説明

物品搬出モニタおよびこれを用いた放射性物質による汚染の検査方法

【目的】検査所要時間が短く、感度の均一性に優れ、個々の放射線検出器では所定の感度を得ることができない垂直面や傾いた面、凹部および凸部の側面近傍などの放射能汚染の可能性を検査でき、且つ安価な物品搬出モニタを提供する。
【構成】物品搬送部の上下のみに放射線検出器を配置し、上下に配置した放射線検出器を互いに対向して面対称に且つ幅方向に2列に配列し、2列の放射線検出器を、被検査物の搬送方向において、いずれかの列の放射線不感領域が他の列の放射線不感領域に重ならないように配置し、上下一対の放射線検出器の外側面からの幾何学的検出効率の和が50%以上になるように、放射線検出器を被検査物の最外部より外に突出させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、原子力発電所等の放射性物質取扱い施設において、その放射線管理区域から非管理区域に搬出される物品の放射性物質による汚染(以下では「放射能汚染」という)の有無を検査する物品搬出モニタに関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所等の放射性物質取扱い施設においては、その放射線管理区域内で使用された足場板やパイプ、工具等の物品は放射能汚染を受けている可能性がある。このため、放射能汚染を受けている物品が放射線管理区域から非管理区域に搬出されることを未然に防止するために、搬出される物品の放射能汚染の有無を検査することが必要となる。この検査に用いられる装置が物品搬出モニタである。
【0003】
このような物品搬出モニタにおいては、物品搬送部の上下に放射線検出器が配置され、場合によっては、物品搬送部の両側面および両端の垂直面にも放射線検出器が配置されて、物品の周囲360度から放射能汚染を検査している。一方、検査の対象となる物品には、いろんな大きさや形状のものが含まれる。大型の物品にも対応できるようにするためには、複数の放射線検出器を連接して二次元的に碁盤目状に配置し、大きな検出面積を確保しているものがあり、形状の違いに対応させるためには、個々の放射線検出器を独立に物品の形状に合わせて移動させるものもある。複数の放射線検出器を用いるのは、所定の面積毎に汚染の有無を判別するためばかりではなく、必要な感度を得るためにノイズレベルおよびバックグラウンドを限定するためでもある。放射線検出器の大きさが大きくなるとバックグラウンドが上昇するので感度が悪くなるからである。
【0004】
このような物品搬出モニタは、特許文献1や特許文献2に開示されている。
【特許文献1】特許第3216750号公報(段落0002、図4参照)
【特許文献2】特開平6−186342号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような従来の物品搬出モニタには下記のような問題点がある。
【0006】
1)複数の放射線検出器を連接して二次元的に碁盤目状に配置するためには、多くの放射線検出器を必要とするのでコストが高くなるという問題点があるし、連接部には放射線の不感領域(放射線検出器の外周部には放射線の不感部があり、連接している放射線検出器の連接部側のそれぞれの不感部を合わせたものが不感領域である。以下では、「放射線の不感部」を単に「不感部」といい、「放射線の不感領域」を単に「不感領域」という)が存在するので、被検査物の搬送方向に直行する方向(以下ではこの方向を「幅方向」と略称する)の感度分布に大きな不均一性を有するという問題点もある。前者の問題点に対しては、放射線検出器を二次元的に碁盤目状に配置する代わりに、幅方向に一次元的に配置し、一次元的に配置した放射線検出器から得られたそれぞれのデータのトレンドを解析することによって搬送方向の汚染位置を決定すれば、使用する放射線検出器の数を大幅に低減することはできるので、問題点を解消することができる。しかし、不感領域の存在による感度分布の不均一性の問題点は解消されない。
【0007】
この問題点について、更に詳しく説明する。
【0008】
