説明

燃焼設備

【課題】設備の構成を簡易にするとともにエネルギー消費量を減少させ、ケミカルヒートポンプで使用する水の水質管理を不要にする。
【解決手段】水素原子を含む燃料を燃焼するバーナ27が設けられた炉11の内部の排ガスを排気する排気ライン22と、化学蓄熱材35が収容された反応容器31と、排気ライン22から分岐し化学蓄熱材35を貫通するように配置された開閉可能な第1取出ライン25と、排気ライン22から分岐して排ガスを反応容器31に導入可能に配置され開閉可能な第2取出ライン26とを備え、第2取出ライン26を開放し、第2取出ライン26に流入した排ガスに含まれる水蒸気と化学蓄熱材35との水和反応により反応生成物と熱を生成させて前記熱を放熱し、第1取出ライン25を開放し、第1取出ライン25に流入した排ガスの熱を化学蓄熱材35の反応生成物に吸熱させて化学蓄熱材35を生成するように蓄熱する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケミカルヒートポンプを使用する燃焼設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、化学蓄熱材の水和発熱反応により放熱し、脱水吸熱反応により吸熱するケミカルヒートポンプが開示されている。このケミカルヒートポンプでは、作動させるために化学蓄熱材に水蒸気を供給する必要がある。そのため、水を蒸発させる蒸発器が必要となり装置の構成が複雑化する。また、蒸発器の使用によって、エネルギー消費量が増加する。
【0003】
一方、水は密閉系で循環使用されるため、化学蓄熱材や装置構成材等の混入、濃化により水質の変化に伴うトラブル(例えばCa混入による水酸化カルシウム水溶液(アルカリ性)による配管腐食やシステム構成材による配管閉塞)が発生するおそれがある。そのため、厳重な水質管理が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−89799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、設備の構成を簡易にするとともにエネルギー消費量を減少させ、ケミカルヒートポンプで使用する水の水質管理を不要にすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための手段として、本発明の燃焼設備は、化学蓄熱材の水和発熱反応により反応生成物を生成する放熱過程、および前記反応生成物の脱水吸熱反応によって前記化学蓄熱材と水蒸気とを生成する蓄熱過程を有するケミカルヒートポンプを備える燃焼設備において、水素原子を含む燃料を燃焼するバーナが設けられた炉と、前記バーナの燃焼により生じた前記炉の内部の排ガスを排気する排気ラインと、前記化学蓄熱材が収容された反応容器と、前記排気ラインから分岐し前記反応容器の前記化学蓄熱材を貫通するように配置され弁が介設された第1取出ラインと、前記排気ラインから分岐して前記排ガスを前記反応容器に導入可能に配置され弁が介設された第2取出ラインとを備え、前記第2取出ラインの弁を開弁し、前記第2取出ラインに流入した前記炉の排ガスに含まれる水蒸気と前記化学蓄熱材との水和反応により反応生成物と熱を生成させて前記熱を放熱し、前記第1取出ラインの弁を開弁し、前記第1取出ラインに流入した前記炉の排ガスの熱を前記化学蓄熱材の反応生成物に吸熱させて前記化学蓄熱材を生成するように蓄熱するようにした。
【0007】
この構成によれば、第2取出ラインの弁を開弁することにより水素原子を含む燃料を燃焼するバーナの燃焼により生じた前記炉の排ガスに含まれる水蒸気によりケミカルヒートポンプの化学蓄熱材を水和させることができる。これにより、設備に蒸発器を設ける必要がないので、設備を簡易な構成とすることができる。そして、蒸発器が不要となり、また、第1取出ラインの弁を開弁することによりバーナの排ガスの熱をケミカルヒートポンプの反応生成物に吸熱させて化学蓄熱材を生成するように蓄熱することができるので、エネルギー消費量を減少させることができる。また、水蒸気を生成するための水を再利用する必要がなくなるので、使用後の水を外部に排水することができ、水の劣化によるトラブルを回避できる。したがって、ケミカルヒートポンプの水の水質管理を不要にすることができる。
