説明

物品搬送装置における停止装置

【課題】走行中の走行台車を、簡単な構造と簡単な操作で一時的に停止させることができるようにした物品搬送装置における停止装置を提供する。
【解決手段】推進ホイール7を、ドライブシャフト2の外周面に圧接する作動位置と、ドライブシャフト2の外周面から離間する不作動位置とに移動可能として、走行台車4に装着するとともに、推進ホイール7を作動位置に向けて付勢するばね6を設け、かつ搬送物支持部材11に、停止レバー38を、予め定めたドライブ位置と停止位置とに移動可能として装着し、この停止レバー38と推進ホイール7とを、停止レバー38をドライブ位置から停止位置へ移動することにより、推進ホイール7が作動位置から不作動位置へ移動させられるように、ワイヤ23をもって互いに連係する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品搬送装置における走行台車を一時的に停止させる停止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
物品搬送装置として、図5〜図7に示すような吊り下げ搬送装置がある(例えば特許文献1参照)。
この吊り下げ搬送装置は、図5に示すように、搬送経路に沿って架設された互いに平行な2本の前後方向を向く走行レール(1a)(1b)と、両走行レール(1a)(1b)の上方にそれらと平行をなすように配設され、かつ駆動装置(12)(図7参照)により自身の軸線まわりに回転させられようにして、固定体(13)(図7参照)に支持されたドライブシャフト(2)と、両走行レール(1a)(1b)上を4個の走行ホイール(3)をもって走行するようにした前後1対の走行台車(4)と、各走行台車(4)上に若干上下動可能として装着された受台(5)と、この受台(5)を上方に向かって付勢するばね(6)と、ドライブシャフト(2)の外周面に斜めの方向を向いて圧接するようにして各受台(5)の上面に装着された4個の推進ホイール(7)と、各走行台車(4)より垂下する吊支杆(8)の下端部同士を連結する前後方向を向く連結杆(9)と、この連結杆(9)に左右1対の接続具(10)(10)をもって枢着された搬送物支持部材(11)とを備えている。
【0003】
この吊り下げ搬送装置は、ドライブシャフト(2)が、図6に矢印(A)で示すように回転させられると、その外周面に圧接させられている4個の推進ホイール(7)が従動回転させられ、そのとき、4個の推進ホイール(7)がドライブシャフト(2)の軸線に対して斜めの方向を向いていることにより、各走行台車(4)に、図6に矢印(B)で示すような前方を向く推進力が付与され、各走行台車(4)は前方に向かって走行させられる。
【0004】
前記駆動装置(12)は、図7に示すように、ドライブシャフト(2)と平行をなすように固定体(13)に枢支した駆動軸(14)にプーリ(15)を固嵌し、このプーリ(15)と、ドライブシャフト(2)の外周面に設けた環状V溝(図示略)とにVベルト(16)を掛け回し、駆動軸(14)をモータ(17)により回転させることによって、プーリ(15)とVベルト(16)とを介して、ドライブシャフト(2)を回転させるようになっている。
【特許文献1】特開2004−203600号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような吊り下げ搬送装置において、走行台車(4)の走行を停止させたいときは、その走行台車(4)の推進ホイール(7)が圧接しているドライブシャフト(2)の駆動装置(12)の作動を停止させなければならないので、例えば、走行台車(4)に吊支された搬送物支持部材(11)の進行方向に、障害物があることに気付いたような場合、駆動装置(12)の作動を停止させるスイッチがあるところまで行って、そのスイッチを操作しなければならず、その場所が遠い場合には、スイッチ操作が間に合わず、搬送物支持部材(11)が障害物に衝突することがある。
また、そのような緊急時の場合だけでなく、走行中の走行台車(4)を、短時間だけ、一時的に停止させたいような場合もある。
【0006】
本発明は、従来の技術が有する上記のような問題点や要望に鑑み、走行中の走行台車を、簡単な構造と簡単な操作で一時的に停止させることができるようにした物品搬送装置における停止装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によると、上記課題は、次のようにして解決される。
