爪係止部構造
【課題】主に、係止状態における係止用爪片の外れを防止し得るようにする。
【解決手段】係止用爪片5と、係止用爪片5を収容係止可能な爪孔部6とを備え、爪孔部6が、横桟部12と、一対の縦桟部13とを、平面視ほぼコ字に接続して成る枠状突起14の内側に形成されると共に、爪孔部6が、係止用爪片5の幅寸法よりも若干長い横寸法と、係止用爪片5の厚さ寸法よりも若干短い縦寸法とを有する爪係止部構造であって、枠状突起14を、弾性による変形復帰が可能な構造を有する弾性構造体21としている。
【解決手段】係止用爪片5と、係止用爪片5を収容係止可能な爪孔部6とを備え、爪孔部6が、横桟部12と、一対の縦桟部13とを、平面視ほぼコ字に接続して成る枠状突起14の内側に形成されると共に、爪孔部6が、係止用爪片5の幅寸法よりも若干長い横寸法と、係止用爪片5の厚さ寸法よりも若干短い縦寸法とを有する爪係止部構造であって、枠状突起14を、弾性による変形復帰が可能な構造を有する弾性構造体21としている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、爪係止部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両には、多数の電気接続箱が設けられている。このような電気接続箱は、少なくとも、回路基板と、この回路基板を収容保護する樹脂製の保護ケースとを備えている。
【0003】
図6〜図8に示すように、このような保護ケース1には、上ケース2と下ケース3とを有して、両者を爪係止部4によって係止固定させるようにしたものが存在している。
【0004】
この爪係止部4は、係止用爪片5と、この係止用爪片5を収容係止可能な爪孔部6とを備えている。この場合、係止用爪片5は、上ケース2に一体形成されている。また、爪孔部6は、下ケース3に一体形成されている。係止用爪片5と爪孔部6とは、それぞれ対応する位置に設けられている。
【0005】
係止用爪片5は、主に、下ケース3に対する上ケース2の嵌合方向aへ延びる突片部7によって構成されており、この突片部7の先端には、導入テーパ部8および係止面部9を有する爪部10が設けられている。
【0006】
そして、爪孔部6は、横桟部12と、一対の縦桟部13とを、平面視ほぼコ字に接続して成る枠状突起14の内側に形成されている。この爪孔部6は、係止用爪片5の幅寸法よりも若干長い横寸法と、係止用爪片5の厚さ寸法よりも若干短い縦寸法とを有している。
【0007】
ここで、横桟部12と縦桟部13とは、それぞれ、均一肉厚を有する直線状物とされている。また、横桟部12と縦桟部13とは、対応する端部において均一肉厚を維持しつつほぼ直角に交わるコーナー部分15にて接続されている。即ち、横桟部12と縦桟部13とは、素材による弾性を若干有してはいるものの、端部間が互いの弾性変形を拘束し合うような強固な接続が成されているので、構造的には、弾性による変形が起こり難い構成とされている。
【0008】
なお、上ケース2と下ケース3とは、図面の都合により、それぞれ形状を省略されている。図中、符号2aは上ケース2の天板部、2bは上ケース2の側板部である。また、符号3aは下ケース3の底板部、3bは下ケース3の側板部である。
【0009】
このような構成において、図6〜図8に順に示すように、下ケース3に対して上ケース2を嵌合することにより、同時に、下ケース3の爪孔部6に上ケース2の係止用爪片5が収容係止され、下ケース3と上ケース2とが固定される。
【特許文献1】特開2005−181270
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記爪係止部構造では、係止時に、図7、図8に順に示すように、縦桟部13が撓んで外側へ膨らむことによって、爪部10を爪孔部6へ通すようにしていたが、上記したように、枠状突起14が弾性変形し難い構造を有しているため、爪部10の通過後に、縦桟部13が、図9に示すような元の状態には復帰せず、図10に示すように、外側への膨らみが残った状態となってしまう。そのため、係止面部9と横桟部12との間は、図9に示すような、充分なかかり代16を得ることができず、図10に示すように、かかり代16が少なくなるので、図11に示すように、爪係止部4が外れ易くなるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、請求項1に記載された発明では、係止用爪片と、該係止用爪片を収容係止可能な爪孔部とを備え、該爪孔部が、横桟部と、一対の縦桟部とを、平面視ほぼコ字に接続して成る枠状突起の内側に形成されると共に、爪孔部が、係止用爪片の幅寸法よりも若干長い横寸法と、係止用爪片の厚さ寸法よりも若干短い縦寸法とを有する爪係止部構造において、前記枠状突起を、弾性による変形復帰が可能な構造を有する弾性構造体としたことを特徴としている。