【0008】
前記反応容器の上流側の前記第1取出ラインに一端が連結され、他端が送風機に連結され弁が介設された入口側ラインと、前記反応容器の下流側の前記第1取出ラインに連結され、弁が介設された出口側ラインとを備え、前記入口側ラインおよび前記出口側ラインの弁を開弁し、前記第1取出ラインの弁を閉弁したときに、前記送風機により熱媒体を前記第1取出ラインに送出可能であり、前記入口側ラインおよび前記出口側ラインの弁を閉弁し、前記第1取出ラインの弁を開弁したときに、前記排気ラインの排ガスを前記第1取出ラインに送出可能であることが好ましい。この構成によれば、第1取出ライン、入口側ライン、および出口側ラインの弁を開閉することにより、送風機により送られた熱媒体および排気ラインの排ガスのいずれか一方を第1取出ラインに送出することができる。すなわち、第1取出ラインのみで送風機により送られた熱媒体および排気ラインの排ガスを流通させることができる。これにより、設備を簡易な構成とすることができる。
【0009】
前記反応容器と熱交換可能に熱媒体を導入する弁が介設された入口側ラインと、前記反応容器と熱交換した前記熱媒体を排出する弁が介設された出口側ラインとを備えることが好ましい。この構成によれば、入口側ラインの弁を開弁して反応容器に熱媒体を導入し、反応容器の内部の熱と熱媒体とを熱交換させることができる。そして、反応容器の内部の熱と熱交換した熱媒体を出口側ラインの弁を開弁して出口側ラインから排出することができる。
【0010】
前記反応容器の内部に設けられ、前記化学蓄熱材を貫通して前記熱媒体と前記反応容器の内部の熱とを熱交換させ前記入口側ラインと前記出口側ラインとを接続する接続ラインを備えることが好ましい。この構成によれば、入口側ラインから導入された熱媒体を接続ラインを通過させて化学蓄熱材と熱交換させることができる。そして、化学蓄熱材と熱交換した熱媒体を出口側ラインに排出することができる。また、入口側ラインと出口側ラインとが接続ラインにより接続された簡易な構成により、熱媒体へ異物の混入を排除することができる。
【0011】
前記反応容器は反応容器熱交換部が設けられた外面との間に空間を形成するように配置された外側容器を備え、前記入口側ラインと前記出口側ラインとを前記外側容器の空間を介して連通させることが好ましい。この構成によれば、入口側ラインから熱媒体を外側容器の空間に導入し、反応容器熱交換部で熱媒体と反応容器の内部の熱とを熱交換させることができる。そして、反応容器の内部の熱と熱交換した熱媒体を出口側ラインから排出することができる。また、熱媒体への異物の混入を排除することができる。
【0012】
前記燃料は水素ガスであることが好ましい。この構成によれば、バーナの排ガスに含まれる水蒸気以外の成分によりケミカルヒートポンプに悪影響が及ぼされることを回避することができる。
【0013】
前記バーナはラジアントチューブバーナであることが好ましい。この構成によれば、ラジアントチューブバーナのチューブからの放射熱によって、間接的に加熱することができ、被加熱物から発生する不純物によって化学蓄熱材が汚損、変質することが回避できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、第2取出ラインの弁を開弁することにより水素原子を含む燃料を燃焼するバーナの燃焼により生じた前記炉の排ガスに含まれる水蒸気によりケミカルヒートポンプの化学蓄熱材を水和させることができる。これにより、設備に蒸発器を設ける必要がないので、設備を簡易な構成とすることができる。そして、蒸発器が不要となり、また、第1取出ラインの弁を開弁することによりバーナの排ガスの熱をケミカルヒートポンプの反応生成物に吸熱させて化学蓄熱材を生成するように蓄熱することができるので、エネルギー消費量を減少させることができる。また、水蒸気を生成するための水を再利用する必要がなくなるので、使用後の水を外部に排水することができ、水の劣化によるトラブルを回避できる。したがって、ケミカルヒートポンプの水の水質管理を不要にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる燃焼設備の概略図。