JISによれば、感度の均一性は、最大に対する最小の割合が50%以上と規定されている。この均一性を担保するためには、以下に定義する幾何学的検出効率(以下では「検出効率」と略称する)を0.5以上とすることが必要条件となる。検出効率は、物品表面の検査対象点から見た空間側の半球が占める立体角に対する放射線検出器の放射線の有感部(以下では、「放射線の有感部」を単に「有感部」という)の占める立体角の割合で定義される。断面形状が変わらない領域における断面で見る場合には、検出効率は、検査対象点から見える放射線検出器の有感部の両端に引いた2本の線がなす角度の180°に対する割合となる。この考え方に基づいて図9を用いて放射線検出器の不感部12に対向している部分の検出効率を検討する。図において、不感部12は太い実線で示し、有感部11は細い実線で示している。不感部12に対向しているB点の検出効率は、B点から下部の放射線検出器1(u)の有感部11の両端に引いた点線のはさむ角度を180°で割った値であり、50%よりはるかに小さい。B点が不感部12の右端の直上にきたとしても、検出効率は50%には達しない。一方、不感部12に対向していないA点の検出効率は、図からも明らかなように、不感部12に近い部分を除いて確実に50%を超えている。以上の説明から明らかなように、従来の物品搬出モニタにおいては、検出効率は部分的に50%を割り込み、その不均一性が問題となる。
【0009】
2)物品搬送部の両側面に垂直に放射線検出器を配置して両端面の検出効率を確保しようとしても、上部および下部に配置されている放射線検出器からの制約によって、両側面の放射線検出器を被検査物に十分に近づけることができず、50%以上の検出効率を得られないことが多いという問題点がある。特に、被検査物の幅が小さい場合には、被検査物と両側面の放射線検出器との距離が大きくなるので、この可能性が高くなる。
【0010】
なお、従来の物品搬出モニタにおける上部および下部に配置されている放射線検出器は、図9のA点で50%の検出効率を確保できればよいとして、有感部11の最外位置を被検査物の最外位置からあまり外側に設定していない。このため、図9のC点のような被検査物の側面の検出効率は、上下いずれの放射線検出器1(o)または 1(u)に対しても25%に達していないことが多く、上下いずれの放射線検出器1(o)または 1(u)では必要な検出効率を全く確保できない。
【0011】
3)被検査物が凹凸を有する形状である場合には、凹部あるいは凸部の側面や凹部の側面に近い水平面の検出効率が、50%に達しなくなり、この部分の放射能汚染を検出できないという問題点がある。図によっていくつかの例を説明すると、図9のD点のような垂直面の検出効率が50%に達しないのは説明するまでもないが、図10におけるF点のような垂直面に近い位置でも50%に達しない。これに対して垂直面から離れているE点では十分に50%を超えている。
【0012】
4)個々の放射線検出器を独立に移動させるためにはそのための移動機構および操作機構を必要とするので、部品コストおよび製造コストを大きく上昇させるばかりでなく、放射能汚染有無の判別の処理時間が大幅に長くなり、検査できる物品の数が少なくなるという問題点がある。
【0013】
この発明の課題は、上記のような問題点を解消して、放射能汚染有無の検査のための処理時間が短く、感度(検出効率)の均一性に優れ、個々の放射線検出器によっては所定の検出効率を得ることができない垂直面や傾いた面、凹部および凸部の側面に近い部分などの放射能汚染の可能性を検査でき、且つ安価な物品搬出モニタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1の発明は、被検査物の搬送部の周囲に配置された複数の放射線検出器によって被検査物の放射能汚染を検査する物品搬出モニタであって、前記の複数の放射線検出器を、被検査物の搬送部の上方および下方の水平面のそれぞれに、互いに対向して面対称に且つ幅方向に2列に配列し、いずれかの列を構成する放射線検出器の隣り合う放射線検出器間に存する不感領域を他の列の放射線検出器に対して被検査物の搬送方向に投影した場合に、前記不感領域が他の列の放射線検出器の有感部内に収まるように、2列に配列された放射線検出器を配置し、幅方向の放射線検出器の有感部の最外位置を、同方向の被検査物の最外位置より、上方および下方の放射線検出器の放射線入射面間の使用時最大距離の2分の1に相当する距離以上に外側に設定している。
【0015】
