燃焼装置
【課題】本発明は、省エネルギーを図りつつ、暖房端末に供給される湯又は熱媒体の温度を安定させて、使用者に不快を感じさせることがない燃焼装置を提供することを目的とした。
【解決手段】燃焼装置1は、外部の器具との間で循環回路を形成し、バーナ8で加熱した湯水又は熱媒体を循環回路に流して外部の器具に供給するものである。循環回路を流れる湯水又は熱媒体の温度は、比例制御とオンオフ制御で制御される。そして、オンオフ制御によってバーナ8の燃焼量が制御されている際には、循環回路を流れる湯水又は熱媒体の温度の平均値Tvと目標温度Tsとの関係に応じて、バーナ8のオンとオフの切り替え温度が変更される。
【解決手段】燃焼装置1は、外部の器具との間で循環回路を形成し、バーナ8で加熱した湯水又は熱媒体を循環回路に流して外部の器具に供給するものである。循環回路を流れる湯水又は熱媒体の温度は、比例制御とオンオフ制御で制御される。そして、オンオフ制御によってバーナ8の燃焼量が制御されている際には、循環回路を流れる湯水又は熱媒体の温度の平均値Tvと目標温度Tsとの関係に応じて、バーナ8のオンとオフの切り替え温度が変更される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼装置に関するものであり、特に暖房用端末に対して湯又は熱媒体を供給可能な燃焼装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
給湯用の湯水を加熱する給湯加熱機能に加えて、床暖房器具やファンコンベクタ等の暖房機器(暖房端末)へ供給される湯又は熱媒体を加熱する暖房加熱機能と、浴槽内の湯水を加熱する追い焚き機能を1台の装置で賄う構造を備えた燃焼装置が知られている。例えば、特許文献1にこの技術が開示されている。
【0003】
この種の燃焼装置は、給湯用の熱交換器に加えて、風呂・暖房用の熱交換器を備え、外部のファンコンベクタ等に湯又は熱媒体を流出させる高温往き口と、外部の床暖房機器等に湯又は熱媒体を流出させる低温往き口と、高温往き口又は低温往き口から外部に流出した湯又は熱媒体を再び燃焼装置内に流入させる暖房戻り口とが設けられている。
【0004】
即ち、ファンコンベクタ等の高温の湯を要する機器が、高温往き口と暖房戻り口との間に接続されて、燃焼装置とファンコンベクタ等との間で一連の循環路(高温側循環路)を形成し、床暖房機器等の比較的低温の湯を要する器具が、低温往き口と暖房戻り口との間に接続されて、燃焼装置と床暖房機器等との間で一連の循環路(低温側循環路)を形成している。そして、高温側循環路を介して一定の温度領域に維持された高温の湯がファンコンベクタ等に導入されてその暖房機器の機能が果たされ、低温側循環路を介して一定の温度領域に維持された低温の湯が床暖房器具等に導入されてその暖房機器の機能が果たされる。
【0005】
ところで、このような燃焼装置では、暖房加熱運転を行う場合、ファンコンベクタや床暖房器具等のいずれの暖房端末が使用されるということに関わらず、現在の低温往き側の温度と予め設定された低温往き側の目標温度との温度偏差に応じてバーナが比例制御される。即ち、比例制御では、図10に示すように、低温往き側の温度が低く前記温度偏差が大きいほど、バーナにおける燃焼量が大きく調整され、逆に低温往き側の温度が高く前記温度偏差が小さいほどバーナにおける燃焼量が小さく調整される。
比例制御を採用する場合においては、図10に示すように、現在の湯の温度が目標温度と一致し、温度偏差がゼロであっても、暖房器具からの放熱を補うためにバーナは燃焼している。
【0006】
しかしながら、例えば放熱量が小さく、且つ燃焼装置の容量が大きい場合には、図11に示すように、バーナで発生する火炎の長さが極めて短いものとなってしまい、安定した燃焼状態を維持できなくなってしまう。
また、火炎を維持できる範囲であったとしても、火炎の長さが極めて短い場合は炎孔が過度に加熱され、バーナの寿命を損ねてしまう。さらに、火炎の長さが極めて短い場合は、ガスと空気との混合比率(所謂空燃比)を安定させることが難しいという問題もある。
【0007】
そこで、暖房器具に使用する燃焼装置では、図12に示すように、バーナ108を複数の燃焼領域に分け、燃焼領域を変えることによって、火炎の長さを維持する構成が採用されている。例えば、図12に示す燃焼装置では、9本のバーナ108を有し、この9本のバーナ108が燃焼エリアAと燃焼エリアBに区分されている。そして、各燃焼エリア毎に燃焼ガスを供給する流路には、それぞれ電磁弁114が設けられている。
なお、2つの電磁弁114に燃料ガスを供給する流路は共通であり、当該共通配管部分に比例弁113が設けられている。
【0008】
そして、前記したように、温度偏差がゼロである場合に、図11、図13(b)に示すように、火炎の長さが過度に短くなってしまう場合には、図13(c)に示すように、燃焼領域を例えば燃焼エリアAだけに限定し、3本のバーナ108だけを点火し、他の6本のバーナ108は消火状態とする。その結果、実際に燃焼されるエリアのバーナ108の炎は大きくなり、安定燃焼を維持することができる。
即ち、従来の燃焼装置では、温度偏差がゼロである場合に、図11、図13(b)に示すように、火炎の長さが過度に短くなってしまう場合には、図13(c)に示すように、燃焼領域を例えば燃焼エリアAだけに限定して、バーナ108を比例制御する。
【0009】
ところが、図13(c)に示すように、燃焼領域を限定すると、燃焼装置の熱効率が低下するという不満がある。例えば、図12に示すように、2つの燃焼エリアA,Bがあり、燃焼エリアAだけを燃焼させて燃焼エリアBを消火すると、燃焼エリアAを燃焼している時に、非燃焼領域たる燃焼エリアBに対しても燃焼用の空気が供給され、その空気が燃焼に寄与されることなく熱交換器の表面を通過するため、熱交換器が無駄に冷却されてしまう。
【0010】
即ち、燃焼領域を限定してバーナ108を燃焼させると、空気によって熱交換器が冷却され、冷却により失われた熱量を上積みした加熱量が必要となるため、熱交換効率が悪く、省エネルギーの観点からも不満がある。特に、暖房加熱運転では、連続して運転される時間が給湯運転等の場合より長くなる傾向があるため、暖房加熱運転において省エネルギーを図る必要性が高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2007−24495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで、本発明者らは、温度偏差がゼロである場合に、図11、図13(b)に示すように、火炎の長さが過度に短くなってしまう場合には、比例制御を維持することを断念し、制御方法をオンオフ制御に切り替えた。
即ち、温度偏差がゼロである場合に、全ての燃焼領域でバーナ108を燃焼させ、図11、図13(b)に示すように、火炎の長さを過度に短くなってしまわざるを得ない場合には、全てのバーナ108が消火する時間を設けた。即ち、図14に示すように、バーナ108がオンである期間は、全ての燃焼領域で燃焼し得る最下限の燃焼量にし、その期間が終了すればオフの期間に切り替えるという一連の制御を行うこととした。
その結果、バーナが燃焼している期間をオフ時間により実質的に減少できるため、比例制御による場合に比べて時間的燃焼量を減少することができる。そのため、全ての燃焼領域で燃焼したとしても、バーナ108の燃焼量が、暖房器具による放熱量を過度に超えてしまうという不具合がない。また、無駄な送風によって熱交換器が冷やされてしまう不具合もない。
【0013】
しかしながら、暖房加熱運転において、全燃焼領域で燃焼制御した場合、燃焼領域を限定して燃焼制御する場合に比べて、暖房器具の熱負荷の影響を受け易く、安定した温度の湯又は熱媒体を暖房器具に供給できないという不満がある。特に、この問題は、低温往き口側と接続された床暖房器具等を使用する暖房運転の際に顕著に現れた。
【0014】
即ち、暖房加熱運転では、前記したように、オンオフ制御によって、低温往き側の湯又は熱媒体の温度が一定の温度幅に維持されるが、平均温度の観点から見てみると、暖房器具の熱負荷によって、目標温度(摂氏60度)に安定しない。具体的には、床暖房器具を使用し、且つ低負荷(室内が暖かく床暖房が冷めにくい状況等)の場合には、図15に示すように、燃焼オン時に急激に昇温する反面、燃焼オフ時には温度降下勾配がなだらかになるため、摂氏60度以下を示す期間が長くなる。これにより、低温往き側の温度の平均値は摂氏60度より低くなる。換言すれば、使用者が摂氏60度より低い温度を体感する期間が長くなり、暖房機器としては好ましくない。
【0015】
一方、床暖房器具を使用し、且つ高負荷(室内が冷えており床暖房器具が冷めやすい状況や、床面に多数の人が乗っている状況等)の場合には、図16に示すように、燃焼オン時になだらかに昇温する反面、温度降下勾配が急になるため、摂氏60度以上を示す期間が長くなる。これにより、低温往き側の温度の平均値は摂氏60度より高くなる。換言すれば、使用者が摂氏60度より高い温度を体感する期間が長くなる。この状況は、暖房機器としての役割は果たしているため、使用者に不快を与える程度は小さいが、省エネルギーの観点からは若干無駄と言える。なお、図15、16に示す結果は、低温往き口近傍で検知した低温の湯の温度である。
従って、全燃焼領域で燃焼制御した場合、暖房機器の熱負荷の状態によって、使用者が体感する温度が変化し、不快を感じさせたり、省エネルギーを図ることが困難となってしまう懸念があった。
【0016】
そこで、本発明では、従来技術の問題に鑑み、省エネルギーを図りつつ、暖房端末に供給される湯又は熱媒体の温度を安定させて、使用者に不快を感じさせることがない燃焼装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、外部の器具との間で循環回路を形成し、バーナで加熱した湯水又は熱媒体を前記循環回路に流して外部の器具に湯水又は熱媒体を供給する燃焼装置において、バーナの燃焼量を比例制御して前記循環回路を流れる湯水又は熱媒体の温度を制御するものであり、所定の条件下においては、比例制御に代わってオンオフ制御によってバーナの燃焼量が制御されて、前記循環回路を流れる湯水又は熱媒体の温度が制御されるものであって、オンオフ制御によってバーナの燃焼量が制御されている際には、循環回路を流れる湯水又は熱媒体の温度の平均値と所定温度との関係に応じて、及び/又は、循環回路を流れる湯水又は熱媒体の温度が前記所定温度以上である時間の割合に応じて、バーナのオンとオフの切り替え温度が変更されることを特徴とする燃焼装置とされている。
【0018】
本発明の燃焼装置は、循環回路を流れる湯水又は熱媒体(以下、単に循環湯水とも称す)の温度が、ほぼ直接的に使用者の快適性に大きく影響を与えるものと考え、特にオンオフ制御の際に、循環湯水の温度を使用者が快適に感じ得る所定の温度に制御することとした。
即ち、本発明は、オンオフ制御が実行されている際に、循環湯水の温度の平均値と所定温度との関係に応じて、バーナのオンとオフの切り替え温度を変更したり、循環湯水の温度が所定温度以上である時間の割合に応じて、バーナのオンとオフの切り替え温度を変更する構成とされている。
