説明

爪の外観の改善

【課題】爪の外観の改善の提供。
【解決手段】患者の爪の外観を改善する方法であって、爪甲離床症、爪甲層状分裂症、または爪甲縦裂症からなる群より選択される少なくとも1つの疾患の症状を示す患者の爪に、生体適合性有機溶媒2種以上、極性脂質、界面活性剤、水、尿素、および増粘剤を含む組成物を局所的に塗布することを含み、上記有機溶媒が、エステルおよび二価アルコールおよび/または多価アルコールを含むものである方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、爪の外観を改善するのに有用な組成物に関する。本開示において、局所的にマイクロエマルジョンを塗布することによって、爪甲離床症、爪甲層状分裂症または爪甲縦裂症、および/または割れ爪の症状を示す手足の爪の外観が改善可能であることが見出された。
【背景技術】
【0002】
爪甲離床症は、皮膚科医がしばしば遭遇する爪疾患である。爪甲離床症は、爪甲が末端の遊離縁を発端として基部方向へと自然に剥がれていくのが特徴である。爪甲はその下側および/または側方の支持構造から分離する。頻度は低いが、爪甲の分離が爪の基部から始まり遊離縁まで広がることがあり、これは爪の乾癬(爪甲脱落症と称される)で最も多く見られる。稀な症例では、爪の側方縁に限局している。
【0003】
爪甲離床症の爪は通常、滑らかで堅く炎症反応も無い。これは爪母の疾患ではない。ただ、二次感染の結果、爪の下部が変色することがある。爪甲離床症を発症すると、同時にイースト菌感染症が示唆される。症状を悪化させる第一および第二要因の処置を行うことが重要である。処置せずに放っておくと、重度の爪甲離床症の症例では、瘢痕が爪床に残ることもある。
【0004】
爪甲離床症は、内因性、外因性、遺伝性、および特発性要因によって引き起こされる。接触刺激、外傷および湿気が爪甲離床症の最も代表的な原因であるが、他の関連要因も存在する。内因性要因は、次のような全身性疾患および症状により生じる。アミロイドおよび多発性骨髄腫、貧血(鉄欠乏性)、気管支拡張症、真性糖尿病、造血性ポルフィリン症、ヒスチオサイトーシスX、甲状腺機能亢進症、甲状腺機能低下症、局所貧血(末梢、循環障害)、ライ病、紅斑性狼瘡、神経炎、ペラグラ、尋常性天疱瘡、胸水、晩発性皮膚ポルフィリン症、妊娠、乾癬性関節炎、ライター症候群、サルコイドーシス、強皮症、貝殻爪(shell nail)症候群、梅毒、および黄色爪症候群。また、次のような皮膚疾患に起因することもある。乾癬、扁平苔癬、皮膚炎、多汗症、先天性爪肥厚症、先天性外胚葉欠損、増殖性天疱瘡、線状苔癬、アトピー性皮膚炎、および爪の先天性異常。
【0005】
外因性要因には、皮膚糸状菌症(すなわち、紅色白癬菌(Trichophyton rubrum)、毛瘡白癬菌(Trichophyton mentagrophytes)感染症)、酵母(カンジダ感染症)、バクテリア(シュードモナス感染症)、またはウィルス(単純ヘルペス感染症)等の微生物要因が含まれる。
【0006】
さらに、外因性要因は微生物要因以外(職場で遭遇し得る要因(すなわち職業性爪甲離床症)等)にも起因することがあり、さらに以下の要因に分けられる。機械的要因(機械的な力(外傷)、反復性軽外傷、または浸軟)、または化学的要因(各種爪用化粧料類(メチルメタクリレート単量体、ホルムアルデヒド1〜2%、爪ベースコート/硬化剤、人工爪用2−エチルシアノアクリレート重合体接着剤、爪光沢剤)、ガソリン、塗料除去剤、ジシアノジアミド、チオグリコレート、溶剤、および顕色剤中の硫酸ヒドロキシルアミンによるアレルギー性接触皮膚炎、または、長時間の爪の浸水、菓子・パン製造業者に見られる砂糖に起因する爪甲離床症、および破壊度の高い毒素(例えばフッ化水素酸)への暴露による刺激性接触皮膚炎)。
【0007】
割れ爪は医学的に、割れが水平方向の場合は爪甲層状分裂症、または割れが垂直方向の場合は爪甲縦裂症として知られ、爪甲内で割れが起こる疾患である。これら2疾患はまた、「脆弱爪症候群」とも呼ばれている。
【0008】
この症候群は人口の20%近くの人が発症し、女性および高齢者に最も多く見られる。手を濡らしたり乾燥させたりすることが多いことが割れ爪の最も一般的な原因であるため、住居清掃者、看護士および美容師に多く見られる。さらに、割れ爪は、爪化粧料、爪の処置、並びに、アルカリ、酸、チオグリコレート、溶剤、塩および糖溶液等の様々な化学薬品への暴露によっても引き起こされ得る。爪の損傷もまた、爪の割れを進行させる要因となり得る。乾癬やシェーグレン症候群等の皮膚病、内分泌疾患、栄養失調、およびビタミンA経口薬もまた、割れ爪を引き起こす要因となり得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
