説明

物品搬送装置及び物品搬送方法

【課題】固化していない軟弱な物品を固化装置の内部に滞留させることが可能で、しかも、製品乗せ台のような剛性を有する容器を必要としない物品搬送装置を提供する。
【解決手段】固化していない状態で供給される複数の物品100のそれぞれを冷却装置11の入口から出口まで搬送単位110ずつ搬送方向に隙間が空いた状態でコンベア20により順次搬送する。コンベアによる物品の搬送経路にストッパー21aを突出させて冷却装置11からの物品100の搬出を阻止する拘束状態と、ストッパー21aを搬送経路から退避させて冷却装置11からの物品100の搬出を許容する解除状態とを切換え可能とし、かつ、拘束状態におけるコンベア20の搬送速度V2を、冷却装置11に搬入される物品100のそれぞれがストッパー21aによって拘束されるまでは搬送単位110間に隙間G2が残る範囲で、解除状態における搬送速度よりも低下させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の物品を固化させつつコンベアに載せて搬送する物品搬送装置及び物品搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
チョコレート、飴、チーズ、バター、カレールー、シチュールー等の物品を固化していない軟弱な状態で冷却装置、乾燥装置等の固化装置に搬入し、その固化装置の内部で物品をコンベアにより搬送しつつ固化させる生産ラインにおいては、後側(上流側)の物品で前側(下流側)の物品を押しながら搬送すると、搬送力で物品が変形するといった不都合が生じることがある。このため、固化装置の内部にて物品群を滞留させることは困難であり、固化装置の下流に物品滞留用のバッファリング装置を設置している。そして、固化装置の下流で設備停止等が生じた場合には、固化装置にて固化された物品をバッファリング装置の内部に滞留させている。しかし、固化装置とは別にバッファリング装置を設ける場合には、その導入コスト、あるいは設置スペースの負担が増す。そこで、搬送コンベア上に剛性を有する製品乗せ台、あるいはバケットを設置し、物品をその製品乗せ台等に収容して搬送することにより、固化前の軟弱な物品を搬送コンベア上で滞留可能とした装置が提案されている(例えば特許文献1〜3参照)。
【0003】
【特許文献1】特開昭52−11581号公報
【特許文献2】実開昭57−81213号公報
【特許文献3】特開2003−165620号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、製品乗せ台等をコンベアに設置すれば、搬送装置の構成が複雑化し、その分、余計なコストが発生する。
【0005】
本発明は、固化していない軟弱な物品を固化装置の内部に滞留させることが可能で、しかも、製品乗せ台のような剛性を有する容器を必要としない物品搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の物品搬送装置は、固化していない状態で供給される複数の物品(100)のそれぞれを、固化装置(11)の入口から出口まで所定数の物品で構成された搬送単位(110)ずつ搬送方向に隙間が空いた状態で順次搬送するコンベア(20)と、前記コンベアによる物品の搬送経路に突出して前記固化装置からの前記物品の搬出を阻止する拘束位置と、前記搬送経路から退避して前記固化装置からの前記物品の搬出を許容する解除位置との間を移動可能なストッパー(21a)と、前記ストッパーが前記拘束位置にある場合の前記コンベアの搬送速度(V2)を、前記固化装置に搬入される物品のそれぞれが前記ストッパーによって拘束されるまでは前記搬送単位間に隙間(G2)が残る範囲で、前記ストッパーが前記解除位置にある場合の搬送速度(V1)よりも低下させる搬送制御手段(30)と、を備えることにより上述した課題を解決する。
【0007】
本発明の物品搬送装置においては、ストッパーが解除位置にあるときは物品が固化装置の内部を搬送単位ずつ順次通過して固化装置の出口から固化した物品が逐次搬出される。一方、ストッパーが拘束位置に移動した場合、物品の固化装置からの搬出が阻止され、ストッパーよりも搬送方向上流側でかつ固化装置の内部に物品が拘束される。ストッパーが拘束位置にあるときは、ストッパーが解除位置にあるときと比較してコンベアの搬送速度が低下する。このため、固化していない軟弱な状態で固化装置に搬入された物品は、その搬入からストッパーによる拘束を受けるまでの間、固化装置の内部をより長時間かけて移動する。これにより、固化装置の内部における物品の滞留時間を増加させ、固化装置の内部をバッファリング装置として機能させることができる。しかも、ストッパーが拘束位置にあるときのコンベアの搬送速度は、ストッパーによって物品が拘束されるまでは搬送単位間に隙間が残るような範囲に設定されている。よって、ストッパーにて拘束されるまでの搬送途中において、搬送単位を超える数の物品が互いに押し合うおそれがなく、製品乗せ台のような剛性を有する容器を必要としない。
