説明

爪化粧料

【課題】「グリーンネイル」の原因となる爪のカビ・菌繁殖を防止できる爪化粧料を提供すること。
【解決手段】抗菌剤、好ましくはニトリル系抗菌剤、ピリジン系抗菌剤、ハロアルキルチオ系抗菌剤、有機ヨード系抗菌剤、チアゾール系抗菌剤又はベンゾイミダゾール系抗菌剤から選択される一種又はそれ以上の任意の組み合わせを含有することを特徴とする爪化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は抗菌剤を含有することを特徴とする爪化粧料に関し、詳細には、抗菌剤を含有することを特徴とする爪のメークアップ用及び/又は爪の手入れ向けの化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、指先のおしゃれとして、単にネイルカラーだけでなく、付け爪やネイルアートが幅広い年代で人気を集めている。ネイルサロンにおける付け爪などの施術が身近なものとなり、付け爪の種類もアクリリックネイル(所謂スカルプチュア)、ジェルネイル(カルジェル、バイオジェルなどのソークオフジェル/ハードジェル)、あるいはネイルチップなど、使用者の好みや用途に合わせて選択することができる。また、自宅で自分自身で付け爪をするための様々な用具も販売されており、ますますその人気は広がりを見せている。
【0003】
こうした中、付け爪に伴うトラブルとして、爪の細菌・バクテリアやカビ発生、所謂「グリーンネイル」が報告され、問題となってきている。グリーンネイルは、人工爪と自爪の間に雑菌(カビや緑膿菌など)が繁殖し、爪が淡黄色、黒色や緑色に変色した状態であり、そのまま放置すると爪組織の崩壊だけでなく、体内に雑菌が入り込んで合併症をも引き起こす虞もある。
グリーンネイルは、付け爪の繰り返し装着や人工爪の浮き上がりの放置などが主な原因とされているが、使用者の生活環境や体質、爪の形など様々な要因が絡んで起こるとされ、誰にでも起こり得る問題として注意が呼びかけられている。その防止方法としては、装着時の付け爪、自爪の消毒や定期的な付け爪のメンテナンスが重要であるとされるが、確実にグリーンネイルを防止するための方法や薬剤の提案はなされていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は「グリーンネイル」の原因となる爪のカビ・菌繁殖を防止できる爪化粧料の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、防菌、防黴作用を有する複数の特定有機化合物を含有する抗菌剤をキューティクルオイルやジェル、アクリルリキッド等に配合したメークアップや手入れ用に用いる爪化粧料が、爪のカビ・菌繁殖を防止できることを見出し、本発明を完成させた。
【0006】
即ち、本発明は、抗菌剤を含有することを特徴とする爪化粧料に関する。
本発明において、前記抗菌剤は、ニトリル系抗菌剤、ピリジン系抗菌剤、ハロアルキルチオ系抗菌剤、チオカルボン酸系抗菌剤、有機ヨード系抗菌剤、チアゾール系抗菌剤又はベンゾイミダゾール系抗菌剤から選択される一種又は二種以上のものであることが好ましく、より好ましくは、前記ニトリル抗菌剤はハロイソフタロニトリル化合物から選択され、前記ピリジン系抗菌剤はスルフォニルハロピリジン化合物及び/又はピリジンチオール−1−オキシド化合物から選択され、前記ハロアルキルチオ系抗菌剤はハロアルキルチオスルファミド化合物から選択され、前記ジチオカルボン酸系抗菌剤はジチオカルボン酸エステル化合物から選択され、前記有機ヨード系抗菌剤はヨードスルフォニルベンゼン化合物から選択され、前記チアゾール系抗菌剤はイソチアゾリン−3−オン化合物から選択され、又は、ベンゾイミダゾール系抗菌剤はベンゾイミダゾールカルバミン酸化合物及び/又はチアゾリルベンゾイミダゾール化合物から選択されるものを含有することが望ましい

