説明

版保持具

【課題】液状版感光性樹脂凸版の工程間の搬送を搬送機構によって、機械式に自動で行い、液状版感光性樹脂凸版を製版する際に好適に用いることができる、版保持具を提供する。
【解決手段】液状版感光性樹脂凸版2の横幅以上の長さを有する長尺部材3の前面又は後面に、間隔を開けて複数個のクランプ4が、前記長尺部材3との間で前記液状版感光性樹脂凸版2の版頭を挟み込むことができるように、設けられている。前記長尺部材3の側部に側面板7が設けられており、前記側面板7には穴8が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、段ボール印刷、フィルム印刷、プレプリント印刷、ラベル印刷などの凸版印刷用の液状版感光性樹脂凸版を製版する際に用いられる版保持具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の版保持具は、液状版感光性樹脂凸版の横幅以上の長さを有する長尺部材の前面又は後面に、間隔を開けて複数個のクランプが、前記長尺部材との間で前記液状版感光性樹脂凸版の版頭を挟み込むことができるように設けられた構成とされている。
【0003】
ところで、液状版感光性樹脂凸版は、特許文献1に記載されているように、露光、回収、現像、後露光及び乾燥の各工程を経て製版される。このとき、例えば樹脂の回収工程において、樹脂回収装置に前記構成の版保持具を引っ掛けて、液状版感光性樹脂凸版を吊り下げ、前記液状版感光性樹脂凸版の未硬化樹脂を回収する。回収工程の済んだ前記液状版感光性樹脂凸版は、次の工程を行う処理装置まで作業員が手作業で搬送する。
【0004】
つまり、液状版感光性樹脂凸版の工程間の搬送を搬送機構によって、機械式に自動で行う技術は見聞することができない。
【0005】
そのため、液状版感光性樹脂凸版の工程間の搬送を搬送機構によって、機械式に自動で行う際に、好適に用いられる版保持具も見聞することができない。
【0006】
【特許文献1】特開2001−188354号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、液状版感光性樹脂凸版の工程間の搬送を搬送機構によって、機械式に自動で行い、液状版感光性樹脂凸版を製版する際に好適に用いることができる、版保持具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための手段として、請求項1に記載した発明に係る版保持具は、
液状版感光性樹脂凸版を製版する際に用いられる版保持具であって、
前記液状版感光性樹脂凸版の横幅以上の長さを有する長尺部材の前面又は後面に、間隔を開けて複数個のクランプが、前記長尺部材との間で前記液状版感光性樹脂凸版の版頭を挟み込むことができるように、設けられていること、
前記長尺部材の側部に側面板が設けられており、前記側面板には穴が形成されていることを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載の版保持具において、
側面板の穴の個数は4個であることを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1に記載の版保持具において、
長尺部材の上端部に引っ掛け片が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る版保持具は、液状版感光性樹脂凸版の工程間の搬送を搬送機構によって、機械式に自動で行い、液状版感光性樹脂凸版を製版する際に好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明に係る版保持具を図面に基づいて説明する。
【0013】
本実施形態の版保持具1は、液状版感光性樹脂凸版2の横幅l以上の長さLを有する長尺部材3の後面(但し、前面でも可能。)に、間隔を開けて複数個のクランプ4が、前記長尺部材3との間で前記液状版感光性樹脂凸版2の版頭を挟み込むことができるように、設けられている(図1及び図2を参照)。
【0014】
長尺部材3は液状版感光性樹脂凸版2を保持するのに十分な強度を有する鋼製の薄板材からなり、液状版感光性樹脂凸版2を保持した際に両側に突出部3aが形成される長さLとされている。クランプ4と4との間隔部分には肉抜き5が施されており、軽量化が図られている(図1を参照)。
【0015】
