説明

物品選別装置

【課題】搬送コンベヤから分岐コンベヤへ農産物等の物品を転動させることなく排出できる物品選別装置を提供する。
【解決手段】バケットコンベヤのバケット6に設けた排出機構11の無端回動ベルト15を分岐コンベヤ側に向けて移動させることにより、無端回動ベルト15に載置した物品(農産物)Pを分岐コンベヤに排出する物品選別装置において、無端回動ベルト15と一体的に移動するスタビライザ25の支持部材26で物品Pの搬送前面側を支持した状態で支持部材26を分岐コンベヤの上方まで進出させ、さらに支持部材26をバケット6の搬送方向と逆方向に回転させることにより、無端回動ベルト6から排出される物品Pの有する慣性力を支持部材26で受け止めて物品Pの転動を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送コンベヤ上を移動する物品を仕分け区分毎に分岐コンベヤに排出させる物品選別装置に係り、特に前記搬送コンベヤから分岐コンベヤへ農産物等の物品を転動させることなく受け渡しできる排出機構を備えた物品選別装置に関する。
【0002】
選別対象の物品としては、分岐コンベヤへの受け渡しに際して転動し易い形状を備えた物品、例えば農産物にあってはみかん,リンゴ,梨,メロン等の略球形形状のもの、レモン,サツマイモ,大根,かぶ等の短手方向に沿った切断面を略円形断面とする楕円あるいは円柱状のものを例示でき、また農産物以外にあっては略球形形状または短手方向に沿った切断面を略円形断面としたものであれば良く、例えば球技用ボール等を例示できる。
【背景技術】
【0003】
農産物選別装置として、農産物搬送コンベヤであるバケットコンベヤのバケット上に載置した等階級判定済みの農産物を所定の仕分け排出位置で等階級毎に排出する際、農産物をバケットコンベヤの搬送方向と直交する方向に移動させて果菜選別籠に受け渡しする方式が提案されている(特許文献1)。
【0004】
また、上記した果菜選別籠に代えて分岐コンベヤを前記バケットコンベヤの搬送方向に向けて斜めに配置した構成も提案されている(特許文献2)。
【0005】
上記した特許文献1、2に記載されている排出機構は、バケットコンベヤの搬送方向と直交方向を排出方向として無端回動する農産物載置ベルトを有し、前記農産物載置ベルトを正方向回転させることで農産物載置ベルト上に載置した農産物を前記果菜選別籠、分岐コンベヤ側に移動させて受け渡しを行う。特許文献1の農産物選別装置では、農産物が果菜選別籠に受け渡しされる際に、農産物が有する農産物載置ベルトの搬送力とバケットコンベヤの搬送力との合力からなる慣性力により農産物が転動する場合がある。
【0006】
これに対し、特許文献2の農産物選別装置では、前記分岐コンベヤが前記慣性力の作用方向に沿って斜めに延びているため、農産物の有する慣性速度で分岐コンベヤを駆動することで農産物を転動させずに分岐コンベヤに受け渡しさせることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開平06-023936号公報
【特許文献2】特開2004-209397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記した特許文献2に記載のように、バケットコンベヤの搬送方向に対して分岐コンベヤを斜めに配置した場合、農産物を分岐コンベヤの搬送方向に沿って真っ直ぐ排出することが要求される。しかし、農産物は個々の形状が異なるため、斜め配置の分岐コンベヤに対して全てを真っ直ぐに排出できるとは限らず、排出方向がずれると農産物が転動するおそれがある。
【0009】
本発明の目的は、このような課題を解決するためになされたもので、搬送コンベヤから分岐コンベヤへ農産物を転動させることなく排出できる物品選別装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的を実現する物品選別装置の構成は、物品を載置する複数のバケットを有し、バケット本体部に対し物品が載置される物品載置部材を前記バケットの搬送方向と直交方向に移動させて排出する排出機構を備えた搬送コンベヤと、前記バケットに載置された仕分け区分決定済み物品を仕分け区分毎に受け取る前記搬送コンベヤの側方に配置した複数の分岐コンベヤと、前記分岐コンベヤにそれぞれ対応して設けられ、前記物品載置部材に接続される作動部材との係合により前記作動部材を前記分岐コンベヤ側の排出方向へ前記物品載置部材と共に移動させるガイド部材と、を有する物品選別装置であって、前記物品載置部材上に載置する物品の搬送方向前面を支持した状態で前記物品載置部材と一体に前記排出方向へ移動して前記分岐コンベヤ上まで進出する垂直方向に回転軸を有する物品支持部材と、前記物品載置部材が前記排出方向へ移動する終期において前記分岐コンベヤに移載される物品を支持しながら前記物品支持部材を前記バケットの搬送方向と逆方向に回転駆動させる回転駆動手段とを有する。
【0011】
上記した物品選別装置の構成において、前記分岐コンベヤは、物品が移載される際に物品一個分に相当する距離だけ間欠駆動されることにより、物品をプールすると共に、次に排出される物品の移載を確保する。
【0012】
上記した物品選別装置の構成において、前記排出機構は、前記物品載置部材をなす無端回動ベルトと、前記無端回動ベルトの移動方向にスライド自在にガイドされる前記無端回動ベルトの下方に配置されたスライド部材とを有し、前記スライド部材に対して前記無端回動ベルトの物品載置面側を接続すると共に前記作動部材を取り付け、前記物品支持部材の回転軸を前記スライド部材に固定される取り付け部材に取り付けた構成とすることができ、分岐コンベヤへの物品の移載を容易とする。
【0013】
上記した物品選別装置において、前記回転駆動手段は、前記回転軸に固定の回転作動ピンと、前記回転軸が前記排出方向へ移動する移動終期において前記回転作動ピンと係合する前記バケット本体部に固定された作動ピン係合部材とにより構成し、前記回転作動ピンと前記作動ピン係合部材とは、前記物品載置部材上の物品が前記排出方向終端に向けて移動するに従って前記物品支持部材を前記バケットの搬送方向と逆方向へ回転させる係合関係とすることができ、回転軸の排出方向への移動力を利用して回転軸に回転力を付与して物品支持部材を回転させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、バケットコンベヤ等の搬送コンベヤから分岐コンベヤに例えば転動し易い形状の物品を排出する際に、物品支持部材が物品をその搬送前面側で支持しているため、物品がその慣性力により分岐コンベヤ上で転動することを防止することができ、特にバケットの搬送方向と逆方向に物品支持部材が回転することで、物品が有する物品の排出方向と搬送方向との合成された慣性力による物品の転動を防止することができる。
【0015】
選別対象の物品である分岐コンベヤへの受け渡しに際して転動し易い形状を備えた物品として、例えば農産物にあってはみかん,リンゴ,梨,メロン等の略球形形状のもの、レモン,サツマイモ,大根,かぶ等の短手方向に沿った切断面を略円形断面とする楕円あるいは円柱状のものを例示でき、また農産物以外にあっては略球形形状または短手方向に沿った切断面を略円形断面としたものであれば良く、例えば球技用ボール等を例示できる。
【0016】
請求項2に係る発明によれば、前記分岐コンベヤに農産物等の物品を所定間隔でに整列状態でプールすることができ、また次に排出される物品をその前の物品と衝突することなく移載させることができる。
【0017】
請求項3に係る発明によれば、分岐コンベヤへの農産物等の物品の移載を容易とし、また排出機構を簡易な構成とすることができる。
【0018】
請求項4に係る発明によれば、回転軸の排出方向への移動力を利用して回転軸に回転力を付与して物品支持部材を回転させることができる。
【0019】
請求項5に係る発明によれば、バケットを搬送コンベヤの搬送方向と直交方向の任意の位置に位置させることができ、この任意の位置をバケットに載置される物品、例えばメロン等の農産物の品質を示す項目の一つである等級に応じて設定することができ、物品選別装置における等級判定のための構成を簡素化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明による物品選別装置を農産物選別装置に適用した実施形態を示す装置全体の概略図。
【図2】図1のバケットコンベヤのバケットおよびバケットに備えられる排出機構を示し、(a)は上面図であって農産物載置部材である無端回動ベルトが待機位置の状態を示し、(b)は正面図、(c)は(a)のA-A矢視図、(d)は(a)のB-B矢視図である。