(1)搬送経路に沿って配設され、かつ駆動装置により軸線まわりに回転させられようにして固定体に支持されたドライブシャフトと、このドライブシャフトに沿って走行するように案内された走行台車と、前記ドライブシャフトの外周面に斜めの方向を向いて圧接するようにして前記走行台車に装着され、かつ前記ドライブシャフトの回転により従動回転させられることにより、前記走行台車に推進力を付与するようにした推進ホイールと、前記走行台車に設けられた搬送物支持部材とを備える物品搬送装置における停止装置において、前記推進ホイールを、ドライブシャフトの外周面に圧接する作動位置と、ドライブシャフトの外周面から離間する不作動位置とに移動可能として、前記走行台車に装着するとともに、前記推進ホイールを作動位置に向けて付勢する付勢手段を設け、かつ前記搬送物支持部材に、停止レバーを、予め定めたドライブ位置と停止位置とに移動可能として装着し、この停止レバーと前記推進ホイールとを、停止レバーをドライブ位置から停止位置へ移動することにより、推進ホイールが作動位置から不作動位置へ移動させられるように、連係手段をもって互いに連係する。
【0008】
(2)上記(1)項において、連係手段を、一端が、推進ホイールを軸支する受台に止着され、他端が停止レバーに止着され、かつ中間部が走行台車と搬送物支持部材とに設けた案内手段により案内されたワイヤとする。
【0009】
(3)上記(2)項において、停止レバーの基端部を、搬送物支持部材に水平軸をもって枢着し、停止レバーの中間部に、ワイヤの一端を止着する。
【0010】
(4)上記(1)〜(3)項のいずれかにおいて、搬送物支持部材に、停止レバーを停止位置に保持する保持手段を設ける。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、次のような効果を奏することができる。
(1) 請求項1記載の発明によると、搬送物支持部材に停止レバーを設け、かつこの停止レバーと推進ホイールとを連係手段をもって連係するという簡単な構造で、しかも停止レバーをドライブ位置から停止位置へ移動させるという簡単な操作だけで、走行中の走行台車を、一時的に停止させることができ、安全性と作業性の向上を図ることができる。
【0012】
(2) 請求項2記載の発明によると、連係手段を、一端が、推進ホイールを軸支する受台に止着され、他端が停止レバーに止着され、かつ中間部が走行台車と搬送物支持部材とに設けた案内手段により案内されたワイヤとしてあるので、連係手段の構造を簡素化することができるとともに、停止レバーを、搬送物支持部材の任意の部位に装着することができる。
【0013】
(3) 請求項3記載の発明によると、停止レバーの基端部を、搬送物支持部材に水平軸をもって枢着し、停止レバーの中間部に、ワイヤの一端を止着してあるので、停止レバーと連係手段の構造を簡素化することができ、安価に製造することができる。
【0014】
(4) 請求項4記載の発明によると、搬送物支持部材に、停止レバーを停止位置に保持する保持手段を設けてあるので、停止レバーを保持手段に保持させておくことにより、走行台車の走行を停止させたままの状態で、停止レバーから手を離し、進行方向前方の障害物を取り除く等の作業をすることができ、作業性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、本発明の停止装置の一実施形態を備える物品搬送装置を、図1〜図4を参照して説明する。
なお、この実施形態は、図5〜図7に示した上述の従来例のものと同一の構成に、簡単な構成を付加しただけであるので、上述の従来例のものと同一の構成にについては、同一の符号をもって図示するに止め、詳細な説明は省略する。
【0016】
この物品搬送装置においては、図1および図2に示すように、各走行台車(4)における4個の推進ホイール(7)を軸支する受台(5)を、上下方向を向く前後(走行レール(1a)(1b)の方向が前後方向である)1対のガイドピン(20)(20)と、それらに外嵌するようにして、受台(5)と走行台車(4)との間に縮設した圧縮コイルばねとした付勢手段であるばね(6)(6)とをもって、走行台車(4)に上下動可能として装着することにより、推進ホイール(7)を、ドライブシャフト(2)の外周面に圧接する作動位置(図2参照)と、ドライブシャフト(2)の外周面から下方に離間する不作動位置とに移動可能とするとともに、ばね(6)(6)により、常時作動位置に向けて付勢してある。
【0017】
図2に示すように、受台(5)の中央部には、引き下げボルト(21)が垂設されており、引き下げボルト(21)の下端には、接続金具(22)を介して、ワイヤ(23)の基端が止着されている。
【0018】
ワイヤ(23)は、接続金具(22)より垂下し、走行台車(4)の底壁を貫通するとともに、筒状とした吊支杆(8)およびその直下の連結杆(9)に設けた上下方向の貫通孔(24)を順次貫通した後、搬送物支持部材(11)の上面に固着したブラケット(25)に、左右方向を向く軸(26)をもって枢着された第1のガイドプーリ(27)に掛け回されている。
【0019】
