説明

物体探知装置

【課題】探知対象物体の大きさや形状に関係なく探知対象物体を確実に検知することができる物体探知装置を提供する。
【解決手段】各受波期間内の受信信号のサンプリングデータを格納するメモリ43と、メモリ43に格納されている受波期間内の同サンプリングタイミングのサンプリングデータに関する標準偏差を求める標準偏差演算手段44aと、標準偏差演算手段44aにて求めた標準偏差と予め設定された閾値とを比較する比較手段44bと、比較手段44bにおいて標準偏差が閾値に達したときのサンプリングタイミングまでの各受信信号に基づいて雑音成分を求める雑音成分演算手段44cと、各受信信号から雑音成分を取り除いた信号を信号成分として求める信号成分抽出手段44dと、信号成分抽出手段44dにて抽出された信号成分に基づいて探知対象物体Obの有無を判断する判断手段44eとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、大地やコンクリートなどの構造体の内部に埋設されている埋設物や構造体の裏側などに存在する物体などの探知対象物体を電磁波により検知する物体探知装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、地中や構造物中に埋設された探知対象物体(例えば、埋設管など)を電磁波により検知する方法として、パルス状の電磁波を送受信するアンテナ装置を地表面または構造物表面に沿って規定間隔で移動させて各測定位置でアンテナ部から電磁波を送信した後にアンテナ部にて受信される受信信号に基づいて探知対象物体を検知する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ここにおいて、上記特許文献1には、アンテナ装置の送信アンテナから受信アンテナへの直接波や地層面からの反射波や多重反射波などに起因した受信信号の雑音(ノイズ)を除去する方法として、互いに異なる測定位置での各受信信号の振幅値データを同一伝搬時間で比較し、振幅値データの差の絶対値が設定値以下の場合に、これらの振幅値データを雑音として除去する方法が提案されている。
【特許文献1】特許第3263752号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示された技術では、例えば、図7(a)の上段に示すように探知対象物体体Obが円筒状の物体である場合には、各測定位置(アンテナ装置の位置)X1,X2,X3ごとにアンテナ装置から探知対称物体Obまでの距離が異なり、電磁波を送信してから探知対象物体Obで反射された電磁波を受信するまでの時間差が異なるので、探知対象物体Obを精度良く検知することができる。なお、このときのアンテナ装置での受波信号は図7(a)の下段に示すようになる。ここで、同図中の「伝搬時間」は電磁波の送波時点からの経過時間を示している。
【0005】
これに対して、例えば、図7(b)の上段に示すような探知対象物体Obが構造物表面に平行となるように配置された平板状の物体である場合には、測定位置X1,X2,X3によらず探知対象物体Obまでの距離が等しいので、電磁波を送信してから探知対象物体Obで反射された電磁波を受信するまでの時間差が一致するとともに受波信号の波形に差が生じず、探知対象物体Obで反射された電磁波の信号成分が雑音成分として取り除かれてしまい、探知対象物体Obが検知されないという不具合があった。なお、このときのアンテナ装置での受信信号は図7(b)の下段のようになる。ここで、同図中の「伝搬時間」は電磁波の送波時点からの経過時間を示している。要するに、上記特許文献1に開示された技術では、探知対象物体Obにおける少なくとも構造物表面側の表面が平面状で構造物表面と平行である場合には、探知対象物体Obの大きさや平面形状によっては探知対象物体Obを検知することができないことがあった。
【0006】
