説明

片面コンタクト型ソーラーセルの製造方法および片面コンタクト型ソーラーセル

吸収層の1つの面に両コンタクトシステムを有する公知の片面コンタクト型ソーラーセルは、放出層およびコンタクトシステムに関して特別な構造を有し、この構造は面倒な構造化ステップを必要とした。本発明による方法では、吸収層または放出層の構造化を行う必要なく、片面コンタクトを可能にする。本方法は、表側コンタクトの製造にも裏側コンタクトの製造にも同様に適している。吸収層(AS)の面に、コンタクト格子(KG)を直接配置する(表側コンタクト、裏側コンタクト)。次に、このコンタクト格子(KG)の自由な表面全体に、非導電性の絶縁層(IS)をカバーする。その後、面全体に放出層(ES)を堆積することにより、吸収層(AS)と放出層(ES)との間にコンタクト格子(KG)が得られる。放出層(ES)にコンタクト層(KS)を設ける。裏側コンタクトの場合、放出層(ES)も吸収層(AS)の裏側(OSA)に配置することにより、付加的な吸収損失が回避される。ウェハベースの厚層ソーラーセルも薄層ソーラーセル(HKS)も製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の説明
本発明は、半導体材料から成る少なくとも1つの吸収層と面全体に堆積された放出層とを有する次のような片面コンタクト型ソーラーセルの製造方法に関する。すなわち、前記吸収層および放出層のいずれか一方はp型ドーピングを有し、他方はn型ドーピングを有し、過剰多数キャリアおよび過剰少数キャリアが該吸収層において光入射によって生成され、吸収層と放出層との間においてpn接合部で分離され、該吸収層の多数キャリアは第1のコンタクトシステムを介して集められて引き出され、該吸収層の少数キャリアは該放出層および第2のコンタクトシステムによって集められて引き出され、両コンタクトシステムは同一のソーラーセル面上に設けられる形式の片面コンタクト型ソーラーセルの製造方法に関する。本発明はまた、片面コンタクト型ソーラーセルにも関する。
【0002】
ソーラーセルは、光を電気エネルギーに変換する素子である。通常はソーラーセルは半導体材料から成り、正キャリアおよび負キャリアに対して異なる導電度の領域または層、n型またはp型の導電型の領域を含む。これらの領域は、放出体および吸収体と称される。入射光によって生成された正および負の過剰キャリアは、放出体と吸収体との間においてpn接合部で分離され、各領域に導電接続されているコンタクトシステムによって集められて取り出される。このことに相応して、ソーラーセルの使用可能な電力には次のような過剰キャリアのみが寄与する。すなわち、コンタクトシステムに到達し、その時点より前に、それぞれ逆極性のキャリアと再結合しなかった過剰キャリアのみが寄与する。
【0003】
片面コンタクト型ソーラーセルは、共通の面上で過剰多数キャリアおよび過剰少数キャリアを別個に集めるために2つのコンタクトシステムを有する。このことは、まず基本的に、コンタクトのために片面のみを処理すればよく、それと同時に、他方の面をコンタクトに関して処理しなくてもよいという利点を有する。本発明では「表側コンタクト」という概念は、両コンタクトシステムがソーラーセルの表側に設けられ、ひいては、ソーラーセルの面のうちその後の使用時に光に対向する面に設けられる場合に使用する。それに対して「裏側コンタクト」という概念は、両コンタクトシステムがソーラーセルの裏面上に配置され、ひいては、ソーラーセルの面のうちでその後の使用時に光と反対側になる面に配置される場合に使用される。しかし、このようなコンタクトシステムの構成で常に重要なのは、まず第1に、キャリア収集の効率である。ソーラーセルの吸収層が十分に良好な電子的品質である場合、すなわち、少数キャリアの有効拡散長さが吸収層の層厚さより大きい場合、電流を取り出すコンタクトシステムは通常、有利には、ソーラーセルのその後の使用時に光と反対側になる面上に設けられる(裏側コンタクト)。このことによってとりわけ、次のような利点が得られる。すなわち、第1にコンタクトシステムによる遮蔽損失が生じず、ソーラーセルの効率改善が実現されるという利点と、第2に、ソーラーセルの表側を良好かつ簡単に面全体で表側パッシベーションを行うことができ、それによって、表側における過剰キャリアの再結合を効率的かつ簡単に阻止できるという利点とが得られる。しかし、吸収層が比較的低い電子的品質である場合、すなわち、少数キャリアの有効拡散長さが吸収層の層厚さより小さい場合、電流を取り出すコンタクトシステムは有利には、ソーラーセルの表側に設けられる(表側コンタクト)。このようにして、吸収体の有効拡散長さより小さい深さで生成された該吸収体の少数キャリアをすべて確実に集めることができる。その際に不可避の、少なくとも1つのコンタクトシステムによる不都合な遮蔽に対して、片面表側コンタクトでは、技術的に非常に簡単な次のようなコンタクト手法で、すなわち、とりわけ裏側コンタクトを有さないことにより、たとえば薄層堆積で吸収層または放出層の構造化を必要としないコンタクト手法で、意義深い利点が得られる。
【0004】
従来技術
従来は片面表側コンタクト型ソーラーセルは、技術的に簡単かつ効率的な製造方法が存在しないために、ほとんど実現することができなかった。従来技術からは主に、片面裏側コンタクトが公知である。このような片面裏側コンタクトでは、吸収層の多数キャリアを集めるための第1のコンタクトシステムが該吸収層の少数キャリアを集めるための第2のコンタクトシステムから電気的に確実に絶縁されることを保証しなければならない。従来技術からは、こうするために片面裏側コンタクト型ソーラーセルを製造および構成するための種々のコンセプトが公知である。
【0005】
このような裏側コンタクトの1つのコンセプトに、表面隆起部を使用するコンセプトが存在する。このコンセプトは、たとえばDE4143083A1から公知である。ここでは、第1のコンタクトシステムおよび第2のコンタクトシステムは、隆起部を有する基板表面上に直接配置されるか、または該基板表面上の絶縁層上に(たとえば多角形、円錐形、または円筒形に形成されて)配置され、該隆起部は少なくとも部分領域において、まずパッシベーション材料によって被覆された後、コンタクトシステムを被着するために部分的に該パッシベーション材料が除去される。さらに、コンタクトシステム間に基板面に沿って、吸収層の少数キャリアを取り出すための反転層が延在する。さらにDE4143084A1から、まず、構造化された基板表面全体をパッシベーションし、その後、隆起部の領域においてこのパッシベーション層を除去することが公知である。
【0006】
最後にDE10142481A1から、前記隆起部をリブ形状で、活性半導体基板の下面に配置し、各リブ側縁に、指向性蒸着によってコンタクトシステムを設けることが公知である。したがって、このようなコンセプトの一部には常に、基板下面に隆起部を形成した後、異なる処理で処理することが含まれる。
