物体移動装置
【課題】フォロワ台車に地面に対する走行車輪の滑り等による運動誤差が生じた場合でも、物体を目標位置まで確実に搬送し得る物体移動装置を提供する。
【解決手段】リーダ台車Aとフォロワ台車Bを物体の重心における制御点回りにインピーダンス制御し、リーダ台車Aに与えられる目標軌道に基づくフォロワ台車Bの目標軌道を該フォロワ台車Bにも与え、フォロワ台車Bに搭載された軌道センサを用いて算出したフォロワ台車Bの位置・姿勢と実空間における位置・姿勢との運動誤差を推定し、該推定される運動誤差を修正しながらフォロワ台車Bを移動させるよう構成する。
【解決手段】リーダ台車Aとフォロワ台車Bを物体の重心における制御点回りにインピーダンス制御し、リーダ台車Aに与えられる目標軌道に基づくフォロワ台車Bの目標軌道を該フォロワ台車Bにも与え、フォロワ台車Bに搭載された軌道センサを用いて算出したフォロワ台車Bの位置・姿勢と実空間における位置・姿勢との運動誤差を推定し、該推定される運動誤差を修正しながらフォロワ台車Bを移動させるよう構成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体移動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、任意の位置に停車した車両を駐車施設における所定位置に搬送できるようにした入出車装置の一般的技術水準を示すものとしては、例えば、特許文献1がある。
【0003】
特許文献1に示される装置は、それぞれ車両支持機構及び走行機構を備える左側搬送台車と右側搬送台車とからなり、該左側搬送台車と右側搬送台車とがそれぞれ独立して移動しつつ、協働して車両を支持し、搬送するようになっている。
【0004】
前記左側搬送台車と右側搬送台車は、無線通信によってリアルタイムに情報交換を行うことにより、協働している。
【0005】
しかしながら、前述の如く、無線通信による台車相互間でのリアルタイムの情報交換に基づいて前記左側搬送台車と右側搬送台車とを協働させるのでは、通信障害で情報が途切れたり遅れたりすることもあり、前記左側搬送台車と右側搬送台車とを協働させるために必要な情報をリアルタイムに安定して得ることが難しかった。又、情報が安定して得られなかった場合、搬送される車両等の物体に必要以上の内力が加わることとなり、最悪の場合、物体を落としたり、傷つけたりする可能性があった。
【0006】
このため、本発明者等は、無線通信のみによる台車相互間でのリアルタイムの情報交換を行うようにした協働搬送とは異なり、車両等の物体を落としたり、傷つけたりする心配がなく、複数の台車を協調制御により作動させることで、車両等の物体を確実に且つより安定して移動させ得る物体移動装置を提案している。(例えば、特許文献2参照。)
【0007】
前記特許文献2に開示した物体移動装置は、複数の台車を協調制御により作動させるという非常に高度で優れた機能を有するものである反面、移動すべき物体がバス等のホイールベースの長い車両や接地ポイントとしての車輪の数が多い車両であった場合、移動装置自体を大きくしたり、車輪の数に合わせた機構のものを別途用意しなければならず、移動装置の種類が増える一方、移動装置が大型化した場合には、移動経路を広くとり、且つ保管スペースも広く必要になるという欠点を有していた。
【0008】
そこで、本発明者等は、車両等の物体の一つの接地ポイントとしての車輪をリフトアップし、与えられた目標軌道に沿って移動可能なリーダ台車と、該リーダ台車にてリフトアップされる車輪以外の一つの車輪をリフトアップする複数台のフォロワ台車とを備えることにより、大きさや接地ポイント数の異なる車両等の物体にも装置の種類を増やすことなく対応し得、車両等の物体を確実に且つより安定して移動させることができ、移動経路や保管スペースの削減をも図り得る物体移動装置を提案している。(例えば、特許文献3参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−169451号公報
【特許文献2】特開2009−108542号公報
【特許文献3】特開2009−286570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明者の一人である小菅等が提案したリーダ・フォロワタイプの分散協調制御手法(小菅一弘、大住智宏、千葉晋彦による「単一物体を操る複数移動ロボットの分散協調制御」、日本ロボット学会誌16巻1号、pp.87〜95)では、複数の移動ロボットにより搬送物体を地面から浮かせた状態で搬送を行っている。一方、本研究では、車両という重量物を支持している地面に接地したリフターを台車本体により押したり引いたりすることで搬送を行うため、搬送物体には慣性力や摩擦力等の大きな外力が作用することになる。そのため小菅等の手法を用いると、一台のリーダ台車が車両重量を支持している四台のリフターに生じる摩擦力の総和より大きな力を駆動し、車両を動かし始めることは困難であった。
【0011】
そこで、本発明者等は、全てのロボットに目標軌道を与え能動的に動作させることにより、車両を動かし始めることができるようにすることを提案している。しかしながら、前記特許文献3に開示した物体移動装置においては、リーダ台車及びフォロワ台車に搭載された軌道センサを用いて算出した自身の位置・姿勢と実空間における位置・姿勢との間に、地面に対する走行車輪の滑り等により、いわゆる運動誤差が生じ、車両等の物体を安定して目標位置まで搬送することが困難となり、改善の余地が残されていることが、本発明者等の更なる研究により明らかとなった。
【0012】
本発明は、斯かる実情に鑑み、フォロワ台車に地面に対する走行車輪の滑り等による運動誤差が生じた場合でも、物体を目標位置まで確実に搬送し得る物体移動装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、走行駆動装置により全方向に自走可能な台車本体と、該台車本体に連結機構を介して取り付けられ且つ一対のリフトバーを接地ポイントが複数存在する物体の一つの接地ポイントの両側に配置して互いに近接させることにより、該物体の一つの接地ポイントをリフトアップするリフターとを有し、与えられた目標軌道に沿って移動可能なリーダ台車と、
走行駆動装置により全方向に自走可能な台車本体と、該台車本体に連結機構を介して取り付けられ且つ一対のリフトバーを前記物体の前記リーダ台車にてリフトアップされる接地ポイント以外の一つの接地ポイントの両側に配置して互いに近接させることにより、該物体の一つの接地ポイントをリフトアップするリフターとを有し、前記リーダ台車の動きを推定しつつ追従することにより、該リーダ台車と協調して物体を移動させるフォロワ台車とを備えた物体移動装置において、
前記リーダ台車とフォロワ台車を物体の重心における制御点回りにインピーダンス制御し、前記リーダ台車に与えられる目標軌道に基づくフォロワ台車の目標軌道を該フォロワ台車にも与え、フォロワ台車に搭載された軌道センサを用いて算出したフォロワ台車の位置・姿勢と実空間における位置・姿勢との運動誤差を推定し、該推定される運動誤差を修正しながらフォロワ台車を移動させるよう構成したことを特徴とする物体移動装置にかかるものである。
【0014】
上記手段によれば、以下のような作用が得られる。
【0015】
前述の如くリーダ台車とフォロワ台車を物体の重心における制御点回りにインピーダンス制御し、前記リーダ台車に与えられる目標軌道に基づくフォロワ台車の目標軌道を該フォロワ台車にも与え、フォロワ台車に搭載された軌道センサを用いて算出したフォロワ台車の位置・姿勢と実空間における位置・姿勢との運動誤差を推定し、該推定される運動誤差を修正しながらフォロワ台車を移動させるよう構成すると、搬送される物体に大きな負荷を与えずに、地面に対する走行車輪の滑り等が生じていても、車両等の物体を安定して目標位置まで搬送することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の物体移動装置によれば、フォロワ台車に地面に対する走行車輪の滑り等による運動誤差が生じた場合でも、物体を目標位置まで確実に搬送し得るという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の物体移動装置の実施例を示す全体概要斜視図である。