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、探知対象物体の大きさや形状に関係なく探知対象物体を確実に検知することができる物体探知装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、地表面もしくは構造物表面からなる基準面に沿った複数の測定位置においてアンテナ部から基準面に向けてパルス状の電磁波を送信し、基準面よりも奥に存在する探知対象物体にて反射された電磁波をアンテナ部にて受信することにより探知対象物体を検知する物体探知装置であって、送信信号および電磁波の送信後の受波期間を定めるタイミング信号を生成して出力する信号生成部と、信号生成部から出力された送信信号を信号処理してアンテナ部からパルス状の電磁波を送信させる第1の信号処理部と、前記受波期間にアンテナ部からの受信信号を受信して各受信信号を信号処理する第2の信号処理部とを備え、第2の信号処理部は、各受波期間内の受信信号のサンプリングデータを格納するメモリと、メモリに格納されている受波期間内の同サンプリングタイミングのサンプリングデータに関する標準偏差を求める標準偏差演算手段と、標準偏差演算手段にて求めた標準偏差と予め設定された閾値とを比較する比較手段と、比較手段において標準偏差が前記閾値に達したときのサンプリングタイミングまでの各受信信号に基づいて雑音成分を求める雑音成分演算手段と、各受信信号から雑音成分を取り除いた信号を信号成分として求める信号成分抽出手段と、信号成分抽出手段にて抽出された信号成分に基づいて探知対象物体の有無を判断する判断手段とを備えてなることを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、探知対象物体の大きさや形状に関係なく各受信信号の雑音成分を取り除くことができるので、探知対象物体を確実に検知することができる。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記比較手段において標準偏差と前記閾値との比較を開始するタイミングを設定する設定手段を備えてなることを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、予め前記基準面の奥側に探知対象物体が存在することが分かっていて、且つ、前記基準面と前記探知対象物体との間の媒質の種類や厚みなどの情報がある程度分かっている場合に、これらの情報に基づいて標準偏差と前記閾値との比較を開始するタイミングを適宜設定しておけば、より確実に雑音成分を取り除くことができ、正確な検知が可能となる。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2の発明において、前記第2の信号処理部は、前記アンテナ部からの受信信号を増幅する増幅部を備え、前記受波期間内の時間経過に応じて増幅部の増幅度を増加させることを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、前記第2の信号処理部において、電磁波の減衰係数を考慮して前記受波期間内の時間経過に応じて増幅部の増幅度を増加させることによって、より正確な検知が可能となる。
【0013】
請求項4の発明は、請求項1ないし請求項3の発明において、前記アンテナ部からUWB方式で電磁波を送信することを特徴とする。
【0014】
この発明によれば、UWB方式では超広帯域を利用するので、非常に幅の狭いインパルス状の電磁波を送信でき、信号成分の極値を精度良く検知することが可能となって、より正確な検知が可能となる。
【0015】
請求項5の発明は、請求項1ないし請求項4の発明において、前記アンテナ部が1つのアンテナから電磁波を送信するとともに当該アンテナにて電磁波を受信するものであり、前記アンテナ部を前記各測定位置に移動させる移動手段を備えていることを特徴とする。
【0016】
この発明によれば、前記アンテナ部の小型化を図れるとともに、移動手段によって前記アンテナ部を前記各測定位置に移動させることができる。
【0017】
請求項6の発明は、請求項1ないし請求項4の発明において、前記アンテナ部が電磁波を送信する送信アンテナと電磁波を受信する受信アンテナとを1つずつ備え、前記アンテナ部を前記各測定位置に移動させる移動手段を備えてなることを特徴とする。
【0018】
この発明によれば、請求項5の発明に比べて不感帯を短くすることができ、また、移動手段によって前記アンテナ部を前記各測定位置に移動させることができる。
【0019】
請求項7の発明は、前記アンテナ部は、電磁波を送信する送信アンテナと電磁波を受信する受信アンテナとの組を複数組備え、送信アンテナと受信アンテナとの組がアレイ状に配置されてなることを特徴とする。
【0020】
この発明によれば、前記アンテナ部を移動させることなく前記測定位置を変えることが可能となる。
【発明の効果】
【0021】