【図2】本発明の第1実施形態にかかる燃焼設備で使用されるケミカルヒートポンプを示す図。
【図3】ケミカルヒートポンプの蓄熱工程および放熱工程における化学反応を示す図。
【図4】第2取出ラインに流入した排ガスの流れを示す図。
【図5】第1取出ラインに流入した熱媒体の流れを示す図。
【図6】第1取出ラインに流入した排ガスの流れを示す図。
【図7】本発明の第2実施形態にかかる燃焼設備の概略図。
【図8】本発明の第2実施形態にかかる燃焼設備で使用されるケミカルヒートポンプを示す図。
【図9】第2取出ラインに流入した排ガスの流れを示す図。
【図10】外側容器の空間を通過する熱媒体の流れを示す図。
【図11】第1取出ラインに流入した排ガスの流れを示す図。
【図12】本発明の変形例を示す図。
【図13】本発明の変形例を示す図。
【図14】本発明の変形例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0017】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態にかかる燃焼設備10を示す。この燃焼設備10は、炉11の廃熱を蓄熱し放熱するケミカルヒートポンプ30を備えている。
【0018】
炉11には、噴射口17が内部に直接開口した燃焼空気を供給する空気ノズル18が設けられている。空気ノズル18には、弁19を介して空気供給源20が接続されている。また、炉11の内部には燃料を供給する燃料ノズル12が設けられている。燃料ノズル12の噴射口13は空気ノズル18に合流している。燃料ノズル12は、弁14を備えている。燃料ノズル12には、水素原子を含む燃料を供給する燃料供給源16が接続されている。空気ノズル18と燃料ノズル12とは、バーナ27を構成する。
【0019】
燃焼設備10には、炉11の内部温度を測定する温度センサ21が設けられている。温度センサ21は、炉11の内部温度の測定値を後述するコントローラ60に送信する。また、燃焼設備10の炉11には、排気ライン22が設けられている。排気ライン22には、ファン23が介設され、排気ライン22の端部には排気口24が設けられている。排気ライン22には、炉11とファン23の間で分岐し、ケミカルヒートポンプ30を通って合流する排ガスの熱を利用するための第1取出ライン25、および排ガスの水蒸気を利用するための第2取出ライン26が設けられている。
【0020】
図1および図2に示すように、ケミカルヒートポンプ30は、反応容器31と凝縮器32とを備えている。
【0021】
図2に示すように、反応容器31には、化学蓄熱材35が収容された収容部36が設けられている。本実施形態における化学蓄熱材35は、酸化カルシウムであるが、酸化マグネシウム等、ケミカルヒートポンプに使用されるいかなる化学蓄熱材であってもよい。この化学蓄熱材35は、図3に示すように、水和する際に熱量Qを発熱(放熱)し、脱水する際に熱量Qを吸熱(蓄熱)する。反応容器31では、第1取出ライン25が収容部36を貫通している。そして、化学蓄熱材35は、第1取出ライン25の一部である後述する収容部36内の共通ライン64の外周面に設けられた熱交換部68を介して共通ライン64の内部と熱交換できるようになっている。反応容器31は、第2取出ライン26に介設されている。具体的には、排気ライン22から分岐した第2取出ライン26の端部は反応容器31の側面41の下部で連結されている。そして、排気ライン22に合流する第2取出ライン26の端部は反応容器31の上面40で連結されている。
【0022】
第1取出ライン25には、ケミカルヒートポンプ30の反応容器31の上流側と下流側の両側のそれぞれに、弁38,39が介設されている。第2取出ライン26には、ケミカルヒートポンプ30の反応容器31の上流側と下流側に弁42a,42bが介設されている。
