説明

物理量検出器及びその製造方法

【課題】リフロー等の高温処理による圧力検出値のドリフトが生じるのを低減する物理量検出器及びその製造方法を提供する。
【解決手段】圧力センサー1のダイアフラム層20の支持枠部206と固定部とは第1接合材40を用いて接合され、感圧素子層10の一対の基部16bと一対の支持部210とは、第1接合材40の融点よりも高い融点を有する第2接合材50を用いて接合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物理量検出器及びその製造方法に関し、特に、耐リフロー特性に優れた物理量検出器及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、力検出素子として使用する圧電振動子と、圧力(気体や液体の圧力、等)を受圧し、或いは外力により押圧されて撓むダイアフラムとを備えたダイアフラム式の圧力センサー等の物理量検出器が存在する。例えば、特許文献1乃至4に開示されているダイアフラム式の圧力センサーは、ダイアフラム層と、ベース層(蓋部)と、中間層としての感圧素子層とから構成されている。感圧素子層の中央部には双音叉振動子等で構成される感圧素子が配置される。ダイアフラム層には感圧素子の感圧部(振動部)の両端に配置された一対の基部を固定するための一対の支持部が設けられており、当該一対の支持部により前記一対の基部が接着剤等の接合部材により固定されて支持されている。このダイアフラム式の圧力センサーは、被検出圧力を受圧したダイアフラム層が撓み変位すると、その変位がダイアフラム層を介して力に変換されて、物理量検出素子である感圧素子に伝わると、伝達された力により内部に生じた内部応力(引張り応力や圧縮応力)によって前記感圧素子の共振周波数が変化し、この共振周波数の変動を測定して前記被検出圧力を検出する。
【0003】
圧力センサーを製造する場合、まずダイアフラム層と感圧素子層とを接合し、その後感圧素子層とベース層とを接合する。特許文献1には、接着剤を使用して接合する技術が示されている。
【0004】
ここで、接合に用いる接合材とダイアフラム層、感圧素子層、ベース層との熱膨張係数が異なる場合には、温度変化による熱歪みが生じ、当該熱歪みに起因して前記内部応力が変化する。この内部応力の変化により感圧素子の共振周波数が変動し、被測定圧力の検出精度が低下してしまうという問題が生じることとなる。
【0005】
このような熱歪みによる圧力検出の精度低下を防ぐために、特許文献2乃至4には、ダイアフラム層、ベース層、感圧素子層それぞれを水晶基板で形成した場合、接合材の熱膨張係数を水晶の熱膨張係数とほぼ等しくすることが提案されている。
【0006】
ダイアフラム層、感圧素子層及びベース層の熱膨張係数と、接合材の熱膨張係数とをほぼ等しくしておけば、曝露される圧力センサーの環境雰囲気の温度が変化しそれに伴って各部材の膨張や収縮が生じたとしても、接合材も同じ割合(膨張率)で膨張や収縮をすることとなるので、熱歪に起因した内部応力は発生せず、結果として圧力検出精度の劣化は発生しないこととなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−275445号公報
【特許文献2】特開2010−117342号公報
【特許文献3】特開2010−164500号公報
【特許文献4】特開2010−164362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、接合材の熱膨張係数を圧力センサーの各部材の熱膨張係数とほぼ等しくした場合、以下のような問題が生じる。
圧力センサーの各部材を水晶としたとき、水晶は結晶材料なので熱膨張係数が約14(ppm/K)と、接合材に用いられる一般的なPbO(酸化鉛)系低融点ガラスに比べて大きい。PbO系低融点ガラスは、金属酸化物等のフィラーを混合することで、熱膨張係数を大きくし水晶の熱膨張係数に合わせることができるが、融点が低下する。このように熱膨張係数を水晶に合わせることで融点が低下した低融点ガラスを用いて圧力センサーの各部材を接合した後、当該圧力センサーをリフロー等の高温処理により回路基板等の実装基板に実装すると、前記感圧素子の前記一対の基部と前記ダイアフラム層とを接合している低融点ガラスが再溶融してしまう。この再溶融によって、前記感圧素子の前記一対の基部と前記ダイアフラムの前記一対の支持部との固定点にズレが生じ、当該ズレが生じた状態で前記低融点ガラスが再硬化してしまうこととなる。故に、環境雰囲気の温度が変化しそれに伴って各部材の膨張や収縮が生じたときに生じる熱歪の度合い(程度)が、前記再溶融する前の熱歪と比較して差が生じることとなり、この熱歪の差に起因して感圧素子に生じる内部応力に変化が生じてしまうので、検出すべき圧力値にドリフト等の変動が生じる原因となってしまうという問題があった。
【0009】
そこで、本発明は上記課題を解決するためになされたものであって、リフロー等の高温処理により圧力検出値のドリフトが生じるのを低減する物理量検出器及びその製造方法を提供することを目的とする。
また、温度変化による感圧素子の熱歪に起因した内部応力の変動を防ぎ、高精度な圧力検出を実現可能な物理量検出器及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
また、リフロー等の高温処理による接合材の再溶融と熱膨張係数との影響の度合いを考慮して、より精度の高い圧力検出を可能とする物理量検出器及びその製造方法を提供することを目的とする。
また、各部材を接合材により良好に接合することができる物理量検出器の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