【0012】
請求項2に記載された発明では、前記弾性構造体が、横桟部に、内側へ凹となる湾曲形状を呈して、弾性による変形復帰が可能なバネ辺部を有する請求項1記載の爪係止部構造を特徴としている。
【0013】
請求項3に記載された発明では、前記弾性構造体が、横桟部と縦桟部とのコーナー部分に、弾性変形を許容可能な樹脂ヒンジ部を有する請求項1または請求項2記載の爪係止部構造を特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によれば、係止用爪片と、該係止用爪片を収容係止可能な爪孔部とを備え、該爪孔部が、横桟部と、一対の縦桟部とを、平面視ほぼコ字に接続して成る枠状突起の内側に形成されると共に、爪孔部が、係止用爪片の幅寸法よりも若干長い横寸法と、係止用爪片の厚さ寸法よりも若干短い縦寸法とを有する爪係止部構造において、前記枠状突起を、弾性による変形復帰が可能な構造を有する弾性構造体としたことにより、以下のような作用効果を得ることができる。即ち、枠状突起を弾性構造体として、弾性による変形復帰を行わせ得るようにしたことにより、係止用爪片の通過後に、枠状突起をほぼ完全に元の状態に復帰させることが可能となるので、係止用爪片のかかり代が少なくなって外れ易くなることを防止することができる。以て、係止状態における係止用爪片の爪孔部からの外れの問題をほぼ解消することが可能となる。
【0015】
請求項2の発明によれば、前記弾性構造体が、横桟部に、内側へ凹となる湾曲形状を呈して、弾性による変形復帰が可能なバネ辺部を有することにより、湾曲形状のバネ辺部が、ほぼ真直ぐに伸びたり湾曲形状に戻ったりすることで、枠状突起を、弾性による変形復帰が可能なものとすることができる。また、横桟部を、湾曲形状のバネ辺部とすることにより、大きな変形復帰量を確保することができる。更に、横桟部を、内側へ凹となる湾曲形状とすることにより、直線形状の場合に比べて大きなかかり代を確保することができる。
【0016】
請求項3の発明によれば、前記弾性構造体が、横桟部と縦桟部とのコーナー部分に、弾性変形を許容可能な樹脂ヒンジ部を有することにより、コーナー部分の樹脂ヒンジ部によって横桟部と縦桟部との端部どうしが近接離反動することで、枠状突起を、弾性による変形復帰が可能なものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を具体化した実施例について、図示例と共に説明する。
【実施例】
【0018】
図1〜図5は、この発明の実施例を示すものである。
【0019】
まず、構成について説明する。
【0020】
自動車などの車両には、多数の電気接続箱が設けられている。このような電気接続箱は、少なくとも、回路基板と、この回路基板を収容保護する樹脂製の保護ケースとを備えている。
【0021】
図1〜図3に示すように、このような保護ケース1には、上ケース2と下ケース3とを有して、両者を爪係止部4によって係止固定させるようにしたものが存在している。
【0022】
この場合、上ケース2は蓋体などとされ、下ケース3は容器体などとされている。上ケース2は、天板部2aと両側板部2bとを有する下向きU字断面形状を呈している。また、下ケース3は、底板部3aと両側板部3bとを有する上向きU字断面形状を呈している。そして、上ケース2は、下ケース3よりも一回り大きく形成されて、下ケース3に外嵌され得るように構成されている。即ち、組付完了状態で、上ケース2の側板部2bの内面が、下ケース3の側板部3bの外面に、ほぼ摺接した状態で嵌合され得るように構成されている。なお、図面の都合により、上ケース2および下ケース3は、その形状を省略して描かれている。即ち、上ケース2は、実際よりもかなり狭幅に描かれていると共に、下ケース3は、断面の半分のみが描かれている。保護ケース1については、これに限るものではない。