【0023】
燃焼設備10には、入口側ライン66が設けられている。入口側ライン66の一端には、熱媒体を送出する送風機61が設けられている。入口側ライン66の他端は、弁38と反応容器31の間の第1取出ライン25に連結されている。入口側ライン66には弁49が設けられている。
【0024】
また、燃焼設備10には、出口側ライン67が設けられている。出口側ライン67の一端は、反応容器31と弁39の間の第1取出ライン25に連結されている。出口側ライン67の端部には弁50が設けられている。弁50の下流側には、熱風管62が設けられている。入口側ライン66と第1取出ライン25の合流位置より下流であり、かつ、出口側ライン67と第1取出ライン25の分岐位置より上流である範囲の第1取出ライン25は、共通ライン64を構成している。送風機61により送出される熱媒体は、例えば空気であり、反応容器31で熱交換によって高温にされ、熱風管62から排出される。高温にされた熱媒体は、他の設備や燃焼バーナの燃焼空気の予熱に用いられる。
【0025】
反応容器31には、内部と連通するように反応容器31の下端と凝縮器32とが接続されたドレンライン51が設けられている。ドレンライン51には弁52が介設されている。
【0026】
燃焼設備10には、コントローラ60が設けられている。コントローラ60は、弁38、39、42a、42bを含む燃焼設備10(全体)の動作を制御する。
【0027】
次に、本発明にかかる第1実施形態の燃焼設備10の動作について説明する。なお、図4〜図6において、閉弁している弁は黒塗りで示し、開弁している弁は白抜きで示す。
【0028】
燃焼設備10では、炉11の内部温度が温度センサ21で測定され、この測定値がコントローラ60に入力される。コントローラ60は、前記測定値とコントローラ60に予め入力されている設定炉温とを比較して温度偏差を演算する。その後、コントローラ60は、予め設定されている燃焼量パターンから前記内部温度と温度偏差とに対応する燃焼設備10の燃焼量を決定する。そして、コントローラ60は、この燃焼量に見合う燃料流量となるように燃料ノズル12から燃料を供給するとともに、適切な燃焼空気流量となるように空気ノズル18から燃焼空気を供給する。このようにして、炉11において燃焼が開始され加熱処理が実行される。そして、燃焼中、排気ライン22の排気口24から排ガスを排気する。
【0029】
そして、前述の燃焼によって生じる排ガスの廃熱と熱交換して加熱される熱媒体を得るために、ケミカルヒートポンプ30を作動させる。ケミカルヒートポンプ30の作動は、第1取出ライン25の弁38,39、および第2取出ライン26の弁42a,42bのいずれか一方を開弁することにより行う。
【0030】
図4に示すように、第1取出ライン25の弁38,弁39を閉弁した状態で、第2取出ライン26の弁42a,42bを開弁すると、排気ライン22を流通する排ガスの一部が第2取出ライン26に流入する。これにより、第2取出ライン26に流入した排ガスは、反応容器31の内部に流入し、収容部36の酸化カルシウム35と接触する。そうすると、図3(放熱)に示すように、水素原子を含む燃料を燃焼するバーナ27の排ガスに含まれる水蒸気によりケミカルヒートポンプ30の酸化カルシウム35を水和させ、水酸化カルシウム(反応生成物)を生成するとともに熱量Qを発熱する。ここで、図5に示すように、入口側ライン66の弁49、および出口側ライン67の弁50を開弁すると、反応熱Qを、送風機61により入口側ライン66および共通ライン64を通じて送られ反応容器31の収容部36に流入した熱媒体に、熱交換部68を介して移動させることができる。その後、反応容器31の収容部36内部の共通ライン64で熱交換された熱媒体は反応容器31から流出し、出口側ライン67を流通する。そして、熱風管62から高温の熱媒体が得られる。高温の熱媒体は、他設備に利用することができ、省エネルギーに役立てることができる。一方、第2取出ライン26を通じて反応容器31の内部に流入した排ガスは、反応容器31の上面40から流出し排気ライン22に合流する。