さらに好ましくは、前記抗菌剤が、2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリル、2,3,5,6−テトラクロロ−4−メチルスルフォニルピリジン、2−ピリジンチオール−1−オキシドナトリウム、N,N−ジメチル−N’−フェニル−N’−(フルオロジクロロメチルチオ)スルファミド、メチル−3−メルカプトプロピオネート、ジヨードメチル−p−トリルスルフォン、2−(n−オクチル)−4−イソチアゾリン−3−オン、1H−2−ベンゾイミダゾールカルバミン酸メチル、又は2−(4−チアゾリル)−1H−ベンゾイミダゾールから選択される一種又は二種以上のものを含有することが望ましい。
【0007】
また本発明に係る爪化粧料は、爪のメークアップに用いられる、或いは、爪の手入れのために使用されるような化粧料に広範に適用されるものであり、液剤、泡剤、クリーム剤、ジェル剤、オイル剤等その剤形は問わない。またこれら化粧料には、紫外線硬化タイプ、熱硬化タイプの爪化粧料も含まれる。従って、本発明は、好ましくは、前記抗菌剤を含有する爪のメークアップ用及び/又は爪の手入れ向けの化粧料であって、特にポリッシュ、ベースコート、リッジフィラー、リッジフィリングベースコート、ハードナー、ストレンスナー、強化剤、トップコート、アクリルシーラー、UVトップコート、pH調整剤、ポリッシュリムーバー、ポリッシュ用薄め液、ソルベント、速乾剤、サニタイザー、爪手指用サニタイザー、ハンドソープ、キューテクルトリートメント、キューティクルリムーバー、キューティクルクリーム、キューティクルオイル、ネイルオイル、ネイルローション、ネイルクリーム、ソーク、スクラブ、パック、パラフィンパック、マスク、グルー、レジン、つけ爪用粘着剤、グルーリムーバー、フィラー、アクティベーター、シルクラップ、グラスファイバー、補修に使うラップ材、プレプライマー、プライマー、アクリルパウダー、ポリマー、カラーパウダー、ラメパウダー、グリッターパウダー、アクリルリキッド、モノマー、硬化速度調整剤、カラーリキッド、ブラシクリーナー、ジェル、カラージェル、ジェルリムーバー、ジェルクリーナー、クレンザー、プレップ、ソリューション、定着剤、ジェルを塗布する前に使用する薬剤、チップブレンダー、ラインアウト、マシン用オイル、爪磨き剤又はチップに爪化粧料をつけて爪に装着するシステムで使用する薬剤からなる群から選択される爪化粧料である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の爪化粧料は、通常の手入れ時及び付け爪等の施術時に用いるだけで、爪のカビ発生や菌繁殖を防止し、自爪を健康な状態に保つことができる。すなわち、爪のカビ発生や菌繁殖を防止のための特別な用具や薬品、手順を必要とせず、これまで使用してきた爪用の化粧品と同じように使用するだけで簡単にグリーンネイルを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、実施例2における皮内注射及び閉鎖適用による感作誘導部位を示す図であり、A、B及びCは皮内注射部位、□は適用部位(2cm×4cm)を示す図である。
【図2】図2は、実施例4において、抗菌剤を配合したアクリル製品を被験者の左手のネイルに、抗菌剤を配合していないアクリル製品を被験者の右手のネイルに適用した後、28日経過後の被験者のネイルの状態を撮影した写真である。
【図3】図3は、実施例6において、抗菌剤を配合したキューティクルオイルを被験者のネイルに適用した後、施術直後から1ヶ月半経過後の被験者のネイルの状態を撮影した写真である。
【図4】図4は、実施例6において、抗菌剤を配合したスカルプチュア向け製品を被験者のネイルに適用した後、施術直後から1ヶ月半経過後の被験者のネイルの状態を撮影した写真である。
【図5】図5は、実施例6において、抗菌剤を配合したカルジェルを被験者のネイルに適用した後、施術直後から1ヶ月半経過後の被験者のネイルの状態を撮影した写真である。
【図6】図6は、実施例6において、抗菌剤を配合したバイオスカルプチュアジェルを被験者のネイルに適用した後、施術直後から1ヶ月半経過後の被験者のネイルの状態を撮影した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の爪化粧料は、ニトリル系抗菌剤、ピリジン系抗菌剤、ハロアルキルチオ系抗菌剤、チオカルボン酸系抗菌剤、有機ヨード系抗菌剤、チアゾール系抗菌剤又はベンズイミダゾール系抗菌剤から選択される一種又はそれ以上の任意の組み合わせを含有するものであって、好ましくはこれら抗菌剤を全て含有することが望ましい。これら抗菌剤は、いずれも分解温度が高く、水に対する溶解性が低く、安全性の高い化合物である。
【0011】