【図2】本発明の物体移動装置の実施例におけるリーダ台車(フォロワ台車)を示す斜視図である。
【図3】本発明の物体移動装置の実施例におけるリーダ台車(フォロワ台車)を底面側から示す斜視図である。
【図4】本発明の物体移動装置の実施例におけるリーダ台車(フォロワ台車)の連結機構を示す斜視図である。
【図5】本発明の物体移動装置の実施例におけるリーダ台車(フォロワ台車)のリフターの車輪浮上支持装置を示す斜視図である。
【図6】本発明の物体移動装置の実施例におけるリーダ台車の全体制御系統並びにフォロワ台車の全体制御系統を示すブロック図である。
【図7】本発明の物体移動装置の実施例におけるリーダ台車と各フォロワ台車の協調制御に関するシステム図である。
【図8】本発明の物体移動装置の実施例における一台のフォロワ台車に対する仮想リーダ台車のイメージ図である。
【図9】本発明の物体移動装置の実施例における各連結機構の配置を示す平面図である。
【図10】本発明の物体移動装置の実施例におけるリーダ台車とフォロワ台車を物体の重心における制御点回りにインピーダンス制御する状態を示す概念図である。
【図11】本発明の物体移動装置の実施例における伝達関数を示すブロック図であって、(a)はフォロワ台車の運動誤差を推定する伝達関数を示すブロック図、(b)は(a)に示すブロック図をフィードバックシステムに等価変換したブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0019】
図1〜図11は本発明の物体移動装置の実施例であって、該物体移動装置は、
走行駆動装置1により全方向に自走可能な台車本体2と、該台車本体2に連結機構3を介して取り付けられ且つ物体としての車両4の一つの車輪4a(接地ポイント)をリフトアップするリフター5とを有し、与えられた目標軌道に沿って移動可能なリーダ台車Aと、
走行駆動装置1により全方向に自走可能な台車本体2と、該台車本体2に連結機構3を介して取り付けられ且つ前記車両4の前記リーダ台車Aにてリフトアップされる車輪4a以外の一つの車輪4a(接地ポイント)をリフトアップするリフター5とを有した複数台(図の例では三台)のフォロワ台車Bとを備え、
前記各フォロワ台車Bが前記リーダ台車A及び自身以外のフォロワ台車Bをまとめたものを一台の仮想リーダ台車A´(図8参照)と想定し、該仮想リーダ台車A´との相互作用力を基に自身の運動誤差を推定しつつ追従することにより、前記リーダ台車Aと複数台のフォロワ台車Bとが協調して車両4を移動させるよう構成したものである。
【0020】
前記台車本体2は、図1〜図3に示す如く、直方体の四隅部をカットして細長い八角柱形状に組み立てられた台車フレーム2aの四隅部に、走行駆動装置1として走行車輪6を走行モータ7(走行アクチュエータ)(図6参照)の作動により水平な車軸8を中心に回転可能に配設してなる構成を有している。尚、前記走行車輪6は、操舵を必要としないオムニホイール(登録商標)やメカナムホイール等の全方向移動車輪とし、台車本体2の幅方向(図9の左右方向)に対しそれぞれ45°の角度を持ち、且つ対角に位置する走行車輪6同士が平行となるようにしてある。又、前記走行モータ7には、軌道センサとしての走行エンコーダ11(図6参照)が一体に組み込まれ、台車本体2の軌道情報を検出できるようにしてある。更に又、前記走行車輪6の全てが常に地面と接触するよう、四個のうち二個の走行車輪6はサスペンション機構6aを介して台車フレーム2aに取り付けるようにしてある。
【0021】
前記連結機構3は、図3及び図4に示す如く、力センサとしての引張圧縮型のロードセル13の両端にロッド14を取り付けた連結部材15を、その一端がユニバーサルジョイント16により台車本体2側に連結され他端がユニバーサルジョイント16によりリフター5側に連結されるよう、同一水平面内に複数(図9の例では三個)配設してなるパラレルリンク機構17によって構成してある。この場合、前記台車本体2に対しリフター5は、図2に示す如く、水平面内におけるX−Y方向に移動する方向の2自由度と、該X−Y方向に対して直交するZ軸を中心として回転する方向の1自由度とを加えた平面3自由度が拘束され、且つX軸を中心として回転する方向の1自由度と、Y軸を中心として回転する方向の1自由度と、Z軸方向に移動する方向の1自由度とを加えた3自由度がフリーとなるよう、前記パラレルリンク機構17(図3、図4及び図9参照)を介して配置される形となる。
【0022】
前記リフター5は、図1〜図3及び図5に示す如く、前記車両4の接地ポイントとしての各車輪4aを支持するための車輪浮上支持装置18を装備し、該車輪浮上支持装置18は、前記台車本体2に対し連結機構3を介して取り付けられるリフターフレーム5aに、リニアガイドレール19を台車本体2の幅方向(図9の左右方向)へ延びるよう固定配置すると共に、該リニアガイドレール19に対し、リニアガイドブロック19aを介して一対のラック部材21を互いにそのラック部の形成面が対向した状態で前記リニアガイドレール19に沿ってスライド自在となるよう配設し、前記リフターフレーム5aの中央部に一体に設けられ両端が開放された中空箱形のベース枠5bに、エンコーダ等のリフトバー開閉センサ22が一体に設けられたモータ等のリフトバー開閉アクチュエータ23を取り付け、該リフトバー開閉アクチュエータ23によって回転駆動される駆動ピニオン24を前記一対のラック部材21の互いに対向するラック部に対し前記ベース枠5b内でその両方に噛合させ、前記リニアガイドブロック19aから、底面が開放された断面門型のカバーフレーム5cを張り出させ、該カバーフレーム5cに対し、外周に車輪支持ローラ25が回転自在に嵌装され且つ先端部と基端部に接地支持輪26が取り付けられたリフトバー27を、前記ラック部材21と直角な水平方向へ延び且つ前記リニアガイドレール19と平行な揺動軸5dを中心に揺動自在となるよう取り付けてなる構成を有し、前記リフター5の車輪浮上支持装置18における一対のリフトバー27を前記車両4の各車輪4aの前後に配置して互いに近接させることにより、該車両4をリフトアップするよう構成してある。尚、前記リフトバー27の両端に取り付けた接地支持輪26により車両4の重量全てを支持するため、台車本体2は、車両4の重量を支持できるよう頑丈に設計する必要がなくなるという利点があり、更に、前記リフトバー27をその開閉方向と平行な揺動軸5dを中心に揺動自在となるようにしているため、二本のリフトバー27に取り付けた四つの接地支持輪26は常に接地する形となり、好ましい。
【0023】
前記リフトバー27の車輪支持ローラ25表面には、ローレット加工、或いは滑り止め塗料の塗装といった滑り止め加工を施すようにしてある。
【0024】
前記接地支持輪26には、一般的なキャスターを用いるようにしてあるが、前記走行車輪6と同様に、操舵を必要としないオムニホイール(登録商標)やメカナムホイール等の全方向移動車輪を用いても良いことは言うまでもない。
【0025】
一方、図6はリーダ台車Aの全体制御系統並びにフォロワ台車Bの全体制御系統を示すブロック図であり、前記リーダ台車Aに搭載されたリーダ制御部31には、前記台車本体2の走行駆動装置1における走行アクチュエータとしての走行モータ7と、前記台車本体2の走行駆動装置1における軌道センサとしての走行エンコーダ11と、前記連結機構3の力センサとしてのロードセル13と、前記リフター5の車輪浮上支持装置18におけるリフトバー開閉アクチュエータ23と、前記リフター5の車輪浮上支持装置18におけるリフトバー開閉センサ22と、前記フォロワ台車Bへ制御情報を送信するための無線通信装置39とを接続し、前記連結機構3の力センサとしてのロードセル13による検出信号と、前記台車本体2の走行駆動装置1における軌道センサとしての走行エンコーダ11による検出信号とに基づいて、前記台車本体2の走行駆動装置1における走行アクチュエータとしての走行モータ7に駆動信号を出力すると共に、前記無線通信装置39にてフォロワ台車Bへの制御情報を送信しつつ、前記リフター5の車輪浮上支持装置18におけるリフトバー開閉センサ22による検出信号に基づいて、前記リフター5の車輪浮上支持装置18におけるリフトバー開閉アクチュエータ23に駆動信号を出力する一方、