[適用例1]一対の基部と前記一対の基部の間に配置されている感圧部とを含む感圧素子と、前記一対の基部が第2接合材を介して接合されている一対の支持部を備えている可撓部と、前記可撓部の周縁を支持する支持枠部と、を含むダイアフラムと、前記支持枠部が第1接合材を介して固定されている固定部と、を備え、前記第2接合材の融点は、前記第1接合材の融点よりも高いことを特徴とする物理量検出器。
【0012】
本発明によれば、ダイアフラムの支持枠部と固定部とは第1接合材を用いて接合され、ダイアフラムの一対の支持部と感圧素子の一対の基部とは第2接合材を用いて接合され、第2接合材の融点は第1接合材の融点よりも高いため、製造後の物理量検出器に対してリフロー等の高温処理を行う際に、第2接合材の再溶融を低減することができ、第2接合材の再溶融による感圧素子の熱歪に起因した内部応力の変動を低減し、検出値のドリフトが生じるのを低減することができる。
【0013】
[適用例2]前記第1接合材の熱膨張係数と、前記第1接合材により接合される部分の熱膨張係数とは、ほぼ等しいことを特徴とする適用例1に記載の物理量検出器。
第1接合材により接合される部分は、第1接合材の再溶融による圧力検出値のドリフトの影響よりも、第1接合材と該第1接合材により接合される部分との熱膨張係数のズレによる圧力検出値のドリフトの影響が大きいので、上記構成とすることで、温度変化による検出値のドリフトをより小さくすることができ、検出値の精度を向上させることができる。
【0014】
[適用例3]前記第1接合材と該第1接合材により接合される部分との熱膨張係数の差の絶対値は、前記第2接合材と該第2接合材により接合される部分との熱膨張係数の差の絶対値よりも小さいことを特徴とする適用例1又は2に記載の物理量検出器。
本発明によれば、第1接合材の熱膨張係数を、第1接合材により接合される部分の熱膨張係数に、より近づけることができるため、温度変化による検出値のドリフトをより小さくすることができ、検出値の精度を向上させることができる。
【0015】
[適用例4]前記固定部の機能を備えているベースを含み、前記感圧素子を覆うように前記ベースと前記ダイアフラムが積層されていることを特徴とする適用例1乃至3のうちいずれか1例に記載の物理量検出器。
本発明によれば、前記物理量検出器が前記固定部の機能を備えているベースを含み、前記感圧素子を覆うように前記ベースと前記ダイアフラムが積層されている3層構造の場合にも、感圧素子の熱歪に起因した内部応力の変動を低減して、検出値のドリフトが生じるのを低減し、検出値の精度を向上させることができる。
【0016】
[適用例5]前記感圧素子を囲む枠部と、当該枠部と前記感圧素子とを連結する接続部と、を含み、前記枠部が前記固定部の機能を備えていることを特徴とする適用例1乃至3のうちいずれか1例に記載の物理量検出器。
本発明によれば、前記物理量検出器が前記感圧素子を囲む枠部と、当該枠部と前記感圧素子とを連結する接続部と、を含み、前記枠部が前記固定部の機能を備えている場合にも、感圧素子の熱歪に起因した内部応力の変動を低減して、検出値のドリフトが生じるのを低減し、検出値の精度を向上させることができる。
【0017】
[適用例6]前記感圧素子を覆うように前記ダイアフラムと前記枠部とベースとが積層され、前記枠部は、当該枠部に対向する前記ベースの接合部に前記第1接合材を用いて接合されていることを特徴とする適用例5に記載の物理量検出器。
本発明によれば、前記感圧素子を覆うように前記ダイアフラムと前記枠部とベースとが積層されている3層構造の場合にも、感圧素子の熱歪に起因した内部応力の変動を低減して、検出値のドリフトが生じるのを低減し、検出値の精度を向上させることができる。
【0018】
[適用例7]前記第1接合材により接合される部分は水晶であり、前記第1接合材の熱膨張係数は前記第2接合材の熱膨張係数よりも大きいことを特徴とする適用例1乃至6のうちいずれか1例に記載の物理量検出器。
水晶の熱膨張係数は比較的大きいため、第1接合材の熱膨張係数を第2接合材よりも大きくすることで第1接合材と該第1接合材で接合される部分との熱膨張係数の差を小さくすることができ、また、第2接合材の融点を第1接合材の融点よりも高くすることで、基板への実装時に加熱を行う際に第2接合材の再溶融を低減することができるため、全体として検出値のドリフトを抑え、検出値の精度を向上させることができる。
【0019】
[適用例8]前記第2接合材はガラス材であることを特徴とする適用例1乃至7のうちいずれか1例に記載の物理量検出器。
本発明によれば、第2接合材としてガラス材を用いることで、第2接合材の融点を、基板への実装時に加熱を行う際の温度よりも高くすることができる。
【0020】
[適用例9]前記ガラス材は、金属微粒子を含有していることを特徴とする適用例8に記載の物理量検出器。
本発明によれば、ガラス材に含有させる金属微粒子の量を調整することで、融点と熱膨張係数とを調整することができる。
【0021】
[適用例10]適用例1乃至9のうちいずれか1例に記載の物理量検出器の製造方法であって、前記第2接合材の融点は、前記物理量検出器が基板へ実装されるときの加熱温度よりも高いことを特徴とする物理量検出器の製造方法。
本発明によれば、物理量検出器の基板への実装時に加熱を行う際に、第2接合材の再溶融を防止することができ、第2接合材の再溶融による感圧素子の熱歪に起因した内部応力の変動を抑圧し、検出値のドリフトを防止し、高精度な物理量の検出が実現可能となる。
【0022】