抗真菌剤含有製剤をテストするための治験で、その基剤配合製剤自体が患者の爪甲離床症の外観を改善できることが分かった。爪甲離床症の治療に有効な公知の局所的治療法がないため、これは全く予想外の知見であった。
【0010】
割れがみられる爪はまた、爪甲離床症の治療用と類似の製剤によっても治療された。いずれの場合でも、わずか5日間毎日手洗い後に製剤を塗布することによって、爪の割れは改善された。
【0011】
本開示はまた、爪甲離床症、爪甲層状分裂症、または爪甲縦裂症の症状を示す手足の爪の外観を改善する方法であって、ヒトまたは動物の爪に特定の組成物を局所的に塗布することを含む方法に関する。
【0012】
上記組成物は、生体適合性有機溶媒1種以上、極性脂質、界面活性剤1種以上、水、尿素、および増粘剤を含む。上記有機溶媒は、エステル、および/または二価アルコールおよび/または多価アルコールを含む。上記組成物は、上記エステルを約2〜約30重量%、および上記二価アルコールおよび/または多価アルコールを約2〜約20重量%含む。
【0013】
本開示の他の目的および利点は、後述の詳細な説明によって当業者には容易に明らかになるであろう。詳細な説明では、単に、本開示を実施する上で考えられる最良の形態を例示することによって、好ましい実施形態のみを示し記載している。理解されるであろうが、本開示は他の異なる実施形態も採り得るものであり、いくつかの細部については、本開示から逸脱することなく、自明な点は種々改変することが可能である。従って、下記説明は、その性質上、例示的なものであり、本発明はこの説明の内容に限定されるものではない。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書中「局所投与」とは、表皮組織、特に手足の爪(それら爪周辺の皮膚領域も含める)に直接塗布または塗り広げることをいう。
【0015】
本明細書中「含む」という用語は、本発明の組成物および方法において、他の適合する各種成分、例えば不活性成分、閉塞剤、および化粧料基剤、化粧料および/または薬剤を組み合わせて用いることができることをいう。従って「含む」という用語は、必須成分を本明細書中で開示されるように使用することを特徴付ける「〜からなる」および「本質的に〜からなる」というさらに限定的な用語を包括的に含み、包含するものである。
【0016】
本明細書中「罹患部位」とは、見た目に醜悪な爪の局部およびその付近をいう。
【0017】
本明細書中「塗布部位」とは、機械的放出装置で塗布するか包帯を巻くのに適している部位をいい、例えば爪の末端部、爪の上端部、爪の基部などをいう。
【0018】
本明細書中「実質的に含まない」とは、本発明の組成物が、この用語を用いて記載されるあらゆる特定の化合物または化合物群のいずれかを、約10%未満、好ましくは3.5%未満、さらに好ましくは約1%未満、最も好ましくは約0.5%未満しか含まないことをいう。
【0019】
本明細書中、特に明記しない限り、全ての百分率および割合は、全組成物の重量に対するものである。
【0020】
本開示で用いられる組成物は、レシチンまたはホスファチジルコリン等の極性脂質と、1種はエステル群より選択されもう1種は液体二価アルコールおよび脂質多価アルコールから選択される生体適合性有機溶媒2種と、界面活性剤と、水と、尿素とを含み、pH値は約5〜約8.5、好ましくは約6〜約7.5である。本開示の組成物は、皮膚への刺激を緩和したり、組成物の化粧料としての効力または許容度を高めたりする他の任意の成分をさらに含んでいてもよく、当該成分として、例えば皮膚軟化剤、顔料、芳香剤、香料、保存料等が挙げられる。本開示の組成物は、局所活性を示すまたは保持する化粧剤および/または薬学的活性剤を含んでいても含んでいなくてもよい。この場合、本開示の組成物は基剤として用いられる。
【0021】
使用される典型的な極性脂質はレシチンおよびホスファチジルコリンである。高品質で医薬品等級のレシチンまたはホスファチジルコリンであることが好ましい。適当なレシチンおよびホスファチジルコリンを、市販の大豆レシチンまたは大豆ホスファチジルコリンとして得てもよい。本開示の組成物中で使用するのは大豆レシチンであることが好ましい。
【0022】
