説明

版取扱装置

【課題】排版工程の排版抜き取り時に発生するエラーをなくし、安定した動作を可能にした版取扱装置を提供する。
【解決手段】ロッドレスシリンダ119と該ロッドレスシリンダ119にスライド移動可能に設けられた支持部材121との間に介装されて、支持部材121をフック125による旧版2の保持位置と排版収納位置間で移動させる移動子134の位置を、ロッドレスシリンダ119に取り付け板133を介して固定された中間センサ132によって検出し、検出された移動子134の位置に基づいてくわえ曲げ部の位置を検知しつつ、制御装置によってロッドレスシリンダ119及び刷版ガイドの動作を制御する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、版胴に装着された版を排出する版排出装置を備えた版取扱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷機械においては、例えば版胴に装着する刷版の交換、つまり、版胴に装着された刷版(以下、旧版という)を排出する排版と、新しい刷版(以下、新版という)を供給する給版とを自動的に行う版交換装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
従来の版交換装置について、図17〜21を用いて簡単に説明する。図17は従来の版交換装置の概略構成図、図18は図17に続く手順説明図、図19は図18に続く手順説明図、図20は図19に続く手順説明図、図21は図20に続く手順説明図である。
【0004】
図17に示すように、版交換装置は、版保持装置410及び第一版案内装置440、第二版案内装置460から構成され、例えば、図1に示す両面印刷機に適用される。以下、図1に示す両面印刷機の印刷ユニットの左右のフレーム11に配設された上部版胴12の近傍に従来の版交換装置を配設した例を説明する。
【0005】
版保持装置410は、板状に形成され上部版胴12の軸心方向に対をなして配設されたガイドフレーム412、当該ガイドフレーム412の長手方向に略平行で当該ガイドフレーム412の一端側へ延びる長手方向を向けた第一、第二のガイド部材414,415、及びロッドレスシリンダ419などから構成されている。
【0006】
第一,第二のガイド部材414,415は、基端部がガイドフレーム412に連結固定されている。ガイドフレーム412と第一のガイド部材414とは、その間に旧版2を収納する収納部416aが形成されるように隙間を有している。また、第一,第二のガイド部材414,415は、その間に新版1を収納する収納部416bが形成されるように隙間を有している。
【0007】
ロッドレスシリンダ419には、ガイドフレーム412の先端側へ開口側を向けたU字型をなす支持部材421の基端部421a側が取り付けられており、当該支持部材421は、ロッドレスシリンダ419によってガイドフレーム412の長手方向に沿ってスライド移動できるようになっている。また、図示しない他のロッドレスシリンダには、ガイドフレームの先端側へ開口側を向けたU字型をなす支持部材422の基端部422a側が取り付けられており、当該支持部材422は、該他のロッドレスシリンダによってスライド移動できるようになっている。
【0008】
さらに、支持部材421の先端部421bには、その先端に爪部425aを有する排版保持部材としてのフック425の基端側が、支持フレーム102間に連結支持されて上部版胴12と同じ方向の軸回りで回動できる支持軸411と同じ方向の軸回りで自在に揺動できるように支持されている。該フック425は、自重により回動可能である一方、支持部材421の先端部421bに突設された揺動規制部材としてのストッパピン427によって回動可能な範囲を制限されている。
【0009】
また、支持部材422の先端部422bには、その先端に爪部426aを有する排版保持部材としてのフック426の基端側が前記支持軸411と同じ方向の軸回りで自在に揺動できるように支持されている。該フック426は、上記フック425と同様に自重により回動可能であり、支持部材422の先端部422bに突設された揺動規制部材としてのストッパピン428によって回動可能な範囲を制限されている。
【0010】
また、第一版案内装置440は、旧版2の移動を案内する固定式ガイドプレート442、案内する刷版を振り分ける刷版ガイド445、及び上部版胴12の軸心方向に沿って長手方向を向けた略コ字型のくわえ取出しガイド150とから構成されている。刷版ガイド445は、リンクプレート444を介して刷版ガイド駆動アクチュエータ446に連結され、該刷版ガイド駆動アクチュエータ446の伸縮により、リンクプレート444を介して旧版案内位置と新版案内位置との間で移動することができる。くわえ取出しガイド450は、くわえ取出しガイド駆動アクチュエータ452に連結され、該くわえ取出しガイド駆動アクチュエータ452の伸縮により移動することができるようになっている。
【0011】
第二版案内装置460は、上記刷版ガイド445と、該刷版ガイド445の案内面に対向するインカーカバー461と、インカーカバー461の上部版胴12側の端部に回動可能に複数設けられた案内ころ162とから構成されている。
【0012】
上述した従来の版排出装置を備えた版取扱装置において、上部版胴12を逆回転させて旧版2の尻側を収納部416aに移動させた後の旧版の排出に係る手順を、図17〜21を用いて簡単に説明する。
【0013】
上部版胴12を逆回転させることによって旧版2の尻側を収納部416aに収納したら、くわえ取出しガイド駆動アクチュエータ452を短縮させて図17に示すようにくわえ取出しガイド450をインカーカバー461側から図中反時計回りに移動させて旧版2を版胴から離反させる。旧版2が版胴から完全に離反したら、図18に示すようにくわえ取出しガイド駆動アクチュエータ452を伸張させてくわえ取出しガイド450をインカーカバー461側に移動させる。
【0014】
続いて、図19、図20に示すようにロッドレスシリンダ419を用い、支持部材421、フック425を介して旧版2をガイドフレーム412の基端側(排版収納方向下流側)へ移動させ、図21に示すように該旧版2を収納部416aに収納するのである。
【0015】
【特許文献1】特開2001−80047号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、上述した従来の版交換装置においては、図18に示した位置から、刷版2を版胴12から離反させる方向に移動させるとき、刷版2のくわえ側2aの端部が版胴12に当接して刷版2が弾性変形している状態となっており、刷版2を版胴12から離反させる方向に移動させたときに刷版2に弾性変形に対する復元力が付勢される結果、くわえ側2aの端部が版胴12の周面に沿って移動してしまい、そのまま版胴12と案内ころ462との間に入ってしまう虞があった。そして、このように排版抜き取り時に旧版2のくわえ側2aの端部が版胴12と案内ころ462との間に入ってしまう等ということが生じると、抜き取りが未完了のまま自動版交換が途中で停止してしまう虞があった。