[適用例11]一対の基部と前記一対の基部の間に配置されている感圧部とを含む感圧素子と、前記一対の基部が第2接合材を介して接合されている一対の支持部を備えている可撓部と、前記可撓部の周縁を支持する支持枠部と、を含むダイアフラムと、前記支持枠部が前記第2接合材の融点よりも低い融点を有する第1接合材を介して固定されている固定部とを備えた物理量検出器の製造方法であって、前記ダイアフラムの前記一対の支持部に前記第2接合材を塗布する工程と、前記一対の支持部に塗布された前記第2接合材を仮焼成する工程と、前記ダイアフラムにおける前記支持部が設けられた主面側の前記支持枠部に、前記第1接合材を前記第2接合材の厚みよりも厚く塗布する工程と、前記支持枠部に塗布された前記第1接合材を仮焼成する工程と、前記第1接合材を前記第1接合材の融点以上かつ前記第2接合材の融点未満に加熱して、前記第1接合材を用いて前記ダイアフラムの前記支持枠部と前記固定部とを接合する第1接合工程と、前記第2接合材と前記感圧素子の前記一対の基部とを接触させた状態で、前記第2接合材の融点以上に加熱して、前記第2接合材を用いて前記ダイアフラムの前記一対の支持部と前記感圧素子の前記一対の基部とを接合する第2接合工程とを備えたことを特徴とする物理量検出器の製造方法。
本発明によれば、第1接合材の融点よりも第2接合材の融点の方が高いため、物理量検出器の製造後に行われるリフロー等の高温処理において、第2接合材の再溶融を防ぐことができ、感圧素子の熱歪に起因した内部応力の変動を抑圧することができる。
また、第1接合材を塗布する厚さを第2接合材よりも厚くすることにより、まず低融点の第1接合材が接合部位に接触した状態で溶融して接合し、次に高融点の第2接合材が溶融して接合するため、低融点の第1接合材が接合部位に接触しない状態で融点以上の温度に長時間晒されて、結晶化してしまい接合できなくなるという問題点を回避することができる。
【0023】
[適用例12]前記第1接合工程において、前記ダイアフラムの前記支持枠部に塗布されて仮焼成された前記第1接合材と、前記感圧部を囲み前記固定部の機能を有する枠部と、を接触させ、前記第1接合材の融点以上かつ前記第2接合材の融点未満に加熱することにより、前記第1接合材を用いて、前記支持枠部と前記枠部とを接合することを特徴とする適用例11に記載の物理量検出器の製造方法。
本発明によれば、第1接合材と第2接合材とを塗布する厚さを変えることにより、まず低融点の第1接合材が枠部に接触した状態で溶融して接合し、次に高融点の第2接合材が感圧素子の一対の基部に接触し溶融して接合するため、低融点の第1接合材が枠部に接触しない状態で融点以上の温度に長時間晒されて、結晶化してしまい接合できなくなるという問題点を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1実施形態に係る圧力センサーの展開斜視図である。
【図2】同実施形態に係る圧力センサーの動作を説明する模式断面図である。
【図3】低融点ガラスに含まれるフィラーの量に応じた、融点と熱膨張係数との関係を示すグラフの一例である。
【図4】ダイアフラム層に第1接合材及び第2接合材を仮焼成する手順を説明する図である。
【図5】仮焼成した第1接合材及び第2接合材を溶融させてダイアフラム層と感圧素子層とを接合する手順を説明する図である。
【図6】第2実施形態に係る圧力センサーの側断面図である。
【図7】図6に示す圧力センサーのA−A断面図である。
【図8】第3実施形態に係る圧力センサーの側断面図である。
【図9】変形例に係る圧力センサーの展開斜視図である。
【図10】感圧部としてATカット振動子を用いた場合の他の変形例に係る圧力センサーを示す図であり、(a)は同圧力センサーの分解斜視図であり、(b)は同圧力センサーの模式断面図であり、(c)は同圧力センサーが備える感圧素子層の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る物理量検出器を圧力センサーに適用した場合の実施形態について添付の図面を参照して詳細に説明する。
図1は第1実施形態に係る圧力センサーの展開斜視図であり、図2は圧力センサーの動作を説明する模式断面図である。なお、図1では接合材の図示を省略している。
【0026】
図1に示すように、圧力センサー1は、感圧素子層10と、感圧素子層10の一方の主面側及び他方の主面側それぞれを気密封止するように覆うダイアフラム層(「ダイアフラム」に対応)20とベース層(「ベース」に対応)30とを備えている。上記各層10、20、30は水晶基板を基材としている。
【0027】
感圧素子層10は、中央部に感圧素子としての双音叉素子106と、その周囲を囲む枠型の枠部108とを有している。本実施形態では、枠部108が「固定部」に対応する。双音叉素子106は、感圧部としての一対の平行な柱状ビーム16aと、両柱状ビーム16aの両端に接続される一対の基部16bとを有している。双音叉素子106は、柱状ビーム16aに引張り応力又は圧縮応力が印加されると、その共振周波数が変化する周波数変化型の感圧素子であり、所謂、双音叉型の圧電振動子である。
【0028】
枠部108は、各基部16bから柱状ビーム16aと直交する方向に延びる一対の梁状の接続部110を介して双音叉素子106と連結されている。
双音叉素子106には図示せぬ励振電極と当該励振電極から延在された引出電極(リード電極)が設けられており、前記引出電極は、接続部110を介して枠部108に引き出されている。
【0029】
ダイアフラム層20は、一方の主面側に被測定圧力を受圧する受圧面204を有している。受圧面204は可撓性を有する可撓部であり、外部からの被測定圧力を受圧すると撓み変形する。受圧面204の周縁には枠型の支持枠部206が形成されており、当該支持枠部206は前記感圧素子層10の前記枠部108と対向するように配置されている。