上記生体適合性有機エステル溶媒は、上記極性脂質および尿素が可溶な無毒のエステルであればいずれでもよい。典型的には、上記エステルは、炭素数4〜22、より典型的には炭素数8〜18の脂肪酸の活性水素を一価アルコール(具体例として炭素数12)のアルキル基で置換することによって得られる構造を有する脂肪酸モノエステルである。脂肪酸は飽和でも不飽和でもよいが、より典型的には飽和脂肪酸である。上記一価アルコールは、典型的には炭素数2〜8、より典型的には炭素数2〜5、具体例としては炭素数3である。
【0023】
本目的のために使用可能なエステルとして、イソプロピルエステルが挙げられるが、これに限定されない。該エステルはミリスチン酸イソプロピルまたはパルミチン酸イソプロピルであるのが好ましく、ミリスチン酸イソプロピルが特に好ましい。
【0024】
上記生体適合性有機二価および多価アルコール溶媒は、上記極性脂質および尿素が可溶な無毒の二価アルコールまたは多価アルコールであればいずれでもよい。本目的のために使用可能な二価アルコールおよび多価アルコールとして、以下に限定されないが、ジ−およびトリ−アルコールアルカンが挙げられる。典型的には、上記アルコールは、炭素数3〜8、より典型的には炭素数3〜5であり、飽和アルコールである。上記多価アルコールはプロピレングリコールまたはグリセロールであるのが好ましく、プロピレングリコールが特に好ましい。
【0025】
本開示の組成物は、典型的には約2〜30重量%、より典型的には4〜10重量%の上記エステルと、約2〜約20重量%、より典型的には2〜約10重量%の二価/多価アルコールとを含む。
【0026】
本開示の組成物の製造において、上記極性脂質は典型的には、上記有機エステル溶媒および二価若しくは多価アルコール溶媒に、約5:1:1〜約1:5:5の質量比で溶解させる。極性脂質、有機エステル溶媒および多価アルコール溶媒は、同質量比で混合するのが好ましい。従って、本開示の一実施形態において、大豆レシチン、ミリスチン酸イソプロピルおよびプロピレングリコールを同質量比で混合し、レシチンが均一に分布するまで混合し続ける。これを溶媒−極性脂質混合物と呼ぶ。
【0027】
製剤中、界面活性剤は典型的には、最終組成物質量に対して約0.5%〜約20%の濃度で含まれる。本開示によれば、ポリ陽イオン性活性剤を含む製剤では、非イオン性または陽イオン性界面活性剤が好ましいということがわかっている。一方、他の活性成分を含むかまたは活性成分を含まない場合は、陰イオン性、陽イオン性または非イオン性界面活性剤が良好に使用できる。界面活性剤は、望ましくない副作用を誘起することなく生体内投与に適合しているのが好ましい。好ましい界面活性剤の例は、ドキュセートナトリウムおよびそのさらに水溶性の高い形態であるドキュセートナトリウム安息香酸塩である。その他、適当なイオン性または非イオン性界面活性剤として、例えばポリソルベート80、ツイン80、ポロキサマー、イブプロフェン、ドキュセートカルシウム、テトラデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ペンタオキシエチレングリコールモノドデシルエーテル、またはラウレス硫酸トリエタノールアミンが挙げられる。一旦、界面活性剤を溶媒−極性脂質混合物に十分に分散させてしまえば、所望により化粧料化合物または薬学的活性化合物を加え溶解させてもよい。そのような活性化合物としては、例えば、手足の爪の外観を悪くさせる他の要因を改善したり、組成物の応答時間を短くしたりできる抗増殖/抗炎症化合物が挙げられる。しかしながら、本開示の組成物は、そのような活性剤が必要ではなく、そのような活性剤を含まないのが好ましい。
【0028】
化粧料化合物または薬学的活性化合物を使用する場合にはそれを添加した後で、ある一定量の尿素を好ましくは濃水溶液として上記界面活性剤と溶媒と極性脂質との混合物に添加してもよい。尿素は典型的には、最終組成物質量に対し、約1質量%〜約20質量%、より典型的には約1質量%〜約15質量%、さらにより典型的には約5質量%〜10質量%の尿素濃度となるように添加する。
【0029】
増粘剤は国民医薬品集に記載の一般的な増粘剤から選択され、例えば、以下に限定されないが、適当な高分子重量のポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、カルボマー、アルギン酸塩、ゴム、およびメチルセルロースが挙げられる。増粘剤の量は、典型的には約0.01重量%〜約5重量%、より典型的には約0.05重量%〜約5重量%である。