【0019】
具体的には、循環湯水の温度の平均値と所定温度との関係に応じてバーナのオンとオフの切り替え温度を変更する場合であれば、平均値が所定温度より低い場合にその平均値が高くなるようにオン温度やオフ温度を高い側に変更でき、逆に平均値が所定温度より高い場合にその平均値が低くなるようにオン温度やオフ温度を低い側に変更できる。これにより、循環湯水の温度の平均値が、所定温度と比較して大小するような関係であっても、その平均値を所定温度に近づけることができるため、確実に使用者の快適性を向上させることが可能となる。
【0020】
また、循環湯水の温度が所定温度以上である時間の割合に応じてバーナのオンとオフの切り替え温度を変更する場合であれば、循環湯水の温度が所定温度以上である時間の割合が所定温度より低い時間の割合より低い場合に、所定温度以上である時間の割合が所定温度より低い時間の割合と同等又はそれ以上となるようにオン温度やオフ温度を高い側に変更できる。これにより、循環湯水の温度が、所定温度と比較して所定温度以上となる時間の割合が平衡状態(所定温度以上の時間の割合と所定温度より低い時間の割合がほぼ同じ状態)から低い側にずれたような場合に、その循環湯水の温度が所定温度以上となる時間の割合を平衡状態もしくは平衡状態より高くなるように制御することができるため、確実に使用者の快適性を向上させることが可能となる。
【0021】
本発明によれば、オンオフ制御におけるバーナのオン温度とオフ温度の変更が可能とされることにより、複数の燃焼領域があり、燃焼制御において非燃焼領域を形成しない制御を有した構成であっても、外部の器具に供給される湯又は熱媒体の温度を使用者が快適に感じる温度に安定させることができる。これにより、本発明の燃焼装置は、使用者に不快を感じさせることがない。また、結果として、燃焼状態において非燃焼領域を形成しない構成とすることが可能であるため、熱交換効率を向上させることができ、省エネルギーを図ることができる。
【0022】
請求項2に記載の発明は、燃焼装置から器具側に湯水又は熱媒体が吐出される流路に温度検知手段が設けられ、オンオフ制御によってバーナの燃焼量が制御されている際には、前記温度検知手段の検知温度が目標温度に一致するようにバーナがオンオフされ、前記目標温度は、前記所定温度又は所定温度を含む一定の温度幅を持った温度であり、循環流路に流れる湯水又は熱媒体の温度の時間的平均値を前記温度検知手段の検知温度に基づいて演算し、前記平均値が前記所定温度よりも低い場合には、バーナのオンとオフの切り替え温度を上方に補正し、前記平均値が前記所定温度よりも高い場合には、バーナのオンとオフの切り替え温度を下方に補正することを特徴とする請求項1に記載の燃焼装置である。
【0023】
かかる構成によれば、バーナのオンオフが、目標温度たる所定温度又は所定温度を含む一定の温度幅を持った温度に一致するように制御される。そして、その制御に基づいた循環湯水の温度を、温度検知手段によって検知して温度の時間的な平均値を演算し、その平均値と所定温度との関係によりバーナのオンとオフの切り替え温度を補正できる。これにより、循環湯水の温度の平均値が所定温度からずれれば、その平均値を迅速に所定温度に近づけて外部の器具に供給される湯又は熱媒体の温度を安定させることができるため、使用者の快適性をより確実に向上させることが可能となる。
【0024】
請求項3に記載の発明は、燃焼装置から器具側に湯水又は熱媒体が吐出される流路に温度検知手段が設けられ、オンオフ制御によってバーナの燃焼量が制御されている際には、前記温度検知手段の検知温度が目標温度に一致するようにバーナがオンオフされ、前記目標温度は、前記所定温度又は所定温度を含む一定の温度幅を持った温度であり、循環流路に流れる湯水又は熱媒体の温度が前記所定温度以上である時間の割合を前記温度検知手段の検知温度に基づいて演算し、前記温度が前記所定温度以上である割合が低い場合には、バーナのオンとオフの切り替え温度を上方に補正することを特徴とする請求項1又は2に記載の燃焼装置である。
【0025】
かかる構成によれば、バーナのオンオフが、目標温度たる所定温度又は所定温度を含む一定の温度幅を持った温度に一致するように制御される。そして、その制御に基づいた循環湯水の温度を、温度検知手段によって検知してその検知温度が所定温度以上である時間の割合を演算し、その演算された時間の割合に基づいてバーナのオンとオフの切り替え温度を補正できる。これにより、循環湯水の温度が所定以上である時間の割合が低い状態となれば、迅速にその割合を増加させることができるため、使用者の快適性をより確実に向上させることが可能となる。
【0026】
請求項4に記載の発明は、前記外部の器具に対して供給する湯水又は熱媒体を加熱するバーナは、1又は複数の燃焼領域に分割されており、各領域は独立して燃焼できるものであって、前記所定の条件は、バーナの燃焼量が、比例制御によって全燃焼領域において出力し得る最小の燃焼量となった時であり、オンオフ制御では、前記最小の燃焼量でオンすることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の燃焼装置である。
【0027】
かかる構成によれば、比例制御からオンオフ制御に切り替わるタイミングを、全燃焼領域において出力し得る最小の燃焼量を最下限燃焼量としたため、いずれの制御においても、燃焼に供しない空気が発生することがなく、加熱された湯水又は熱媒体が冷却されることがない。これにより、本発明によれば、熱効率を向上させた燃焼装置を提供することが可能である。
【発明の効果】
【0028】
本発明の燃焼装置では、オンオフ制御における、バーナのオン温度とオフ温度の変更を可能としたため、循環流路に流れる湯又は熱媒体の温度が低く過ぎたり高過ぎて使用者に不快を与えることがない。また結果として、オンオフ制御において、全燃焼領域で出力し得る最も小さい燃焼量とすることが可能となり、省エネルギーを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施形態に係る燃焼装置を示す作動原理図である。
【図2】図1の作動原理図の要部を抜き出して簡略化した配管系統図である。
【図3】図2の配管系統図に暖房運転の際における低温の湯の通過経路を示した説明図である。
【図4】図2の配管系統図に暖房運転の際における高温の湯の通過経路を示した説明図である。
【図5】図2の配管系統図に追い焚き運転の際における湯の通過経路を示した説明図である。
【図6】図1の燃焼装置におけるオンオフ制御時の動作を示すフローチャートである。
【図7】図1の燃焼装置におけるオンオフ制御時の低温の湯(高負荷)の温度変化を示すグラフである。(太線:本実施形態のオンオフ制御、細線:従来技術のオンオフ制御)
【図8】図1の燃焼装置におけるオンオフ制御時の低温の湯(低負荷)の温度変化を示すグラフである。(太線:本実施形態のオンオフ制御、細線:従来技術のオンオフ制御)
【図9】別の実施形態における低温の湯の温度と時間の関係を示すグラフである。
【図10】比例制御における燃焼量の変化と温度変化の関係を示すグラフである。
【図11】比例制御における燃焼量の変化と温度変化の関係を示すグラフであり、外部の熱負荷が小さい場合を示すグラフである。
【図12】複数の燃焼領域を備えた燃焼装置の要部を示した概念図である。
【図13】バーナにおける燃焼状態を示す説明図で、(a)は全燃焼領域での燃焼をしめす図で、(b)は全燃焼領域での最小燃焼量を示す図で、(c)は燃焼エリアAでの燃焼を示す図である。
【図14】比例制御における燃焼量の変化と温度変化の関係と、オンオフ制御における燃焼量の変化と温度変化の関係を示すグラフである。
【図15】従来技術の燃焼装置におけるオンオフ制御時の低温の湯(低負荷)の温度変化を示すグラフである。
【図16】従来技術の燃焼装置におけるオンオフ制御時の低温の湯(高負荷)の温度変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態に係る燃焼装置について説明する。
本発明の燃焼装置1は、内部に独立した2系統の缶体及び配管系統を備える。即ち、図1に示すように、右側は給湯用缶体2であり、左側は、風呂・暖房機器用缶体3に使用される。
なお、本発明において採用された給湯用、並びに、風呂・暖房機器用の配管系統は、共に公知のものである。そして、本発明における特徴的機能が、風呂及び暖房機器用の配管系統側にあるため、当該部位の配管系統に重点をおいて説明し、他は省略する。
【0031】
風呂・暖房機器用缶体3は、大別して加熱部5と、加熱部5に送風する公知の送風機9と、加熱部5において発生した燃焼ガスと湯水や熱媒体等(以下、単に湯水と称す)とが熱交換を行う熱交換部6と、熱交換部6を通過した燃焼ガスを風呂・暖房機器用缶体3の外部に排出する排気部7とから構成されている。
なお、本実施形態では、排気部7は給湯用缶体2と一体的に形成された部位である。即ち、排気部7では、給湯用缶体2側で発生した燃焼ガスと、風呂・暖房機器用缶体3側で発生した燃焼ガスとが合流し得る部分である。
【0032】
加熱部5は、ガスや灯油等の液体燃料を燃焼するバーナ8と、燃焼空間部10とから構成されている。本実施形態では、バーナ8は、独立して燃焼できるように、2つの燃焼領域A,Bに分割されている。具体的には、燃焼領域Aは、2本のバーナ8が配され、燃焼領域Bは、5本のバーナ8が配されている。また、それぞれの燃焼領域A,Bに対して、燃料の供給を制限可能な電磁弁14が設けられている。電磁弁14は、燃焼領域Aには1つ、燃焼領域Bには2つ配されている。そして、バーナ8において発生した高温の燃焼ガスは、燃焼空間部10を通過し、熱交換部6へと流入する。
【0033】
熱交換部6は、燃焼空間部10より燃焼ガスの流れ方向下流側に位置し、主に燃焼ガスの顕熱を回収する一次熱交換器11と、主に燃焼ガスの潜熱を回収する二次熱交換器12とにより構成されている。また、一次熱交換器11は、二次熱交換器12よりも燃焼ガスの流れ方向上流側に位置し、互いに直列に接続されている。
【0034】
一次熱交換器11は、主要部分が銅製であり、内部に湯が流れるフィンアンドチューブ式の熱交換器である。
二次熱交換器12は、主要部分がステンレス鋼製であり、一次熱交換器11に比べて防腐食性に優れている。また、二次熱交換器12は、一次熱交換器11において回収しきれなかった燃焼ガスの熱エネルギーを回収する部分である。そのため、二次熱交換器12を通過した燃焼ガスは、摂氏100度以下(一般的に、摂氏60度程度)の低温となる。また、二次熱交換器12では、燃焼ガスが摂氏100度以下の低温となることで、燃焼ガスに含まれた水蒸気が液化してドレンが発生する部分でもある。そして、このドレンは、燃焼ガスに晒されることで酸性を呈するため、本実施形態では、酸性のドレンを中和して排出可能なドレン排出系統34が設けられている。
【0035】
続いて、風呂側と暖房側のそれぞれに属し、それぞれに形成された回路構成部材について説明する。
本実施形態の燃焼装置1には、暖房の高温側の湯の往き口(高温往き口)30と、暖房の湯の戻り口(暖房戻り口)31と、暖房の低温側の湯の往き口(低温往き口)32が設けられている。