上記各抗菌剤として、例えば、ニトリル系抗菌剤としてはハロイソフタロニトリル化合物等が挙げられ、ピリジン系抗菌剤としてはスルフォニルハロピリジン化合物、ピリジンチオール−1−オキシド化合物等が挙げられる。ハロアルキルチオ系抗菌剤としては、例えば、ハロアルキルスルファミド化合物、テトラクロロエチルチオテトラヒドロフタルイミド化合物等が挙げられる。また、ジチオカルボン酸系抗菌剤としては、例えばジチオカルボン酸エステル化合物等が、有機ヨード系抗菌剤としては、例えばヨードスルフォニルベンゼン化合物、プロパルギルブチルカルバミン酸化合物等が挙げられる。チアゾール系抗菌剤としては、例えばイソチアゾリン−3−オン化合物、チアゾールベンズイミダゾール化合物等が挙げられる。ベンズイミダゾール系抗菌剤としては、例えばベンズイミダゾールカルバミン酸化合物等が挙げられる。
これらの中でも、特に好ましくは、2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリル、2−ピリジンチオール−1−オキシドナトリウム、2,3,5,6−テトラクロロ−4−メチルスルフォニルピリジン、N,N−ジメチル−N’−フェニル−N’−(フルオロジクロロメチルチオ)スルファミド、メチル−3−メルカプトプロピオネート、ジヨードメチル−p−トリルスルフォン、2−(n−オクチル)−4−イソチアゾリン−3−オン、2−(4−チアゾリル)−1H−ベンゾイミダゾール、1H−2−ベンゾイミダゾールカルバミン酸メチルである。
上記薬剤の中で、特にカビに対して抵抗性を有する化合物は、2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリルであり、特に細菌に対して抵抗性を有する化合物は、2,3,5,6−テトラクロロ−4−メチルスルフォニルピリジンである。また藻類に対して抵抗性を有する化合物は、N,N−ジメチル−N’−フェニル−N’−(フロロジクロロメチルチオ)スルファミドである。
【0012】
本発明において、爪化粧料に使用する上記抗菌剤の含有量は任意であるが、その合計量が、爪化粧料を構成する全成分に対して、0.01〜30質量%、好ましくは0.05〜5.0質量%、特に好ましくは0.10〜1.0質量%の範囲である。
また組成物全体に対する各抗菌剤の含有量は、好ましくは全薬剤中、1.0質量%〜90質量%、より好ましくは3.0質量%〜70質量%である。この含有量が1.0質量%未満の場合、各抗菌剤の効果が不十分となり、逆に90質量%を超える場合、他の抗菌剤の含有率が低くなってそれらの効果が不十分となるので好ましくない。
なお、グリーンネイル防止の観点から、2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリル及び/又は2,3,5,6−テトラクロロ−4−メチルスルフォニルピリジンの含有量を高めておくことが望ましいが、各抗菌剤の合計の含有量および各含有量は、配合する爪化粧料の使用環境等により、上記範囲内で適宜決定される。
【0013】
配合する抗菌剤は、粒状で、好ましくは粉状で爪化粧料に含有されるが、その粒径は小さい程、爪化粧料への分散性が良好となるので、好ましくは50μm以下、より好ましく
は10μm以下、特に好ましくは2μm以下である。
【0014】
本発明が対象とする爪化粧料としては、爪に用いる製剤や爪用化粧料全般が挙げられ、特に爪用のメークアップ及び手入れ向け化粧料を挙げることができる。より具体的な例として、以下のものを挙げることができるが、メークアップ及び手入れ用に使用される爪化粧料であればこれらのものに限定されない。:ポリッシュ、ベースコート、リッジフィラー、リッジフィリングベースコート、ハードナー、ストレンスナー、強化剤、トップコート、アクリルシーラー、UVトップコート、pH調整剤、ポリッシュリムーバー、ポリッシュ用薄め液、ソルベント、速乾剤、サニタイザー、爪手指用サニタイザー、ハンドソープ、キューテクルトリートメント、キューティクルリムーバー、キューティクルクリーム、キューティクルオイル、ネイルオイル、ネイルローション、ネイルクリーム、ソーク、スクラブ、パック、パラフィンパック、マスク、グルー、レジン、つけ爪用粘着剤、グルーリムーバー、フィラー、アクティベーター、シルクラップ、グラスファイバー、補修に使うラップ材、プレプライマー、プライマー、アクリルパウダー、ポリマー、カラーパウダー、ラメパウダー、グリッターパウダー、アクリルリキッド、モノマー、硬化速度調整剤、カラーリキッド、ブラシクリーナー、ジェル、カラージェル、ジェルリムーバー、ジェルクリーナー、クレンザー、プレップ、ソリューション、定着剤、ジェルを塗布する前に使用する薬剤、チップブレンダー、ラインアウト、マシン用オイル、爪磨き剤及びチップに爪化粧料をつけて爪に装着するシステムで使用する薬剤(参照URL: http://cielnails.ya−man.com/freeform.html参)等。
また上記爪化粧料以外にも、本発明で用いる抗菌剤は、例えばブラシクリーナー等の、爪のメークアップや手入れに使用する器具・用具等の抗菌剤として用いることができる。
【0015】
本発明の抗菌剤を含有する爪化粧料は、カビ及び細菌、さらには藻類やダニ類に対して抵抗性を有する。
本発明で用いる抗菌剤が抗菌作用を有する細菌及び真菌類としては、世界微生物災害防止学会(IBDS)にて、1985年に承認された一般住宅に存在するとされる真菌類を例として、以下の菌類を挙げることができる。
【0016】
カビ類の例として、下記表1に示すものが挙げられる。
【表1】

