説明

物理障壁を含む隔離デバイス

【課題】短時間内に縣濁液を液体相および保持物相に分離し、その際、該液体相が、保持物汚染物を事実上含まないように分離を実行することが可能なデバイスおよび方法を開発すること。
【解決手段】本発明は、縣濁液を液体相と保持物相とに分離するためのデバイスに関する。デバイスは、印加ゾーンおよび親水性フィルター材料を含む隔離チェンバーを含む。この隔離チェンバーは、第1毛細管チャンネルに接続され、隔離チェンバーと第1毛細管チャンネルの間の接合部は、残留保持物が、チェンバーの下方部分から第1毛細管チャンネルへ流れこむことがないように阻止する物理障壁を含む。本発明はさらに、200 μl未満の縣濁液から成る液体サンプルを、縣濁物質を含む保持物相、および、縣濁物質を事実上含まない液体相に分離するための方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縣濁液を、液体相と保持物相とに分離するためのデバイス、およびその使用に関する。
【0002】
本発明はさらに、200 μl未満の縣濁液から成る液体サンプルを、縣濁物質を含む保持物相、および、縣濁物質を事実上含まない液体相に分離するための方法に関する。この縣濁液は血液であり、液体相は血漿/血清であり、かつ、保持物は血球であることも考えられる。
【背景技術】
【0003】
多くの診断は、血液をサンプルとして利用する臨床分野において行われる。これらの技術のいくつかは全血において実行することが可能であるが、多くの場合、正確な読み取り値を獲得するために、血清または血漿をサンプルとして利用することが必要となる。例えば、赤血球(エリスロサイト)は、光を散乱させ、かつ、吸収するが、これらの測定技術のいずれかに依存する診断試験の反射光または透過光のいずれかの測定値に悪影響を及ぼすことが考えられる。
【0004】
従来、血漿および血清は、凝固前(血漿用)か、凝固後(血清用)のいずれかに遠心することによって全血から分離されていた。しかしながら、遠心は、時間がかかり、かつ、臨床検査室の外では一般に利用することができない装置を必要とする。したがって、血清または血漿を必要とする、数多くの血液物質の野外検査は困難である。
【0005】
この問題を回避するため、これまでにいくつかの技術が工夫されている。その技術は、一般に、血漿から赤血球を分離することが可能なろ過デバイスを利用する。過去において、フィルターを形成するために数多くの材料が使用されている。紙、不織布、粉末、または、線維、例えば、人工線維またはグラスファイバーなどの線維から構成される、シート様フィルター材料、および、適切な孔径を有する膜フィルターがこれまで提案されている。
【0006】
しかしながら、これらの従来技術は、スペースおよび体積制限から、一滴の血液が分離されるデバイスで、血漿は、ただ毛管作用のみを介して該デバイスの中を輸送される場合のような、小型フィルターしか利用することができない応用において使用するには不適切であることが判明している。したがって、多くの従来の分離用デバイスは、外力を用いず、毛管および/または静水圧を用いて、希釈していない全血を十分に分離する処理法については悩まされている。したがって、血液分離技術におけるさらなる洗練が求められている。
【0007】
したがって、本発明の一つの目的は、短時間内に、未希釈全血を、血漿/血清相および血球相に分離すること、その際、血漿/血清相は、血球汚染物を事実上含まず、血液サンプルは200 μl未満しか含まない、のように該分離を実行することを可能とするデバイスおよび方法を開発することである。
【0008】
本発明のもう一つの目的は、短時間内に、未希釈全血を、血漿/血清相および血球相に分離すること、その際、分離は外力の使用無しに駆動され、血液サンプルは200 μl未満しか含まない、のように該分離を実行することを可能とするデバイスおよび方法を開発することである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、短時間内に、縣濁液を液体相および保持物相に分離すること、その際、該液体相が、保持物汚染物を事実上含まないように分離を実行することが可能なデバイスおよび方法を開発することである。
【0010】
もう一つの目的は、短時間内に、縣濁液を、液体相および保持物相に分離すること、その際、分離は外力の使用無しに駆動されるように該分離を実行することを可能とするデバイスおよび方法を開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