クランプ4は、ハンドル4aを図2の矢印方向に回転させることで、前記ハンドル4aの端部に連結されたリンク機構4bが稼動し、前記リンク機構4bの端部に連結された押さえ棒4cの端部が長尺部材3に押し付けられ、又は引き離される構成とされている(図2を参照)。なお、前記押さえ棒4cの端部には、液状版感光性樹脂凸版2を長尺部材3との間に保持した際に、損傷させないようにゴム製のキャップ6が嵌め込まれている。
【0016】
要するに、上記構成の版保持具1は、通例の版保持具と略同様の構成とされているが、長尺部材3の側部に側面板7が、前記長尺部材3に対して略直角に設けられており、この側面板7には穴8が形成されていることを特徴とする。つまり、詳細は後述するが、前記側面板7の穴8に、工程間を結ぶ搬送機構のピンを差し込んで、搬送する構成とされているのである。そのため、側面板7は、前記のように搬送機構のピンを穴8に差し込んで搬送した際に、液状版感光性樹脂凸版2を支持するのに十分な強度を発現させることができる、厚さ、大きさ、形状を有している。したがって、版保持具1は、液状版感光性樹脂凸版2の工程間の搬送を搬送機構によって、機械式に自動で行い、液状版感光性樹脂凸版2を製版する際に好適に用いることができる。ちなみに、本実施形態では、長尺部材3の両側部を同一方向に略直角に折り曲げて矩形状の側面板7とし、この側面板7に4個の穴8を形成している(請求項2記載の発明)。
【0017】
上記構成の版保持具1を用いて、液状版感光性樹脂凸版2を搬送する形態を説明する。本実施形態では、向かい合うように配置した樹脂回収装置9と洗浄装置10との間を搬送機構11によって搬送する(図3を参照)。なお、後述する樹脂回収装置9、洗浄装置10及び搬送機構11などは左右対称であるため、前記樹脂回収装置9側から見て左側部分のみを説明及び図示する。
【0018】
樹脂回収装置9は、通例の樹脂回収装置と同様に、露光装置で例えば液状感光性樹脂層に透明部を有するネガフィルムを通して活性光を照射した際に、活性光が照射されず未硬化樹脂の部分いわゆる非画像部を、ゴムブレードによる接触方式や、ホットエアナイフによる非接触方式によって液状版感光性樹脂凸版2の本体から除去する構成とされている(図示は省略)。
【0019】
すなわち、樹脂回収装置9は、吊り下げた状態で液状版感光性樹脂凸版2を搬入、搬出するのに十分な大きさを有する開口部が正面側及び背面側に形成された門型のケーシング12を有する(図3を参照)。前記ケーシング12内の側部に昇降機構13が設けられている。前記昇降機構13によって梁材14が昇降可能に支持されており、前記梁材14は駆動手段(図示は省略)によって回転可能な構成とされている。
【0020】
前記梁材14に所定の間隔でフック15が設けられている(図4を参照)、前記フック15に作業員の人力によって、正面側の開口部から液状版感光性樹脂凸版2の版保持具1が引っ掛けられて、前記液状版感光性樹脂凸版2が吊り下げられる。このとき、良好に吊り下げることができるように長尺部材3の上端部には、L型の引っ掛け片16が連続するように形成されていることが好ましい(図1等を参照、請求項3記載の発明)。
【0021】
吊り下げられた液状版感光性樹脂凸版2の未硬化樹脂は、ケーシング12内の側部に設けられた昇降機構によって昇降可能に支持されたゴムブレードで除去される。このとき、同じく昇降機構によって昇降可能に支持されたゴムブレード支持部によって、液状版感光性樹脂凸版2の露光面の裏面から前記ゴムブレードに反力を与える。
【0022】
樹脂回収装置9には、回収工程が済んだ液状版感光性樹脂凸版2を搬送機構11に受け渡す受け渡し機構17が設けられている(図4を参照)。受け渡し機構17は、ケーシング12の背面側の開口部から液状版感光性樹脂凸版2を搬出し、搬送機構11の受け渡し位置まで搬送することができるように、前記ケーシング12に支持されたレール18と、前記レール18に沿って滑走する滑走部材19とを有する。
【0023】
前記滑走部材19は前記レール18に沿って滑走できるようにローラやモータ、さらには上下方向に伸縮可能なシリンダ20(図6)などが格納された基台部21と、前記シリンダ20の上端部に連結された差し込み部22とを有する。前記差し込み部22は上方に開放した凹み部22aを有し、前記凹み部22aには、版保持具1における側面板7と液状版感光性樹脂凸版2との間の突出部3aが差し込まれる。
【0024】