【0017】
特に本発明で使用する抗菌剤は、皮膚、毛、爪等ケラチン質からなる組織に生ずる皮膚真菌症の要因となる真菌(かび)に対する抵抗性を有する。具体的には、Trichophyton metagrophytes、Trichophyton viotaceum、Trichophyton rubrum、Trichophyton schoemleinii(何れも爪白癬症の原因菌);Microsporum gypseum、Microsporum canis(何れも皮膚真菌症の原因菌);Epidermophyton floccosum(爪白癬症の原因菌);Fusarium属、Aspergillus属、Paecilomyces属(何れも爪真菌症の原因菌)などが挙げられる。
【0018】
酵母類としては、サッカロミセス セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、ストレ
プトフェルティシリウム レティクラム(Streptoverticillium reticulum)等が挙げられる。
【0019】
また細菌類としては、バチルス サブティリス(Bacillus subtilis)、バチルスメガテリウム(Bacillus megaterium)、スタフィロコッカス オーレウス(Staphylococcus aureus)、プロテウス ブルガリス(Proteus vulgaris)、シュードモナス エルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)、シュードモナス フルレッセンス(Pseudomonas fluorescens
)、サルモネラ チフィムリアム(Salmonella typhimurium)、エシェリヒア コリ(Escherichia coli)等を挙げることができる。
なお、上記菌類以外に、本発明で使用する抗菌剤は、オオウズラタケ(Laetiporusversisporus)、カワラタケ(Coriolus versicolor)、ナミダタケ(Gyrophanalacrymans)等のキノコ類に対しても生育阻害作用を有する。
【0020】
また、本発明で使用する抗菌剤が抗菌作用を有する藻類としては、トレンテポーリア
オーダラータ(Trentephohlia odarata)、トレンテポーリア オーレア(Trentephohlia aurea)、クロレラ ブルガイレス(Chlorella vulgaires)、スキゾスリックス カルシコーラ(Schizothrix calcicola)等を挙げることができる。
【実施例】
【0021】
以下、本発明について実施例を挙げて詳述するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
なおここで使用した抗菌剤は、一例として下記表2に示す組成を有する
【表2】