これは本発明によるデバイスによって達成された。
【0012】
したがって、一実施態様では、本発明は、200 μl以下を含む縣濁液を、液体相と保持物相に分離するためのデバイスであって、印加ゾーン(1)および親水フィルター材料(17)を含む隔離チェンバー(2)を含み、ここに、前記隔離チェンバーは、第1毛細管チャンネル(3)に接続され、隔離チェンバーと第1毛細管チャンネルの間の接合部は、残留保持物が、チェンバーの下方部分から、第1毛細管チャンネルへ流れこむことがないように阻止する物理障壁(10)を含むことを特徴とする、デバイスに関する。
【0013】
ある好ましい局面では、分析されるサンプルは、好ましくは、200 μl未満の容量を有する。さらに好ましい局面では、分析されるサンプルは、150 μl未満を有し、さらに好ましくは100 μl未満、さらに好ましくは90 μl未満、例えば、80 μl未満、70 μl未満、または場合によっては60 μl未満の容量を有する。さらに好ましい局面では、分析されるサンプルは、50 μl未満の容量を有し、さらに好ましくは45 μl未満、さらに好ましくは40 μl未満の容量を有する。
【0014】
ある好ましい局面では、毛細管チャンネルの第1部分は、100 μl未満の容量を有する。さらに好ましい局面では、毛細管チャンネルは、90 μl未満の容量を有し、さらに好ましくは80 μl未満、さらに好ましくは70 μl未満、例えば、60 μl未満、50 μl未満、または場合によっては40 μl未満の容量を有する。さらに好ましい局面では、毛細管チャンネルの第1部分は、30 μl未満の容量を有し、さらに好ましくは25 μl未満、さらに好ましくは20 μl未満、例えば、15 μl未満、10 μl未満、または場合によっては5 μl未満の容量を有する。
【0015】
別の実施態様では、液体に面する、第1毛細管チャンネルの内面の少なくとも下方部分は、表面処理材料から製造される。表面処理は、酸化であってもよく、好ましくはコロナ処理である。
【0016】
さらに別の実施態様では、デバイスは、上方部分および下方部分を含み、この二つの部分は、組み立てられると、隔離チェンバー(2)、第1毛細管チャンネル(3)、および、残留保持物が、チェンバーの下方部分から第1毛細管チャンネルへ流れこむことがないように阻止する物理障壁(10)を形成し、前記上方部分は、隔離チェンバーに導く印加ウェル(1)を有する。
【0017】
別の実施態様では、デバイスはさらに、プレフィルター材料(15)を含む。
【0018】
さらに別の局面では、本発明は、200 μl以下を含む縣濁液を、液体相および保持物相に分離する--その際、該液体相は、縣濁物質を事実上含まない--ための、本発明によるデバイスの使用に関する。この縣濁液は血液であり、液体相は血漿/血清であり、かつ、保持物は血球であることも考えられる。
【0019】
さらに別の局面では、本発明は、200 μl未満の縣濁液から成る液体サンプルを、該縣濁物質を含む保持物相、および、縣濁物質を事実上含まない液体相に分離するための方法であって、下記の工程:
a. 必要に応じて縣濁液をプレフィルターに印加し、プレフィルターを通じて該縣濁液を導き、それによって、縣濁物質を保持させ、液体を工程bのフィルター材料に事実上均一に移送すること;
b. 200 μl未満のサンプル縣濁液、すなわち、工程aの液体を、フィルター材料に印加すること;
c. 縣濁液を含むフィルター材料を、第1毛細管チャンネルに接続される、隔離チェンバーに印加すること;
d. フィルターを過飽和として第1毛細管チャンネルに入力供給すること;
e. 残留保持物が、隔離チェンバーの下方部分から第1毛細管チャンネルへ流れこむことがないように阻止し、それによって縣濁物質を隔離チェンバーの下方部分に沈降させ、縣濁液を保持物相および液体相に分離すること;および、
f. 液体相を第1毛細管チャンネルに差し向けること;
を含む、方法に関する。
【0020】
本発明のさらに別の局面では、液体相は、第1毛細管チャンネルによって供給される毛管力と、印加サンプルによって産出される静水圧との併合作用のみによって、第1毛細管チャンネルの中に差し向けられる。
【0021】