【0030】
ダイアフラム層20の他方の主面側であって受圧面204の裏側となる密閉側の主面には、双音叉素子106の一対の基部16bを固定し、受圧面204の撓み変形により受圧面204で受圧した被測定圧力を力に変換して双音叉素子106に伝達するための一対の支持部210が設けられている。
【0031】
ダイアフラム層20の各支持部210と双音叉素子106の各基部16bとは、第2接合材50を介して接合される。
また、ダイアフラム層20の他方の主面側の支持枠部206と、感圧素子層10の一方の主面側の枠部108とは、第1接合材40を介して接合される。
【0032】
本実施形態において、第1接合材40と第2接合材50には、金属微粒子を含有する低融点ガラスを用いている。更に、第1接合材40と第2接合材50とでは、金属微粒子の含有量を異ならせている。本実施形態では、接合材に含有させる金属微粒子としてPbO(酸化鉛)を用いている。なお、含有させる金属微粒子はPbOに限らず、例えば、チタン、ビスマス、酸化銀等であってもよい。また、第1接合材40及び第2接合材50それぞれを接合部に塗布する際には、有機溶媒で溶いてペースト材にされたものが用いられる。
【0033】
図3は、低融点ガラスに含まれるフィラー(金属微粒子)の量に応じた、融点(℃)と熱膨張係数(ppm/K)との関係を示すグラフの一例である。図3に示すように、例えば、低融点ガラスに対するフィラーの含有量が少なく融点が330℃の場合には熱膨張係数は10ppm/Kより若干大きい程度である。一方、低融点ガラスに対するフィラーの含有量を多くして融点を252℃とすると熱膨張係数は13ppm/Kとなる。このように、低融点ガラスに対するフィラーの含有量を多くするほど、融点が低くなるとともに熱膨張係数が大きくなる。このような関係を利用して、低融点ガラスにフィラーを含有させる量を調整することにより低融点ガラスの融点及び熱膨張係数を調整することが可能となる。
【0034】
本実施形態では、第2接合材50の融点を320℃、熱膨張係数を11ppm/Kとしている。圧力センサー1を回路基板等の実装基板に実装する際のリフローの温度は270℃程度であるため、第2接合材50の融点を320℃とすることにより、リフローにより第2接合材50は再溶融することがない。
【0035】
双音叉素子106は熱歪に起因した内部応力の変化の影響を受け易く、圧力検出値のドリフトが発生し易いため、双音叉素子106をダイアフラム層20と接合する第2接合材50の再溶融を防止することで、検出圧力値のドリフトを防止し、高精度な圧力検出が実現可能となる。
【0036】
つまり、加熱温度を270℃としてリフローにより本発明に係る圧力センサーを回路基板に実装したとき、前記感圧素子の前記一対の基部と前記ダイアフラム層とを接合している低融点ガラスは融点温度が320℃であるため溶融することはない。
故に、前記感圧素子の前記一対の基部と前記ダイアフラム層の前記一対の支持部との固定点が、低融点ガラスの溶融によりズレが発生することを防止することができる。
【0037】
従って、本発明に係る圧力センサーは、環境雰囲気の温度が変化しそれに伴って各部材の膨張や収縮が生じたときに生じる熱歪の度合い(程度)が、圧力センサーの製造時とリフロー後とで差が生じることがないので、従来技術の如き構造を有する圧力センサーにおいて課題となっていた、前記リフローに起因して感圧素子に生じる内部応力の変化によって、検出すべき圧力値にドリフト等の変動が生じるという問題を防止することができるという優れた効果を発揮する。
【0038】
なお、上述した第2接合材50の融点及び熱膨張係数の値は一例に過ぎない。低融点ガラスに金属微粒子を含有させる量を調整して、第2接合材50の融点をリフロー温度以下とならない範囲で下げつつ、熱膨張係数を大きくして第2接合材50の熱膨張係数を水晶の熱膨張係数により近づけるようにすれば、圧力検出値のドリフトをより小さくすることができる。
【0039】
一方、本実施形態では、第1接合材40の融点を260℃とし、熱膨張係数を13ppm/Kとしている。第1接合材40は、第2接合材50よりも混合する金属微粒子の量を多くしているため、第2接合材50よりも融点が低くかつ熱膨張係数が大きくなっている。
【0040】
水晶の熱膨張係数は、音叉型の圧電振動子において一般的に用いられる、X軸(電気軸)とY軸(機械軸)とを含む平面と主面とが平行な基板であるZカット基板(主面に対してZ軸(光学軸)が直交する基板)、若しくは、音叉型の圧電振動子の周波数温度特性を示す、上に凸の二次曲線のピーク温度(頂点温度)が使用温度範囲の中間にくるように、水晶のX軸を回転軸として前記Zカット基板を数度回転したカット角により切り出された水晶基板において、室温から120℃までの温度範囲では、約14ppm/Kである。本願発明者が実施した実験の結果から得られた知見によれば、熱膨張係数は±1ppm/K以内の範囲で一致させておけば有効であることが確認されている。また、より高い検出精度が必要な場合には、±0.1ppm/K以内の範囲で一致させると好適であることも判明した。
【0041】
第1接合材40で接合されている感圧素子層10の一方の主面側の枠部108の面積(ダイアフラム層20の他方の主面側の支持枠部206の面積)は、第2接合材50で接合されている感圧素子層10の基部16bの面積(ダイアフラム層20の支持部210の面積)よりも大きいため、圧力検出精度の低下は、リフローによる再溶融の影響よりも第1接合材40と当該第1接合材40により接合されている部分との熱膨張係数のズレに対する影響の方が大きい。そこで、第1接合材40については、融点がリフロー温度より低くなりリフロー等の高温処理時に再溶融する可能性があったとしても、熱膨張係数を水晶に合わせることを優先する。これにより、温度変化による圧力検出値のドリフトを小さくすることができ、圧力検出値の精度を向上させることができる。