前記フォロワ台車Bに搭載されたフォロワ制御部32には、前記台車本体2の走行駆動装置1における走行アクチュエータとしての走行モータ7と、前記台車本体2の走行駆動装置1における軌道センサとしての走行エンコーダ11と、前記連結機構3の力センサとしてのロードセル13と、前記リフター5の車輪浮上支持装置18におけるリフトバー開閉アクチュエータ23と、前記リフター5の車輪浮上支持装置18におけるリフトバー開閉センサ22と、前記リーダ台車Aからの制御情報を受信するための無線通信装置40とを接続し、前記連結機構3の力センサとしてのロードセル13による検出信号と、前記台車本体2の走行駆動装置1における軌道センサとしての走行エンコーダ11による検出信号と、前記無線通信装置40で受信したリーダ台車Aからの制御情報とに基づいて、前記台車本体2の走行駆動装置1における走行アクチュエータとしての走行モータ7に駆動信号を出力すると共に、前記リフター5の車輪浮上支持装置18におけるリフトバー開閉センサ22による検出信号に基づいて、前記リフター5の車輪浮上支持装置18におけるリフトバー開閉アクチュエータ23に駆動信号を出力するようにしてある。
【0026】
前記リーダ台車Aと複数台(図の例では三台)のフォロワ台車Bの協調制御に関するシステムについてより詳しくは、図7に示す如く、前記リーダ台車Aと各フォロワ台車Bとの間で車両4を介して相互に働く相互作用力を前記リーダ台車Aの力センサとしてのロードセル13により力情報として検出し、前記リーダ台車Aの台車本体2の軌道情報を前記軌道センサとしての走行エンコーダ11によって検出し、前記リーダ制御部31において、予め入力される目標軌道情報と、前記リーダ台車Aの力センサとしてのロードセル13で検出された力情報と、前記リーダ台車Aの軌道センサとしての走行エンコーダ11で検出された軌道情報とに基づき、前記リーダ台車Aの台車本体2の走行アクチュエータへ電流指令値を出力すると共に、前記無線通信装置39にて各フォロワ台車Bへの制御情報を送信し、前記リーダ台車Aの台車本体2を目標軌道に沿って移動させる一方、
前記リーダ台車Aと各フォロワ台車Bとの間で車両4を介して相互に働く相互作用力を前記各フォロワ台車Bの力センサとしてのロードセル13により力情報として検出し、前記各フォロワ台車Bの台車本体2の軌道情報を前記軌道センサとしての走行エンコーダ11によって検出し、前記リーダ台車Aから無線通信装置39にて送信される制御情報を無線通信装置40で受信し、前記フォロワ制御部32において、前記各フォロワ台車Bの力センサとしてのロードセル13で検出された力情報と、前記各フォロワ台車Bの軌道センサとしての走行エンコーダ11で検出された軌道情報と、前記無線通信装置40で受信したリーダ台車Aからの制御情報とに基づき、前記各フォロワ台車Bの台車本体2の走行アクチュエータへ電流指令値を出力し、前記各フォロワ台車Bの台車本体2を前記リーダ台車Aの動きに追従させて移動させるようにしてある。
【0027】
但し、前記フォロワ台車Bが複数台(図の例では三台)となった場合、図7に示す如く、自身以外の全ての台車からの影響を受けることになるため、i番目のフォロワ台車Bはリーダ台車Aとの相互作用力に基づく自身の運動誤差を推定することができなくなる。そこで、i番目のフォロワ台車Bに対して、第一のグループをi番目のフォロワ台車Bそれ自身とし、第二のグループをリーダ台車A及びi番目以外のフォロワ台車Bをまとめた一台の仮想リーダ台車A´(これをi番目の仮想リーダ台車A´)とする。即ち、i番目の仮想リーダ台車A´は、i番目のフォロワ台車Bから見ると、図8に示す如く、一台のリーダのように振舞うと考えられる。この仮想リーダという考え方を用いれば、フォロワ台車Bが一台の場合のリーダ台車Aとの相互作用力に基づく自身の運動誤差の推定方法を用いて、前記i番目のフォロワ台車Bは、リーダ台車A及び自身以外のフォロワ台車Bをまとめた一台のi番目の仮想リーダ台車A´との相互作用力に基づく自身の運動誤差を推定することができる。
【0028】
ここで、前記力センサとしての引張圧縮型のロードセル13が介装された連結部材15を平面3自由度を拘束するパラレルリンク機構17として図9に示すような配置で三つ取り付けた場合、ロードセル13による検出値をヤコビ行列で座標変換すると、外力としてリフター5に加わる力を平面3自由度の力情報として得ることができるが、具体的な計算例については、特許文献3に記載されている。
【0029】
又、リーダ台車Aとフォロワ台車Bの協調制御の基本的な考え方、並びにフォロワ台車Bが複数台となった場合に、仮想リーダという考え方を用いることにより、フォロワ台車Bが一台の場合の目標軌道の推定方法と同様に、i番目のフォロワ台車Bが、リーダ台車A及び自身以外のフォロワ台車Bをまとめた一台のi番目の仮想リーダ台車A´の目標軌道を推定することができるという点に関しては、小菅一弘、大住智宏、千葉晋彦による「単一物体を操る複数移動ロボットの分散協調制御」、日本ロボット学会誌16巻1号、pp.87〜95に記載されている。
【0030】
そして、本実施例の場合、従来の分散協調制御とは異なり、前記リーダ台車Aには運動誤差は生じないが、フォロワ台車Bには運動誤差が生じるものと仮定し、前記リーダ台車Aに与えられる目標軌道に基づくフォロワ台車Bの目標軌道を該フォロワ台車Bにも与え、フォロワ台車Bに搭載された前記軌道センサとしての走行エンコーダ11を用いて算出したフォロワ台車Bの位置・姿勢と実空間における位置・姿勢との運動誤差を推定し、該推定される運動誤差を修正しながらフォロワ台車Bを移動させるよう構成している。
【0031】
先ず、車両4に大きな負荷を与えないようにするために、リーダ台車Aとフォロワ台車Bをそれぞれ同一の制御点回りに[数1][数2]に示すようインピーダンス制御する。前記制御点は、図10に示す如く、車両4の重心位置、即ち四つの車輪4aの中点にあるものとする。
【数1】
【数2】
ここで、添字l,iはそれぞれリーダ台車A及びi番目のフォロワ台車Bに関する変数、パラメータであることを表している。Ml,Mi∈ER3×3は慣性行列、Dl,Di∈R3×3は粘性行列、Kl,Ki∈R3×3は剛性行列、fl,fi∈R3はリーダ台車A及びi番目のフォロワ台車Bに作用する力/モーメントであり、該fl,fiは前記力センサとしての引張圧縮型のロードセル13によって検出される。
【0032】
又、Δxl,Δxi∈R3はリーダ台車A及びi番目のフォロワ台車Bの運動誤差であり、[数3][数4]のように表される。
【数3】
【数4】
ここで、リーダ台車A及びi番目のフォロワ台車Bと車両4との間に相対運動がないものと仮定すると、リーダ台車A及びi番目のフォロワ台車Bは同一の制御点回りにインピーダンス制御されているので、実空間における車両4の軌道とリーダ台車A及びi番目のフォロワ台車Bの軌道は一致し、該軌道をそれぞれx∈R3と表している。xd∈R3は全
した自身の運動誤差を表している。
【0033】
以下では議論を簡単にするために、リーダ台車Aとi番目のフォロワ台車Bを[数5][数6][数7]に示す同一のパラメータを用いてインピーダンス制御するものとする。
【数5】
【数6】
【数7】
【0034】
はじめに、前記フォロワ台車Bが一台の場合、つまり[数2]においてn=1の場合を考える。車両4やリフター5に外力が働かないと仮定すると、車両4に作用する力/モーメントには[数8]の関係が成り立つ。
【数8】
【0035】
[数1][数2][数8]より[数9]が成り立つ。
【数9】
【0036】
[数9]より、充分時間が経過した状態では[数10]が成り立つ。