本発明を、図面を参照しながら下記に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】サンプルデバイスであって、三つのチェンバー(3,5,6)を有する微小流チャンネル、印加ゾーン(1)、隔離チェンバー(2)、第1毛細管チャンネル(3)、収集チェンバー(4a)、廃棄物流出口(4b)、洗浄チェンバー(5)、検出チェンバー(6)、洗浄チェンバーにおける磁気粒子局在部位(7)、洗浄液および検出液のための流入チャンネル(8)、隔離チェンバーと第1毛細管チャンネルの間の物理障壁(10(垂直)、10'(傾斜))、第1毛細管チャンネル(3)における毛細管微小チャンネル(11)、第1毛細管チャンネルのコロナ処理部(12)(灰色の陰影によって表される)、および、検出ユニット(14)を含むサンプルデバイスの模式図を示す。
【図2】三次元描画によって、図1のものと同じ原理を示す。サンプルデバイスは、三つのチェンバー(3,5,6)を有する微小流チャンネル、印加ウェル(1')、隔離チェンバー(2)、血液ろ過のための親水性フィルター材料(17)、第1毛細管チャンネル(3)、収集チェンバー(4a)、廃棄物流出口(4b)、洗浄チェンバー(5)、検出チェンバー(6)、洗浄チェンバーにおける磁気粒子局在部位(7)、洗浄液および検出液のための流入チャンネル(8)、隔離チェンバーと第1毛細管チャンネル(3)の間の物理障壁(10、10')、第1毛細管チャンネル(3)における毛細管微小チャンネル(11)、第1毛細管チャンネル(3)のコロナ処理部(12)、および、検出ユニット(14)を含む。
【図3】隔離デバイスであって、微小流チャンネル(3)、印加ウェル(1')、隔離チェンバー(2)、第1毛細管チャンネル(3)、隔離チェンバーと第1毛細管チャンネルの間の物理障壁(10')、親水性フィルター材料(17)、およびプレフィルター(15)を含む隔離デバイスの模式局所図を示す。
【図4】隔離デバイスであって、三つのチェンバー(3,5,6)を有する微小流チャンネル、印加ウェル(1')、隔離チェンバー(2)、第1毛細管チャンネル(3)、洗浄チェンバー(5)、検出器チェンバー(6)、隔離チェンバーと第1毛細管チャンネルの間の物理障壁(10')、および親水性フィルター(17)を含む該隔離デバイスの図2の表示の原型画像である。
【図5】統合型隔離/検出デバイスであって、三つのチェンバー(3,5,6)を含む微小流チャンネル、印加ウェル(1')背面、隔離チェンバー(2)背面、第1毛細管チャンネル(3)、洗浄チェンバー(5)、検出チェンバー(6)、隔離チェンバーと第1毛細管チャンネルの間の物理障壁(10')、および親水性フィルター(17)を含む該デバイスの図4(背面)の表示の原型画像である。左側円は、隔離チェンバーと第1毛細管チャンネル(11)の間の物理障壁(10')の拡大図であり、第1毛細管チャンネル中の毛細管微小チャンネルを具体的に示す。右側円は、収集チェンバーにおける第1毛細管チャンネルの拡大図であり、毛細管微小チャンネルを具体的に示す。
【図6】図1と同じではあるが、より多くの特徴を含む三次元描画によって同じ原理を図示する。統合型分離/検出デバイスであって、三つのチェンバー(3,5,6)を有する微小流チャンネル、印加ウェル(1')、隔離チェンバー(2)、第1毛細管チャンネル(3)、収集チェンバー(4a)、廃棄物流出口(4b)、洗浄チェンバー(5)、検出チェンバー(6)、洗浄チェンバーにおける磁気粒子局在部位(7)、洗浄液および検出液のための流入チャンネル(8)、隔離チェンバーと第1毛細管チャンネルの間の物理障壁(10,10')、第1毛細管チャンネル(3)における毛細管微小チャンネル(11)、検出器ユニット(14)、検出液Aのための第1区画(9)、検出液(B)のための第2区画(15)、洗浄液区画(16)、および血液蓋(12a)を含む該デバイス。
【図7】図7aは、統合型分離/検出デバイスであって、微小流チャンネル(3,5,6)、印加ウェル(1)、隔離チェンバー(2)および親水性フィルター(17)、第1毛細管チャンネル(3)、第1毛細管チャンネルにおける血清/血漿(18)、洗浄チェンバー(5)および検出器チェンバー(6)における信号液(19)、第1毛細管チャンネル(3)と洗浄チェンバー(5)の間の接合部における光捕捉方式A(20)、および検出器ユニット(14)を含む該デバイスの模式局所図を示す。 図7bは、統合型分離/検出デバイスであって、微小流チャンネル(3,5,6)、印加ウェル(1)、隔離チェンバー(2)および親水性フィルター(17)、第1毛細管チャンネル(3)、第1毛細管チャンネルにおける血清/血漿(18)、洗浄チェンバー(5)および検出器チェンバー(6)における信号液(19)、第1毛細管チャンネル(3)と洗浄チェンバー(5)の間の接合部における光捕捉方式B(20')、および検出器ユニット(14)を含む該デバイスの模式局所図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