【0030】
従って、特定の例では、0.9%のカルボマー974Pを含む10%尿素水溶液約5gを、上記界面活性剤と溶媒と極性脂質との混合物約100gに添加する。いずれにせよ、これは、本開示を知った当業者ならば製造する具体的な製剤に応じて容易に選択できるものである。
【0031】
上記組成物を製剤化する際、pHは典型的にはpH約5〜約8.5、より典型的には6〜7.5に調整する。これは、上記組成物が初めは酸性pHを呈する傾向にあることから、例えば水酸化ナトリウム水溶液を添加することにより達成できる。しかしながら、上記薬学的活性剤が強アルカリ溶液を生成する傾向がある場合は、pHを下げるために酸を添加するのが望ましい。この場合、クエン酸や、炭酸ナトリウムまたはリン酸カリウム等の生理的緩衝液を添加することにより達成できる。組成物のpHが約5.5〜7.5の範囲であると、製剤の粘度が高まり、局所投与において安定したマイクロエマルジョンとなる。
【0032】
本開示を知った当業者ならば、上記記載の本組成物の成分を用いて通常の実験を行うことにより、抗炎症または抗菌の多様な用途で使用できる、活性成分やその組み合わせをさらに含んでいてもよい種々の特定のゲルを調製することができるであろう。さらに上記組成物は、例えば以下に限定されないが保存料や香料等の当技術分野で従来公知および/または使用されているものなどといった助剤を含有していてもよいことが理解できる。
【0033】
製造を容易にするため、局所投与用最終組成物の製剤化において他の構成成分に添加することが可能な第1ゲル組成物(本明細書中では「MQXゲル」と称する)を製造するのが簡便である。MQXゲルには幾つかの配合が考えられる。例えば、MQXゲルは、レシチン、ミリスチン酸イソプロピルおよびプロピレングリコールの1:1:1(m/m/m)混合物であるレシチンオルガノゲル(L.O.)を、LIDオイル(L.O.とドキュセートナトリウムとの1:1(m/m)混合物)と混合し、その混合物に界面活性剤および/またはドキュセートナトリウム粉末を添加して溶解した後、濃尿素水溶液を添加することによって製造することもできる。
【0034】
MQXゲル配合の一実施形態では、最終濃度は、L.O.=30%、ドキュセートナトリウム=9%、尿素=5%、増粘剤=1%、および水=55%である。これらの比率は、各成分の最終量が以下の通りとなるように容易に変更することができる。L.O.=15〜50%、ドキュセートナトリウムおよび/または他の界面活性剤=3〜20%、尿素=1〜15%、増粘剤=0.5〜5%、および水=40〜65%。さらに、可溶化した活性成分をMQXゲルに添加してもよい。活性成分を使用する場合にその活性成分を可溶化するのに有用であり得る賦形剤としては、L.O.、プロピレングリコール、ミリスチン酸イソプロピル、リモネン、ペパーミントオイル、グリセリン、および/またはポリエチレングリコールが挙げられる。そして、上記各種成分を慎重に混ぜ合わせることで、均一な混合物を得る。
【0035】
上記製剤を製造してしまえば、製剤を使用するには、経皮送達が望まれる罹患部位に製剤を単に塗布するだけである。よって、割れ爪の場合は、上記製剤を手足の爪の罹患部位に擦り込む。本発明に従い製造した製剤を使用すると、毎日塗布することで5日以内に、割れのない正常な爪の外観に戻った。症状が再発する場合は、治療を繰り返す。
【0036】
同様に、爪甲離床症の場合は、上記製剤を手足の爪の罹患部位に擦り込む。本発明に従い製造した製剤を使用すると、毎日塗布することで4ヶ月以内に、正常な爪の外観に戻った。症状が再発する場合は、治療を繰り返す。
【0037】
本発明の組成物は、局所反応の問題が起こらない限り、必要に応じた頻度で局所的に塗布できると考えられる。
【0038】
上記記載によって、どのように本開示を実施するかを概ね説明しているが、下記実施例によって、さらに具体的に本発明の実施方法を示す。しかしながら、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲に説明されている通りであって、下記実施例の具体的記載内容に限定されないことを明確に理解すべきである。さらに、記載および請求する具体的な組成物において、構成成分の比率は少なくとも10%相違した量の範囲内であってもよく、その比率でも具体的に開示されている組成物と同等の目的を達成できることを理解すべきである。
【0039】
通常、上記製剤は以下範囲の成分を含む。
【0040】
【表1】