そして、風呂側の回路に属する部材として、追い焚き用熱交換器13と、風呂熱動弁15と、風呂循環ポンプ16がある。一方、暖房側の回路に属する部材として、暖房循環ポンプ17と、膨張タンク18と、バイパス熱動弁20がある。
【0036】
暖房戻り口31は、二次熱交換器12の入り側に接続され、二次熱交換器12の出側は一次熱交換器11の入り側に接続されている。また、二次熱交換器12と一次熱交換器11の入り側の間には、湯水の流れ方向上流側から順番に、膨張タンク18、暖房循環ポンプ17が配されている。そして、一次熱交換器11の出側は、高温往き口30に接続されている。従って、暖房戻り口31を始点とすれば、下流側に向かって順番に、二次熱交換器12、膨張タンク18、一次熱交換器11が接続され、終点たる高温往き口30に至っている。なお、本実施形態では、膨張タンク18に湯水の温度を検知する低温側温度センサ25が設けられている。
【0037】
また、高温往き口30は、高温の湯を使用する外部の暖房機器であるファンコンベクタ等と接続されており、さらにこのファンコンベクタ等は暖房戻り口31と接続されている。即ち、燃焼装置1は、ファンコンベクタ等に湯水が循環する高温側循環流路が形成されている。なお、ファンコンベクタ等の高温の湯を使用する暖房機器には、一般的に暖房機器側に熱動弁があり、暖房機器側の熱動弁によって湯の流れが断続される。
【0038】
また、暖房循環ポンプ17の出側と、一次熱交換器11の入り側の間は分岐されており、その分岐路は低温往き口32に接続されている。そして、低温往き口32は、低温の湯を使用する外部の暖房機器である床暖房器具等と接続されており、さらにこの床暖房器具等は暖房戻り口31と接続されている。即ち、燃焼装置1は、床暖房器具等に湯が循環する低温側循環流路が形成されている。なお、床暖房器具等の低温の湯を使用する暖房機器は、燃焼装置1に付属する熱動弁50によって湯の流れが断続される。
【0039】
一次熱交換器11の出側と高温往き側30の間には、バイパス流路21の一端側が接続されている。そして、バイパス流路21の他端側は、二次熱交換器10の出側と膨張タンク18との間に接続されている。換言すれば、バイパス流路21は、一次熱交換器11を短絡するものであり、二次熱交換器12を短絡するものではない。
また、バイパス流路21には、バイパス熱動弁20が設けられている。さらに、バイパス流路21には、バイパス熱動弁20をバイパスするサブバイパス流路22が設けられている。
【0040】
サブバイパス流路22は、バイパス流路21よりも流路断面が小さく、常に開放された流路である。即ち、バイパス流路21には、バイパス熱動弁20の開閉状態に関わらず、常にサブバイパス流路22を介して湯水が通過する。即ち、バイパス流路21には、バイパス熱動弁20の閉状態に、サブバイパス流路22に流通し得る流量が流れ、バイパス熱動弁20の開状態に、サブバイパス流路22に流通し得る流量以上の流量が流れる。
【0041】
また、追い焚き用熱交換器13は、所謂液液熱交換器であり、図1に示すように、一次側においては、一次熱交換器11及び二次熱交換器12と配管を介して直列に接続されている。即ち、追い焚き用熱交換器13の一次側の入り側は、一次熱交換器11の出側と接続されている。これにより、追い焚き用熱交換器13には、一次熱交換器11及び二次熱交換器12で加熱された高温の湯水が流れる。
【0042】
また、追い焚き用熱交換器13の二次側には、図示しない浴槽の湯水が流れる追い焚き循環回路23が接続されている。従って、追い焚き用熱交換器13は、一次側を流れる高温の湯水によって、二次側を流れる湯水を加熱することができる。
【0043】
また、追い焚き用熱交換器13の一次側は、一次熱交換器11と二次熱交換器12の両端側を短絡して接続する関係に接続されている。即ち、追い焚き用熱交換器13の一次側の出側は、配管を介して、暖房戻り口31と二次熱交換器12の入り側の間に接続されている。換言すれば、追い焚き用熱交換器13の一次側の出側は、二次熱交換器12の上流側で接続されている。そして、追い焚き用熱交換器13の一次側における下流側であって、暖房戻り口31と二次熱交換器12の入り側を接続する配管との接続部より上流側に、風呂熱動弁15が設けられている。
【0044】
一方、追い焚き用熱交換器13の二次側は、風呂戻り口33と、風呂往き口35に接続され、風呂戻り口33と追い焚き用熱交換器13との間には風呂循環ポンプ16が設けられている。即ち、風呂循環ポンプ16が駆動することで、図示しない浴槽内の湯水が風呂戻り口33側から追い焚き用熱交換器13に導入され、追い焚き用熱交換器13で加熱され、風呂往き口35を介して、浴槽内に吐出される一連の追い焚き循環回路23を循環する。
【0045】
次に、本実施形態の燃焼装置1の作用について説明する。
本実施形態の燃焼装置1は、ファンコンベクタや床暖房器具等の暖房機器を使用する際(以下、暖房運転とも称す)あるいは浴槽内の湯水を加熱する際(以下、追い焚き運転とも称す)には、風呂・暖房用缶体(以下、単に缶体とも称す)3の下部に設けられた送風機9によって缶体3内に送風しつつ、バーナ8で火炎を発生させる。また、同時に暖房循環ポンプ17を作動させる。その結果、暖房機器あるいは追い焚き用熱交換器13を経由して湯が熱交換部6を流れる。
【0046】
即ち、暖房運転においては、缶体3から排出された湯は、暖房機器側に流れ、その暖房機器を通過した後、暖房戻り口31を経て再び熱交換部6に導入される一連の暖房循環流路を循環し、追い焚き運転においては、缶体3内で、追い焚き用熱交換器13と熱交換部6との間で形成される一連の風呂循環流路を循環する。なお、暖房戻り口31を通過した湯あるいは追い焚き用熱交換器13を通過した湯は、最初に二次熱交換器12に導入される。
【0047】
また、本実施形態では、二次熱交換器12である程度加熱された湯は、バイパス流路21から流れ込んだ高温の湯と混合されて昇温し、膨張タンク18と暖房循環ポンプ17を通過してから一次熱交換器11側と低温往き口32側に分岐される。
分岐された湯のうち、低温往き口32側に流れる湯は、図3に示すように、バイパス流路21から流れ込んだ高温の湯と、二次熱交換器12で加熱された湯が混合された温度の状態で、低温往き口32から吐出され、低温の湯を使用する床暖房器具等に送られる。
また、分岐された湯のうち、一次熱交換器11側に流れる湯は、図4、5に示すように、バイパス流路21から流れ込んだ高温の湯と、二次熱交換器12で加熱された湯の混合状態の湯を、さらに一次熱交換器11で加熱する。そして、一次熱交換器11で加熱された湯は、図4に示すように、高温往き口30から吐出されるか、あるいは図5に示すように、追い焚き用熱交換器13側に流れる。高温往き口30から吐出された高温の湯は、ファンコンベクタ等に送られる。
【0048】
なお、暖房運転における、高温往き口30と低温往き口32から吐出される湯量の割合は、バイパス流路21に設けられたバイパス熱動弁20の開閉によって調整される。即ち、バイパス熱動弁20を全開にすると、一次熱交換器11を出た湯の多くがバイパス流路21を流れて膨張タンク18側に戻る。その結果、高温往き口30から外部に吐出される湯の量が減少し、低温往き口32から外部に吐出される湯の量が増大する。逆に、バイパス熱動弁20を閉止すると、一次熱交換器11を出た湯の多くが高温往き口30から吐出され、サブバイパス流路21を通過する分だけがバイパス流路21を流れて膨張タンク18側に戻るため、高温往き口30から吐出される湯の量が増大し、低温往き口32から吐出される湯の量が減少する。
また、追い焚き運転のみの場合は、バイパス熱動弁20は閉状態とされる。
【0049】
次に、本実施形態における特徴的機能について説明する。
本実施形態では、暖房運転や追い焚き運転において、暖房循環ポンプ17によって膨張タンク18から吐出される湯の温度が、予め定めた目標温度(例えば、摂氏60度)Tsに近づくように制御される。
【0050】
具体的には、燃焼装置1の内部の流路上であって、膨張タンク18に配された低温側温度センサ25で検知された現在の温度Tnと、目標温度Tsとの温度偏差Tcに基づいて、加熱部5の燃焼量が決定され、目標温度Tsに制御される。より具体的には、一定値以上の温度偏差Tcがある状態においては、目標温度Tsに近づけるために、外部の器具で消費される熱量以上の燃焼量を出力するように比例制御される。また、温度偏差Tcが一定値を下回った(例えばゼロ)状態においては、目標温度Tsに維持できる程度の燃焼量で比例制御される。即ち、この状態では、外部の器具で消費される熱量と、比例制御における与える熱量がほぼ等しくなるように制御される。
【0051】
ところが、外部の器具の熱負荷の状態により、消費される熱量とバーナ8により与えられる最小の熱量に差異が生じる場合がある。具体的には、バーナ8による最小の熱量が、器具側の消費熱量より高くなる場合がある。そこで、本実施形態では、比例制御において、温度偏差Tcが一定値を下回り、さらにバーナ8による最小の熱量が、器具側の消費熱量より高くなったことを条件として、オンオフ制御に切り替わる。そして、オンオフ制御においては、比例制御で出力し得る最小の燃焼量(最下限燃焼量)をオン時の出力とした。
【0052】
さらに、本実施形態では、最下限燃焼量で燃焼制御する場合に、いずれの燃焼領域も燃焼停止することなく、全燃焼領域で燃焼させる制御とされている。即ち、本実施形態では、燃焼領域A,Bの双方を用いて出力し得る最小の燃焼量(全体領域最下限燃焼量)まで比例制御でき、それを下回った燃焼量で燃焼制御すべき場合であっても、前記した全体領域最下限燃焼量を下回る燃焼量には制御しない。即ち、器具による消費熱量が全体領域最下限燃焼量を超えれば、比例制御からオンオフ制御に切り替えられる。換言すれば、本実施形態では、加熱部5で火炎を発生させている間は、いずれの電磁弁14も閉状態に制御されることはなく、燃焼領域全体に供給される燃料の増減が制御される。
【0053】
また、本実施形態のオンオフ制御においては、オンの際の燃焼量が従来より増大しているため、オン温度とオフ温度の温度幅が従来の温度幅より拡大されている。即ち、低温側温度センサ25の検知温度が、目標温度Ts±α(例えば、摂氏60度±摂氏14度)の温度領域を有するように制御される。即ち、当該湯の温度が目標温度Ts+αとなればバーナ8がオフにされ、目標温度Ts−αとなればバーナ8がオンにされる。また、暖房端末等の熱負荷の大きさにより必要熱量が変化するため、本実施形態では、暖房端末等の熱負荷の大きさによりオンに要する時間とオフに要する時間を変化させている。
【0054】
さらに、本実施形態では、オンオフ制御における、膨張タンク18から吐出される湯水の目標温度Tsを変更可能としている。具体的に説明すると、本実施形態では、低温温度センサ25が検知する温度に基づいて所定の時間幅(本実施形態ではオン、オフの1サイクルに要する時間Tn)における温度の平均値Tvを演算し、その演算した平均値Tvと、当初の目標温度Tsとの関係に基づいて、補正目標温度Tcsを決定している。そして、決定された補正目標温度Tcsに基づいて、膨張タンク18から吐出される湯水の温度を制御する。即ち、本実施形態では、補正目標温度Tcsに基づいた燃焼制御を行い、実質的にオンオフ制御におけるオンとオフの切り替え温度が変更される。これにより、平均値Tvが当初の目標温度Tsに近づくように制御される。
