物理現象または化学現象の測定方法および測定装置
【課題】 物理現象または化学現象を電荷情報に変換することによって定量化を行い、高い測定精度および優れた応答性、さらに優れた直線性を有する測定方法および測定装置を提供すること。
【解決手段】 物理的または化学的な量の大きさに対応して電位が変化するセンシング部に対して電荷供給部から電荷を供給し、供給された電荷をセンシング部からフローティングディフュージョンを介して取出し、供給された電荷量を検出することによって該物理現象または化学現象を測定する方法であって、前記センシング部からフローティングディフュージョンへの電荷転送を、複数の電荷転送手段を介して直列的に行うことを特徴とする。
【解決手段】 物理的または化学的な量の大きさに対応して電位が変化するセンシング部に対して電荷供給部から電荷を供給し、供給された電荷をセンシング部からフローティングディフュージョンを介して取出し、供給された電荷量を検出することによって該物理現象または化学現象を測定する方法であって、前記センシング部からフローティングディフュージョンへの電荷転送を、複数の電荷転送手段を介して直列的に行うことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物理現象または化学現象を定量化する測定方法および測定装置に関し、例えば、溶液のpH、圧力、磁界、あるいは温度の二次元分布など、様々の物理現象または化学現象を定量化する測定方法および測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
物理現象または化学現象には、濃度、温度、磁気、圧力、加速度、速度、音波、超音波、酸化還元電位、反応速度など様々な現象があるが、これらの現象は、様々な電気信号(電流、電圧、抵抗、電荷容量、電位)に変換することができる。
【0003】
また、例えば、フォトダイオードのように、光を照射すると光量に応じた電子正孔対が生成し、光量を電荷量に変化してその電荷量を評価することにより光量を測定する方法などのように、物理現象または化学現象を電荷情報に変換して測定する方法があった。
【0004】
しかしながら、光以外のその他の物理・化学現象においては、ほとんどの場合、電荷量ではなく、電圧値、電流値、抵抗値などの電気信号に変換し、それらの値を読み取るようにしているため、電荷特有の取扱い方法である蓄積および転送を行うことができず、また複数点の情報を同時に取り込んで高速処理したり、測定結果を画像化するといったことが非常に困難であった。
【0005】
近年、環境あるいは医療の分野を含め各種の分野において、こうした物理現象または化学現象の高速処理化あるいは画像化の要請が高まり、例えば、物理的または化学的な量の大きさに対応して深さを変化するように構成されたポテンシャル井戸に電荷を供給して、前記物理的または化学的な量をこのポテンシャル井戸の大きさに応じた電荷に変換することによって、複数点の情報を同時に取り込み、蓄積、転送などを行い、様々な物理現象または化学現象を容易に画像化できるようにした方法および装置などが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−332423号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、昨今の物理現象または化学現象の測定には、従来以上に精緻な測定精度や応答の高速化が求められ、上記の方法や装置に対し、より優れた精度面あるいは応答面の改善の要請が強くなってきた。
【0007】
つまり、物理現象または化学現象を電荷情報として変換するに際し、精度面あるいは応答面に対しては、電荷の移動をより効率的にかつ迅速に行うために電荷移動手段をどのような構成あるいは構造とすることが好ましいかが大きな課題となってきた。
【0008】
また、物理現象または化学現象の測定においては、大きな変化による大量の電荷移動がある場合と物理現象または化学現象としての変化がほとんどなく小さな電荷移動しか発生しない場合がある。実際の測定においては、いずれの場合においても現象変化に対応した所定の測定精度を要求されるが、同一構成の検出器において、そのいずれの電荷移動条件においても同一精度を確保することは非常に難しい。つまり、検出器にとって広い範囲での直線性確保は大きな課題である。
【0009】
そこで、この発明の目的は、物理現象または化学現象を電荷情報に変換することによって定量化を行い、高い測定精度および優れた応答性、さらに優れた直線性を有する測定方法および測定装置を提供することにある。また、複数点の電荷情報を同時に取り込み様々な物理現象または化学現象を容易に画像化できる測定方法および測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意研究を重ねた結果、以下に示す測定方法あるいは測定装置によって、本発明を完成するに到った。
【0011】
上記目的を達成するため、この発明の物理現象または化学現象の測定方法は、物理的または化学的な量の大きさに対応して電位が変化するセンシング部に対して電荷供給部から電荷を供給し、供給された電荷をセンシング部からフローティングディフュージョンを介して取出し、供給された電荷量を検出することによって該物理現象または化学現象を測定する方法であって、前記センシング部からフローティングディフュージョンへの電荷転送を、複数の電荷転送手段を介して直列的に行うことを特徴とする。
【0012】
また、上記目的を達成するため、この発明の物理現象または化学現象の測定装置は、電荷をセンシング部に供給する電荷供給部、物理的または化学的な量の大きさに対応して電位が変化するセンシング部、該センシング部に供給された電荷を取出すフローティングディフュージョンからなる検出部を有する測定装置であって、前記センシング部とフローティングディフュージョンの間に複数の電荷転送手段を直列的に配することを特徴とする。
【0013】
物理現象または化学現象を検出する半導体デバイスに関し、センシング部とフローティングディフュージョンの面積比を大きくすると、実質的な増幅機能を有し検出感度は大きくなるが、センシング部の長さを長くし過ぎると、転送しきれない電荷が残る。本発明者は、センシング部の長さを短くし、フローティングディフュージョンまでの電荷転送を段階的に行うことによって、センシング部からフローティングディフュージョンの構造的な制限を緩和するとともに、検出感度を大きく保ちながらセンシング部の残留電荷を減らすことができることを見出した。その結果、総合的にS/N(信号/ノイズ)比が向上し、高い測定精度および優れた応答性、さらに優れた直線性を有する測定方法および測定装置を提供することができる。
【0014】
また、こうした構成に加え、複数のセンシング部を有し、各センシング部からの電荷を順次移動させる電荷転送手段を複数直列的に有することによって、物理的または化学的な現象の一次元分布または二次元分布を容易に画像化することが可能となる。
【0015】
本発明は、上記物理現象または化学現象の測定方法であって、前記センシング部の電荷容量をフローティングディフュージョンの電荷容量を超える大きさにするとともに、センシング部から複数の電荷転送手段を介してフローティングディフュージョンへの電荷転送に際し、各部位の電荷容量を徐々に小さくすることを特徴とする。
【0016】
また、本発明は、上記物理現象または化学現象の測定装置であって、前記電荷転送手段がn個の手段から構成され、センシング部よりも電荷容量の少ない第1電荷転送手段、第(n−1)電荷転送手段よりも電荷容量の少ない第n電荷転送手段、第n電荷転送手段よりも電荷容量の少ないフローティングディフュージョンから構成されることを特徴とする。
【0017】
上記のように、センシング部からフローティングディフュージョンまでの電荷転送を段階的に行うことによって、感度を大きく保ちながらセンシング部の残留電荷を減らすことが可能となる。本発明者は、さらに、各部位の電荷容量を徐々に小さくすることにより残留電荷を減少させ、転送効率の向上を図ることができることを見出した。
【0018】
つまり、検出感度の面では、センシング部とフローティングディフュージョンの面積比を大きいことが好ましく、応答速度の面では、センシング部と電荷転送手段、電荷転送手段間、および電荷転送手段とフローティングディフュージョンの接触部分が大きいことが好ましい反面、両者を満足するには、構造的に限界がある。本発明は、複数の電荷転送手段を設け、徐々に電荷容量を小さくすることで、両者の要求を満たすことを可能にしたものであり、高い測定精度および優れた応答性を有する測定方法および測定装置を提供することができる。
【0019】
本発明は、上記物理現象または化学現象の測定装置であって、前記センシング部および電荷転送手段が、1のフローティングディフュージョンに対し周回状に配設されていることを特徴とする。
【0020】
本発明におけるセンシング部の構造は、検出部の検出感度向上の面からは蓄積量を多くできるように大電荷容量であることが好ましい一方、検出部の応答性の面からはセンシング部から電荷転送手段へ、および電荷転送手段からフローティングディフュージョンへの迅速な電荷の移動が好ましい。そこで、センシング部および電荷転送手段を1のフローティングディフュージョンに対し周回状に配設し、フローティングディフュージョンからの放射線上のセンシング部の空間距離を短くすることによって、こうした両面を満足する構造を実現可能としたものである。センシング部に蓄積された電荷が、同一電荷容量のセンシング部との比較において最も素早く電荷転送手段へ、さらにフローティングディフュージョンへ流出することが可能となることから、実質的に電荷がセンシング部を通過する時間を短縮することができ、電荷による検出サイクルを上げることができるために応答が速い検出が可能となる。
【0021】
本発明は、上記物理現象または化学現象の測定装置であって、前記電荷転送手段が、電荷結合素子であることを特徴とする。
【0022】
一般に、半導体デバイスにおける電荷転送手段には種々の方法があるが、電荷結合素子(CCD)はS/N比の高さ、転送速度、転送効率および操作性の点で優れた特性を有している。従って、本発明のように、複数の電荷転送手段を直列的に作動させる場合にあっては、こうした特性を有効に活かし、優れた測定装置の提供が可能となる。具体的には、センシング部とフローティングディフュージョンとの間にCCDを複数配列し、順次作動させることによって、高い測定精度および優れた応答性、さらに優れた直線性を有する測定装置とすることができる。
【0023】
本発明は、上記物理現象または化学現象の測定装置であって、前記電荷結合素子が、バルク型のチャンネル構造によって形成されることを特徴とする。
【0024】
一般に、電荷測定装置に用いる半導体デバイスにおいては、サーフィス型あるいはバルク型のチャンネルが多用されている。前者は、電荷量を多く処理することが可能である反面、転送ロスが発生する場合がある。一方、後者は、基板のバルク内(n−型拡散層)を介してチャンネル間の電荷移送を行うことから、前者におけるに転送ロスがない。従って、本発明においては、バルク型のチャンネル構造を形成することで転送ロスの少なくし、かつ複数の電荷転送手段を直列的に設けることで電荷転送の迅速化を測ることによって、高い測定精度および優れた応答性を有する測定装置を可能とした。
【発明の効果】
【0025】
以上のように、本発明の物理現象または化学現象の測定方法あるいは測定装置によれば、対象となる物理現象または化学現象に伴う電荷あるいはそれによって生じる出力の増幅を可能としつつ、検出精度の向上および応答の高速化を図ることが可能となる。また、複数点の情報を同時に取り込み、蓄積、転送などを行うことにより、様々な物理現象または化学現象を容易に画像化することができる。
