油組成物をエンジンに添加することを含み、該組成物中の硫黄の総量は0.3質量%未満、特に0.2質量%未満、及びリン酸総量は0.08質量%未満である。
下記の実施例は本発明を説明する。
【実施例】
【0041】
応用例
試験マトリックス:耐磨耗活性。目的は、本発明に従う無鉛組成物がZn−ジチオホスフェートを含む類似の組成物のものと同様な磨耗に対する保護を有することを示すことである。
【0042】
【表2】

【0043】
【表3】

【0044】
【表4】

【0045】
【表5】

【0046】
【表6】

【0047】
コメント:
実施例10及び11は、それぞれの型のリンをおよそ等モル量有する表3で示されるような、ホスホロチオエート、ジチオホスフェートアルキルアミン、アミンモノヘキシル及びジヘキシルホスフェート並びにチアジアゾールで作成された2つのエンジンオイルの試験である。しかしながら、実施例10はジチオホスフェート由来のPを170ppmしか
有さなかった。実施例11はジチオホスフェート由来のPを250ppm有した。オイル
はOM611のディーゼルエンジンで試験された。
この試験は、いくつかの他のパラメータと、中でも、吸気及び排気位置のカム軸磨耗並びにシリンダーライナー磨耗を測定した。OM611は、OM602A磨耗試験の最善の代替物であることが欧州潤滑油産業(European lubricant industry)によって考えられている。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼機関における使用のための潤滑油組成物であって、該組成物における硫黄総量が0.3質量%未満であることを条件に、
A)本質的に
a)少なくとも一種のリン酸アンモニウムエステル;
b)少なくとも一種のチオリン酸エステル;及び
c)少なくとも一種のジチオリン酸誘導体;
から成る添加剤混合物;
B)少なくとも一種の硫黄含有油添加剤;
C)慣用のクランクケース油添加剤;及び
D)潤滑粘度の低硫黄油
を含む組成物。
【請求項2】
前記添加剤混合物A)が、本質的に
a)式
【化1】

(式中、
1及びR2の1方は水素原子を表し、もう一方は炭素原子数1ないし20の炭化水素基を表すか、又は
1及びR2の両方が炭素原子数1ないし20の炭化水素基を表し、及びRa、Rb、Rc
びRdは互いに独立して水素原子又は炭素原子数6ないし20の炭化水素基を表す。)で
表される少なくとも一種のリン酸アンモニウムエステル;
b)式
【化2】

(式中、
1、R2及びR3は、炭素原子数3ないし20の炭化水素基を表す。)で表される少なく
とも一種のチオリン酸エステル;及び
c)式
【化3】

(式中、
1及びR2は、互いに独立して炭素原子数3ないし18のアルキル基、炭素原子数5ないし12のシクロアルキル基、炭素原子数9又は10のビシクロアルキルメチル基、炭素原子数9又は10のトリシクロアルキルメチル基、フェニル基又は炭素原子数7ないし24のアルキルフェニル基を表し、又は
1及びR2は一緒になって基
【化4】