【0041】
試験を行った具体的な製剤は以下の通りである。
【0042】
【表2】

【0043】
さらに、試験を行った製剤は以下の通りである。
【0044】
【表3】

【0045】
【表4】

【0046】
本開示を以下の実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【実施例】
【0047】
実施例1:MQXゲルの製造
【0048】
【表5】

* LIDオイルは、レシチンオルガノゲルとドキュセートナトリウムとの質量比1:1の混合物である。
**L.O.は、レシチン、ミリスチン酸イソプロピルおよびプロピレングリコールの1:1:1の混合物である。
【0049】
1.LIDをL.O.に加えて加熱した。
2.ドキュセートナトリウム粉末を加え、得られた混合物を滑らかになるまで攪拌した。
3.増粘剤と尿素とを水に完全に溶解し、加熱後、工程2の混合物に攪拌しながら添加した。
4.pHを6.5〜6.9に調整した。
【0050】
MQXゲルは以下のように容易に製造することもできる。
【0051】
【表6】

【0052】
L.O.を加熱し、加熱したL.O.にドキュセートナトリウム安息香酸塩粉末を添加し、滑らかな溶液となるまで攪拌した。水を加熱し、そこに増粘剤および尿素を溶解させた。得られた濃尿素溶液を、上記ドキュセートナトリウムを含むL.O.溶液と十分に混合した。その結果、pH約6.0の均一で透明琥珀色のゲルを得た。
【0053】
MQXゲルの更なる製造方法は以下の通りである。
【0054】
【表7】

【0055】
LIDとL.O.をよく混合した。水、増粘剤および尿素の加熱溶液を調製し、上記LID−L.O.溶液に添加した。その結果、pH約6.0の均一で透明琥珀色のゲルを得た。
【0056】
実施例2と同様の方法で各成分を混合する。
【0057】
MQXゲルは、レシチンオルガノゲルの3つの構成成分の比率を変えて製造することもできる。以下の実施例では、レシチンオルガノゲル(L.O.#2)の比率は、レシチン、ミリスチン酸イソプロピルおよびプロピレングリコールを1:0.9:0.1(m/m/m)の比率の混合物とし、LIDオイル(L.O.#2とドキュセートナトリウムとの1:1(m/m)混合物)を添加し、得られた混合物に、界面活性剤および/またはドキュセートナトリウム粉末を加え溶解した後、濃尿素水溶液を添加する。
【0058】
このMQXゲル配合の実施態様では、最終濃度は以下の通りである。L.O.#2=25%、ドキュセートナトリウム=10%、尿素=10%、増粘剤=1%、および水=54%。これらの比率は、各成分の最終量が以下の通りとなるように容易に変更することもできる。L.O.#2=15〜50%、ドキュセートナトリウムおよび/または他の界面活性剤=3〜15%、尿素=1〜15%、増粘剤=0.5〜5%、および水=40〜65%。さらに、可溶化した活性成分を所望によりMQXゲルに添加してもよい。活性成分を使用する場合にその活性成分を可溶化するのに有用であり得る賦形剤としては、L.O.#2、プロピレングリコール、ミリスチン酸イソプロピル、ペパーミントオイル、グリセリン、および/またはポリエチレングリコールが挙げられる。そして、上記各種成分を慎重に混ぜ合わせることで、均一な混合物を得る。
【0059】
実施例3:他のMQXゲルの製造
【0060】
【表8】