【0022】
[実施例1:ウサギを用いた皮膚一次刺激性試験]
<概要>
本発明の抗菌剤を検体として、OECD Guidelines for the Testing of Chemicals 404(2002)に準拠し、ウサギを用いた皮膚一次刺激性試験を行った。
<検体>
本発明の抗菌剤
性状:白色粉末
<試験動物>
日本白色種雄ウサギを北山ラベス株式会社より購入し、1週間以上の予備飼育を行って一般状態に異常の無いことを確認した後、3匹を試験に使用した。試験動物はFRP製ケージに個別に収容し、室温22℃±2℃、照明時間12時間/日に設定した飼育室において飼育した。飼料はウサギ・モルモット用固型飼料[LRC4、オリエンタル酵母工業株式会社]を制限給与し、飲料水は水道水を自由摂取させた。
【0023】
<試験方法>
各々の試験動物の体幹背部被毛を試験の約24時間前に剪毛した。
試験動物1匹につき、約6cm2の面積で4箇所を設定し、そのうち2箇所には18ゲ
ージの注射針を用いて、真皮までは達しないように角化層に井げた状のすり傷を付け(有傷皮膚)、他の2箇所を無処置(無傷皮膚)とした。
約2cm×3cmに裁断したガーゼパッチに検体0.5gを均一に載せ、約0.5mLの注射用水で湿潤し、無傷及び有傷皮膚の各1箇所ずつに適用した後、マルチフィックス・ロール[アルケア株式会社]で固定した。また、パッチが皮膚と接触するように、更にブレンダームサージカルテープ[スリーエム ヘルスケア株式会社]で保持した。残りの無傷及び有傷皮膚は対照とした。
適用時間は4時間とし、その後パッチを取り除き、適用部位を70%エタノールで清拭した。除去後、1、24、48及び72時間に観察を行い、表3に従って刺激反応の採点を実施した。
また、Federal Register(1972)に準拠して、パッチ除去後1、24及び48時間の採点値を合計して6で除し、更に各試験動物の平均を算出して一次刺激性インデックス(P.I.I.)とし、表4に示したISO 10993−10の基準に基づき、検体の刺激性の評価を行った。
なお、試験開始時及び試験終了時に試験動物の体重を測定した(表4)。
【0024】
【表3】