【数10】
【0037】
又、[数3][数4]より[数11]を得る。
【数11】
【0038】
一方、[数10]より[数12]を得る。
【数12】
ここで、フォロワ台車Bは図11(a)に示すように、自身で観測可能なΔx1−Δxl
ラス変換後の変数を意味する。)図11(a)は図11(b)に示すようなフィードバックシステムに等価変換することができ、フォロワ台車BはΔX1−ΔXlが0に収束するよう
【0039】
例えば、伝達関数G1を[数13]のように設定する。
【数13】
ここで、a1,b1∈Rは定数、sはラプラス演算子、I∈R3×3は単位行列である。
【0040】
この時、図11(b)の入出力の関係は[数14]のように求まる。
【数14】
【0041】
このフィードバックシステムの安定性を保証するためにa1>0,b1>0とすると、フォ
状の入力の場合には、[数15]に示すように、
【数15】
となるので、定常状態では、実際にフォロワ台車Bに生じる運動誤差と、フォロワ台車Bが推定した自身の運動誤差は等しくなることが分かる。
【0042】
続いて、前述の仮想リーダの概念を用いることにより、フォロワ台車Bが一台の場合を拡張してフォロワ台車Bがn台の場合を考える。仮想リーダ台車A´(図8参照)の概念を導入すれば、フォロワ台車Bが一台の場合の推定手法を用いて、i番目のフォロワ台車Bは自身の運動誤差を推定することができる。
【0043】
i番目の仮想リーダ台車A´のダイナミクスは[数16]のように表される。
【数16】
但し、
【数17】
とする。
【0044】
[数16]より、i番目の仮想リーダ台車A´の運動誤差Δxliは[数18]のように表せる。
【数18】
【0045】
又、i番目の仮想リーダ台車A´に作用する力/モーメントfliは[数19]のように表せる。
【数19】
【0046】
[数18][数19]を用いると、i番目の仮想リーダ台車A´のダイナミクスは[数20]のようになる。
【数20】
【0047】
xdiをi番目の仮想リーダ台車A´の目標軌道とすると、Δxliは[数21]のように表すことができる。
【数21】
【0048】
[数3][数18][数21]をxdiについて解くと、[数22]のようになる。
【数22】
【0049】
ここで、前記フォロワ台車Bが一台の場合と同様に、車両4やリフター5に外力が働かないと仮定すると、車両4に作用する力/モーメントには[数23]の関係が成り立つ。
【数23】
【0050】
[数1][数2][数23]より、[数10]と同様にして考えると、充分時間が経過した状態では[数24]が成り立つ。
【数24】
【0051】
又、[数18][数24]より、[数25]が成り立つ。
【数25】
【0052】
このようにして仮想リーダ台車A´の概念を用いると、[数20][数21]は[数1][数3]と同一の形をしているので、i番目のフォロワ台車Bは、フォロワ台車Bが一台の場合の推定手法を用いて、自身の運動誤差を推定することができる。
【0053】
[数25]より、i番目のフォロワ台車Bの運動誤差Δxiとi番目の仮想リーダ台車A´の運動誤差Δxliの差は[数26]で表せる。
【数26】
【0054】
i番目のフォロワ台車Bは自身で観測可能なΔxiと[数26]を用いて、Δxi−Δxliを計算することができる。そしてΔxi−Δxliと前記フォロワ台車Bが一台の場合と同様
うに推定することができる。
【数27】
【0055】
ここで、伝達関数Giは前記フォロワ台車Bが一台の場合と同様に[数28]とする。
【数28】
【0056】
更に、前記仮想リーダの概念を用いて一台のリーダ台車Aとn台のフォロワ台車Bで構成される車両4の協調搬送システムを考えた場合のシステム全体の安定性と軌道収束について考察する。
【0057】
【数29】
【0058】
又、[数24]に[数3][数4]を代入し、ラプラス変換すると、[数30]を得る。
【数30】
【0059】
ここで議論を簡単にするために,全てのフォロワ台車Bの運動誤差を推定するフォロワ制御部32に同一のパラメータa,bを用いる場合を考えると、伝達関数Giは[数31]のように表せる。
【数31】
【0060】
[数29][数30][数31]より、Xは[数32]のように求まる。
【数32】
【0061】
[数32]より、この協調搬送システムが安定となる必要十分条件は、[数33]のように
【数33】
の全ての根の実部が負であること、つまりa>0,b>0である。
【0062】
更に、i番目のフォロワ台車Bの運動誤差が[数34]に示すようなランプ状の場合を考える。
【数34】
ここで、ci,di,ei∈Rは定数である。
【0063】
この時,[数32][数34]とラプラスの最終値の定理より、[数35]のように
【数35】
となるので,定常状態では、実空間において搬送される車両4の軌道xは全てのロボットに与えられる目標軌道xdと一致することが分かる。
【0064】
即ち、前述の如くリーダ台車Aとフォロワ台車Bを車両4の重心における制御点回りにインピーダンス制御し、前記リーダ台車Aに与えられる目標軌道に基づくフォロワ台車Bの目標軌道を該フォロワ台車Bにも与え、フォロワ台車Bに搭載された軌道センサとしての走行エンコーダ11を用いて算出したフォロワ台車Bの位置・姿勢と実空間における位置・姿勢との運動誤差を推定し、該推定される運動誤差を修正しながらフォロワ台車Bを移動させるよう構成すると、搬送される物体に大きな負荷を与えずに、地面に対する走行車輪6の滑り等が生じていても、車両4を安定して目標位置まで搬送することが可能となる。
【0065】
こうして、フォロワ台車Bに地面に対する走行車輪6の滑り等による運動誤差が生じた場合でも、車両4を目標位置まで確実に搬送し得る。
【0066】
尚、本発明の物体移動装置は、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、車両は四輪車に限らず、複数の車輪を持つ車両であればどのような車両にも適用可能なこと、又、駐車施設に限らず、駐車違反車両の移動やカーフェリー内での車両の移動等にも適用可能なこと、更に又、車両以外の物体にも適用可能なこと等、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0067】
1 走行駆動装置
2 台車本体
3 連結機構
4 車両(物体)
4a 車輪(接地ポイント)
5 リフター
6 走行車輪
11 走行エンコーダ(軌道センサ)
13 ロードセル(力センサ)
18 車輪浮上支持装置
23 リフトバー開閉アクチュエータ
26 接地支持輪
27 リフトバー
31 リーダ制御部
32 フォロワ制御部
39 無線通信装置
40 無線通信装置
A リーダ台車
A´ 仮想リーダ台車
B フォロワ台車
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体移動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、任意の位置に停車した車両を駐車施設における所定位置に搬送できるようにした入出車装置の一般的技術水準を示すものとしては、例えば、特許文献1がある。
【0003】
特許文献1に示される装置は、それぞれ車両支持機構及び走行機構を備える左側搬送台車と右側搬送台車とからなり、該左側搬送台車と右側搬送台車とがそれぞれ独立して移動しつつ、協働して車両を支持し、搬送するようになっている。
【0004】
前記左側搬送台車と右側搬送台車は、無線通信によってリアルタイムに情報交換を行うことにより、協働している。
【0005】
しかしながら、前述の如く、無線通信による台車相互間でのリアルタイムの情報交換に基づいて前記左側搬送台車と右側搬送台車とを協働させるのでは、通信障害で情報が途切れたり遅れたりすることもあり、前記左側搬送台車と右側搬送台車とを協働させるために必要な情報をリアルタイムに安定して得ることが難しかった。又、情報が安定して得られなかった場合、搬送される車両等の物体に必要以上の内力が加わることとなり、最悪の場合、物体を落としたり、傷つけたりする可能性があった。