回収工程が済んだ液状版感光性樹脂凸版2は、昇降機構13によって下降させる。それと共に、受け渡し機構17の滑走部材19は、前記液状版感光性樹脂凸版2を保持する版保持具1の直下位置まで移動させる(図5を参照)。前記版保持具1の突出部3aを、前記滑走部材19の差し込み部22の凹み部22aに差し込む。その後、梁材14を駆動手段によって、図5の矢印方向に回転させてフック15を版保持具1の引っ掛け片16から外して、前記梁材14を昇降機構13によって上昇させる。最後に、滑走部材19をレール18に沿って滑走させ、搬送機構11との受け渡し位置まで前記液状版感光性樹脂凸版2を移動させる(図6を参照)。このとき、前記液状版感光性樹脂凸版2の版尻が引っ掛からないように、昇降機構によってゴムブレード等を、前記液状版感光性樹脂凸版2の版尻より低い位置まで下降させる。ちなみに、フック15を版保持具1の引っ掛け片16から外す際に、前記フック15が前記引っ掛け片16に引っ掛からないように、フック15の上端部が丸みを帯びた形状とされていることが好ましい。
【0025】
搬送機構11は、樹脂回収装置9と前記液状版感光性樹脂凸版2の受け渡しが可能な位置に設けられている。即ち、樹脂回収装置9と洗浄装置10とを連結するようにレール23が架け渡されており、前記レール23を上下から挟み込むローラ24によって前記レール23に沿って移動可能に吊り下げ片25が支持されている(図7を参照)。この吊り下げ片25の下部には、水平方向に伸縮可能な2本のシリンダが、版保持具1の側面板7の上側2個の穴8に差し込まれるピン26として設けられている。ちなみに、搬送機構11の洗浄装置10側の端部は、前記洗浄装置10内まで導かれている(図8を参照)。
【0026】
受け渡し機構17によって前記液状版感光性樹脂凸版2を吊り下げ片25の下方に配置すると、滑走部材19のシリンダ20を伸ばして、版保持具1の側面板7の上側2個の穴8と前記搬送機構11のピン26とが同心位置となるように前記版保持具1ごと上方に持ち上げる。前記搬送機構11のピン26を伸ばして、前記版保持具1の側面板7の上側2個の穴8に差し込む(図6を参照)。滑走部材19のシリンダ20を縮め、前記版保持具1の突出部3aを開放する。その後、液状版感光性樹脂凸版2が吊り下げられた状態で吊り下げ片25をレール23に沿って移動させ、洗浄装置10のケーシング27内に搬入する。このとき、2個の穴8にピン26を差し込んで液状版感光性樹脂凸版2を搬送するので、前記液状版感光性樹脂凸版2が振られることがほとんどなく、好都合である。
【0027】
洗浄装置10は、通例の洗浄装置と同様に、樹脂回収装置9で除去されずに液状版感光性樹脂凸版2の表面に残留した未硬化樹脂に、界面活性剤や消泡剤を含有した洗浄液を噴射したり、ナイロンや動物毛によるブラシで掻き取ったりして完全に表面から除去する構成とされている。
【0028】
すなわち、洗浄装置10は、液状版感光性樹脂凸版2を吊り下げた状態で搬入、搬出するのに十分な大きさの開口部が樹脂回収装置9側(正面側)に形成された箱型のケーシング27を有する。前記ケーシング27内の側部に昇降機構が設けられており、前記昇降機構によって洗浄ノズル及び表面処理ノズルが昇降可能に支持されている(図示は省略)。
【0029】
洗浄ノズルは、液状版感光性樹脂凸版2の横幅以上の長さを有する筒状部材に無数の穴が形成されている。前記洗浄ノズルは、タンクから洗浄ポンプで吸い上げられた洗浄液を液状版感光性樹脂凸版2の表面に噴射することによって、樹脂回収装置9で除去しきれず表面に残留した未硬化樹脂を完全に洗い流す。
【0030】
表面処理ノズルも、液状版感光性樹脂凸版2の横幅以上の長さを有する筒状部材に無数の穴が形成されている。前記表面処理ノズルは、上記タンクとは異なるタンクから表面処理ポンプで吸い上げられた表面処理液を噴射することによって、前記洗浄ノズルで完全に洗い流された液状版感光性樹脂凸版2の表面の粘着性を除去する。
【0031】
表面処理液の噴射後は、液状版感光性樹脂凸版2の表面に残留した表面処理液を洗い流すために水等で版表面をリンスする構成とされている。
【0032】
ケーシング27内の背面には、上記のように洗浄処理される液状版感光性樹脂凸版2を支持する支持部材28が、前記搬送機構11と前記液状版感光性樹脂凸版2の受け渡しが可能な位置に設けられている(図8を参照)。前記支持部材28には、水平方向に伸縮可能な2本のシリンダが、搬送された液状版感光性樹脂凸版2の版保持具1における側面板7の下側2個の穴8に差し込まれるピン29として設けられている。
【0033】