【0017】
このようなことから本発明は、排版工程の排版抜き取り時に発生するエラーをなくし、安定した動作を可能にした版取扱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前述した課題を解決するための、第1の発明に係る版取扱装置は、刷版の版排出方向上流側の端部に折曲部を有する刷版を前記版胴から排出する版排出手段を備えた版取扱装置において、前記版排出手段が、前記版胴から排出する刷版を保持する排版保持手段と、前記排版保持手段を、前記刷版を保持する保持位置から移動して前記刷版を前記版胴から離反させる方向へ移動させる排版移動手段と、前記版排出手段の排版収納方向上流側に設けられ、前記版胴とこの版胴に近接するガイド部材との間に排出される前記刷版の折曲げ部が挿入されるのを規制する規制位置と、前記規制位置から離間した離間位置との間で移動する規制手段と、前記刷版の版排出方向上流側の端部の位置を検出する刷版位置検出手段と、前記排版移動手段を前記規制位置に位置付けた状態で前記排版保持手段を刷版排出方向下流側に移動させた後、前記刷版位置検出手段によって前記刷版の版排出方向上流側の端部を検出したときに前記規制手段を前記規制位置から前記離間位置に移動させるように制御する制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0019】
第2の発明に係る版取扱装置は、第1の発明において、前記制御手段は、前記排版移動手段によって前記刷版の版排出方向上流側の端部を検出したときに前記排版保持手段を刷版排出方向上流側に移動するように前記排版移動手段を動作させた後、前記規制手段を前記規制位置から前記退避位置に移動させたときに前記排版保持手段を刷版排出方向下流側に移動するように前記排版移動手段を動作させることを特徴とする。
【0020】
第3の発明に係る版取扱装置は、第1の発明において、前記版胴へ刷版を供給する版供給手段を備え、前記規制手段は、前記版供給手段から供給される前記刷版を前記版胴に案内するとともに、前記版胴から排出される前記刷版を前記版排出手段へ案内する刷版ガイドであることを特徴とする。
【0021】
第4の発明に係る版取扱装置は、第1の発明において、前記刷版位置検出手段は、前記排版保持手段の位置を検出する検出手段であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
上述した本発明に係る版取扱装置によれば、排版保持手段を介して刷版くわえ曲げ部の位置を検出し、案内手段を逃がすことができるため、刷版の抜き取り、案内手段の動作速度の変化に影響されることなく、安定して排版される刷版を抜き取ることができる。また、排版された版は、印刷によってカール状態が変化するために、刷版がフリーな状態でくわえ曲げ部の位置を管理するのは困難だが、本発明によれば、排出する刷版のくわえ曲げ部を案内手段に一度引っ掛けた後刷版を排版収納方向上流側へ移動させつつ、案内部材を逃がすことが可能となり、カール状態に影響されることなく刷版を管理することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の実施の形態を、以下に示す実施例において詳細に説明する。
【実施例】
【0024】
以下、本発明による版取扱装置を両面印刷機に適用した場合の一実施例を図1〜16を用いて説明する。
【0025】
図1は両面印刷機の概略構成図、図2は上部版交換装置の概略構成図、図3は図1の矢線A方向からみた抽出拡大図、図4は図3の矢線B方向からみた抽出拡大図、図5は版排出の制御に係る構成を示すブロック図、図6は版排出の制御に係る工程を示すフローチャート、図7は上部版交換装置の手順説明図、図8は図7に続く手順説明図、図9は図8に続く手順説明図、図10は図9に続く手順説明図、図11は図10に続く手順説明図、図12は図11に続く手順説明図、図13は図12に続く手順説明図、図14は上部版交換装置の部分拡大図、図15は上部版交換装置の新版の装着に係る手順説明図、図16は上部版交換装置の退避位置への切り替えに係る手順説明図である。
【0026】
図1に示すように、両面印刷機において、印刷ユニットの左右のフレーム11の内部上方側には、上部版胴12が配設されている。上部版胴12には、上部ゴム胴14が対接している。一方、フレーム11の内部下方側には、下部版胴13が配設されている。下部版胴13には、下部ゴム胴15が対接している。上部ゴム胴14と下部ゴム胴15とは対接しており、当該ゴム胴14,15間をウエブ等の被印刷物が通過するようになっている。
【0027】
つまり、上記上部版胴12,13に図示しないインキ供給装置や給水装置からインキや湿し水をそれぞれ供給すると、当該上部版胴12,13の版の絵柄に対応したインキが上記ゴム胴14,15にそれぞれ転写され、ゴム胴14,15間を通過する被印刷物の両面に絵柄を印刷することができるようになっているのである。
【0028】
なお、本実施例では、上部版胴12、上部ゴム胴14、前記インキ供給装置、前記給水装置などにより上部印刷部を構成し、下部版胴13、下部ゴム胴15、前記インキ供給装置、前記給水装置などにより下部印刷部を構成している。
【0029】
上記上部印刷部と下部印刷部には、版胴に装着された版を排出する版排出装置を備えた版取扱装置としての版交換装置(版交換手段)が付設される。版交換装置は、上部印刷部と下部印刷部とでは、略同じ基本構成のものが配置されると共に種々の構成のものが適用可能であるので、ここでは、上部印刷部の版交換装置についてのみ一例として説明する。
【0030】
[上部版交換装置]
図1に示すように、上部印刷部の版交換装置である上部版交換装置100は、上部版保持装置110、第一版案内装置140、及び第二版案内装置160を備え、上部版胴12の近傍に配設されている。以下にその詳細な構造を示す。
【0031】
左右のフレーム11の上端部には、L字型をなす一対の支持アーム101の一端側が上部版胴12と同じ方向の軸回りで揺動できるようにそれぞれ連結支持されている。上部版交換装置100は、支持アーム101の他端側に、後述する支持フレーム102を介して支持されている。図2,3に示すように、支持フレーム102は、上部版胴12と同じ方向の軸回りで揺動できるように支持アーム101の他端側にそれぞれ連結支持されている。
【0032】
<上部版保持装置>