【0008】
本発明の物品搬送装置の一形態において、前記搬送制御手段は、前記ストッパーに拘束されて停止した物品の搬送方向における並び数が所定の限界数に達した場合に前記コンベアを停止させてもよい。ストッパーが拘束位置にある場合、コンベアで搬送される物品はストッパーに拘束され、その搬送方向上流側に列をなすように互いに接触した状態で停止する。これらの物品はコンベアの搬送力の影響で互いに押し合うが、その押し合う力は搬送方向における物品の個数が増加するに従って大きくなる。これに対して、物品の個数が予め定めた限界数に達した場合にコンベアを停止させる場合には、ストッパーに拘束された物品間に作用する押し付け力が適切な範囲に制限され、その押し付け力で物品が変形するおそれを排除することができる。
【0009】
本発明の物品搬送装置の一形態において、前記コンベアは、前記固化装置としての冷却装置(11)の入口から出口まで前記物品を搬送してもよい。この形態によれば、固化していない物品を冷却装置の入口からコンベアで搬入し、冷却装置にて物品を冷却し、固化した物品を出口から搬出することができる。ストッパーで物品の搬出を阻止することにより、冷却装置の内部をバッファリング装置として実質的に機能させることができる。
【0010】
本発明の物品搬送方法は、固化していない状態で供給される複数の物品(100)のそれぞれを、固化装置(11)の入口から出口まで所定数の物品で構成された搬送単位(110)ずつ搬送方向に隙間が空いた状態でコンベアにより順次搬送する物品搬送方法であって、前記コンベアによる物品の搬送経路にストッパー(21a)を突出させて前記固化装置からの前記物品の搬出を阻止する拘束状態と、前記ストッパーを前記搬送経路から退避させて前記固化装置からの前記物品の搬出を許容する解除状態とを切換え可能とし、かつ、前記拘束状態における前記コンベアの搬送速度(V2)を、前記固化装置に搬入される物品のそれぞれが前記ストッパーによって拘束されるまでは前記搬送単位間に隙間(G2)が残る範囲で、前記解除状態における搬送速度(V1)よりも低下させる、ことにより、上述した課題を解決する。
【0011】
本発明の物品搬送方法によれば、解除状態では物品が固化装置の内部を搬送単位ずつ順次通過して固化装置の出口から固化した物品が逐次搬出される。一方、拘束状態では、物品の固化装置からの搬出が阻止され、ストッパーよりも搬送方向上流側でかつ固化装置の内部に物品が拘束される。そして、拘束状態では解除状態と比較してコンベアの搬送速度が低下する。このため、固化していない軟弱な状態で固化装置に搬入された物品は、その搬入からストッパーによる拘束を受けるまでの間、固化装置の内部をより長時間かけて移動する。これにより、固化装置の内部における物品の滞留時間を増加させ、固化装置の内部をバッファリング装置として機能させることができる。しかも、拘束状態におけるコンベアの搬送速度は、ストッパーによって物品が拘束されるまでは搬送単位間に隙間が残るような範囲に設定されている。よって、ストッパーにて拘束されるまでの搬送途中において、搬送単位を超える数の物品が互いに押し合うおそれがなく、製品乗せ台のような剛性を有する容器を必要としない。
【0012】
本発明の物品搬送方法においては、前記拘束状態にある場合、前記ストッパーに拘束されて停止した物品の搬送方向における並び数が所定の限界数に達した場合に前記コンベアを停止させてもよい。さらに、前記コンベアは、前記固化装置としての冷却装置の入口から出口まで前記物品を搬送するものとしてもよい。
【0013】
なお、以上の説明では本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記したが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0014】