【0042】
以上のように、感圧素子層10及びダイアフラム層20が水晶基板を基材としている場合、接合材の再溶融に起因した圧力検出値のドリフトの影響が大きい支持部210と基部16bとの接合については、熱膨張係数は小さいが融点の高い第2接合材50を使用し、熱膨張係数のズレによる影響が大きい感圧素子層10の枠部108とダイアフラム層20の支持枠部206との接合については、熱膨張係数が大きく融点の低い第1接合材40を使用することで、全体として圧力検出値の精度を向上させることができる。
【0043】
このように、融点と熱膨張係数とが異なる2種類の接合材を使い分けることで、温度変化による圧力検出精度の低下を防止しつつ、リフローなどの高温処理により圧力検出値のドリフトが生じない圧力センサー1を提供することができる。
【0044】
なお、感圧素子層10及びダイアフラム層20の基材を水晶基板以外とした場合には、熱膨張係数については、第1接合材40と第1接合材40により接合されている部分(支持枠部206、枠部108)との熱膨張係数の差の絶対値を、第2接合材50と第2接合材50により接合されている部分(支持部210、基部16b)との熱膨張係数の差の絶対値よりも小さくすることで、上記と同様の効果が得られる。
【0045】
ベース層30は、双音叉素子106を収容する内部空間Sを密封するための部材である。ベース層30は、感圧素子層10の他方の主面側を覆うように配置されている。ベース層30の感圧素子層10側の主面には、内部空間Sを形成するための凹部302が形成されている。凹部302を囲んで枠型の外周枠部304が設けられている。当該外周枠部304は感圧素子層10の他方の主面側の枠部108と第1接合材40を介して接合されており、当該外周枠部304は接合部として使用されている。本実施形態では、ダイアフラム層20と、感圧素子層10の枠部108と、ベース層30と、が容器を構成し、そして、内部空間Sは、ダイアフラム層20と感圧素子層10の枠部108と、ベース層30と、で囲まれた空間から構成される。
ベース層30の中央部には、厚さ方向に貫通する封止孔306が設けられている。この封止孔306は、内部空間Sを真空にするために用いられる。
【0046】
ここで、第1接合材40により接合されている感圧素子層10の他方の主面側の枠部108の面積(ベース層30の外周枠部304の面積)は、第2接合材50により接合されている感圧素子層10の基部16bの面積(ダイアフラム層20の支持部210の面積)よりも大きいため、上述したように、第1接合材40の再溶融による圧力検出値のドリフトの影響よりも、第1接合材40と当該第1接合材40により接合されている部分との熱膨張係数のズレによる圧力検出値のドリフトの影響の方が大きい。したがって、ベース層30の外周枠部304と感圧素子層10の他方の主面側の枠部108とを接合する際には、融点が低くリフロー等の高温処理時に再溶融する可能性はあるものの熱膨張係数を水晶に合わせている第1接合材40を使用することで、温度変化による圧力検出値のドリフトを小さくすることができ、圧力検出値の精度を向上させることができる。
【0047】
なお、感圧素子層10及びベース層30の基材を水晶基板以外とした場合には、熱膨張係数については、第1接合材40と第1接合材40により接合されている部分(外周枠部304、枠部108)との熱膨張係数の差の絶対値を、第2接合材50と第2接合材50により接合されている部分(支持部210、基部16b)との熱膨張係数の差の絶対値よりも小さくすることで、同様の効果が得られる。
【0048】
なお、図示されていないが、ベース層30の外部に露出した面には電極端子が設けられており、この電極端子は図示しない導電パターンを介して双音叉素子106との間で信号の入出力を行う。
以上のように構成された圧力センサー1は、内部が気密に封止され、真空状態に保持されており、絶対圧を検出するセンサーとなっている。
【0049】
ここで、圧力センサー1の基本動作について図2を参照して説明する。図2に示すように、圧力センサー1は、外部からの圧力を受けるとダイアフラム層20の受圧面204が矢印A方向に撓む。このダイアフラム層20の受圧面204の撓みにより、ダイアフラム層20の各支持部23が互いの間隔が広がる矢印B方向に変位する。
【0050】
これにより、各支持部210間に架け渡された状態で接合されている双音叉素子106の感圧部である柱状ビーム16aには、矢印B方向に引張力が加わって変位するため引張り応力が生じるので、双音叉素子106の共振周波数は高くなる。
【0051】
一方、外部からの圧力が圧力センサー1内部の真空状態より低い場合には、ダイアフラム層20の受圧面204は矢印Aと反対側の方向に撓み、各支持部210が互いの間隔が狭まる矢印Bと反対側の方向に変位する。
これにより、双音叉素子106に圧縮力が加わって変位するため圧縮応力が生じるので、双音叉素子106の共振周波数は低くなる。
【0052】
双音叉素子106は、図示せぬ発振回路と電気的に接続され、当該発振回路から供給される交流電圧により、固有の共振周波数で振動する。前記発振回路は双音叉素子106の共振周波数を示す電気信号を出力し、図示せぬ演算手段が当該信号で示される共振周波数の変化から圧力を算出する。双音叉素子106は加えられた力に対して共振周波数の変化が大きく、圧力を感度よく検出できる。即ち、双音叉型圧電振動子は、ATカット水晶を用いた厚みすべり振動子などに比べて、感圧部(柱状ビーム)に生じる伸長・圧縮応力に起因した共振周波数の変化が極めて大きく、共振周波数の可変幅が大きいので、わずかな物理量の差(圧力差)を検出するような分解能力に優れた力センサーにおいては、好適な感圧素子である。