【0026】
また、電荷転送手段の構成や構造を工夫することによって、さらなる高精度化および迅速化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1(A)および(B)は、この発明に係る物理現象または化学現象の測定装置の検出部の基本的な構成を例示し、図2は、それを斜視的に例示している(第1構成例)。
【0028】
図1(A)および(B)または図2において、Bは例えばp型Si(シリコン)よりなる半導体基板で、厚さ500μm程度である。半導体基板Bは例えばシリコン酸化膜(SiO)の絶縁膜1を有し、それを挟むようにして、電荷供給部2、電荷供給調節部3、センシング部4、障壁部5、電荷転送手段6(図1(A)では電荷蓄積部6a、6b、6c、6dと障壁部5a、5b、5c、5dからなる複数の電荷転送手段6Aを、図1(B)では複数の電極6z、6y、6x、6wを有するCCD6Bを例示している)、フローティングディフュージョン7、リセットゲート8、リセットドレイン9、出力トランジスタ10が形成される。そして、電荷供給部2、電荷供給調節部3、センシング部4および障壁部5の各部材によってセンサ部11が形成され、センサ部11、電荷転送手段6、フローティングディフュージョン7、リセットゲート8およびリセットドレイン9によって検出部が形成される。半導体基板Bは、樹脂モールドなどを施すことにより溶液試料などに対して耐性をもたせている。
【0029】
測定に際しては、電荷供給部2、障壁部5、電荷転送手段6およびリセットゲート8にパルス電圧を印加し、他の部位に直流電圧を印加し、p型半導体を用いたMOS構造において、正の電圧を加えることによって、半導体−絶縁膜界面近傍での電位状態を形成することができる。
【0030】
センサ部11は、例えば、次のようにして形成される。
(1)p型Si基板Bを熱酸化し、酸化膜1(SiO2 )を形成する。
(2)その一部分をエッチングし、その部分を選択的に酸化する。その後、その選択的に酸化された部分のSiO2をエッチングし、さらに熱酸化することによりゲート酸化膜を形成する。このゲート酸化膜の膜厚は約500Åである。
(3)その上面の電荷供給調節部3、障壁部5、および電荷転送手段6にそれぞれ対応する部分にリンドープされた低抵抗のポリシリコンを堆積させて電極を形成する。この電極の膜厚は約3000Åで、堆積させた後、約1000Å程度熱酸化する。
(4)その後、再びリンドープされた低抵抗のポリシリコンを堆積し、電荷転送手段6の上面に電極を形成する。この電極の膜厚は前記電極のそれと同程度に堆積させた後、約1000Å程度熱酸化する。このように酸化することにより、電極同士の絶縁が保たれる。
(5)その後、Si3 N4 (Ta2 O3 またはAl2 O3 でもよい)を700Å程度堆積してセンシング部4を形成する。
【0031】
センシング部4は、物理的または化学的な量の大きさに対応して電位が変化する測定部位であり、例えばpH測定の場合には、水溶液や測定対象物などを導入するセルが設けられた電極部を形成し、試料中のpHに対応する電位を発生する。こうした電位あるいは電位の変化を電荷に変換し、検出部における電荷の変化を、MOS構造の出力トランジスタ10によって出力変換される。
【0032】
ここで、電荷供給部2は、1のセンシング部4に対し1つに限定されるものではなく複数配設されていることが可能である。上述のように、測定対象あるいは用途によって、センシング部4の数量、形状あるいは配置関係が一義的に決定されることがあり、センシング部4全体への電荷の供給を迅速に行う必要がある場合において、センシング部4への電荷供給の負荷を複数の電荷供給部2に分散することが好ましい。
【0033】
電荷転送は、種々の方法をとることが可能であるが、図1(A)に例示するような電荷蓄積部6a、6b、6c、6dと障壁部5a、5b、5c、5dからなる複数の電荷転送手段6Aによって構成され各電荷蓄積部の電位差によって電荷を転送する場合や、図1(B)に例示するような複数の電極6z、6y、6x、6wを有するCCD6Bによって構成される場合が挙げられる。各々の機能や動作の詳細は後述する。
【0034】
特に、CCD6Bは、S/N比の高さ、転送速度、転送効率および操作性の点で優れた特性を有しており、複数の電荷転送手段6を直列的に作動させる本発明の場合において非常に有用である。
【0035】
また、CCD電極6zまたは6wが障壁部5の機能を果たすことが可能であり、障壁部5を省略することができ、転送の迅速化が可能である点においても優位である。ただし、微小電荷を扱う場合には、他の部位からの誘導影響を防止しフローティングディフュージョン7の電位を安定化する観点から、障壁部5あるいはこれに代わるゲート(例えばアウトプットゲートなど)を設けることが好ましい。
【0036】
さらに、各電極に印加する電圧に差を設ける必要がないことからセンシング部4とフローティングディフュージョン7間の電位差を制限したり、電極数を制限する必要がない点においても有用である。
【0037】
また、CCD6Bは、センシング部4に蓄積された電荷量に応じて、電荷転送時に、同時に稼動させる電極数を変更することによって、最適条件で電荷を転送することが可能である。つまり、転送する電荷量が多い場合には多数の電極を稼動することによって、電荷の未転送をなくすことができる。さらに、転送する電荷量が少ない場合には1つの電極を稼動することによって、電極部における残留電荷をなくし、測定誤差要因をなくすことができる。
【0038】
また、各電荷転送手段6の電荷転送効率が100%であれば、理論的には電荷転送手段6の段数を限りなく大きくすることができるが、転送効率が100%未満であれば、段数を多くすればするほど信号電荷量が減少してしまう。また、応答速度の面では少ない段数が少ない方が好ましく、増幅率の向上やセンサ部の構造的制限の緩和の面では段数が多い方が好ましい。実質的にはセンサとしての要求仕様にあった段数が選択される。
【0039】
フローティングディフュージョン7は、センシング部4の形状あるいはセンシング部4とフローティングディフュージョン7との電荷容量比などによって設定されるが、図1では、センシング部4との接触部分を大きくするとともに、フローティングディフュージョン7の面積を小さくするために台形形状を形成している。
【0040】
上記のセンサ部11の構成は、半導体デバイスにおいて一般なサーフィス型のチャンネル構造を用いた場合を例示している。サーフィス型のチャンネル構造は、上記のように基板BのSi相と絶縁膜1のSiO相との界面において生じる最も電位の低い部分を利用して電荷の転送を行い、電荷転送手段6としてCCD6Bを用いた場合には、各電極6z、6y、6x、6wへの印加電圧は、一般には0〜−5VをON−OFFする。電荷量を多く処理することができるという優れた特性を有する反面、上記界面において両相の材質の相違があることから、これに基づく不整合部分におけるトラップ準位によって、転送ロスが発生することがある。従って、多段のCCDを用いた場合には、転送ロスが無視できなくなる場合がある。具体的には、CCD6Bの転送効率、転送回数、信号の減少率についての関係を以下の表に示す。
【0041】
【表1】
転送効率が100%未満であれば、CCD6Bの電極数を多くすればするほど信号電荷量が減少してしまうので、実質的にはどこまでCCD6Bの電極数を多くできるかは、CCD6Bの性能に依存する。
【0042】
ここで、本発明に係るセンサ部11においては、バルク型のチャンネル構造を用いることがより好ましい。バルク型は、図3に例示するように、Si−SiO界面のSi相側にn−型拡散層12を設け、チャンネル構造を形成する。n−型拡散層12の中央部付近が最も電位が低くなり、その部分で電荷の転送を行うが、n−型拡散層12はSiの単結晶であり歪がないことから、転送ロスが非常に少ない点に大きなメリットがある。CCD電極6z、6y、6x、6wへの印加電圧は、一般には0〜−10VをON−OFFする。また、n−型拡散層12は、上記酸化膜1の形成後に基板Bの表層部にリンや砒素(As)などのイオン注入を行うことによって形成することができる。特にAsは熱拡散係数が小さいことから、サブミクロンオーダーの微細加工を必要とするデバイスなどに対して有用である。
【0043】
上記のような測定装置における測定方法について、電位図を参照しながら説明する。図1(A)に示す電荷蓄積部6a、6b、6c、6dと障壁部5a、5b、5c、5dからなる複数の電荷転送手段6Aを用いた場合を図4(A)(B)に示し、図1(B)に示す複数の電極6z、6y、6x、6wを有するCCD6Bを用いた場合を図5に示す。
【0044】
図4(A)(B)で用いる電荷転送手段の特徴は、段階的に電位を上げた複数の電荷蓄積部6a、6b、6c、6dを有する電荷転送手段6Aを形成することで、順に電荷の転送を容易にした点にある。基本的には、各電荷蓄積部6a、6b、6c、6dを順番に使用する方法が採られるが、センシング部4に蓄積された電荷量が多い場合には、複数の電荷蓄積部を同時に使用することも可能である。
【0045】
図4(A)においては、以下の順に移動する電荷を検出することによって、センシング部における電位の変化を検出し、それに対応する物理的または化学的な量を測定することができる。
(1)初期電位状態
当初は、電荷供給部2の電位は高く(矢印方向が高い)設定されており、センシング部4には電荷は供給されていない。
(2)電荷の供給
電荷供給部2の電位を下げることによって、センシング部4に電荷を供給する。
(3)電荷の蓄積
電荷供給部2の電位を上げることによって、供給された電荷の一部がオーバーフローし電荷供給調節部3によって制限された量の電荷がセンシング部4に蓄積される。
(4)電荷の転送1
障壁部5の電位を上げることによって、センシング部4に蓄積された電荷を電荷転送手段6aに転送する。
(5)電荷の転送2
障壁部5aの電位を上げることによって、電荷転送手段6aに蓄積された電荷を電荷転送手段6bに転送する。
(6)電荷の転送3
障壁部5bの電位を上げることによって、電荷転送手段6bに蓄積された電荷を電荷転送手段6cに転送する。
(7)電荷の転送4
障壁部5cの電位を上げることによって、電荷転送手段6cに蓄積された電荷を電荷転送手段6dに転送する。
(8)電荷の転送5
障壁部5dの電位を上げることによって、電荷転送手段6dに蓄積された電荷をフローティングディフュージョン7に転送する。
(9)電荷の測定
センシング部4の電荷が全てフローティングディフュージョン7に転送されてから障壁部5dの電位を下げて閉じ、電荷の流入を止める。この段階で、フローティングディフュージョン7の電位は転送されてきた電荷の量で決まるので、この電位をMOS構造の出力トランジスタ10のゲート部に入力し、この出力トランジスタ10のドレイン電流を測定する。
(10)リセット
フローティングディフュージョン7の電位を読み取った後、リセットゲート8をオンにしてリセットドレイン9から電荷を供出し、フローティングディフュージョン7の電位をリセットドレイン9の電位にリセットする。
(11)検出サイクル
上記のリセットにより、再び(1)と同じ状態に戻ることになる。つまり、検出サイクルとは、このように、(1)〜(10)の動作を繰り返すことをいい、これによって、センシング部4での電位の状態に対応した電荷量を順次出力することができる。
【0046】