【0031】
反応容器31の化学蓄熱材35の放熱過程終了後、図6に示すように、入口側ライン66の弁49、出口側ライン67の弁50、および第2取出ライン26の弁42a,42bを閉弁し、第1取出ライン25の弁38,弁39、およびドレンライン51の弁52を開弁すると、排気ライン22を流通する排ガスの一部は第1取出ライン25に流入する。これにより、第1取出ライン25に流入した排ガスは、共通ライン64へ流入し、反応容器31の収容部36を水酸化カルシウム35と直接接触することなく通過し反応容器31から流出する。その際、共通ライン64の排ガスは、共通ライン64の外周面である熱交換部68を介して収容部36の水酸化カルシウム35と熱交換する。すなわち、共通ライン64を流通する排ガスの一部の熱は、熱交換部68を介して水酸化カルシウムに移動する。このようにして移動させた熱を反応容器31の内部に蓄熱させることができ、図3(蓄熱)に示すように、反応容器31の水酸化カルシウムから脱水吸熱反応によって酸化カルシウム35と水蒸気とを生成することができる。そして、反応容器31の収容部36で生成された水蒸気は、ドレンライン51に流入する。そして、ドレンライン51の水蒸気は、凝縮器32で凝縮され、水となって外部に排出される。また、このとき、弁42bを開弁し、水蒸気を排気ライン22にそのまま排出することもできる。そうすると、ドレンライン51、弁52、凝縮器32が不要となる。
【0032】
反応容器31の収容部36に酸化カルシウム35が生成されると、第1取出ライン25の弁38,39を閉弁し、第2取出ライン26の弁42a,42bを開弁することにより、再び図3(放熱)に示す放熱工程を実行することができる。このようにして、第1取出ライン25の弁38,39が開弁した状態と、第2取出ライン26の弁42a,42bが開弁した状態とを順次切り替えることにより、ケミカルヒートポンプ30を作動させることができる。
【0033】
本発明によれば、第2取出ライン26の弁42a,42bを開弁することにより水素原子を含む燃料を燃焼するバーナ27の燃焼により生じた炉11の排ガスに含まれる水蒸気により反応容器31の化学蓄熱材35を水和させ、反応生成物(水酸化カルシウム)を生成することができる。これにより、設備に蒸発器を設ける必要がないので、設備を簡易な構成とすることができる。そして、蒸発器が不要となり、また、第1取出ライン25の弁38,39を開弁することによりバーナ27の排ガスの熱を反応容器31の前記反応生成物に吸熱させて化学蓄熱材35を生成するように蓄熱することができるので、エネルギー消費量を減少させることができる。また、水蒸気を生成するための水を再利用する必要がなくなるので、使用後の水を外部に排水することができ、水の劣化によるトラブルを回避できる。したがって、反応容器31内部の水の水質管理を不要にすることができる。そして、水を収容する容器も不要となる。
【0034】
また、この構成によると、第1取出ライン25と入口側ライン66が合流し、共通ライン64を形成している。図5のように、入口側ライン66および出口側ライン67の弁49,50を開弁し、第1取出ライン25の弁38,39を閉弁したときに、送風機61により熱媒体を第1取出ライン25の一部である共通ライン64に送出することができる。そして、また、図6のように、入口側ライン66および出口側ライン67の弁49,50を閉弁し、第1取出ライン25の弁38,39を開弁したときに、排気ライン22の排ガスを第1取出ライン25の一部である共通ライン64に送出することができる。したがって、第1取出ライン25、入口側ライン66、および出口側ライン67の弁38,39,49,50を開閉することにより、送風機61により送られた熱媒体および排気ライン22の排ガスのいずれか一方を第1取出ライン25に送出することができる。すなわち、第1取出ライン25のみで送風機61により送られた熱媒体および排気ライン22の排ガスを共通ライン64に排気と熱媒体が交互に流通させることができる。このようにすれば、反応容器31を二重にする必要がなく、簡単かつ低コストで製作が可能となり、設備を簡易な構成とすることができる。