【0061】
実施例2と同様の方法で各成分を混合する。
【0062】
実施例4:他のMQXゲルの製造
【0063】
【表9】

【0064】
本実施例では、上記製造方法と同様の方法を用いた。
【0065】
実施例5:他のMQXゲルの製造
【0066】
【表10】

【0067】
1.プロピレングリコールをL.O.#2に加え、攪拌して透明溶液を得る。
2.ドキュセートナトリウムを工程1で得た溶液に加え、攪拌して透明溶液を得る。
3.尿素を蒸留水に加え、加熱、攪拌して均一な溶液を得る。
4.カルボマー974Pおよびメチルセルロースを添加して、工程3の尿素水溶液の粘性を高める。
5.工程2の溶液と工程4の濃尿素水溶液とを混ぜ、均一な混合物とする。
6.希釈水酸化ナトリウム水溶液でpHを6.5に調整し、滑らかで高粘度のマイクロエマルジョンを得る。
【0068】
上記説明により本開示を例示し、記載している。さらに、上記説明は本開示の好ましい実施形態のみを示し記載しているが、上述の通り、本明細書で説明した本発明の趣旨の範囲内で、上記教示および/または関連技術の技術若しくは知識と相応する範囲において、変更または改変が可能であると理解されるべきである。さらに、上述の各実施形態は、本発明を実施する上で本出願人が分かっている最良の形態を説明することを意図したものであり、かつ、このような実施形態として、あるいは別の実施形態として、また、本開示を具体的に適用若しくは使用するにあたって必要とされる各種の改変をさらに施して、当業者が本開示を利用できるよう意図したものである。すなわち、本説明は本明細書中で開示された形態に本発明を制限するものではない。また、添付の特許請求の範囲は、代替の実施形態も含むと解されるものである。
【0069】
本明細書中に引用する全ての刊行物、特許および特許出願は、それぞれ個別の刊行物、特許または特許出願が具体的にかつ独立して参照として援用されるように、本明細書に引用して援用され、あらゆる目的のためのものである。不一致がある場合、本開示が優先されよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
爪甲離床症患者の爪の外観を改善する方法であって、
爪甲離床症、爪甲層状分裂症、または爪甲縦裂症からなる群より選択される少なくとも1つの疾患の症状を示す患者の爪に、生体適合性有機溶媒2種、極性脂質、界面活性剤1種以上、水、尿素、および増粘剤を含む組成物を局所的に塗布することを含み、
前記有機溶媒は、エステルおよび二価アルコールおよび/または多価アルコールを含み、
前記組成物は、前記エステルを約2〜約30%、並びに前記二価アルコールおよび/または多価アルコールを約0.5〜約20%含むものである方法。
【請求項2】
前記エステルが脂肪酸モノエステルである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記エステルは、炭素数4〜22の脂肪酸の活性水素を、炭素数2〜約8の一価アルコールのアルキル基で置換することによって得られる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記エステルが、イソプロピルエステルである、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記エステルが、ミリスチン酸イソプロピルまたはパルミチン酸イソプロピルのうちの少なくとも1つである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記エステルが、ミリスチン酸イソプロピルである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記二価アルコールまたは多価アルコールが、炭素数3〜8のアルカンアルコールである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記アルコールが、プロピレングリコールまたはグリセロールのうちの少なくとも1つである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記アルコールが、プロピレングリコールである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記極性脂質が、レシチンまたはホスファチジルコリンのうちの少なくとも1つである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記1種以上の界面活性剤が、ドキュセートナトリウム、ドキュセートナトリウム安息香酸塩、ドキュセートカルシウム、ポロキサマー、イブプロフェン、テトラデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ペンタオキシエチレングリコールモノドデシルエーテル、およびラウレス硫酸トリエタノールアミンからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記増粘剤が、ポリエチレングリコール、メチルセルロース、およびカルボマーからなる群より選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項13】
前記極性脂質の含有量が約5〜約30重量%、前記界面活性剤の含有量が約0.5〜約20重量%、前記水の含有量が約30〜約65重量%、および前記増粘剤の含有量が約0.01〜約5重量%である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記尿素の含有量が約5〜約10重量%、前記界面活性剤の含有量が約0.5〜約20重量%、前記水の含有量が約35〜約65重量%、および前記増粘剤の含有量が約0.05〜約5重量%である、請求項1に記載の方法。

【公表番号】特表2011−520773(P2011−520773A)
【公表日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−545177(P2010−545177)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【国際出願番号】PCT/US2009/032510
【国際公開番号】WO2009/097471
【国際公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【出願人】(500023990)メディクエスト セラピューティックス インク (9)
【Fターム(参考)】