【0007】
裏側コンタクトの別のコンセプトに、ポイントコンタクト(PC)がある。このポイントコンタクトでは、両コンタクトシステムは裏側に点形で非常に小さく抑えられることにより、飽和阻止電流が低減され、ひいてはソーラーセルの無負荷電圧が上昇される。表面パッシベーションが極度に良好であることは、ここでは重要ではない。US5468652から、たとえば次のようなポイントコンタクトが公知である。すなわちレーザによって、吸収層の表側に配置された放出層と吸収層とに空けられた孔が基板下面において第2のコンタクトシステムとコンタクトされるポイントコンタクトが公知である。ここでは第2のコンタクトシステムは、吸収層の多数キャリアを取り出すための第1のコンタクトシステムに接続されている。WO03/019674A1から、異なる大きさのコンタクト孔直径を有するポイントコンタクトが公知である。このポイントコンタクトは、矩形の領域に対称的に配置されている。さらに、最も近い従来技術として本発明の基礎となっているDE19854269A1から、次のようなポイントコンタクトソーラーセルが公知である。すなわち、吸収層の少数キャリアを集めるための第2のコンタクトシステムが格子形に構成され、導電性の基板より前方に吸収層の裏側に直接配置されているポイントコンタクトソーラーセルが公知である。吸収層から多数キャリアを集めるための第1のコンタクトシステムは面全体に形成されており、導電性の基板の裏側に配置されている。吸収層と基板との間の第2のコンタクトシステムは、両面において電気的に絶縁されている。放出層との接続はここでも、該放出層と吸収層とに孔を空け、この孔にコンタクト孔として金属を充填することによって行われる(図6を参照されたい)。第2のコンタクトシステムの電気的コンタクトは、ソーラーセルの側方に配置されたブリッジを介して行われる。したがって、このようなポイントコンタクトでも構造化ステップが必要である。
【0008】
裏側コンタクトを有するインターデジタル形ソーラーセルの第3のコンセプトでも(Interdigitated Back Contact IBC)でも同様のことが当てはまる。ここでも、第1のコンタクトシステムと第2のコンタクトシステムとは櫛状に基板裏側で接続されている。このことはたとえば、US4927770、US2004/0200520A1、DE19525720C2またはDE10045246A1から公知である。しかし、ポイントコンタクトソーラーセルとは異なって放出層は、使用時に光に対向する吸収層の表側に一続きで配置されず、その代わり、使用時に光と反対側になる裏面上に小さい部分領域で配置される。ここでは、少数キャリアを後方散乱する表面フィールド(Back Surface Field BSF)を形成するために、同じでありかつ比較的強いドーピングを有する部分領域との交代が行われ、たとえば吸収層の交代が行われる。したがってこのような構造化手段は、このコンセプトでは放出層のパターン形成にまで及ぶ。ここでは、異なる部分領域の相互間の電気的絶縁が重要な問題となる。
【0009】
さらにDE69631815T2から、ウェハをベースとする裏側コンタクト型の結晶ホモソーラーセルが公知である。ここでは、放出層の構造化は吸収層の逆ドーピングによって行われる。この逆ドーピングは、コンタクト格子に由来するドーパントによって行われる。ここでは、コンタクト格子の形態の一方のコンタクトシステムは放出層に配置され、絶縁層によって包囲され、他方のコンタクトシステムによって被覆される。このようにして、両コンタクトシステムは相互に積層され、絶縁層によってのみ分離される。放出体は独立した機能層としては形成されず、その代わり、組み込まれた小さい領域として、吸収層の半導体材料(結晶シリコン)に逆ドーピングによって形成される。すなわち、これはホモソーラーセルである。金属格子上の絶縁層は自己配向で、たとえば酸化アルミニウム等の選択性酸化物によって形成することができる。比較的深くまで達する放出領域は高い温度影響で、金属格子の成分の拡散と半導体材料における合金の形成とによって(逆ドーピング)、吸収層の裏側の半導体材料中に形成されるか、ないしは予め裏側に拡散注入されたBSF層に形成される。したがってコンタクト格子は、常に放出領域に配置される。このような逆ドーピングによって、2つの逆ドーピングされた半導体層間で明確なp/n接合部を形成することはできない。逆ドーピングのための拡散過程は高い温度を必要とし、制御が困難である。このことはすべて、公知のホモソーラーセルにおいて効率を制限する要因となる。
【0010】
最後に、本発明のように基本的にコンタクト問題に取り組んでいるDE19819200A1から、放出層および両コンタクトシステムが指形に構造化される片面表側コンタクトが公知である(図4を参照されたい)。また、エッチング構造化によってトレンチまたは孔が形成されシャドウマスクを透過してメタライジングが被着されることによって形成される片面コンタクトも挙げておく。DE19715138A1から、表側コンタクトを有するソーラーセルを両コンタクトシステムおよび放出層の構造化によって直列接続し、櫛状のコンタクトシステムのウェブを相互に適切に導電接続することが公知である。裏側コンタクト型ソーラーセルとのこのような直列接続または並列接続も、従来技術から公知である。
【0011】
課題提起
本発明の課題は、コンタクトシステムに関しても個々のソーラーセル層に関しても簡単に面倒な構造化手段なしで実施することができる片面コンタクト型ソーラーセルの製造方法を提供することである。それと同時にこの製造方法では、両コンタクトシステムが良好に電気的に分離され高信頼性で動作する可能な限り高効率のソーラーセルを提供しなければならない。前記課題に対する本発明の解決手段は、方法に関する請求項と、それに対して並行する生成物の請求項とに記載されている。方法の請求項と生成物の請求項とにそれぞれ所属する従属請求項に有利な実施形態が記載されており、これらを以下で、本発明に関して詳細に説明する。
【0012】
本発明による方法によって、吸収層または放出層を構造化する必要がない片面コンタクトが実現される。こうするためには、コンタクト格子の形態の第1のコンタクトシステムは吸収層の面に被着される。このことによって、良好なオームコンタクトが形成される。ここで吸収層とのコンタクト格子のコンタクト面は、期待される電流を最適に取り出すことができるように寸法決めされる。コンタクト格子の全面積は通常、吸収面積の5%を下回る。次にコンタクト格子を、吸収層と接触しない自由な表面全体で、絶縁層の被着によって電気的に絶縁する。その際には、この絶縁層は少なくとも、キャリアの貫通トンネリングも確実に阻止するように選択された最小層厚さを有する。以下で、絶縁層を被着するための種々の手段を挙げる。コンタクト格子の電気的なコンタクトは、放出層の堆積時と、その後に生成された絶縁層の除去(たとえば機械的な掻き取り)による接続領域の露出時に、側方に配置されたウェブまたは該コンタクト格子上の接続領域の(シャドウマスクごとの)切欠によって行われる。