【図3】図2(a)に示す排出機構の上面図であって農産物載置部材である無端回動ベルトが排出位置まで移動した状態およびその時の農産物支持部材であるスタビライザの回転位置を示す。
【図4】バケット上の農産物が分岐コンベヤに排出されるまでの排出機構の動作と分岐コンベヤの間欠駆動状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明による物品選別装置を農産物選別装置に適用した実施形態に基づいて以下に説明する。
【0022】
図1に示す農産物選別装置1は、駆動部2aと従動部2bとの間を無端回動する搬送コンベヤであるバケットコンベヤ2を有しており、搬送上流側における農産物供給部3において、コンテナ搬送コンベヤ4上の農産物入りのコンテナ5がバケットコンベヤ2の傍まで搬送され、農産物供給作業者W1がコンテナ5内の例えばメロン等の球形形状の農産物をバケットコンベヤ2の各バケット6に供給(載置)する。
【0023】
本実施形態において、バケットコンベヤ2は無端回動する後述のチェーン13に対し、バケット6の搬送方向と直交する方向(以下バケット幅方向とする)に連結された後述の連結軸12に対し、前記バケット幅方向移動可能に連結され、農産物供給作業者W1の手操作でバケット6をバケット幅方向に移動して任意の位置に停止可能としている。
【0024】
本実施形態において、農産物供給作業者W1が目視により農産物の品質項目の一つである外観品質である等級(優、秀等)を判定し、農産物を載せたバケット6をバケット幅方向における各等級に対応して予め決められた位置に移動する手選別方式を採用している。
【0025】
農産物供給部3でバケット6の所定の等級位置に載置された農産物は等級判定装置7を通過する際に、例えば投光素子と受光素子との組み合わせからなる複数の光電スイッチ(不図示)によって前記所定の等級位置が検出され、不図示の処理装置に現在位置(バケット番号)と共に検出された等級情報が送信される。等級判定装置7を通過したバケット6上の農産物は続いて外形サイズ,内部品質等を測定する検査装置8に入って検査が行われ、当該農産物の検査結果情報が前記処理装置に送信されて農産物の品質の他の一項目である階級(S,M,L,LL等)が決定され、各農産物の仕分け区分が決定される。
【0026】
バケットコンベヤ2の側方には検査装置8と駆動部2aとの間に複数の分岐コンベヤ9が配置されている。本実施形態においては、例えば4条の分岐コンベヤ9を1グループとして、複数のグループ9A,9B・・・が配置されており、各分岐コンベヤ9には仕分け区分判定済みの農産物が仕分け区分毎にバケットコンベヤ2から移載される。各分岐コンベヤ9は、農産物を包装処理のためにプールするプールコンベヤとして機能し、バケットコンベヤ2の搬送方向と直交する方向を搬送方向として間欠駆動される。バケット6から農産物の排出動作が開始されるのに同期して分岐コンベヤ9の駆動動作が開始され、分岐コンベヤ9に受け渡された農産物が分岐コンベヤの搬送始端から所定の送り距離αだけ搬送されると分岐コンベヤ9の駆動が停止される。この所定の送り距離αを設けることにより、次の農産物を受け取る際に、前の農産物との間にスペースを確実に確保することができ、次に送り込まれる農産物と分岐コンベヤ9の搬送始端部に載置されている農産物との衝突を確実に回避できるようにしている。したがって、各分岐コンベヤ9上にプールされる農産物は所定間隔で整列した状態でプールされることになる。なお、分岐コンベヤ9への農産物の受け渡しと分岐コンベヤ9の間欠駆動の詳細については図4を参照して後述する。
【0027】
バケットコンベヤ2は、多数のバケット6を無端回動するチェーンに連結して構成されており、図2に示すように、各バケット6は、前記無端回動するチェーンに連結されるフレーム構造の本体部10上に、本体部10に対して前記バケット幅方向に移動して分岐コンベヤ9に載置した農産物を排出する排出機構11を設けた構成としている。
【0028】
本体部10には、前記バケット幅方向に延びる連結軸12が回転自在で、軸方向移動可能に貫通されており、連結軸12の一端部が前記無端回動するチェーン13に連結されている。したがって、本実施形態ではバケット6を連結軸12にガイドされてバケット幅方向に沿って移動可能としている。