以上に説明したように、本発明の物品搬送装置及び物品搬送方法によれば、ストッパーにて固化装置からの物品の搬出を阻止した場合、これに合わせて、コンベアの搬送速度を物品の搬出を許容する場合よりも低下させているので、固化していない軟弱な状態で固化装置に搬入された物品をその搬入からストッパーによる拘束を受けるまでの間、固化装置の内部をより長時間かけて移動させることが可能となる。これにより、固化装置の内部における物品の滞留時間を増加させ、固化装置の内部をバッファリング装置として機能させることができる。しかも、物品の搬出を阻止しているときのコンベアの搬送速度は、ストッパーによって物品が拘束されるまでは搬送単位間に隙間が残るような範囲に設定されている。よって、ストッパーに拘束されるまでの搬送途中において、搬送単位を超える数の物品が互いに接して押し合うおそれがなく、製品乗せ台のような剛性を有する容器を必要としない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は、本発明の一形態に係る物品搬送装置が組み込まれた生産ラインの一例を示し、図2はその生産ラインにて搬送される物品の一例を示す。図2に示す物品100は、直方体状態に成形されたチーズをアルミ箔で包装したものである。図1に示す生産ライン1には、成形後まだ固化していない軟弱なチーズがアルミ箔で包装された状態で物品100が供給される。生産ライン1には、物品100の搬送方向上流から下流に向かって、冷却システム2と、ピロー包装装置3と、X線検査装置4と、カートン包装装置5とが設けられている。
【0016】
冷却システム2は、物品100の内部のチーズを固化するために物品100を冷却する。冷却システム2の詳細は後述する。ピロー包装装置3は、図3Aに例示するように所定の数量(図示例では4個)の物品100を一列に並べ、これらを一体的に包装して図3Bに例示するピロー包装品102を形成する。X線検査装置4は、ピロー包装品102、あるいは物品100に異物の混入等の不具合がないか否かを検査する。カートン包装装置5は、図4Aに例示するように所定の数量(図示例では10個)のピロー包装品102を束ね、これらを一体的に包装して図4Bに例示するようなカートン包装品103を形成する。
【0017】
図5は冷却システム2の詳細を示す。冷却システム2は、物品100を搬送する二台の物品搬送装置10と、各物品搬送装置10で搬送される物品100を冷却する固化装置としての冷却装置11と、固化していない状態の複数の物品100を物品搬送装置10のそれぞれに逐次供給する二台の供給装置12と、物品搬送装置10で搬送された物品100を取り出す二台の取出装置13とを備えている。物品搬送装置10は互いに等しい構成を有している。各物品搬送装置10は、冷却装置11を貫くように配置されて物品100を冷却装置11の入口から出口まで搬送するコンベア20と、冷却装置11からの物品100の搬出を阻止すべくコンベア20上の物品100を拘束可能なストッパー装置21と、コンベア20上の物品100を検出して所定の検出信号を出力する検知センサ22とを備えている。これらの詳細は後述する。
【0018】
冷却装置11は、トンネル状のハウジング11aの内部に冷風を送り込むことにより、コンベア20にて搬送される物品100を冷却する。冷却装置11の冷却能力は一定に保持されてもよいが、可変であってもよい。供給装置12は、前工程から送られる物品100を取り込んで、コンベア20の搬送方向に2個、搬送方向と直交する方向、つまりコンベア20の幅方向に5個組み合わせた搬送セット110を形成し、その搬送セット110をコンベア20の幅方向に3セットずつ並べた状態でコンベア20に送り出す。これにより、単一の搬送セット110がコンベア20における物品100の搬送単位に相当する。取出装置13は冷却装置11から搬出された物品100をコンベア20上から取り出し、それらの物品100を一個ずつ列をなすようにして後工程へと送り出す。なお、コンベア20上には物品100が直接に載置され、製品乗せ台のような剛性を有する容器はコンベア20上において使用されていない。
【0019】
図6A及び図6Bを参照して物品搬送装置10の詳細を説明する。コンベア20は、物品100が載置されるベルト20aと、ベルト20aが巻き掛けられる駆動ローラ20b及び従動ローラ20cと、駆動ローラ20bを回転駆動させるモータ20dとを備えている。ベルト20aは、例えば、ゴム、樹脂等によって無限軌道状に形成される。モータ20dにて駆動ローラ20bを回転駆動することによりベルト20aが走行する。モータ20dには、速度調整が可能な限りにおいて、各種の電動モータを利用してよい。
【0020】
ストッパー装置21は、冷却装置11の出口付近にてコンベア20の上方に設置されたストッパー21aと、そのストッパー21aを図6Aに示す解除位置と、図6Bに示す拘束位置との間で昇降させる駆動装置21bとを備えている。図5から明らかなように、ストッパー21aは、コンベア20の搬送面を幅方向に横断するように設けられている。図6Aに示す解除位置では、ストッパー21aがコンベア20の搬送面から上方に退避し、物品100がストッパー21aに接することなく冷却装置11から搬出される。一方、図6Bに示す拘束位置ではストッパー21aがコンベア20上、より具体的には物品100の搬送経路内に突出し、これにより物品100がストッパー21aに拘束されて冷却装置11からの物品100の搬出が阻止される。
【0021】