【0013】
コンタクト格子の電気的な絶縁の後、放出層が該コンタクト格子上に面全体に被着され、該コンタクト格子は吸収層と放出層との間に設けられる。ここで、被着された放出層の層厚さは次のように選択される。すなわち、著しいオーム損失を受けることなく、吸収層の少数キャリアが放出層の吸収層と反対側の裏面に到達できるように選択される。とりわけ、放出体薄層も被着することができる。すなわち、放出層およびコンタクト格子の層厚さに応じて、コンタクト格子を完全に被覆する閉じられた面全体の放出層(該放出層の層厚さはコンタクト格子および絶縁層の層厚さより大きい)が形成されるか、または、コンタクト格子を完全には被覆しない断続的な放出層(該放出層の厚さはコンタクト格子および絶縁層の層厚さより小さい)が形成される。放出層のこのような断続は面倒な構造化ではなく、層厚さの選択によって必ず得られる簡単な面全体の放出体堆積の系列である。さらに、放出層は次のような材料から成る。すなわち、吸収層との間に良好なパッシベーション性のpn接合面が形成され、キャリアの最大界面再結合速度を10再結合/cmsに維持できる材料から成る。しかし、たとえば10再結合/cmsの界面再結合速度を実現することができる。放出層の実施形態に関しては、下記を参照されたい。
【0014】
次に、吸収層の少数キャリアを放出層から取り出すための第2のコンタクトシステムは、本発明による方法では未構造化のコンタクト層として放出層の裏面に配置される。このことにより、良好なオームコンタクトが形成される。
【0015】
ここではコンタクト層は、面全体に形成されるか、またはマスク技術を適用することによって面の一部に形成され、たとえば金属コンタクトを適用するかまたは蒸着することにより、簡単に被着することができる。コンタクト層は、直接到達できることにより、別の手段を使用せずに電気的に直接コンタクトすることができる。
【0016】
本発明による方法では、ソーラーセルの片面表側コンタクトにも片面裏側コンタクトにも同様に適している。上記ですでに、片面コンタクトの選択は吸収層の電子的品質に依存することを述べた。この電気的品質が良好である場合、遮蔽損失が比較的小さいので、裏側コンタクトを行うことができる。しかし電子的品質が悪い場合には、表側コンタクトを優先しなければならない。
【0017】
裏側コンタクトは、吸収層の多数キャリアを集めるためのコンタクト格子を該吸収層の裏面に被着するステップ II を実施することで形成される。その際には、吸収層の裏面に放出層も配置される。このことによって、吸収層の表側に放出層が配置されることによって通常発生する吸収損失が回避される。表側において吸収層を放出層によってパッシベーションすることがなくなるので、吸収層は、該吸収層を設けるステップIの後、別のステップAにおいて、相応に透過性のカバー層によってパッシベーションしなければならない。ここでは、たとえば酸化シリコンまたは窒化シリコンから成るパッシベーション性のカバー層は、(表面欠陥の直接的なパッシベーション、または少数キャリアを後方散乱する表面フィールドの形成、Front Surfice Field FSF の形成によって)表面再結合を低減するために使用され、また、反射防止層の形態で入射光の反射の低減にも使用される。
【0018】
表側コンタクトは、ステップ II を吸収層の表側で実施することで実現される。これに相応して、表側コンタクトでは、同様にその後の光入射面になる面に配置された放出層から吸収層の少数キャリアを取り出すためのコンタクト層も透過性に形成すべきであり、たとえば透明導電酸化物層TCOの形態で形成しなければならない。吸収層の裏面にカバー層を設けるべきか否かは(ステップB)、ここでも吸収層の電子的品質にも依存する。これが良好である場合、キャリア再結合を回避するためにパッシベーション層が必要である。さらに場合によっては、吸収されないフォトンを反射するための反射層も必要である。それに対して、吸収層の電子的品質が悪い場合、少数キャリアは吸収層裏面には到達しないので、別の手段を講じる必要はない。吸収層の裏面はパッシベーション性のカバー層を必要としないので、たとえば、吸収層および/または吸収されなかったフォトンを反射するための反射層を成長させるための非常に欠陥の多い開始層(種層)をカバー層として使用することができる。表側でのキャリア収集を改善するためには、コンタクト層を被着するステップVの後に別のステップCを実施することができる。これは、コンタクトエレメントを透明なコンタクト層の表側に被着することである。遮蔽損失を低減するためには、コンタクトエレメントおよびコンタクト格子を合同で形成し、相互に直接積層して配置するのが有利である。
【0019】
コンタクト格子の被着は事前製造された状態で、たとえば導電接着材を使用して、吸収層に直接被着することができる。ここでは「格子」という概念は、指形または同様のパターンも含む。さらにコンタクト格子は、1回のスクリーン印刷によって、または適切なマスクを適用して導電性材料を熱蒸着することにより、選択的に吸収層に直接設けることができる。インクビーム印刷またはフォトリソグラフィを適用することも可能である。
【0020】
コンタクト格子で少数キャリアの不所望の再結合を阻止するためには、コンタクト格子を吸収層に被着するステップ II の後に付加的なステップFを行うことができる。このステップは、コンタクト格子に由来するたとえばアルミニウム等の導電性の材料を、該コンタクト格子の下方に位置する吸収層中にアニールして、たとえばp型ドーピングされたシリコン中にアニールして、裏面パッシベーションフィールドを形成するステップである(Back-Surface-Field BSF, alneal 処理)。とりわけこの熱によるステップは、電気的に絶縁された絶縁層をコンタクト格子に形成する熱によるステップと関連づけることができる(次欄を参照されたい)。
【0021】
ステップ III においてコンタクト格子の自由な表面に絶縁層を被着するためには、スクリーン印刷またはインクビーム印刷を適用するか、または、とりわけシャドウマスクであるマスクを適用するか、またはスパッタリングまたは気相堆積またはフォトリソグラフィを適用することによって、たとえば絶縁性材料を選択的に被着することができる。択一的に、コンタクト格子の自由な表面全体と吸収層裏面とに、熱的または湿式化学的または電気化学的に酸化物層を成長させることもできる(ステップD)。このステップでは、コンタクト格子と吸収層とで異なって選択された材料に起因して、異なる酸化物層が形成される。たとえばアルミニウムから成るコンタクト格子では相応に酸化アルミニウムが形成され、シリコンから成る吸収層の場合には、酸素アニールの場合に熱酸化シリコンが形成される。酸素アニールの例では、アルミニウムコンタクト格子の系では、シリコン吸収層上に約20nmの厚さの酸化アルミニウムが該コンタクト格子の自由な表面全体に形成されることを期待することができ、該コンタクト格子によって被覆されない吸収層の表面には約5nmの厚さの酸化シリコンが形成されることを期待することができる。酸化物層が熱的に生成される場合、このプロセスを、コンタクト格子の導電性材料を吸収層中にアニールしてBSFを形成するステップFと一緒に、温度制御される加熱プロセスで実施することができる。