【0029】
なお、手選別領域および等級判定装置7を通過するまではバケット6を等級設定のためにバケット幅方向の任意の位置に移動可能とし、また設定した等級位置を保持するために、バケット6のバケット幅方向位置を規制していない。そして、等級判定装置7を通過した後は、検査装置8においてバケット幅方向の一定位置での検査を行うため、および分岐コンベヤ9に対してバケット6をできるだけ分岐コンベヤ9側に近づけて排出機構11による農産物の排出を行えるようにするため、図1に示すように、バケットコンベヤ本体に片寄位置復帰用ガイド部材37を検査装置8の直前に配置している。
【0030】
片寄位置復帰用ガイド部材37には、本体部10の片側(分岐コンベヤ9とは反対側)に取り付けたガイドローラ14が係合し、バケット6が搬送方向に搬送されるに従ってガイドローラ14を分岐コンベヤ9側に移動させる。バケット6が分岐コンベヤ9が設けられた領域を通過する際には、バケット6が分岐コンベヤ9にできるだけ近づいた位置を保持するため、バケットコンベヤ2の搬送方向に沿って断面U字型のガイドレール38をバケットコンベヤ本体に設け、ガイドローラ14をガイドレール38のU字溝に係合させている。このガイドレール38は農産物供給部3の直前まで設けることで、バケット6をバケット幅方向の一定位置に保持した状態で移動させることができる。
【0031】
排出機構11は、前記バケット幅方向を搬送方向とする農産物載置部材としての無端回動ベルト15を本体部10の上端に配置した構成を有しており、第1ローラ16と第2ローラ17との間に配置している。本実施形態では第1ローラ16側を農産物排出側とし、前記バケット幅方向の略中央位置を排出される農産物Pの待機位置としている。
【0032】
無端回動ベルト15は農産物Pの載置される上面15aを第1ローラ16側に向けて移動し、農産物Pが無端回動ベルト15の排出端に達する位置で排出方向の移動が停止し、その後例えば元の待機位置まで戻される。
【0033】
また、本体部10には、無端回動ベルト15の下方に、前記バケット幅方向に延びるスライドガイドロッド18がバケットコンベヤ2の搬送方向(以下バケット前後方向とする)に沿って前後に2本固定されており、この2本のスライドガイドロッド18にスライド部材19がスライド自在に取り付けられている。スライド部材19には、平面略L字形状に形成された板状の接続板20がボルト等で固定されている。
【0034】
接続板20は、本体部10の前後方向の前端部側に前記バケット幅方向に延びる短辺部20aを有すると共に、無端回動ベルト15を超えて前記バケット前後方向に延びる長辺部20bを有している。接続板20は、その長辺部20bの先端部と無端回動ベルト15の上面ベルト部15aとを接続金具21により接続し、スライド部材19をバケット幅方向に移動させると無端回動ベルト15の上面ベルト部15aを分岐コンベヤ9側に移動させるようにしている。
【0035】
接続金具21は、接続板20の長辺部20bの先端部にねじにより固定される下固定部21aから上方に立ち上がり、本体部10の天板10aに形成したバケット幅方向に延びる第1長孔10bを抜け、無端回動ベルト15のバケット前後方向の後方側の側面から無端回動ベルト15の上面ベルト部15aの背面側に達する上固定部21bを有する折り曲げ形状に形成されている。そして、ねじ23を前記上面ベルト部15aの表面側に配置した押し付け板22を通し、上面ベルト部15aを貫通して接続金具21の上板部21bにねじ締めすることで、接続板20と無端回動ベルト15とを接続金具21により固定している。なお、第1長孔10bのバケット幅方向の長さとして、無端回動ベルト15が前記待機位置と排出位置との間を往復移動する際に、接続金具21と干渉することがない長さに設定している。
【0036】
一方、接続板20の長辺部20aの先端部には、垂直方向上方に延びる回転軸24を回転自在に取り付けている。回転軸24は本体部10の天板10aに形成した第2長孔10cを通り抜け、無端回動ベルト15の上面ベルト部15aの上方まで達しており、この回転軸24の上端に平面略L字形状のスタビライザ25を上面ベルト部15aよりも上方に固定し、回転軸24を中心にスタビライザ25を回転自在としている。