【0006】
このため、本発明者等は、無線通信のみによる台車相互間でのリアルタイムの情報交換を行うようにした協働搬送とは異なり、車両等の物体を落としたり、傷つけたりする心配がなく、複数の台車を協調制御により作動させることで、車両等の物体を確実に且つより安定して移動させ得る物体移動装置を提案している。(例えば、特許文献2参照。)
【0007】
前記特許文献2に開示した物体移動装置は、複数の台車を協調制御により作動させるという非常に高度で優れた機能を有するものである反面、移動すべき物体がバス等のホイールベースの長い車両や接地ポイントとしての車輪の数が多い車両であった場合、移動装置自体を大きくしたり、車輪の数に合わせた機構のものを別途用意しなければならず、移動装置の種類が増える一方、移動装置が大型化した場合には、移動経路を広くとり、且つ保管スペースも広く必要になるという欠点を有していた。
【0008】
そこで、本発明者等は、車両等の物体の一つの接地ポイントとしての車輪をリフトアップし、与えられた目標軌道に沿って移動可能なリーダ台車と、該リーダ台車にてリフトアップされる車輪以外の一つの車輪をリフトアップする複数台のフォロワ台車とを備えることにより、大きさや接地ポイント数の異なる車両等の物体にも装置の種類を増やすことなく対応し得、車両等の物体を確実に且つより安定して移動させることができ、移動経路や保管スペースの削減をも図り得る物体移動装置を提案している。(例えば、特許文献3参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−169451号公報
【特許文献2】特開2009−108542号公報
【特許文献3】特開2009−286570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明者の一人である小菅等が提案したリーダ・フォロワタイプの分散協調制御手法(小菅一弘、大住智宏、千葉晋彦による「単一物体を操る複数移動ロボットの分散協調制御」、日本ロボット学会誌16巻1号、pp.87〜95)では、複数の移動ロボットにより搬送物体を地面から浮かせた状態で搬送を行っている。一方、本研究では、車両という重量物を支持している地面に接地したリフターを台車本体により押したり引いたりすることで搬送を行うため、搬送物体には慣性力や摩擦力等の大きな外力が作用することになる。そのため小菅等の手法を用いると、一台のリーダ台車が車両重量を支持している四台のリフターに生じる摩擦力の総和より大きな力を駆動し、車両を動かし始めることは困難であった。
【0011】
そこで、本発明者等は、全てのロボットに目標軌道を与え能動的に動作させることにより、車両を動かし始めることができるようにすることを提案している。しかしながら、前記特許文献3に開示した物体移動装置においては、リーダ台車及びフォロワ台車に搭載された軌道センサを用いて算出した自身の位置・姿勢と実空間における位置・姿勢との間に、地面に対する走行車輪の滑り等により、いわゆる運動誤差が生じ、車両等の物体を安定して目標位置まで搬送することが困難となり、改善の余地が残されていることが、本発明者等の更なる研究により明らかとなった。
【0012】
本発明は、斯かる実情に鑑み、フォロワ台車に地面に対する走行車輪の滑り等による運動誤差が生じた場合でも、物体を目標位置まで確実に搬送し得る物体移動装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、走行駆動装置により全方向に自走可能な台車本体と、該台車本体に連結機構を介して取り付けられ且つ一対のリフトバーを接地ポイントが複数存在する物体の一つの接地ポイントの両側に配置して互いに近接させることにより、該物体の一つの接地ポイントをリフトアップするリフターとを有し、与えられた目標軌道に沿って移動可能なリーダ台車と、
走行駆動装置により全方向に自走可能な台車本体と、該台車本体に連結機構を介して取り付けられ且つ一対のリフトバーを前記物体の前記リーダ台車にてリフトアップされる接地ポイント以外の一つの接地ポイントの両側に配置して互いに近接させることにより、該物体の一つの接地ポイントをリフトアップするリフターとを有し、前記リーダ台車の動きを推定しつつ追従することにより、該リーダ台車と協調して物体を移動させるフォロワ台車とを備えた物体移動装置において、
前記リーダ台車とフォロワ台車を物体の重心における制御点回りにインピーダンス制御し、前記リーダ台車に与えられる目標軌道に基づくフォロワ台車の目標軌道を該フォロワ台車にも与え、フォロワ台車に搭載された軌道センサを用いて算出したフォロワ台車の位置・姿勢と実空間における位置・姿勢との運動誤差を推定し、該推定される運動誤差を修正しながらフォロワ台車を移動させるよう構成したことを特徴とする物体移動装置にかかるものである。
【0014】
上記手段によれば、以下のような作用が得られる。
【0015】
前述の如くリーダ台車とフォロワ台車を物体の重心における制御点回りにインピーダンス制御し、前記リーダ台車に与えられる目標軌道に基づくフォロワ台車の目標軌道を該フォロワ台車にも与え、フォロワ台車に搭載された軌道センサを用いて算出したフォロワ台車の位置・姿勢と実空間における位置・姿勢との運動誤差を推定し、該推定される運動誤差を修正しながらフォロワ台車を移動させるよう構成すると、搬送される物体に大きな負荷を与えずに、地面に対する走行車輪の滑り等が生じていても、車両等の物体を安定して目標位置まで搬送することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の物体移動装置によれば、フォロワ台車に地面に対する走行車輪の滑り等による運動誤差が生じた場合でも、物体を目標位置まで確実に搬送し得るという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の物体移動装置の実施例を示す全体概要斜視図である。
【図2】本発明の物体移動装置の実施例におけるリーダ台車(フォロワ台車)を示す斜視図である。
【図3】本発明の物体移動装置の実施例におけるリーダ台車(フォロワ台車)を底面側から示す斜視図である。
【図4】本発明の物体移動装置の実施例におけるリーダ台車(フォロワ台車)の連結機構を示す斜視図である。
【図5】本発明の物体移動装置の実施例におけるリーダ台車(フォロワ台車)のリフターの車輪浮上支持装置を示す斜視図である。
【図6】本発明の物体移動装置の実施例におけるリーダ台車の全体制御系統並びにフォロワ台車の全体制御系統を示すブロック図である。
【図7】本発明の物体移動装置の実施例におけるリーダ台車と各フォロワ台車の協調制御に関するシステム図である。
【図8】本発明の物体移動装置の実施例における一台のフォロワ台車に対する仮想リーダ台車のイメージ図である。
【図9】本発明の物体移動装置の実施例における各連結機構の配置を示す平面図である。
【図10】本発明の物体移動装置の実施例におけるリーダ台車とフォロワ台車を物体の重心における制御点回りにインピーダンス制御する状態を示す概念図である。
【図11】本発明の物体移動装置の実施例における伝達関数を示すブロック図であって、(a)はフォロワ台車の運動誤差を推定する伝達関数を示すブロック図、(b)は(a)に示すブロック図をフィードバックシステムに等価変換したブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0019】
図1〜図11は本発明の物体移動装置の実施例であって、該物体移動装置は、
走行駆動装置1により全方向に自走可能な台車本体2と、該台車本体2に連結機構3を介して取り付けられ且つ物体としての車両4の一つの車輪4a(接地ポイント)をリフトアップするリフター5とを有し、与えられた目標軌道に沿って移動可能なリーダ台車Aと、
走行駆動装置1により全方向に自走可能な台車本体2と、該台車本体2に連結機構3を介して取り付けられ且つ前記車両4の前記リーダ台車Aにてリフトアップされる車輪4a以外の一つの車輪4a(接地ポイント)をリフトアップするリフター5とを有した複数台(図の例では三台)のフォロワ台車Bとを備え、