【0022】
次に、酸化物層を吸収層に選択的なエッチングによって形成するステップ(ステップE)は、相応に問題なく行うことができる。というのも、酸化物が異なると通常は、該酸化物のエッチングプロセス時のエッチング速度は異なるからである。とりわけ、適切に選択されたエッチング剤では、金属酸化物は酸化シリコンより高いエッチング耐性を有する。相応に放出層にも使用されるアルミニウムおよびシリコンの材料例では、たとえば短時間の単純な浸漬による選択的エッチングは、希釈されたフッ酸に置き換えることができる。このフッ酸は、酸化シリコンを選択的に除去するだけでなく、シリコンから成る吸収層がSi‐H結合の形成によって良好に表面パッシベーションされるのも保証する。したがってこのエッチング剤は、吸収層における酸化物の除去後に該吸収層が、露出された表面で良好にパッシベーションされるように選択することができる。
【0023】
ヘテロソーラーセルでは、放出体と吸収体との間の界面をより良好にパッシベーションするために、放出層と吸収層との間でバッファ層を使用することが多い。したがって、絶縁層をコンタクト格子上に形成するステップ III の後に別の任意選択のステップGを実施するのが有利である。このステップGは相応に、オプションとしてバッファ層を可能な限り小さい層厚さで面全体に堆積するステップである。吸収体である結晶シリコンウェハ上に設けられた放出体材料として、ドーピングされた非晶質シリコンが使用される場合、このバッファ層はたとえば超薄(約5nm)の層として、真性の(ドーピングされていない)非晶質シリコンから形成することができる。また、バッファ層を塩から、たとえば塩化セシウムから形成することもできる。その際には、適切な表面ダイポールが形成され、pn接合面における界面再結合が抑圧される。
【0024】
本発明による上記の方法によって高効率のソーラーセルを、ウェハを吸収層としてベースとする厚層セルとしても、サブストレートまたはスーパーストレート上に成長した層結合体を有する薄層セルとしても、もっぱら片面のコンタクトによって製造することができる。ここで留意すべきなのは、自己担持型のウェハが吸収層とされる場合、両面を任意に処理できることである。それに対して、薄層構成の場合には常に、サブストレート(光入射はまず機能層を透過する)またはスーパーストレート(光入射はまずスーパーストレートを透過する)で出発して順次的な処理を行わなければならない。というのも、薄い吸収層は担持しないからである。したがって、ウェハソーラーセルや薄膜ソーラーセルの製造の間でステップの順序を変更することができる。個々のステップ自体は変更なしで維持される。したがって、基本的に本発明によるソーラーセルは、以下のことを特徴とする。すなわち、第1のコンタクトシステムとして、吸収層の多数キャリアの収集に関して面最適化され放出体に対して絶縁層によって電気的に絶縁されたコンタクト格子が該吸収層と放出層との間に配置され、第2のコンタクトシステムとして、該放出層の該吸収層と反対側の面に扁平なコンタクト層が配置され、該放出層は、10再結合/cmsの過剰キャリアの最大界面再結合速度でパッシベーションするpn接合面を該吸収層との間に成す半導体材料から成ることを特徴とする。このようにして裏側コンタクトされたソーラーセルはさらに、新規の層構造ジオメトリを示す。というのも、このソーラーセルは吸収層の裏面に一続きの放出層を有するからである。
【0025】
吸収層および放出層は、有利にはシリコンから成る。その際にはとりわけ、相応にp型ドーピングまたはn型ドーピング(p/n a‐Si:H)された吸収層に、n型ドーピングまたはp型ドーピング(n/p c‐Si)された結晶シリコンを使用し、放出層に、水素でエンリッチされた非晶質シリコンを使用することにより、ヘテロコンタクトソーラーセルが形成される。吸収層と放出層との間にオプションとして設けられるバッファ層も、有利には非晶質シリコンから、しかもドーピングしないで形成される。このような材料系は、キャリア分離のためのpn接合面が特に良好にパッシベーションされるのを保証する。この場合、裏側コンタクトでは、すべてのコンタクトシステムをアルミニウムから形成することができる。表側コンタクトの場合、コンタクト層は透明導電材料から形成しなければならない。繰り返しを避けるため、本発明による片面コンタクト型ソーラーセルの別の実施形態に関しては、専門的な説明部分を参照されたい。
【0026】
実施例の説明
本発明による片面コンタクト型ソーラーセルの製造方法および片面コンタクト型ソーラーセル自体を以下で、概略的な図面に示された実施例にしたがって詳細に説明する。各図は、拡大比率通りではない。
【0027】
図面
図1 本方法の概略的な流れ図である。
【0028】
図2 裏側コンタクト型ソーラーセルの断面図である。
【0029】
図3 表側コンタクト型ソーラーセルの断面図である。
【0030】
図4 複数の片面コンタクト型ソーラーセルのモジュール接続の平面図である。
【0031】
片面コンタクト型ソーラーセルの製造方法は、表側コンタクトの形成にも裏側コンタクトの形成にも同様に使用することができる。ここでは以下で、ソーラーセルSZの表側OSZを、該ソーラーセルSZのその後の動作で光入射用の面として定義し、該ソーラーセルSZの裏面OSAを、該ソーラーセルSZのその後の動作で光入射用でない面として定義する。光入射に関しては、別の構成要素でも同様のことが適用される。
【0032】
図1に、裏側コンタクト型ソーラーセルSZの製造が、(ソーラーセルの断面が示された)概略的な流れ図で図解されている。表側コンタクト型ソーラーセルの製造も同様に行われる。p型ドーピング(p c‐Si)された結晶シリコンから成る吸収層ASと、水素でエンリッチされn型ドーピング(n a‐Si:H)された非晶質シリコンから成る放出層ESと、コンタクト格子KGおよびコンタクト層KSのためのアルミニウムとを有するソーラーセルSZの製造を、一例として挙げる。ソーラーセルSZをヘテロコンタクトソーラーセルHKS(図2を参照)として構成するために使用されるこのような材料選定では、アルミニウム/シリコンコンタクトは公知のように短時間のアニールによって、高濃度でpドーピングされたシリコンを含みキャリアを後方散乱する局所的な領域BSFが形成され、これによって、コンタクト格子KGにおける再結合が低減される(alneal 処理)。
【0033】
ステップI