【0055】
なお、補正目標温度Tcsの演算式は、次式により示すことができる。
Tcs=Ts+(Ts−Tv) (式1)
【0056】
以下、本実施形態における燃焼制御を、低温の湯を要する床暖房器具を使用した場合を例にして具体的に説明する。
床暖房器具を用いた暖房運転においては、暖房循環ポンプ17が駆動されると、低温往き口32から低温の湯が吐出され、床暖房器具等を通過して暖房戻り口31から缶体3側に流入する。即ち、缶体3内では、図3の太線に示す低温側循環流路内を湯が循環し、その湯は熱交換部6において予め定められた温度まで加熱される。
【0057】
本実施形態では、加熱部5における燃焼量を、低温側温度センサ25の検知温度からの情報に基づいて制御しており、温度偏差Tcを小さくするべく低温側温度センサ25の検知温度が目標温度Ts(摂氏60度)に近づくように比例制御が行われる。そして、低温側温度センサ25が目標温度Tsに近づき、床暖房器具における消費熱量が加熱部5で与えられる最小の熱量以下となれば、比例制御からオンオフ制御に切り替えられる。そして、オンオフ制御では、目標温度Tsに対して±α(±摂氏14度)の範囲でオンオフ制御が行われる。
【0058】
そして、オンオフ制御が実行されると、図7に示すフローチャートにしたがって、低温側温度検知センサ25における検知温度の平均値Tvが目標温度Tsからずれないような制御が行われる。即ち、オンオフ制御が実行されると、オンとオフを1組とした1サイクル毎に掛かる時間の計時及び低温側温度センサ25が検知する温度変化の監視が行われる(ステップ1)。そして、ステップ2に移行して、現在の1サイクル時間tnから前回の1サイクル時間tn−1を差し引いた数値が、予め設定された負荷安定判定時間tf以下であるか否かが確認される。これにより、隣合うサイクル間で、オンに要する時間と、オフに要する時間が平衡に至ったことが確認できる。なお、本実施形態に置いては、負荷安定判定時間tfを0〜1分としている。
【0059】
そして、ステップ2で、オンオフ制御におけるオン時間とオフ時間の安定(以下、単にサイクルの安定と称す)が確認されると、1サイクル毎の経過時間の計時及び各サイクルにおける温度変化の監視を終了する(ステップ3)。そして、ステップ4に移行する。ステップ4では、サイクルの安定が確認された時間tn時の低温側温度センサ25の検知温度に基づく平均値Tvが演算される。そして、ステップ5に移行し、演算された平均値Tvが目標温度Tsと等しいか否かが確認される。
【0060】
そして、ステップ5で平均値Tvが目標温度Tsと等しいことが確認されれば、再びステップ1からの動作が繰り返される。
一方、ステップ5において、平均値Tvが、目標温度Tsと異なる値であれば、ステップ7に移行する。そして、ステップ6で平均値Tvが、目標温度Tsより大きいか否かが確認される。
即ち、図7、8に示すように、目標温度Tsを基準として、上下に形成された面積比を算出し、上側に形成された面積の割合が高いか、下側に形成された面積の割合が高いかが確認される。
【0061】
従って、図7の細線と破線で示すように、目標温度Tsより上側に形成された面積の割合が高い場合は、平均値Tvが目標温度Tsより高くなるため、ステップ7に移行され、図8の細線と破線で示すように、目標温度Tsより下側に形成された面積の割合が低い場合は、平均値Tvが目標温度Tsより低くなるため、ステップ9に移行される。そして、ステップ7又はステップ9においては、上記した数式に基づいて、補正目標温度Tcsが演算される。このとき、演算された補正目標温度Tcsは、平均値Tvが目標温度Tsより高い場合は、補正目標温度Tcsが当初の目標温度Tsより小さい値となり、平均値Tvが目標温度Tsより低い場合は、補正目標温度Tcsが当初の目標温度Tsより大きい値となる。
【0062】
そして、補正目標温度Tcsが決定すると、その決定された補正目標温度Tcsに基づいたオンオフ制御が実行される(ステップ8)。即ち、ステップ7を通過して決定された補正目標温度Tcsに基づいて燃焼制御されると、低温の湯の温度変化は、図7の太線に示す曲線を描き、ステップ9を通過して決定された補正目標温度Tcsに基づいて燃焼制御されると、低温の湯の温度変化は、図8の太線に示す曲線を描く。従って、実質的に、オンオフ制御におけるオンとオフの切り替え温度が変更されたこととなる。
【0063】
そして、補正目標温度Tcsに基づいたオンオフ制御が実行されると、再びステップ1からの動作が繰り返される。なお、補正目標温度Tcsに変更されて、再びステップ1からの動作が繰り返される場合においても、平均値Tvは当初の目標温度Tsと比較される。
以上、本実施形態における低温の湯を使用した暖房運転の制御の説明である。
【0064】
また、本実施形態では、低温の湯を使用する暖房運転の際だけでなく、高温の湯を使用する暖房運転や、追い焚き運転の際であっても、オンオフ制御が行われる状況に、補正目標温度Tcsを演算して、燃焼制御する構成を備えていても構わない。なお、高温の湯を使用する暖房運転や、追い焚き運転であっても、前記した同様の動作フローによるため、説明を省略する。
【0065】
本実施形態では、暖房運転や追い焚き運転において、目標温度Tsを補正して、湯の温度の平均値Tvを当初の目標温度Tsに近づけることができるため、供給する湯の温度が安定する。即ち、暖房端末等を使用する際に、使用者が不快と感じる期間を低減することができる。
また、本実施形態では、燃焼量を制御する際に、オンオフ制御のオフ時以外は、全燃焼領域に火炎を維持されるため、燃焼時に燃焼に供しない空気が熱交換部6を冷却することがない。即ち、熱交換部6における熱交換効率を低減することがないため、省エネルギー効果が高い。
従って、本実施形態によれば、省エネルギーを図りつつ、暖房端末に供給される湯又は熱媒体の温度を安定させて、使用者に不快を感じさせることがない燃焼装置1を提供することができる。
【0066】
上記実施形態では、低温の湯の温度の平均値Tvを、予め設定された目標温度Tsに一致させる制御を行ったが、本発明はこれに限定されず、平均値Tvが目標温度Tsの値から一定の誤差範囲(例えば、目標温度Ts±摂氏1度)にあれば、一致していると見なす制御を行っても構わない。即ち、この場合、補正目標温度Tcsを演算しない。
また、平均値Tvが、目標温度Tsと異なる所定の温度に一致させる制御を行っても構わない。即ち、使用者が最も快適に感じる温度を所定の温度として別に設定することである。
【0067】
上記実施形態では、低温の湯の温度の平均値Tvと、予め設定された目標温度Tsとの関係から、オンオフ制御におけるオン温度とオフ温度を変更する制御を行ったが、本発明ではこれに限定されず、例えば、上記制御に加えてあるいは代えて、低温の湯の温度が目標温度Ts以上となる時間の割合を増加させるように、オンオフ制御におけるオン温度とオフ温度を変更する制御を行っても構わない。即ち、図9の細線に示すように、1サイクルにおける目標温度以上の時間の割合が、目標温度を下回った時間の割合より低い場合に、少なくともオン温度を上方に変更する補正を行う。これにより、図9の太線に示すように、1サイクルにおける目標温度以上の時間の割合を、目標温度を下回った時間の割合と同等あるいはそれ以上にすることができる。即ち、本実施形態においても、上記実施形態と同様の効果を発揮させることができる。
また、目標温度以上の時間の割合を一定の割合(例えば補正前の時間に対して30%増加させる等)だけ増加させるように、少なくともオン温度を上方に変更する補正を行う制御であっても構わない。
【0068】
また、上記実施形態では、最下限燃焼量を全燃焼領域における最も小さい燃焼量としたが、本発明ではこれに限定されず、最も小さい燃焼量を非燃焼領域が形成される最下限燃焼量としても構わない。
【0069】
上記実施形態では、膨張タンク18に配した低温側温度センサ25で検知した検知温度に基づいて燃焼制御する構成を示したが、本発明はこれに限定されるわけではなく、例えば、暖房戻り口31近傍に温度センサを設け、その温度センサの検知温度に基づいて燃焼制御する構成であっても構わない。
【符号の説明】
【0070】
1 燃焼装置
3 風呂・暖房機器用缶体
8 バーナ
25 低温側温度センサ(温度検知手段)
A 燃焼領域
B 燃焼領域
Tcs 補正目標温度
Ts 目標温度
Tv 平均値
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼装置に関するものであり、特に暖房用端末に対して湯又は熱媒体を供給可能な燃焼装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
給湯用の湯水を加熱する給湯加熱機能に加えて、床暖房器具やファンコンベクタ等の暖房機器(暖房端末)へ供給される湯又は熱媒体を加熱する暖房加熱機能と、浴槽内の湯水を加熱する追い焚き機能を1台の装置で賄う構造を備えた燃焼装置が知られている。例えば、特許文献1にこの技術が開示されている。
【0003】
この種の燃焼装置は、給湯用の熱交換器に加えて、風呂・暖房用の熱交換器を備え、外部のファンコンベクタ等に湯又は熱媒体を流出させる高温往き口と、外部の床暖房機器等に湯又は熱媒体を流出させる低温往き口と、高温往き口又は低温往き口から外部に流出した湯又は熱媒体を再び燃焼装置内に流入させる暖房戻り口とが設けられている。
【0004】
即ち、ファンコンベクタ等の高温の湯を要する機器が、高温往き口と暖房戻り口との間に接続されて、燃焼装置とファンコンベクタ等との間で一連の循環路(高温側循環路)を形成し、床暖房機器等の比較的低温の湯を要する器具が、低温往き口と暖房戻り口との間に接続されて、燃焼装置と床暖房機器等との間で一連の循環路(低温側循環路)を形成している。そして、高温側循環路を介して一定の温度領域に維持された高温の湯がファンコンベクタ等に導入されてその暖房機器の機能が果たされ、低温側循環路を介して一定の温度領域に維持された低温の湯が床暖房器具等に導入されてその暖房機器の機能が果たされる。
【0005】
ところで、このような燃焼装置では、暖房加熱運転を行う場合、ファンコンベクタや床暖房器具等のいずれの暖房端末が使用されるということに関わらず、現在の低温往き側の温度と予め設定された低温往き側の目標温度との温度偏差に応じてバーナが比例制御される。即ち、比例制御では、図10に示すように、低温往き側の温度が低く前記温度偏差が大きいほど、バーナにおける燃焼量が大きく調整され、逆に低温往き側の温度が高く前記温度偏差が小さいほどバーナにおける燃焼量が小さく調整される。
比例制御を採用する場合においては、図10に示すように、現在の湯の温度が目標温度と一致し、温度偏差がゼロであっても、暖房器具からの放熱を補うためにバーナは燃焼している。
【0006】
しかしながら、例えば放熱量が小さく、且つ燃焼装置の容量が大きい場合には、図11に示すように、バーナで発生する火炎の長さが極めて短いものとなってしまい、安定した燃焼状態を維持できなくなってしまう。