〔定義〕
本発明の背景においては、「毛細管チャンネル」とは、流体が通過することが可能な、細長いチューブまたはチャンネルを意味する。好ましくは、本発明による第1毛細管チャンネルの直径は、10 mm未満である。さらに好ましくは、本発明による毛細管チャンネルの直径は、5 mm未満、例えば、4 mm未満、または3 mm未満、場合によっては2 mm未満である。もっとも好ましい局面では、第1毛細管チャンネルは、1 mm以下、例えば、0.2 - 1.0 mmの直径を有する。
【0024】
本発明の背景においては、「下方部分」とは、使用時、地球の中心にもっとも近いデバイス部分を意味する。「上方」とは、その反対、すなわち、使用時、地球の中心からもっとも遠い部分を意味する。したがって、使用時、液体は、下方部分に停留し、上方部分には停留しないと考えられる。
【0025】
本発明の一つの有用局面は、血漿からの赤血球の分離が、単一層のフィルター材料および少量の血液を利用することで実現可能となることである。大型スケールで、および/または、吸収層を含む複数層フィルターを利用して血液分離のために使用される従来技術の材料は、本分離条件下では役立たないことが判明している。
【0026】
したがって、全血を、血漿/血清相および保持物相(血球)に短時間内に分離することが可能で、その際、液体相は保持物汚染を事実上含まず、分離は外力を使用することなく駆動される、デバイスおよび方法が開発された。
【0027】
したがって、一実施態様では、200 μl以下を含む縣濁液を、液体相と保持物相に分離するためのデバイスは、親水性フィルター材料(17)を含む隔離チェンバー(2)を含み、前記隔離チェンバーは、第1毛細管チャンネル(3)に接続され、その際、隔離チェンバーと第1毛細管チャンネルの間の接合部は、残留保持物が、チェンバーの下方部分から第1毛細管チャンネルへ流れこむことがないように阻止する物理障壁(10、10')を含む。
【0028】
驚くべきことに、この物理障壁の存在は、液体材料の、縣濁物質からの、事実上改善された隔離を創出することが示された。したがって、物理障壁無しにデバイスに印加された血液サンプルは、第1毛細管チェンネルにおいて、淡紅色の流体を産出することが視覚検査によって観察された。一方、隔離チェンバーと第1毛細管チャンネルの間の接合部が、残留保持物が、チェンバーの下方部分から第1毛細管チャンネルへ流れこむことがないように阻止する物理障壁を含むと、デバイスに印加された血液サンプルは、第1毛細管チャンネルにおいて透明無色の流体を産出することが観察された。
【0029】
一実施態様では、物理障壁は、少なくとも0.2 - 1.6 mmの高さ(10)を持つ垂直障壁の形状を取る。
【0030】
さらに別の実施態様では、障壁の高さは、少なくとも0.8 - 1.6 mmである。
【0031】
さらに別の実施態様では、水平面にあって、第1毛細管チャンネルの方に向かう物理障壁(10)は、隔離チェンバーの底部から延びる傾斜を記述する。
【0032】
さらに別の実施態様では、垂直方向の傾斜は、0.2 - 1.6 mmであり、水平方向には、第1毛細管チャンネルの長さの0 - 100%である。
【0033】
さらに別の実施態様では、垂直方向の傾斜は、約0.8 - 1.6 mmであり、水平方向には、第1毛細管チャンネルの長さの約20 - 80%である。
【0034】
さらに別の実施態様では、液体に面する第1毛細管チャンネルの内面の、少なくとも下方部分は、表面処理プラスチック材料から製造される。
【0035】
さらに別の実施態様では、安定なプラスチック材料は、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリレート、シリコンエラストマーなどである。
【0036】
さらに別の実施態様では、表面処理は酸化である。さらに別の実施態様では、酸化はコロナ処理である。特に、液体に面する第1毛細管チャンネルの内面の、少なくとも下方部分が、コロナ処理プラスチック表面から製造される場合、毛細管チャンネルは、該毛細管チャンネルの中に液体を引き込むことにおいてきわめて効率的であることが視覚検査によって観察された。