【0035】
また、バーナ27の燃料として、例えば天然ガス、LPG、および、重油のように、燃焼ガスに水蒸気を含み、かつ、二酸化炭素の発生量が少ない燃料を使用してもよい。しかし、水素ガスを使用すれば、排気中の水蒸気割合が増えるので、ケミカルヒートポンプ30の反応温度が上昇し、熱回収率が向上する。それに加えて、空気の代わりに純酸素を用いれば排気を全て水蒸気とすることも可能であり、燃焼により二酸化炭素が生成されることを排除できる。したがって、バーナ27の排ガスに含まれる水蒸気以外の成分、特に二酸化炭素によりケミカルヒートポンプ30の化学蓄熱材35に悪影響が及ぼされることを回避することができる。すなわち、化学蓄熱材35として酸化カルシウムを使用した場合、酸化カルシウムと二酸化炭素とが反応して炭酸カルシウムが生成され、ケミカルヒートポンプ30として繰り返し利用ができなくなることを確実に回避することができる。
【0036】
(第2実施形態)
図7および図8は、本発明の第2実施形態にかかる燃焼設備10を示す。本実施形態において、第1実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付して説明を省略する。
【0037】
反応容器31は、空間43を形成するように外面に対して間隔をあけて配置された外側容器70を備えている。図8に示すように、化学蓄熱材35は、第1取出ライン25の外周面に設けられた排ガス熱交換部37を介して第1取出ライン25の内部と熱交換できるようになっている。
【0038】
燃焼設備10には、入口側ライン66が設けられている。入口側ライン66の一端には、送風機61が設けられている。入口側ライン66の他端は、反応容器31の外側容器70に連結部46を介して連結されている。入口側ライン66には弁49が設けられている。
【0039】
また、燃焼設備10には、出口側ライン67が設けられている。出口側ライン67の一端は、反応容器31の外側容器70に連結部47を介して連結されている。出口側ライン67の端部には弁50が設けられている。弁50の下流側には、熱風管62が設けられている。出口側ライン67は、空間43を介して入口側ライン66と連通している。入口側ライン66から送出され、反応容器31と外側容器70の間の空間43を移動する熱媒体は、反応容器31の外面である反応容器熱交換部71を介して反応容器31の内部と熱交換できるようになっている。そして、反応容器31の反応容器熱交換部71で熱交換した熱媒体を出口側ライン67から得られるようになっている。
【0040】
次に、本発明にかかる第2実施形態の燃焼設備10の動作について説明する。
【0041】
図9に示すように、第1取出ライン25の弁38,弁39を閉弁した状態で、第2取出ライン26の弁42a,42bを開弁すると、排気ライン22を流通する排ガスの一部が第2取出ライン26に流入する。これにより、第2取出ライン26に流入した排ガスは、反応容器31の内部に流入し、収容部36の酸化カルシウム35と接触する。そうすると、図3(放熱)に示すように、水素原子を含む燃料を燃焼するバーナ27の排ガスに含まれる水蒸気によりケミカルヒートポンプ30の酸化カルシウム35を水和させ、水酸化カルシウム(反応生成物)を生成するとともに熱量Qを発熱する。ここで、弁49,50を開弁すると、図10に示すように、反応熱Qを入口側ライン66を通じて流入した外側容器70の空間43の熱媒体に、反応容器熱交換部71を介して移動させることができる。その後、外側容器70の空間43の熱媒体は外側容器70から流出し、出口側ライン67を流通する。そして、熱風管62から高温の熱媒体が得られる。高温の熱媒体は、他設備に利用することができ、省エネルギーに役立てることができる。一方、反応容器31の内部に流入した排ガスは、反応容器31の上面40から流出し排気ライン22に合流する。
【0042】