この発明においては、複数の放射線検出器を、被検査物の搬送部の上方および下方の水平面のそれぞれに、互いに対向して面対称に且つ幅方向に2列に配列し、いずれかの列を構成する放射線検出器の隣り合う放射線検出器間に存する不感領域を他の列の放射線検出器に対して被検査物の搬送方向に投影した場合に、この不感領域が他の列の放射線検出器の有感部内に収まるように、2列に配列された放射線検出器を配置しているので、被検査物の水平面の検出効率は、2列に配列された放射線検出器の少なくとも1つで確実に50%以上を確保される。また、幅方向の放射線検出器の有感部の最外位置を、同方向の被検査物の最外位置より、上方および下方の放射線検出器の放射線入射面間の使用時最大距離の2分の1に相当する距離以上に外側に設定しているので、被検査物の水平面の両端近くの検出効率がより高められ、更に、被検査物の両端の側面の検出効率は従来技術に比べて大幅に増加し、対応する一対の放射線検出器の検出効率の和が50%以上となる。
【0016】
請求項2の発明は、前記不感領域を他の列の放射線検出器の有感部の中央部に収めている。
【0017】
このようにすることによって、一方の列の不感領域と他の列の不感領域とが、被検査物の搬送方向に投影した場合に、ほぼ等間隔に配置されるので、一方の列の放射線検出器では十分な検出効率を得られない位置でも他の列の放射線検出器で十分な検出効率を得られるようになる。
【0018】
請求項3の発明は、前記放射線検出器としてシンチレーション検出器を用いている。
【0019】
シンチレーション検出器は、広い面積の有感部を有して低ノイズレベルであり且つ適当な価格の放射線検出器であるので、物品搬出モニタに最適の放射線検出器である。
【0020】
請求項4の発明は、請求項2に記載の物品搬出モニタにおいて、いずれか一つの放射線検出器によっては所定の検出効率を得られない被検査物の部分の放射能汚染の可能性を検査する、請求項2に記載の物品搬出モニタを用いた放射能汚染の検査方法であって、前記の被検査物の部分が上方および下方に対向して配置された一対の放射線検出器の両方に検出効率を有する場合には、前記一対の放射線検出器の出力の合計が汚染判定基準値に達したことによって「前記の被検査物の部分が放射性物質によって汚染されている可能性あり」と判定し、前記の被検査物の部分が上方および下方に対向して配置された一対の放射線検出器の片方だけに検出効率を有する場合には、その部分に対応する1列目および2列目の放射線検出器の出力の合計が汚染判定基準値に達したことによって「前記の被検査物の部分が放射性物質によって汚染されている可能性あり」と判定する。
【0021】
請求項1の発明による物品搬出モニタでは、前述したように、被検査物の両端の側面の検出効率は従来技術に比べて大幅に増加し、対応する一対の放射線検出器の検出効率の和が50%以上となるので、その側面の放射能汚染の可能性を検査することができる。
【0022】
請求項2の発明による物品搬出モニタでは、一方の列の不感領域と他の列の不感領域とが、被検査物の搬送方向に投影した場合に、ほぼ等間隔に配置されるので、両端以外の、対応する一対の放射線検出器の両方に検出効率を有する部分に対しては、1列目または2列目のどちらかで、両端部と同様に、対応する一対の放射線検出器の検出効率の和を50%以上とできる可能性が高く、更には、上方および下方に対向して配置された一対の放射線検出器の片方だけに検出効率を有し且つその検出効率が50%に満たない部分に対しては、その部分に対応する1列目および2列目の放射線検出器の検出効率の和を50%以上とできる可能性が高い。
【0023】
請求項4の発明において、「放射能汚染の可能性」としているのは、対応する2つの放射線検出器の出力には、この請求項で検査対象としている部分以外からの放射線による信号も重畳されている可能性があるので、この請求項で検査対象としている部分の放射能汚染と確定することができないからである。
【発明の効果】
【0024】
請求項1の発明においては、複数の放射線検出器を、被検査物の搬送部の上方および下方の水平面のそれぞれに、互いに対向して面対称に且つ幅方向に2列に配列し、いずれかの列を構成する放射線検出器の隣り合う放射線検出器間に存する不感領域を他の列の放射線検出器に対して被検査物の搬送方向に投影した場合に、この不感領域が他の列の放射線検出器の有感部内に収まるように、2列に配列された放射線検出器を配置しているので、被検査物の水平面の検出効率は、2列に配列された放射線検出器の少なくとも1つで確実に50%以上を確保される。また、幅方向の放射線検出器の放射線有感部の最外位置を、同方向の被検査物の最外位置より、上方および下方の放射線検出器の放射線入射面間の使用時最大距離の2分の1に相当する距離以上に外側に設定しているので、被検査物の水平面の両端近くの検出効率がより高められ、更に、被検査物の両端の側面の検出効率は従来技術に比べて大幅に増加し、両端の側面に対応する一対の放射線検出器の検出効率の和が50%以上となる。