【0023】
上記した爪係止部4は、係止用爪片5と、この係止用爪片5を収容係止可能な爪孔部6とを備えている。
【0024】
この場合、係止用爪片5は、上ケース2の側板部2b(の下端部)に一体形成されている。また、爪孔部6は、下ケース3の側板部3b(の外面部分)に一体形成されている。係止用爪片5と爪孔部6とは、それぞれ対応する位置に設けられている。
【0025】
係止用爪片5は、主に、下ケース3に対する上ケース2の嵌合方向aへ延びる突片部7によって構成されており、この突片部7の先端には、導入テーパ部8および係止面部9を有する爪部10が設けられている。係止用爪片5は、全体にほぼ均一幅のものとされている。突片部7は、均一肉厚を有するものとされている。爪部10は、この突片部7から外方へ張出すように形成されている。
【0026】
そして、爪孔部6は、横桟部12と、一対の縦桟部13とを、平面視ほぼコ字に接続して成る枠状突起14の内側に形成されている。横桟部12は、一対の縦桟部13の先端部間に接続される。横桟部12と縦桟部13とは、それぞれほぼ均一肉厚を有するものとされている。なお、一対の縦桟部13の基端部間に、補強桟部14aを設けて、枠状突起14を平面視ほぼロ字などとしても良い。この場合、補強桟部14aは、下ケース3の側板部3bの肉厚を利用することができるため、また、側板部3bと係止用爪片5との間の隙間が余り大きくならないようにするため、などの理由により、薄肉に構成されている。
【0027】
この際、爪孔部6は、係止用爪片5の(最大)幅寸法よりも若干長い横寸法と、係止用爪片5の(爪部10を含めた最大)厚さ寸法よりも若干短い縦寸法とを有している。なお、この場合の横寸法は、直線距離を示している。
【0028】
また、爪係止部4を係止固定状態とした時に、係止用爪片5の爪部10における係止面部9が、枠状突起14における横桟部12の図中下面側に対して、所要のかかり代を有して係止されるような寸法関係に設定されている。
【0029】
以上の構成は、上記した従来例のものとほぼ同様である。
【0030】
そして、以上のような基本構成に対し、この実施例のものでは、上記した枠状突起14を、弾性による変形復帰が可能な構造を有する弾性構造体21とする。即ち、素材による弾性を消極的に利用するのではなく、構造としての弾性を積極的に利用し得るようなものとする。
【0031】
より具体的には、例えば、図4、図5に示すように、弾性構造体21が、横桟部12に、内側へ凹となる湾曲形状を呈して、弾性による変形復帰が可能なバネ辺部22を有する構成とする。
【0032】
この場合、バネ辺部22は、係止用爪片5の爪部10における導入テーパ部8が差込可能な程度の湾曲形状とする。
【0033】
そして、弾性構造体21が、横桟部12と縦桟部13とのコーナー部分15(またはその近傍)に、弾性変形を許容可能な樹脂ヒンジ部24を有する構成とする。
【0034】
この場合、樹脂ヒンジ部24は、上記コーナー部分15における横桟部12の両端部の内外両面に対し、縦向きの溝部25を形成して部分的に薄肉化することによって形成されている。なお、縦向きの溝部25は、片面側のみに設けるようにすることもできる。
【0035】
また、横桟部12のバネ辺部22と、コーナー部分15の樹脂ヒンジ部24とは、両方設けるようにしても、そのいずれか一方を設けるようにしても良いが、両方設けることにより、それぞれの機能を倍加させることが可能となる。
【0036】
次に、この実施例の作用について説明する。
【0037】
図1〜図3に順に示すように、下ケース3に対して上ケース2を嵌合することにより、同時に、下ケース3の爪孔部6に上ケース2の係止用爪片5が収容係止され、下ケース3と上ケース2とが固定される。
【0038】
この実施例によれば、係止用爪片5と、係止用爪片5を収容係止可能な爪孔部6とを備え、爪孔部6が、横桟部12と、一対の縦桟部13とを、平面視ほぼコ字に接続して成る枠状突起14の内側に形成されると共に、爪孔部6が、係止用爪片5の幅寸法よりも若干長い横寸法と、係止用爪片5の厚さ寸法よりも若干短い縦寸法とを有する爪係止部構造において、枠状突起14を、弾性による変形復帰が可能な構造を有する弾性構造体21としたことにより、以下のような作用効果を得ることができる。
【0039】