なお、図4(A)では、電荷供給部2の電位を上げ下げしてセンシング部4に蓄積された電荷をすりきるようにしているが、これに代えて、図4(B)に示すように、電荷供給部2の電位を一定に保持し、電荷供給調節部3の高さを上げ下げしてセンシング部4に電荷を蓄積するようにしてもよい。つまり、以下の操作によって、安定的に前記物理的または化学的な量をこのセンシング部の大きさに応じた電荷に変換することができる。
(1)初期電位状態
当初は、電荷供給部2の電位は低く、電荷供給調節部3の電位はそれ以下に設定されており、センシング部4には電荷は供給されていない。
(2)電荷の供給
電荷供給調節部3の電位を、電荷供給部2の電位以上に上げることによって、センシング部4に電荷を供給する。
(3)電荷の蓄積
電荷供給調節部3の電位を(1)の状態にまで下げることによって、供給された電荷がセンシング部4に蓄積される。
(4−1〜5)電荷の転送1〜5
上記と同様、障壁部5a〜5dの電位を上げることによって、センシング部4に蓄積された電荷を、電荷転送手段6a〜6dを介してフローティングディフュージョン7に転送する。
(5)電荷の測定
センシング部4の電荷が全てフローティングディフュージョン7に転送されてから障壁部5dの電位を下げて閉じ、電荷の流入を止める。この段階で、フローティングディフュージョン7の電位は転送されてきた電荷の量で決まるので、この電位をMOS構造の出力トランジスタ10のゲート部に入力し、この出力トランジスタ10のドレイン電流を測定する。
(6)リセット
フローティングディフュージョン7の電位を読み取った後、リセットゲート8をオンにしてリセットドレイン9から電荷を供出し、フローティングディフュージョン7の電位をリセットドレイン9の電位にリセットする。
(7)検出サイクル
上記のリセットにより、再び(1)と同じ状態に戻ることになる。つまり、検出サイクルとは、このように、(1)〜(6)の動作を繰り返すことをいい、これによって、センシング部4での電位の状態に対応した電荷量を順次出力することができる。図4(A)の方法の利点とともに、電荷供給部2の電位を基準とすることで一定電位を保持することが可能となり、さらに安定性の向上を図ることができる。
【0047】
図5に例示するように、電荷転送手段6として、電極6z、6y、6x、6wを有するCCD6Bを用い、以下の順に移動する電荷を検出することによって、センシング部における電位の変化を検出し、それに対応する物理的または化学的な量を測定することができる。ここでは、図4(A)と同様、電荷供給部2の電位を上げ下げしてセンシング部4に蓄積された電荷をすりきる方法を基に説明するが、これに代えて、図4(B)に示すように、電荷供給部2の電位を一定に保持し、電荷供給調節部3の高さを上げ下げしてセンシング部4に電荷を蓄積する方法を適用することも可能である。また、基本的には、電極6z、6y、6x、6wを順番に使用する方法が採られるが、センシング部4に蓄積された電荷量が多い場合には、複数の電極を同時に使用することも可能である。
(1)初期電位状態
当初は、電荷供給部2の電位は高く(矢印方向が高い)設定されており、センシング部4には電荷は供給されていない。
(2)電荷の供給
電荷供給部2の電位を下げることによって、センシング部4に電荷を供給する。
(3)電荷の蓄積
電荷供給部2の電位を上げることによって、供給された電荷の一部がオーバーフローし電荷供給調節部3によって制限された量の電荷がセンシング部4に蓄積される。
(4)電荷の転送1
CCD電極6zの電位を上げることによって、センシング部4に蓄積された電荷をCCD電極6zに転送する。センシング部4に蓄積された電荷量が多い場合には、電極6zおよび6y、あるいは電極6z、6yおよび6xを上げることによって、相当する電荷の転送が可能となる。図5では、2つの電極を用いて転送する場合を例示し、電極6zおよび6yに転送している。
(5)電荷の転送2
CCD電極6xの電位を上げることによって、電極6zおよび6yに蓄積された電荷が電極6xにも転送される。
(6)電荷の転送3
CCD電極6xの電位を下げることによって、電極6z、6yおよび6xに蓄積された電荷が電極6yおよび6xに転送される。つまり、(4)において電極6zおよび6yに蓄積された電荷が、電極6yおよび6xに転送された状態となる。
(7)電荷の転送2
CCD電極6wの電位を上げることによって、電極6yおよび6xに蓄積された電荷が電極6wにも転送される。
(8)電荷の転送3
CCD電極6yの電位を下げることによって、電極6y、6xおよび6wに蓄積された電荷が電極6xおよび6wに転送される。つまり、(6)において電極6yおよび6xに蓄積された電荷が、電極6xおよび6wに転送された状態となる。
(9)電荷の転送5
障壁部5の電位を上げ、CCD電極6xおよび6wの電位を下げることによって、電極6xおよび6wに蓄積された電荷をフローティングディフュージョン7に転送する。
(10)電荷の測定
センシング部4の電荷が全てフローティングディフュージョン7に転送されてから障壁部5の電位を下げて閉じ、電荷の流入を止める。この段階で、フローティングディフュージョン7の電位は転送されてきた電荷の量で決まるので、この電位をMOS構造の出力トランジスタ10のゲート部に入力し、この出力トランジスタ10のドレイン電流を測定する。
(11)リセット
フローティングディフュージョン7の電位を読み取った後、リセットゲート8をオンにしてリセットドレイン9から電荷を供出し、フローティングディフュージョン7の電位をリセットドレイン9の電位にリセットする。
(12)検出サイクル
上記のリセットにより、再び(1)と同じ状態に戻ることになる。つまり、検出サイクルとは、このように、(1)〜(11)の動作を繰り返すことをいい、これによって、センシング部4での電位の状態に対応した電荷量を順次出力することができる。
【0048】
以上のように、この測定装置においては、物理的または化学的な量の大きさに対応して電位を変化するように構成されたセンシング部4を半導体基板Bに形成し、このセンシング部4に電荷を供給して、前記物理的または化学的な量をこのセンシング部の大きさに応じた電荷に変換するようにした電荷変換機構を用いている。
【0049】
このとき、センシング部4の電荷容量がフローティングディフュージョン7の電荷容量を超える大きさを有することが好ましい。例えば、上記の図4(A)の検出サイクルの(1)〜(10)を繰り返し、フローティングディフュージョン7にある程度の電荷量が蓄積されてから電荷を測定するようにすることで、検出感度を上げることが可能であるが、その蓄積時間分だけ応答時間が遅くなる。本発明では、センシング部4の電荷容量を大きくし蓄積される電荷を多くすることで、小電荷容量のフローティングディフュージョン7に転送された時のフローティングディフュージョン7での電位の変化率を上昇させることができることから、その変化率を検出することで、正確かつ感度の高い測定が可能となる。つまり、センシング部4と電荷転送手段であるフローティングディフュージョン7の間に電荷容量差を設けることによって、センシング部4のおける電位の変化の実質的に増幅機能を有することとなる。
【0050】
具体的にセンシング部4の電荷容量を大きくするには、(1)平面上での面積を大きくする、(2)センシング部4を複数にする、(3)電位を高くする、(4)電荷密度を上げる、などの手段があり、物理的または化学的な現象の対象となる試料の性状や濃度などによって選択することが可能である。なお、センシング部4の形状についても、同様の選択が可能である。
【0051】
図6は、本発明における第2構成例を示す。センシング部4、電荷転送手段6、フローティングディフュージョン7の順に接触部分の長さを短くしていくことによって、センシング部4とフローティングディフュージョン7の面積比を大きくしている。検出感度に対応したセンシング部4の面積を任意に設定するとともに、電荷転送手段6を数あるいは径方向の距離を調整することによって、動作速度あるいは転送速度を設定することができることから、汎用性も高い。特に、電位あるいは電荷密度を上げる場合には測定対象によってはセンシング部4の絶縁性を考慮する必要があるが、こうした構成では電荷転送手段6との接触部分の長さを長くすることによって面積を拡大し、電荷転送手段6の数を増やすことで対応できる点優位である。長い線上で接する構成によって、素早くセンシング部4の電荷を移動することができる点において、測定の迅速化の要請に対応することができることからも優れている。つまり、電荷がセンシング部4および電荷転送手段6を通過する空間距離を短くし、実質的に電荷がセンシング部4および電荷転送手段6を通過する時間を短縮することができ、電荷による検出サイクルを上げることができるために応答が速い検出が可能となる。ここで、電荷転送手段6としては、CCDによって構成される場合を例示しているが、これに限定されるものではない。
【0052】
なお、1のセンシング部4に対して複数の電荷供給部2を配設することも可能である(図示せず)。センシング部4の面積拡大に伴い、1の電荷供給部2からの供給ではセンシング部4全体に電荷が行き渡るのに所定の時間を必要とし迅速な対応が難しい場合がある。こうした場合に、センシング部4への電荷供給の負荷を複数の電荷供給部2に分散することで、センシング部4への供給を容易にし、センシング部4での電荷の迅速な蓄積が可能となる。
【0053】
図7(A)、(B)および(C)は、本発明における第3構成例を示す。センシング部4の面積を大きくするためにフローティングディフュージョン7に対し周回状に配設され、センシング部4の電荷容量を大きくしている。同時に、電荷転送手段6もセンシング部4と同心円状に接しながらフローティングディフュージョン7に対し周回状に配設されている。ここで、電荷転送手段6としては、CCDによって構成される場合を例示しているが、これに限定されるものではない。
【0054】
図7(A)の径方向の距離dを調整することによって、センシング部4の面積を任意に設定することができることから、汎用性も高い。また、電位あるいは電荷密度を上げる場合には測定対象によってはセンシング部4の絶縁性を考慮する必要があるが、こうした構成では面積を拡大することで対応できる点優位である。さらに、センシング部4とフローティングディフュージョン7との間に電荷転送手段6を介在させることによって、両者の面積比を大きくすることが可能となり、電荷転送手段6を数あるいは径方向の距離を調整することによって、任意の面積比つまり増幅度を設定することができる。
【0055】
また、センシング部4と電荷転送手段6と長い線上で接しながら、電荷転送手段6が順次接線の距離を短くする構成によって、電荷がセンシング部を通過する空間距離dを短くし、実質的に電荷がセンシング部を通過する時間を短縮することができ、電荷による検出サイクルを上げることができるために応答が速い検出が可能となる。
【0056】
ここで、センシング部4および電荷転送手段6が、図7(B)に示すような半周回状に配設されている場合も含まれる。電荷転送手段6として多数の電極を有する場合などにおいて、配線や出力トランジスタ10等の配設が容易になり、また、各手段の相互影響などを防止することができる。
【0057】
なお、図7(C)に例示するように、1のセンシング部4に対して複数の電荷供給部2a,2b,2cを配設する構成することも好適である。センシング部4の面積拡大に伴い、1の電荷供給部2からの供給ではセンシング部4全体に電荷が行き渡るのに所定の時間を必要とし迅速な対応が難しい場合がある。こうした場合に、センシング部4への電荷供給の負荷を複数の電荷供給部2a,2b,2cに分散することで、センシング部4への供給を容易にし、センシング部4での電荷の迅速な蓄積が可能となる。また、各電荷供給部2a,2b,2cの電荷供給量を個別に調整しセンシング部4の形状などに適した電荷の供給が可能となる。さらに、電荷供給調整部3を各電荷供給部2a,2b,2cごとに別々に設け電荷供給量を個別に調整することも可能となる。なお、ここでは、複数を3つとして説明しているが、2以上いくつでも可能であることはいうまでもない。以下同様である。