【0037】
本実施形態において、無端回動ベルト15のベルト幅(バケット前後方向の長さ)は、本体部10のバケット前後方向長さよりも短く、無端回動ベルト15を本体部10のバケット前後方向の略中央部に配置している。そして、第1長孔10bを無端回動ベルト15により隠れる位置に形成し、第2長孔10cを無端回動ベルト15から外れた位置で、バケット前後方向で無端回動ベルト15よりも前方に形成している。なお、図2(a)および図3において、無端回動ベルト15を透過してその背面側の構造を実線で示している。
【0038】
図2(a)は、排出機構11が待機位置の状態を示しており、この待機位置の状態でスタビライザ25は、バケット幅方向に延びる農産物支持部材26が載置する農産物Pの搬送方向前面を搬送方向前方側から支持している。また、スタビライザ25には、排出機構11の前記待機位置の状態でバケット前後方向に延びる位置決め部材(バックサポータ)27が設けられており、農産物Pをこの位置決め部材27と農産物支持部材26とで形成されるL字部に置くだけで、農産物Pを無端回動ベルト15の上面ベルト部15aの所定位置に位置決め載置できるようにしている。
【0039】
農産物支持部材26は農産物Pと接触する一側辺を全体に緩やかな曲面に形成し、後述する回転時に農産物Pの表面に傷を付けないようにしている。
【0040】
また、本実施形態ではスタビライザ25の農産物支持部材26と位置決め部材27の表面にスポンジ等の軟弾性部材Qを張り付けで接触する農産物Pが傷を受けないようにしている。
【0041】
なお、スタビライザ25には、農産物支持部材26に加えて農産物の載置位置を位置決めする位置決め部材(バックサポータ)27を設けているが、無端回動ベルト15の上面ベルト部15a上に位置決め用の桟部材等をバケット前後方向に設けるようにしても良い。
【0042】
スタビライザ25は、その回転軸24が接続板20に固定されているため、スライド部材19が排出方向に向けてスライドすると、無端回動ベルト15の上面ベルト部15aと一体に排出方向へ移動する。回転軸24には本体部10の天板10aの下方位置で、径方向外方に延びる回転作動ピン28が固定されており、回転軸24が第2長孔10cを排出側に向けて移動する際、図3に示すように、第2長孔10cの排出側終端に近づくと、本体部10に固定した第1作動ピン係合部材29に回転作動ピン28が係合し、さらに回転軸24が排出側に移動すると、回転作動ピン28を介して回転軸24が回転し、スタビライザ25が回転を開始する。
【0043】
スタビライザ25は回転軸24が排出側に移動した場合、農産物支持部材26の先端が分岐コンベヤ9まで入り込み、バケット6の搬送方向に対して反対方向に向けて農産物支持部材26が回転を開始し、図3に示す位置まで回転する。すなわち、無端回動ベルト15の上面ベルト部15a上の農産物Pは、スタビライザ25の農産物支持部材26に支持された状態で排出端側に移動し、分岐コンベヤ9に移載されると、農産物Pにはバケットコンベヤ2の搬送速度が少なくとも慣性速度として作用するが、農産物支持部材26が農産物Pの慣性力を分岐コンベヤ9上で受け止め、バケット6が搬送方向下流側に搬送されるに従って上記したバケット6の搬送方向と反対側に回転するため、農産物支持部材26がバケット6側に回転して戻りながら農産物Pの搬送方向前面に対する支持が継続し、農産物Pの転動が抑えられることになる。
【0044】
排出機構11により無端回動ベルト15上に載置していた農産物を分岐コンベヤ9に排出した後に、スライド部材19を排出側と反対側に移動させることで、スタビライザ25が無端回動ベルト15と共に元の待機位置まで戻すことができる。その際、第1作動ピン係合部材29に対向して本体部10に固定した第2作動ピン係合部材30に回転作動ピン28が係合することで、スタビライザ25を農産物排出時とは逆方向に回転させ、図2(a)に示す状態に保持することができる。スタビライザ25の農産物支持部材26のバケット前後方向における前側辺にスポンジやゴム等の衝撃緩衝材31を固定し、本体部10に設けた停止板32に衝撃緩衝部材31を当接させることで、スタビライザ25が上述した逆方向回転により待機位置に戻る際の衝撃を吸収し、騒音の発生等を防止している。