即ち、枠状突起14を弾性構造体21として、弾性による変形復帰を行わせ得るようにしたことにより、係止用爪片5の通過後に、枠状突起14をほぼ完全に元の状態に復帰させることが可能となるので、枠状突起14が元の状態に復帰しないことにより係止用爪片5のかかり代が少なくなって外れ易くなるようなことを防止することができる。以て、係止状態における係止用爪片5の爪孔部6からの外れの問題をほぼ解消することが可能となる。
【0040】
より具体的には、例えば、図4、図5に示すように、弾性構造体21が、横桟部12に、内側へ凹となる湾曲形状を呈して、弾性による変形復帰が可能なバネ辺部22を有することにより、湾曲形状のバネ辺部22が、係止用爪片5の挿入に併せてほぼ真直ぐに伸びたり湾曲形状に戻ったりすることで、枠状突起14を、弾性による変形復帰が可能なものとすることができる。
【0041】
また、横桟部12を、湾曲形状のバネ辺部22とすることにより、大きな変形復帰量を確保することができる。
【0042】
更に、横桟部12を、内側へ凹となる湾曲形状とすることにより、横桟部12が直線形状の場合に比べて大きなかかり代を確保することができる。
【0043】
或いは、弾性構造体21が、横桟部12と縦桟部13とのコーナー部分15に、弾性変形を許容可能な樹脂ヒンジ部24を有することにより、コーナー部分15の樹脂ヒンジ部24によって横桟部12と縦桟部13との端部どうしが近接離反動することで、枠状突起14を、弾性による変形復帰が可能なものとすることができる。
【0044】
更に、横桟部12のバネ辺部22と、コーナー部分15の樹脂ヒンジ部24とは、両方設けることが可能であり、これらを組合せることによって、枠状突起14は、より大きな変形復帰量を得ることができると共に、弾性による変形復帰をより容易で自然なものとすることができる。
【0045】
以上、この発明の実施例を図面により詳述してきたが、実施例はこの発明の例示にしか過ぎないものであるため、この発明は実施例の構成にのみ限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含まれることは勿論である。また、例えば、各実施例に複数の構成が含まれている場合には、特に記載がなくとも、これらの構成の可能な組合せが含まれることは勿論である。また、複数の実施例や変形例が示されている場合には、特に記載がなくとも、これらに跨がった構成の組合せのうちの可能なものが含まれることは勿論である。また、図面に描かれている構成については、特に記載がなくとも、含まれることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施例にかかる爪係止部構造を部分的に拡大した分解状態の斜視図である。
【図2】図1の組付途中の状態を示す斜視図である。
【図3】図1の組付完了時の状態を示す斜視図である。
【図4】図1の枠状突起の平面図である。
【図5】図4の枠状突起が変形した状態を示す平面図である。
【図6】従来例にかかる爪係止部構造を部分的に拡大した分解状態の斜視図である。
【図7】図6の組付途中の状態を示す斜視図である。
【図8】図1の組付完了時の状態を示す斜視図である。
【図9】図6の枠状突起のかかり代を示す平面図である。
【図10】図6の枠状突起の実際のかかり代を示す平面図である。
【図11】図6の爪係止部構造が外れた状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0047】
5 係止用爪片
6 爪孔部
12 横桟部
13 縦桟部
14 枠状突起
15 コーナー部分
21 弾性構造体
22 バネ辺部
24 樹脂ヒンジ部
【技術分野】
【0001】
この発明は、爪係止部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両には、多数の電気接続箱が設けられている。このような電気接続箱は、少なくとも、回路基板と、この回路基板を収容保護する樹脂製の保護ケースとを備えている。
【0003】
図6〜図8に示すように、このような保護ケース1には、上ケース2と下ケース3とを有して、両者を爪係止部4によって係止固定させるようにしたものが存在している。
【0004】
この爪係止部4は、係止用爪片5と、この係止用爪片5を収容係止可能な爪孔部6とを備えている。この場合、係止用爪片5は、上ケース2に一体形成されている。また、爪孔部6は、下ケース3に一体形成されている。係止用爪片5と爪孔部6とは、それぞれ対応する位置に設けられている。