【0058】
図8は、本発明における第4構成例を示す。1つのフローティングディフュージョン7に対し、電荷転送手段6を介して複数のセンシング部4a,4b,4cを周回状に設けており、全体としてセンシング部の面積を大きくし電荷容量を大きくしている。第3構成例と同様、センシング部面積の任意設定、フローティングディフュージョン7との周回接触、電荷の通過時間の短縮化の機能を有し、検出感度の向上および測定の迅速化の要請に対応し、かつ汎用性の高い検出手段とすることができる。
【0059】
加えて、本発明では、各センシング部4a,4b,4cが独立性を有することで、さらに、従来とは異なる使用方法が可能となる。具体的には、例えば、各センシング部4a,4b,4cの表面を適当な応答物質で修飾することにより選択性のあるイオン電極を形成し、同一試料について複数のイオン(例えば、pH、Ca、Na、K、あるいは塩素など)の濃度測定を行うことや、温度、磁気、圧力検出機能を形成し同一試料についての各項目の検出を同時に行うこと、など異なった物理現象または化学現象の同時測定が可能となる。また、同一機能を有するセンシング部4a,4b,4cを設け、異なる試料を同時に測定することで、複数試料の同一項目の測定を同時に行うことができる。
【0060】
さらに、1つのフローティングディフュージョンに対し電荷転送手段を介して複数のセンサ部からの電荷を順次移動させる構成によって、物理的または化学的な現象の一次元分布または二次元分布を容易に画像化することができる。具体的には、図9に例示するような第5構成例が可能である。つまり、複数のセンサ部11(a,a)、11(a,b)、・・・と、各センサ部において変換された電荷を矢印方向に転送する電荷転送手段6と、転送されてきた電荷をさらに転送する1つのフローティングディフュージョン7と、転送されてきた電荷を出力信号に変換する出力トランジスタ10とからなる。電荷転送手段6としては、複数のセンサ部からの電荷を順次フローティングディフュージョン7に転送すると同時に位置情報を含めた処理を必要とすることからCCDが好ましい。
【0061】
センサ部11(a,a)、11(a,b)、・・・を一次元的あるいは二次元的に配置してアレイ化することにより、複数点の情報を同時に取り込み、電荷転送部6および出力トランジスタ10によって、複数点の信号を秩序よく処理することができる。出力された信号は、そのままCRTなどの画像出力装置(図示せず)に入力して画像出力したり、出力信号をAD変換してコンピュータに入力することができる。
【0062】
つまり、各センサ部11(a,a)、11(a,b)、・・・と電荷転送部6との接合部におけるゲートを順次開として蓄積された電荷を供出し、CCD駆動電位を順にON−OFFすることによって電荷転送部6の転送路を経由して転送される。このとき、電荷転送部6におけるCCDの駆動は、1相駆動、2相駆動あるいは4相駆動など、転送される電荷量に応じて適宜選定することができる。なお、上記のようにセンサ部11の数が多くなるに伴って転送効率が大きな問題となるが、その場合は、転送経路として転送効率の高いバルクチャンネルを用いるのが好ましい。転送されてきた電位は、フローティングディフュージョン7に転送され、このフローティングディフュージョン7の電位を変化させる。この電位の変化を、出力トランジスタ10のゲートに入力し、検出出力とする。
【0063】
本発明における第6の構成例を図10に例示する。出力トランジスタ10の出力側にフィードバック回路13(制御部)を設け、出力トランジスタ10の出力が一定になるように電荷供給調整部3の電位を制御し、その制御量を測定値に変換する場合を表している。
【0064】
つまり、物理現象または化学現象を電荷情報に変換して定量化を行う場合においては、センシング部4あるいはフローティングディフュージョン7に残留する電荷の影響が無視できないことがある。具体的には、センシング部4からフローティングディフュージョン7までの電荷移動距離が長い場合あるいは検出サイクルの時間が短い場合では、電荷の移動が追いつかず電荷の一部がセンシング部4に残留することがある。このとき微小な電荷の移動を追跡する高感度測定においては、直線性、特にゼロ付近での直線性が悪くなることがある。そこで、本発明では、こうしたセンシング部4への電荷の残留を防止する、あるいは電荷の残留があっても検出特性に影響しないような電荷移動量に設定して、電荷移動量を一定にするように電荷供給調整部3の電位を調整するものである。
【0065】
すなわち、電荷供給調整部3とセンシング部4との電位差を一定にすれば、センシング部4に供給される電荷供給量を一定にすることができ、電荷移動量が一定となる。このとき、電荷移動量を所定範囲にすれば、上記の電荷の残留の影響は無視することができる。つまり、時間的にみれば、所定量を超える場合、転送パワーが落ちることから電荷の残留する(転送ロスの)確率が増加する。一方、実際の転送時に一定量の転送ロスが生じるとすれば、所定量よりも少ない場合には、その影響を無視することができない。
【0066】
また、センシング部4からフローティングディフュージョン7に移動する電荷量が一定となり、その結果フローティングディフュージョン7の電位が一定となる。つまり、フローティングディフュージョン7に設けられた出力トランジスタ10の出力が一定となるように、物理現象または化学現象に伴うセンシング部4の電位の変化に対応して、電荷供給調整部3の電位を調整した場合、その調整量が物理現象または化学現象の変化に対応する測定量とすることができ、直線性を有する優れた検出特性を得ることができる。
【0067】
また、センサ部11における電荷移動量を一定とすることで、センサ部11の変動要素を少なくし機能の安定化を図ることができる。
【0068】
さらに、センシング部4の特性にバラツキがあっても、同一試料についてのセンシング部4と電荷供給調整部3の電位差を一定にするように調節された電荷供給調整部3の電位を基準に、上記動作を行うことができる。従って、センシング部4の特性を厳格に規制することなく、同等の出力特性を得ることができる。
【0069】
上記では、各請求項に係る発明によって形成される機能を、一部組合せた構成例を挙げて説明したが、むろん、本発明はこれに限定されるものではなく、他の組合せ、あるいは本願に記載の事項との任意の組合せが可能であることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0070】
以上、この発明は、広く溶液などサンプルのイオン濃度の二次元分布測定に好適に用いることができるほか、以下のような分野にも適用することができる。
(1)化学顕微鏡としての応用分野・化学;イオン濃度計測・電気化学的分野、ガス分布計測分野・滴定の二次元的動的観察および解析
(2)環境計測・環境;バイオリメディエーションへの適用
(3)食品検査・食品、微生物
(4)ME分野・医学・生態組織;組織細胞の表面イオン濃度計測、細胞表面電位計測、DNA計測
(5)バイオ分野
(6)動植物分野・植物;カルスの表面電位分布計測・生物・正面図動物
(7)腐蝕計測分野・金属;金属腐蝕と塗装・コーティング
(8)ゼータ電位等表面解析・粉体、セラミックスのゼータ電位。
【0071】
また、測定対象(サンプル)は、気体、液体、固体、粉体のいずれであってもよく、センサ部の特定感応層により選択的に反応する化学センシングと、物理的接触による界面現象に電荷変動をするあらゆる現象に適用でき、例えば液の流れや一瞬の化学反応の過渡現象の分布を高感度、高画質の化学画像として得ることができる。さらに、滴定現象のリアルタイム画像化から画像ソフトによる他の種類の解析、表示にも有用であり、携帯化カメラにも有効である。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1A】本発明に係る測定装置検出部の基本的な構造(第1構成例の1)を示す説明図。
【図1B】本発明に係る測定装置検出部の基本的な構造(第1構成例の2)を示す説明図。
【図2】本発明に係る測定装置検出部の要部を概略的に例示する説明図。
【図3】本発明に係る測定装置検出部のセンサ部の他の構造を例示する説明図。
【図4】本発明の測定方法に係る電位の変化を示す説明図。
【図5】本発明の他の測定方法に係る電位の変化を例示する説明図。
【図6】本発明に係る第2の構成例を示す説明図。
【図7A】本発明に係る第3の構成例の1を示す説明図。
【図7B】本発明に係る第3の構成例の2および3を示す説明図。
【図8】本発明に係る第4の構成例を示す説明図。
【図9】本発明に係る第5の構成例を示す説明図。
【図10】本発明に係る第6の構成例を示す説明図。
【符号の説明】
【0073】
1 絶縁膜
2 電荷供給部
3 電荷供給調整部
4 センシング部
5、5a、5b、5c、5d 障壁部
6、6A 電荷転送手段
6B CCD
6a、6b、6c、6d 電荷蓄積部
6z、6y、6x、6w CCD電極
7 フローティングディフュージョン
8 リセットゲート
9 リセットドレイン
10 出力トランジスタ
11 センサ部
12 n−型拡散層
13 フィードバック回路
B 半導体基板
【技術分野】
【0001】
本発明は、物理現象または化学現象を定量化する測定方法および測定装置に関し、例えば、溶液のpH、圧力、磁界、あるいは温度の二次元分布など、様々の物理現象または化学現象を定量化する測定方法および測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
物理現象または化学現象には、濃度、温度、磁気、圧力、加速度、速度、音波、超音波、酸化還元電位、反応速度など様々な現象があるが、これらの現象は、様々な電気信号(電流、電圧、抵抗、電荷容量、電位)に変換することができる。
【0003】
また、例えば、フォトダイオードのように、光を照射すると光量に応じた電子正孔対が生成し、光量を電荷量に変化してその電荷量を評価することにより光量を測定する方法などのように、物理現象または化学現象を電荷情報に変換して測定する方法があった。
【0004】
しかしながら、光以外のその他の物理・化学現象においては、ほとんどの場合、電荷量ではなく、電圧値、電流値、抵抗値などの電気信号に変換し、それらの値を読み取るようにしているため、電荷特有の取扱い方法である蓄積および転送を行うことができず、また複数点の情報を同時に取り込んで高速処理したり、測定結果を画像化するといったことが非常に困難であった。
【0005】
近年、環境あるいは医療の分野を含め各種の分野において、こうした物理現象または化学現象の高速処理化あるいは画像化の要請が高まり、例えば、物理的または化学的な量の大きさに対応して深さを変化するように構成されたポテンシャル井戸に電荷を供給して、前記物理的または化学的な量をこのポテンシャル井戸の大きさに応じた電荷に変換することによって、複数点の情報を同時に取り込み、蓄積、転送などを行い、様々な物理現象または化学現象を容易に画像化できるようにした方法および装置などが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−332423号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、昨今の物理現象または化学現象の測定には、従来以上に精緻な測定精度や応答の高速化が求められ、上記の方法や装置に対し、より優れた精度面あるいは応答面の改善の要請が強くなってきた。