【0045】
本実施形態において、スライド部材19に排出機構11をバケット幅方向に移動させるための作動部材である排出ピン33を下方に向けて固定し、図4に示すように、分岐コンベヤ9毎にバケットコンベヤ2の搬送路に沿って設けたガイド部材34に排出ピンを係合させることにより、排出ピン33がガイド部材34との係合面に沿って移動しながら分岐コンベヤ9側に移動し、無端回動ベルト15上の農産物Pを分岐コンベヤ9に排出しつつ、スタビライザ25により分岐コンベヤ9上での農産物Pの転動が抑えられる。
【0046】
ガイド部材34は、待機位置に位置する排出ピン33と係合する係合位置と、係合しない非係合位置との間を不図示のモータ等から構成される駆動機構により移動可能としている。そして、前記処理装置からの排出信号が前記駆動機構に出力されると、非係合位置から係合位置にガイド部材34を移動させ、搬送されるバケット6の排出ピン33を係合させ、当該バケット6に載置する農産物Pを分岐コンベヤ9に排出させる。この場合、前記排出信号は仕分け区分が予め決められている分岐コンベヤ9にその仕分け区分の農産物Pが排出されるように当該分岐コンベヤ9に対応するガイド部材34の前記駆動機構に出力される。また、隣接する分岐コンベヤ9の間隔が狭いと、隣接するガイド部材34の動作時に干渉することもあるので、例えば隣接するガイド部材の上下方向の位置をずらすことで、ガイド部材34の配置の自由度が得られる。
【0047】
排出機構11による農産物Pをバケット6から1条の分岐コンベヤ9へ排出する動作と、農産物Pの転動防止のためのスタビライザ25の回転動作を図4に基づいてさらに説明する。
【0048】
図4(a)において、搬送される複数のバケット6(6a、6b)の中で、バケット6aに載置されている農産物Pを並列する分岐コンベヤ9(9a、9b)の中で、分岐コンベヤ9aに排出する場合を例にして説明する。バケット6bが分岐コンベヤ9aの前を通過すると、分岐コンベヤ9aに対応したガイド部材34を図示する係合位置に移動させ、次に搬送されるバケット6aの排出ピン33との係合を待つ。分岐コンベヤ9aの駆動開始としては、例えばガイド部材34を係合位置に移動させるためにガイド部材34の前記駆動機構への駆動信号と同期して分岐コンベヤ9aの間欠駆動を開始させることができ、間欠駆動の停止は例えば駆動開始から所定時間経過後とすることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0049】
ガイド部材34は、図示の係合位置において、排出ピン33が係合するカム面34aのカム形状として、バケット6の搬送方向上流側から下流側に向かうに従って分岐コンベヤ9側に傾斜した第1カム部34bと、第1カム部34bに連設されたバケット6の搬送方向と平行な第2カム部34cとにより構成している。
【0050】
第1カム部34bにおけるA点、B点、C点、D点で排出ピン33がそれぞれ係合した時の農産物Pの位置とスタビライザ25の回転位置を図4(a)〜図4(d)に示し、第2カム部34cにおけるE点に排出ピン33が係合した時の農産物Pの位置とスタビライザ25の回転位置を図4(e)に示す。
【0051】
排出ピン33が図4(a)に示す第1カム部34bのA点に到達する前に、排出ピン33は第1カム部34bとの係合により無端回動ベルト15の上面ベルト部15aを分岐コンベヤ9aに向けて移動させ、農産物Pを分岐コンベヤ9aの幅方向略中央に移載させた時点あるいは僅かに遅れた時点で排出ピン33がA点に係合する。図4(a)に示すA点係合状態において、スタビライザ25の農産物支持部材26は分岐コンベヤ9aの上方まで達し、分岐コンベヤ9aに移載された農産物Pの搬送方向前面を支持している。
【0052】
また、A点係合位置では、回転作動ピン28は第1作動ピン係合部材29との係合が開始され、スタビライザ25が反時計回りに回転を開始している。すなわち、無端回動ベルト15の搬送速度と分岐コンベヤ9aの搬送速度とを等しくしても、無端回動ベルト15から排出される農産物Pがタイムラグなく分岐コンベヤ9aに受け渡しされることはないため、排出される農産物Pはバケットコンベヤ2の搬送方向と無端回動ベルト15の搬送方向との合成された方向に慣性力を有する。しかし、スタビライザ25が反時計回りに回転するため、スタビライザ25の農産物支持部材26は農産物Pの慣性力を受け止めて転動を防止することになる。