【0005】
係止用爪片5は、主に、下ケース3に対する上ケース2の嵌合方向aへ延びる突片部7によって構成されており、この突片部7の先端には、導入テーパ部8および係止面部9を有する爪部10が設けられている。
【0006】
そして、爪孔部6は、横桟部12と、一対の縦桟部13とを、平面視ほぼコ字に接続して成る枠状突起14の内側に形成されている。この爪孔部6は、係止用爪片5の幅寸法よりも若干長い横寸法と、係止用爪片5の厚さ寸法よりも若干短い縦寸法とを有している。
【0007】
ここで、横桟部12と縦桟部13とは、それぞれ、均一肉厚を有する直線状物とされている。また、横桟部12と縦桟部13とは、対応する端部において均一肉厚を維持しつつほぼ直角に交わるコーナー部分15にて接続されている。即ち、横桟部12と縦桟部13とは、素材による弾性を若干有してはいるものの、端部間が互いの弾性変形を拘束し合うような強固な接続が成されているので、構造的には、弾性による変形が起こり難い構成とされている。
【0008】
なお、上ケース2と下ケース3とは、図面の都合により、それぞれ形状を省略されている。図中、符号2aは上ケース2の天板部、2bは上ケース2の側板部である。また、符号3aは下ケース3の底板部、3bは下ケース3の側板部である。
【0009】
このような構成において、図6〜図8に順に示すように、下ケース3に対して上ケース2を嵌合することにより、同時に、下ケース3の爪孔部6に上ケース2の係止用爪片5が収容係止され、下ケース3と上ケース2とが固定される。
【特許文献1】特開2005−181270
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記爪係止部構造では、係止時に、図7、図8に順に示すように、縦桟部13が撓んで外側へ膨らむことによって、爪部10を爪孔部6へ通すようにしていたが、上記したように、枠状突起14が弾性変形し難い構造を有しているため、爪部10の通過後に、縦桟部13が、図9に示すような元の状態には復帰せず、図10に示すように、外側への膨らみが残った状態となってしまう。そのため、係止面部9と横桟部12との間は、図9に示すような、充分なかかり代16を得ることができず、図10に示すように、かかり代16が少なくなるので、図11に示すように、爪係止部4が外れ易くなるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、請求項1に記載された発明では、係止用爪片と、該係止用爪片を収容係止可能な爪孔部とを備え、該爪孔部が、横桟部と、一対の縦桟部とを、平面視ほぼコ字に接続して成る枠状突起の内側に形成されると共に、爪孔部が、係止用爪片の幅寸法よりも若干長い横寸法と、係止用爪片の厚さ寸法よりも若干短い縦寸法とを有する爪係止部構造において、前記枠状突起を、弾性による変形復帰が可能な構造を有する弾性構造体としたことを特徴としている。
【0012】
請求項2に記載された発明では、前記弾性構造体が、横桟部に、内側へ凹となる湾曲形状を呈して、弾性による変形復帰が可能なバネ辺部を有する請求項1記載の爪係止部構造を特徴としている。
【0013】
請求項3に記載された発明では、前記弾性構造体が、横桟部と縦桟部とのコーナー部分に、弾性変形を許容可能な樹脂ヒンジ部を有する請求項1または請求項2記載の爪係止部構造を特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によれば、係止用爪片と、該係止用爪片を収容係止可能な爪孔部とを備え、該爪孔部が、横桟部と、一対の縦桟部とを、平面視ほぼコ字に接続して成る枠状突起の内側に形成されると共に、爪孔部が、係止用爪片の幅寸法よりも若干長い横寸法と、係止用爪片の厚さ寸法よりも若干短い縦寸法とを有する爪係止部構造において、前記枠状突起を、弾性による変形復帰が可能な構造を有する弾性構造体としたことにより、以下のような作用効果を得ることができる。即ち、枠状突起を弾性構造体として、弾性による変形復帰を行わせ得るようにしたことにより、係止用爪片の通過後に、枠状突起をほぼ完全に元の状態に復帰させることが可能となるので、係止用爪片のかかり代が少なくなって外れ易くなることを防止することができる。以て、係止状態における係止用爪片の爪孔部からの外れの問題をほぼ解消することが可能となる。