次に、図11に示すように、第2取出ライン26の弁42a,42b、入口側ライン66の弁49、および出口側ライン67の弁50を閉弁し、第1取出ライン25の弁38,39を開弁すると、排気ライン22を流通する排ガスの一部は第1取出ライン25に流入する。これにより、第1取出ライン25に流入した排ガスは、反応容器31の収容部36を水酸化カルシウム35と直接接触することなく通過し反応容器31から流出する。その際、第1取出ライン25の排ガスは、第1取出ライン25の外周面である排ガス熱交換部37を介して収容部36の水酸化カルシウム35と熱交換する。すなわち、第1取出ライン25を流通する排ガスの一部の熱は、排ガス熱交換部37を介して水酸化カルシウムに移動する。このようにして移動させた熱を反応容器31の内部に蓄熱させることができ、図3(蓄熱)に示すように、反応容器31の水酸化カルシウムから脱水吸熱反応によって酸化カルシウム35と水蒸気とを生成することができる。
【0043】
反応容器31の収容部36に酸化カルシウム35が生成されると、第1取出ライン25の弁38,39を閉弁し、第2取出ライン26の弁42a,42bを開弁することにより、再び図3(放熱)に示す放熱工程を実行することができる。このようにして、第1取出ライン25の弁38,39が開弁した状態と、第2取出ライン26の弁42a,42bが開弁した状態とを順次切り替えることにより、ケミカルヒートポンプ30を作動させることができる。
【0044】
本発明によれば、入口側ライン66の弁49を開弁して反応容器31と外側容器70の間の空間43に熱媒体を導入し、反応容器31の内部の熱と熱媒体とを熱交換させることができる。そして、反応容器31の内部の熱と熱交換した熱媒体を出口側ライン67の弁50を開弁して出口側ライン67から排出することができる。また、熱媒体への異物の混入を排除することができる。
【0045】
本発明は実施形態のものに限定されず、以下に例示するように種々の変形が可能である。
【0046】
第2実施形態の燃焼設備10において、外側容器70を設ける代わりに、図12に示すように、入口側ライン66と出口側ライン67とを接続ライン72により接続してもよい。この構成によれば、入口側ライン66から導入された熱媒体を接続ライン72を通過させて化学蓄熱材35と熱交換させることができる。そして、化学蓄熱材35と熱交換した熱媒体を出口側ライン67に排出することができる。また、入口側ライン66と出口側ライン67とが接続ライン72により接続された簡易な構成により、熱媒体へ異物の混入を排除することができる。
【0047】
図13に示すように、複数のケミカルヒートポンプ30,30を設置してもよい。この構成によれば、排気ライン22の排気の水蒸気利用による水和発熱反応と、排気の熱利用による脱水吸熱反応を同時に行えるようにでき、随時切り替えることで、連続的に高温の熱媒体が得られる。その利用方法としては、空気供給源20から得られる燃焼用空気を熱風管62から出た高温空気と、熱交換器63で熱交換して、予熱するようにすれば、燃焼設備10自体の省エネが可能となる。この時、熱交換器63を介さずに、熱風管62からの高温空気をそのままバーナ27に利用してもよい。
【0048】
炉11内には被加熱物から発生する酸化スケール、炉構成材である断熱材あるいは不完全燃焼により生ずる煤等の不純物が存在している。そのため、第2取出ライン26から吸引する排ガスには、実際には上記の二酸化炭素以外のその不純物が混じることによる化学蓄熱材35への悪影響が考えられる。このような場合、図14に示すように、バーナ27はラジアントチューブバーナであってもよい。この構成によれば、ラジアントチューブバーナのチューブ73からの放射熱によって、炉11において間接的に加熱することができる。そのため、第2取出ライン26には、上記の不純物が吸引されなくなるという効果がある。この状態において、燃料を水素ガスとし、空気の代わりに純酸素を利用すれば、排気を全て不純物のない水蒸気にできる。
【符号の説明】
【0049】
10 燃焼設備
11 炉
12 燃料ノズル
13,17 噴射口
14,19,38,39 弁
16 燃料供給源
18 空気ノズル
20 空気供給源
21 温度センサ
22 排気ライン
23 ファン
24 排気口
25 第1取出ライン
26 第2取出ライン