請求項1の発明では、探知対象物体の大きさや形状に関係なく探知対象物体を確実に検知することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本実施形態の物体探知装置は、図1に示すように、地表面もしくは構造物表面からなる基準面Mに沿った複数の測定位置(アンテナ位置)においてアンテナ部10から基準面に向けてパルス状の電磁波を送信し、基準面Mよりも奥に存在する探知対象物体Obにて反射された電磁波をアンテナ部10にて受信することにより探知対象物体Obを検知する物体探知装置であって、送信信号および電磁波の送信後の受波期間を定めるタイミング信号を生成して出力する信号生成部20と、信号生成部20から出力された送信信号を信号処理してアンテナ部10からパルス状の電磁波を送信させる第1の信号処理部30と、上記受波期間にアンテナ部10からの受信信号を受信して各受信信号を信号処理する第2の信号処理部40と、信号生成部20および各信号処理部30,40を制御する制御部50と、第2の信号処理部40での信号処理に用いる後述の閾値THを記憶する記憶部60と、第2の信号処理部40による検知結果などを表示させる表示部70と、制御部50に各種の指示(例えば、制御部50から信号生成部20および各信号処理部30,40へ与える制御信号を定める探知モードの指示など)を与える操作を行う入力部80とを備えている。
【0023】
ここにおいて、信号生成部20は、制御部50からの制御信号に基づいて送信信号およびタイミング信号を生成し、送信信号を第1の信号処理部30へ与えるとともにタイミング信号を第2の信号処理部40へ与える。ここで、第1の信号処理部30は信号生成部20から入力された送信信号に対して増幅などの信号処理を行ってアンテナ部10からパルス状の電磁波を送信させる。
【0024】
第2の信号処理部40は、アンテナ部10からの受信信号を増幅する増幅部41と、増幅部41にて増幅されたアナログの受信信号を上記受波期間のサンプリングタイミング毎にディジタルの受波信号に変換してサンプリングデータとして出力するA/D変換部42と、各受波期間内の受信信号のサンプリングデータを格納するメモリ43と、メモリ43に格納された各受信信号のデータおよび上記閾値THを用いて探知対象物体Obを検知する演算部44とを備えている。なお、上記閾値THは、メモリ43に格納するようにしてもよく、この場合には上述の記憶部60をなくすことができ、低コスト化を図れる。
【0025】
上述の演算部44は、メモリ43に格納されている受波期間内の同サンプリングタイミングのサンプリングデータに関する標準偏差を求める標準偏差演算手段44aと、標準偏差演算手段44aにて求めた標準偏差と予め設定された閾値とを比較する比較手段44bと、比較手段44bにおいて標準偏差が上記閾値に達したとき(標準偏差が初めて上記閾値以上となったとき)のサンプリングタイミングまでの各受信信号のサンプリングデータに基づいて雑音成分を求める雑音成分演算手段44cと、各受信信号のサンプリングデータから雑音成分を取り除いた信号を信号成分として求める信号成分抽出手段44dと、信号成分抽出手段44dにて抽出された信号成分に基づいて探知対象物体Obの有無を判断する判断手段44eとを備えている。なお、判断手段44eの判断結果は上記検知結果として表示部70に表示される。
【0026】
以下、本実施形態の物体探知装置の動作について図2に基づいて説明する。
【0027】
複数のアンテナ位置Xi(i=1〜n)においてアンテナ部10で電磁波を送受信した場合に、図2(a)に示すように、各アンテナ位置Xiでの受信信号をA1〜Anとする。つまり、アンテナ位置X1での受信信号をA1、アンテナ位置X2での受信信号をA2、…、アンテナ位置Xnでの受信信号をAnとする。ここで、各受信信号A1〜Anは、A/D変換部42のサンプリング間隔Δt〔sec〕ごとにサンプリングされたm個のデータ(要素)からなるとする。すなわち、A1=〔A1(1) A1(2) … A1(m)〕、A2=〔A2(1) A2(2) … A2(m)〕、…、An=〔An(1) An(2) … An(m)〕となり、これらのデータは上述のメモリ43に格納される。
【0028】