【0015】
請求項2の発明によれば、前記弾性構造体が、横桟部に、内側へ凹となる湾曲形状を呈して、弾性による変形復帰が可能なバネ辺部を有することにより、湾曲形状のバネ辺部が、ほぼ真直ぐに伸びたり湾曲形状に戻ったりすることで、枠状突起を、弾性による変形復帰が可能なものとすることができる。また、横桟部を、湾曲形状のバネ辺部とすることにより、大きな変形復帰量を確保することができる。更に、横桟部を、内側へ凹となる湾曲形状とすることにより、直線形状の場合に比べて大きなかかり代を確保することができる。
【0016】
請求項3の発明によれば、前記弾性構造体が、横桟部と縦桟部とのコーナー部分に、弾性変形を許容可能な樹脂ヒンジ部を有することにより、コーナー部分の樹脂ヒンジ部によって横桟部と縦桟部との端部どうしが近接離反動することで、枠状突起を、弾性による変形復帰が可能なものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を具体化した実施例について、図示例と共に説明する。
【実施例】
【0018】
図1〜図5は、この発明の実施例を示すものである。
【0019】
まず、構成について説明する。
【0020】
自動車などの車両には、多数の電気接続箱が設けられている。このような電気接続箱は、少なくとも、回路基板と、この回路基板を収容保護する樹脂製の保護ケースとを備えている。
【0021】
図1〜図3に示すように、このような保護ケース1には、上ケース2と下ケース3とを有して、両者を爪係止部4によって係止固定させるようにしたものが存在している。
【0022】
この場合、上ケース2は蓋体などとされ、下ケース3は容器体などとされている。上ケース2は、天板部2aと両側板部2bとを有する下向きU字断面形状を呈している。また、下ケース3は、底板部3aと両側板部3bとを有する上向きU字断面形状を呈している。そして、上ケース2は、下ケース3よりも一回り大きく形成されて、下ケース3に外嵌され得るように構成されている。即ち、組付完了状態で、上ケース2の側板部2bの内面が、下ケース3の側板部3bの外面に、ほぼ摺接した状態で嵌合され得るように構成されている。なお、図面の都合により、上ケース2および下ケース3は、その形状を省略して描かれている。即ち、上ケース2は、実際よりもかなり狭幅に描かれていると共に、下ケース3は、断面の半分のみが描かれている。保護ケース1については、これに限るものではない。
【0023】
上記した爪係止部4は、係止用爪片5と、この係止用爪片5を収容係止可能な爪孔部6とを備えている。
【0024】
この場合、係止用爪片5は、上ケース2の側板部2b(の下端部)に一体形成されている。また、爪孔部6は、下ケース3の側板部3b(の外面部分)に一体形成されている。係止用爪片5と爪孔部6とは、それぞれ対応する位置に設けられている。
【0025】
係止用爪片5は、主に、下ケース3に対する上ケース2の嵌合方向aへ延びる突片部7によって構成されており、この突片部7の先端には、導入テーパ部8および係止面部9を有する爪部10が設けられている。係止用爪片5は、全体にほぼ均一幅のものとされている。突片部7は、均一肉厚を有するものとされている。爪部10は、この突片部7から外方へ張出すように形成されている。
【0026】
そして、爪孔部6は、横桟部12と、一対の縦桟部13とを、平面視ほぼコ字に接続して成る枠状突起14の内側に形成されている。横桟部12は、一対の縦桟部13の先端部間に接続される。横桟部12と縦桟部13とは、それぞれほぼ均一肉厚を有するものとされている。なお、一対の縦桟部13の基端部間に、補強桟部14aを設けて、枠状突起14を平面視ほぼロ字などとしても良い。この場合、補強桟部14aは、下ケース3の側板部3bの肉厚を利用することができるため、また、側板部3bと係止用爪片5との間の隙間が余り大きくならないようにするため、などの理由により、薄肉に構成されている。
【0027】
この際、爪孔部6は、係止用爪片5の(最大)幅寸法よりも若干長い横寸法と、係止用爪片5の(爪部10を含めた最大)厚さ寸法よりも若干短い縦寸法とを有している。なお、この場合の横寸法は、直線距離を示している。
【0028】