【0025】
したがって、この発明によれば、放射線検出器を2列に配置すればよいので、必要な放射線検出器の数をそれほど多くする必要がなく、複雑な検出器の移動機構等を必要としないので検査時間は短くて済み、被検査物の水平面の検出効率は2列に配列された放射線検出器の少なくとも1つで確実に50%以上を確保され、且つ被検査物の水平面の両端近くの検出効率がより高められるので、幅方向の感度の均一性が大きく向上し、両端の側面に対応する一対の放射線検出器の検出効率の和が50%以上となるので、両端の側面の放射能汚染の可能性を検査できるようになり、その結果として、放射能汚染有無の検査のための処理時間が短く、感度の均一性に優れ、個々の放射線検出器によっては所定の検出効率を得ることができない両端の側面の放射能汚染の可能性を検査でき、且つ安価な物品搬出モニタを提供することができる。
【0026】
請求項2の発明においては、一方の列の不感領域と他の列の不感領域とが、被検査物の搬送方向に投影した場合に、ほぼ等間隔に配置されるので、一方の列の放射線検出器では十分な検出効率を得られない位置でも他の列の放射線検出器で十分な検出効率を得られるようになり、その結果として、幅方向の感度の均一性が最も良くなり、いずれか一つの放射線検出器によっては所定の検出効率を得られない被検査物の部分の放射能汚染の可能性を、対応する2つの放射線検出器によって検査することができるようになる。
【0027】
したがって、この発明によれば、個々の放射線検出器によっては所定の検出効率を得ることができない垂直面や傾いた面、凹部および凸部の側面に近い部分などの放射能汚染の可能性を検査できる物品搬出モニタを提供することができる。
【0028】
請求項3の発明においては、射線検出器としてシンチレーション検出器を用いている。
【0029】
シンチレーション検出器は、広い面積の有感部を有して低ノイズレベルであり且つ適当な価格の放射線検出器であるので、物品搬出モニタに最適の放射線検出器である。
【0030】
「課題を解決するための手段」の項で説明したように、請求項1の発明による物品搬出モニタおよび請求項2の発明による物品搬出モニタによって、従来技術では検査できなかった部分の放射能汚染の可能性を検査することができる。請求項4の発明は、その方法を請求項としたものであり、この発明によれば、個々の放射線検出器によっては所定の検出効率を得ることができない垂直面や傾いた面、凹部および凸部の側面に近い部分などの放射能汚染の可能性を検査することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
この発明による物品搬出モニタは、物品搬送部の周囲に配置される複数の放射線検出器の配置に特徴があり、物品搬送部の上方および下方のみに放射線検出器を配置し、側方には放射線検出器を配置しないこと、これらの放射線検出器を互いに対向して面対称に且つ幅方向に2列に配列していること、いずれかの列を構成する放射線検出器の隣り合う放射線検出器間に存する不感領域と他の列の不感領域とが被検査物の搬送方向において重ならないように放射線検出器を配置していること、幅方向の放射線検出器の有感部の最外位置を、同方向の被検査物の最外位置より、上方および下方の放射線検出器の放射線入射面間の使用時最大距離の2分の1に相当する距離以上に外側に設定していること、を特徴とする。
【0032】
以下において、実施例を用いて更に詳しく説明する。
【0033】
なお、従来技術と同じ機能の部分には同じ符号を付ける。
【実施例1】
【0034】
この実施例は、被検査物の幅が1つ放射線検出器の有感部の幅より狭いものを検査する物品搬出モニタに対応するものであり、図1は、その搬送部の下方の放射線検出器の配置を示したものである。なお、この実施例では同じ形状の放射線検出器を6つ使用している。
【0035】