を表し、及び
3は水素原子又はメチル基を表す。)で表される3−ジチオホスホリルプロピオン酸;
及び式
【化5】

(式中、
1及びR2は、前記式(III)に関して定義される通りであり、及び
a、Rb、Rc及びRdは互いに独立して水素原子又は炭素原子数6ないし20の炭化水素基を表す。)で表されるジチオリン酸のアンモニウム塩からなる群から選ばれる少なくとも一種のジチオリン酸誘導体
から成る、請求項1記載の潤滑油組成物。
【請求項3】
前記添加剤混合物A)が、本質的に
a)前記式(I)(式中、R1及びR2の1方は水素原子を表し、及びもう一方は炭素原子
数3ないし18のアルキル基を表すか;又はR1及びR2の両方が炭素原子数3ないし18のアルキル基を表し;及びRa、Rb、Rc及びRdは互いに独立して水素原子又は炭素原子数6ないし20のアルキル基を表す。)で表される少なくとも一種のリン酸アンモニウムエステル;
b)前記式(II)(式中、R1、R2及びR3は互いに独立してフェニル基又は炭素原子
数7ないし24のアルキルフェニル基を表す。)で表される少なくとも一種のチオリン酸エステル;及び
c)前記式(III)(式中、R1及びR2は炭素原子数3ないし18のアルキル基を表し、及びR3は水素原子又はメチル基を表す。)で表される3−ジチオホスホリルプロピオ
ン酸、及び
前記式(IV)(式中、R1及びR2は炭素原子数3ないし18のアルキル基を表し、及びRa、Rb、Rc及びRdは互いに独立して水素原子又は炭素原子数6ないし20のアルキル基を表す。)で表されるジチオリン酸のアンモニウム塩からなる群から選ばれる少なくとも一種のジチオリン酸誘導体
から成る、請求項1記載の潤滑油組成物。
【請求項4】
前記添加剤混合物A)が、本質的に
a)前記式(I)(式中、R1及びR2の1方は水素原子を表し、及びもう一方は炭素原子数3ないし9のアルキル基を表すか;又はR1及びR2の両方が炭素原子数3ないし9のアルキル基を表し;及びRa、Rb、Rc及びRdは互いに独立して水素原子又は炭素原子数12ないし20のアルキル基を表す。)で表される少なくとも一種のリン酸アンモニウムエステル;
b)前記式(II)(式中、R1、R2及びR3は互いに独立してフェニル基又は(炭素原
子数1ないし9のアルキル)1ナイシ3フェニル基を表す。)で表される少なくとも一種のチオリン酸エステル;及び
c)前記式(III)(式中、R1及びR2は2−メチルプロピル基を表し、及びR3はメ
チル基を表す。)で表される3−ジチオホスホリルプロピオン酸、及び
前記式(IV)(式中、R1及びR2はイソプロピル基を表し、及びRa、Rb、Rc及びRdは互いに独立して水素原子又は炭素原子数12ないし20のアルキル基を表す。)で表されるジチオリン酸のアンモニウム塩からなる群から選ばれる少なくとも一種のジチオリン酸誘導体
から成る、請求項1記載の潤滑油組成物。
【請求項5】
前記添加剤混合物A)が、本質的に
a)前記式(I)(式中、R1及びR2の1方は水素原子を表し、及びもう一方は炭素原子数3ないし9のアルキル基を表すか;又はR1及びR2の両方が炭素原子数3ないし9のアルキル基を表し;及びRa、Rb、Rc及びRdは互いに独立して水素原子又は炭素原子数12ないし20のアルキル基を表す。)で表される少なくとも一種のリン酸アンモニウムエステル;
b)前記式(II)(式中、
1、R2及びR3はフェニル基を表すか、又は
1、R2及びR3の1つはフェニル基を表し及びR1、R2及びR3の2つが(炭素原子数1ないし9のアルキル)1ナイシ3フェニル基を表すか、又は
1、R2及びR3の2つはフェニル基を表し及びR1、R2及びR3の1つが(炭素原子数1ないし9のアルキル)1ナイシ3フェニル基を表すか、又は
1、R2及びR3が(炭素原子数1ないし9のアルキル)1ナイシ3フェニル基を表す。)
で表される少なくとも一種のチオリン酸エステル;及び
c)前記式(III)(式中、R1及びR2は2−メチルプロピル基を表し、及びR3はメ
チル基を表す。)で表される3−ジチオホスホリルプロピオン酸
から成る請求項1記載の潤滑油組成物。
【請求項6】
前記硫黄含有油添加剤B)が、
【化6】

【化7】

【化8】

【化9】

から成る群から選択されるジチオグリシジルエーテルである、請求項1記載の潤滑油組成物。
【請求項7】
前記硫黄含有油添加剤B)が、式
【化10】

[式中、R1はヒドロキシ基、アミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、2−ヒドロキシアルキルチオ基又はR2−Sを表し、及びR2は部分式
【化11】

(式中、R3は50ないし400個の炭素原子を有するアルキル基を表し、及びR4は水素原子又はメチル基を表す。)によって表されるポリオレフィン残基を表す。]で表される
ポリアルキル化1,3,4−チアジアゾール化合物である、請求項1記載の潤滑油組成物。
【請求項8】
前記潤滑粘度の低硫黄油D)が、鉱油、合成油、天然油又はそれらの混合物である、請求項1記載の潤滑油組成物。
【請求項9】
前記組成物における硫黄総量が0.2質量%未満である、請求項1記載の潤滑油組成物。
【請求項10】
添加剤組成物であって、
A)本質的に
a)少なくとも一種のリン酸アンモニウムエステル;
b)少なくとも一種のチオリン酸エステル;及び
c)少なくとも一種のジチオリン酸誘導体;
から成る添加剤混合物;及び
B)硫黄含有油添加剤
を含む添加剤組成物。
【請求項11】
燃焼機関における使用のための添加剤混合物であって、
本質的に
a)少なくとも一種のリン酸アンモニウムエステル;
b)少なくとも一種のチオリン酸エステル;及び
c)少なくとも一種のジチオリン酸誘導体
から成る添加剤混合物。
【請求項12】
燃焼機関における磨耗低減のための方法であって、請求項1記載の潤滑油組成物を該機関に添加することを含み、ここで該組成物における硫黄総量が0.3質量%未満であり及びリン総量が0.08質量%未満であるところの方法。


【公表番号】特表2008−533291(P2008−533291A)
【公表日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−502377(P2008−502377)
【出願日】平成18年3月13日(2006.3.13)
【国際出願番号】PCT/EP2006/060644
【国際公開番号】WO2006/100188
【国際公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(396023948)チバ ホールディング インコーポレーテッド (530)
【氏名又は名称原語表記】Ciba Holding Inc.
【Fターム(参考)】