また、爪係止部4を係止固定状態とした時に、係止用爪片5の爪部10における係止面部9が、枠状突起14における横桟部12の図中下面側に対して、所要のかかり代を有して係止されるような寸法関係に設定されている。
【0029】
以上の構成は、上記した従来例のものとほぼ同様である。
【0030】
そして、以上のような基本構成に対し、この実施例のものでは、上記した枠状突起14を、弾性による変形復帰が可能な構造を有する弾性構造体21とする。即ち、素材による弾性を消極的に利用するのではなく、構造としての弾性を積極的に利用し得るようなものとする。
【0031】
より具体的には、例えば、図4、図5に示すように、弾性構造体21が、横桟部12に、内側へ凹となる湾曲形状を呈して、弾性による変形復帰が可能なバネ辺部22を有する構成とする。
【0032】
この場合、バネ辺部22は、係止用爪片5の爪部10における導入テーパ部8が差込可能な程度の湾曲形状とする。
【0033】
そして、弾性構造体21が、横桟部12と縦桟部13とのコーナー部分15(またはその近傍)に、弾性変形を許容可能な樹脂ヒンジ部24を有する構成とする。
【0034】
この場合、樹脂ヒンジ部24は、上記コーナー部分15における横桟部12の両端部の内外両面に対し、縦向きの溝部25を形成して部分的に薄肉化することによって形成されている。なお、縦向きの溝部25は、片面側のみに設けるようにすることもできる。
【0035】
また、横桟部12のバネ辺部22と、コーナー部分15の樹脂ヒンジ部24とは、両方設けるようにしても、そのいずれか一方を設けるようにしても良いが、両方設けることにより、それぞれの機能を倍加させることが可能となる。
【0036】
次に、この実施例の作用について説明する。
【0037】
図1〜図3に順に示すように、下ケース3に対して上ケース2を嵌合することにより、同時に、下ケース3の爪孔部6に上ケース2の係止用爪片5が収容係止され、下ケース3と上ケース2とが固定される。
【0038】
この実施例によれば、係止用爪片5と、係止用爪片5を収容係止可能な爪孔部6とを備え、爪孔部6が、横桟部12と、一対の縦桟部13とを、平面視ほぼコ字に接続して成る枠状突起14の内側に形成されると共に、爪孔部6が、係止用爪片5の幅寸法よりも若干長い横寸法と、係止用爪片5の厚さ寸法よりも若干短い縦寸法とを有する爪係止部構造において、枠状突起14を、弾性による変形復帰が可能な構造を有する弾性構造体21としたことにより、以下のような作用効果を得ることができる。
【0039】
即ち、枠状突起14を弾性構造体21として、弾性による変形復帰を行わせ得るようにしたことにより、係止用爪片5の通過後に、枠状突起14をほぼ完全に元の状態に復帰させることが可能となるので、枠状突起14が元の状態に復帰しないことにより係止用爪片5のかかり代が少なくなって外れ易くなるようなことを防止することができる。以て、係止状態における係止用爪片5の爪孔部6からの外れの問題をほぼ解消することが可能となる。
【0040】
より具体的には、例えば、図4、図5に示すように、弾性構造体21が、横桟部12に、内側へ凹となる湾曲形状を呈して、弾性による変形復帰が可能なバネ辺部22を有することにより、湾曲形状のバネ辺部22が、係止用爪片5の挿入に併せてほぼ真直ぐに伸びたり湾曲形状に戻ったりすることで、枠状突起14を、弾性による変形復帰が可能なものとすることができる。
【0041】
また、横桟部12を、湾曲形状のバネ辺部22とすることにより、大きな変形復帰量を確保することができる。
【0042】
更に、横桟部12を、内側へ凹となる湾曲形状とすることにより、横桟部12が直線形状の場合に比べて大きなかかり代を確保することができる。
【0043】
或いは、弾性構造体21が、横桟部12と縦桟部13とのコーナー部分15に、弾性変形を許容可能な樹脂ヒンジ部24を有することにより、コーナー部分15の樹脂ヒンジ部24によって横桟部12と縦桟部13との端部どうしが近接離反動することで、枠状突起14を、弾性による変形復帰が可能なものとすることができる。
【0044】
更に、横桟部12のバネ辺部22と、コーナー部分15の樹脂ヒンジ部24とは、両方設けることが可能であり、これらを組合せることによって、枠状突起14は、より大きな変形復帰量を得ることができると共に、弾性による変形復帰をより容易で自然なものとすることができる。
【0045】