前記支持フレーム102間には、上部版保持装置110が上部版胴12と同じ方向の軸回りで揺動できるように連結支持されており、当該上部版保持装置110は、以下のような構造となっている。
【0033】
図2,3に示すように、前記支持フレーム102間には、支持軸111が上部版胴12と同じ方向の軸回りで回動できるように連結支持されている。この支持軸111の両端側には、板状に形成され、上部版胴12の軸心方向に対をなして配設された第一,第二のガイドフレーム112,113の一端側がそれぞれ連結固定されている。
【0034】
図2〜4に示すように、ガイドフレーム112,113の他端側には、当該ガイドフレーム112,113の長手方向に略平行で当該ガイドフレーム112,113の一端側へ延びる長手方向を向けた第一,第二のガイド部材114,115の基端部114a,115bが連結固定されている。
【0035】
ガイドフレーム112,113と第一のガイド部材114とは、旧版2を収納する収納部116aが形成されるように、その間に隙間を有しており、上部版保持装置110が図2に示す位置において第一のガイド部材114の基端部114aで旧版2の端部を載置して、ガイドフレーム112,113で旧版2の一方側の面を支持し、第一のガイド部材114で旧版2の他方側の面を支持するようになっている。
【0036】
また、第一,第二のガイド部材114,115は、新版1を収納する収納部116bが形成されるように、その間に隙間を有しており、上部版保持装置110が図2に示す位置において第二のガイド部材115の基端部115bで新版1の端部を載置して、第一のガイド部材114で新版1の一方側の面を支持し、第二のガイド部材115で新版1の他方側の面を支持するようになっている。
【0037】
このようなガイドフレーム112,113、第一のガイド部材114などにより、本実施例では排版収納手段を構成し、第一,二のガイド部材114,115などにより、本実施例では新版収納手段を構成している。
【0038】
前記支持軸111には、リンクプレート129の一端側が連結固定されている。リンクプレート129の他端側には、上部版保持装置駆動アクチュエータ130の先端側が揺動自在に連結されている。さらに、この上部版保持装置駆動アクチュエータ130の基端側は、前記支持フレーム102に揺動可能に支持されている。
【0039】
つまり、上部版保持装置駆動アクチュエータ130を伸縮させると、リンクプレート129を介して支持軸111が回動し、ガイドフレーム112,113を含む上部版保持装置110を退避位置(図2参照)と作動位置(図7参照)との間で揺動させることができるようになっているのである(詳細は後述する)。このようなリンクプレート129、上部版保持装置駆動アクチュエータ130などにより、本実施例では版保持装置移動手段を構成している。
【0040】
前記第二のガイド部材115の先端側には、後述するフック126の解除部材となる引掛部115aがガイドフレーム113の外側に突出するように形成されている。また、ガイドフレーム112,113間の第一のガイド部材114には、上部版胴12と同じ方向の軸回りで回転可能なガイドローラ117が当該ガイドフレーム112,113の長手方向に沿って所定の間隔で複数取り付けられている。また、第二のガイドフレーム113には、新版1の幅方向のずれを規制する当て板118が図示しないブラケットを介して取り付けられている。
【0041】
前記ガイドフレーム112,113の対向方向外側面には、排版時の移動手段であるロッドレスシリンダ119、給版時の移動手段であるロッドレスシリンダ120が当該ガイドフレーム112,113の長手方向に沿って軸心方向を向けるようにしてそれぞれ取り付けられている。ロッドレスシリンダ119には、移動子134を介してガイドフレーム112の先端側へ開口側を向けたU字型をなす排版支持部材121の基端部121a側が取り付けられており、当該排版支持部材121は、詳細には後述する図7に示す位置と図13に示す収納位置との間をロッドレスシリンダ119によってガイドフレーム112の長手方向に沿ってスライド移動できるようになっている。この排版支持部材121は、先端部121bが前記ガイド部材114の延設部分と略同じ高さ位置となるように、連結部121cの長さが設定されている。
【0042】
前記排版支持部材121の先端部121bには、前記ガイドフレーム112の長手方向に沿って長手方向を向けたガイド部材123の基端が連結固定されている。該ガイド部材123は、前記排版支持部材121に固定され、前記排版支持部材121と共に移動するものである。また、排版支持部材121の先端部121bには、先端に爪部125aを有する排版保持部材である排版抜き取りフック125の基端側が前記支持軸111と同じ方向の軸回りで自在に揺動できるように支持されている。
【0043】
当該排版抜き取りフック125は、排版支持部材121の先端部121bの長手方向が後述する図7に示す方向を向いたときに、自重により、爪部125aを基端部121a側に位置させるように移動して収納部116a内に爪部125aを進出させる一方、排版支持部材121の先端部121bの長手方向が図2に示すような鉛直方向を向いたときに、自重により、先端部121bに重なって納まるように移動して収納部116a内から爪部125aを退没させることができるようになっている。
【0044】
つまり、排版抜き取りフック125は排版支持部材121の連結部121cよりもガイドフレーム112の先端側に位置する、言い換えれば、排版抜き取りフック125は収納位置のときに収納部116aの排版収納方向下流側端部である基端部114aよりも排版収納方向上流側に位置すると共に、排版抜き取りフック125の揺動支点と当該基端部114aとの間の長さは、排版抜き取りフック125の揺動支点と爪部125aとの間の長さよりも長くなっている、言い換えれば、排版抜き取りフック125の収納位置における上記揺動支点と収納部116aの排版収納方向下流側端部との間の長さは排版抜き取りフック125の揺動支点と先端との間の長さよりも長くなっているのである。
【0045】
前記排版支持部材121の先端部121bの排版抜き取りフック125の基端側近傍には、揺動規制部材であるストッパピン127が突設されており、当該ストッパピン127は、上記排版抜き取りフック125の爪部125aを前記収納部116aに進出させた状態(図7参照)から前記ガイド部材123の先端側へ向かう方向へ移動させないように当該排版抜き取りフック125の揺動を規制している。
【0046】
さらに、上記移動子134には、ロッドレスシリンダ119側の端面に被検出体131(例えば、マグネット等)が取り付けられている。そして、ロッドレスシリンダ119の排版支持部材121がスライド移動可能な範囲の中程には、被検出体131の検出を行う中間検出センサ132が取り付け板133を介して上記端面121dに対向するように取り付けられている。