さらに、物品搬送装置10には、コンベア制御手段としての制御ユニット30が設けられている。制御ユニット30には、上述した検知センサ22が入力手段として接続され、かつ、制御対象としてモータ20d及びストッパー装置21の駆動装置21bが接続されている。さらに、制御ユニット30には入力手段として接続される。トラブル信号発生器31は、生産ライン1の下流にてトラブルが発生している場合にトラブル発生信号を、トラブルが解消した場合にトラブル解除信号をそれぞれ出力する。トラブル信号発生器31は、オペレータの操作に基づいてトラブル発生信号又はトラブル解除信号を出力するものでもよいし、下流におけるトラブル発生の有無を検出して、オペレータの操作を介することなくトラブル発生信号又はトラブル解除信号を出力するものでもよい。なお、ここでいうトラブルとは、生産ライン1の下流に物品100を搬送することが適当ではない状態を意味する。さらに、制御ユニット30には、生産ライン1の動作状況を監視するための監視装置32が接続される。監視装置32はモニタ、ランプ、スピーカ等を単独で又は組み合わせて構成され、生産ライン1の稼働状況等を示す情報をオペレータに通知する。
【0022】
制御ユニット30は、トラブル信号発生器31及び検知センサ22からの出力に基づいて、コンベア20の搬送速度及びストッパー21aの動作を次のように制御する。まず、トラブル信号発生器31からトラブル発生信号が出力されていない場合、制御ユニット30はストッパー21aが図6Aの解除位置に保持されるように駆動装置21bの動作を制御し、かつコンベア20の搬送速度を通常速度V1に設定する。通常速度V1は、冷却装置11を通過する間に物品100内のチーズが十分に固化する速度に設定される。また、通常速度V1においては、図5から明らかなように、搬送方向に関して搬送セット110間に十分な隙間が生じるように設定される。このような隙間を設けることにより、物品100に作用する搬送力で固化前の軟弱なチーズが押し潰されるおそれを排除し、かつ搬送セット110間にて冷風を十分に通過させて物品100の冷却効率を高めることができる。
【0023】
一方、トラブル信号発生器31からトラブル発生信号が出力された場合、制御ユニット30は図7に示すバッファリング処理を実行する。そのバッファリング処理において、制御ユニット30は、まずステップS1でストッパー21aが図6Bに示す拘束位置に下降するように駆動装置21bを動作させる。続くステップS2において、制御ユニット30はコンベア20による物品100の搬送速度が通常速度V1(図6A)からバッファリング速度V2(図6B)まで減速されるようにモータ20dの速度を制御する。バッファリング速度V2は通常速度V1よりも低く設定される。また、バッファリング速度V2は、搬送方向に関して搬送セット110間に隙間が残る範囲に設定される。つまり、バッファリング速度V2にて物品100を搬送した場合でも、搬送セット110同士が接しない範囲で搬送速度が減速される。
【0024】
次に、制御ユニット30はステップS3に進み、トラブル信号発生器31からトラブル解除信号が出力されたか否かを判別する。トラブル解除信号が出力された場合、制御ユニット30はステップS4に進み、ストッパー21aが解除位置に上昇するように駆動装置21bを動作させる。続いて、制御ユニット30はステップS5に進み、コンベア20の搬送速度がバッファリング速度V2から通常速度V1に復帰するようにモータ20dの速度を制御する。この後、制御ユニット30はバッファリング処理を終える。
【0025】
一方、ステップS3にてトラブル解除信号が出力されていない場合、制御ユニット30はステップS6に進み、検知センサ22からの信号に基づいて、物品100の滞留限界が検出されたか否かを判別する。ストッパー21aが拘束位置にある場合には、そのストッパー21aにて物品100が拘束されるため、時間の経過とともにストッパー21aの上流側には物品100が互いに接した状態で順次停止する。これらの物品100はコンベア20の搬送力で互いに押し合う。その押し合う力は物品100の個数が増加するに従って大きくなり、やがては物品100が押し潰されるように変形するおそれが生じる。このような変形を防止するため、本形態では、ストッパー21aにて物品100を拘束しつつコンベア20をバッファリング速度V2で動作させた状態において、物品100を変形させることなくストッパー21aよりも搬送方向上流側に並べることが可能な個数(以下、プレッシャー限界数と呼ぶ。)が予め調べられる。そして、プレッシャー限界数まで物品100が並んだときに、搬送方向後端の物品100が検知センサ22にて検出されるようにストッパー21aと検知センサ22との搬送方向の距離X(図5)が設定される。
【0026】