27 バーナ
30 ケミカルヒートポンプ
31 反応容器
32 凝縮器
35 化学蓄熱材
36 収容部
37 排ガス熱交換部
40 上面
41 側面
42a,42b 弁
43 空間
46,47 連結部
49 弁
50 弁
51 ドレンライン
52 弁
60 コントローラ
61 送風機
62 熱風管
63 熱交換器
64 共通ライン
66 入口側ライン
67 出口側ライン
68 熱交換部
70 外側容器
71 反応容器熱交換部
72 接続ライン
73 ラジアントチューブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学蓄熱材の水和発熱反応により反応生成物を生成する放熱過程、および前記反応生成物の脱水吸熱反応によって前記化学蓄熱材と水蒸気とを生成する蓄熱過程を有するケミカルヒートポンプを備える燃焼設備において、
水素原子を含む燃料を燃焼するバーナが設けられた炉と、
前記バーナの燃焼により生じた前記炉の内部の排ガスを排気する排気ラインと、
前記化学蓄熱材が収容された反応容器と、
前記排気ラインから分岐し前記反応容器の前記化学蓄熱材を貫通するように配置され弁が介設された第1取出ラインと、
前記排気ラインから分岐して前記排ガスを前記反応容器に導入可能に配置され弁が介設された第2取出ラインと
を備え、
前記第2取出ラインの弁を開弁し、前記第2取出ラインに流入した前記炉の排ガスに含まれる水蒸気と前記化学蓄熱材との水和反応により反応生成物と熱を生成させて前記熱を放熱し、
前記第1取出ラインの弁を開弁し、前記第1取出ラインに流入した前記炉の排ガスの熱を前記化学蓄熱材の反応生成物に吸熱させて前記化学蓄熱材を生成するように蓄熱することを特徴とする燃焼設備。
【請求項2】
前記反応容器の上流側の前記第1取出ラインに一端が連結され、他端が送風機に連結され弁が介設された入口側ラインと、
前記反応容器の下流側の前記第1取出ラインに連結され、弁が介設された出口側ラインと
を備え、
前記入口側ラインおよび前記出口側ラインの弁を開弁し、前記第1取出ラインの弁を閉弁したときに、前記送風機により熱媒体を前記第1取出ラインに送出可能であり、
前記入口側ラインおよび前記出口側ラインの弁を閉弁し、前記第1取出ラインの弁を開弁したときに、前記排気ラインの排ガスを前記第1取出ラインに送出可能であることを特徴とする請求項1に記載の燃焼設備。
【請求項3】
前記反応容器と熱交換可能に熱媒体を導入する弁が介設された入口側ラインと、
前記反応容器と熱交換した前記熱媒体を排出する弁が介設された出口側ラインと
を備えることを特徴とする請求項1に記載の燃焼設備。
【請求項4】
前記反応容器の内部に設けられ、前記化学蓄熱材を貫通して前記熱媒体と前記反応容器の内部の熱とを熱交換させ前記入口側ラインと前記出口側ラインとを接続する接続ラインを備えることを特徴とする請求項3に記載の燃焼設備。
【請求項5】
前記反応容器は反応容器熱交換部が設けられた外面との間に空間を形成するように配置された外側容器を備え、前記入口側ラインと前記出口側ラインとを前記外側容器の空間を介して連通させたことを特徴とする請求項3に記載の燃焼設備。
【請求項6】
前記燃料は水素ガスであることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の燃焼設備。
【請求項7】
前記バーナはラジアントチューブバーナであることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の燃焼設備。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2013−108697(P2013−108697A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255265(P2011−255265)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(000211123)中外炉工業株式会社 (170)
【Fターム(参考)】