【0047】
詳述すると、被検出体131及び中間検出センサ132は、旧版2の排出時に排版抜き取りフック125によって下流側へ案内される旧版2のくわえ側2aの曲げ部が、後述する刷版ガイド145の上部版胴12側の端部より僅か(例えば、上記旧版2のくわえ側2aの曲げ部が刷版ガイド145の上部版胴12側の端部に係止されない程度)に上流側に設定した所定の位置に達したときに、中間検出センサ132が被検出体131を検出するように、相互の位置を設定されている。本実施例においては、旧版2が図10に示す位置に達したときに、中間検出センサ132が被検出体131を検出するように設定する。
【0048】
一方、ロッドレスシリンダ120には、第二のガイドフレーム113の先端側へ開口側を向けたU字型をなす給版支持部材122の基端部122a側が取り付けられており、当該給版支持部材122は、図12に示す収納位置と詳細には後述する図15に示す位置との間をロッドレスシリンダ120によってスライド移動できるようになっている。この給版支持部材122は、先端部122bが前記ガイド部材115の延設部分よりもわずかに高い高さ位置となるように、連結部122cの長さが設定されている。
【0049】
前記給版支持部材122の先端部122bには、先端に爪部126aを有する新版保持部材である新版保持フック126の基端側が前記支持軸111と同じ方向の軸回りで自在に揺動できるように支持されており、当該新版保持フック126は、給版支持部材122の先端部122bの長手方向が後述する図7に示す方向を向いたときに、自重により、爪部126aを基端部122a側に位置させるように移動して収納部116b内に爪部126aを進出させ、給版支持部材122の先端部122bの長手方向が図2に示す鉛直方向を向いたときに、自重により、先端部122bに重なって納まるように移動して収納部116b内から爪部126aを退没させることができるようになっている。
【0050】
つまり、新版保持フック126は、給版支持部材122の連結部122cよりもガイドフレーム113の先端側に位置する、言い換えれば、新版保持フック126が収納位置のときに収納部116bの新版供給方向上流側端部である基端部115bよりも新版供給方向下流側に位置すると共に、新版保持フック126の揺動支点と当該基端部115bとの間の長さは、新版保持フック126の揺動支点と爪部126aとの間の長さよりも長くなっている、言い換えれば、新版保持フック126の収納位置における上記揺動支点と収納部116bの新版供給方向上流側端部との間の長さが新版保持フック126の揺動支点と先端との間の長さよりも長くなっているのである。
【0051】
前記給版支持部材122の先端部122bの新版保持フック126の基端側近傍には、該フック126の揺動規制部材であるストッパピン128が突設されており、当該ストッパピン128は、上記新版保持フック126の爪部126aを前記収納部116bに進出させた状態(図7参照)から前記ガイド部材115の先端側へ向かう方向で移動させないように当該新版保持フック126の揺動を規制している。この給版支持部材122の連結部122cの前記ガイド部材114,115間部分には、接触部材である押圧プレート124が突設されている。
【0052】
<上部第一版案内装置>
図2に示すように、前記支持フレーム102の前記支持軸111よりも上部版胴12側に位置する部分には、上部第一版案内装置140の一対の揺動フレーム141の基端側が当該上部版胴12と同じ方向の軸回りで揺動できるように連結支持されており、当該上部第一版案内装置140は、以下のような構造となっている。
【0053】
前記揺動フレーム141には、旧版2の移動を案内する固定式のガイドプレート142が取り付けられている。上記揺動フレーム141には、上部第一版案内装置駆動アクチュエータ143の先端が揺動可能に連結されている。この上部第一版案内装置駆動アクチュエータ143の基端側は、前記支持フレーム102に揺動可能に支持されている。つまり、上部第一版案内装置駆動アクチュエータ143を伸縮させることにより、揺動フレーム141を揺動させ、上部第一版案内装置140を上部版胴12に近接して新版1や旧版2を案内する案内位置(図7参照)と当該上部版胴12から離反した退避位置(図2参照)との間で揺動させることができるようになっているのである。
【0054】
前記揺動フレーム141には、リンクプレート144の中程が揺動可能に連結支持されている。リンクプレート144の先端側には、刷版の振分ガイドである刷版ガイド145が取り付けられている。リンクプレート144の基端側には、刷版ガイド駆動アクチュエータ146の先端側が連結されている。この刷版ガイド駆動アクチュエータ146の基端側は、上記揺動フレーム141に揺動可能に支持されている。つまり、刷版ガイド駆動アクチュエータ146を伸縮させることにより、リンクプレート144を介して刷版ガイド145を排版案内位置(図7参照)と新版案内位置(図15参照)との間で移動させることができるようになっているのである(詳細は後述する)。
【0055】
前記揺動フレーム141の先端側には、上部版胴12と同じ方向の軸回りで回動可能な回動軸147が支持されている。この回動軸147には、支持板148の基端側が連結固定されている。支持板148の先端側には、ガイドローラ149が回転自在に設けられている。また、上記回動軸147には、上部版胴12の軸心方向に沿って長手方向を向けた略コ字型のくわえ取出しガイド150が連結支持されている。上記回動軸147には、連結板151の一端側が連結固定されている。
【0056】
連結板151の他端側には、くわえ取出しガイド駆動アクチュエータ152の先端側が揺動可能に連結されている。このくわえ取出しガイド駆動アクチュエータ152の基端側は、上記揺動フレーム141に揺動可能に支持されている。つまり、くわえ取出しガイド駆動アクチュエータ152を伸縮させることにより、連結板151を介して回動軸147を回動させて、ガイドローラ149およびくわえ取出しガイド150を移動させることができるようになっているのである。
【0057】
また、一対の前記揺動フレーム141には、版の幅方向の位置決めを行う位置決めプレート153がそれぞれ取り付けられている。
【0058】
<上部第二版案内装置>
上部版胴12の近傍には、上部第二版案内装置160が配設されている。この上部第二版案内装置160は、上記刷版ガイド145と、該刷版ガイド145の案内面に対向するインカーカバー161と、当該インカーカバー161の上部版胴12側の端部に回動可能に複数設けられた案内ころ162とを備えている。
【0059】
<上部押圧ローラ>