物品100が検知センサ22の前面を通過する毎に検知センサ22からは搬送速度に応じた時間長で検出信号が出力されるが、その検知センサ22の前面で物品100が停止しているときには検知信号が継続して出力される。そこで、ステップS6において、制御ユニット30は、検知センサ22が物品100の検出信号を出力しているか否かをまず判別し、出力されている場合にはその継続時間を判別する。そして、その継続時間が単一の搬送セット110における物品100の並び数(本形態では2個)に相当する時間を超えた場合、制御ユニット30は、物品100がストッパー21aからプレッシャー限界数まで並んで停止していると判断してステップS7へ進む。ステップS7において、制御ユニット30はコンベア20が停止するようにモータ20dを制御し、続くステップS8にてライン停止信号をモニタ32に出力してオペレータにライン停止を報知する。一方、物品100の検出信号が出力されていない場合、あるいは検出信号の継続時間が物品100の1セット分の並び数に相当する時間内であった場合、制御ユニット30は物品100の並び数がまだプレッシャー限界数未満であると判断してステップS3へ戻る。
【0027】
以上の処理によれば、冷却システム2より下流の工程で何らかのトラブルが発生して制御ユニット30にトラブル発生信号が与えられると、ストッパー21aが拘束位置に下降して冷却装置11からの物品100の搬出が阻止される。これに伴って、コンベア20の搬送速度が通常速度V1からバッファリング速度V2へと減速されることにより、ストッパー21aが解除位置にある場合と比較して冷却装置11の内部により多くの物品100が収容される。これにより、冷却装置11の内部をバッファリング装置として実質的に機能させることができる。
【0028】
しかも、バッファリング速度V2は、搬送セット110間に隙間が残る範囲に設定されているから、冷却装置11に搬入されてからストッパー21aによる拘束を受けて停止するまでの搬送途中において、コンベア20の搬送力で物品100同士が過度に押し合って物品100が変形するおそれがない。そして、ストッパー21aに拘束されて停止した物品100の搬送方向における並び数がプレッシャー限界数に達するとコンベア20が停止する。このため、ストッパー21aに拘束された物品100が後続する物品100に押されて変形するおそれもない。
【0029】
図8の上段はストッパー21aを拘束位置に移動させた直後におけるコンベア20上の物品100の様子を示し、同図の下段はストッパー21aに拘束された物品100の並び数がプレッシャー限界数に達したときの様子を示す。この例では、10個の搬送セット110、つまり、20個の物品100がストッパー21aから並んだ時点でコンベア20が停止する。バッファリング処理が開始された時点から、その12セット目の物品100が停止するまでの距離を搬送距離Dとすれば、その搬送距離Dをバッファリング速度V2で除した時間D/V2内においては、コンベア20を停止させることなく物品100を冷却装置11内で移動させつつ固化を進めることができる。図8のA部を参照すれば明らかなように、バッファリング速度V2へと減速された後にコンベア20上に搬送された搬送セット110同士の隙間G2は、通常速度V1でコンベア20が運転されているときに搬入された搬送セット110間の隙間G1よりも狭められているが、その隙間G2はゼロよりも大きい。つまり、搬送セット110同士は互いに接していない。
【0030】
なお、バッファリング速度V2でコンベア20を駆動する場合、搬送セット110間の隙間が狭められて冷風が物品100の周囲に行き渡りにくくなり、冷却効率が相対的に低下するおそれがある。しかしながら、コンベア20の減速に伴って、各物品100が冷却装置11を通過する時間が増加することにより、冷却効率の低下は補われる。風量制御を組み合わせることにより、バッファリング処理中も物品100を確実に冷却して固化させることができる。
【0031】
本発明は上述した形態に限定されることなく、種々の形態にて実施することができる。例えば、コンベア20は、ベルトコンベアに限らず、チェーンコンベア、ローラコンベア等の各種のコンベアを利用してよい。物品は、チョコレート、飴、チーズ、バター、カレールー、シチュールー等に限らず、その製造途中で固化工程を伴う限りにおいてレトルト食品入りパウチといった各種の物品を対象とすることができる。固化装置は、冷却装置に限らず、乾燥、紫外線照射といった各種の手段を利用して物品を固化させるものであれば適宜に選択可能である。ストッパー21aに拘束されて停止した物品の搬送方向における並び数を検出する手段は、プレッシャー限界数に達した物品を検出するセンサに限らず、例えばストッパー21aに作用する圧力を検出してプレッシャー限界数に達したことを検出する構成でもよい。