【0037】
さらに別の実施態様では、デバイスはさらに、第1毛細管チャンネルに接続される収集チェンバー(4a)を含む。
【0038】
さらに別の実施態様では、デバイスは、上方部分および下方部分を含み、この二つの部分は、組み立てられると、隔離チェンバー(2)、第1毛細管チャンネル(3)、および、残留保持物が、チェンバーの下方部分から第1毛細管チャンネルへ流れこむことがないように阻止する物理障壁(10)を形成し、前記上方部分は、隔離チェンバーに導く流入口を有する。これらの部分を有することで、デバイスは、使用、洗浄などがより易しくなる。
【0039】
さらに別の実施態様では、上方部分と下方部分の間の界面は、疎水性封印によってシールされる。
【0040】
さらに別の実施態様では、デバイスはさらに、プレフィルター材料(15)を含む。
【0041】
さらに別の実施態様では、第1毛細管チャンネルの幅および高さは、それぞれ、0.25 - 2.0 mmおよび0.2 - 1.0 mmである。
【0042】
さらに別の実施態様では、隔離チェンバーの流出口から収集チェンバーの流入口までの、第1毛細管チャンネルの長さは、5 - 20 mmである。
【0043】
さらに別の局面では、本発明は、200 μl未満を含む縣濁物質を、液体相および保持物相に分離するためのデバイスで、該分離を、液相が縣濁物質を事実上含まないように行うデバイスの使用に関する。
【0044】
さらに別の局面では、縣濁液は血液である。
【0045】
さらに別の局面では、本発明は、200 μl未満の縣濁液から成る液体サンプルを、該縣濁物質を含む保持物相、および、縣濁物質を事実上含まない液体相に分離するための方法であって、下記の工程:
a. 必要に応じて縣濁液をプレフィルターに印加し、プレフィルターを通じて該縣濁液を導き、それによって、縣濁物質を保持させ、液体を、工程bのフィルター材料に事実上均一に移送すること;
b. 200 μl未満のサンプル縣濁液、すなわち、工程aの液体を、フィルター材料に印加すること;
c. 縣濁液を含むフィルター材料を、第1毛細管チャンネルに接続される、隔離チェンバーに印加すること;
d. フィルターを過飽和として第1毛細管チャンネルに入力供給すること;
e. 残留保持物が、隔離チェンバーの下方部分から第1毛細管チャンネルへ流れこむことがないように阻止し、それによって、縣濁物質を隔離チェンバーの下方部分に沈降させ、縣濁液を保持物相および液体相に分離すること;および、
f. 液体相を第1毛細管チャンネルに差し向けること;
を含む、前記方法に関する。
【0046】
さらに別の局面では、液体相は、第1毛細管チャンネルによって供給される毛管力と、印加サンプルによって産出される静水圧との併合作用のみによって、第1毛細管チャンネルの中に差し向けられる。
【0047】
さらに別の局面では、第1毛細管チャンネルは、上に定義した尺度に関する。
【0048】
さらに別の局面では、血液はヒトの血液である。
【実施例】
【0049】
血液ろ過デバイス使用による、物理障壁、コロナ処理、おおび微小チャンネルの存在の、収集チャンネルにおける透明血漿への分離に及ぼす影響に関する試験
結論
隔離チェンバーと第1毛細管チャンネルの間の接合部において、残留保持物が、チェンバーの下方部分から第1毛細管チャンネルへ流れこむことがないように阻止する物理障壁(10)が存在することは、液体および縣濁物質の分離の改善をもたらす。
【0050】
液体に面する第1毛細管チャンネルの内面の、少なくとも下方部分のコロナ処理は、収集チェンバーの血漿による充填を著明に強化する。
【0051】
液体に面する第1毛細管チャンネルの内面の、表面処理プラスチックでできた、少なくとも下方部分において微小チャンネルを使用することは、充填時間を著明に短縮する。
【0052】
実験セットアップ
実験に使用された血液ろ過デバイスは、透明ポリスチレンに穴開け工作を施し、該穴開けチャンネルにおいて、毛細管ストップ、および被覆する疎水性フィルムを設けた、図2に示すものと同じK2カートリッジであった。このK2の血液流入口は、卵形の、5 x 7.5 mmプレフィルター(垂直フローフィルター VF1、Whatman)と一緒に用いた。側方流フィルター4 x 15 mm (Fusion 5, Whatman)は、疎水性接着剤の上に登載した。各実験において、ヒトのK3EDTA安定化血液100 μl(2週令)用いた。
【0053】