放射線検出器は、被検査物の搬送方向に直行する方向、すなわち幅方向に、2列に配列され、1列目の検出器列110(u)には2つの放射線検出器1a(u)および1c(u)が配列され、2列目の検出器列120(u)には1つの放射線検出器1b(u)が配列されている(この実施例では、2列目は放射線検出器が1つであるので、厳密に言うと列ではないが、図5に示した実施例2の場合を含めて、一般的な表現として「列」という表現を使う)。
【0036】
放射線検出器1a(u)等の外周部には放射線を検出しない不感部12があり、その内側に放射線を検出する有感部11がある。そのため、1列目の検出器列110(u)の中央部には2つの放射線検出器1a(u)および1c(u)のそれぞれの不感部12を合わせた不感領域が存在する。1列目の検出器列110(u)の不感領域は、被検査物の搬送方向において、2列目の検出器列120(u)の有感部11の中央に設定されている。なお、図には示していないが、搬送部の上方にも、3つの放射線検出器が放射線検出面を下向きにして同様の配列で配置され、上方および下方の放射線検出器が互いに対向して面対称に配置されている。
【0037】
図2は、被検査物である足場板2の形状を示し、(a)はその平面図、(b)はその側面図であり、図3は、放射線検出器と被検査物である足場板2との位置関係を示す、被検査物の出口側から見た正面図である。
【0038】
上部の放射線検出器1a(o)、1b(o)および1c(o)と下部の放射線検出器1a(u)、1b(u)および1c(u)との間に足場板2が送り込まれ、その放射能汚染の有無が放射線検出器1a(o)等で検査される。足場板2の幅は放射線検出器1a(o)等の有感部11の幅とほぼ同じである。
【0039】
図4は、2本のパイプ3が送り込まれた状態を示したものである。
【0040】
以下において、この実施例の有効性を図6、図7および図8を用いて説明する。
【0041】
まず、足場板2の場合を図6によって説明する。
【0042】
図6は、この実施例で足場板2を検査する場合を示したものであり、(a)は1列目の検出器列での部分断面図、(b)は2列目の検出器列での断面図であり、(a)には、右側の放射線検出器1a(o)および1a(u)を主に示した。
【0043】
1列目の検出器列では不感部12に対向するB点は、(a)に示すように、1列目の検出器列では必要な検出効率を得ることができないが、(b)に示すように、2列目の検出器列によって十分な検出効率を得ることができる。
【0044】
足場板2の右側の外側面にあるC点に対しては、1列目の検出器列の放射線検出器1a(o)および1a(u)の有感部11の半分以上が検出領域となるので、放射線検出器1a(o)および1a(u)はそれぞれ25%以上の検出効率をもつ。したがって、放射線検出器1a(o)および1a(u)の出力を合算すれば50%以上の検出効率が得られるので、この部分の放射能汚染の可能性を検査することができる。ここで「可能性」に限定したのは、上下の水平面が汚染判定基準値未満の状態である場合にも、放射線検出器1a(o)および1a(u)の出力を合算すると汚染判定基準値以上となる可能性があるし、水平面と側面の総合結果として合算値が汚染判定基準値以上となる可能性もあるので、合算結果が放射能汚染有となっても、これらのいずれかではあるが、いずれであるかを判別することができないからである。
【0045】
なお、図には示していないが、空隙部の側壁に対しても外側面と同様の考え方で放射能汚染の可能性を検査することができる。
【0046】
次に、足場板2の角材部の内側面にあるD点に対しては、上部に足場板2の平板部があるので、下部の放射線検出器の出力だけで放射能汚染を検査しなければならず、且つ放射線検出器1a(u)または放射線検出器1b(u)だけでは50%以上の検出効率を得ることができない。しかし、この実施例においては、1列目の検出器列の不感領域は、被検査物の搬送方向において、2列目の検出器列の有感部11の中央に設定されているので、放射線検出器1a(u)または1b(u)のいずれかの検出効率が小さい場合には、他方の検出効率が大きくなり、両者の検出効率を合算すると50%以上の検出効率を得られる可能性が高いので、この部分の放射能汚染の可能性を検査することができる。ここで「可能性」に限定したのは、C点に関して説明したのと同様の理由による。
【0047】
次に、パイプ3の場合を図7および図8によって説明する。
【0048】