上部版胴12の近傍には、上部押圧ローラ171が当該上部版胴12に対して接近離反できるように配設されている。
【0060】
<カバー>
図2,3に示すように、前記フレーム11間は、前記上部印刷部の内部と外部との間の少なくとも一部を仕切るカバー103で覆われている。このカバー103は、上部版保持装置110の図2に示す退避位置において、当該上部版保持装置110の前記収納部116a,116bを当該カバー103の外側に位置させると共に、図2における上部版保持装置110の当該収納部116aより図2中左側にあるガイドフレーム112,113、ロッドレスシリンダ119,120、支持部材121,122の基端部121a,122aや上部第一版案内装置140等を当該カバー103の内側に位置させることができるように、上部版保持装置110のガイドフレーム112,113、ロッドレスシリンダ119,120、支持部材121,122の基端部121a,122aに対応する位置に隙間103aを有するように間隔をあけて複数設けられている。
【0061】
つまり、カバー103は、フレーム11に対して支持アーム101、支持フレーム102等の支持部材を介して揺動可能に支持されることにより、一対のフレーム11間に形成される空間の少なくとも一部を閉塞する閉塞位置と当該空間を開放する開放位置とに移動することができ、前記上部版保持装置110は、上記支持フレーム102を介して当該カバー103に対して相対的に作動位置(図7参照)へ揺動できるように支持されることにより、カバー103が閉塞位置のときでも揺動することができるようになっているのである。
【0062】
また、上部版保持装置110の左右のガイドフレーム112,113間に配設されるカバー103は、上部版保持装置110のガイドフレーム112,113の長手方向の長さよりも短くなっており、前記上部版保持装置110の最大揺動半径よりも小さな最大揺動半径で揺動することができるようになっている。
【0063】
[自動版交換]
前記上部版交換装置100は、図5に示すマイクロコンピュータ等の制御装置301によって、印刷ユニットの全版胴を連動回転させる駆動装置としての駆動モータ312とともに駆動制御される。
【0064】
図5に示すように、制御装置301は、図示しない操作盤等に設けられた版交換ボタン(スイッチ)302、前記本機モータに付設されたロータリーエンコーダ303、旧版2の位置の検出を行う前記中間検出センサ132、前記刷版ガイド駆動アクチュエータ146用のオートスイッチ305、旧版移動ロッドレスシリンダ119用のオートスイッチ306に電気的に接続され、各々から必要な信号を受信するようになっている。
【0065】
さらに、前記上部版保持装置駆動アクチュエータ130用の電磁弁307、旧版2の移動手段である前記ロッドレスシリンダ119用の電磁弁308、前記案内装置駆動アクチュエータ143用の電磁弁309、前記刷版ガイド駆動アクチュエータ146用の電磁弁310、図示しない押圧ローラ駆動アクチュエータ用の電磁弁311、前記駆動モータ312、図示しない版端保持手段駆動アクチュエータ用の電磁弁313、前記くわえ取出しガイド駆動アクチュエータ152用の電磁弁314に電気的に接続され、各々に対して必要に応じて制御信号を出力するようになっている。
【0066】
<作動位置への切り換え>
図6に示すフローチャートを用いて、図1〜4、及び図7〜14に示す版交換装置による版交換作業の制御動作を詳しく説明する。
【0067】
図6に示すように、自動版交換を行う場合、まず、前記版交換ボタン302がONとなっているか否かの判定を行う(ステップS1)。例えば印刷を行っていて、前記版交換ボタン302がOFFとなっている(NO)場合、制御装置301はステップS1に戻る。
【0068】
なお、印刷を行っているときは、上部版保持装置110は、図2に示すように、ガイドフレーム112,113およびガイド部材114,115を上下方向へ向けるようにして退避位置にあり、前記収納部116aの排版収納方向下流側が排版収納方向上流側よりも下方に位置し、前記収納部116bの新版供給方向上流側が新版供給方向下流側よりも下方に位置している。
【0069】
したがって、新版1を収納位置に収納する際には、上述したような状態にある上部版保持装置110のガイド部材114,115間の収納部116bに、尻側を下方にするようにして当て板118に当てながら新版1を差し込み、当該新版1を収納位置に収納する。
【0070】
このとき、上部版保持装置110の支持部材121,122の先端部121b,122bが長手方向を鉛直方向へ向けるように位置しているので、フック125,126が自重により収納部116a,116bから退没して支持部材121,122の先端部121b,122bに重なるようにして収まっている。
【0071】
一方、ステップS1において前記版交換ボタン302がONである(YES)場合、上部版保持装置駆動アクチュエータ用電磁弁307へ制御信号を出力し、上部版保持装置駆動アクチュエータ130を短縮させる(ステップS2)。これにより、ガイド部材114,115の先端側を上部版胴12側へ向けるようにガイドフレーム112,113が支持軸111を中心に揺動し、上部版保持装置110が移動して作動位置にセットされる。
【0072】
このとき、前記収納部116aの排版収納方向下流側が排版収納方向上流側よりも上方に位置すると共に、前記収納部116bの新版供給方向上流側が新版供給方向下流側よりも上方に位置する、すなわち、支持部材121,122が開口側を下方側へ向けるように傾斜する。このため、フック125,126が爪部125a,126aを前記収納部116a,116b内に進出させるように移動した後、この進出した状態のままストッパピン127,128で移動を規制されるようになる。これにより、新版保持フック126の爪部126aが新版1の尻側に係合して当該新版1を落下させることなく保持する。
【0073】
これと同時に、排版移動ロッドレスシリンダ用電磁弁308へ制御信号を出力し、排版移動ロッドレスシリンダ119を作動して排版支持部材121を図2に示した位置から図7に示されるガイドフレーム112の先端側(排版収納方向上流側)へ移動させる(ステップS3)。続いて、上部第一版案内装置駆動アクチュエータ用電磁弁309へ制御信号を出力し、上部第一版案内装置駆動アクチュエータ143を伸長して揺動フレーム141を揺動させ、案内装置140を図7に示す案内位置に移動させる(ステップS4)。
【0074】
続いて、刷版ガイド駆動アクチュエータ用電磁弁310へ制御信号を出力し、刷版ガイド駆動アクチュエータ146を短縮させてリンクプレート144を揺動させ、刷版ガイド145が排版案内位置に配置されるように、具体的には、上部版胴12から排出される旧版2を上部版保持装置110の収納部116aへ案内することが可能な位置であって、図7に示すように、刷版ガイド145の上部版胴12側の先端がインカーカバー161側に位置するように移動させる(ステップS5)。