【0053】
次に、圧力センサー1の製造方法の一例について、図4及び図5を参照して説明する。まず、図4を参照して、ダイアフラム層20に第2接合材50及び第1接合材40を仮焼成する手順を説明する。図4の各工程の(a)にはダイアフラム層20の模式断面図を示し、(b)にはダイアフラム層20を他方の主面側から見た平面図を示している。なお、ダイアフラム層20はフォトリソグラフィ技法と、エッチング技法やサンドブラスト法、等の加工方法により形成される。
【0054】
まず、スクリーンマスクAを用いて、ダイアフラム層20の一対の支持部210の表面に、有機溶媒に溶かしてペースト状にした第2接合材50を塗布する(工程1)。
次に、第2接合材50を390℃程度の温度で仮焼成する。このとき、第2接合材50からは有機成分が揮発する(工程2)。
【0055】
次に、スクリーンマスクBを用いて、ダイアフラム層20の他方の主面側の支持枠部206に、有機溶媒に溶かしてペースト状にした第1接合材40を第2接合材50よりも厚く塗布する(工程3)。
次に、第1接合材40を290℃で仮焼成する(工程4)。
【0056】
次に、図5を参照して、仮焼成した第1接合材40及び第2接合材50を溶融させてダイアフラム層20と感圧素子層10とを接合する手順を説明する。図5の各工程に示す図はダイアフラム層20の模式断面図である。
【0057】
まず、ダイアフラム層20における仮焼成された第1接合材40と、感圧素子層10の枠部108とを接触させる。そして、第1接合材40の融点(260℃)以上かつ第2接合材50の融点(320℃)未満の温度、例えば280℃の温度で10分程度加熱して、第1接合材40を溶融させ、第1接合材40でダイアフラム層20の支持枠部206と感圧素子層10の枠部108とを接合する(工程5、第1接合工程)。
【0058】
工程5において第1接合材40が溶融したことにより、ダイアフラム層20の第2接合材50と感圧素子層10の基部16bとが接触する。この状態で第2接合材50の融点(320℃)以上の温度、例えば330℃の温度で10分程度加熱して、第2接合材50を溶融させ、第2接合材50でダイアフラム層20の支持部210と感圧素子層10の基部16bとを接合する(工程6、第2接合工程)。
【0059】
以上のような圧力センサー1の製造方法により、まず低融点の第1接合材40が感圧素子層10に接触した状態で溶融して接合し、次に高融点の第2接合材50が感圧素子に接触し溶融して接合することとなる。したがって、低融点の第1接合材40が感圧素子層10に接触しない状態で融点以上の温度に長時間晒されて、結晶化して接合できなくなるという問題を回避することができる。
【0060】
なお、この後に行う感圧素子層10とベース層30との第1接合材40による接合は、感圧素子層10とダイアフラム層20とを第1接合材40で接合するための工程である上記第3工程及び第6工程を組み合わせることで行うことができる。
【0061】
次に、第2実施形態について説明する。図6は、第2実施形態に係る圧力センサー1Aの側断面図であり、図7は図6に示す圧力センサー1AのA−A断面図である。これらの図において第1実施形態で説明した構成と同様の部分には同符号を付すとともに、その説明を省略する。
【0062】
第2実施形態が第1実施形態と異なる点は、第2実施形態に係る圧力センサー1Aが、第1実施形態で説明した、双音叉素子106を囲む枠部108と、当該枠部108と双音叉素子106とを連結する接続部110と、を有していない点である。したがって、第1実施形態では、枠部108が「固定部」に対応し、ダイアフラム層20の支持枠部206と、当該支持枠部206に対向するベース層30の外周枠部304とを、感圧素子層10の枠部108を挟んで第1接合材40を用いて接合して、3層構造としたが、第2実施形態では、ベース層30が「固定部」に対応し、ダイアフラム層20の支持枠部206と、当該支持枠部206に対向するベース層30の外周枠部304とを、第1接合材40を用いて接合して、2層構造としている。
【0063】
第2実施形態では、ダイアフラム層20とベース層30とが容器を構成しており、内部空間Sは、ダイアフラム層20とベース層30と、で囲まれた空間から構成されることとなる。
【0064】
圧力センサー1Aの製造方法としては、第1実施形態と同様の方法を用いることができる。ただし、第1実施形態における図5に示す工程5に対応する第2実施形態での工程において、ダイアフラム層20の一方の主面を上方に向けた状態で、ダイアフラム層20の支持枠部206とベース層30の外周枠部304とを第1接合材40を介して接触させた場合、第2実施形態では双音叉素子106の周囲に枠部が存在しないため、双音叉素子106を内部空間S内に支持しておくことができない。したがって、第2実施形態においては、ダイアフラム層20の他方の主面を上方に向けた状態で、ダイアフラム層20の一対の支持部210の上に双音叉素子106の一対の基部16bを載置するとともに、ダイアフラム層20の支持枠部206の上にベース層30の外周枠部304を載置して、工程5以降を行えばよい。
その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0065】
次に、第3実施形態について説明する。図8は第3実施形態に係る圧力センサー1Bの側断面図である。同図において上述した実施形態で説明した構成と同様の部分には同符号を付すとともに、その説明を省略する。
【0066】