演算部40では、標準偏差演算手段44aにて、図2(b)に示すように、メモリ43に格納されている各受信信号A1〜Anの1番目のデータA1(1)、A2(1)、…、An(1)に関する標準偏差B(1)を演算してから、比較手段44bにて標準偏差B(1)と上記閾値THとを比較し、B(1)が上記閾値THよりも小さければ、標準偏差演算手段44aにて各受信信号A1〜Anの2番目のデータA1(2)、A2(2)、…、An(2)の標準偏差B(2)を演算し、比較手段44bにて標準偏差B(2)と上記閾値THとを比較する。このようにして、演算部40では、標準偏差が上記閾値TH以上となるまで同様の処理を行う。なお、標準偏差B(m)まで求めても上記閾値TH以上とならない場合には、アンテナ位置Xiの少なくとも1つを変更してアンテナ部10で電磁波を送受信すればよい。
【0029】
ここで、図2(b)に示すように、初めて上記閾値TH以上となったi番目のデータA1(i)、A2(i)、…、An(i)の標準偏差をB(i)、図2(c)に示すように、背景雑音(雑音成分)をY=〔Y(1) Y(2) … Y(m)〕とすると、雑音成分演算手段44cでは、雑音成分を求める演算としてY(1)=(A1(1)+A2(1)+…+An(1))/n、Y(2)=(A1(2)+A2(2)+…+An(2))/n、…、Y(i)=(A1(i)+A2(i)+…+An(i))/nの演算を行い、Y(i+1)〜Y(m)は0とする。なお、図2中の伝搬時間T1は受波期間における上記i番目のデータ(要素)の受信時間に対応している。また、Y(1)〜Y(i)それぞれの演算では、n個全てのデータの平均値を求めているが、必ずしもn個全てのデータを用いる必要はなく、n個のデータの中で比較的大きな値および比較的小さな値を排除して残ったデータの平均値を求めるようにしてもよい。例えば、n個のデータを大きい順にソートし、大きい方から数えて5個のデータと小さい方から数えて5個のデータを排除して残りのn−10個(ただし、n>11)のデータの平均値を雑音成分のデータとするようにしてもよい。また、雑音成分演算手段44cでは、例えば、n個(奇数個)のデータを大きい順にソートし、大きい方から数えて〔(n−1)/2〕個のデータと小さい方から数えて〔(n−1)/2〕個のデータを排除して残りの1個のデータを雑音成分のデータとするようにしてもよい。
【0030】
次に、演算部40は、図2(d)に示すように、信号成分抽出手段44dにおいて各アンテナ位置X1〜Xnで測定された受信信号A1〜Anから背景雑音Yを減算したものを探知対象物体Obからの信号成分(反射波)とし、判断手段44eにおいて信号成分(反射波)を解析することによって探知対象物体Obの検知を行う。なお、本実施形態では、判断手段44eにおいて探知対象物体Obの有無を判断しているが、判断手段44eにおいて探知対象物体Obの有無だけでなく、探知対象物体Obまでの距離、探知対象物体Obの形状判別、探知対象物体Obの材質判別などの検知を行うようにしていもよい。
【0031】
以上説明した第2の信号処理部40の動作を簡単にまとめると図3のようになる。
【0032】
すなわち、第2の信号処理部40では、各アンテナ位置X1〜Xnでの受信信号(受信波)A1〜Anを順に取り込み(S1)、変数iをi=0とし(S2)、iが各受信信号に共通のデータ数(要素数)mよりも小さいか否かを判定し(S3)、i<mであれば、i=i+1としてから受信信号の同サンプリングタイミング(つまり、同一伝搬時間)におけるデータの標準偏差B(i)を算出し(S4)、標準偏差B(i)と上記閾値THとを比較する(S5)。ここで、B(i)≧THであれば、背景雑音Yを算出し(S6)、各アンテナ位置X1〜Xnでの信号成分(反射波)を算出し(S7)、信号成分(反射波)を解析することで探知対象物体Obの有無を判断する(S8)。
【0033】
なお、演算部44の上述の各手段44a〜44eは、例えば、演算部44を構成するマイクロコンピュータに適宜のプログラムを搭載することにより実現できる。
【0034】
以上説明した本実施形態の物体探知装置では、第2の信号処理部40において、メモリ43に格納されている受波期間内の同サンプリングタイミングのサンプリングデータに関する標準偏差を求めてから、標準偏差と上記閾値THとを比較し、標準偏差が上記閾値THに達したときのサンプリングタイミングまでの各受信信号に基づいて雑音成分を求め、さらに、各受信信号から雑音成分を取り除いた信号を信号成分として求めてから、当該信号成分に基づいて探知対象物体Obの有無が判断されることとなり、探知対象物体Obの大きさや形状に関係なく各受信信号の雑音成分を取り除くことができるので、探知対象物体Obを確実に検知することができる。したがって、図1(a)のように探知対象物体Obが平板状の物体であって基準面Mに平行となるように埋設されている場合でも、探知対象物体Obを確実に検知することができる。