図1に示すように、この例では、搬送物支持部材(11)は、前後方向を向く上下1対の横杆(28)(28)の前後の端部同士を、上下方向を向く前後1対の縦杆(29)(29)をもって結合することにより、矩形の枠体(30)を形成し、この枠体(30)内に、被搬送物である板状のワーク(W)を斜めに立て掛けて支持する傾斜板(31)と、その下端において、ワーク(W)の下端を支持する受け板(32)と、傾斜板(31)に連設され、かつワーク(W)の上方を覆う水平の庇板(33)とを固着したものとしてある。
【0020】
上方の横杆(28)は、連結杆(9)の下方において、前後の接続具(10)(10)の下端部に軸着されており、その横杆(28)の上面における接続具(10)(10)内に位置する前後部に、第1のガイドプーリ(27)を枢支する上述のブラケット(25)(25)が固着されている。
【0021】
図1および図3に示すように、一方の縦杆(29)の上端部の外側面には、第2のガイドプーリ(34)を左右方向を向く軸(35)をもって枢着したブラケット(36)が固着されている。
このガイドプーリ(34)には、上述の前後2個の第1のガイドプーリ(27)(27)に掛け回されて、上方の横杆(28)とほぼ平行をなすようにして送られてきた2本のワイヤ(23)(23)が掛け回されている。
【0022】
一方の縦杆(29)における上下方向の中間部の外側面には、基板(37)がねじ止め等により固着されており、この基板(37)には、停止レバー(38)の基端部が、前後方向を向く軸(39)をもって枢着されている。停止レバー(38)は、図3に実線で示すドライブ位置と、同じく想像線で示す停止位置とに回動可能である。
【0023】
停止レバー(38)における軸(39)寄りの中間部には、ワイヤ接続片(38a)が上向き突設されており、このワイヤ接続片(38a)には、第2のガイドプーリ(34)に掛け回されて垂下してきた2本のワイヤ(23)(23)の先端がそれぞれ止着されている。
【0024】
しかして、2本のワイヤ(23)(23)は、停止レバー(38)をドライブ位置から停止位置へ移動することにより、推進ホイール(7)が作動位置から不作動位置へ移動させられるように、停止レバー(38)と推進ホイール(7)とを連係する連係手段をなしており、また、第1および第2のガイドプーリ(27)(34)は、ワイヤ(23)(23)の中間部を案内する案内手段をなしている。
【0025】
したがって、この実施形態においては、停止レバー(38)をドライブ位置から停止位置へ回動させると、ワイヤ(23)(23)が牽引されて、前後の走行台車(4)(4)上の受台(5)と、それに装着された推進ホイール(7)とが、ほぼ同時に、ばね(6)の付勢力に抗して、作動位置から不作動位置へ移動させられ、推進ホイール(7)がドライブシャフト(2)から離れるので、推進力が得られなくなり、前後の走行台車(4)(4)とそれらにより吊支された搬送物支持部材(11)の走行は停止させられる。
【0026】
停止レバー(38)を、停止位置からドライブ位置へ戻すと、前後の走行台車(4)(4)上の受台(5)とそれに装着された推進ホイール(7)とは、ばね(6)の付勢力により、不作動位置から作動位置へ押動させられ、推進ホイール(7)がドライブシャフト(2)の外周面に圧接させられるので、推進力が回復し、前後の走行台車(4)(4)と、それらにより吊支された搬送物支持部材(11)とは、再度走行させられる。
【0027】
停止レバー(38)には、ワイヤ(23)(23)を介して、ばね(6)の付勢力が作用しているので、停止レバー(38)から手を離すと、停止レバー(38)は、ばね(6)の付勢力により、ドライブ位置に復帰回動させられる。
停止レバー(38)から手を離しても、停止レバー(38)が、ばね(6)の付勢力により、ドライブ位置に復帰回動しないようにするためには、例えば、図3および図4に示すように、基板(37)の側縁の一部を外側方に折曲して、下端が水平、かつ上端が外下方に傾斜するほぼ三角形の係止突部(40)を設け、停止レバー(38)を下向き回動させるときは、図4に矢印で示すように、停止レバー(38)が係止突部(40)の上縁の傾斜面に沿って案内されて、平面視において基板(37)から離れる方向に回動させられ、停止レバー(38)が停止位置に達したとき、停止レバー(38)を基板(37)に接近する方向に回動させて、係止突部(40)の下端に係止させるようにするのがよい。
【0028】
係止突部(40)は、停止レバー(38)を停止位置に保持する保持手段をなすものであり、このような保持手段を設けて、これに停止レバー(38)を保持させておくことにより、走行台車(4)の走行を停止させたままの状態で、停止レバー(38)から手を離し、進行方向前方の障害物を取り除く等の作業をすることができ、作業性が向上する。
【0029】
係止突部(40)の上方における基板(37)の側縁の上端部には、係止突部(40)と同方向に突出し、停止レバー(38)が、予め定めた範囲以上に上向き回動するのを阻止するストッパ(41)が設けられている。