【0007】
つまり、物理現象または化学現象を電荷情報として変換するに際し、精度面あるいは応答面に対しては、電荷の移動をより効率的にかつ迅速に行うために電荷移動手段をどのような構成あるいは構造とすることが好ましいかが大きな課題となってきた。
【0008】
また、物理現象または化学現象の測定においては、大きな変化による大量の電荷移動がある場合と物理現象または化学現象としての変化がほとんどなく小さな電荷移動しか発生しない場合がある。実際の測定においては、いずれの場合においても現象変化に対応した所定の測定精度を要求されるが、同一構成の検出器において、そのいずれの電荷移動条件においても同一精度を確保することは非常に難しい。つまり、検出器にとって広い範囲での直線性確保は大きな課題である。
【0009】
そこで、この発明の目的は、物理現象または化学現象を電荷情報に変換することによって定量化を行い、高い測定精度および優れた応答性、さらに優れた直線性を有する測定方法および測定装置を提供することにある。また、複数点の電荷情報を同時に取り込み様々な物理現象または化学現象を容易に画像化できる測定方法および測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意研究を重ねた結果、以下に示す測定方法あるいは測定装置によって、本発明を完成するに到った。
【0011】
上記目的を達成するため、この発明の物理現象または化学現象の測定方法は、物理的または化学的な量の大きさに対応して電位が変化するセンシング部に対して電荷供給部から電荷を供給し、供給された電荷をセンシング部からフローティングディフュージョンを介して取出し、供給された電荷量を検出することによって該物理現象または化学現象を測定する方法であって、前記センシング部からフローティングディフュージョンへの電荷転送を、複数の電荷転送手段を介して直列的に行うことを特徴とする。
【0012】
また、上記目的を達成するため、この発明の物理現象または化学現象の測定装置は、電荷をセンシング部に供給する電荷供給部、物理的または化学的な量の大きさに対応して電位が変化するセンシング部、該センシング部に供給された電荷を取出すフローティングディフュージョンからなる検出部を有する測定装置であって、前記センシング部とフローティングディフュージョンの間に複数の電荷転送手段を直列的に配することを特徴とする。
【0013】
物理現象または化学現象を検出する半導体デバイスに関し、センシング部とフローティングディフュージョンの面積比を大きくすると、実質的な増幅機能を有し検出感度は大きくなるが、センシング部の長さを長くし過ぎると、転送しきれない電荷が残る。本発明者は、センシング部の長さを短くし、フローティングディフュージョンまでの電荷転送を段階的に行うことによって、センシング部からフローティングディフュージョンの構造的な制限を緩和するとともに、検出感度を大きく保ちながらセンシング部の残留電荷を減らすことができることを見出した。その結果、総合的にS/N(信号/ノイズ)比が向上し、高い測定精度および優れた応答性、さらに優れた直線性を有する測定方法および測定装置を提供することができる。
【0014】
また、こうした構成に加え、複数のセンシング部を有し、各センシング部からの電荷を順次移動させる電荷転送手段を複数直列的に有することによって、物理的または化学的な現象の一次元分布または二次元分布を容易に画像化することが可能となる。
【0015】
本発明は、上記物理現象または化学現象の測定方法であって、前記センシング部の電荷容量をフローティングディフュージョンの電荷容量を超える大きさにするとともに、センシング部から複数の電荷転送手段を介してフローティングディフュージョンへの電荷転送に際し、各部位の電荷容量を徐々に小さくすることを特徴とする。
【0016】
また、本発明は、上記物理現象または化学現象の測定装置であって、前記電荷転送手段がn個の手段から構成され、センシング部よりも電荷容量の少ない第1電荷転送手段、第(n−1)電荷転送手段よりも電荷容量の少ない第n電荷転送手段、第n電荷転送手段よりも電荷容量の少ないフローティングディフュージョンから構成されることを特徴とする。
【0017】
上記のように、センシング部からフローティングディフュージョンまでの電荷転送を段階的に行うことによって、感度を大きく保ちながらセンシング部の残留電荷を減らすことが可能となる。本発明者は、さらに、各部位の電荷容量を徐々に小さくすることにより残留電荷を減少させ、転送効率の向上を図ることができることを見出した。
【0018】
つまり、検出感度の面では、センシング部とフローティングディフュージョンの面積比を大きいことが好ましく、応答速度の面では、センシング部と電荷転送手段、電荷転送手段間、および電荷転送手段とフローティングディフュージョンの接触部分が大きいことが好ましい反面、両者を満足するには、構造的に限界がある。本発明は、複数の電荷転送手段を設け、徐々に電荷容量を小さくすることで、両者の要求を満たすことを可能にしたものであり、高い測定精度および優れた応答性を有する測定方法および測定装置を提供することができる。
【0019】
本発明は、上記物理現象または化学現象の測定装置であって、前記センシング部および電荷転送手段が、1のフローティングディフュージョンに対し周回状に配設されていることを特徴とする。
【0020】
本発明におけるセンシング部の構造は、検出部の検出感度向上の面からは蓄積量を多くできるように大電荷容量であることが好ましい一方、検出部の応答性の面からはセンシング部から電荷転送手段へ、および電荷転送手段からフローティングディフュージョンへの迅速な電荷の移動が好ましい。そこで、センシング部および電荷転送手段を1のフローティングディフュージョンに対し周回状に配設し、フローティングディフュージョンからの放射線上のセンシング部の空間距離を短くすることによって、こうした両面を満足する構造を実現可能としたものである。センシング部に蓄積された電荷が、同一電荷容量のセンシング部との比較において最も素早く電荷転送手段へ、さらにフローティングディフュージョンへ流出することが可能となることから、実質的に電荷がセンシング部を通過する時間を短縮することができ、電荷による検出サイクルを上げることができるために応答が速い検出が可能となる。
【0021】
本発明は、上記物理現象または化学現象の測定装置であって、前記電荷転送手段が、電荷結合素子であることを特徴とする。
【0022】
一般に、半導体デバイスにおける電荷転送手段には種々の方法があるが、電荷結合素子(CCD)はS/N比の高さ、転送速度、転送効率および操作性の点で優れた特性を有している。従って、本発明のように、複数の電荷転送手段を直列的に作動させる場合にあっては、こうした特性を有効に活かし、優れた測定装置の提供が可能となる。具体的には、センシング部とフローティングディフュージョンとの間にCCDを複数配列し、順次作動させることによって、高い測定精度および優れた応答性、さらに優れた直線性を有する測定装置とすることができる。
【0023】
本発明は、上記物理現象または化学現象の測定装置であって、前記電荷結合素子が、バルク型のチャンネル構造によって形成されることを特徴とする。
【0024】
一般に、電荷測定装置に用いる半導体デバイスにおいては、サーフィス型あるいはバルク型のチャンネルが多用されている。前者は、電荷量を多く処理することが可能である反面、転送ロスが発生する場合がある。一方、後者は、基板のバルク内(n−型拡散層)を介してチャンネル間の電荷移送を行うことから、前者におけるに転送ロスがない。従って、本発明においては、バルク型のチャンネル構造を形成することで転送ロスの少なくし、かつ複数の電荷転送手段を直列的に設けることで電荷転送の迅速化を測ることによって、高い測定精度および優れた応答性を有する測定装置を可能とした。
【発明の効果】
【0025】
以上のように、本発明の物理現象または化学現象の測定方法あるいは測定装置によれば、対象となる物理現象または化学現象に伴う電荷あるいはそれによって生じる出力の増幅を可能としつつ、検出精度の向上および応答の高速化を図ることが可能となる。また、複数点の情報を同時に取り込み、蓄積、転送などを行うことにより、様々な物理現象または化学現象を容易に画像化することができる。
【0026】
また、電荷転送手段の構成や構造を工夫することによって、さらなる高精度化および迅速化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1(A)および(B)は、この発明に係る物理現象または化学現象の測定装置の検出部の基本的な構成を例示し、図2は、それを斜視的に例示している(第1構成例)。
【0028】
図1(A)および(B)または図2において、Bは例えばp型Si(シリコン)よりなる半導体基板で、厚さ500μm程度である。半導体基板Bは例えばシリコン酸化膜(SiO)の絶縁膜1を有し、それを挟むようにして、電荷供給部2、電荷供給調節部3、センシング部4、障壁部5、電荷転送手段6(図1(A)では電荷蓄積部6a、6b、6c、6dと障壁部5a、5b、5c、5dからなる複数の電荷転送手段6Aを、図1(B)では複数の電極6z、6y、6x、6wを有するCCD6Bを例示している)、フローティングディフュージョン7、リセットゲート8、リセットドレイン9、出力トランジスタ10が形成される。そして、電荷供給部2、電荷供給調節部3、センシング部4および障壁部5の各部材によってセンサ部11が形成され、センサ部11、電荷転送手段6、フローティングディフュージョン7、リセットゲート8およびリセットドレイン9によって検出部が形成される。半導体基板Bは、樹脂モールドなどを施すことにより溶液試料などに対して耐性をもたせている。
【0029】
測定に際しては、電荷供給部2、障壁部5、電荷転送手段6およびリセットゲート8にパルス電圧を印加し、他の部位に直流電圧を印加し、p型半導体を用いたMOS構造において、正の電圧を加えることによって、半導体−絶縁膜界面近傍での電位状態を形成することができる。
【0030】
センサ部11は、例えば、次のようにして形成される。
(1)p型Si基板Bを熱酸化し、酸化膜1(SiO2 )を形成する。
(2)その一部分をエッチングし、その部分を選択的に酸化する。その後、その選択的に酸化された部分のSiO2をエッチングし、さらに熱酸化することによりゲート酸化膜を形成する。このゲート酸化膜の膜厚は約500Åである。
(3)その上面の電荷供給調節部3、障壁部5、および電荷転送手段6にそれぞれ対応する部分にリンドープされた低抵抗のポリシリコンを堆積させて電極を形成する。この電極の膜厚は約3000Åで、堆積させた後、約1000Å程度熱酸化する。
(4)その後、再びリンドープされた低抵抗のポリシリコンを堆積し、電荷転送手段6の上面に電極を形成する。この電極の膜厚は前記電極のそれと同程度に堆積させた後、約1000Å程度熱酸化する。このように酸化することにより、電極同士の絶縁が保たれる。
(5)その後、Si3 N4 (Ta2 O3 またはAl2 O3 でもよい)を700Å程度堆積してセンシング部4を形成する。
【0031】
センシング部4は、物理的または化学的な量の大きさに対応して電位が変化する測定部位であり、例えばpH測定の場合には、水溶液や測定対象物などを導入するセルが設けられた電極部を形成し、試料中のpHに対応する電位を発生する。こうした電位あるいは電位の変化を電荷に変換し、検出部における電荷の変化を、MOS構造の出力トランジスタ10によって出力変換される。