以上、この発明の実施例を図面により詳述してきたが、実施例はこの発明の例示にしか過ぎないものであるため、この発明は実施例の構成にのみ限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含まれることは勿論である。また、例えば、各実施例に複数の構成が含まれている場合には、特に記載がなくとも、これらの構成の可能な組合せが含まれることは勿論である。また、複数の実施例や変形例が示されている場合には、特に記載がなくとも、これらに跨がった構成の組合せのうちの可能なものが含まれることは勿論である。また、図面に描かれている構成については、特に記載がなくとも、含まれることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施例にかかる爪係止部構造を部分的に拡大した分解状態の斜視図である。
【図2】図1の組付途中の状態を示す斜視図である。
【図3】図1の組付完了時の状態を示す斜視図である。
【図4】図1の枠状突起の平面図である。
【図5】図4の枠状突起が変形した状態を示す平面図である。
【図6】従来例にかかる爪係止部構造を部分的に拡大した分解状態の斜視図である。
【図7】図6の組付途中の状態を示す斜視図である。
【図8】図1の組付完了時の状態を示す斜視図である。
【図9】図6の枠状突起のかかり代を示す平面図である。
【図10】図6の枠状突起の実際のかかり代を示す平面図である。
【図11】図6の爪係止部構造が外れた状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0047】
5 係止用爪片
6 爪孔部
12 横桟部
13 縦桟部
14 枠状突起
15 コーナー部分
21 弾性構造体
22 バネ辺部
24 樹脂ヒンジ部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
係止用爪片と、該係止用爪片を収容係止可能な爪孔部とを備え、
該爪孔部が、横桟部と、一対の縦桟部とを、平面視ほぼコ字に接続して成る枠状突起の内側に形成されると共に、爪孔部が、係止用爪片の幅寸法よりも若干長い横寸法と、係止用爪片の厚さ寸法よりも若干短い縦寸法とを有する爪係止部構造において、
前記枠状突起を、弾性による変形復帰が可能な構造を有する弾性構造体としたことを特徴とする爪係止部構造。
【請求項2】
前記弾性構造体が、横桟部に、内側へ凹となる湾曲形状を呈して、弾性による変形復帰が可能なバネ辺部を有することを特徴とする請求項1記載の爪係止部構造。
【請求項3】
前記弾性構造体が、横桟部と縦桟部とのコーナー部分に、弾性変形を許容可能な樹脂ヒンジ部を有することを特徴とする請求項1または請求項2記載の爪係止部構造。
【請求項1】
係止用爪片と、該係止用爪片を収容係止可能な爪孔部とを備え、
該爪孔部が、横桟部と、一対の縦桟部とを、平面視ほぼコ字に接続して成る枠状突起の内側に形成されると共に、爪孔部が、係止用爪片の幅寸法よりも若干長い横寸法と、係止用爪片の厚さ寸法よりも若干短い縦寸法とを有する爪係止部構造において、
前記枠状突起を、弾性による変形復帰が可能な構造を有する弾性構造体としたことを特徴とする爪係止部構造。
【請求項2】
前記弾性構造体が、横桟部に、内側へ凹となる湾曲形状を呈して、弾性による変形復帰が可能なバネ辺部を有することを特徴とする請求項1記載の爪係止部構造。
【請求項3】
前記弾性構造体が、横桟部と縦桟部とのコーナー部分に、弾性変形を許容可能な樹脂ヒンジ部を有することを特徴とする請求項1または請求項2記載の爪係止部構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−281173(P2008−281173A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−128119(P2007−128119)
【出願日】平成19年5月14日(2007.5.14)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年5月14日(2007.5.14)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】
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