あるいは、ストッパー21aが拘束位置に移動してからの経過時間とバッファリング速度V2との関係からプレッシャー限界数へ達したこを予測する構成でもよい。コンベア停止処理は、バッファリング処理の途中において物品が変形する可能性が低い場合には省略してもよい。例えば、物品の並び数が限界に達した場合、物品を適当な空きスペースへと退避させるようにしてもよい。ストッパーは駆動装置によって駆動されるものに限らず、例えばオペレータが拘束位置と解除位置との間で切換え操作するものでもよい。また、駆動装置21bを設けた場合でも、その動作をオペレータの指示に従って切り換えてもよい。搬送単位を構成する物品の個数及び並び方は適宜に設定してよく、一つの搬送単位に包含される物品の搬送方向における個数は1以上の任意の数を選択してよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一形態に係る物品搬送装置が組み込まれた生産ラインの一例を示す図。
【図2】物品の一例を示す図。
【図3A】包装に備えて4個の物品を一列に並べた状態を示す図。
【図3B】ピロー包装品を示す図。
【図4A】カートン包装する前の10個のピロー包装品を示す図。
【図4B】カートン包装品を示す図。
【図5】冷却システムの詳細を示す部分破断平面図。
【図6A】ストッパーが解除位置にあるときの物品搬送装置を示す図。
【図6B】ストッパーが拘束位置にあるときの物品搬送装置を示す図。
【図7】バッファリング処理を示すフローチャート。
【図8】ストッパーを拘束位置へ移動させた直後の様子と、コンベアを停止させたときの様子とを対比して示す図。
【符号の説明】
【0033】
1 生産ライン
2 冷却システム
10 物品搬送装置
11 冷却装置(固化装置)
11a ハウジング
12 供給装置
13 取出装置
20 コンベア
21 ストッパー装置
21a ストッパー
21b 駆動装置
22 検知センサ
30 制御ユニット(搬送制御手段)
31 トラブル信号発生器
32 モニタ
100 物品
101 台紙
102 ピロー包装品
103 カートン包装品
110 搬送セット(搬送単位)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固化していない状態で供給される複数の物品のそれぞれを、固化装置の入口から出口まで所定数の物品で構成された搬送単位ずつ搬送方向に隙間が空いた状態で順次搬送するコンベアと、
前記コンベアによる物品の搬送経路に突出して前記固化装置からの前記物品の搬出を阻止する拘束位置と、前記搬送経路から退避して前記固化装置からの前記物品の搬出を許容する解除位置との間を移動可能なストッパーと、
前記ストッパーが前記拘束位置にある場合の前記コンベアの搬送速度を、前記固化装置に搬入される物品のそれぞれが前記ストッパーによって拘束されるまでは前記搬送単位間に隙間が残る範囲で、前記ストッパーが前記解除位置にある場合の搬送速度よりも低下させる搬送制御手段と、
を備えたことを特徴とする物品搬送装置。
【請求項2】
前記搬送制御手段は、前記ストッパーに拘束されて停止した物品の搬送方向における並び数が所定の限界数に達した場合に前記コンベアを停止させることを特徴とする請求項1に記載の物品搬送装置。
【請求項3】
前記コンベアは、前記固化装置としての冷却装置の入口から出口まで前記物品を搬送することを特徴とする請求項1又は2に記載の物品搬送装置。
【請求項4】
固化していない状態で供給される複数の物品のそれぞれを、固化装置の入口から出口まで所定数の物品で構成された搬送単位ずつ搬送方向に隙間が空いた状態でコンベアにより順次搬送する物品搬送方法であって、
前記コンベアによる物品の搬送経路にストッパーを突出させて前記固化装置からの前記物品の搬出を阻止する拘束状態と、前記ストッパーを前記搬送経路から退避させて前記固化装置からの前記物品の搬出を許容する解除状態とを切換え可能とし、かつ、
前記拘束状態における前記コンベアの搬送速度を、前記固化装置に搬入される物品のそれぞれが前記ストッパーによって拘束されるまでは前記搬送単位間に隙間が残る範囲で、前記解除状態における搬送速度よりも低下させる、
ことを特徴とする物品搬送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−156016(P2008−156016A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−344108(P2006−344108)
【出願日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【出願人】(392032100)キリンエンジニアリング株式会社 (54)
【出願人】(000252182)六甲バター株式会社 (6)
【Fターム(参考)】