適切な吸収層ASを選定および形成するステップ。これはシリコンウェハとすることができ、また、薄膜技術によって成長したシリコン薄層とすることもできる。有利には、p型ドーピングされた結晶シリコンとされる(p c‐Si)。その後で行われる、光に対向する吸収層ASの表側OSZへの光入射が矢印によって示されており、これらの矢印は図1では、吸収層ASより下方に示されている。必要な場合には、吸収層の表側OSZをテクスチャ加工することにより、光入力結合を改善することができる。このことは、ウェハベースのソーラーセルの場合、吸収層の裏面OSAにも当てはまる。
【0034】
ステップA
吸収層ASの表側OSZを、酸化シリコンまたは窒化シリコンから成るカバー層DSによって標準的な手法にしたがってパッシベーションするステップ。ここでは、カバー層DSは2重機能を有することができる。というのも、パッシベーションの他にも(パッシベーション層PAS)入射光の反射を低減することもできるからである(反射防止層ARS)。別個の機能を有する2つ以上のカバー層DSを被着することも可能である。
【0035】
ステップ II
吸収層ASの裏面OSAに、アルミニウムから成るコンタクト格子KGを被着するステップ。コンタクト格子KGは、カバーマスクによって熱蒸着で被着することができ、または1回のスクリーン印刷またはインクビーム印刷またはフォトリソグラフィによって被着することもできる。
【0036】
ステップF
コンタクト格子KGのアルミニウムを吸収層AS中にアニールするステップ(図1において、垂直にすり抜ける矢印によって示されている)(alneal 処理)。このステップにより、キャリアを後方散乱する局所的な領域BSFがAlコンタクト格子KGの下方に形成される。場合によってはBSFを生成するために、ステップAとステップ II およびFとを交代することもできる。ステップFはオプションではあるが、このステップFによってソーラーセルSZの効率をさらに上昇することができる。ステップFは、ステップDと共通の加熱プロセスで実施することができる。
【0037】
ステップ III
非導電性の絶縁層ISをコンタクト格子KG上に、自由な表面すべてにおいて生成するステップ。ここでは、絶縁層ISは少なくとも、キャリアのトンネリングが確実に阻止されるような層厚さを有さねばならない。このような絶縁手段によって、両コンタクトシステム相互間の高信頼性の絶縁が保証される。絶縁層ISは、たとえばスクリーン印刷またはインクビーム印刷またはマスク技術またはスパッタリングまたは気相堆積またはフォトリソグラフィによって絶縁材料を被着することにより、簡単に生成することができる。択一的に、絶縁性の酸化物層OXをステップDにしたがって生成することもできる(酸化アルミニウムAlおよび酸化シリコンSiO)。その際には、次に吸収層AS上の酸化シリコンを、ステップEにしたがって吸収層ASにおいて選択的に除去する。
【0038】
ステップD
たとえば、酸素雰囲気中でアニールを行うことによりAlコンタクト格子KGの表面を酸化するステップ(図1では、垂直にすり抜ける矢印によって示されている)。ここでは、少なくともステップFが実施されない場合、約30nmの厚さの酸化アルミニウムAlと約5nmの厚さの酸化シリコンSiOとが得られる。酸化物層OXを湿式化学的または電気化学的に成長させることもできる。
【0039】
ステップE
吸収層ASの領域において、たとえば希釈されたフッ酸に浸漬することにより(HF‐Dip)、酸化シリコンを選択的にエッチング除去するステップ(図1では、上方向を指す小さい矢印によって示されている)。フッ酸は酸化シリコンを非常に強力にエッチングするが、酸化アルミニウムをほとんどエッチングしないので、浸漬時には酸化シリコンのみが選択的に除去される。ステップFが省略される場合、酸化シリコンは酸化アルミニウムよりもさらに薄くなる。窒化シリコンがパッシベーション性のカバー層DSとして使用される場合、このカバー層DSもまた、フッ酸によるエッチングに対して不活性である。それに対して、熱酸化シリコンがカバー層DSとして使用される場合、エッチング速度は次のように選択しなければならない。すなわち、吸収層ASの表側OSZの酸化シリコンは(約200nmに)維持され、かつ、該吸収層ASの裏面OSAの酸化シリコン(約5nm)は完全に除去されるように選択しなければならない。HFディップによって裏面の酸化シリコンが除去されるだけでなく、さらにシリコン表面が、形成されたSi‐H結合によって良好にパッシベーションされる。
【0040】
ステップG
超薄のバッファ層PSを、たとえばプラズマアシスト気相堆積(PECVD)によって面全体に堆積するオプションのステップ。ここで選択された実施例では超薄のバッファ層PSは、水素化された真性の非晶質シリコンi a‐Si:Hである。ここではバッファ層PSは、吸収層ASと放出層ESとの間の界面(pn接合面)のパッシベーションに使用され、これによって再結合を低減する。こうするために、バッファ層PSを可能な限り小さい層厚さで、たとえば5nmの層厚さで被着することができる。
【0041】
ステップ IV
たとえば、nドーピングおよび水素化された非晶質シリコンn a‐Si:Hから成る薄層放出体のプラズマアシスト気相堆積(PECVD)によって薄厚の放出層ESを面全体に堆積するステップ。スパッタリングまたは熱蒸着による堆積も可能である。吸収層ASの裏面OSAに裏側コンタクトが形成される際、薄厚(pn接合面を形成できるようにするためには、最小で約5nm)の放出層ESが存在するので、この裏側コンタクトを有意な再結合損失なしで、比較的厚く堆積することもでき(たとえば5nmではなく50nm)、コンタクト格子KGの寸法が比較的大きいにもかかわらず(高さ約1μm)吸収層ASが完全にカバーされるのを保証することができる。このような層厚さ比率で、コンタクト格子KGの領域において放出層ESが中断される。しかしこのことは、ソーラーセルSZの動作に影響しない。各図に、コンタクト格子KGが放出層ESによって隙間無くカバーされているのが示されている。すなわち、ここでは放出層ESは、コンタクト格子KGと絶縁層ISとを合わせた厚さより厚く選択される。吸収層ASとの間に放出層ESは、キャリアを分離するpn接合面を成す。ここでは放出層ESは、キャリアが該放出層ESの吸収層と反対側の面OSEに、有意なオーム損失を伴わずに到達できるような最大層厚さを有する。
【0042】
ステップV
第2のコンタクトシステムを扁平なコンタクト層KSの形態で、放出層ESの吸収層と反対側の裏面に被着するステップ。たとえば、面全体の金属性コンタクトをアルミニウムの熱蒸着によって行うことができる。
【0043】
ステップ VI