【表4】

【0025】
<試験結果>(表5及び表6)
除去後1時間に全ての適用部位で非常に軽度な紅斑(点数1)が見られたが、24時間に2例(試験動物2及び3)の無傷及び有傷皮膚、48時間に残る適用部位で消失し、その後刺激反応は見られなかった。
採点結果から算出したP.I.I.は0.4となった。
なお、無処置の無傷及び有傷皮膚においては、観察期間を通して刺激反応は見られなかった。
すなわち、この結果より、ウサギを用いた皮膚一次刺激性試験において、検体は「無刺激性」の範疇に入るものと評価された。
【0026】
【表5】

【表6】

【0027】
[実施例2:モルモットを用いたMaximization法による皮膚感作性試験]
<概要>
本発明の抗菌剤を検体として、Maximization法によりモルモットにおける皮膚感作性を調べた。
<検体>
本発明の抗菌剤
性状:白色粉末
<試験動物>
5週齢のHartley系雌モルモットを日本エルエスシー株式会社から購入し、約1
週間予備飼育を行って一般状態に異常のないことを確認した後、皮膚に異常の認められない動物を予備試験に6匹、本試験に20匹使用した。試験動物はFRP製ケージに各5匹収容し、室温22℃±2℃、照明時間12時間/日に設定した飼育室において飼育した。飼料はモルモット用固型飼料[ラボGスタンダード、日本農産工業株式会社]を給与し、飲料水は水道水を自由摂取させた。
【0028】
<予備試験>
1)試験方法
(1)皮内注射による感作誘導に用いる試験液濃度の確認(予備試験1)
検体の10、5、2.5、1、0.5及び0.1w/v%オリブ油懸濁液を、予め側腹部を剪毛及び剃毛したモルモット2匹に、1匹当たり1箇所、各濃度0.1mLずつ皮内注射した。注射後24、48及び72時間並びに7日に観察を行い、局所に潰瘍などの組織の剥離、脱落が見られない最高濃度を皮内注射による感作誘導に用いることとした。
(2)閉鎖適用による感作誘導に用いる試験液濃度の確認(予備試験2)
検体の10、5及び2.5%ワセリン混合物を各濃度0.1mLずつ2cm×2cmのろ紙に塗布し、予め側腹部を剪毛及び剃毛したモルモット2匹に閉鎖適用した。適用後24時間に適用部位を70%エタノールで清拭した。適用後48及び72時間に観察を行い、局所に高度な皮膚反応が認められない最高濃度を閉鎖適用による感作誘導に用いることとした。
(3)閉鎖適用による感作誘発に用いる試験液濃度の確認(予備試験3)
モルモット2匹にE−FCA*を皮内注射した。注射後21日に側腹部を剪毛及び剃毛
し、検体の5、2.5及び1%ワセリン混合物を各濃度0.1mLずつ2cm×2cmのろ紙に塗布し、予め剪毛及び剃毛した側腹部に閉鎖適用した。適用後24時間に適用部位を70%エタノールで清拭した。適用後48及び72時間に観察を行い、局所に皮膚反応が認められない最高濃度を上限濃度として用いることとした。
*フロイントの完全アジュバント(FCA;流動パラフィン、界面活性剤及び結核死菌からなる。)[Difce Laboratories]と生理食塩液の1:1油中水型(W/O)乳化物。FCA処置により、皮膚一次刺激反応の閾値が低下するために、無処置動物では刺激性を示さない濃度であっても、FCA処置動物では刺激反応が認められることがある(false positive response)。したがって、感作誘発の予備試験はFCA処置動物を用いて行うことが望ましい。
<予備試験結果>
予備試験1においては、全ての濃度の注射部位で壊死、2.5w/v%以上の注射部位で硬結が見られたが、いずれの濃度の注射部位においても潰瘍などの組織の剥離、脱落は認められなかった。このことから、皮内注射による感作誘導には検体の10w/v%オリブ油懸濁液を用いることとした。
予備試験2においては、10%の適用部位で紅斑が見られたが、5及び2.5%の適用部位では皮膚反応は見られなかった。いずれの濃度においても高度の皮膚反応は認められなかったことから、閉鎖適用による感作誘導には検体の10%ワセリン混合物を用いることとした。
予備試験3においては、5%の適用部位で紅斑が見られたが、2.5%以下の適用部位では皮膚反応は認められなった。このことから、閉鎖適用による感作誘発には2.5%を上限濃度として用いることとした。
【0029】
<本試験>
1)群構成
試験群には10匹、陰性対照群及び陽性対照群(既知感作性物質処置群)にはそれぞれ5匹の試験動物を使用した。試験開始時の体重範囲は363〜408gであった(表13参照)。
2)試験方法
(1)感作誘導1(皮内注射)
試験群、陰性対照群及び陽性対照群それぞれについて、試験動物の体重を測定した後、肩甲骨上を電気バリカンで剪毛した。図1に示すように、左右各1箇所に
試験群においては、
A:E−FCA
B:検体のオリブ油懸濁液(10w/v%)
C:検体のFCA懸濁液(20w/v%)に等量の生理食塩液を加えて混合させたもの
陰性対照群においては、
A:E−FCA
B:オリブ油
C:E−FCA
陽性対照群においては、
A:E−FCA
B:DNCB*1のオリブ油溶液(0.1w/v%)
C:DNCBのFCA溶液(0.2w/v%)に等量の生理食塩液を加えて乳化させたもの
をそれぞれ0.1mLずつ皮内注射した。
*1 2,4−ジニトロクロロベンゼン[和光純薬工業株式会社]
(2)感作誘導2(48時間閉鎖適用)
皮内注射開始後1週間に注射部位を剪毛及び剃毛し、ラウリル硫酸ナトリウム(ワセリン中10%)を適用した。
ラウリル硫酸ナトリウム適用後24時間に適用部位を70%エタノールで清拭し、試験群では検体の10%ワセリン混合物、陰性対照群ではワセリン、陽性対照群ではDNCBの0.1%ワセリン混合物をそれぞれ0.2mLずつ2cm×4cmのろ紙に塗布し、試験動物の皮内注射部位に48時間閉鎖適用した。適用後48時間に適用部位を70%エタノールで清拭した。
(3)感作誘発及びその観察・判定法
感作誘導2終了後2週間に感作誘発処理を行った。
試験群では検体の2.5及び0.25%ワセリン混合物、陰性対照群ではワセリン、また、陽性対照群ではDNCBの0.1%ワセリン混合物をそれぞれ0.1mLずつ2cm×2cmのろ紙に塗布し、予め剪毛及び剃毛した側腹部に閉鎖適用した。
なお、陰性対照群には試験群と同様に検体の2.5及び0.25%ワセリン混合物を適用した*2。適用開始を0時間として、24時間後に適用部位を70%エタノールで清拭した。適用後48及び72時間に適用部位を肉眼的に観察し、Draize法の基準(表7)に従って皮膚反応の採点を行い、その平均値を算出した(平均評価点)。また、各観察時間における陽性率[%:(陽性動物数/1群の動物数)×100]を求めた。
試験終了時に試験動物の体重を測定した。
*2 false positive response確認のため、陰性対照群においても試験群と同じ誘発物質の曝露が必要である。
【表7】

【0030】
<試験結果>(表8〜表13)
試験群では、適用後48及び72時間の各観察時間において、検体の2.5及び0.25%ワセリン混合物適用部位に皮膚反応は観察されず、陽性率は適用後48及び72時間でいずれも0%であった(平均評価点:いずれも0)(表9)。
陰性対照群では、適用後48及び72時間の各観察時間において、ワセリン適用部位に皮膚反応は観察されず、陽性率は適用後48及び72時間でいずれも0%であった(平均評価点:いずれも0)(表10)。また、検体の2.5及び0.25%ワセリン混合物適用部位においても皮膚反応は見られず、陽性率は適用後48及び72時間でいずれも0%であった(平均評価点:いずれも0)(表11)。
一方、陽性対照群では、適用後48時間に壊死(点数4)、72時間に痂皮形成(点数4)が見られた。陽性率は適用後48及び72時間でいずれも100%であった(平均評価点:いずれも4.0)(表12)。
なお全ての群において、試験期間中の体重変化及び一般状態に異常は見られなかった。
以上のことから、本試験条件下では検体はモルモットにおいて皮膚感作性を有さないものとする結果が得られた。
【0031】
【表8】