【0075】
<排版の収納>
次に、駆動モータ312へ制御信号を出力し、上部版胴12を逆回転させる(ステップS6)。続いて、押圧ローラ駆動アクチュエータ用電磁弁311へ制御信号を出力し、図示しない押圧ローラ駆動アクチュエータを伸張させて前記押圧ローラ171を作動位置(図7中の二点鎖線位置)に移動させ、該押圧ローラ171を上部版胴12に押圧させ(ステップS7)、版端保持手段駆動アクチュエータ用電磁弁313へ制御信号を出力して図示しない版端保持手段駆動アクチュエータを短縮させ、上部版胴12の版端保持手段による旧版2の尻側2bの端部の保持及びくわえ側2aの端部の保持を解除する(ステップS8)。
【0076】
このようにして旧版2の尻側2bを上部版胴12から飛び出させると、旧版2は、上部第一版案内装置140のガイドプレート142と、刷版ガイド145との間で案内されながら、上部版保持装置110のガイドフレーム112,113とガイド部材123との間の収納部116a内に尻側2bから送り込まれる。このとき、排版抜き取りフック125は、揺動自在に支持されているため、旧版2の上記送り込みに伴って、旧版2の尻側2bで押されてそのまま揺動し、旧版2の尻側2bが通過した時点で、自重により戻るように移動する(図7参照)。
【0077】
なお、前記版端保持手段による版の尻側2bの端部の保持及びくわえ側2aの端部の保持の解除は、インカーカバー161の上部版胴12と対向する端部よりも上部版胴12の逆回転方向上流側で行われる。
【0078】
このようにして上部版胴12を逆回転させていき、旧版2のくわえ側2aの曲げ部が上部第一版案内装置140に接近したか否かを制御装置301に入力されるロータリーエンコーダ302の回転数信号から判断し(ステップS9)、旧版2のくわえ側2aの曲げ部が上部第一版案内装置140に対して所定範囲内に接近していない(NO)場合はステップS9にもどる。一方、旧版2のくわえ側2aの曲げ部が上部第一版案内装置140に対して所定範囲内に接近している(YES)場合はステップS10へ進み、押圧ローラ駆動アクチュエータ用電磁弁311へ制御信号を出力し、押圧ローラ171を退避位置(図7中の実線位置)に移動させて(ステップS10)、旧版2を上部版胴12から引き離す。
【0079】
続いて、くわえ取出しガイド駆動アクチュエータ用電磁弁314へ制御信号を出力し、くわえ取出しガイド駆動アクチュエータ152を短縮させる(ステップS11)。これにより、図7に示すようにガイドローラ149、くわえ取出しガイド150が回動軸147を中心に図7における反時計回りで揺動し、くわえ取出しガイド150が旧版2のくわえ側2aを上部版胴12の径方向外側へ移動させるため、図7に示すように旧版2は、曲折したくわえ側2aが上部版胴12から確実に外れる。
【0080】
上部版胴12から旧版2が完全に外れたら、駆動モータ312へ制御信号を出力し、上部版胴12の回転を停止させる(ステップS12)。続いて、くわえ取出しガイド駆動アクチュエータ用電磁弁314へ制御信号を出力し、くわえ取出しガイド駆動アクチュエータ152を伸張して、図8に示すようにガイドローラ149およびくわえ取出しガイド150を退避位置に戻す(ステップS13)。
【0081】
続いて、刷版ガイド駆動アクチュエータ用電磁弁310へ制御信号を出力し、図9に示すように、刷版ガイド駆動アクチュエータ146を伸張して、リンクプレート144を図9中反時計回りに揺動させ、刷版ガイド145を上記新版案内位置へ移動させる(ステップS14)。
【0082】
続いて、排版移動ロッドレスシリンダ用電磁弁308へ制御信号を出力し(ステップS15)、図10に示すように、排版移動ロッドレスシリンダ119を作動して排版支持部材121をガイドフレーム112の基端側(排版収納方向下流側)へ移動させつつ、中間検出センサ132がロッドレスシリンダ119の移動子134に設けた被検出体131を検出したか否かを判断する(ステップS16)。
【0083】
なお、排版支持部材121をガイドフレーム112の基端側へ移動させると、排版抜き取りフック125の爪部125aが、旧版2の尻側2bに係合し、当該旧版2を引き上げてガイドフレーム112,113とガイド部材123との間の収納部116aの収納位置へ向かって移動する。これにより、旧版2が当該収納部116aの収納位置側へ移動する。
【0084】
このとき、排版抜き取りフック125は、ストッパピン127により排版収納方向上流側への揺動を規制されているため、旧版2を確実に引き上げることができる。
【0085】
ステップS16で被検出体131が検出されていない(NO)場合はステップS16に戻る。一方、中間検出センサ132によって被検出体131が検出された(YES)場合は、排版移動ロッドレスシリンダ用電磁弁308へ制御信号を出力し(ステップS17)、排版移動ロッドレスシリンダ119を作動して排版支持部材121を排版収納方向上流側へ移動させる。
【0086】
次に、再度、中間検出センサ132によってロッドレスシリンダ119の移動子134に設けた被検出体131が検出されたか否かを判断する(ステップS18)。
【0087】
ここで、図14を用いてステップS16からステップS18までの間の旧版2の動作について詳述する。本実施例では、刷版ガイド145が図14(a)に二点鎖線で示す位置にあると共に、旧版2のくわえ側2aの曲げ部が図14(a)に実線で示す位置にあり、排版抜き取りフック125が図14(b)に実線で示す位置にあるとき、換言すると旧版2の尻側2bの端部が図14(b)に示す位置Cにあるときに、被検出体131が検出されるように設定されている。
【0088】
中間検出センサ132によって被検出体131が検出されると、ステップS17により、排版移動ロッドレスシリンダ119が排版収納方向上流側へ移動を開始するが、実際には、中間検出センサ132が被検出体131を検出してから上記ステップS17の処理に伴って排版移動ロッドレスシリンダ119が排版収納方向上流側へ移動を開始するまでの間には所定の時間がかかるため、旧版2のくわえ側2aの曲げ部及び刷版ガイド145、排版抜き取りフック125は、例えば、図14(a)、図14(b)に二点鎖線で示すように、旧版2の尻側2bの端部が図14(b)に示す位置Dに達するまで移動し、その後、ロッドレスシリンダ119の移動子134が排版収納方向上流側へ移動を開始することとなる。したがって、一度図14(b)に示す位置Cを通過した旧版2の尻側2bの端部は、図14(b)に示す位置Dに達した後に再び位置Cを通過する。これによって、中間検出センサ132は再度被検出体131を検出するのである。ステップS18は、このことを利用した処理である。