第3実施形態に係る圧力センサー1Bが、第2実施形態に係る圧力センサー1Aと異なる点は、第2の実施形態に係る圧力センサー1Aが絶対圧計であるのに対し、第3実施形態に係る圧力センサー1Bが相対圧計である点である。
【0067】
第3実施形態に係る圧力センサー1Bは、第2実施形態に係る圧力センサー1Aが備えるベース層30に替えて、ダイアフラム層30Aを備えている。そして、ダイアフラム層20とダイアフラム層30Aとの間には、一方のダイアフラム層の変形を他方へ伝達するための支柱60が設けられている。この支柱60は、双音叉素子106の両脇に配置すればよい。
【0068】
このような構成の圧力センサー1Bにおいて、ダイアフラム層20側に圧力が負荷された場合、受圧面204が図中下側へ変形する。これにより、支持部210に固定された双音叉素子106は引張の力を受けることとなり、その周波数が増加する。一方、ダイアフラム層30A側に圧力が負荷された場合には、ダイアフラム層30Aの主面が図中上側へ変形することとなる。支柱60が設けられていることにより、ダイアフラム層30Aの変形に倣って、ダイアフラム層20の受圧面204も図中上側へ変形する。これにより、一対の支持部210は中心方向へ向かって傾くため、支持部210に固定された双音叉素子106は圧縮の力を受けることとなり、その周波数は低下する。このように、圧力センサー1Bは、ダイアフラム層20、30Aのいずれに圧力が負荷された場合であっても、その圧力を検出することができる。その他の構成は第2実施形態と同様である。
【0069】
なお、上述した実施形態では、感圧部として、1対の柱状ビーム16aを用いたが、感圧部はこれに限定されることはない。例えば、図9に示すように、感圧部を1つの柱状ビーム(シングルビームともいう)から構成しても良い。
【0070】
また、感圧部としてATカット水晶を用いた厚みすべり振動子(以下、ATカット振動子と称す)を用いてもよい。感圧部としてATカット振動子を用いることで、温度に対する周波数安定性が向上し、周波数温度特性を良好にすることができるとともに、衝撃に強く丈夫な圧力センサーとすることができる。
【0071】
図10(a)には、感圧部としてATカット振動子を用いた圧力センサー1Cの分解斜視図の一例を示し、図10(b)には当該圧力センサー1Cの模式断面図を示し、図10(c)には当該圧力センサー1Cが備える感圧素子層10Aの平面図を示す。これらの図において上述した実施形態で説明した構成と同様の部分には同符号を付すとともに、その説明を省略する。これらの図に示すように、圧力センサー1Cは、第1実施形態に係る圧力センサー1が備える双音叉振動子106の1対の柱状ビーム16aをATカット振動子17に置き換えた構成となっている。
【0072】
ATカット振動子17は、ATカットと呼ばれるカット角で切り出された水晶片17aを備えている。なお、ATカットとは、水晶の結晶軸であるX軸とZ軸とを含む平面(Y面)を、X軸を回転軸として+Z軸から−Y軸方向へ約35度15分回転させて得られる面が主面となるように切り出すカット角である。この水晶片17aの表面及び裏面(不図示)の中央部には、当該水晶片17aを励振させるための励振電極17bが設けられている。励振電極17bには引出電極17cが接続されており、水晶片17aの長さ方向の一方側の周縁に向かって引き出されている。この引出電極17cは、基部16bに設けられたマウント電極60、及び接続部110と枠部108に設けられた接続パターン92を介して、枠部108に設けられた枠部側マウント電極94に導通している。枠部側マウント電極94は、感圧素子層10Aをダイアフラム層20とベース層30とで挟み込んだときに、ダイアフラム層20の支持枠部206及びベース層30の外周枠部304と平面視して重なる位置に設けてある。そして枠部側マウント電極94は、図示しない接続パターンによって圧力センサー1Aの外部に設けた電極と導通している。
【0073】
このような圧力センサー1Cは、上述した実施形態において図2を参照して説明した圧力センサー1と同様に動作する。すなわち、ダイアフラム層20が被検出圧力を受圧して撓み変位すると、その変位がダイアフラム層20を介して力に変換されATカット振動子17に伝達される。力を伝達されたATカット振動子17には内部応力(引張り応力、圧縮応力)が生じ、共振周波数が変化する。この共振周波数の変化を測定して被検出圧力を検出することができる。
【0074】
以上説明したように、圧力センサーを構成する各部材が水晶基板を基材としている場合に、感圧素子としての双音叉素子106を接合する第2接合材50を、熱膨張係数が小さく水晶との熱膨張係数の差は大きいが、融点を第1接合材40よりも高くすることによってリフロー等の高温処理で再溶融しないようにすることで、ダイアフラムに搭載される感圧素子の熱歪に起因した内部応力の変動を抑制することができる。
【0075】
また、圧力センサーを構成する部材の枠部分の接合については、第1接合材40の再溶融による圧力検出値のドリフトの影響よりも、第1接合材40と当該第1接合材40により接合されている部分との熱膨張係数のズレによる影響が大きいので、水晶と熱膨張係数が近い第1接合材40を用いて接合することによって、熱膨張係数のズレに起因した圧力検出値のドリフトを防ぐことができ、圧力検出値の精度を向上させることができる。
【0076】
また、圧力センサーの製造時に、加熱する前の第1接合材40の厚さを第2接合材50の厚さよりも厚くすることで、まず低融点の第1接合材40が感圧素子層10に接触した状態で第1接合材40を溶融させ、次に高融点の第2接合材50が感圧素子層10に接触した状態で第2接合材50を溶融させることができるため、低融点の第1接合材40が接合対象部位に接触しない状態で融点以上の温度に長時間晒されて、結晶化してしまい接合できなくなるという問題を回避することができる。