コンタクト格子KGとコンタクト層KSとをコンタクトするステップ。コンタクト層KSが自由に到達可能であることにより、該コンタクト層KSを容易に、任意の場所で電気的にコンタクトすることができる。ステップ IV による放出層ESの堆積時と後方のコンタクト層KSの蒸着時とでそれぞれマスクを適用して、コンタクト格子KGの上方において小さい領域を切り欠くことにより、該コンタクト格子KGを直接コンタクトすることができる。次に、このような領域において絶縁層ISを(たとえば、たとえば30nmの薄さの酸化アルミニウム層の摩擦等の機械的な破壊によって)除去することにより、コンタクト格子KGまで給電路を案内することができる。
【0044】
択一的に、コンタクト格子KGは櫛状のウェブSTをソーラーセルの外側に有することができ、このウェブSTは、放出層ESおよびコンタクト層KSの生成時には半分まで被覆される。このウェブSTはその際、絶縁層ISの除去後に電気的にコンタクトされる(図1において、ステップ VI において択一的に、右側に示されている)。
【0045】
ステップH
オプションとして、ステップ IV の後に別のステップHである、吸収層ASのコンタクト格子KGによってカバーされていない表面を洗浄するステップも実施することができる。しかし実際には、放出層ESのa‐Si:H堆積直前には常に、吸収層ASの表面を洗浄ないしは露出することにより(短時間HFディップ)、放出体堆積直前の吸収層ASの良好な界面パッシベーション、ひいてはヘテロソーラーセルHKSの良好な効率を保証しなければならない。その際にはHFディップによって、30分より長い時間で沈着されたシリコン表面上に常に存在する自然の酸化シリコンを除去するか、または、コンタクト格子KGの絶縁プロセスによって生成された熱的/電気化学的な酸化シリコンを除去する。
【0046】
図2に、処理完了されたソーラーセルSZの(コンタクト格子KGのコンタクトフィンガに対して横方向の)断面が示されている(光入射は、平行な矢印によって示されている)。このソーラーセルSZは裏側コンタクトを有する。吸収層ASの表側OSZに、2重機能カバー層DSが配置されている。吸収層ASの裏面OSAに、該吸収層ASから多数キャリアを集めるためのコンタクト格子KGが設けられている。コンタクト格子KGの下方には、吸収層ASにおいてキャリア後方散乱フィールドBSFが形成されており、これによって再結合損失が低減される。コンタクト格子KGは電気的な絶縁層ISによって被覆されることにより、後続の面全体の放出層ESとの短絡が生じないようにされている。吸収層ASと放出層ESとの間には、オプションとしてバッファ層PSを配置することができる。放出層ESと吸収層ASとの間には、キャリアを分離するpn接合面が形成されており、吸収層の少数キャリアは放出層に送られる。放出層ESの面全体に、該放出層ESからキャリアを集めるためのコンタクト層KSが被着されている。たとえば金属性であるこのコンタクト層KSは、吸収されなかったフォトンに対する反射層RSとしても使用される。電気的コンタクト(電圧V)は、自由に到達可能なコンタクト層KSとコンタクト格子KGの露出場所との間で行われる。
【0047】
図3に、処理完了されたソーラーセルSZの(コンタクト格子KGのコンタクトフィンガに対して横方向の)断面が示されている(光入射は、平行な矢印によって示されている)。このソーラーセルSZは表側コンタクトを有する。ここでは、吸収層ASの表側OSZに扁平なコンタクト層KSが、透明導電酸化物層TCOの形態で形成されている。このコンタクト層KSの下方の構成は、図2に示された裏側コンタクトを有するソーラーセルSZの構成に相応する。この構成との相違点として、図3に示された表側コンタクト型ソーラーセルSZでは、透明なコンタクト層KSの表側OSKに、オプションである金属性のコンタクトエレメントKEが配置されている。このコンタクトエレメントKEによって、キャリアの収集および取り出しが改善される。というのもコンタクト層KSとしては、透明導電酸化物層の電気伝導度は層厚さに依存して、金属性のコンタクト層KSほど有効でないからである。コンタクトエレメントKEを使用して、電流取り出しに必要なTCOコンタクト層KSの層厚さを低減することができる。遮蔽を低減するために、コンタクトエレメントKEはコンタクト格子KGに対して合同に形成されて配置される。コンタクトエレメントKEは、たとえばクロム/銀から形成することができ、コンタクト層KSとともに電気的にコンタクトされる。
【0048】
さらに、裏側コンタクト型ソーラーセルSZとの相違点として、吸収層ASの材料の電子的品質が比較的低い場合、表側コンタクト型ソーラーセルSZの場合には、吸収層ASの裏面OSAにパッシベーション層PASを設ける必要がない。したがって吸収層ASの裏面OSAに、裏側カバー層DSとしてたとえば、吸収層ASを最適に堆積するための種層SSを設けることができる。この種層SSは、すでに基板SU上に被着完了していることができる。
【0049】
さらに、パッシベーション層PASないしは種層SSの他に、吸収されなかったフォトンを反射する付加的な反射層RSもカバー層DSとして設けることもできる。
【0050】
図4に、共通のソーラーセルモジュールSZM内において複数の片面コンタクト型ソーラーセルSZの接続例が示されている(裏側コンタクトの場合のその後の光入射とは反対側の裏面の平面図では簡略化されており、面全体のコンタクト層KSはコンタクト格子KGにわたって存在するが、コンタクト格子KGのウェブSTはコンタクト層KSによって被覆されていない)。すなわち、片面コンタクト型ソーラーセルSZのここで提案されているコンセプトにより、個々のソーラーセルSZを技術的に非常に簡単に直列接続/並列接続して、ソーラーセルモジュールSZMを構成することができる。このような接続は、とりわけ結晶シリコンウェハをソーラーセルSZ用の吸収層ASとして使用する場合に有利である。というのも、直列接続および並列接続のプロセスは片面裏側コンタクトによって格段に簡略化されるからである。コンタクト格子KGのウェブST(図1を参照されたい。ステップ VI に択一的手段)が、吸収層ASである正方形のc‐Siウェハの縁部に設けられる場合、放出層ESをカバーするコンタクト層KSとコンタクト格子KGのウェブSTとを直接的なコンタクトKTによって、たとえば銅リボンKBによって、簡単に直列接続SVまたは並列接続PVすることができる。
【0051】
図4に示された接続は、片面裏側コンタクト型ソーラーセルSZに関する。片面表側コンタクト型ソーラーセルSZの接続では、コンタクト格子KGおよびコンタクトエレメントKEのウェブSTは相互に積層されず、相互に対向するという構成上の小さい差異が生じる。もちろん、別の接続法も可能であり、とりわけ薄層技術に適合された接続法も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本方法の概略的な流れ図である。
【図2】裏側コンタクト型ソーラーセルの断面図である。
【図3】表側コンタクト型ソーラーセルの断面図である。
【図4】複数の片面コンタクト型ソーラーセルのモジュール接続の平面図である。
【符号の説明】