収集チェンバーの容量は、3本の微小チャンネルを備えるK2デバイスでは4.6 μlであった(略0.15 x 0.15 mm)。
【0054】
収集チャンネルの容量は、該チャンネルを、1 - 10 μlのピペットを用いて指示液でゆっくりと満たすことによって測定した。
【0055】
試験は、図2に示すようなK2カートリッジを用い、微小チャンネルがある場合と無い場合で行った。両セットアップにおいて、コロナ処理無し、およびコロナ処理有りのカートリッジについて、収集チェンバーの充填時間を測定した。
【0056】
結果
隔離チェンバーと第1毛細管チャンネルの間の接合部において、残留保持物が、チェンバーの下方部分から第1毛細管チャンネルへ流れこむことがないように阻止する物理障壁の有無について予備試験したところ、障壁が存在すると、液体および縣濁物質の隔離が改善されることが示された。
【0057】
毛細管チャンネルについてさらに試験したところ、下記の結果が得られた:
微小チャンネル無しの収集チェンバーの容量は、3.1 μlと測定された。微小チャンネルを含む収集チェンバーの容量は4.6 μlであった。

【0058】
考察
上の表の結果は、収集チェンバーを十分に親水性にし、毛管力によって血漿で満たすには、該収集チェンバーをコロナ処理することはきわめて有利であることを示す。これは、穴開けチャンネルを覆う疎水性フィルム使用の状況下であることに注意されたい。
【0059】
表はさらに、毛細管チャンネルの中に穴開けされた毛細管微小チャンネルを用いると充填時間がさらに短くなることを示す。微小チャンネルは、毛管力によって急速に充填され、次に、チャンネルの残りの部分の充填を推進する。
【0060】
結論
コロナ処理は、収集チェンバーを血漿で充填させるのにきわめて好ましい。
【0061】
微小チャンネルの使用は、充填時間を短縮する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
200 μl以下を含む縣濁液を、液体相と保持物相に分離するためのデバイスであって、印加ゾーン(1)および親水フィルター材料(17)を含む隔離チェンバー(2)を含み、ここに、前記隔離チェンバーは、第1毛細管チャンネル(3)に接続され、該隔離チェンバーと第1毛細管チャンネルの間の接合部は、残留保持物が、該チェンバーの下方部分から、第1毛細管チャンネルへ流れこむことがないように阻止する物理障壁(10)を含むことを特徴とする、デバイス。
【請求項2】
前記物理障壁が、少なくとも0.2 - 1.6 mmの高さ(10)を持つ垂直障壁の形状を取ることを特徴とする、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記高さ(10)が、少なくとも0.8 - 1.6 mmであることを特徴とする、請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
水平面にあって、第1毛細管チャンネルの方に向かう物理障壁(10)が、前記隔離チェンバーの底部から延びる傾斜を記述することを特徴とする、請求項1-3のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項5】
前記傾斜が、垂直方向には0.2 - 1.6 mmであり、水平方向には、第1毛細管チャンネルの長さの0 - 100%であることを特徴とする、請求項4に記載のデバイス。
【請求項6】
前記傾斜が、垂直方向には約0.8 - 1.6 mmであり、水平方向には、第1毛細管チャンネルの長さの約20 - 80%であることを特徴とする、請求項5に記載のデバイス。
【請求項7】
前記液体に面する第1毛細管チャンネルの内面の、少なくとも下方部分が、表面処理プラスチック材料から製造されることを特徴とする、請求項1-6のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項8】
前記安定なプラスチック材料が、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリレート、シリコンエラストマーなどであることを特徴とする、請求項7に記載のデバイス。
【請求項9】
前記表面処理が酸化であることを特徴とする、請求項1-8のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項10】
前記酸化がコロナ処理であることを特徴とする、請求項9に記載のデバイス。
【請求項11】