【0053】
バケット6aがさらに搬送されて排出ピン33が図4(b)に示すB点に係合した状態では、分岐コンベヤ9aは受け取った農産物Pを搬送しているが、排出ピン33はまだ分岐コンベヤ9a側に移動し、スタビライザ25を反時計回り方向に回転させている。このため、スタビライザ25の農産物支持部材26はその先端部で農産物Pの側面を支持した状態を維持している。
【0054】
バケット6aがさらに搬送され、分岐コンベヤ9aに農産物Pが略移載された状態で排出ピン33は図4(c)に示すC点で係合する。この状態でスタビライザ25の農産物支持部材26は、分岐コンベヤ9aの搬送方向に対して反時計回りに略45度回転しており、農産物Pとの支持が終了している。さらにバケット6aが搬送され、排出ピン33がD点まで進むと、スタビライザ25はさらに反時計回りに回転し、農産物支持部材26が分岐コンベヤ9aから退避し、バケット6a側に入り込む。
【0055】
なお、分岐コンベヤ9a上の農産物が搬送始端から距離αまで搬送されると、分岐コンベヤ9aの駆動が停止され、次の農産物が送り込まれるまでその位置に待機する。
【0056】
そして、排出ピン33が第1カム部34bから第2カム部34cへと係合が移行すると、図4(e)に示すように、排出ピン33の分岐コンベヤ9aに向けての移動が終了し、スタビライザ25の農産物支持部材26がバケット6aの搬送方向に沿った位置まで回転してバケット6a内に収まる。したがって、搬送方向下流側に位置する隣り合った分岐コンベヤ9b上に載置される農産物Pに当接するといった干渉状態の発生を回避することができる。なお、第2カム部34cにおいて、排出ピン33がE点以外の位置に係合してもスタビライザ25は図4(e)の排出完了位置に維持される。
【0057】
プールコンベヤとしての分岐コンベヤ9に排出された農産物Pは間欠駆動により搬送され、例えば農産物の一個分に相当する所定間隔で整列した状態でプールされ、図1に示すように、箱詰作業者W2により箱詰部35で包装箱に箱詰される。
【0058】
一方、農産物Pを排出した後の排出機構11は、排出が完了した位置(排出完了位置)に留まって農産物供給部3に搬送されると、農産物Pの載置ができないので、例えば最も下流側に位置する分岐コンベヤ9と駆動部2aの間に待機位置復帰用ガイド部材36を配置し、無端回動ベルト15の上面ベルト部15aを元の待機位置に移動させつつスタビライザ25を逆方向に回転させて元の待機位置に復帰させる。
【0059】
バケット6が待機位置復帰用ガイド部材36を通過する際、ガイドレール38にバケット6のガイドローラ14が係合しており、バケット6は農産物供給部3の手前まで分岐コンベヤ9側である農産物供給側に片寄された状態にあるが、農産物供給部3に到達すると、前述のようにバケット6がバケット幅方向に移動可能となる。
【0060】
農産物供給部3において、農産物供給作業者W1は目視検査の結果に基づいて、農産物供給作業者W1側に片寄されているバケット6の無端回動ベルト15上に農産物Pを載置し、バケット6を目視の等級判定に対応したバケット幅方向位置に移動させる。その際、上記したバケット6の片寄位置も等級判定に対応した位置の一つとし、他の等級判定位置の場合には反対側に向けてバケット6を押せば良いため、農産物Pをバケット6に載置し、位置決めする作業時間の短縮が測れる。
【0061】
また、等級判定装置7を通過したバケット6は、バケット幅方向位置がばらばらであるが、検査装置8の直前に配置した片寄位置復帰用ガイド部材37にガイドローラ14が係合することにより、分岐コンベヤ9側の片寄位置に強制的に戻されて検査装置8を通過する。
【0062】
上記した実施形態は、選別対象の物品として、特に分岐コンベヤへの受け渡しに際して転動し易い形状である、みかん,リンゴ,梨,メロン等の略球形形状の農産物を例にしているが、レモン,サツマイモ,大根,かぶ等の短手方向に沿った切断面を略円形断面とする楕円あるいは円柱状の農産物であっても良い。勿論農産物以外の物品であっても良く、略球形形状または短手方向に沿った切断面を略円形断面としたものであれば良く、例えば球技用ボール等を例示できる。