前記各フォロワ台車Bが前記リーダ台車A及び自身以外のフォロワ台車Bをまとめたものを一台の仮想リーダ台車A´(図8参照)と想定し、該仮想リーダ台車A´との相互作用力を基に自身の運動誤差を推定しつつ追従することにより、前記リーダ台車Aと複数台のフォロワ台車Bとが協調して車両4を移動させるよう構成したものである。
【0020】
前記台車本体2は、図1〜図3に示す如く、直方体の四隅部をカットして細長い八角柱形状に組み立てられた台車フレーム2aの四隅部に、走行駆動装置1として走行車輪6を走行モータ7(走行アクチュエータ)(図6参照)の作動により水平な車軸8を中心に回転可能に配設してなる構成を有している。尚、前記走行車輪6は、操舵を必要としないオムニホイール(登録商標)やメカナムホイール等の全方向移動車輪とし、台車本体2の幅方向(図9の左右方向)に対しそれぞれ45°の角度を持ち、且つ対角に位置する走行車輪6同士が平行となるようにしてある。又、前記走行モータ7には、軌道センサとしての走行エンコーダ11(図6参照)が一体に組み込まれ、台車本体2の軌道情報を検出できるようにしてある。更に又、前記走行車輪6の全てが常に地面と接触するよう、四個のうち二個の走行車輪6はサスペンション機構6aを介して台車フレーム2aに取り付けるようにしてある。
【0021】
前記連結機構3は、図3及び図4に示す如く、力センサとしての引張圧縮型のロードセル13の両端にロッド14を取り付けた連結部材15を、その一端がユニバーサルジョイント16により台車本体2側に連結され他端がユニバーサルジョイント16によりリフター5側に連結されるよう、同一水平面内に複数(図9の例では三個)配設してなるパラレルリンク機構17によって構成してある。この場合、前記台車本体2に対しリフター5は、図2に示す如く、水平面内におけるX−Y方向に移動する方向の2自由度と、該X−Y方向に対して直交するZ軸を中心として回転する方向の1自由度とを加えた平面3自由度が拘束され、且つX軸を中心として回転する方向の1自由度と、Y軸を中心として回転する方向の1自由度と、Z軸方向に移動する方向の1自由度とを加えた3自由度がフリーとなるよう、前記パラレルリンク機構17(図3、図4及び図9参照)を介して配置される形となる。
【0022】
前記リフター5は、図1〜図3及び図5に示す如く、前記車両4の接地ポイントとしての各車輪4aを支持するための車輪浮上支持装置18を装備し、該車輪浮上支持装置18は、前記台車本体2に対し連結機構3を介して取り付けられるリフターフレーム5aに、リニアガイドレール19を台車本体2の幅方向(図9の左右方向)へ延びるよう固定配置すると共に、該リニアガイドレール19に対し、リニアガイドブロック19aを介して一対のラック部材21を互いにそのラック部の形成面が対向した状態で前記リニアガイドレール19に沿ってスライド自在となるよう配設し、前記リフターフレーム5aの中央部に一体に設けられ両端が開放された中空箱形のベース枠5bに、エンコーダ等のリフトバー開閉センサ22が一体に設けられたモータ等のリフトバー開閉アクチュエータ23を取り付け、該リフトバー開閉アクチュエータ23によって回転駆動される駆動ピニオン24を前記一対のラック部材21の互いに対向するラック部に対し前記ベース枠5b内でその両方に噛合させ、前記リニアガイドブロック19aから、底面が開放された断面門型のカバーフレーム5cを張り出させ、該カバーフレーム5cに対し、外周に車輪支持ローラ25が回転自在に嵌装され且つ先端部と基端部に接地支持輪26が取り付けられたリフトバー27を、前記ラック部材21と直角な水平方向へ延び且つ前記リニアガイドレール19と平行な揺動軸5dを中心に揺動自在となるよう取り付けてなる構成を有し、前記リフター5の車輪浮上支持装置18における一対のリフトバー27を前記車両4の各車輪4aの前後に配置して互いに近接させることにより、該車両4をリフトアップするよう構成してある。尚、前記リフトバー27の両端に取り付けた接地支持輪26により車両4の重量全てを支持するため、台車本体2は、車両4の重量を支持できるよう頑丈に設計する必要がなくなるという利点があり、更に、前記リフトバー27をその開閉方向と平行な揺動軸5dを中心に揺動自在となるようにしているため、二本のリフトバー27に取り付けた四つの接地支持輪26は常に接地する形となり、好ましい。
【0023】
前記リフトバー27の車輪支持ローラ25表面には、ローレット加工、或いは滑り止め塗料の塗装といった滑り止め加工を施すようにしてある。
【0024】
前記接地支持輪26には、一般的なキャスターを用いるようにしてあるが、前記走行車輪6と同様に、操舵を必要としないオムニホイール(登録商標)やメカナムホイール等の全方向移動車輪を用いても良いことは言うまでもない。
【0025】
一方、図6はリーダ台車Aの全体制御系統並びにフォロワ台車Bの全体制御系統を示すブロック図であり、前記リーダ台車Aに搭載されたリーダ制御部31には、前記台車本体2の走行駆動装置1における走行アクチュエータとしての走行モータ7と、前記台車本体2の走行駆動装置1における軌道センサとしての走行エンコーダ11と、前記連結機構3の力センサとしてのロードセル13と、前記リフター5の車輪浮上支持装置18におけるリフトバー開閉アクチュエータ23と、前記リフター5の車輪浮上支持装置18におけるリフトバー開閉センサ22と、前記フォロワ台車Bへ制御情報を送信するための無線通信装置39とを接続し、前記連結機構3の力センサとしてのロードセル13による検出信号と、前記台車本体2の走行駆動装置1における軌道センサとしての走行エンコーダ11による検出信号とに基づいて、前記台車本体2の走行駆動装置1における走行アクチュエータとしての走行モータ7に駆動信号を出力すると共に、前記無線通信装置39にてフォロワ台車Bへの制御情報を送信しつつ、前記リフター5の車輪浮上支持装置18におけるリフトバー開閉センサ22による検出信号に基づいて、前記リフター5の車輪浮上支持装置18におけるリフトバー開閉アクチュエータ23に駆動信号を出力する一方、
前記フォロワ台車Bに搭載されたフォロワ制御部32には、前記台車本体2の走行駆動装置1における走行アクチュエータとしての走行モータ7と、前記台車本体2の走行駆動装置1における軌道センサとしての走行エンコーダ11と、前記連結機構3の力センサとしてのロードセル13と、前記リフター5の車輪浮上支持装置18におけるリフトバー開閉アクチュエータ23と、前記リフター5の車輪浮上支持装置18におけるリフトバー開閉センサ22と、前記リーダ台車Aからの制御情報を受信するための無線通信装置40とを接続し、前記連結機構3の力センサとしてのロードセル13による検出信号と、前記台車本体2の走行駆動装置1における軌道センサとしての走行エンコーダ11による検出信号と、前記無線通信装置40で受信したリーダ台車Aからの制御情報とに基づいて、前記台車本体2の走行駆動装置1における走行アクチュエータとしての走行モータ7に駆動信号を出力すると共に、前記リフター5の車輪浮上支持装置18におけるリフトバー開閉センサ22による検出信号に基づいて、前記リフター5の車輪浮上支持装置18におけるリフトバー開閉アクチュエータ23に駆動信号を出力するようにしてある。
【0026】
前記リーダ台車Aと複数台(図の例では三台)のフォロワ台車Bの協調制御に関するシステムについてより詳しくは、図7に示す如く、前記リーダ台車Aと各フォロワ台車Bとの間で車両4を介して相互に働く相互作用力を前記リーダ台車Aの力センサとしてのロードセル13により力情報として検出し、前記リーダ台車Aの台車本体2の軌道情報を前記軌道センサとしての走行エンコーダ11によって検出し、前記リーダ制御部31において、予め入力される目標軌道情報と、前記リーダ台車Aの力センサとしてのロードセル13で検出された力情報と、前記リーダ台車Aの軌道センサとしての走行エンコーダ11で検出された軌道情報とに基づき、前記リーダ台車Aの台車本体2の走行アクチュエータへ電流指令値を出力すると共に、前記無線通信装置39にて各フォロワ台車Bへの制御情報を送信し、前記リーダ台車Aの台車本体2を目標軌道に沿って移動させる一方、