図7は、この実施例でパイプ3を検査する場合を示したものであり、(a)は1列目の検出器列での部分断面図、(b)は2列目の検出器列での断面図であり、(a)には、右側の放射線検出器1a(o)および1a(u)を主に示した。図8は、有効性をより詳細に説明するための拡大図である。
【0049】
図7から明らかなように、パイプ3の上部および下部の水平に近い部分の放射能汚染は確実に検査できる。しかし、垂直に近い側面は、1つの放射線検出器では検査できないが、足場板2の外側面と同様に、上下の放射線検出器の出力の和で放射能汚染の可能性を検査することができる。
【0050】
ここで、図8を用いて、上部の放射線検出器1a(o)で検査できる範囲を検討してする。
【0051】
パイプ3の中心からパイプ3の外面に向かって垂線を立てると、当然のことながらその垂線と外面との交点では、垂線と外面の接線とが直交する。したがって、その垂線が放射線検出器1(o)の有感部11の端を通るように引かれている場合には、その垂線と外面との交点においては、90°に相当する検出効率、すなわち50%の検出効率、が得られ、これより上部のパイプ面は50%以上の検出効率を有する。下部の放射線検出器の場合も同様にして50%以上の検出効率を有する領域を決定することができる。
【0052】
このようにして決定される50%以上の検出効率を有する領域を、この実施例に当てはめてみると、1列目の検出器列の不感領域は、被検査物の搬送方向において、2列目の検出器1b(o)および1b(u)の有感部11の中央に設定されており、パイプ3は2列目の検出器1b(o)および1b(u)の有感部11の端より内側に配置されるので、図7(a)に示したように、パイプ3の外側には放射線検出器1a(o)および1a(u)の有感部11の半分以上が存在することになり、図8に示した角θが45°よりずっと小さくなる。言い換えれば、この実施例では、パイプの外面の右側の半分以上を上下いずれかの放射線検出器1a(o)および1a(u)で検査できる。同様に、パイプの外面の左側の半分以上を上下いずれかの放射線検出器1b(o)または1b(u)で検査できる。検査できる部分の割合は、角θを求めることによって容易に推定できる。上下いずれかの放射線検出器で検査できない側面は、上下の放射線検出器の出力の和で放射能汚染の可能性を検査される。
【0053】
以上の説明から明らかなように、この実施例によれば、被検査物の水平面に対しては、全面で50%以上の検出効率が得られるので、優れた感度分布が得られ、足場板2のような凹部や凸部、空隙部のある形状の被検査物の、両端部や空隙部、凹部の側面および側面近傍などの1つの放射線検出器では50%未満の検出効率しか得られない部分に対しては、対応する2つの放射線検出器の出力の和によって放射能汚染の可能性を検査することができ、パイプ3に対しては、パイプの外面の半分以上(上面および下面)の放射能汚染を上下いずれかの放射線検出器で検査でき、残りの部分(側面)の放射能汚染の可能性を2つの放射線検出器の出力の和で検査することができる。
【実施例2】
【0054】
この実施例は、実施例1より幅の広い被検査物にも対応できる物品搬出モニタであって、図5に示すように、幅方向の放射線検出器の数を1つずつ増やしたものであり、基本的な機能は実施例1とまったく同じである。
【0055】
各検出器列に配列する放射線検出器の数は、検査対象とする被検査物の最大幅と、放射線検出器に求められた特性から決まる放射線検出器の大きさとによって決められるものであって、実施例1の6つや実施例2の10個に限定されるものではない。
【0056】
また、前記の実施例においては、被検査物の搬送方向に投影した場合に、1列目の検出器列の不感領域を2列目の検出器列の有感部の中央部に位置づけているが、1列目の検出器列と2列目の検出器列の位置関係はこれに限定されるものではなく、1列目の検出器列の不感領域を2列目の検出器列の有感部内に収めていればそれなりの効果を得ることができる。
【0057】
なお、以上においては、検出効率50%を汚染判定基準値として説明してきたが、汚染判定基準値は50%に限定されるものではない。50%を超える値に設定する場合には、放射能汚染の可能性となる領域をそれに合わせて広げればよい。例えば、パイプの側面の場合には50%を超える角度分だけ広げることになる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】この発明による物品搬出モニタの実施例1の放射線検出器の配置を示す概念図