【表9】

【表10】

【表11】

【表12】

【表13】

【0032】
[実施例3:カビ抵抗性試験]
試験菌として前出の表1に示した真菌71種などを用い、ネイルチップ(ビューティーネイラー ネイルチップ、プレミアクリアチップス カジュアルスクエア(以上、(株)ムラキ))を用いて、カビ抵抗性試験を行った。
各試料(ネイルチップ)上に、無機塩寒天培地(抗菌剤0〜2.5%添加、抗菌剤の組成については前記表2参照)を適量設置し、ここに湿式法による混合胞子懸濁液から菌を直接接種した後、温度・湿度サーモスタット付きサーキュレーター内で温度30℃±5℃、湿度85%±5%RHの条件で28日間培養した。試料表面の菌の発育状況を、表14に示す以下の5段階により評価した。得られた結果を表15に示す。なおいずれの試料においても同様の菌の発育状況であったため、表15において試料の種類を区別して表示してはいない。
【0033】
【表14】

【表15】

【0034】
表15に示すように、培養器と培養条件により強制的に試験菌が発育し易い環境であっても、本発明に用いる抗菌剤を配合したものは、何れも「全く菌が発育しない」とする結果が得られ、すなわち、皮膚、毛、爪等ケラチン質からなる組織に生ずる皮膚真菌症の要因となるTrichophyton metagrophytes、Trichophyton viotaceum、Trichophyton rubrum
、Trichophyton schoemleinii;Microsporum gypseum、Microsporum canis;Epidermophyton floccosum;Fusarium属;Aspergillus属;Paecilomyces属などに対して抵抗性があることが確認された。
【0035】
[実施例4:メークアップ及び手入れ用のマニキュア 適用試験(1)]
前記表2に示す組成の抗菌剤を配合したアクリル製品(商品名:ファーストステップ(プレプライマー)、プライマー、アクリルリキッド(モノマー)(全て(株)ネイルラボ)、配合量:プレプライマー及びプライマー共に10mlに抗菌剤約0.025g、アクリルリキッド250mlに抗菌剤約0.8g)を被験者の左手のネイルに適用し、また、抗菌剤を配合していないアクリル製品を同じ被験者の右手のネイルに適用した。施術28日後の被験者の左右両手のネイルの状態を確認した。28日後のネイルの写真を図2に示す。
図2に示すように、抗菌剤を配合したアクリル製品を用いた左手のネイル(写真奥側のネイル)は爪の変色は認められなかったが、抗菌剤を配合しなかったアクリル製品を用いた右手のネイル(写真手前側のネイル)は変色が見られ、特に人差し指は顕著に変色が認められた。
【0036】
[実施例5:メークアップ及び手入れ用のマニキュア 適用試験(2)]
前記表2に示す組成の抗菌剤を配合したアクリル製品(商品名:ファーストステップ(
プレプライマー)、プライマー、アクリルリキッド(モノマー)(全て(株)ネイルラボ)、配合量:プレプライマー及びプライマー共に10mlに抗菌剤約0.04g、アクリルリキッド250mlに抗菌剤約1.25g)を被験者の左手のネイルに適用し、また、抗菌剤を配合していないアクリル製品を同じ被験者の右手のネイルに適用した。
抗菌剤を配合したアクリル製品を用いた左手のネイルは爪の変色は認められなかったが、抗菌剤を配合しなかったアクリル製品を用いた右手のネイルの一部に変色が見られた。
【0037】
[実施例6:メークアップ及び手入れ用のマニキュア及びペディキュア化粧料 適用試験]
表16に示す量にて前記抗菌剤を配合したキューティクルオイル、アクリル関連製品、ジェル(2種)、被験者のネイルに適用し、施術直後から1ヶ月半経過後の被験者のネイルの状態を観察した。被験者施術直後から1ヶ月半経過後のネイルの写真を図3乃至図6に示す。
【0038】
【表16】