前記リーダ台車Aと各フォロワ台車Bとの間で車両4を介して相互に働く相互作用力を前記各フォロワ台車Bの力センサとしてのロードセル13により力情報として検出し、前記各フォロワ台車Bの台車本体2の軌道情報を前記軌道センサとしての走行エンコーダ11によって検出し、前記リーダ台車Aから無線通信装置39にて送信される制御情報を無線通信装置40で受信し、前記フォロワ制御部32において、前記各フォロワ台車Bの力センサとしてのロードセル13で検出された力情報と、前記各フォロワ台車Bの軌道センサとしての走行エンコーダ11で検出された軌道情報と、前記無線通信装置40で受信したリーダ台車Aからの制御情報とに基づき、前記各フォロワ台車Bの台車本体2の走行アクチュエータへ電流指令値を出力し、前記各フォロワ台車Bの台車本体2を前記リーダ台車Aの動きに追従させて移動させるようにしてある。
【0027】
但し、前記フォロワ台車Bが複数台(図の例では三台)となった場合、図7に示す如く、自身以外の全ての台車からの影響を受けることになるため、i番目のフォロワ台車Bはリーダ台車Aとの相互作用力に基づく自身の運動誤差を推定することができなくなる。そこで、i番目のフォロワ台車Bに対して、第一のグループをi番目のフォロワ台車Bそれ自身とし、第二のグループをリーダ台車A及びi番目以外のフォロワ台車Bをまとめた一台の仮想リーダ台車A´(これをi番目の仮想リーダ台車A´)とする。即ち、i番目の仮想リーダ台車A´は、i番目のフォロワ台車Bから見ると、図8に示す如く、一台のリーダのように振舞うと考えられる。この仮想リーダという考え方を用いれば、フォロワ台車Bが一台の場合のリーダ台車Aとの相互作用力に基づく自身の運動誤差の推定方法を用いて、前記i番目のフォロワ台車Bは、リーダ台車A及び自身以外のフォロワ台車Bをまとめた一台のi番目の仮想リーダ台車A´との相互作用力に基づく自身の運動誤差を推定することができる。
【0028】
ここで、前記力センサとしての引張圧縮型のロードセル13が介装された連結部材15を平面3自由度を拘束するパラレルリンク機構17として図9に示すような配置で三つ取り付けた場合、ロードセル13による検出値をヤコビ行列で座標変換すると、外力としてリフター5に加わる力を平面3自由度の力情報として得ることができるが、具体的な計算例については、特許文献3に記載されている。
【0029】
又、リーダ台車Aとフォロワ台車Bの協調制御の基本的な考え方、並びにフォロワ台車Bが複数台となった場合に、仮想リーダという考え方を用いることにより、フォロワ台車Bが一台の場合の目標軌道の推定方法と同様に、i番目のフォロワ台車Bが、リーダ台車A及び自身以外のフォロワ台車Bをまとめた一台のi番目の仮想リーダ台車A´の目標軌道を推定することができるという点に関しては、小菅一弘、大住智宏、千葉晋彦による「単一物体を操る複数移動ロボットの分散協調制御」、日本ロボット学会誌16巻1号、pp.87〜95に記載されている。
【0030】
そして、本実施例の場合、従来の分散協調制御とは異なり、前記リーダ台車Aには運動誤差は生じないが、フォロワ台車Bには運動誤差が生じるものと仮定し、前記リーダ台車Aに与えられる目標軌道に基づくフォロワ台車Bの目標軌道を該フォロワ台車Bにも与え、フォロワ台車Bに搭載された前記軌道センサとしての走行エンコーダ11を用いて算出したフォロワ台車Bの位置・姿勢と実空間における位置・姿勢との運動誤差を推定し、該推定される運動誤差を修正しながらフォロワ台車Bを移動させるよう構成している。
【0031】
先ず、車両4に大きな負荷を与えないようにするために、リーダ台車Aとフォロワ台車Bをそれぞれ同一の制御点回りに[数1][数2]に示すようインピーダンス制御する。前記制御点は、図10に示す如く、車両4の重心位置、即ち四つの車輪4aの中点にあるものとする。
【数1】
【数2】
ここで、添字l,iはそれぞれリーダ台車A及びi番目のフォロワ台車Bに関する変数、パラメータであることを表している。Ml,Mi∈ER3×3は慣性行列、Dl,Di∈R3×3は粘性行列、Kl,Ki∈R3×3は剛性行列、fl,fi∈R3はリーダ台車A及びi番目のフォロワ台車Bに作用する力/モーメントであり、該fl,fiは前記力センサとしての引張圧縮型のロードセル13によって検出される。
【0032】
又、Δxl,Δxi∈R3はリーダ台車A及びi番目のフォロワ台車Bの運動誤差であり、[数3][数4]のように表される。
【数3】
【数4】
ここで、リーダ台車A及びi番目のフォロワ台車Bと車両4との間に相対運動がないものと仮定すると、リーダ台車A及びi番目のフォロワ台車Bは同一の制御点回りにインピーダンス制御されているので、実空間における車両4の軌道とリーダ台車A及びi番目のフォロワ台車Bの軌道は一致し、該軌道をそれぞれx∈R3と表している。xd∈R3は全
した自身の運動誤差を表している。
【0033】
以下では議論を簡単にするために、リーダ台車Aとi番目のフォロワ台車Bを[数5][数6][数7]に示す同一のパラメータを用いてインピーダンス制御するものとする。
【数5】
【数6】
【数7】
【0034】
はじめに、前記フォロワ台車Bが一台の場合、つまり[数2]においてn=1の場合を考える。車両4やリフター5に外力が働かないと仮定すると、車両4に作用する力/モーメントには[数8]の関係が成り立つ。
【数8】
【0035】
[数1][数2][数8]より[数9]が成り立つ。
【数9】
【0036】
[数9]より、充分時間が経過した状態では[数10]が成り立つ。
【数10】
【0037】
又、[数3][数4]より[数11]を得る。
【数11】
【0038】
一方、[数10]より[数12]を得る。
【数12】
ここで、フォロワ台車Bは図11(a)に示すように、自身で観測可能なΔx1−Δxl
ラス変換後の変数を意味する。)図11(a)は図11(b)に示すようなフィードバックシステムに等価変換することができ、フォロワ台車BはΔX1−ΔXlが0に収束するよう
【0039】
例えば、伝達関数G1を[数13]のように設定する。
【数13】
ここで、a1,b1∈Rは定数、sはラプラス演算子、I∈R3×3は単位行列である。
【0040】
この時、図11(b)の入出力の関係は[数14]のように求まる。
【数14】
【0041】
このフィードバックシステムの安定性を保証するためにa1>0,b1>0とすると、フォ
状の入力の場合には、[数15]に示すように、
【数15】
となるので、定常状態では、実際にフォロワ台車Bに生じる運動誤差と、フォロワ台車Bが推定した自身の運動誤差は等しくなることが分かる。
【0042】
続いて、前述の仮想リーダの概念を用いることにより、フォロワ台車Bが一台の場合を拡張してフォロワ台車Bがn台の場合を考える。仮想リーダ台車A´(図8参照)の概念を導入すれば、フォロワ台車Bが一台の場合の推定手法を用いて、i番目のフォロワ台車Bは自身の運動誤差を推定することができる。
【0043】
i番目の仮想リーダ台車A´のダイナミクスは[数16]のように表される。
【数16】
但し、
【数17】
とする。
【0044】
[数16]より、i番目の仮想リーダ台車A´の運動誤差Δxliは[数18]のように表せる。
【数18】
【0045】
又、i番目の仮想リーダ台車A´に作用する力/モーメントfliは[数19]のように表せる。
【数19】
【0046】
[数18][数19]を用いると、i番目の仮想リーダ台車A´のダイナミクスは[数20]のようになる。
【数20】
【0047】
xdiをi番目の仮想リーダ台車A´の目標軌道とすると、Δxliは[数21]のように表すことができる。
【数21】
【0048】
[数3][数18][数21]をxdiについて解くと、[数22]のようになる。
【数22】
【0049】
ここで、前記フォロワ台車Bが一台の場合と同様に、車両4やリフター5に外力が働かないと仮定すると、車両4に作用する力/モーメントには[数23]の関係が成り立つ。