【0035】
ところで、比較手段44bにおいて標準偏差と上記閾値THとの比較を開始するタイミングを設定する設定手段を入力部80に設けてもよく、予め基準面Mの奥側に探知対象物体Obが存在することが分かっていて、且つ、基準面Mと探知対象物体Obとの間の媒質の種類や厚みなどの情報がある程度分かっている場合に、これらの情報に基づいて標準偏差と上記閾値THとの比較を開始するタイミングを適宜設定しておけば、より確実に雑音成分を取り除くことができ、正確な検知が可能となる。図4は図2と同様の受信信号A1〜An、標準偏差に対して、標準偏差が最初に閾値TH以上となるサンプリングタイミング(電磁波の伝搬時間T3)よりも後のサンプリングタイミング(電磁波の伝搬時間T0)となるように上記タイミングを設定したことで、より後のサンプリングタイミング(電磁波の伝搬時間T1)で標準偏差が上記閾値THを超えた場合の例を示している。なお、上記設定手段を利用する場合には、上記設定手段により上記情報を入力することで制御部50が上記タイミングを第2の信号処理部40に指示するようにすればよい。
【0036】
また、第2の信号処理部40において増幅部41として可変増幅器を用い、上記受波期間内の時間経過に応じて増幅部41の増幅度を増加させるようにしてもよく、電磁波の媒質中での減衰係数を考慮して上記受波期間内の時間経過に応じて増幅部41の増幅度を増加させることによって、より正確な検知が可能となる。図5では、(a)に、増幅部41の増幅度が一定の場合の各アンテナ位置X1〜Xnそれぞれでの受信信号を示し、(b)に、増幅部41の増幅度を上述のように時間経過に伴って増加させた場合の各アンテナ位置X1〜Xnそれぞれでの受信信号を示し、(c)に、標準偏差演算手段44aにて求められる標準偏差を示し、(d)に、背景雑音演算手段44cにて求められる雑音成分(背景雑音Y)を示してある。なお、電磁波の媒質中での減衰係数を考慮して正確な検知を行う方法としては、上記受波期間内の時間経過に応じて増幅部41の増幅度を増加させる方法に限らず、ディジタルの受波信号に対して上記減衰係数を考慮した処理を行うようにしてもよい。
【0037】
また、本実施形態の物体探知装置では、アンテナ部10からUWB(Ultra Wide Band)方式で電磁波を送信するようにすれば、UWB方式では超広帯域を利用するので、非常に幅の狭いインパルス状の電磁波(例えば、パルス幅が1nsec以下のパルス信号)をアンテナ部10から送信でき、信号成分の極値を精度良く検知することが可能となって、より正確な検知が可能となる。
【0038】
なお、信号成分抽出手段44dにて抽出された信号成分が図6(a)を示すように上記閾値THを超えたときのサンプリングタイミングに対応する上記伝搬時間T1で急峻に変化している場合には、判断手段44eにおいて信号成分を周波数解析する際の誤差が大きくなる要因となる可能性があるが、図6(b)に示すように、上記伝搬時間T1から信号成分が最初にゼロクロスする伝搬時間T2までの信号成分の振幅が滑らかに変化するように信号成分を信号処理することで、周波数解析する際の精度を向上させることができ、より正確な検知が可能となる。
【0039】
ところで、本実施形態の物体探知装置では、アンテナ部10が1つのアンテナから電磁波を送信するとともに当該アンテナにて電磁波を受信するようにし、アンテナ部10を上記各測定位置に移動させる移動手段を備えるようにすれば、アンテナ部10の小型化を図れるとともに、移動手段によってアンテナ部10を上記各測定位置に移動させることができる。
【0040】
また、アンテナ部10が電磁波を送信する送信アンテナと電磁波を受信する受信アンテナとを1つずつ備え、アンテナ部10を上記各測定位置に移動させる移動手段を備えるようにすれば、アンテナ部10が1つのアンテナで送受信を行う場合に比べて、不感帯を短くすることができ、また、移動手段によってアンテナ部10を上記各測定位置に移動させることができる。
【0041】
また、アンテナ部10が電磁波を送信する送信アンテナと電磁波を受信する受信アンテナとの組を複数組備え、送信アンテナと受信アンテナとの組がアレイ状に配置された構成とすれば、アンテナ部10を移動させることなく測定位置を変えることが可能となる。
【0042】
また、アンテナ部10における送信アンテナおよび受信アンテナの数は上述の例に限らず、例えば、1つ以上の送信アンテナと複数の受信アンテナとを備えるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】実施形態を示し、(a)はブロック図、(b)は要部ブロック図である。