第1毛細管チャンネルに接続される収集チェンバー(4a)をさらに含むことを特徴とする、請求項1-10のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項12】
上方部分および下方部分を含む前記デバイスであって、この二つの部分は、組み立てられると、印加ウェル(1')および親水性フィルター材料(17)、第1毛細管チャンネル(3)、および、残留保持物が、チェンバーの下方部分から第1毛細管チャンネルへ流れこむことがないように阻止する物理障壁(10)を含む、隔離チェンバー(2)を形成し、前記上方部分が、該隔離チェンバーに導く流入口を有することを特徴とする、請求項1-11のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項13】
前記上方部分と下方部分の間の界面が、疎水性封印によってシールされることを特徴とする、請求項12に記載のデバイス。
【請求項14】
プレフィルター材料(15)をさらに含むことを特徴とする、請求項1-13のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項15】
第1毛細管チャンネルの幅および高さが、それぞれ、0.25 - 2.0 mmおよび0.2 - 1.0 mmであることを特徴とする、請求項1-14のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項16】
前記隔離チェンバーの流出口から収集チェンバーの流入口までの、第1毛細管チャンネルの長さが、5 - 20 mmであることを特徴とする、請求項1-15のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項17】
200 μl以下を含む縣濁液を、液体相および保持物相に分離するためのデバイスであって、該液体相が縣濁物質を事実上含まないことを特徴とする、請求項1-16のいずれか1項に記載のデバイスの使用。
【請求項18】
前記縣濁液が血液であることを特徴とする、請求項17に記載の使用。
【請求項19】
200 μl未満の縣濁液から成る液体サンプルを、縣濁物質を含む保持物相、および、縣濁物質を事実上含まない液体相に分離するための方法であって、下記の工程:
a. 必要に応じて縣濁液をプレフィルターに印加し、該プレフィルターを通じて該縣濁液を導き、縣濁物質を保持させ、液体を工程bのフィルター材料に事実上均一に移送すること;
b. 200 μl未満のサンプル縣濁液、すなわち、工程aの液体を、フィルター材料に印加すること;
c. 該縣濁液を含むフィルター材料を、第1毛細管チャンネルに接続される隔離チェンバーに印加すること;
d. 該フィルターを過飽和として第1毛細管チャンネルに入力供給すること;
e. 残留保持物が、該隔離チェンバーの下方部分から第1毛細管チャンネルへ流れこむことがないように阻止し、縣濁物質を該隔離チェンバーの下方部分に沈降させ、該縣濁液を保持物相および液体相に分離すること;および、
f. 該液体相を第1毛細管チャンネルに差し向けること;
を含む、前記方法。
【請求項20】
前記液体相が、第1毛細管チャンネルによって供給される毛管力と、前記印加サンプルによって産出される静水圧との併合作用のみによって、第1毛細管チャンネルの中に差し向けられることを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記第1毛細管チャンネルが、請求項7-10のいずれか1項に定義した通りであることを特徴とする、請求項19または20に記載の方法。
【請求項22】
前記血液がヒトの血液であることを特徴とする、請求項19-21に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【公表番号】特表2011−504588(P2011−504588A)
【公表日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−534363(P2010−534363)
【出願日】平成19年11月26日(2007.11.26)
【国際出願番号】PCT/DK2007/000516
【国際公開番号】WO2009/068024
【国際公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(506388510)アトノミックス アクティーゼルスカブ (9)
【Fターム(参考)】