【0030】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、特許請求の範囲を逸脱しない範囲内で、上記実施形態に種々の変形や変更を施すことも可能である。
例えば、ワイヤ(23)の案内手段を、可撓性のガイドチューブとし、その各端部を、走行台車および搬送物支持部材(11)の適所に止着し、ワイヤ(23)とガイドチューブとにより、いわゆるボーデンケーブルを構成するようにしてもよい。
【0031】
また、本発明は、上記実施形態のような吊り下げ搬送装置だけでなく、例えば特開2004−352026号公報に記載されているように、上記実施形態の構造を上下反転して、走行台車の上方に搬送物を載置して搬送するようにした型式の物品搬送装置にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施形態を備える物品搬送装置の要部の斜視図である。
【図2】同じく、要部の拡大縦断側面図である。
【図3】同じく、要部の拡大背面図である。
【図4】図3のIV−IV線に沿う拡大縦断面図である。
【図5】従来の吊り下げ搬送装置の要部の斜視図である。
【図6】図5に示す吊り下げ搬送装置の駆動原理を説明するための説明図である。
【図7】図5に示す吊り下げ搬送装置の要部の縦断正面図である。
【符号の説明】
【0033】
(1a)(1b)走行レール
(2)ドライブシャフト
(3)走行ホイール
(4)走行台車
(5)受台
(6)ばね(付勢手段)
(7)推進ホイール
(8)吊支杆
(9)連結杆
(10)接続具
(11)搬送物支持部材
(12)駆動装置
(13)固定体
(14)駆動軸
(15)プーリ
(16)Vベルト
(17)モータ
(20)ガイドピン
(21)引き下げボルト
(22)接続金具
(23)ワイヤ(連係手段)
(24)貫通孔
(25)ブラケット
(26)軸
(27)第1のガイドプーリ(案内手段)
(28)横杆
(29)縦杆
(30)枠体
(31)傾斜板
(32)受け板
(33)庇板
(34)第2のガイドプーリ(案内手段)
(35)軸
(36)ブラケット
(37)基板
(38)停止レバー
(38a)ワイヤ接続片
(39)軸
(40)係止突部
(41)ストッパ
(W)ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送経路に沿って配設され、かつ駆動装置により軸線まわりに回転させられようにして固定体に支持されたドライブシャフトと、このドライブシャフトに沿って走行するように案内された走行台車と、前記ドライブシャフトの外周面に斜めの方向を向いて圧接するようにして前記走行台車に装着され、かつ前記ドライブシャフトの回転により従動回転させられることにより、前記走行台車に推進力を付与するようにした推進ホイールと、前記走行台車に設けられた搬送物支持部材とを備える物品搬送装置における停止装置であって、
前記推進ホイールを、ドライブシャフトの外周面に圧接する作動位置と、ドライブシャフトの外周面から離間する不作動位置とに移動可能として、前記走行台車に装着するとともに、前記推進ホイールを作動位置に向けて付勢する付勢手段を設け、かつ前記搬送物支持部材に、停止レバーを、予め定めたドライブ位置と停止位置とに移動可能として装着し、この停止レバーと前記推進ホイールとを、停止レバーをドライブ位置から停止位置へ移動することにより、推進ホイールが作動位置から不作動位置へ移動させられるように、連係手段をもって互いに連係したことを特徴とする物品搬送装置における停止装置。
【請求項2】
連係手段を、一端が、推進ホイールを軸支する受台に止着され、他端が停止レバーに止着され、かつ中間部が走行台車と搬送物支持部材とに設けた案内手段により案内されたワイヤとしたことを特徴とする請求項1記載の物品搬送装置における停止装置。
【請求項3】
停止レバーの基端部を、搬送物支持部材に水平軸をもって枢着し、停止レバーの中間部に、ワイヤの一端を止着したことを特徴とする請求項2記載の物品搬送装置における停止装置。
【請求項4】
搬送物支持部材に、停止レバーを停止位置に保持する保持手段を設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の物品搬送装置における停止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−308052(P2007−308052A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−140002(P2006−140002)
【出願日】平成18年5月19日(2006.5.19)
【出願人】(000000561)株式会社岡村製作所 (1,415)
【Fターム(参考)】