【0077】
上述した実施形態では、気体や液体の圧力を検出する圧力センサーを用いて説明したが、本発明に係る物理量検出器はこれに限らず、指等により直接押圧した場合の前記指の押圧による外力を検出する力センサーやその他の物理量を検出するセンサーにも広く適用できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0078】
1、1A………圧力センサー、10、10A………感圧素子層、106………双音叉素子、16a………柱状ビーム、16b………基部、17………ATカット振動子、17a………水晶片、17b………励振電極、17c………引出電極、108………枠部、110………接続部、20………ダイアフラム層、204………受圧面、206………支持枠部、210………支持部、30………ベース層、302………凹部、304………外周枠部、306………封止孔、40………第1接合材、50………第2接合材、60……支柱。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の基部と前記一対の基部の間に配置されている感圧部とを含む感圧素子と、
前記一対の基部が第2接合材を介して接合されている一対の支持部を備えている可撓部と、前記可撓部の周縁を支持する支持枠部と、を含むダイアフラムと、
前記支持枠部が第1接合材を介して固定されている固定部と、
を備え、
前記第2接合材の融点は、前記第1接合材の融点よりも高い
ことを特徴とする物理量検出器。
【請求項2】
前記第1接合材の熱膨張係数と、
前記第1接合材により接合される部分の熱膨張係数とは、ほぼ等しいことを特徴とする請求項1に記載の物理量検出器。
【請求項3】
前記第1接合材と該第1接合材により接合される部分との熱膨張係数の差の絶対値は、
前記第2接合材と該第2接合材により接合される部分との熱膨張係数の差の絶対値よりも小さいことを特徴とする請求項1又は2に記載の物理量検出器。
【請求項4】
前記固定部の機能を備えているベースを含み、
前記感圧素子を覆うように前記ベースと前記ダイアフラムが積層されていることを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか1項に記載の物理量検出器。
【請求項5】
前記感圧素子を囲む枠部と、当該枠部と前記感圧素子とを連結する接続部と、を含み、
前記枠部が前記固定部の機能を備えていることを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか1項に記載の物理量検出器。
【請求項6】
前記感圧素子を覆うように前記ダイアフラムと前記枠部とベースとが積層され、
前記枠部は、当該枠部に対向する前記ベースの接合部に前記第1接合材を用いて接合されていることを特徴とする請求項5に記載の物理量検出器。
【請求項7】
前記第1接合材により接合される部分は水晶であり、
前記第1接合材の熱膨張係数は前記第2接合材の熱膨張係数よりも大きいことを特徴とする請求項1乃至6のうちいずれか1項に記載の物理量検出器。
【請求項8】
前記第2接合材はガラス材であることを特徴とする請求項1乃至7のうちいずれか1項に記載の物理量検出器。
【請求項9】
前記ガラス材は、金属微粒子を含有していることを特徴とする請求項8に記載の物理量検出器。
【請求項10】
請求項1乃至9のうちいずれか1項に記載の物理量検出器の製造方法であって、
前記第2接合材の融点は、前記物理量検出器が基板へ実装されるときの加熱温度よりも高いことを特徴とする物理量検出器の製造方法。
【請求項11】
一対の基部と前記一対の基部の間に配置されている感圧部とを含む感圧素子と、
前記一対の基部が第2接合材を介して接合されている一対の支持部を備えている可撓部と、前記可撓部の周縁を支持する支持枠部と、を含むダイアフラムと、
前記支持枠部が前記第2接合材の融点よりも低い融点を有する第1接合材を介して固定されている固定部とを備えた物理量検出器の製造方法であって、
前記ダイアフラムの前記一対の支持部に前記第2接合材を塗布する工程と、
前記一対の支持部に塗布された前記第2接合材を仮焼成する工程と、
前記ダイアフラムにおける前記支持部が設けられた主面側の前記支持枠部に、前記第1接合材を前記第2接合材の厚みよりも厚く塗布する工程と、
前記支持枠部に塗布された前記第1接合材を仮焼成する工程と、
前記第1接合材を前記第1接合材の融点以上かつ前記第2接合材の融点未満に加熱して、前記第1接合材を用いて前記ダイアフラムの前記支持枠部と前記固定部とを接合する第1接合工程と、
前記第2接合材と前記感圧素子の前記一対の基部とを接触させた状態で、前記第2接合材の融点以上に加熱して、前記第2接合材を用いて前記ダイアフラムの前記一対の支持部と前記感圧素子の前記一対の基部とを接合する第2接合工程と
を備えたことを特徴とする物理量検出器の製造方法。
【請求項12】
前記第1接合工程において、前記ダイアフラムの前記支持枠部に塗布されて仮焼成された前記第1接合材と、前記感圧部を囲み前記固定部の機能を有する枠部と、を接触させ、前記第1接合材の融点以上かつ前記第2接合材の融点未満に加熱することにより、前記第1接合材を用いて、前記支持枠部と前記枠部とを接合することを特徴とする請求項11に記載の物理量検出器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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