【0089】
旧版2の排出処理の説明を続ける。ステップS18において被検出体131が検出されていない(NO)場合は繰り返しステップS18に戻る。一方、中間検出センサ132によって被検出体131を検出した(YES)場合は、刷版ガイド駆動アクチュエータ用電磁弁310へ制御信号を出力し、刷版ガイド駆動アクチュエータ146を短縮して(ステップS19)、図12に示すように、リンクプレート144を図12中時計回りに揺動させ、刷版ガイド145を排版案内位置へ移動させる。
【0090】
続いて、刷版ガイド駆動アクチュエータ146用のオートスイッチ304から出力される信号に基づいて刷版ガイド駆動アクチュエータ146の短縮動作が終了したか否か、換言すると、刷版ガイド駆動アクチュエータ146が短縮方向のストロークエンドに達したか否かを判断し(ステップS20)、短縮動作が終了していない(NO)場合はステップS20に戻る。一方、刷版ガイド駆動アクチュエータ146の短縮動作の終了を検出した(YES)場合は、排版移動ロッドレスシリンダ用電磁弁308へ制御信号を出力し(ステップS21)、図11に示すように、排版移動ロッドレスシリンダ119を作動して排版支持部材121を再度ガイドフレーム112の基端側へ移動させる。
【0091】
続いて、排版移動ロッドレスシリンダ119用のオートスイッチ305から出力される信号に基づいて旧版2の排版収納部116aへの収納が終了したか否か、換言すると、排版移動ロッドレスシリンダ119の移動子134が排版移動ロッドレスシリンダ119排版方向下流側の基端部に達したか否かを判断し(ステップS22)、旧版2の収納が終了していない(NO)場合はステップS22に戻る。一方、旧版2の収納が終了している(YES)場合は、旧版2の排出作業を終了する。
以上の工程により、本実施例による旧版2の排出作業を実行する。
【0092】
<新版の装着>
なお、新版1の装着は、図15に示すように、刷版ガイド駆動アクチュエータ146を伸長してリンクプレート144を揺動させ、収納部116b内に保持されている新版1を上部版胴12へ供給する新版案内位置へ刷版ガイド145を移動させると共に、押圧ローラ171を作動位置(図15に二点鎖線で示す位置)に移動して上部版胴12に押圧させたら、新版移動ロッドレスシリンダ120を作動して給版支持部材122を前記収納部116aの前記収納位置から第二のガイドフレーム113の先端側(新版供給方向下流側)へ移動させると、押圧プレート124が新版1の尻側に接触して、当該新版1を上部版胴12側(新版供給方向下流側)へ送り出す。
【0093】
このように給版支持部材122をガイドフレーム113の先端側へ移動させて新版1を上部版胴12側へ送り出していくと、その途中で、新版保持フック126がガイド部材115の引掛部115aに引っ掛かって接触し、前記収納部116bから退没するように揺動するため、新版1は、新版保持フック126によるロックから尻側が開放され、上部第一版案内装置140の左右の位置決めプレート153で幅方向に正確に位置決めされた状態で送り出され、くわえ曲げ部が押圧ローラ171に接触して一旦停止する。
【0094】
続いて、上部版胴12を正回転させると、新版1が当該上部版胴12にくわえ曲げ部から巻き付けられて装着される。
【0095】
このとき、カバー103を開放しなくても、上部版保持装置110を退避位置から作動位置に移動させることができるので、版交換作業時に作業具等を印刷部の内部に落下させてしまうことを防止することができる。
【0096】
<退避位置への切り換え>
上述したようにして新版1の送り出しを終えたら、図16に示すように、上部第一版案内装置駆動アクチュエータ143を収縮して揺動フレーム141を揺動させ、案内装置140を退避位置に移動させると共に、新版移動ロッドレスシリンダ120を作動して給版支持部材122をガイドフレーム113の基端側へ移動させ、上部版保持装置駆動アクチュエータ130を伸長してガイドフレーム112,113を揺動させ、上部版保持装置110を退避位置に移動させる。ガイドフレーム112,113およびガイド部材114,115は、長手方向を上下方向へ向けるように揺動し、前記収納部116aの排版収納方向下流側が排版収納方向上流側よりも下方に位置し、前記収納部116bの新版供給方向上流側が新版供給方向下流側よりも下方に位置した状態となる。
【0097】
このとき、上部版保持装置110の支持部材121,122の先端部121b,122bが長手方向を鉛直方向へ向けるように位置するので、フック125,126は、自重により収納部116a,116bから退没するように揺動し、支持部材121,122の先端部121b,122bに重なるようにして収まる。
【0098】
本実施例に係る版交換装置の作用効果を説明する。本実施例によれば、排版移動ロッドレスシリンダ119の移動子134に取り付けた被検出体131を介して、旧版2のくわえ側2aの曲げ部の位置を検出しつつ、旧版2のくわえ側2aの曲げ部の位置に応じ、排版移動ロッドレスシリンダ119の移動子134、及び刷版ガイド145の位置を制御することができるため、旧版2のくわえ側2aの曲げ部が刷版ガイド145の上部版胴12側の先端の近傍であって、刷版ガイド145に係止されない位置にあるときに、旧版2のくわえ側2aの曲げ部に対して確実に刷版ガイド145を逃がすことができるため、旧版2の抜き取りや刷版ガイド145の動作速度の変化に影響されることなく、安定して旧版2を抜き取ることが可能となる。
【0099】
また、旧版2は、印刷によって湾曲状態が変化するために、従来は旧版2のくわえ側2aの曲げ部を拘束しない状態で該くわえ側2aの曲げ部の位置を管理するのは困難であったが、刷版ガイド145の上部版胴12側の先端に旧版2のくわえ側2aの曲げ部を一度係止させるようにすれば、湾曲状態にある旧版2を平滑化することができ、旧版2の状態に影響されることなく刷版を管理することが可能となる。さらに、規制手段が刷版ガイドであるので、部品点数が多くならない効果がある。
【0100】
なお、本実施例においては、排版保持手段を刷版排出方向下流側に移動させた後、刷版検出手段によって刷版の版排出方向上流側の端部を検出したときに排版保持手段を刷版排出方向上流側に移動させた後、規制手段(刷版ガイド)を規制位置(新版案内位置)から退避位置(旧版案内位置)に移動させたときに排版保持手段を刷版排出方向下流側へ移動させるようにしたが、排版保持手段を刷版排出方向下流側に移動させた後、刷版検出手段によって刷版の版排出方向上流側の端部を検出したときに規制手段(刷版ガイド)を規制位置(新版案内位置)から退避位置(旧版案内位置)に移動させるようにしても良い。このようにすれば、排出方向の切換を行う必要がない。