【0053】
ARS 反射防止層
AS 吸収層
BSF キャリア後方散乱フィールド
DS カバー層
ES 放出層
HKS ヘテロコンタクトソーラーセル
IS 非導電性の絶縁層
KB 銅リボン
KE コンタクトエレメント
KG コンタクト格子
KS コンタクト層
KT コンタクト
OSA ASの裏面
OSE ESの吸収層と反対側の面
OSK KSの表側
OSZ ASの表側
OX 導電性酸化物層
PS パッシベーション層
pn pn接合面
PS バッファ層
PV 並列接続
RS 反射層
SS 種層
ST ウェブ
SU 基板
SV 直列接続
SZM ソーラーセルモジュール
SZ ソーラーセル
TCO 透明導電酸化物層
V 電圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの吸収層と、面全体に堆積された放出層とを有する片面コンタクト型のソーラーセルの製造方法であって、
該吸収層および放出層は半導体材料から成り、該吸収層の半導体材料および該放出層の半導体材料のいずれか一方はp型ドーピングされており、他方はn型ドーピングされており、
光入射によって該吸収層中に過剰な多数キャリアおよび少数キャリアが生成され、該吸収層と放出層との間のpn接合部において分離され、該吸収層の多数キャリアは第1のコンタクトシステムを介して集められて取り出され、該吸収層の少数キャリアは該放出層および第2のコンタクトシステムによって集められて取り出され、
両コンタクトシステムは同一のソーラーセル面に設けられている形式の方法において、
I.未構造化の吸収層(AS)を設けるステップと、
II.該第1のコンタクトシステムを、多数キャリアの収集に関して面最適化されたコンタクト格子(KG)の形態で、該吸収層(AS)の面に被着するステップと、
III.キャリアのトンネリングも阻止する非導電性の絶縁層(IS)を該コンタクト格子(KG)上に、該コンタクト格子(KG)の自由な表面全体に生成するステップと、
IV.過剰なキャリアが再結合する最大界面再結合速度が10再結合/cmsでパッシベーションするpn接合面(pn)を該吸収層(AS)との間に形成する半導体材料から成る放出層(ES)を、該吸収層(AS)との間に該放出層(ES)の該吸収層と反対側の面(OSE)に少数キャリアが有意なオーム損失を伴わずに到達できる層厚さで堆積するステップと、
V.該第2のコンタクトシステムを扁平なコンタクト層(KS)の形態で、該放出層(ES)の該吸収層と反対側の面(OSE)上に被着するステップと、
VI.該コンタクト格子(KG)およびコンタクト層(KS)を電気的にコンタクト(V)するステップ
とを有することを特徴とする製造方法。
【請求項2】
前記ステップ II を前記吸収層(AS)の裏面(OSA)で実施し、
前記ステップIまたは ステップ IV またはステップVの実施後に、
A.透明なカバー層(DS)を該吸収層(AS)の表側(OSZ)に生成するステップ
を実施する、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
前記透明なカバー層(DS)をパッシベーション層(PAS)および反射防止層(ARS)として形成する、請求項2記載の製造方法。
【請求項4】
前記コンタクト層(KS)を透明に形成する場合、前記ステップ II を前記吸収層(AS)の表側(OSA)で実施し、
該吸収層の電子的品質に依存して、前記ステップIの実施前または実施後に、
B.1つまたは複数のカバー層(DS)を該吸収層(AS)の裏面(OSA)に生成するステップ
を実施する、請求項1記載の製造方法。
【請求項5】
前記カバー層(DS)をパッシベーション層(PAS)として形成するか、または反射層(RS)として形成するか、または種層(SS)として形成する、請求項4記載の製造方法。
【請求項6】
前記ステップVの実施後に、
C.前記コンタクト格子(KG)に対して合同に形成され配置されたコンタクトエレメント(KE)を、透明なコンタクト層(KS)の表側(OSK)に被着するステップ
を実施し、
前記ステップ VI において、該コンタクトエレメント(KE)を該コンタクト層(KS)と一緒に電気的にコンタクトする、請求項4または5記載の製造方法。
【請求項7】
マスクを使用する熱蒸着、またはスクリーン印刷、またはインクビーム印刷、またはフォトリソグラフィによって、導電性の材料を選択的に被着することにより前記ステップ II を実施する、請求項1から6までのいずれか1項記載の製造方法。
【請求項8】
マスクを使用する熱蒸着またはスパッタリングまたは気相堆積、またはスクリーン印刷、またはインクビーム印刷、またはフォトリソグラフィによって、前記コンタクト格子(KG)の自由な表面全体に電気的に絶縁性の材料を選択的に被着することによって、前記ステップ III を実施する、請求項1から7までのいずれか1項記載の製造方法。
【請求項9】
前記コンタクト格子(KG)と該コンタクト格子(KG)に被覆されていない前記吸収層(AS)の場所とに酸化物層(OX)を熱的または湿式化学的または電気化学的に成長させ(ステップD)、その後、該吸収層(AS)の該コンタクト格子(KG)によって被覆されていない場所において該酸化物層(OX)を選択的にエッチングする(ステップE)ことによって、前記ステップ III を実施する、請求項1から7までのいずれか1項記載の製造方法。
【請求項10】
前記ステップ VI において、前記ステップVで行われる前記放出層(ES)の堆積中に前記コンタクト格子(KG)において接続領域を切り欠きし、前記ステップ IV 後に生成された絶縁層(IS)を除去することによって該接続領域を露出する、請求項1から9までのいずれか1項記載の製造方法。
【請求項11】
前記ステップ VI を、熱蒸着またはスパッタリングまたは気相堆積によって実施する、請求項1から10までのいずれか1項記載の製造方法。
【請求項12】
前記ステップ II の後に、
F.前記コンタクト格子(KG)の導電性の材料を前記吸収層(AS)中にアニールするステップ
を実施する、請求項1から11までのいずれか1項記載の製造方法。
【請求項13】
前記ステップFと前記ステップ III とを、酸化物層(OX)の熱成長のために実施する、請求項10および12記載の製造方法。
【請求項14】
前記ステップ IV の実施後に、
G.バッファ層(PS)を小さい層厚さで堆積するステップ
を実施する、請求項1から13までのいずれか1項記載の製造方法。
【請求項15】
前記ステップGを、熱蒸着またはスパッタリングまたは気相堆積によって実施する、請求項14項記載の製造方法。
【請求項16】
前記ステップ IV の後に、
H.前記コンタクト格子(KG)によって被覆されない前記吸収層(AS)の表面を洗浄するステップ
を実施する、請求項1から15までのいずれか1項記載の製造方法。
【請求項17】
前記吸収層(AS)に、単結晶シリコンまたはマルチクリスタルシリコンまたは多結晶シリコンまたは再結晶化されたシリコンを使用し、