また、火炎を維持できる範囲であったとしても、火炎の長さが極めて短い場合は炎孔が過度に加熱され、バーナの寿命を損ねてしまう。さらに、火炎の長さが極めて短い場合は、ガスと空気との混合比率(所謂空燃比)を安定させることが難しいという問題もある。
【0007】
そこで、暖房器具に使用する燃焼装置では、図12に示すように、バーナ108を複数の燃焼領域に分け、燃焼領域を変えることによって、火炎の長さを維持する構成が採用されている。例えば、図12に示す燃焼装置では、9本のバーナ108を有し、この9本のバーナ108が燃焼エリアAと燃焼エリアBに区分されている。そして、各燃焼エリア毎に燃焼ガスを供給する流路には、それぞれ電磁弁114が設けられている。
なお、2つの電磁弁114に燃料ガスを供給する流路は共通であり、当該共通配管部分に比例弁113が設けられている。
【0008】
そして、前記したように、温度偏差がゼロである場合に、図11、図13(b)に示すように、火炎の長さが過度に短くなってしまう場合には、図13(c)に示すように、燃焼領域を例えば燃焼エリアAだけに限定し、3本のバーナ108だけを点火し、他の6本のバーナ108は消火状態とする。その結果、実際に燃焼されるエリアのバーナ108の炎は大きくなり、安定燃焼を維持することができる。
即ち、従来の燃焼装置では、温度偏差がゼロである場合に、図11、図13(b)に示すように、火炎の長さが過度に短くなってしまう場合には、図13(c)に示すように、燃焼領域を例えば燃焼エリアAだけに限定して、バーナ108を比例制御する。
【0009】
ところが、図13(c)に示すように、燃焼領域を限定すると、燃焼装置の熱効率が低下するという不満がある。例えば、図12に示すように、2つの燃焼エリアA,Bがあり、燃焼エリアAだけを燃焼させて燃焼エリアBを消火すると、燃焼エリアAを燃焼している時に、非燃焼領域たる燃焼エリアBに対しても燃焼用の空気が供給され、その空気が燃焼に寄与されることなく熱交換器の表面を通過するため、熱交換器が無駄に冷却されてしまう。
【0010】
即ち、燃焼領域を限定してバーナ108を燃焼させると、空気によって熱交換器が冷却され、冷却により失われた熱量を上積みした加熱量が必要となるため、熱交換効率が悪く、省エネルギーの観点からも不満がある。特に、暖房加熱運転では、連続して運転される時間が給湯運転等の場合より長くなる傾向があるため、暖房加熱運転において省エネルギーを図る必要性が高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2007−24495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで、本発明者らは、温度偏差がゼロである場合に、図11、図13(b)に示すように、火炎の長さが過度に短くなってしまう場合には、比例制御を維持することを断念し、制御方法をオンオフ制御に切り替えた。
即ち、温度偏差がゼロである場合に、全ての燃焼領域でバーナ108を燃焼させ、図11、図13(b)に示すように、火炎の長さを過度に短くなってしまわざるを得ない場合には、全てのバーナ108が消火する時間を設けた。即ち、図14に示すように、バーナ108がオンである期間は、全ての燃焼領域で燃焼し得る最下限の燃焼量にし、その期間が終了すればオフの期間に切り替えるという一連の制御を行うこととした。
その結果、バーナが燃焼している期間をオフ時間により実質的に減少できるため、比例制御による場合に比べて時間的燃焼量を減少することができる。そのため、全ての燃焼領域で燃焼したとしても、バーナ108の燃焼量が、暖房器具による放熱量を過度に超えてしまうという不具合がない。また、無駄な送風によって熱交換器が冷やされてしまう不具合もない。
【0013】
しかしながら、暖房加熱運転において、全燃焼領域で燃焼制御した場合、燃焼領域を限定して燃焼制御する場合に比べて、暖房器具の熱負荷の影響を受け易く、安定した温度の湯又は熱媒体を暖房器具に供給できないという不満がある。特に、この問題は、低温往き口側と接続された床暖房器具等を使用する暖房運転の際に顕著に現れた。
【0014】
即ち、暖房加熱運転では、前記したように、オンオフ制御によって、低温往き側の湯又は熱媒体の温度が一定の温度幅に維持されるが、平均温度の観点から見てみると、暖房器具の熱負荷によって、目標温度(摂氏60度)に安定しない。具体的には、床暖房器具を使用し、且つ低負荷(室内が暖かく床暖房が冷めにくい状況等)の場合には、図15に示すように、燃焼オン時に急激に昇温する反面、燃焼オフ時には温度降下勾配がなだらかになるため、摂氏60度以下を示す期間が長くなる。これにより、低温往き側の温度の平均値は摂氏60度より低くなる。換言すれば、使用者が摂氏60度より低い温度を体感する期間が長くなり、暖房機器としては好ましくない。
【0015】
一方、床暖房器具を使用し、且つ高負荷(室内が冷えており床暖房器具が冷めやすい状況や、床面に多数の人が乗っている状況等)の場合には、図16に示すように、燃焼オン時になだらかに昇温する反面、温度降下勾配が急になるため、摂氏60度以上を示す期間が長くなる。これにより、低温往き側の温度の平均値は摂氏60度より高くなる。換言すれば、使用者が摂氏60度より高い温度を体感する期間が長くなる。この状況は、暖房機器としての役割は果たしているため、使用者に不快を与える程度は小さいが、省エネルギーの観点からは若干無駄と言える。なお、図15、16に示す結果は、低温往き口近傍で検知した低温の湯の温度である。
従って、全燃焼領域で燃焼制御した場合、暖房機器の熱負荷の状態によって、使用者が体感する温度が変化し、不快を感じさせたり、省エネルギーを図ることが困難となってしまう懸念があった。
【0016】
そこで、本発明では、従来技術の問題に鑑み、省エネルギーを図りつつ、暖房端末に供給される湯又は熱媒体の温度を安定させて、使用者に不快を感じさせることがない燃焼装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、外部の器具との間で循環回路を形成し、バーナで加熱した湯水又は熱媒体を前記循環回路に流して外部の器具に湯水又は熱媒体を供給する燃焼装置において、バーナの燃焼量を比例制御して前記循環回路を流れる湯水又は熱媒体の温度を制御するものであり、所定の条件下においては、比例制御に代わってオンオフ制御によってバーナの燃焼量が制御されて、前記循環回路を流れる湯水又は熱媒体の温度が制御されるものであって、オンオフ制御によってバーナの燃焼量が制御されている際には、循環回路を流れる湯水又は熱媒体の温度の平均値と所定温度との関係に応じて、及び/又は、循環回路を流れる湯水又は熱媒体の温度が前記所定温度以上である時間の割合に応じて、バーナのオンとオフの切り替え温度が変更されることを特徴とする燃焼装置とされている。
【0018】
本発明の燃焼装置は、循環回路を流れる湯水又は熱媒体(以下、単に循環湯水とも称す)の温度が、ほぼ直接的に使用者の快適性に大きく影響を与えるものと考え、特にオンオフ制御の際に、循環湯水の温度を使用者が快適に感じ得る所定の温度に制御することとした。
即ち、本発明は、オンオフ制御が実行されている際に、循環湯水の温度の平均値と所定温度との関係に応じて、バーナのオンとオフの切り替え温度を変更したり、循環湯水の温度が所定温度以上である時間の割合に応じて、バーナのオンとオフの切り替え温度を変更する構成とされている。
【0019】
具体的には、循環湯水の温度の平均値と所定温度との関係に応じてバーナのオンとオフの切り替え温度を変更する場合であれば、平均値が所定温度より低い場合にその平均値が高くなるようにオン温度やオフ温度を高い側に変更でき、逆に平均値が所定温度より高い場合にその平均値が低くなるようにオン温度やオフ温度を低い側に変更できる。これにより、循環湯水の温度の平均値が、所定温度と比較して大小するような関係であっても、その平均値を所定温度に近づけることができるため、確実に使用者の快適性を向上させることが可能となる。
【0020】
また、循環湯水の温度が所定温度以上である時間の割合に応じてバーナのオンとオフの切り替え温度を変更する場合であれば、循環湯水の温度が所定温度以上である時間の割合が所定温度より低い時間の割合より低い場合に、所定温度以上である時間の割合が所定温度より低い時間の割合と同等又はそれ以上となるようにオン温度やオフ温度を高い側に変更できる。これにより、循環湯水の温度が、所定温度と比較して所定温度以上となる時間の割合が平衡状態(所定温度以上の時間の割合と所定温度より低い時間の割合がほぼ同じ状態)から低い側にずれたような場合に、その循環湯水の温度が所定温度以上となる時間の割合を平衡状態もしくは平衡状態より高くなるように制御することができるため、確実に使用者の快適性を向上させることが可能となる。
【0021】
本発明によれば、オンオフ制御におけるバーナのオン温度とオフ温度の変更が可能とされることにより、複数の燃焼領域があり、燃焼制御において非燃焼領域を形成しない制御を有した構成であっても、外部の器具に供給される湯又は熱媒体の温度を使用者が快適に感じる温度に安定させることができる。これにより、本発明の燃焼装置は、使用者に不快を感じさせることがない。また、結果として、燃焼状態において非燃焼領域を形成しない構成とすることが可能であるため、熱交換効率を向上させることができ、省エネルギーを図ることができる。
【0022】
請求項2に記載の発明は、燃焼装置から器具側に湯水又は熱媒体が吐出される流路に温度検知手段が設けられ、オンオフ制御によってバーナの燃焼量が制御されている際には、前記温度検知手段の検知温度が目標温度に一致するようにバーナがオンオフされ、前記目標温度は、前記所定温度又は所定温度を含む一定の温度幅を持った温度であり、循環流路に流れる湯水又は熱媒体の温度の時間的平均値を前記温度検知手段の検知温度に基づいて演算し、前記平均値が前記所定温度よりも低い場合には、バーナのオンとオフの切り替え温度を上方に補正し、前記平均値が前記所定温度よりも高い場合には、バーナのオンとオフの切り替え温度を下方に補正することを特徴とする請求項1に記載の燃焼装置である。
【0023】
かかる構成によれば、バーナのオンオフが、目標温度たる所定温度又は所定温度を含む一定の温度幅を持った温度に一致するように制御される。そして、その制御に基づいた循環湯水の温度を、温度検知手段によって検知して温度の時間的な平均値を演算し、その平均値と所定温度との関係によりバーナのオンとオフの切り替え温度を補正できる。これにより、循環湯水の温度の平均値が所定温度からずれれば、その平均値を迅速に所定温度に近づけて外部の器具に供給される湯又は熱媒体の温度を安定させることができるため、使用者の快適性をより確実に向上させることが可能となる。
【0024】