【0032】
ここで、電荷供給部2は、1のセンシング部4に対し1つに限定されるものではなく複数配設されていることが可能である。上述のように、測定対象あるいは用途によって、センシング部4の数量、形状あるいは配置関係が一義的に決定されることがあり、センシング部4全体への電荷の供給を迅速に行う必要がある場合において、センシング部4への電荷供給の負荷を複数の電荷供給部2に分散することが好ましい。
【0033】
電荷転送は、種々の方法をとることが可能であるが、図1(A)に例示するような電荷蓄積部6a、6b、6c、6dと障壁部5a、5b、5c、5dからなる複数の電荷転送手段6Aによって構成され各電荷蓄積部の電位差によって電荷を転送する場合や、図1(B)に例示するような複数の電極6z、6y、6x、6wを有するCCD6Bによって構成される場合が挙げられる。各々の機能や動作の詳細は後述する。
【0034】
特に、CCD6Bは、S/N比の高さ、転送速度、転送効率および操作性の点で優れた特性を有しており、複数の電荷転送手段6を直列的に作動させる本発明の場合において非常に有用である。
【0035】
また、CCD電極6zまたは6wが障壁部5の機能を果たすことが可能であり、障壁部5を省略することができ、転送の迅速化が可能である点においても優位である。ただし、微小電荷を扱う場合には、他の部位からの誘導影響を防止しフローティングディフュージョン7の電位を安定化する観点から、障壁部5あるいはこれに代わるゲート(例えばアウトプットゲートなど)を設けることが好ましい。
【0036】
さらに、各電極に印加する電圧に差を設ける必要がないことからセンシング部4とフローティングディフュージョン7間の電位差を制限したり、電極数を制限する必要がない点においても有用である。
【0037】
また、CCD6Bは、センシング部4に蓄積された電荷量に応じて、電荷転送時に、同時に稼動させる電極数を変更することによって、最適条件で電荷を転送することが可能である。つまり、転送する電荷量が多い場合には多数の電極を稼動することによって、電荷の未転送をなくすことができる。さらに、転送する電荷量が少ない場合には1つの電極を稼動することによって、電極部における残留電荷をなくし、測定誤差要因をなくすことができる。
【0038】
また、各電荷転送手段6の電荷転送効率が100%であれば、理論的には電荷転送手段6の段数を限りなく大きくすることができるが、転送効率が100%未満であれば、段数を多くすればするほど信号電荷量が減少してしまう。また、応答速度の面では少ない段数が少ない方が好ましく、増幅率の向上やセンサ部の構造的制限の緩和の面では段数が多い方が好ましい。実質的にはセンサとしての要求仕様にあった段数が選択される。
【0039】
フローティングディフュージョン7は、センシング部4の形状あるいはセンシング部4とフローティングディフュージョン7との電荷容量比などによって設定されるが、図1では、センシング部4との接触部分を大きくするとともに、フローティングディフュージョン7の面積を小さくするために台形形状を形成している。
【0040】
上記のセンサ部11の構成は、半導体デバイスにおいて一般なサーフィス型のチャンネル構造を用いた場合を例示している。サーフィス型のチャンネル構造は、上記のように基板BのSi相と絶縁膜1のSiO相との界面において生じる最も電位の低い部分を利用して電荷の転送を行い、電荷転送手段6としてCCD6Bを用いた場合には、各電極6z、6y、6x、6wへの印加電圧は、一般には0〜−5VをON−OFFする。電荷量を多く処理することができるという優れた特性を有する反面、上記界面において両相の材質の相違があることから、これに基づく不整合部分におけるトラップ準位によって、転送ロスが発生することがある。従って、多段のCCDを用いた場合には、転送ロスが無視できなくなる場合がある。具体的には、CCD6Bの転送効率、転送回数、信号の減少率についての関係を以下の表に示す。
【0041】
【表1】
転送効率が100%未満であれば、CCD6Bの電極数を多くすればするほど信号電荷量が減少してしまうので、実質的にはどこまでCCD6Bの電極数を多くできるかは、CCD6Bの性能に依存する。
【0042】
ここで、本発明に係るセンサ部11においては、バルク型のチャンネル構造を用いることがより好ましい。バルク型は、図3に例示するように、Si−SiO界面のSi相側にn−型拡散層12を設け、チャンネル構造を形成する。n−型拡散層12の中央部付近が最も電位が低くなり、その部分で電荷の転送を行うが、n−型拡散層12はSiの単結晶であり歪がないことから、転送ロスが非常に少ない点に大きなメリットがある。CCD電極6z、6y、6x、6wへの印加電圧は、一般には0〜−10VをON−OFFする。また、n−型拡散層12は、上記酸化膜1の形成後に基板Bの表層部にリンや砒素(As)などのイオン注入を行うことによって形成することができる。特にAsは熱拡散係数が小さいことから、サブミクロンオーダーの微細加工を必要とするデバイスなどに対して有用である。
【0043】
上記のような測定装置における測定方法について、電位図を参照しながら説明する。図1(A)に示す電荷蓄積部6a、6b、6c、6dと障壁部5a、5b、5c、5dからなる複数の電荷転送手段6Aを用いた場合を図4(A)(B)に示し、図1(B)に示す複数の電極6z、6y、6x、6wを有するCCD6Bを用いた場合を図5に示す。
【0044】
図4(A)(B)で用いる電荷転送手段の特徴は、段階的に電位を上げた複数の電荷蓄積部6a、6b、6c、6dを有する電荷転送手段6Aを形成することで、順に電荷の転送を容易にした点にある。基本的には、各電荷蓄積部6a、6b、6c、6dを順番に使用する方法が採られるが、センシング部4に蓄積された電荷量が多い場合には、複数の電荷蓄積部を同時に使用することも可能である。
【0045】
図4(A)においては、以下の順に移動する電荷を検出することによって、センシング部における電位の変化を検出し、それに対応する物理的または化学的な量を測定することができる。
(1)初期電位状態
当初は、電荷供給部2の電位は高く(矢印方向が高い)設定されており、センシング部4には電荷は供給されていない。
(2)電荷の供給
電荷供給部2の電位を下げることによって、センシング部4に電荷を供給する。
(3)電荷の蓄積
電荷供給部2の電位を上げることによって、供給された電荷の一部がオーバーフローし電荷供給調節部3によって制限された量の電荷がセンシング部4に蓄積される。
(4)電荷の転送1
障壁部5の電位を上げることによって、センシング部4に蓄積された電荷を電荷転送手段6aに転送する。
(5)電荷の転送2
障壁部5aの電位を上げることによって、電荷転送手段6aに蓄積された電荷を電荷転送手段6bに転送する。
(6)電荷の転送3
障壁部5bの電位を上げることによって、電荷転送手段6bに蓄積された電荷を電荷転送手段6cに転送する。
(7)電荷の転送4
障壁部5cの電位を上げることによって、電荷転送手段6cに蓄積された電荷を電荷転送手段6dに転送する。
(8)電荷の転送5
障壁部5dの電位を上げることによって、電荷転送手段6dに蓄積された電荷をフローティングディフュージョン7に転送する。
(9)電荷の測定
センシング部4の電荷が全てフローティングディフュージョン7に転送されてから障壁部5dの電位を下げて閉じ、電荷の流入を止める。この段階で、フローティングディフュージョン7の電位は転送されてきた電荷の量で決まるので、この電位をMOS構造の出力トランジスタ10のゲート部に入力し、この出力トランジスタ10のドレイン電流を測定する。
(10)リセット
フローティングディフュージョン7の電位を読み取った後、リセットゲート8をオンにしてリセットドレイン9から電荷を供出し、フローティングディフュージョン7の電位をリセットドレイン9の電位にリセットする。
(11)検出サイクル
上記のリセットにより、再び(1)と同じ状態に戻ることになる。つまり、検出サイクルとは、このように、(1)〜(10)の動作を繰り返すことをいい、これによって、センシング部4での電位の状態に対応した電荷量を順次出力することができる。
【0046】
なお、図4(A)では、電荷供給部2の電位を上げ下げしてセンシング部4に蓄積された電荷をすりきるようにしているが、これに代えて、図4(B)に示すように、電荷供給部2の電位を一定に保持し、電荷供給調節部3の高さを上げ下げしてセンシング部4に電荷を蓄積するようにしてもよい。つまり、以下の操作によって、安定的に前記物理的または化学的な量をこのセンシング部の大きさに応じた電荷に変換することができる。
(1)初期電位状態
当初は、電荷供給部2の電位は低く、電荷供給調節部3の電位はそれ以下に設定されており、センシング部4には電荷は供給されていない。
(2)電荷の供給
電荷供給調節部3の電位を、電荷供給部2の電位以上に上げることによって、センシング部4に電荷を供給する。
(3)電荷の蓄積
電荷供給調節部3の電位を(1)の状態にまで下げることによって、供給された電荷がセンシング部4に蓄積される。
(4−1〜5)電荷の転送1〜5
上記と同様、障壁部5a〜5dの電位を上げることによって、センシング部4に蓄積された電荷を、電荷転送手段6a〜6dを介してフローティングディフュージョン7に転送する。
(5)電荷の測定
センシング部4の電荷が全てフローティングディフュージョン7に転送されてから障壁部5dの電位を下げて閉じ、電荷の流入を止める。この段階で、フローティングディフュージョン7の電位は転送されてきた電荷の量で決まるので、この電位をMOS構造の出力トランジスタ10のゲート部に入力し、この出力トランジスタ10のドレイン電流を測定する。
(6)リセット
フローティングディフュージョン7の電位を読み取った後、リセットゲート8をオンにしてリセットドレイン9から電荷を供出し、フローティングディフュージョン7の電位をリセットドレイン9の電位にリセットする。
(7)検出サイクル
上記のリセットにより、再び(1)と同じ状態に戻ることになる。つまり、検出サイクルとは、このように、(1)〜(6)の動作を繰り返すことをいい、これによって、センシング部4での電位の状態に対応した電荷量を順次出力することができる。図4(A)の方法の利点とともに、電荷供給部2の電位を基準とすることで一定電位を保持することが可能となり、さらに安定性の向上を図ることができる。
【0047】
図5に例示するように、電荷転送手段6として、電極6z、6y、6x、6wを有するCCD6Bを用い、以下の順に移動する電荷を検出することによって、センシング部における電位の変化を検出し、それに対応する物理的または化学的な量を測定することができる。ここでは、図4(A)と同様、電荷供給部2の電位を上げ下げしてセンシング部4に蓄積された電荷をすりきる方法を基に説明するが、これに代えて、図4(B)に示すように、電荷供給部2の電位を一定に保持し、電荷供給調節部3の高さを上げ下げしてセンシング部4に電荷を蓄積する方法を適用することも可能である。また、基本的には、電極6z、6y、6x、6wを順番に使用する方法が採られるが、センシング部4に蓄積された電荷量が多い場合には、複数の電極を同時に使用することも可能である。
(1)初期電位状態
当初は、電荷供給部2の電位は高く(矢印方向が高い)設定されており、センシング部4には電荷は供給されていない。
(2)電荷の供給
電荷供給部2の電位を下げることによって、センシング部4に電荷を供給する。
(3)電荷の蓄積
電荷供給部2の電位を上げることによって、供給された電荷の一部がオーバーフローし電荷供給調節部3によって制限された量の電荷がセンシング部4に蓄積される。