【0063】
本実施形態の農産物選別装置によれば、外部からの衝撃により傷みやすい農産物に対して特に有利である。
【0064】
なお、上記した実施形態において、分岐コンベヤ9をバケット幅方向に沿った方向に配置しているが、バケットコンベヤ2の搬送方向に対して斜めに向けて配置しても良い。
【符号の説明】
【0065】
P 農産物
Q 軟弾性部材
W1 農産物供給作業者
W2 農産物箱詰作業者
1 農産物選別装置
2 バケットコンベヤ
3 農産物供給部
4 コンテナ
5 コンテナ搬送コンベヤ5
6 バケット
7 等級判定装置
8 検査装置
9 分岐コンベヤ
10 本体部(バケット本体部)
11 排出機構
12 連結軸
13 チェーン
14 ガイドローラ
15 無端回動ベルト
16 第1ローラ
17 第2ローラ
18 スライドガイドロッド
19 スライド部材
20 接続板
21 接続金具
22 押し付け板
23 ねじ
24 回転軸
25 スタビライザ
26 支持部材
27 位置決め部材(バックサポータ)
28 回転作動ピン
29 第1作動ピン係合部材
30 第2作動ピン係合部材
31 衝撃緩衝材
32 停止板
33 排出ピン
34 ガイド部材
35 箱詰部
36 待機位置復帰用ガイド部材
37 片寄位置復帰用ガイド部材
38 ガイドレール


【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を載置する複数のバケットを有し、バケット本体部に対し物品が載置される物品載置部材を前記バケットの搬送方向と直交方向に移動させて排出する排出機構を備えた搬送コンベヤと、
前記バケットに載置された仕分け区分決定済み物品を仕分け区分毎に受け取る前記搬送コンベヤの側方に配置した複数の分岐コンベヤと、
前記分岐コンベヤにそれぞれ対応して設けられ、前記物品載置部材に接続される作動部材との係合により前記作動部材を前記分岐コンベヤ側の排出方向へ前記物品載置部材と共に移動させるガイド部材と、を有する物品選別装置であって、
前記物品載置部材上に載置する物品の搬送方向前面を支持した状態で前記物品載置部材と一体に前記排出方向へ移動して前記分岐コンベヤ上まで進出する垂直方向に回転軸を有する物品支持部材と、
前記物品載置部材が前記排出方向へ移動する終期において前記分岐コンベヤに移載される物品を支持しながら前記物品支持部材を前記バケットの搬送方向と逆方向に回転駆動させる回転駆動手段と、
を有することを特徴とする物品選別装置。
【請求項2】
前記分岐コンベヤは、物品が移載される際に物品一個分に相当する距離だけ間欠駆動されることを特徴とする請求項1に記載の物品選別装置。
【請求項3】
前記排出機構は、前記物品載置部材をなす無端回動ベルトと、前記無端回動ベルトの移動方向にスライド自在にガイドされる前記無端回動ベルトの下方に配置されたスライド部材とを有し、前記スライド部材に対して前記無端回動ベルトの物品載置面側を接続すると共に前記作動部材を取り付け、前記物品支持部材の回転軸を前記スライド部材に固定される取り付け部材に取り付けたことを特徴とする請求項1または2に記載の物品選別装置。
【請求項4】
前記回転駆動手段は、前記回転軸に固定の回転作動ピンと、前記回転軸が前記排出方向へ移動する移動終期において前記回転作動ピンと係合する前記バケット本体部に固定された作動ピン係合部材とにより構成し、前記回転作動ピンと前記作動ピン係合部材とは、前記物品載置部材上の物品が前記排出方向終端に向けて移動するに従って前記物品支持部材を前記バケットの搬送方向と逆方向へ回転させる係合関係としていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の物品選別装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−274203(P2010−274203A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−129562(P2009−129562)
【出願日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(508134337)静岡シブヤ精機株式会社 (20)
【Fターム(参考)】