請求項3に記載の発明は、燃焼装置から器具側に湯水又は熱媒体が吐出される流路に温度検知手段が設けられ、オンオフ制御によってバーナの燃焼量が制御されている際には、前記温度検知手段の検知温度が目標温度に一致するようにバーナがオンオフされ、前記目標温度は、前記所定温度又は所定温度を含む一定の温度幅を持った温度であり、循環流路に流れる湯水又は熱媒体の温度が前記所定温度以上である時間の割合を前記温度検知手段の検知温度に基づいて演算し、前記温度が前記所定温度以上である割合が低い場合には、バーナのオンとオフの切り替え温度を上方に補正することを特徴とする請求項1又は2に記載の燃焼装置である。
【0025】
かかる構成によれば、バーナのオンオフが、目標温度たる所定温度又は所定温度を含む一定の温度幅を持った温度に一致するように制御される。そして、その制御に基づいた循環湯水の温度を、温度検知手段によって検知してその検知温度が所定温度以上である時間の割合を演算し、その演算された時間の割合に基づいてバーナのオンとオフの切り替え温度を補正できる。これにより、循環湯水の温度が所定以上である時間の割合が低い状態となれば、迅速にその割合を増加させることができるため、使用者の快適性をより確実に向上させることが可能となる。
【0026】
請求項4に記載の発明は、前記外部の器具に対して供給する湯水又は熱媒体を加熱するバーナは、1又は複数の燃焼領域に分割されており、各領域は独立して燃焼できるものであって、前記所定の条件は、バーナの燃焼量が、比例制御によって全燃焼領域において出力し得る最小の燃焼量となった時であり、オンオフ制御では、前記最小の燃焼量でオンすることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の燃焼装置である。
【0027】
かかる構成によれば、比例制御からオンオフ制御に切り替わるタイミングを、全燃焼領域において出力し得る最小の燃焼量を最下限燃焼量としたため、いずれの制御においても、燃焼に供しない空気が発生することがなく、加熱された湯水又は熱媒体が冷却されることがない。これにより、本発明によれば、熱効率を向上させた燃焼装置を提供することが可能である。
【発明の効果】
【0028】
本発明の燃焼装置では、オンオフ制御における、バーナのオン温度とオフ温度の変更を可能としたため、循環流路に流れる湯又は熱媒体の温度が低く過ぎたり高過ぎて使用者に不快を与えることがない。また結果として、オンオフ制御において、全燃焼領域で出力し得る最も小さい燃焼量とすることが可能となり、省エネルギーを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施形態に係る燃焼装置を示す作動原理図である。
【図2】図1の作動原理図の要部を抜き出して簡略化した配管系統図である。
【図3】図2の配管系統図に暖房運転の際における低温の湯の通過経路を示した説明図である。
【図4】図2の配管系統図に暖房運転の際における高温の湯の通過経路を示した説明図である。
【図5】図2の配管系統図に追い焚き運転の際における湯の通過経路を示した説明図である。
【図6】図1の燃焼装置におけるオンオフ制御時の動作を示すフローチャートである。
【図7】図1の燃焼装置におけるオンオフ制御時の低温の湯(高負荷)の温度変化を示すグラフである。(太線:本実施形態のオンオフ制御、細線:従来技術のオンオフ制御)
【図8】図1の燃焼装置におけるオンオフ制御時の低温の湯(低負荷)の温度変化を示すグラフである。(太線:本実施形態のオンオフ制御、細線:従来技術のオンオフ制御)
【図9】別の実施形態における低温の湯の温度と時間の関係を示すグラフである。
【図10】比例制御における燃焼量の変化と温度変化の関係を示すグラフである。
【図11】比例制御における燃焼量の変化と温度変化の関係を示すグラフであり、外部の熱負荷が小さい場合を示すグラフである。
【図12】複数の燃焼領域を備えた燃焼装置の要部を示した概念図である。
【図13】バーナにおける燃焼状態を示す説明図で、(a)は全燃焼領域での燃焼をしめす図で、(b)は全燃焼領域での最小燃焼量を示す図で、(c)は燃焼エリアAでの燃焼を示す図である。
【図14】比例制御における燃焼量の変化と温度変化の関係と、オンオフ制御における燃焼量の変化と温度変化の関係を示すグラフである。
【図15】従来技術の燃焼装置におけるオンオフ制御時の低温の湯(低負荷)の温度変化を示すグラフである。
【図16】従来技術の燃焼装置におけるオンオフ制御時の低温の湯(高負荷)の温度変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態に係る燃焼装置について説明する。
本発明の燃焼装置1は、内部に独立した2系統の缶体及び配管系統を備える。即ち、図1に示すように、右側は給湯用缶体2であり、左側は、風呂・暖房機器用缶体3に使用される。
なお、本発明において採用された給湯用、並びに、風呂・暖房機器用の配管系統は、共に公知のものである。そして、本発明における特徴的機能が、風呂及び暖房機器用の配管系統側にあるため、当該部位の配管系統に重点をおいて説明し、他は省略する。
【0031】
風呂・暖房機器用缶体3は、大別して加熱部5と、加熱部5に送風する公知の送風機9と、加熱部5において発生した燃焼ガスと湯水や熱媒体等(以下、単に湯水と称す)とが熱交換を行う熱交換部6と、熱交換部6を通過した燃焼ガスを風呂・暖房機器用缶体3の外部に排出する排気部7とから構成されている。
なお、本実施形態では、排気部7は給湯用缶体2と一体的に形成された部位である。即ち、排気部7では、給湯用缶体2側で発生した燃焼ガスと、風呂・暖房機器用缶体3側で発生した燃焼ガスとが合流し得る部分である。
【0032】
加熱部5は、ガスや灯油等の液体燃料を燃焼するバーナ8と、燃焼空間部10とから構成されている。本実施形態では、バーナ8は、独立して燃焼できるように、2つの燃焼領域A,Bに分割されている。具体的には、燃焼領域Aは、2本のバーナ8が配され、燃焼領域Bは、5本のバーナ8が配されている。また、それぞれの燃焼領域A,Bに対して、燃料の供給を制限可能な電磁弁14が設けられている。電磁弁14は、燃焼領域Aには1つ、燃焼領域Bには2つ配されている。そして、バーナ8において発生した高温の燃焼ガスは、燃焼空間部10を通過し、熱交換部6へと流入する。
【0033】
熱交換部6は、燃焼空間部10より燃焼ガスの流れ方向下流側に位置し、主に燃焼ガスの顕熱を回収する一次熱交換器11と、主に燃焼ガスの潜熱を回収する二次熱交換器12とにより構成されている。また、一次熱交換器11は、二次熱交換器12よりも燃焼ガスの流れ方向上流側に位置し、互いに直列に接続されている。
【0034】
一次熱交換器11は、主要部分が銅製であり、内部に湯が流れるフィンアンドチューブ式の熱交換器である。
二次熱交換器12は、主要部分がステンレス鋼製であり、一次熱交換器11に比べて防腐食性に優れている。また、二次熱交換器12は、一次熱交換器11において回収しきれなかった燃焼ガスの熱エネルギーを回収する部分である。そのため、二次熱交換器12を通過した燃焼ガスは、摂氏100度以下(一般的に、摂氏60度程度)の低温となる。また、二次熱交換器12では、燃焼ガスが摂氏100度以下の低温となることで、燃焼ガスに含まれた水蒸気が液化してドレンが発生する部分でもある。そして、このドレンは、燃焼ガスに晒されることで酸性を呈するため、本実施形態では、酸性のドレンを中和して排出可能なドレン排出系統34が設けられている。
【0035】
続いて、風呂側と暖房側のそれぞれに属し、それぞれに形成された回路構成部材について説明する。
本実施形態の燃焼装置1には、暖房の高温側の湯の往き口(高温往き口)30と、暖房の湯の戻り口(暖房戻り口)31と、暖房の低温側の湯の往き口(低温往き口)32が設けられている。
そして、風呂側の回路に属する部材として、追い焚き用熱交換器13と、風呂熱動弁15と、風呂循環ポンプ16がある。一方、暖房側の回路に属する部材として、暖房循環ポンプ17と、膨張タンク18と、バイパス熱動弁20がある。
【0036】
暖房戻り口31は、二次熱交換器12の入り側に接続され、二次熱交換器12の出側は一次熱交換器11の入り側に接続されている。また、二次熱交換器12と一次熱交換器11の入り側の間には、湯水の流れ方向上流側から順番に、膨張タンク18、暖房循環ポンプ17が配されている。そして、一次熱交換器11の出側は、高温往き口30に接続されている。従って、暖房戻り口31を始点とすれば、下流側に向かって順番に、二次熱交換器12、膨張タンク18、一次熱交換器11が接続され、終点たる高温往き口30に至っている。なお、本実施形態では、膨張タンク18に湯水の温度を検知する低温側温度センサ25が設けられている。
【0037】
また、高温往き口30は、高温の湯を使用する外部の暖房機器であるファンコンベクタ等と接続されており、さらにこのファンコンベクタ等は暖房戻り口31と接続されている。即ち、燃焼装置1は、ファンコンベクタ等に湯水が循環する高温側循環流路が形成されている。なお、ファンコンベクタ等の高温の湯を使用する暖房機器には、一般的に暖房機器側に熱動弁があり、暖房機器側の熱動弁によって湯の流れが断続される。
【0038】
また、暖房循環ポンプ17の出側と、一次熱交換器11の入り側の間は分岐されており、その分岐路は低温往き口32に接続されている。そして、低温往き口32は、低温の湯を使用する外部の暖房機器である床暖房器具等と接続されており、さらにこの床暖房器具等は暖房戻り口31と接続されている。即ち、燃焼装置1は、床暖房器具等に湯が循環する低温側循環流路が形成されている。なお、床暖房器具等の低温の湯を使用する暖房機器は、燃焼装置1に付属する熱動弁50によって湯の流れが断続される。
【0039】
一次熱交換器11の出側と高温往き側30の間には、バイパス流路21の一端側が接続されている。そして、バイパス流路21の他端側は、二次熱交換器10の出側と膨張タンク18との間に接続されている。換言すれば、バイパス流路21は、一次熱交換器11を短絡するものであり、二次熱交換器12を短絡するものではない。
また、バイパス流路21には、バイパス熱動弁20が設けられている。さらに、バイパス流路21には、バイパス熱動弁20をバイパスするサブバイパス流路22が設けられている。
【0040】
サブバイパス流路22は、バイパス流路21よりも流路断面が小さく、常に開放された流路である。即ち、バイパス流路21には、バイパス熱動弁20の開閉状態に関わらず、常にサブバイパス流路22を介して湯水が通過する。即ち、バイパス流路21には、バイパス熱動弁20の閉状態に、サブバイパス流路22に流通し得る流量が流れ、バイパス熱動弁20の開状態に、サブバイパス流路22に流通し得る流量以上の流量が流れる。
【0041】
また、追い焚き用熱交換器13は、所謂液液熱交換器であり、図1に示すように、一次側においては、一次熱交換器11及び二次熱交換器12と配管を介して直列に接続されている。即ち、追い焚き用熱交換器13の一次側の入り側は、一次熱交換器11の出側と接続されている。これにより、追い焚き用熱交換器13には、一次熱交換器11及び二次熱交換器12で加熱された高温の湯水が流れる。
【0042】
また、追い焚き用熱交換器13の二次側には、図示しない浴槽の湯水が流れる追い焚き循環回路23が接続されている。従って、追い焚き用熱交換器13は、一次側を流れる高温の湯水によって、二次側を流れる湯水を加熱することができる。
【0043】