洗浄装置10内に液状版感光性樹脂凸版2を搬入した吊り下げ片25は、前記ピン29と版保持具1の側面板7の下側2個の穴8とが同心位置となるように移動させる。前記ピン29を伸ばして側面板7の下側2個の穴8に差し込むと共に、吊り下げ片25のピン26を縮めて側面板7の上側2個の穴8から抜き取り、液状版感光性樹脂凸版2を支持部材28によって支持する。前記吊り下げ片25を洗浄装置10の外方に移動させる。その後、前記ピン29によって支持された液状版感光性樹脂凸版2は、上述したように洗浄処理する。版保持具1をピン26の支持からピン29の支持へと移行させる際も、常に2本のピンで版保持具1が支持されているので、振られることがなく、安定している。
【0034】
なお、昇降機構としては、支柱に沿って昇降する機構、チェーン、ベルト駆動によって昇降する機構など、公知の昇降機構を採用することができ、特に限定されない。
【0035】
以上より、本発明に係る版保持具1は、液状版感光性樹脂凸版2の工程間の搬送を搬送機構11によって、機械式に自動で行い、液状版感光性樹脂凸版2を製版する際に好適に用いることができる。
【0036】
本発明の実施形態を説明したが、本発明はこうした実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の形態で実施し得る。例えば、穴は2つで1ピン毎突き刺す。ただし突き刺したあとピンが二つに割れて上下、または左右に広がり版保持具をしっかり固定(ホールド)する。それによって、版保持具が不安定にぐらつくことを抑制する。また別例で、ピンを突き刺すことによって版を保持、搬送するのではなく、掴むような機構(チャッキング機構)によってピンの代わりに保持、搬送することも可能であるが、コストや作業の正確性の点からは、上記実施形態が好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の版保持具は、段ボール印刷、フィルム印刷、プレプリント印刷、ラベル印刷などの凸版印刷用の液状版感光性樹脂凸版を製版する際に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係る版保持具を示す概略斜視図である。
【図2】本発明に係る版保持具を示す概略側面図である。
【図3】樹脂回収装置と洗浄装置との間を搬送機構によって液状版感光性樹脂凸版を搬送する構成を示す概略図である。
【図4】樹脂回収装置において液状版感光性樹脂凸版の未硬化樹脂を除去する際に前記液状版感光性樹脂凸版を吊り下げた状態を示す概略図である。
【図5】液状版感光性樹脂凸版の未硬化樹脂の除去が済み、液状版感光性樹脂凸版を保持した版保持具を受け渡し機構に支持させた状態を示す概略図である。
【図6】液状版感光性樹脂凸版を保持した版保持具を、受け渡し機構から搬送機構に受け渡した状態を示す概略図である。
【図7】搬送機構を示す概略図である。
【図8】搬送機構のピンから洗浄装置のピンに液状版感光性樹脂凸版の支持を移行させるときの状態を示す概略図である。
【符号の説明】
【0039】
1 版保持具
2 液状版感光性樹脂凸版
3 長尺部材
3a 突出部
4 クランプ
7 側面板
8 穴
9 樹脂回収装置
10 洗浄装置
11 搬送機構
L 版保持具の長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状版感光性樹脂凸版を製版する際に用いられる版保持具であって、
前記液状版感光性樹脂凸版の横幅以上の長さを有する長尺部材の前面又は後面に、間隔を開けて複数個のクランプが、前記長尺部材との間で前記液状版感光性樹脂凸版の版頭を挟み込むことができるように、設けられていること、
前記長尺部材の側部に側面板が設けられており、前記側面板には穴が形成されていることを特徴とする、版保持具。
【請求項2】
側面板の穴の個数は4個であることを特徴とする、請求項1に記載の版保持具。
【請求項3】
長尺部材の上端部に引っ掛け片が形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の版保持具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−307812(P2008−307812A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−158617(P2007−158617)
【出願日】平成19年6月15日(2007.6.15)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】