(4)電荷の転送1
CCD電極6zの電位を上げることによって、センシング部4に蓄積された電荷をCCD電極6zに転送する。センシング部4に蓄積された電荷量が多い場合には、電極6zおよび6y、あるいは電極6z、6yおよび6xを上げることによって、相当する電荷の転送が可能となる。図5では、2つの電極を用いて転送する場合を例示し、電極6zおよび6yに転送している。
(5)電荷の転送2
CCD電極6xの電位を上げることによって、電極6zおよび6yに蓄積された電荷が電極6xにも転送される。
(6)電荷の転送3
CCD電極6xの電位を下げることによって、電極6z、6yおよび6xに蓄積された電荷が電極6yおよび6xに転送される。つまり、(4)において電極6zおよび6yに蓄積された電荷が、電極6yおよび6xに転送された状態となる。
(7)電荷の転送2
CCD電極6wの電位を上げることによって、電極6yおよび6xに蓄積された電荷が電極6wにも転送される。
(8)電荷の転送3
CCD電極6yの電位を下げることによって、電極6y、6xおよび6wに蓄積された電荷が電極6xおよび6wに転送される。つまり、(6)において電極6yおよび6xに蓄積された電荷が、電極6xおよび6wに転送された状態となる。
(9)電荷の転送5
障壁部5の電位を上げ、CCD電極6xおよび6wの電位を下げることによって、電極6xおよび6wに蓄積された電荷をフローティングディフュージョン7に転送する。
(10)電荷の測定
センシング部4の電荷が全てフローティングディフュージョン7に転送されてから障壁部5の電位を下げて閉じ、電荷の流入を止める。この段階で、フローティングディフュージョン7の電位は転送されてきた電荷の量で決まるので、この電位をMOS構造の出力トランジスタ10のゲート部に入力し、この出力トランジスタ10のドレイン電流を測定する。
(11)リセット
フローティングディフュージョン7の電位を読み取った後、リセットゲート8をオンにしてリセットドレイン9から電荷を供出し、フローティングディフュージョン7の電位をリセットドレイン9の電位にリセットする。
(12)検出サイクル
上記のリセットにより、再び(1)と同じ状態に戻ることになる。つまり、検出サイクルとは、このように、(1)〜(11)の動作を繰り返すことをいい、これによって、センシング部4での電位の状態に対応した電荷量を順次出力することができる。
【0048】
以上のように、この測定装置においては、物理的または化学的な量の大きさに対応して電位を変化するように構成されたセンシング部4を半導体基板Bに形成し、このセンシング部4に電荷を供給して、前記物理的または化学的な量をこのセンシング部の大きさに応じた電荷に変換するようにした電荷変換機構を用いている。
【0049】
このとき、センシング部4の電荷容量がフローティングディフュージョン7の電荷容量を超える大きさを有することが好ましい。例えば、上記の図4(A)の検出サイクルの(1)〜(10)を繰り返し、フローティングディフュージョン7にある程度の電荷量が蓄積されてから電荷を測定するようにすることで、検出感度を上げることが可能であるが、その蓄積時間分だけ応答時間が遅くなる。本発明では、センシング部4の電荷容量を大きくし蓄積される電荷を多くすることで、小電荷容量のフローティングディフュージョン7に転送された時のフローティングディフュージョン7での電位の変化率を上昇させることができることから、その変化率を検出することで、正確かつ感度の高い測定が可能となる。つまり、センシング部4と電荷転送手段であるフローティングディフュージョン7の間に電荷容量差を設けることによって、センシング部4のおける電位の変化の実質的に増幅機能を有することとなる。
【0050】
具体的にセンシング部4の電荷容量を大きくするには、(1)平面上での面積を大きくする、(2)センシング部4を複数にする、(3)電位を高くする、(4)電荷密度を上げる、などの手段があり、物理的または化学的な現象の対象となる試料の性状や濃度などによって選択することが可能である。なお、センシング部4の形状についても、同様の選択が可能である。
【0051】
図6は、本発明における第2構成例を示す。センシング部4、電荷転送手段6、フローティングディフュージョン7の順に接触部分の長さを短くしていくことによって、センシング部4とフローティングディフュージョン7の面積比を大きくしている。検出感度に対応したセンシング部4の面積を任意に設定するとともに、電荷転送手段6を数あるいは径方向の距離を調整することによって、動作速度あるいは転送速度を設定することができることから、汎用性も高い。特に、電位あるいは電荷密度を上げる場合には測定対象によってはセンシング部4の絶縁性を考慮する必要があるが、こうした構成では電荷転送手段6との接触部分の長さを長くすることによって面積を拡大し、電荷転送手段6の数を増やすことで対応できる点優位である。長い線上で接する構成によって、素早くセンシング部4の電荷を移動することができる点において、測定の迅速化の要請に対応することができることからも優れている。つまり、電荷がセンシング部4および電荷転送手段6を通過する空間距離を短くし、実質的に電荷がセンシング部4および電荷転送手段6を通過する時間を短縮することができ、電荷による検出サイクルを上げることができるために応答が速い検出が可能となる。ここで、電荷転送手段6としては、CCDによって構成される場合を例示しているが、これに限定されるものではない。
【0052】
なお、1のセンシング部4に対して複数の電荷供給部2を配設することも可能である(図示せず)。センシング部4の面積拡大に伴い、1の電荷供給部2からの供給ではセンシング部4全体に電荷が行き渡るのに所定の時間を必要とし迅速な対応が難しい場合がある。こうした場合に、センシング部4への電荷供給の負荷を複数の電荷供給部2に分散することで、センシング部4への供給を容易にし、センシング部4での電荷の迅速な蓄積が可能となる。
【0053】
図7(A)、(B)および(C)は、本発明における第3構成例を示す。センシング部4の面積を大きくするためにフローティングディフュージョン7に対し周回状に配設され、センシング部4の電荷容量を大きくしている。同時に、電荷転送手段6もセンシング部4と同心円状に接しながらフローティングディフュージョン7に対し周回状に配設されている。ここで、電荷転送手段6としては、CCDによって構成される場合を例示しているが、これに限定されるものではない。
【0054】
図7(A)の径方向の距離dを調整することによって、センシング部4の面積を任意に設定することができることから、汎用性も高い。また、電位あるいは電荷密度を上げる場合には測定対象によってはセンシング部4の絶縁性を考慮する必要があるが、こうした構成では面積を拡大することで対応できる点優位である。さらに、センシング部4とフローティングディフュージョン7との間に電荷転送手段6を介在させることによって、両者の面積比を大きくすることが可能となり、電荷転送手段6を数あるいは径方向の距離を調整することによって、任意の面積比つまり増幅度を設定することができる。
【0055】
また、センシング部4と電荷転送手段6と長い線上で接しながら、電荷転送手段6が順次接線の距離を短くする構成によって、電荷がセンシング部を通過する空間距離dを短くし、実質的に電荷がセンシング部を通過する時間を短縮することができ、電荷による検出サイクルを上げることができるために応答が速い検出が可能となる。
【0056】
ここで、センシング部4および電荷転送手段6が、図7(B)に示すような半周回状に配設されている場合も含まれる。電荷転送手段6として多数の電極を有する場合などにおいて、配線や出力トランジスタ10等の配設が容易になり、また、各手段の相互影響などを防止することができる。
【0057】
なお、図7(C)に例示するように、1のセンシング部4に対して複数の電荷供給部2a,2b,2cを配設する構成することも好適である。センシング部4の面積拡大に伴い、1の電荷供給部2からの供給ではセンシング部4全体に電荷が行き渡るのに所定の時間を必要とし迅速な対応が難しい場合がある。こうした場合に、センシング部4への電荷供給の負荷を複数の電荷供給部2a,2b,2cに分散することで、センシング部4への供給を容易にし、センシング部4での電荷の迅速な蓄積が可能となる。また、各電荷供給部2a,2b,2cの電荷供給量を個別に調整しセンシング部4の形状などに適した電荷の供給が可能となる。さらに、電荷供給調整部3を各電荷供給部2a,2b,2cごとに別々に設け電荷供給量を個別に調整することも可能となる。なお、ここでは、複数を3つとして説明しているが、2以上いくつでも可能であることはいうまでもない。以下同様である。
【0058】
図8は、本発明における第4構成例を示す。1つのフローティングディフュージョン7に対し、電荷転送手段6を介して複数のセンシング部4a,4b,4cを周回状に設けており、全体としてセンシング部の面積を大きくし電荷容量を大きくしている。第3構成例と同様、センシング部面積の任意設定、フローティングディフュージョン7との周回接触、電荷の通過時間の短縮化の機能を有し、検出感度の向上および測定の迅速化の要請に対応し、かつ汎用性の高い検出手段とすることができる。
【0059】
加えて、本発明では、各センシング部4a,4b,4cが独立性を有することで、さらに、従来とは異なる使用方法が可能となる。具体的には、例えば、各センシング部4a,4b,4cの表面を適当な応答物質で修飾することにより選択性のあるイオン電極を形成し、同一試料について複数のイオン(例えば、pH、Ca、Na、K、あるいは塩素など)の濃度測定を行うことや、温度、磁気、圧力検出機能を形成し同一試料についての各項目の検出を同時に行うこと、など異なった物理現象または化学現象の同時測定が可能となる。また、同一機能を有するセンシング部4a,4b,4cを設け、異なる試料を同時に測定することで、複数試料の同一項目の測定を同時に行うことができる。
【0060】
さらに、1つのフローティングディフュージョンに対し電荷転送手段を介して複数のセンサ部からの電荷を順次移動させる構成によって、物理的または化学的な現象の一次元分布または二次元分布を容易に画像化することができる。具体的には、図9に例示するような第5構成例が可能である。つまり、複数のセンサ部11(a,a)、11(a,b)、・・・と、各センサ部において変換された電荷を矢印方向に転送する電荷転送手段6と、転送されてきた電荷をさらに転送する1つのフローティングディフュージョン7と、転送されてきた電荷を出力信号に変換する出力トランジスタ10とからなる。電荷転送手段6としては、複数のセンサ部からの電荷を順次フローティングディフュージョン7に転送すると同時に位置情報を含めた処理を必要とすることからCCDが好ましい。
【0061】
センサ部11(a,a)、11(a,b)、・・・を一次元的あるいは二次元的に配置してアレイ化することにより、複数点の情報を同時に取り込み、電荷転送部6および出力トランジスタ10によって、複数点の信号を秩序よく処理することができる。出力された信号は、そのままCRTなどの画像出力装置(図示せず)に入力して画像出力したり、出力信号をAD変換してコンピュータに入力することができる。
【0062】