【0101】
また、規制手段は、刷版ガイドと別部材であっても良い。
【0102】
さらに、本実施例において、被検出体を排版移動手段の駆動によって移動する排版保持手段に支持させるとともに、中間検出センサを取り付け板に支持するようにしたが、中間検出センサを排版移動手段の駆動によって移動する排版保持手段に支持させるとともに、被検出体を取り付け板に支持するようにしても良い。
【0103】
本実施例においては、本発明に係る版取扱装置を、版胴から旧版2を排出することができ、さらに版胴へ新版を供給することができる版交換装置に用いた例を開示したが、版胴から旧版2を排出する機能しかない版排出装置に適用する等、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明は、版胴に装着された版を排出する版排出装置を備えた版取扱装置に適用して好適なものである。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】本発明の実施形態に係る両面印刷機の概略構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係る上部版交換装置の概略構成図である。
【図3】図1の矢線A方向からみた抽出拡大図である。
【図4】図3の矢線B方向からみた抽出拡大図である。
【図5】本発明の実施形態係る版交換装置における版排出の制御の構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の実施形態に係る版交換装置における版排出の制御に係る工程を示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施形態に係る上部版交換装置の手順説明図である。
【図8】図7に続く手順説明図である。
【図9】図8に続く手順説明図である。
【図10】図9に続く手順説明図である。
【図11】図10に続く手順説明図である。
【図12】図11に続く手順説明図である。
【図13】図12に続く手順説明図である。
【図14】本発明の実施形態に係る版交換装置の部分拡大図である。
【図15】本発明の実施形態に係る版交換装置の新版の装着に係る手順説明図である。
【図16】本発明の実施形態に係る版交換装置の退避位置への切り替えに係る手順説明図である。
【図17】従来の版交換装置の概略構成図である。
【図18】図17に続く手順説明図である。
【図19】図18に続く手順説明図である。
【図20】図19に続く手順説明図である。
【図21】図20に続く手順説明図である。
【符号の説明】
【0106】
1 新版
2 旧版
2a 旧版のくわえ側
2b 旧版の尻側
11 フレーム
12 上部版胴
13 下部版胴
14 上部ゴム胴
15 下部ゴム胴
100 上部版交換装置
101 支持アーム
102 支持フレーム
103 カバー
103a 隙間
110 上部版保持装置
111 支持軸
112,113 ガイドフレーム
114 ガイド部材
114a ガイド部材基端部
115 ガイド部材
115a 引掛部
115b ガイド部材基端部
116a,116b 収納部
117 ガイドローラ
118 当て板
119,120 ロッドレスシリンダ
121,122 支持部材
121a,122a 支持部材基端部
121b,122b 支持部材先端部
121c,122c 支持部材連結部
123 ガイド部材
124 押圧プレート
125,126 フック
125a,126a 爪部
127,128 ストッパピン
129 リンクプレート
130 アクチュエータ
140 上部第一版案内装置
141 揺動フレーム
142 ガイドプレート
143 アクチュエータ
144 リンクプレート
145 刷版ガイド
146 アクチュエータ
147 回動軸
148 支持軸
149 ガイドローラ
150 くわえ取出しガイド
151 連結板
152 アクチュエータ
153 位置決めプレート
160 上部第二版案内装置
161 インカーカバー
162 案内コロ
171 上部押圧ローラ
200 下部版交換装置
210 下部版保持装置
240 下部第一版案内装置
260 下部第二版案内装置
271 下部押圧ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
刷版の版排出方向上流側の端部に折曲部を有する刷版を前記版胴から排出する版排出手段を備えた版取扱装置において、
前記版排出手段が、
前記版胴から排出する刷版を保持する排版保持手段と、
前記排版保持手段を、前記刷版を保持する保持位置から移動して前記刷版を前記版胴から離反させる方向へ移動させる排版移動手段と、
前記版排出手段の排版収納方向上流側に設けられ、前記版胴とこの版胴に近接するガイド部材との間に排出される前記刷版の折曲げ部が挿入されるのを規制する規制位置と、前記規制位置から離間した離間位置との間で移動する規制手段と、
前記刷版の版排出方向上流側の端部の位置を検出する刷版位置検出手段と、
前記排版移動手段を前記規制位置に位置付けた状態で前記排版保持手段を刷版排出方向下流側に移動させた後、前記刷版位置検出手段によって前記刷版の版排出方向上流側の端部を検出したときに前記規制手段を前記規制位置から前記離間位置に移動させるように制御する制御手段と
を備えたことを特徴とする版取扱装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記排版移動手段によって前記刷版の版排出方向上流側の端部を検出したときに前記排版保持手段を刷版排出方向上流側に移動するように前記排版移動手段を動作させた後、前記規制手段を前記規制位置から前記退避位置に移動させたときに前記排版保持手段を刷版排出方向下流側に移動するように前記排版移動手段を動作させる
ことを特徴とする請求項1記載の版取扱装置。
【請求項3】
前記版胴へ刷版を供給する版供給手段を備え、
前記規制手段は、前記版供給手段から供給される前記刷版を前記版胴に案内するとともに、前記版胴から排出される前記刷版を前記版排出手段へ案内する刷版ガイドである
ことを特徴とする請求項1記載の版取扱装置。
【請求項4】
前記刷版位置検出手段は、前記排版保持手段の位置を検出する検出手段である
ことを特徴とする請求項1記載の版取扱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2009−51083(P2009−51083A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−219693(P2007−219693)
【出願日】平成19年8月27日(2007.8.27)
【出願人】(000184735)株式会社小森コーポレーション (403)
【Fターム(参考)】