【図2】同上の動作説明図である。
【図3】同上の動作説明図である。
【図4】同上の動作説明図である。
【図5】同上の動作説明図である。
【図6】同上の動作説明図である。
【図7】従来例の動作説明図である。
【符号の説明】
【0044】
10 アンテナ部
20 信号生成部
30 第1の信号処理部
40 第2の信号処理部
41 増幅部
42 A/D変換部
43 メモリ
44 演算部
44a 標準偏差演算手段
44b 比較手段
44c 雑音成分演算手段
44d 信号成分抽出手段
44e 判定手段
50 制御部
60 記憶部
70 表示部
80 入力部
M 基準面
Ob 探知対象物体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地表面もしくは構造物表面からなる基準面に沿った複数の測定位置においてアンテナ部から基準面に向けてパルス状の電磁波を送信し、基準面よりも奥に存在する探知対象物体にて反射された電磁波をアンテナ部にて受信することにより探知対象物体を検知する物体探知装置であって、送信信号および電磁波の送信後の受波期間を定めるタイミング信号を生成して出力する信号生成部と、信号生成部から出力された送信信号を信号処理してアンテナ部からパルス状の電磁波を送信させる第1の信号処理部と、前記受波期間にアンテナ部からの受信信号を受信して各受信信号を信号処理する第2の信号処理部とを備え、第2の信号処理部は、各受波期間内の受信信号のサンプリングデータを格納するメモリと、メモリに格納されている受波期間内の同サンプリングタイミングのサンプリングデータに関する標準偏差を求める標準偏差演算手段と、標準偏差演算手段にて求めた標準偏差と予め設定された閾値とを比較する比較手段と、比較手段において標準偏差が前記閾値に達したときのサンプリングタイミングまでの各受信信号に基づいて雑音成分を求める雑音成分演算手段と、各受信信号から雑音成分を取り除いた信号を信号成分として求める信号成分抽出手段と、信号成分抽出手段にて抽出された信号成分に基づいて探知対象物体の有無を判断する判断手段とを備えてなることを特徴とする物体探知装置。
【請求項2】
前記比較手段において標準偏差と前記閾値との比較を開始するタイミングを設定する設定手段を備えてなることを特徴とする請求項1記載の物体探知装置。
【請求項3】
前記第2の信号処理部は、前記アンテナ部からの受信信号を増幅する増幅部を備え、前記受波期間内の時間経過に応じて増幅部の増幅度を増加させることを特徴とする請求項1または請求項2記載の物体探知装置。
【請求項4】
前記アンテナ部からUWB方式で電磁波を送信することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の物体探知装置。
【請求項5】
前記アンテナ部が1つのアンテナから電磁波を送信するとともに当該アンテナにて電磁波を受信するものであり、前記アンテナ部を前記各測定位置に移動させる移動手段を備えていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の物体探知装置。
【請求項6】
前記アンテナ部が電磁波を送信する送信アンテナと電磁波を受信する受信アンテナとを1つずつ備え、前記アンテナ部を前記各測定位置に移動させる移動手段を備えてなることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の物体探知装置。
【請求項7】
前記アンテナ部は、電磁波を送信する送信アンテナと電磁波を受信する受信アンテナとの組を複数組備え、送信アンテナと受信アンテナとの組がアレイ状に配置されてなることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の物体探知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−121044(P2007−121044A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−312000(P2005−312000)
【出願日】平成17年10月26日(2005.10.26)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】