また、追い焚き用熱交換器13の一次側は、一次熱交換器11と二次熱交換器12の両端側を短絡して接続する関係に接続されている。即ち、追い焚き用熱交換器13の一次側の出側は、配管を介して、暖房戻り口31と二次熱交換器12の入り側の間に接続されている。換言すれば、追い焚き用熱交換器13の一次側の出側は、二次熱交換器12の上流側で接続されている。そして、追い焚き用熱交換器13の一次側における下流側であって、暖房戻り口31と二次熱交換器12の入り側を接続する配管との接続部より上流側に、風呂熱動弁15が設けられている。
【0044】
一方、追い焚き用熱交換器13の二次側は、風呂戻り口33と、風呂往き口35に接続され、風呂戻り口33と追い焚き用熱交換器13との間には風呂循環ポンプ16が設けられている。即ち、風呂循環ポンプ16が駆動することで、図示しない浴槽内の湯水が風呂戻り口33側から追い焚き用熱交換器13に導入され、追い焚き用熱交換器13で加熱され、風呂往き口35を介して、浴槽内に吐出される一連の追い焚き循環回路23を循環する。
【0045】
次に、本実施形態の燃焼装置1の作用について説明する。
本実施形態の燃焼装置1は、ファンコンベクタや床暖房器具等の暖房機器を使用する際(以下、暖房運転とも称す)あるいは浴槽内の湯水を加熱する際(以下、追い焚き運転とも称す)には、風呂・暖房用缶体(以下、単に缶体とも称す)3の下部に設けられた送風機9によって缶体3内に送風しつつ、バーナ8で火炎を発生させる。また、同時に暖房循環ポンプ17を作動させる。その結果、暖房機器あるいは追い焚き用熱交換器13を経由して湯が熱交換部6を流れる。
【0046】
即ち、暖房運転においては、缶体3から排出された湯は、暖房機器側に流れ、その暖房機器を通過した後、暖房戻り口31を経て再び熱交換部6に導入される一連の暖房循環流路を循環し、追い焚き運転においては、缶体3内で、追い焚き用熱交換器13と熱交換部6との間で形成される一連の風呂循環流路を循環する。なお、暖房戻り口31を通過した湯あるいは追い焚き用熱交換器13を通過した湯は、最初に二次熱交換器12に導入される。
【0047】
また、本実施形態では、二次熱交換器12である程度加熱された湯は、バイパス流路21から流れ込んだ高温の湯と混合されて昇温し、膨張タンク18と暖房循環ポンプ17を通過してから一次熱交換器11側と低温往き口32側に分岐される。
分岐された湯のうち、低温往き口32側に流れる湯は、図3に示すように、バイパス流路21から流れ込んだ高温の湯と、二次熱交換器12で加熱された湯が混合された温度の状態で、低温往き口32から吐出され、低温の湯を使用する床暖房器具等に送られる。
また、分岐された湯のうち、一次熱交換器11側に流れる湯は、図4、5に示すように、バイパス流路21から流れ込んだ高温の湯と、二次熱交換器12で加熱された湯の混合状態の湯を、さらに一次熱交換器11で加熱する。そして、一次熱交換器11で加熱された湯は、図4に示すように、高温往き口30から吐出されるか、あるいは図5に示すように、追い焚き用熱交換器13側に流れる。高温往き口30から吐出された高温の湯は、ファンコンベクタ等に送られる。
【0048】
なお、暖房運転における、高温往き口30と低温往き口32から吐出される湯量の割合は、バイパス流路21に設けられたバイパス熱動弁20の開閉によって調整される。即ち、バイパス熱動弁20を全開にすると、一次熱交換器11を出た湯の多くがバイパス流路21を流れて膨張タンク18側に戻る。その結果、高温往き口30から外部に吐出される湯の量が減少し、低温往き口32から外部に吐出される湯の量が増大する。逆に、バイパス熱動弁20を閉止すると、一次熱交換器11を出た湯の多くが高温往き口30から吐出され、サブバイパス流路21を通過する分だけがバイパス流路21を流れて膨張タンク18側に戻るため、高温往き口30から吐出される湯の量が増大し、低温往き口32から吐出される湯の量が減少する。
また、追い焚き運転のみの場合は、バイパス熱動弁20は閉状態とされる。
【0049】
次に、本実施形態における特徴的機能について説明する。
本実施形態では、暖房運転や追い焚き運転において、暖房循環ポンプ17によって膨張タンク18から吐出される湯の温度が、予め定めた目標温度(例えば、摂氏60度)Tsに近づくように制御される。
【0050】
具体的には、燃焼装置1の内部の流路上であって、膨張タンク18に配された低温側温度センサ25で検知された現在の温度Tnと、目標温度Tsとの温度偏差Tcに基づいて、加熱部5の燃焼量が決定され、目標温度Tsに制御される。より具体的には、一定値以上の温度偏差Tcがある状態においては、目標温度Tsに近づけるために、外部の器具で消費される熱量以上の燃焼量を出力するように比例制御される。また、温度偏差Tcが一定値を下回った(例えばゼロ)状態においては、目標温度Tsに維持できる程度の燃焼量で比例制御される。即ち、この状態では、外部の器具で消費される熱量と、比例制御における与える熱量がほぼ等しくなるように制御される。
【0051】
ところが、外部の器具の熱負荷の状態により、消費される熱量とバーナ8により与えられる最小の熱量に差異が生じる場合がある。具体的には、バーナ8による最小の熱量が、器具側の消費熱量より高くなる場合がある。そこで、本実施形態では、比例制御において、温度偏差Tcが一定値を下回り、さらにバーナ8による最小の熱量が、器具側の消費熱量より高くなったことを条件として、オンオフ制御に切り替わる。そして、オンオフ制御においては、比例制御で出力し得る最小の燃焼量(最下限燃焼量)をオン時の出力とした。
【0052】
さらに、本実施形態では、最下限燃焼量で燃焼制御する場合に、いずれの燃焼領域も燃焼停止することなく、全燃焼領域で燃焼させる制御とされている。即ち、本実施形態では、燃焼領域A,Bの双方を用いて出力し得る最小の燃焼量(全体領域最下限燃焼量)まで比例制御でき、それを下回った燃焼量で燃焼制御すべき場合であっても、前記した全体領域最下限燃焼量を下回る燃焼量には制御しない。即ち、器具による消費熱量が全体領域最下限燃焼量を超えれば、比例制御からオンオフ制御に切り替えられる。換言すれば、本実施形態では、加熱部5で火炎を発生させている間は、いずれの電磁弁14も閉状態に制御されることはなく、燃焼領域全体に供給される燃料の増減が制御される。
【0053】
また、本実施形態のオンオフ制御においては、オンの際の燃焼量が従来より増大しているため、オン温度とオフ温度の温度幅が従来の温度幅より拡大されている。即ち、低温側温度センサ25の検知温度が、目標温度Ts±α(例えば、摂氏60度±摂氏14度)の温度領域を有するように制御される。即ち、当該湯の温度が目標温度Ts+αとなればバーナ8がオフにされ、目標温度Ts−αとなればバーナ8がオンにされる。また、暖房端末等の熱負荷の大きさにより必要熱量が変化するため、本実施形態では、暖房端末等の熱負荷の大きさによりオンに要する時間とオフに要する時間を変化させている。
【0054】
さらに、本実施形態では、オンオフ制御における、膨張タンク18から吐出される湯水の目標温度Tsを変更可能としている。具体的に説明すると、本実施形態では、低温温度センサ25が検知する温度に基づいて所定の時間幅(本実施形態ではオン、オフの1サイクルに要する時間Tn)における温度の平均値Tvを演算し、その演算した平均値Tvと、当初の目標温度Tsとの関係に基づいて、補正目標温度Tcsを決定している。そして、決定された補正目標温度Tcsに基づいて、膨張タンク18から吐出される湯水の温度を制御する。即ち、本実施形態では、補正目標温度Tcsに基づいた燃焼制御を行い、実質的にオンオフ制御におけるオンとオフの切り替え温度が変更される。これにより、平均値Tvが当初の目標温度Tsに近づくように制御される。
【0055】
なお、補正目標温度Tcsの演算式は、次式により示すことができる。
Tcs=Ts+(Ts−Tv) (式1)
【0056】
以下、本実施形態における燃焼制御を、低温の湯を要する床暖房器具を使用した場合を例にして具体的に説明する。
床暖房器具を用いた暖房運転においては、暖房循環ポンプ17が駆動されると、低温往き口32から低温の湯が吐出され、床暖房器具等を通過して暖房戻り口31から缶体3側に流入する。即ち、缶体3内では、図3の太線に示す低温側循環流路内を湯が循環し、その湯は熱交換部6において予め定められた温度まで加熱される。
【0057】
本実施形態では、加熱部5における燃焼量を、低温側温度センサ25の検知温度からの情報に基づいて制御しており、温度偏差Tcを小さくするべく低温側温度センサ25の検知温度が目標温度Ts(摂氏60度)に近づくように比例制御が行われる。そして、低温側温度センサ25が目標温度Tsに近づき、床暖房器具における消費熱量が加熱部5で与えられる最小の熱量以下となれば、比例制御からオンオフ制御に切り替えられる。そして、オンオフ制御では、目標温度Tsに対して±α(±摂氏14度)の範囲でオンオフ制御が行われる。
【0058】
そして、オンオフ制御が実行されると、図7に示すフローチャートにしたがって、低温側温度検知センサ25における検知温度の平均値Tvが目標温度Tsからずれないような制御が行われる。即ち、オンオフ制御が実行されると、オンとオフを1組とした1サイクル毎に掛かる時間の計時及び低温側温度センサ25が検知する温度変化の監視が行われる(ステップ1)。そして、ステップ2に移行して、現在の1サイクル時間tnから前回の1サイクル時間tn−1を差し引いた数値が、予め設定された負荷安定判定時間tf以下であるか否かが確認される。これにより、隣合うサイクル間で、オンに要する時間と、オフに要する時間が平衡に至ったことが確認できる。なお、本実施形態に置いては、負荷安定判定時間tfを0〜1分としている。
【0059】
そして、ステップ2で、オンオフ制御におけるオン時間とオフ時間の安定(以下、単にサイクルの安定と称す)が確認されると、1サイクル毎の経過時間の計時及び各サイクルにおける温度変化の監視を終了する(ステップ3)。そして、ステップ4に移行する。ステップ4では、サイクルの安定が確認された時間tn時の低温側温度センサ25の検知温度に基づく平均値Tvが演算される。そして、ステップ5に移行し、演算された平均値Tvが目標温度Tsと等しいか否かが確認される。
【0060】
そして、ステップ5で平均値Tvが目標温度Tsと等しいことが確認されれば、再びステップ1からの動作が繰り返される。
一方、ステップ5において、平均値Tvが、目標温度Tsと異なる値であれば、ステップ7に移行する。そして、ステップ6で平均値Tvが、目標温度Tsより大きいか否かが確認される。
即ち、図7、8に示すように、目標温度Tsを基準として、上下に形成された面積比を算出し、上側に形成された面積の割合が高いか、下側に形成された面積の割合が高いかが確認される。
【0061】
従って、図7の細線と破線で示すように、目標温度Tsより上側に形成された面積の割合が高い場合は、平均値Tvが目標温度Tsより高くなるため、ステップ7に移行され、図8の細線と破線で示すように、目標温度Tsより下側に形成された面積の割合が低い場合は、平均値Tvが目標温度Tsより低くなるため、ステップ9に移行される。そして、ステップ7又はステップ9においては、上記した数式に基づいて、補正目標温度Tcsが演算される。このとき、演算された補正目標温度Tcsは、平均値Tvが目標温度Tsより高い場合は、補正目標温度Tcsが当初の目標温度Tsより小さい値となり、平均値Tvが目標温度Tsより低い場合は、補正目標温度Tcsが当初の目標温度Tsより大きい値となる。