【0039】
図3〜図6に示すように、いずれの被験者においても、施術直後から1ヶ月半経過後まで、爪の変色は認められず、また、皮膚や爪にかぶれ等のその他の以上も認められなかった。
【0040】
以下、各種爪化粧料の配合組成の例を示す。
【表17】

【表18】

【表19】

【表20】

【表21】

【表22】

【表23】

【表24】

【表25】

【表26】

【表27】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗菌剤を含有することを特徴とする爪化粧料。
【請求項2】
前記抗菌剤が、ニトリル系抗菌剤、ピリジン系抗菌剤、ハロアルキルチオ系抗菌剤、チオカルボン酸系抗菌剤、有機ヨード系抗菌剤、チアゾール系抗菌剤及びベンゾイミダゾール系抗菌剤からなる群より選択される一種又は二種以上のものである、請求項1記載の爪化粧料。
【請求項3】
ニトリル系抗菌剤、ピリジン系抗菌剤、ハロアルキルチオ系抗菌剤、チオカルボン酸系抗菌剤、有機ヨード系抗菌剤、チアゾール系抗菌剤及びベンゾイミダゾール系抗菌剤を含有する、請求項1記載の爪化粧料。
【請求項4】
前記ニトリル抗菌剤はハロイソフタロニトリル化合物から選択され、前記ピリジン系抗菌剤はスルフォニルハロピリジン化合物及び/又はピリジンチオール−1−オキシド化合物から選択され、前記ハロアルキルチオ系抗菌剤はハロアルキルチオスルファミド化合物から選択され、前記ジチオカルボン酸系抗菌剤はジチオカルボン酸エステル化合物から選択され、前記有機ヨード系抗菌剤はヨードスルフォニルベンゼン化合物から選択され、前記チアゾール系抗菌剤はイソチアゾリン−3−オン化合物から選択され、又は、ベンゾイミダゾール系抗菌剤はベンゾイミダゾールカルバミン酸化合物及び/又はチアゾリルベンゾイミダゾール化合物から選択されるところの請求項2又は請求項3に記載の爪化粧料。
【請求項5】
前記抗菌剤として、2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリル、2,3,5,6−テトラクロロ−4−メチルスルフォニルピリジン、2−ピリジンチオール−1−オキシドナトリウム、N,N−ジメチル−N’−フェニル−N’−(フルオロジクロロメチルチオ)スルファミド、メチル−3−メルカプトプロピオネート、ジヨードメチル−p−トリルスルフォン、2−(n−オクチル)−4−イソチアゾリン−3−オン、1H−2−ベンゾイミダゾールカルバミン酸メチル、及び、2−(4−チアゾリル)−1H−ベンゾイミダゾールからなる群から選択される一種又は二種以上のものを含有する、請求項1乃至請求項4のうち何れか一項に記載の爪化粧料。
【請求項6】
前記爪化粧料が爪のメークアップ用及び/又は爪の手入れ向けの化粧料である、請求項1記載の爪化粧料。
【請求項7】
前記爪化粧料は、ポリッシュ、ベースコート、リッジフィラー、リッジフィリングベースコート、ハードナー、ストレンスナー、強化剤、トップコート、アクリルシーラー、UVトップコート、pH調整剤、ポリッシュリムーバー、ポリッシュ用薄め液、ソルベント、速乾剤、サニタイザー、爪手指用サニタイザー、ハンドソープ、キューテクルトリートメント、キューティクルリムーバー、キューティクルクリーム、キューティクルオイル、ネイルオイル、ネイルローション、ネイルクリーム、ソーク、スクラブ、パック、パラフィンパック、マスク、グルー、レジン、つけ爪用粘着剤、グルーリムーバー、フィラー、アクティベーター、シルクラップ、グラスファイバー、補修に使うラップ材、プレプライマー、プライマー、アクリルパウダー、ポリマー、カラーパウダー、ラメパウダー、グリッターパウダー、アクリルリキッド、モノマー、硬化速度調整剤、カラーリキッド、ブラシクリーナー、ジェル、カラージェル、ジェルリムーバー、ジェルクリーナー、クレンザー、プレップ、ソリューション、定着剤、ジェルを塗布する前に使用する薬剤、チップブレンダー、ラインアウト、マシン用オイル、爪磨き剤又はチップに爪化粧料をつけて爪に装着するシステムで使用する薬剤である、請求項1記載の爪化粧料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−190193(P2011−190193A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−56066(P2010−56066)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【出願人】(510070083)
【Fターム(参考)】