前記バッファ層(PS)および放出層(ES)に、水素化された非晶質シリコンを使用し、
前記コンタクト格子(KG)にアルミニウムを使用し、
前記ステップ II を前記吸収層(AS)の裏面(OSA)において実施する場合には、前記コンタクト層(KS)にアルミニウムを使用するか、または該ステップ II を該吸収層(AS)の表側(OSZ)において実施する場合には、該コンタクト層(KS)に透明導電酸化物(TCO)を使用する、請求項1から16までのいずれか1項記載の製造方法。
【請求項18】
前記吸収層(AS)をウェハまたは薄層として、サブストレート(SU)またはスーパーストレート上に形成し、
薄層技術の場合、該サブストレート(SU)またはスーパーストレートで開始して、連続的に層を堆積するための前記ステップを実施する、請求項1から17までのいずれか1項記載の製造方法。
【請求項19】
少なくとも1つの吸収層と、面全体に堆積された放出層とを有する片面コンタクト型のソーラーセルであって、
該吸収層および放出層は半導体材料から成り、
該吸収層および放出層のいずれか一方の半導体材料はp型ドーピングを有し、他方の半導体材料はn型ドーピングを有し、
該吸収層において光入射により過剰な多数キャリアおよび少数キャリアが生成され、該吸収層と放出層との間のpn接合部において分離され、
該多数キャリアは該吸収層から第1のコンタクトシステムによって集められて取り出され、
該少数キャリアは該吸収層から該放出層および第2のコンタクトシステムによって集められて取り出され、
両コンタクトシステムは同一のソーラーセル面に設けられている形式のソーラーセルにおいて、
該第1のコンタクトシステムとして、該多数キャリアの収集に関して面最適化され該放出層(ES)に対して絶縁層(IS)によって電気的に絶縁されるコンタクト格子(KG)が、未構造化の該吸収層(AS)と放出層(ES)との間に配置されており、
該絶縁層(IS)は、キャリアのトンネリングも阻止し、
該第2のコンタクトシステムとして扁平なコンタクト層(KS)が、該放出層(ES)の該吸収層と反対側の面(OSE)上に配置されており、
該放出層(ES)は次のような半導体材料、すなわち、過剰なキャリアが再結合する最大界面再結合速度が10再結合/cmsでパッシベーションするpn接合面(pn)を該吸収層(AS)との間に成す半導体材料から成ることを特徴とする、ソーラーセル。
【請求項20】
前記コンタクト格子(KG)は前記吸収層(AS)の裏面(OSA)上に配置されており、
該吸収層(AS)の表側(OSZ)に透明なカバー層(DS)が配置されている、請求項19記載のソーラーセル。
【請求項21】
前記透明なカバー層(DS)はパッシベーション層(PAS)および反射防止層(ARS)として形成されている、請求項20記載のソーラーセル。
【請求項22】
前記コンタクト格子(KG)は前記吸収層(AS)の表側(OSZ)に配置されており、
前記コンタクト層(KS)は透明に形成されており、
該吸収層(AS)の電子的品質に依存して、該吸収層(AS)の裏面(OSA)にカバー層(DS)が配置されている、請求項19記載のソーラーセル。
【請求項23】
透明な前記コンタクト層(KS)の表側(OSK)に、前記コンタクト格子(KG)と合同に形成されて配置されたコンタクトエレメント(KE)が設けられている、請求項21記載のソーラーセル。
【請求項24】
前記カバー層(DS)はパッシベーション層(PAS)として形成されているか、または反射層(RS)として形成されているか、または種層(SS)として形成されている、請求項22または23記載のソーラーセル。
【請求項25】
前記ソーラーセル(SZ)の縁側に、前記コンタクト格子(KG)の電気的コンタクトのためにウェブ(ST)が配置されている、請求項19から24までのいずれか1項記載のソーラーセル。
【請求項26】
前記ウェブ(ST)は、1つのソーラーセルモジュール(SZM)において、複数のソーラーセル(SZ)を電気的に直列接続(SV)または並列接続(PV)するために形成されている、請求項25記載のソーラーセル。
【請求項27】
前記放出層(ES)および絶縁層(IS)に、前記コンタクト格子(KG)の電気的コンタクトのために開口が配置されている、請求項19から24までのいずれか1項記載のソーラーセル。
【請求項28】
前記コンタクト格子(KG)の下方に、前記少数キャリアを後方散乱する表面フィールド(BSF)が配置されている、請求項19から27までのいずれか1項記載のソーラーセル。
【請求項29】
前記吸収層(AS)と放出層(ES)との間に、小さい層厚さを有するバッファ層(PS)が配置されている、請求項19から28までのいずれか1項記載のソーラーセル。
【請求項30】
前記吸収層(AS)はウェハまたは薄層として、サブストレート(SU)またはスーパーストレート上に形成されている、請求項19から29までのいずれか1項記載のソーラーセル。
【請求項31】
吸収層(AS):n型ドーピングまたはp型ドーピングされた結晶(単結晶、マルチクリスタル、多結晶または再結晶化された)シリコン
放出層(ES):該吸収層(AS)と逆のp型ドーピングまたはn型ドーピングを有する水素エンリッチされた非晶質シリコン
バッファ層(PS):ドーピングを含まない水素エンリッチされた非晶質シリコン
絶縁層(IS):酸化アルミニウム
カバー層(DS):酸化シリコンまたは窒化シリコン
コンタクト格子(KG):アルミニウム
コンタクト層(KS):アルミニウムまたは透明導電酸化物(TCO)
コンタクトエレメント(KE):クロムまたは銀
が使用されている、請求項18から30までのいずれか1項記載のソーラーセル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−543067(P2008−543067A)
【公表日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−513916(P2008−513916)
【出願日】平成18年5月22日(2006.5.22)
【国際出願番号】PCT/DE2006/000917
【国際公開番号】WO2006/128427
【国際公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【出願人】(591157202)ヘルムホルツ−ツェントルム ベルリン フュア マテリアリーエン ウント エネルギー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (22)
【氏名又は名称原語表記】Helmholtz−Zentrum Berlin fuer Materialien und Energie GmbH
【住所又は居所原語表記】Glienicker Str.100,D−14109 Berlin,Germany
【Fターム(参考)】