【図2】この発明の被検査物の一例である足場板の形状を示し、(a)はその平面図、(b)はその側面図
【図3】実施例1における放射線検出器と被検査物である足場板との位置関係を示す正面図
【図4】実施例1における放射線検出器と被検査物である2本のパイプとの位置関係を示す正面図
【図5】この発明による物品搬出モニタの実施例2の放射線検出器の配置を示す概念図
【図6】この発明の有効性を説明するための図3に相当する図で、(a)は1列目の検出器列での部分断面図、(b)は2列目の検出器列での断面図
【図7】この発明の有効性を説明するための図4に相当する図で、(a)は1列目の検出器列での部分断面図、(b)は2列目の検出器列での断面図
【図8】図7に対応する有効性をより詳細に説明するための拡大図
【図9】従来技術による物品搬出モニタの問題点を説明するための部分断面図
【図10】従来技術による物品搬出モニタの別の問題点を説明するための部分断面図
【符号の説明】
【0059】
1(o)、1a(o)、1b(o)、1c(o) 上部の放射線検出器
1(u)、1a(u)、1b(u)、1c(u) 下部の放射線検出器
11 有感部 12 不感部
2 足場板
21 平板部
22 角材部
221 内側面 223 外側面
3 パイプ
110(u)、110a(u) 下部の1列目の検出器列
120(u)、120a(u) 下部の2列目の検出器列

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査物の搬送部の周囲に配置された複数の放射線検出器によって被検査物の放射性物質による汚染を検査する物品搬出モニタであって、
前記の複数の放射線検出器を、被検査物の搬送部の上方および下方の水平面のそれぞれに、互いに対向して面対称に且つ被検査物の搬送方向に直交する方向に2列に配列し、
いずれかの列を構成する放射線検出器の隣り合う放射線検出器間に存する放射線不感領域を他の列の放射線検出器に対して被検査物の搬送方向に投影した場合に、前記放射線不感領域が他の列の放射線検出器の放射線有感部内に収まるように、2列に配列された放射線検出器を配置し、
被検査物の搬送方向に直交する方向の、放射線検出器の放射線有感部の最外位置を、同方向の被検査物の最外位置より、上方および下方の放射線検出器の放射線入射面間の使用時最大距離の2分の1分に相当する距離以上に外側に設定している、
ことを特徴とする物品搬出モニタ。
【請求項2】
前記放射線不感領域を他の列の放射線検出器の放射線有感部の中央部に収めている、
ことを特徴とする請求項1に記載の物品搬出モニタ。
【請求項3】
前記放射線検出器としてシンチレーション検出器を用いている、
ことを特徴とする請求項1に記載の物品搬出モニタ。
【請求項4】
請求項2に記載の物品搬出モニタにおいて、いずれか一つの放射線検出器によっては所定の感度が得られない被検査物の部分の放射性物質による汚染の可能性を検査する、請求項2に記載の物品搬出モニタを用いた放射性物質による汚染の検査方法であって、
前記の被検査物の部分が上方および下方に対向して配置された一対の放射線検出器の両方に感度を有する場合には、前記一対の放射線検出器の出力の合計が汚染判定基準値に達したことによって「前記の被検査物の部分が放射性物質によって汚染されている可能性あり」と判定し、
前記の被検査物の部分が上方および下方に対向して配置された一対の放射線検出器の片方だけに感度を有する場合には、その部分に対応する1列目および2列目の放射線検出器の出力の合計が汚染判定基準値に達したことによって「前記の被検査物の部分が放射性物質によって汚染されている可能性あり」と判定する、
ことを特徴とする請求項2に記載の物品搬出モニタを用いた放射性物質による汚染の検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−171023(P2007−171023A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−370252(P2005−370252)
【出願日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(591083244)富士電機システムズ株式会社 (1,717)
【Fターム(参考)】