つまり、各センサ部11(a,a)、11(a,b)、・・・と電荷転送部6との接合部におけるゲートを順次開として蓄積された電荷を供出し、CCD駆動電位を順にON−OFFすることによって電荷転送部6の転送路を経由して転送される。このとき、電荷転送部6におけるCCDの駆動は、1相駆動、2相駆動あるいは4相駆動など、転送される電荷量に応じて適宜選定することができる。なお、上記のようにセンサ部11の数が多くなるに伴って転送効率が大きな問題となるが、その場合は、転送経路として転送効率の高いバルクチャンネルを用いるのが好ましい。転送されてきた電位は、フローティングディフュージョン7に転送され、このフローティングディフュージョン7の電位を変化させる。この電位の変化を、出力トランジスタ10のゲートに入力し、検出出力とする。
【0063】
本発明における第6の構成例を図10に例示する。出力トランジスタ10の出力側にフィードバック回路13(制御部)を設け、出力トランジスタ10の出力が一定になるように電荷供給調整部3の電位を制御し、その制御量を測定値に変換する場合を表している。
【0064】
つまり、物理現象または化学現象を電荷情報に変換して定量化を行う場合においては、センシング部4あるいはフローティングディフュージョン7に残留する電荷の影響が無視できないことがある。具体的には、センシング部4からフローティングディフュージョン7までの電荷移動距離が長い場合あるいは検出サイクルの時間が短い場合では、電荷の移動が追いつかず電荷の一部がセンシング部4に残留することがある。このとき微小な電荷の移動を追跡する高感度測定においては、直線性、特にゼロ付近での直線性が悪くなることがある。そこで、本発明では、こうしたセンシング部4への電荷の残留を防止する、あるいは電荷の残留があっても検出特性に影響しないような電荷移動量に設定して、電荷移動量を一定にするように電荷供給調整部3の電位を調整するものである。
【0065】
すなわち、電荷供給調整部3とセンシング部4との電位差を一定にすれば、センシング部4に供給される電荷供給量を一定にすることができ、電荷移動量が一定となる。このとき、電荷移動量を所定範囲にすれば、上記の電荷の残留の影響は無視することができる。つまり、時間的にみれば、所定量を超える場合、転送パワーが落ちることから電荷の残留する(転送ロスの)確率が増加する。一方、実際の転送時に一定量の転送ロスが生じるとすれば、所定量よりも少ない場合には、その影響を無視することができない。
【0066】
また、センシング部4からフローティングディフュージョン7に移動する電荷量が一定となり、その結果フローティングディフュージョン7の電位が一定となる。つまり、フローティングディフュージョン7に設けられた出力トランジスタ10の出力が一定となるように、物理現象または化学現象に伴うセンシング部4の電位の変化に対応して、電荷供給調整部3の電位を調整した場合、その調整量が物理現象または化学現象の変化に対応する測定量とすることができ、直線性を有する優れた検出特性を得ることができる。
【0067】
また、センサ部11における電荷移動量を一定とすることで、センサ部11の変動要素を少なくし機能の安定化を図ることができる。
【0068】
さらに、センシング部4の特性にバラツキがあっても、同一試料についてのセンシング部4と電荷供給調整部3の電位差を一定にするように調節された電荷供給調整部3の電位を基準に、上記動作を行うことができる。従って、センシング部4の特性を厳格に規制することなく、同等の出力特性を得ることができる。
【0069】
上記では、各請求項に係る発明によって形成される機能を、一部組合せた構成例を挙げて説明したが、むろん、本発明はこれに限定されるものではなく、他の組合せ、あるいは本願に記載の事項との任意の組合せが可能であることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0070】
以上、この発明は、広く溶液などサンプルのイオン濃度の二次元分布測定に好適に用いることができるほか、以下のような分野にも適用することができる。
(1)化学顕微鏡としての応用分野・化学;イオン濃度計測・電気化学的分野、ガス分布計測分野・滴定の二次元的動的観察および解析
(2)環境計測・環境;バイオリメディエーションへの適用
(3)食品検査・食品、微生物
(4)ME分野・医学・生態組織;組織細胞の表面イオン濃度計測、細胞表面電位計測、DNA計測
(5)バイオ分野
(6)動植物分野・植物;カルスの表面電位分布計測・生物・正面図動物
(7)腐蝕計測分野・金属;金属腐蝕と塗装・コーティング
(8)ゼータ電位等表面解析・粉体、セラミックスのゼータ電位。
【0071】
また、測定対象(サンプル)は、気体、液体、固体、粉体のいずれであってもよく、センサ部の特定感応層により選択的に反応する化学センシングと、物理的接触による界面現象に電荷変動をするあらゆる現象に適用でき、例えば液の流れや一瞬の化学反応の過渡現象の分布を高感度、高画質の化学画像として得ることができる。さらに、滴定現象のリアルタイム画像化から画像ソフトによる他の種類の解析、表示にも有用であり、携帯化カメラにも有効である。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1A】本発明に係る測定装置検出部の基本的な構造(第1構成例の1)を示す説明図。
【図1B】本発明に係る測定装置検出部の基本的な構造(第1構成例の2)を示す説明図。
【図2】本発明に係る測定装置検出部の要部を概略的に例示する説明図。
【図3】本発明に係る測定装置検出部のセンサ部の他の構造を例示する説明図。
【図4】本発明の測定方法に係る電位の変化を示す説明図。
【図5】本発明の他の測定方法に係る電位の変化を例示する説明図。
【図6】本発明に係る第2の構成例を示す説明図。
【図7A】本発明に係る第3の構成例の1を示す説明図。
【図7B】本発明に係る第3の構成例の2および3を示す説明図。
【図8】本発明に係る第4の構成例を示す説明図。
【図9】本発明に係る第5の構成例を示す説明図。
【図10】本発明に係る第6の構成例を示す説明図。
【符号の説明】
【0073】
1 絶縁膜
2 電荷供給部
3 電荷供給調整部
4 センシング部
5、5a、5b、5c、5d 障壁部
6、6A 電荷転送手段
6B CCD
6a、6b、6c、6d 電荷蓄積部
6z、6y、6x、6w CCD電極
7 フローティングディフュージョン
8 リセットゲート
9 リセットドレイン
10 出力トランジスタ
11 センサ部
12 n−型拡散層
13 フィードバック回路
B 半導体基板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物理的または化学的な量の大きさに対応して電位が変化するセンシング部に対して電荷供給部から電荷を供給し、供給された電荷をセンシング部からフローティングディフュージョンを介して取出し、供給された電荷量を検出することによって該物理現象または化学現象を測定する方法であって、前記センシング部からフローティングディフュージョンへの電荷転送を、複数の電荷転送手段を介して直列的に行うことを特徴とする物理現象または化学現象の測定方法。
【請求項2】
前記センシング部の電荷容量をフローティングディフュージョンの電荷容量を超える大きさにするとともに、センシング部から複数の電荷転送手段を介してフローティングディフュージョンへの電荷転送に際し、各部位の電荷容量を徐々に小さくすることを特徴とする請求項1記載の物理現象または化学現象の測定方法。
【請求項3】
電荷をセンシング部に供給する電荷供給部、物理的または化学的な量の大きさに対応して電位が変化するセンシング部、該センシング部に供給された電荷を取出すフローティングディフュージョンからなる検出部を有する測定装置であって、前記センシング部とフローティングディフュージョンの間に複数の電荷転送手段を直列的に配することを特徴とする物理現象または化学現象の測定装置。
【請求項4】
前記電荷転送手段がn個の手段から構成され、センシング部よりも電荷容量の少ない第1電荷転送手段、第(n−1)電荷転送手段よりも電荷容量の少ない第n電荷転送手段、第n電荷転送手段よりも電荷容量の少ないフローティングディフュージョンから構成されることを特徴とする請求項3記載の物理現象または化学現象の測定装置。
【請求項5】
前記センシング部および電荷転送手段が、1のフローティングディフュージョンに対し周回状に配設されていることを特徴とする請求項3または4記載の物理現象または化学現象の測定装置。
【請求項6】
前記電荷転送手段が、電荷結合素子であることを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の物理現象または化学現象の測定装置。
【請求項7】
前記電荷結合素子が、バルク型のチャンネル構造によって形成されることを特徴とする請求項3〜6いずれかに記載の物理現象または化学現象の測定装置。
【請求項1】
物理的または化学的な量の大きさに対応して電位が変化するセンシング部に対して電荷供給部から電荷を供給し、供給された電荷をセンシング部からフローティングディフュージョンを介して取出し、供給された電荷量を検出することによって該物理現象または化学現象を測定する方法であって、前記センシング部からフローティングディフュージョンへの電荷転送を、複数の電荷転送手段を介して直列的に行うことを特徴とする物理現象または化学現象の測定方法。
【請求項2】
前記センシング部の電荷容量をフローティングディフュージョンの電荷容量を超える大きさにするとともに、センシング部から複数の電荷転送手段を介してフローティングディフュージョンへの電荷転送に際し、各部位の電荷容量を徐々に小さくすることを特徴とする請求項1記載の物理現象または化学現象の測定方法。
【請求項3】
電荷をセンシング部に供給する電荷供給部、物理的または化学的な量の大きさに対応して電位が変化するセンシング部、該センシング部に供給された電荷を取出すフローティングディフュージョンからなる検出部を有する測定装置であって、前記センシング部とフローティングディフュージョンの間に複数の電荷転送手段を直列的に配することを特徴とする物理現象または化学現象の測定装置。
【請求項4】
前記電荷転送手段がn個の手段から構成され、センシング部よりも電荷容量の少ない第1電荷転送手段、第(n−1)電荷転送手段よりも電荷容量の少ない第n電荷転送手段、第n電荷転送手段よりも電荷容量の少ないフローティングディフュージョンから構成されることを特徴とする請求項3記載の物理現象または化学現象の測定装置。
【請求項5】
前記センシング部および電荷転送手段が、1のフローティングディフュージョンに対し周回状に配設されていることを特徴とする請求項3または4記載の物理現象または化学現象の測定装置。
【請求項6】
前記電荷転送手段が、電荷結合素子であることを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の物理現象または化学現象の測定装置。
【請求項7】
前記電荷結合素子が、バルク型のチャンネル構造によって形成されることを特徴とする請求項3〜6いずれかに記載の物理現象または化学現象の測定装置。
【図1A】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2006−162567(P2006−162567A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−358729(P2004−358729)
【出願日】平成16年12月10日(2004.12.10)
【出願人】(000155023)株式会社堀場製作所 (638)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年12月10日(2004.12.10)
【出願人】(000155023)株式会社堀場製作所 (638)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]