【数23】
【0050】
[数1][数2][数23]より、[数10]と同様にして考えると、充分時間が経過した状態では[数24]が成り立つ。
【数24】
【0051】
又、[数18][数24]より、[数25]が成り立つ。
【数25】
【0052】
このようにして仮想リーダ台車A´の概念を用いると、[数20][数21]は[数1][数3]と同一の形をしているので、i番目のフォロワ台車Bは、フォロワ台車Bが一台の場合の推定手法を用いて、自身の運動誤差を推定することができる。
【0053】
[数25]より、i番目のフォロワ台車Bの運動誤差Δxiとi番目の仮想リーダ台車A´の運動誤差Δxliの差は[数26]で表せる。
【数26】
【0054】
i番目のフォロワ台車Bは自身で観測可能なΔxiと[数26]を用いて、Δxi−Δxliを計算することができる。そしてΔxi−Δxliと前記フォロワ台車Bが一台の場合と同様
うに推定することができる。
【数27】
【0055】
ここで、伝達関数Giは前記フォロワ台車Bが一台の場合と同様に[数28]とする。
【数28】
【0056】
更に、前記仮想リーダの概念を用いて一台のリーダ台車Aとn台のフォロワ台車Bで構成される車両4の協調搬送システムを考えた場合のシステム全体の安定性と軌道収束について考察する。
【0057】
【数29】
【0058】
又、[数24]に[数3][数4]を代入し、ラプラス変換すると、[数30]を得る。
【数30】
【0059】
ここで議論を簡単にするために,全てのフォロワ台車Bの運動誤差を推定するフォロワ制御部32に同一のパラメータa,bを用いる場合を考えると、伝達関数Giは[数31]のように表せる。
【数31】
【0060】
[数29][数30][数31]より、Xは[数32]のように求まる。
【数32】
【0061】
[数32]より、この協調搬送システムが安定となる必要十分条件は、[数33]のように
【数33】
の全ての根の実部が負であること、つまりa>0,b>0である。
【0062】
更に、i番目のフォロワ台車Bの運動誤差が[数34]に示すようなランプ状の場合を考える。
【数34】
ここで、ci,di,ei∈Rは定数である。
【0063】
この時,[数32][数34]とラプラスの最終値の定理より、[数35]のように
【数35】
となるので,定常状態では、実空間において搬送される車両4の軌道xは全てのロボットに与えられる目標軌道xdと一致することが分かる。
【0064】
即ち、前述の如くリーダ台車Aとフォロワ台車Bを車両4の重心における制御点回りにインピーダンス制御し、前記リーダ台車Aに与えられる目標軌道に基づくフォロワ台車Bの目標軌道を該フォロワ台車Bにも与え、フォロワ台車Bに搭載された軌道センサとしての走行エンコーダ11を用いて算出したフォロワ台車Bの位置・姿勢と実空間における位置・姿勢との運動誤差を推定し、該推定される運動誤差を修正しながらフォロワ台車Bを移動させるよう構成すると、搬送される物体に大きな負荷を与えずに、地面に対する走行車輪6の滑り等が生じていても、車両4を安定して目標位置まで搬送することが可能となる。
【0065】
こうして、フォロワ台車Bに地面に対する走行車輪6の滑り等による運動誤差が生じた場合でも、車両4を目標位置まで確実に搬送し得る。
【0066】
尚、本発明の物体移動装置は、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、車両は四輪車に限らず、複数の車輪を持つ車両であればどのような車両にも適用可能なこと、又、駐車施設に限らず、駐車違反車両の移動やカーフェリー内での車両の移動等にも適用可能なこと、更に又、車両以外の物体にも適用可能なこと等、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0067】
1 走行駆動装置
2 台車本体
3 連結機構
4 車両(物体)
4a 車輪(接地ポイント)
5 リフター
6 走行車輪
11 走行エンコーダ(軌道センサ)
13 ロードセル(力センサ)
18 車輪浮上支持装置
23 リフトバー開閉アクチュエータ
26 接地支持輪
27 リフトバー
31 リーダ制御部
32 フォロワ制御部
39 無線通信装置
40 無線通信装置
A リーダ台車
A´ 仮想リーダ台車
B フォロワ台車
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行駆動装置により全方向に自走可能な台車本体と、該台車本体に連結機構を介して取り付けられ且つ一対のリフトバーを接地ポイントが複数存在する物体の一つの接地ポイントの両側に配置して互いに近接させることにより、該物体の一つの接地ポイントをリフトアップするリフターとを有し、与えられた目標軌道に沿って移動可能なリーダ台車と、
走行駆動装置により全方向に自走可能な台車本体と、該台車本体に連結機構を介して取り付けられ且つ一対のリフトバーを前記物体の前記リーダ台車にてリフトアップされる接地ポイント以外の一つの接地ポイントの両側に配置して互いに近接させることにより、該物体の一つの接地ポイントをリフトアップするリフターとを有し、前記リーダ台車の動きを推定しつつ追従することにより、該リーダ台車と協調して物体を移動させるフォロワ台車とを備えた物体移動装置において、
前記リーダ台車とフォロワ台車を物体の重心における制御点回りにインピーダンス制御し、前記リーダ台車に与えられる目標軌道に基づくフォロワ台車の目標軌道を該フォロワ台車にも与え、フォロワ台車に搭載された軌道センサを用いて算出したフォロワ台車の位置・姿勢と実空間における位置・姿勢との運動誤差を推定し、該推定される運動誤差を修正しながらフォロワ台車を移動させるよう構成したことを特徴とする物体移動装置。
【請求項1】
走行駆動装置により全方向に自走可能な台車本体と、該台車本体に連結機構を介して取り付けられ且つ一対のリフトバーを接地ポイントが複数存在する物体の一つの接地ポイントの両側に配置して互いに近接させることにより、該物体の一つの接地ポイントをリフトアップするリフターとを有し、与えられた目標軌道に沿って移動可能なリーダ台車と、
走行駆動装置により全方向に自走可能な台車本体と、該台車本体に連結機構を介して取り付けられ且つ一対のリフトバーを前記物体の前記リーダ台車にてリフトアップされる接地ポイント以外の一つの接地ポイントの両側に配置して互いに近接させることにより、該物体の一つの接地ポイントをリフトアップするリフターとを有し、前記リーダ台車の動きを推定しつつ追従することにより、該リーダ台車と協調して物体を移動させるフォロワ台車とを備えた物体移動装置において、
前記リーダ台車とフォロワ台車を物体の重心における制御点回りにインピーダンス制御し、前記リーダ台車に与えられる目標軌道に基づくフォロワ台車の目標軌道を該フォロワ台車にも与え、フォロワ台車に搭載された軌道センサを用いて算出したフォロワ台車の位置・姿勢と実空間における位置・姿勢との運動誤差を推定し、該推定される運動誤差を修正しながらフォロワ台車を移動させるよう構成したことを特徴とする物体移動装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−188914(P2012−188914A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−76523(P2011−76523)
【出願日】平成23年3月11日(2011.3.11)
【出願人】(000198363)IHI運搬機械株式会社 (292)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月11日(2011.3.11)
【出願人】(000198363)IHI運搬機械株式会社 (292)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【Fターム(参考)】
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