【0062】
そして、補正目標温度Tcsが決定すると、その決定された補正目標温度Tcsに基づいたオンオフ制御が実行される(ステップ8)。即ち、ステップ7を通過して決定された補正目標温度Tcsに基づいて燃焼制御されると、低温の湯の温度変化は、図7の太線に示す曲線を描き、ステップ9を通過して決定された補正目標温度Tcsに基づいて燃焼制御されると、低温の湯の温度変化は、図8の太線に示す曲線を描く。従って、実質的に、オンオフ制御におけるオンとオフの切り替え温度が変更されたこととなる。
【0063】
そして、補正目標温度Tcsに基づいたオンオフ制御が実行されると、再びステップ1からの動作が繰り返される。なお、補正目標温度Tcsに変更されて、再びステップ1からの動作が繰り返される場合においても、平均値Tvは当初の目標温度Tsと比較される。
以上、本実施形態における低温の湯を使用した暖房運転の制御の説明である。
【0064】
また、本実施形態では、低温の湯を使用する暖房運転の際だけでなく、高温の湯を使用する暖房運転や、追い焚き運転の際であっても、オンオフ制御が行われる状況に、補正目標温度Tcsを演算して、燃焼制御する構成を備えていても構わない。なお、高温の湯を使用する暖房運転や、追い焚き運転であっても、前記した同様の動作フローによるため、説明を省略する。
【0065】
本実施形態では、暖房運転や追い焚き運転において、目標温度Tsを補正して、湯の温度の平均値Tvを当初の目標温度Tsに近づけることができるため、供給する湯の温度が安定する。即ち、暖房端末等を使用する際に、使用者が不快と感じる期間を低減することができる。
また、本実施形態では、燃焼量を制御する際に、オンオフ制御のオフ時以外は、全燃焼領域に火炎を維持されるため、燃焼時に燃焼に供しない空気が熱交換部6を冷却することがない。即ち、熱交換部6における熱交換効率を低減することがないため、省エネルギー効果が高い。
従って、本実施形態によれば、省エネルギーを図りつつ、暖房端末に供給される湯又は熱媒体の温度を安定させて、使用者に不快を感じさせることがない燃焼装置1を提供することができる。
【0066】
上記実施形態では、低温の湯の温度の平均値Tvを、予め設定された目標温度Tsに一致させる制御を行ったが、本発明はこれに限定されず、平均値Tvが目標温度Tsの値から一定の誤差範囲(例えば、目標温度Ts±摂氏1度)にあれば、一致していると見なす制御を行っても構わない。即ち、この場合、補正目標温度Tcsを演算しない。
また、平均値Tvが、目標温度Tsと異なる所定の温度に一致させる制御を行っても構わない。即ち、使用者が最も快適に感じる温度を所定の温度として別に設定することである。
【0067】
上記実施形態では、低温の湯の温度の平均値Tvと、予め設定された目標温度Tsとの関係から、オンオフ制御におけるオン温度とオフ温度を変更する制御を行ったが、本発明ではこれに限定されず、例えば、上記制御に加えてあるいは代えて、低温の湯の温度が目標温度Ts以上となる時間の割合を増加させるように、オンオフ制御におけるオン温度とオフ温度を変更する制御を行っても構わない。即ち、図9の細線に示すように、1サイクルにおける目標温度以上の時間の割合が、目標温度を下回った時間の割合より低い場合に、少なくともオン温度を上方に変更する補正を行う。これにより、図9の太線に示すように、1サイクルにおける目標温度以上の時間の割合を、目標温度を下回った時間の割合と同等あるいはそれ以上にすることができる。即ち、本実施形態においても、上記実施形態と同様の効果を発揮させることができる。
また、目標温度以上の時間の割合を一定の割合(例えば補正前の時間に対して30%増加させる等)だけ増加させるように、少なくともオン温度を上方に変更する補正を行う制御であっても構わない。
【0068】
また、上記実施形態では、最下限燃焼量を全燃焼領域における最も小さい燃焼量としたが、本発明ではこれに限定されず、最も小さい燃焼量を非燃焼領域が形成される最下限燃焼量としても構わない。
【0069】
上記実施形態では、膨張タンク18に配した低温側温度センサ25で検知した検知温度に基づいて燃焼制御する構成を示したが、本発明はこれに限定されるわけではなく、例えば、暖房戻り口31近傍に温度センサを設け、その温度センサの検知温度に基づいて燃焼制御する構成であっても構わない。
【符号の説明】
【0070】
1 燃焼装置
3 風呂・暖房機器用缶体
8 バーナ
25 低温側温度センサ(温度検知手段)
A 燃焼領域
B 燃焼領域
Tcs 補正目標温度
Ts 目標温度
Tv 平均値
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部の器具との間で循環回路を形成し、バーナで加熱した湯水又は熱媒体を前記循環回路に流して外部の器具に湯水又は熱媒体を供給する燃焼装置において、
バーナの燃焼量を比例制御して前記循環回路を流れる湯水又は熱媒体の温度を制御するものであり、所定の条件下においては、比例制御に代わってオンオフ制御によってバーナの燃焼量が制御されて、前記循環回路を流れる湯水又は熱媒体の温度が制御されるものであって、
オンオフ制御によってバーナの燃焼量が制御されている際には、循環回路を流れる湯水又は熱媒体の温度の平均値と所定温度との関係に応じて、及び/又は、循環回路を流れる湯水又は熱媒体の温度が前記所定温度以上である時間の割合に応じて、バーナのオンとオフの切り替え温度が変更されることを特徴とする燃焼装置。
【請求項2】
燃焼装置から器具側に湯水又は熱媒体が吐出される流路に温度検知手段が設けられ、
オンオフ制御によってバーナの燃焼量が制御されている際には、前記温度検知手段の検知温度が目標温度に一致するようにバーナがオンオフされ、
前記目標温度は、前記所定温度又は所定温度を含む一定の温度幅を持った温度であり、
循環流路に流れる湯水又は熱媒体の温度の時間的平均値を前記温度検知手段の検知温度に基づいて演算し、前記平均値が前記所定温度よりも低い場合には、バーナのオンとオフの切り替え温度を上方に補正し、前記平均値が前記所定温度よりも高い場合には、バーナのオンとオフの切り替え温度を下方に補正することを特徴とする請求項1に記載の燃焼装置。
【請求項3】
燃焼装置から器具側に湯水又は熱媒体が吐出される流路に温度検知手段が設けられ、
オンオフ制御によってバーナの燃焼量が制御されている際には、前記温度検知手段の検知温度が目標温度に一致するようにバーナがオンオフされ、
前記目標温度は、前記所定温度又は所定温度を含む一定の温度幅を持った温度であり、
循環流路に流れる湯水又は熱媒体の温度が前記所定温度以上である時間の割合を前記温度検知手段の検知温度に基づいて演算し、前記温度が前記所定温度以上である割合が低い場合には、バーナのオンとオフの切り替え温度を上方に補正することを特徴とする請求項1又は2に記載の燃焼装置。
【請求項4】
前記外部の器具に対して供給する湯水又は熱媒体を加熱するバーナは、1又は複数の燃焼領域に分割されており、各領域は独立して燃焼できるものであって、
前記所定の条件は、バーナの燃焼量が、比例制御によって全燃焼領域において出力し得る最小の燃焼量となった時であり、オンオフ制御では、前記最小の燃焼量でオンすることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の燃焼装置。
【請求項1】
外部の器具との間で循環回路を形成し、バーナで加熱した湯水又は熱媒体を前記循環回路に流して外部の器具に湯水又は熱媒体を供給する燃焼装置において、
バーナの燃焼量を比例制御して前記循環回路を流れる湯水又は熱媒体の温度を制御するものであり、所定の条件下においては、比例制御に代わってオンオフ制御によってバーナの燃焼量が制御されて、前記循環回路を流れる湯水又は熱媒体の温度が制御されるものであって、
オンオフ制御によってバーナの燃焼量が制御されている際には、循環回路を流れる湯水又は熱媒体の温度の平均値と所定温度との関係に応じて、及び/又は、循環回路を流れる湯水又は熱媒体の温度が前記所定温度以上である時間の割合に応じて、バーナのオンとオフの切り替え温度が変更されることを特徴とする燃焼装置。
【請求項2】
燃焼装置から器具側に湯水又は熱媒体が吐出される流路に温度検知手段が設けられ、
オンオフ制御によってバーナの燃焼量が制御されている際には、前記温度検知手段の検知温度が目標温度に一致するようにバーナがオンオフされ、
前記目標温度は、前記所定温度又は所定温度を含む一定の温度幅を持った温度であり、
循環流路に流れる湯水又は熱媒体の温度の時間的平均値を前記温度検知手段の検知温度に基づいて演算し、前記平均値が前記所定温度よりも低い場合には、バーナのオンとオフの切り替え温度を上方に補正し、前記平均値が前記所定温度よりも高い場合には、バーナのオンとオフの切り替え温度を下方に補正することを特徴とする請求項1に記載の燃焼装置。
【請求項3】
燃焼装置から器具側に湯水又は熱媒体が吐出される流路に温度検知手段が設けられ、
オンオフ制御によってバーナの燃焼量が制御されている際には、前記温度検知手段の検知温度が目標温度に一致するようにバーナがオンオフされ、
前記目標温度は、前記所定温度又は所定温度を含む一定の温度幅を持った温度であり、
循環流路に流れる湯水又は熱媒体の温度が前記所定温度以上である時間の割合を前記温度検知手段の検知温度に基づいて演算し、前記温度が前記所定温度以上である割合が低い場合には、バーナのオンとオフの切り替え温度を上方に補正することを特徴とする請求項1又は2に記載の燃焼装置。
【請求項4】
前記外部の器具に対して供給する湯水又は熱媒体を加熱するバーナは、1又は複数の燃焼領域に分割されており、各領域は独立して燃焼できるものであって、
前記所定の条件は、バーナの燃焼量が、比例制御によって全燃焼領域において出力し得る最小の燃焼量となった時であり、オンオフ制御では、前記最小の燃焼量でオンすることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の燃焼装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−47356(P2012−47356A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−187064(P2010−187064)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【出願人】(000004709)株式会社ノーリツ (1,293)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【出願人】(000004709)株式会社ノーリツ (1,293)
【Fターム(参考)】
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